IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイヘンの特許一覧

特開2024-83922プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置
<>
  • 特開-プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置 図1
  • 特開-プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置 図2
  • 特開-プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置 図3
  • 特開-プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置 図4
  • 特開-プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置 図5
  • 特開-プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置 図6
  • 特開-プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置 図7
  • 特開-プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置 図8
  • 特開-プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置 図9
  • 特開-プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083922
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/30 20060101AFI20240617BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240617BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G01N33/30
H01F27/00 B
H01F27/00 H
G01N21/27 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198015
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】細井 通成
(72)【発明者】
【氏名】米沢 昇
(72)【発明者】
【氏名】下村 好亮
【テーマコード(参考)】
2G059
5E059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059EE13
2G059FF01
2G059GG02
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
5E059BB15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】油入電気機器から回収された絶縁油に対し、当該絶縁油の劣化に関する情報を効率的に取得することができるプログラム等を提供する。
【解決手段】コンピュータに、油入電気機器から回収した絶縁油を撮像した画像を取得し、絶縁油を含む画像を入力した場合に絶縁油の劣化に関する情報を出力するよう学習された学習モデルに、取得した絶縁油を含む画像を入力することにより、学習モデルから絶縁油の劣化に関する情報を取得し、取得した絶縁油の劣化に関する情報を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
油入電気機器から回収した絶縁油を撮像した画像を取得し、
絶縁油を含む画像を入力した場合に該絶縁油の劣化に関する情報を出力するよう学習された学習モデルに、取得した前記絶縁油を含む画像を入力することにより、前記学習モデルから前記絶縁油の劣化に関する情報を取得し、
取得した前記絶縁油の劣化に関する情報を出力する
処理を実行させるプログラム。
【請求項2】
前記絶縁油は、複数の前記油入電気機器から回収された絶縁油が集約されたものである
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記絶縁油の劣化に関する情報に基づき、前記絶縁油の再利用の可否に関する情報を導出し、
導出した前記絶縁油の再利用の可否に関する情報を出力する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記絶縁油の劣化に関する情報に基づき、前記絶縁油の再利用に関する情報を導出し、
導出した前記絶縁油の再利用に関する情報を出力し、
前記絶縁油の再利用に関する情報は、前記絶縁油を再利用することができる再利用期間を含む
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記絶縁油の劣化に関する情報に基づき、前記絶縁油の再利用に関する情報を導出し、
導出した前記絶縁油の再利用に関する情報を出力し、
前記絶縁油の再利用に関する情報は、前記絶縁油を再利用するにあたり新品の絶縁油を混入する際の比率を含む
請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記絶縁油を含む画像は、可視光源にて撮像された画像であり、
前記学習モデルは、可視光源にて撮像された絶縁油の画像に対応するものであり、
前記油入電気機器から回収した前記絶縁油を不可視光源にて撮像した第2画像を取得し、
前記第2画像を入力した場合に絶縁油の劣化に関する情報を出力するよう学習された第2学習モデルに、取得した前記第2画像を入力することにより、前記第2学習モデルから前記絶縁油の劣化に関する第2情報を取得し、
前記絶縁油の劣化に関する情報、及び前記第2情報に基づき、前記絶縁油の再利用に関する情報を導出し、
導出した前記絶縁油の再利用に関する情報を出力する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項7】
コンピュータに、
油入電気機器から回収した絶縁油を撮像した画像を取得し、
絶縁油を含む画像を入力した場合に絶縁油の劣化に関する情報を出力するよう学習された学習モデルに、取得した前記絶縁油を含む画像を入力することにより、前記学習モデルから絶縁油の劣化に関する情報を取得し、
取得した前記絶縁油の劣化に関する情報を出力する
処理をコンピュータに実行させる情報処理方法。
【請求項8】
油入電気機器から回収した絶縁油を撮像した画像を取得する画像取得部と、
絶縁油を含む画像を入力した場合に絶縁油の劣化に関する情報を出力するよう学習された学習モデルに、取得した前記絶縁油を含む画像を入力することにより、前記学習モデルから絶縁油の劣化に関する情報を取得する情報取得部と、
取得した前記絶縁油の劣化に関する情報を出力する出力部と
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器や遮断器、コンデンサ等の電気機器には、絶縁及び冷却を目的として絶縁油が使用されている。例えば、特許文献1には、環境負荷を低減できる植物油を絶縁油として使用した油入電気機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-65858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された油入電気機器においては、当該油入電気機器から回収された絶縁油に対し、再生可否の判定を効率的に行う観点が考慮されていない。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、油入電気機器から回収された絶縁油に対し、当該絶縁油の劣化に関する情報を効率的に取得することができるプログラム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、油入電気機器から回収した絶縁油を撮像した画像を取得し、絶縁油を含む画像を入力した場合に該絶縁油の劣化に関する情報を出力するよう学習された学習モデルに、取得した前記絶縁油を含む画像を入力することにより、前記学習モデルから前記絶縁油の劣化に関する情報を取得し、取得した前記絶縁油の劣化に関する情報を出力する。
【0007】
本態様にあたっては、複数の油入電気機器から回収した絶縁油は、例えば、ビーカー等の透明の容器に注がれた状態にて回収される。当該絶縁油は、例えば、鉱油である。例えば、回収された絶縁油が入っている透明の容器は、白色光等の可視光源下において、CMOSカメラ等の撮像装置にて撮像される。白色光等の可視光源は、例えば、白色LED等であり、自然光(太陽光)に近い演色性が高い光源である。このように演色性が高い光源を用いることにより、変色度合を強調して撮影することが可能となり、学習モデルによる推論精度を向上させることができる。情報処理装置の制御部は、取得した絶縁油を含む画像に対し、例えば、当該絶縁油が入っている容器の背景をキーイングすることにより、当該背景を単色化し、絶縁油が入っている容器を抽出し易くするように前処理するものであってもよい。この場合、当該前処理された画像が、学習モデルに入力される。このようにキーイング処理等を施すことにより、絶縁油が入っている容器の背景を実質的に除去することができ、学習モデルによる推論精度を向上させることができる。絶縁油の劣化に関する情報は、例えば、絶縁油の劣化度を示す数値を含む。例えば、劣化度が0の場合、絶縁油は新品である。劣化度は、例えば0.5単位で設定されて、劣化度が1.0以下の場合、回収した絶縁油は再生可能であると判定されるものであってもよい。この場合、劣化度が1.5、2.0又は3.0の絶縁油は再生不可であると判定される。学習モデルは、入力された絶縁油を含む画像に基づき、当該絶縁油の再生可否を、絶縁油の劣化に関する情報として出力するものであってもよい。このように学習モデルを用いることにより、絶縁油を含む画像に基づき、当該絶縁油の再生可否を効率的に判定することができる。これにより、油入電気機器の保守管理者等による判断のばらつきが発生することを抑制し、判定時間及び判定制度を向上させることができ、人件費削減、スキルレス化の促進及び検査精度向上を図ることができる。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記絶縁油は、複数の前記油入電気機器から回収された絶縁油が集約されたものである。
【0009】
本態様にあたっては、学習モデルを用いて絶縁油の劣化度を推論(出力)するにあたり、当該絶縁油は、例えば同種の複数の油入電気機器から回収した絶縁油を集約したものである。これにより、複数の油入電気機器が載置されている電気関連施設において、個々の油入電気機器から回収した絶縁油それぞれに対し、劣化度を推論(出力)するよりも効率的に絶縁油の劣化度を推論(出力)することができ、これら油入電気機器に対する保守作業等の効率化を図ることができる。
【0010】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記絶縁油の劣化に関する情報に基づき、前記絶縁油の再利用の可否に関する情報を導出し、導出した前記絶縁油の再利用の可否に関する情報を出力する。
【0011】
本態様にあたっては、情報処理装置の制御部は、学習モデルを用いて推論(出力)した劣化度に基づき、絶縁油の再利用の可否に関する情報を導出する。これにより、絶縁油の再利用の可否に関する情報を効率的に導出でき、油入電気機器の保守管理者等による判断のばらつきが発生することを抑制し、判定時間及び判定制度を向上させることができ、人件費削減、スキルレス化の促進及び検査精度向上を図ることができる。
【0012】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記絶縁油の劣化に関する情報に基づき、前記絶縁油の再利用に関する情報を導出し、導出した前記絶縁油の再利用に関する情報を出力し、前記絶縁油の再利用に関する情報は、前記絶縁油を再利用することができる再利用期間を含む。
【0013】
本態様にあたっては、情報処理装置の制御部は、絶縁油の劣化に関する情報に基づき、絶縁油を再利用するにあたり、再利用することができる再利用期間を導出し、当該再利用期間を絶縁油の再利用に関する情報として出力する。複数の油入電気機器から回収された絶縁油は集約され、当該集約された絶縁油に対し、再利用性が、判定される。この際、学習モデルが出力した劣化度に応じて、情報処理装置の制御部は、絶縁油を再利用することができる再利用期間を導出する。例えば、劣化度が0.5又は1.0等の場合などの低い場合、再利用が可能となり、この場合、当該劣化度の値に応じて、再利用期間が導出される。情報処理装置の記憶部には、劣化度の数値それぞれに対応した再利用期間それぞれが、例えばテーブル形式(再利用期間テーブル)にて記憶されている。情報処理装置の制御部は、当該再利用期間テーブルを参照することにより、劣化度に応じた、再利用期間を導出することができる。情報処理装置の制御部は、導出した再利用期間を、油入電気機器の保守作業者等が保持するスマートホン等の情報端末に出力するため、保守作業者による判断のばらつきを抑制し作業効率を向上させることができる。
【0014】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記絶縁油の劣化に関する情報に基づき、前記絶縁油の再利用に関する情報を導出し、導出した前記絶縁油の再利用に関する情報を出力し、前記絶縁油の再利用に関する情報は、前記絶縁油を再利用するにあたり新品の絶縁油を混入する際の比率を含む。
【0015】
本態様にあたっては、情報処理装置の制御部は、絶縁油の劣化に関する情報に基づき、絶縁油を再利用するにあたり新品の絶縁油を混入する際の比率を導出し、当該比率を絶縁油の再利用に関する情報として出力する。複数の油入電気機器から回収された絶縁油は集約され、当該集約された絶縁油に対し、再利用性が、判定される。この際、学習モデルが出力した劣化度に応じて、情報処理装置の制御部は、絶縁油を再利用するにあたり新品の絶縁油を混入する際の比率を導出する。例えば、劣化度が0.5又は1.0等の場合などの低い場合、新品の絶縁油を追加することなく再利用が可能となり、この場合、再利用率は100%となり、新品の絶縁油の混入比率は0%となる。例えば、劣化度が2.0等の場合などの高い場合、新品の絶縁油を混合させて、一部の再利用が可能となり、この場合、再利用率は、(集約した絶縁油/(新品の絶縁油+集約した絶縁油))*100[%]となる。新品の絶縁油の混入比率は、(新品の絶縁油/(新品の絶縁油+集約した絶縁油))*100[%]となる。例えば、劣化度が3.0等の場合などの更に高い場合、再利用は不可となり、この場合、再利用率は0[%]となる。情報処理装置の記憶部には、劣化度の数値それぞれに対応した比率(新品の絶縁油の混入比率、又は回収した絶縁油の再利用率)それぞれが、例えばテーブル形式(比率テーブル)にて記憶されている。情報処理装置の制御部は、当該比率テーブルを参照することにより、劣化度に応じた比率を導出することができる。情報処理装置の制御部は、導出した比率(新品の絶縁油の混入比率、又は回収した絶縁油の再利用率)を、油入電気機器の保守作業者等が保持するスマートホン等の情報端末に出力するため、保守作業者による判断のばらつきを抑制し作業効率を向上させることができる。
【0016】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記絶縁油を含む画像は、可視光源にて撮像された画像であり、前記学習モデルは、可視光源にて撮像された絶縁油の画像に対応するものであり、前記油入電気機器から回収した前記絶縁油を不可視光源にて撮像した第2画像を取得し、前記第2画像を入力した場合に絶縁油の劣化に関する情報を出力するよう学習された第2学習モデルに、取得した前記第2画像を入力することにより、前記第2学習モデルから前記絶縁油の劣化に関する第2情報を取得し、前記絶縁油の劣化に関する情報、及び前記第2情報に基づき、前記絶縁油の再利用に関する情報を導出し、導出した前記絶縁油の再利用に関する情報を出力する。
【0017】
本態様にあたっては、情報処理装置の制御部は、同一の判定対象となる絶縁油に対し、学習モデル及び第2学習モデルからなる複数のAIモデルを用いて、絶縁油の劣化度又は再生成に関する判定を行う。学習モデルは白色LED又は太陽光等の可視光源にて撮像された絶縁油の画像に対応しており、第2学習モデルは赤外線ライト又は紫外線ライト等の不可視光源にて撮像された絶縁油の画像(第2画像)に対応している。情報処理装置の制御部は、同一の判定対象となる絶縁油に対し、可視光源にて撮像された絶縁油の画像と、不可視光源にて撮像された絶縁油の第2画像とを取得する。学習モデルには可視光源にて撮像された絶縁油の画像が入力され、第2学習モデルには不可視光源にて撮像された絶縁油の第2画像が入力される。情報処理装置の制御部は、学習モデルからの絶縁油の劣化に関する情報、及び第2学習モデルからの絶縁油の劣化に関する第2情報を取得する。情報処理装置の制御部は、これら学習モデルからの絶縁油の劣化に関する情報、及び第2学習モデルからの絶縁油の劣化に関する第2情報からなる複数のモデルからの出力結果に基づき、絶縁油の再利用に関する情報を導出する。これにより、劣化度及び絶縁油の再利用の可否等の判定精度を向上させることができる。
【0018】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータに、油入電気機器から回収した絶縁油を撮像した画像を取得し、絶縁油を含む画像を入力した場合に絶縁油の劣化に関する情報を出力するよう学習された学習モデルに、取得した前記絶縁油を含む画像を入力することにより、前記学習モデルから絶縁油の劣化に関する情報を取得し、取得した前記絶縁油の劣化に関する情報を出力する。
【0019】
本態様にあたっては、油入電気機器から回収された絶縁油に対し、当該絶縁油の劣化に関する情報を効率的に取得することができる情報処理方法を提供することができる。
【0020】
本開示の一態様に係る情報処理装置は、油入電気機器から回収した絶縁油を撮像した画像を取得する画像取得部と、絶縁油を含む画像を入力した場合に絶縁油の劣化に関する情報を出力するよう学習された学習モデルに、取得した前記絶縁油を含む画像を入力することにより、前記学習モデルから絶縁油の劣化に関する情報を取得する情報取得部と、取得した前記絶縁油の劣化に関する情報を出力する出力部とを備える。
【0021】
本態様にあたっては、油入電気機器から回収された絶縁油に対し、当該絶縁油の劣化に関する情報を効率的に取得することができる情報処理装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
油入電気機器から回収された絶縁油に対し、当該絶縁油の劣化に関する情報を効率的に取得することができるプログラム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1に係る絶縁油判定システムの概要を説明するための模式図である。
図2】情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図3】学習モデル(可視光源対応モデル)の生成処理に関する説明図である。
図4】情報処理装置の制御部による処理手順(学習時)を例示するフローチャートである。
図5】情報処理装置の制御部に含まれる機能部を例示する機能ブロック図である。
図6】情報処理装置の制御部による処理手順(運用時)を例示するフローチャートである。
図7】実施形態2(再利用期間)に係る制御部による処理手順(運用時)を例示するフローチャートである。
図8】実施形態3(比率)に係る制御部による処理手順(運用時)を例示するフローチャートである。
図9】実施形態4(複数モデル)に係る情報処理装置の制御部に含まれる機能部を例示する機能ブロック図である。
図10】情報処理装置の制御部による処理手順(運用時)を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態1)
以下、実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る絶縁油判定システムSの概要を説明するための模式図である。図2は、情報処理装置1の構成を示すブロック図である。絶縁油判定システムSは、情報処理装置1を主たる装置として構成され、情報処理装置1は、撮像装置Cが撮像した絶縁油の画像を取得する。絶縁油は、例えば複数の油入電気機器Dから回収された絶縁油が集約されたものであり、当該絶縁油は、ビーカー等の透明容器に注がれた状態にて、撮像装置Cよって撮像される。透明容器に入った絶縁油の撮像は、白色LED又は自然光(太陽光)等、演色性が高い可視光源の下にて、行われるものであってもよい。
【0025】
油入電気機器Dは、例えば、変圧器、ケーブル、遮断器、コンデンサ等を含み、絶縁や冷却を目的として、例えば鉱油等の絶縁油(電気絶縁油)が用いられている。例えば、変電所、発電所又は工場等の電気関連施設において、複数の油入電気機器Dが載置されており、これら油入電気機器Dは定期的に保守点検又はオーバーホール等が実施される。電気絶縁油の電気特性を表す測定値として、誘電正接等が知られているが、電気絶縁油の誘電正接は、測定装置の容器内に混在する不純物の影響を受け易いため、容器内の精密な洗浄が必要となる。また、電気絶縁油の誘電正接は、80°Cの電気絶縁油を測定するため、電気絶縁油を加熱する時間が必要となる。このように電気絶縁油の誘電正接の測定の操作が煩雑であるため、より簡便な方法により電気絶縁油の劣化度合を判定するという観点で未だ改善の余地がある。油入電気機器Dから回収された絶縁油(電気絶縁油)は、活性アルミナ等吸着剤又は、ろ過法を用いて、回収した絶縁油中(廃油中)の酸化劣化物を取り除き、再度油入電気機器Dに用いることができる絶縁油として再利用されることが望ましい。詳細は後述するが、情報処理装置1の制御部11は、学習モデル101を用いて、回収した絶縁油の再利用性を判定するにあたり、当該絶縁油の劣化度を出力する。
【0026】
撮像装置Cは、例えば、CMOSカメラ等であり、白色LED等の可視光源下にて絶縁油(絶縁油が入った透明容器)を撮像する。撮像装置Cは、例えば、油入電気機器Dの保守作業者等が保持するスマートホン等の情報端末Tに内蔵されているカメラであってもよく、又は、情報処理装置1の入出力IF14を介して接続されるものであってもよい。保守作業者等の情報端末Tと、情報処理装置1とは、例えばインターネット等の外部ネットワーク、又はLAN等を通じて、通信可能に接続されている。撮像装置Cが撮像した絶縁油(絶縁油が入った透明容器)の画像は、保守作業者等の情報端末Tから送信、情報処理装置1の入出力IF14を介して取得、又はメモリカード等の記憶メディアを介したオフライン取得等により、情報処理装置1によって取得される。
【0027】
情報処理装置1は、種々の情報処理、情報の送受信が可能なコンピュータであり、例えばサーバ装置、パーソナルコンピュータ等である。サーバ装置は、単体のサーバ装置のみならず、複数台のコンピュータによって構成されるクラウドサーバ装置、又は仮想サーバ装置を含む。情報処理装置1は、制御部11、記憶部12、通信部13及び入出力IF14を含む。
【0028】
制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の計時機能を備えた演算処理装置を有し、記憶部12に記憶されたプログラムP(プログラム製品)を読み出して実行することにより、種々の情報処理、制御処理等を行う。
【0029】
記憶部12は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の揮発性記憶領域及び、EEPROM又はハードディスク等の不揮発性記憶領域を含む。記憶部12には、プログラムP(プログラム製品)及び処理時に参照するデータが予め記憶してあり、更に処理中にて生成された中間データ等を含む各種データが記憶される。記憶部12に記憶されたプログラムP(プログラム製品)は、情報処理装置1が読み取り可能な記録媒体Mから読み出されたプログラムP(プログラム製品)を記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラムP(プログラム製品)をダウンロードし、記憶部12に記憶させたものであってもよい。
【0030】
通信部13は、イーサネット(登録商標)等の有線、又は無線により、情報端末T等と通信するための通信モジュール又は通信インターフェイスであり、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の狭域無線通信モジュール、又は4G、5G等の広域無線通信モジュールである。制御部11は、通信部13を介し、例えばインターネット等の外部ネットワーク、又はLAN等を通じて、油入電気機器Dの保守作業者等が保持するスマートホン等の情報端末Tと通信する。
【0031】
入出力I/F14は、例えばRS232C又はUSB等の通信規格に準拠した通信インターフェイスである。入出力I/F14には、例えば、撮像装置Cが接続され、更にキーボード等の入力装置、又は液晶ディスプレイ等の表示装置が接続されるものであってもよい。
【0032】
図3は、学習モデル101(可視光源対応モデル)の生成処理に関する説明図である。情報処理装置1の制御部11は、学習モデル101用の訓練データを用いて、例えばCNN等のニューラルネットワーク等を学習させ、絶縁油を含む画像(絶縁油が注がれている透明容器を含む画像)を入力とし、当該絶縁油の劣化に関する情報を出力する学習モデル101(絶縁油判定AIモデル)を生成する。絶縁油を含む画像は、当該絶縁油が注がれている透明容器の背景がキーイング処理され単色化又は削除されている画像であってもよい。学習モデル101が出力する絶縁油の劣化に関する情報は、例えば、絶縁油の劣化の度合を示す劣化度の数値を含むものであってもよい。又は、学習モデル101が出力する絶縁油の劣化に関する情報は、絶縁油の再生可否を示す情報であってもよい。
【0033】
訓練データは問題データ及び回答データを含み、絶縁油を含む画像(絶縁油が注がれている透明容器を含む画像)は問題データに相当し、絶縁油の劣化度は回答データに相当する。学習モデル101を学習するための訓練データに含まれる問題データ及び回答データのデータセットと、学習モデル101(絶縁油判定AIモデル)を用いた際の入力データ及び出力データのデータセットとは同義であり、いずれかのデータセットにて定義されていれば、他方のデータセットにおいても、当然に適用される。
【0034】
訓練データを用いて学習されたニューラルネットワーク(学習モデル101)は、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとして利用が想定される。学習モデル101(絶縁油判定AIモデル)は、上述のごとく制御部11(CPU等)及び記憶部12を備える情報処理装置1にて用いられるものであり、このように演算処理能力を有する情報処理装置1にて実行されることにより、ニューラルネットワークシステムが構成される。すなわち、情報処理装置1の制御部11が、記憶部12に記憶された学習モデル101からの指令に従って、入力層に入力された絶縁油を含む画像の特徴量を抽出する演算を行い、出力層から、絶縁油の劣化に関する情報を出力する。
【0035】
学習モデル101(絶縁油判定AIモデル)は、例えばCNN(Convolutional Neural Network)にて構成され、絶縁油を含む画像の入力を受け付ける入力層と、当該絶縁油を含む画像の特徴量を抽出する中間層と、絶縁油の劣化に関する情報を出力とする出力層とを有する。入力層は、絶縁油を含む画像の入力を受け付ける複数のニューロンを有し、入力された値を中間層に受け渡す。中間層は、ReLU関数又はシグモイド関数等の活性化関数を用いて定義され、入力されたそれぞれの値の特徴量を抽出する複数のニューロンを有し、抽出した特徴量を出力層に受け渡す。当該活性化関数の重みづけ係数及びバイアス値等のパラメータは、誤差逆伝播法を用いて最適化される。出力層は、例えば全結合層により構成され、中間層から出力された特徴量に基づいて絶縁油の劣化に関する情報を出力する。又は、出力層は、例えば、ソフトマックス層により構成され、絶縁油の劣化に関する情報として、予め設定されている劣化度それぞれに対する確度、又は絶縁油の再生可否において、再生可能及び再生不可の確度それぞれを出力するものであってもよい。
【0036】
本実施形態では、学習モデル101は、CNN等であるとしたがこれに限定されず、CNN以外のニューラルネットワーク、トランスフォーマ、BERT、GPT、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long-short term model)、SVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク、線形回帰、回帰木、重回帰、ランダムフォレスト、アンサンブルなど、他の機械学習アルゴリズムで構築された学習モデル101であってよい。
【0037】
図4は、情報処理装置1の制御部11による処理手順(学習時)を例示するフローチャートである。情報処理装置1の制御部11は、例えば入出力I/F14に接続されるキーボード等による操作者の操作を受付け、当該受け付けた操作に基づき、以下の処理を行う。
【0038】
情報処理装置1の制御部11は、撮像装置Cから、絶縁油を含む画像を取得する(S1)。絶縁油をビーカー等の透明の容器に注ぎ、絶縁油が注がれている透明容器を含む画像を、情報処理装置1の制御部11は、撮像装置Cから取得する。画像を撮像するにあたり、絶縁油が注がれている透明容器は、例えば、白色光等の可視光源下において、CMOSカメラ等の撮像装置Cにて撮像される。白色光等の可視光源は、例えば、白色LED等であり、自然光(太陽光)に近い演色性が高い光源である。このように演色性が高い光源を用いることにより、変色度合を強調して撮影することが可能となり、学習モデル101による推論(推測)精度を向上させることができる。
【0039】
情報処理装置1の制御部11は、取得した絶縁油を含む画像の背景をキーイングする(S2)。情報処理装置1の制御部11は、画像に対する前処理として、例えば、絶縁油を含む画像(絶縁油が注がれている透明容器を含む画像)の背景をキーイングする。これにより、当該画像において、絶縁油が注がれている透明容器の背景は、単一色画像となり、絶縁油が入っている容器の背景を実質的に除去することができ、学習モデル101による推論(推測)精度を向上させることができる。画像に対する前処理は、キーイングに限定されず、例えば、絶縁油が注がれている透明容器が占める画像領域を所定の大きさに調整する等の処理を含むものであってもよい。
【0040】
情報処理装置1の制御部11は、キーイングした絶縁油を含む画像にアノテーションを実施する(S3)。キーイングした絶縁油を含む画像(絶縁油が注がれている透明容器を含む画像)に対し、当該絶縁油の色彩又は透明度に応じて、劣化度を示す値が付与(アノテーション)される。この場合、絶縁油が注がれている透明容器を含む画像は問題データに相当し、当該劣化度を示す値は、回答データに相当する。
【0041】
絶縁油の色彩又は透明度は、例えば、ハーゼン単位色数(APHA)に応じて決定されるものであってもよい。又は、測色計を用いて測定するものであってもよい。又は、絶縁油の色を比色計にて観察し、ASTM色という色標準ガラスと比較して、概ね等しいASTM色標準ガラスの番号で判定するものであってもよい。絶縁油の透明度が高いほど、絶縁油の劣化度は低く、例えば、劣化度が0とは、新品の絶縁油(透明度が最も高い絶縁油)を示す値として設定され、透明度が低くなるにつれ、劣化度の数値が増加するように設定するものであってもよい。このよぅに劣化度を設定した場合、例えば、所定の閾値以下(例えば、1.0以下)の劣化度の絶縁油は、再生可能であり、閾値(例えば、1.0)よりも大きい劣化度の絶縁油は、再生不可であると判定されるものであってもよい。当該劣化度は、例えば、0.5単位にて設定されるものであってもよく、又は0.1単位にて設定されるものであってもよい。劣化度は、絶縁油(電気絶縁油)の体積抵抗率又は水分量等の測定結果、更には、上述した色彩又は透明度等を含めたこれらの組み合わせに基づき決定され、付与(アノテーション)されるものであってもよい。
【0042】
情報処理装置1の制御部11は、学習用データセットを生成する(S4)。情報処理装置1の制御部11は、問題データである複数の画像と、これら画像それぞれにアノテーションされた劣化度から成る回答データとの組み合わせによる学習用データセット(訓練データ)を生成する。問題データである複数の画像は、例えば劣化度が0から3.0程度等、さまざまな劣化度の絶縁油を含む画像である。このようなさまざまな劣化度の絶縁油の画像は、油入電気機器Dの保守管理を担う設備会社等にて多量に保管されており、これを用いることにより、学習用データセット(訓練データ)を生成することができる。
【0043】
情報処理装置1の制御部11は、生成した学習用データセットを用いて学習モデル101を生成する(S5)。情報処理装置1の制御部11は、例えば、CNN等のニューラルネットワークに学習用データセット(訓練データ)を適用し、学習させることにより、学習モデル101を生成する。
【0044】
図5は、情報処理装置1の制御部11に含まれる機能部を例示する機能ブロック図である。情報処理装置1の制御部11は、記憶部12に記憶されているプログラムPを実行することにより、取得部111、前処理部112、判定結果導出部113、及び出力部114として機能する。情報処理装置1の制御部11は、記憶部12に記憶されている学習モデル101の実体ファイル等を読み取ることにより、学習モデル101として機能する。
【0045】
取得部111は、CMOSカメラ等の撮像装置Cが撮像した、絶縁油を含む画像を取得し、画像取得部として機能する。複数の油入電気機器Dから回収された絶縁油は混合され、単一の透明容器に注がれる。このように複数の油入電気機器Dから回収され集約された絶縁油は、透明容器に注がれた状態にて、撮像される。絶縁油の撮像(絶縁油が注がれている透明容器を含む画像)は、演色性が高い光源である白色LED等の可視光源下において、CMOSカメラ等の撮像装置Cにて行われる。
【0046】
撮像装置Cは、例えば、情報処理装置1の入出力IF14に接続されており、当該入出力IF14を介して、撮像装置Cから絶縁油を含む画像を取得する。又は、撮像装置Cは、油入電気機器Dの保守作業者等が保持するスマートホン等の情報端末Tに実装されており、情報処理装置1は情報端末Tと通信することにより、絶縁油を含む画像を取得するものであってもよい。
【0047】
前処理部112は、取得部111が取得した画像に対し、例えばキーイング等の前処理を行う。前処理部112は、絶縁油が注がれている透明容器を含む画像に対し、当該透明容器の背景をキーイング処理して単色化又は削除する処理を行う。前処理部112は、更に、絶縁油が注がれている透明容器が占める画像領域を所定の大きさに調整する等の処理を行うものであってもよい。前処理部112は、背景をキーイングする等、前処理した画像(絶縁油が注がれている透明容器を含む画像)を、学習モデル101に入力する。
【0048】
学習モデル101は、入力された画像(背景をキーイングされた、絶縁油が注がれている透明容器を含む画像)に基づき、当該絶縁油の劣化に関する情報を出力する。絶縁油の劣化に関する情報は、例えば、当該絶縁油の劣化度を示す数値を含む。
【0049】
判定結果導出部113は、学習モデル101が出力(推測)した絶縁油の劣化度(絶縁油の劣化に関する情報)を取得する情報取得部として機能し、当該劣化度に基づき、絶縁油の再生可否に関する判定結果を導出する。学習モデル101が出力される劣化度は、例えば、0.5単位で設定される数値として出力され、判定結果導出部113は、学習モデル101からの劣化度と、予め定められている閾値とを比較して、絶縁油の再生可否を判定する。当該閾値は、情報処理装置1の記憶部12に記憶されており、判定結果導出部113は記憶部12を参照することにより閾値を取得することができる。例えば、閾値が1.0と設定されている場合、判定結果導出部113は、学習モデル101からの劣化度が当該閾値(1.0)以下であれば、絶縁油は再生可能(再利用可能)であると判定し、閾値(1.0)よりも大きければ、再生不可(再利用)であると判定する。
【0050】
出力部114は、判定結果導出部113からの判定結果、すなわち再生可能(再利用可能)の可否に関する情報を、例えば、油入電気機器Dの保守作業者等が保持するスマートホン等の情報端末Tに出力する。又は、出力部114は、入出力IF14に接続されるディスプレイ等の表示装置に、判定結果を出力するものであってもよい。出力部114は、当該再生可能(再利用可能)の可否の判定結果に加え、判定の根拠となった劣化度、及び判定に用いた閾値等についても、出力するものであってもよい。
【0051】
本実施形態において、学習モデル101が絶縁油の劣化度を推測し、判定結果導出部113は当該劣化度に基づき絶縁油の再生可否を判定するとしたがこれに限定されず、学習モデル101が絶縁油の再生可否を出力するものであってもよい。すなわち、絶縁油の劣化度は、絶縁油の再生可否を判定するにあたっての中間データに相当するものであり、学習モデル101が判定結果導出部113の機能を包含して、入力された絶縁油を含む画像に基づき、当該絶縁油の再生可否を、絶縁油の劣化に関する情報として出力するものであってもよい。この場合、学習モデル101を学習する際の訓練データに含まれる回答データは、絶縁油の画像に対し、再生可否を示すフラグ値に相当する。この際、当該再生可否を示すフラグ値が、絶縁油の画像にアノテーションされるものとなる。
【0052】
図6は、情報処理装置1の制御部11による処理手順(運用時)を例示するフローチャートである。情報処理装置1の制御部11は、例えば入出力I/F14に接続されるキーボード等による操作者の操作を受付け、当該受け付けた操作に基づき、以下の処理を行う。
【0053】
情報処理装置1の制御部11は、油入電気機器Dから回収した絶縁油を撮像した画像を取得する(S101)。情報処理装置1の制御部11は、CMOSカメラ等の撮像装置Cが撮像した、絶縁油を含む画像を取得する。複数の油入電気機器Dから回収された絶縁油は、混合され、単一の透明容器に注がれた状態にて撮像される。撮像対象となる透明容器に注がれる絶縁油は、複数の油入電気機器Dから回収された絶縁油に限定されず、単一の電気機器から回収された絶縁油であってもよい。絶縁油が注がれている透明容器を含む画像は、演色性が高い光源である白色LED等の可視光源下において、CMOSカメラ等の撮像装置Cにて行われる。
【0054】
情報処理装置1の制御部11は、取得した絶縁油を含む画像の背景をキーイングする(S102)。情報処理装置1の制御部11は、絶縁油が注がれている透明容器を含む画像に対し、当該透明容器の背景をキーイング処理して単色化又は削除する処理を行う。
【0055】
情報処理装置1の制御部11は、キーイングした絶縁油を含む画像を学習モデル101に入力する(S103)。情報処理装置1の制御部11は、学習モデル101が出力した劣化度を取得する(S104)。情報処理装置1の制御部11は、キーイングした絶縁油を含む画像(絶縁油が入っている透明容器の背景が削除された画像)を学習モデル101に入力する。学習モデル101は、入力された絶縁油の画像に基づき、当該絶縁油の劣化度を出力(推測)する。情報処理装置1の制御部11は、学習モデル101からの劣化度を取得する。
【0056】
情報処理装置1の制御部11は、取得した劣化度に基づき絶縁油の再生可否を判定する(S105)。情報処理装置1の制御部11は、学習モデル101から取得した劣化度と、予め定められた閾値とを比較することにより、絶縁油の再生可否を判定する。当該閾値は、情報処理装置1の記憶部12に記憶されており、情報処理装置1の制御部11は、劣化度が閾値以下なら絶縁油は再生可能(再利用可能)と判定し、劣化度が閾値よりも大きい場合は、絶縁油は再生不可(再利用不可)と判定する。
【0057】
情報処理装置1の制御部11は、判定した絶縁油の再生可否を出力する(S106)。情報処理装置1の制御部11は、判定した絶縁油の再生可否、すなわち判定結果を、通信部13を介して、油入電気機器Dの保守作業者等が保持するスマートホン等の情報端末Tに出力する。又は、情報処理装置1の制御部11は、入出力IF14に接続されるディスプレイ等の表示装置に、判定結果を出力するものであってもよい。再生可能(再利用可能)と判定された絶縁油は、当該絶縁油の回収元となる油入電気機器Dに再注入され、再利用される。再生不可(再利用不可)と判定された絶縁油は、廃油として適切に処理される。
【0058】
(実施形態2)
図7は、実施形態2(再利用期間)に係る制御部11による処理手順(運用時)を例示するフローチャートである。情報処理装置1の制御部11は、例えば入出力I/F14に接続されるキーボード等による操作者の操作を受付け、当該受け付けた操作に基づき、以下の処理を行う。
【0059】
情報処理装置1の制御部11は、油入電気機器Dから回収した絶縁油を撮像した画像を取得する(S201)。情報処理装置1の制御部11は、取得した絶縁油を含む画像の背景をキーイングする(S202)。情報処理装置1の制御部11は、キーイングした絶縁油を含む画像を学習モデル101に入力する(S203)。情報処理装置1の制御部11は、学習モデル101が出力した劣化度を取得する(S204)。情報処理装置1の制御部11は、実施形態1のS101からS104と同様にS201からS204の処理を行う。
【0060】
情報処理装置1の制御部11は、取得した劣化度に基づき、絶縁油を再利用することができる再利用期間を導出する(S205)。情報処理装置1の制御部11は、例えば、記憶部12に記憶されている再利用期間テーブルを参照し、劣化度に応じた再利用期間を導出する。再利用期間テーブルには、劣化度の数値それぞれに対応した再利用期間それぞれが格納されており、再利用期間テーブルを参照することにより、情報処理装置1の制御部11は、劣化度に応じた再利用期間を効率的に導出することができる。
【0061】
情報処理装置1の制御部11は、導出した再利用期間を出力する(S206)。情報処理装置1の制御部11は、導出した再利用期間を、実施形態1のS106と同様に油入電気機器Dの保守作業者等が保持するスマートホン等の情報端末T、又は表示装置に出力する。
【0062】
(実施形態3)
図8は、実施形態3(比率)に係る制御部11による処理手順(運用時)を例示するフローチャートである。情報処理装置1の制御部11は、例えば入出力I/F14に接続されるキーボード等による操作者の操作を受付け、当該受け付けた操作に基づき、以下の処理を行う。
【0063】
情報処理装置1の制御部11は、油入電気機器Dから回収した絶縁油を撮像した画像を取得する(S301)。情報処理装置1の制御部11は、取得した絶縁油を含む画像の背景をキーイングする(S302)。情報処理装置1の制御部11は、キーイングした絶縁油を含む画像を学習モデル101に入力する(S303)。情報処理装置1の制御部11は、学習モデル101が出力した劣化度を取得する(S304)。情報処理装置1の制御部11は、実施形態1のS101からS104と同様にS301からS304の処理を行う。
【0064】
情報処理装置1の制御部11は、取得した劣化度に基づき、絶縁油を再利用するにあたり新品の絶縁油を混入する際の比率を導出する(S305)。情報処理装置1の制御部11は、例えば、記憶部12に記憶されている比率テーブルを参照し、劣化度に応じた比率を導出する。比率テーブルには、劣化度の数値それぞれに対応した比率それぞれが格納されており、比率テーブルを参照することにより、情報処理装置1の制御部11は、劣化度に応じた比率を効率的に導出することができる。
【0065】
学習モデル101が出力した劣化度が例えば、0.5又は1.0等の場合などの低い場合、新品の絶縁油を追加することなく再利用が可能となり、この場合、再利用率は100%となり、新品の絶縁油の混入比率は0%となる。学習モデル101が出力した劣化度が、例えば、2.0等の場合などの高い場合、新品の絶縁油を混合させて、一部の再利用が可能となり、この場合、再利用率は、(集約した絶縁油/(新品の絶縁油+集約した絶縁油))*100[%]となる。この際、新品の絶縁油の混入比率は、(新品の絶縁油/(新品の絶縁油+集約した絶縁油))*100[%]となる。学習モデル101が出力した劣化度が、例えば、3.0等の場合などの更に高い場合、再利用は不可となり、この場合、再利用率は0[%]となる。
【0066】
情報処理装置1の制御部11は、導出した比率を出力する(S306)。情報処理装置1の制御部11は、導出した比率を、実施形態1のS106と同様に油入電気機器Dの保守作業者等が保持するスマートホン等の情報端末T、又は表示装置に出力する。
【0067】
(実施形態4)
図9は、実施形態4(複数モデル)に係る情報処理装置1の制御部11に含まれる機能部を例示する機能ブロック図である。本実施形態における情報処理装置1は、学習モデル101、及び第2学習モデル102から成る複数の絶縁油判定AIモデルを用いる。学習モデル101は、実施形態1と同様に、白色LED又は太陽光等の可視光源にて撮像された絶縁油の画像に対応したAIモデル(可視光源対応モデル)である。
【0068】
第2学習モデル102は、赤外線ライト又は紫外線ライト等の不可視光源にて撮像された絶縁油の画像(第2画像)に対応したAIモデル(不可視光源対応モデル)である。この場合、撮像装置Cは、不可視光源(赤外線ライト又は紫外線ライト等)の種類に応じて、赤外線カメラ又は紫外線カメラを含む。
【0069】
第2学習モデル102は、学習モデル101と同様に例えばCNNにて構成され、第2画像を入力した場合に絶縁油の劣化に関する情報を出力するよう学習されている。第2学習モデル102の学習においては、第2画像を問題データとし、当該第2画像に含まれる絶縁油の劣化度が回答データとしてアノテーションされる。情報処理装置1の制御部11は実施形態1と同様に、このように第2画像に劣化度がアノテーションされた学習用データセット(訓練データ)を生成し、当該訓練データを用いて、第2学習モデル102を生成(学習)する。
【0070】
取得部111は、実施形態1と同様に、可視光源にて撮像された絶縁油が注がれている透明容器を含む画像と、不可視光源にて撮像された絶縁油が注がれている透明容器を含む第2画像とを取得する。これら画像及び第2画像に含まれる絶縁油(透明容器に入っている絶縁油)は、同一の絶縁油である。
【0071】
前処理部112は、実施形態1と同様に、可視光源にて撮像された絶縁油が注がれている透明容器を含む画像と、不可視光源にて撮像された絶縁油が注がれている透明容器を含む第2画像とに対し、キーイング等の前処理を行う。前処理部112は、キーイングを施した画像(可視光源での撮像画像)を学習モデル101に入力し、キーイングを施した第2画像(不可視光源で撮像画像)を第2学習モデル102に入力する。
【0072】
学習モデル101は、実施形態1と同様に入力された画像(可視光源での撮像画像)に応じて、絶縁油の劣化度(絶縁油の劣化に関する情報)を出力(推測)する。第2学習モデル102は、入力された第2画像(不可視光源で撮像画像)に応じて、絶縁油の劣化度(絶縁油の劣化に関する第2情報:第2劣化度)を出力(推測)する。
【0073】
判定結果導出部113は、学習モデル101及び第2学習モデル102それぞれから、絶縁油の劣化度及び第2劣化度を取得し、取得した2つの劣化度に基づき、絶縁油の再生可否の判定結果を導出する。判定結果導出部113は、学習モデル101からの劣化度と、第2学習モデル102からの第2劣化度との平均値を算出し、当該平均値に基づき、予め定められている閾値とを比較して、絶縁油の再生可否を判定するものであってもよい。このように判定結果導出部113は、学習モデル101からの劣化度と、第2学習モデル102からの第2劣化度とを組み合わせて、絶縁油の再生可否を判定するものであってもよい。出力部114は、実施形態1と同様に、絶縁油の再生可否(再利用可否)の判定結果、及び劣化度等を出力する。
【0074】
図10は、情報処理装置1の制御部11による処理手順(運用時)を例示するフローチャートである。情報処理装置1の制御部11は、例えば入出力I/F14に接続されるキーボード等による操作者の操作を受付け、当該受け付けた操作に基づき、以下の処理を行う。
【0075】
情報処理装置1の制御部11は、油入電気機器Dから回収した絶縁油を可視光源にて撮像した画像と、不可視光源にて撮像した第2画像とを取得する(S401)。情報処理装置1の制御部11は、実施形態1のS101と同様に油入電気機器Dから回収した絶縁油を可視光源にて撮像した画像を取得する。更に、情報処理装置1の制御部11は、同一の対象となる絶縁油を、不可視光源にて撮像した第2画像を取得する
【0076】
情報処理装置1の制御部11は、可視光源にて撮像した画像及び不可視光源にて撮像した第2画像をキーイングする(S402)。情報処理装置1の制御部11は、実施形態1のS102と同様に、可視光源にて撮像した画像及び、不可視光源にて撮像した第2画像をキーイングの処理を行い、絶縁油が注がれている透明容器の背景を除去等する。
【0077】
情報処理装置1の制御部11は、キーイングした画像を学習モデル101に入力し、第2画像を第2学習モデル102に入力する(S403)。情報処理装置1の制御部11は、キーイングした画像(可視光源での撮像画像)を学習モデル101に入力する。これにより、学習モデル101は劣化度を出力する。更に、情報処理装置1の制御部11は、キーイングした第2画像(不可視光源での撮像画像)を第2学習モデル102に入力する。これにより、第2学習モデル102は劣化度を出力する。
【0078】
情報処理装置1の制御部11は、学習モデル101及び第2学習モデル102それぞれが出力した劣化度を取得する(S404)。情報処理装置1の制御部11は、取得した2つの劣化度に基づき絶縁油の再生可否を判定する(S405)。情報処理装置1の制御部11は、例えば、学習モデル101からの劣化度と、第2学習モデル102からの第2劣化度との平均値を算出し、当該平均値に基づき、実施形態1のS105と同様に予め定められている閾値とを比較して、絶縁油の再生可否を判定する。
【0079】
情報処理装置1の制御部11は、判定した絶縁油の再生可否を出力する(S406)。情報処理装置1の制御部11は、実施形態1のS106と同様に判定した絶縁油の再生可否を油入電気機器Dの保守作業者等が保持するスマートホン等の情報端末T、又は表示装置に出力する。
【0080】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0081】
特許請求の範囲に記載されている複数の請求項に関して、引用形式に関わらず、相互に組み合わせることが可能である。特許請求の範囲では、複数の請求項に従属する多項従属請求項が記載されている。特許請求の範囲では、多項従属請求項に従属する多項従属請求項は記載されていないが、多項従属請求項に従属する多項従属請求項を記載してもよい。
【符号の説明】
【0082】
S 絶縁油判定システム、 D 油入電気機器、 T 情報端末、 C 撮像装置、 1 情報処理装置、 11 制御部、 111 取得部、 112 前処理部、 113 判定結果導出部、 114 出力部、 12 記憶部、 P プログラム、 M 記録媒体、 13 通信部、 14 入出力IF、 101 学習モデル(可視光源対応モデル)、 102 第2学習モデル(不可視光源対応モデル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10