(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008393
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ガスタービン用の制御装置、ガスタービン設備、ガスタービンの制御方法及びガスタービンの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
F02C 9/56 20060101AFI20240112BHJP
F02C 7/26 20060101ALI20240112BHJP
F02C 9/28 20060101ALI20240112BHJP
F01D 19/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F02C9/56
F02C7/26 E
F02C9/28 C
F01D19/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110230
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】松本 照弘
(72)【発明者】
【氏名】藤林 邦治
(72)【発明者】
【氏名】新名 裕大
(72)【発明者】
【氏名】久保山 竜介
【テーマコード(参考)】
3G071
【Fターム(参考)】
3G071BA02
3G071CA01
3G071FA02
3G071GA04
3G071HA01
(57)【要約】
【課題】失火を抑制しながらガスタービンを急速に起動することが可能なガスタービン用の制御装置、ガスタービン設備、ガスタービンの制御方法及びガスタービンの制御プログラムを提供する。
【解決手段】ガスタービン用の制御装置は、ガスタービンの運転を制御するための制御装置であって、前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出するための燃料指令値算出部と、前記ガスタービンのロータの昇速率設定値を設定するための昇速率設定部と、を備え、前記昇速率設定部は、前記ガスタービンの起動中、前記燃料指令値算出部で算出される前記燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、前記昇速率設定値を増加させるように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンの運転を制御するための制御装置であって、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出するための燃料指令値算出部と、
前記ガスタービンのロータの昇速率設定値を設定するための昇速率設定部と、
を備え、
前記昇速率設定部は、前記ガスタービンの起動中、前記燃料指令値算出部で算出される前記燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、前記昇速率設定値を増加させるように構成された
ガスタービン用の制御装置。
【請求項2】
前記昇速率設定部は、前記切替タイミングより前の時点において第1昇速率を前記昇速率設定値として設定するとともに、前記切替タイミング以後、前記昇速率設定値を前記第1昇速率よりも大きい第2昇速率まで増加させるように構成された
請求項1に記載のガスタービン用の制御装置。
【請求項3】
前記ガスタービンの起動用モータの出力設定値を設定するためのモータ出力設定部を備え、
前記モータ出力設定部は、前記切替タイミング以後、前記出力設定値を増加させるように構成された
請求項1又は2に記載のガスタービン用の制御装置。
【請求項4】
前記モータ出力設定部は、前記切替タイミングより前の時点において第1出力を前記出力設定値として設定するとともに、前記切替タイミング以後、前記出力設定値を前記第1出力よりも大きい第2出力まで増加させるように構成された
請求項3に記載のガスタービン用の制御装置。
【請求項5】
前記昇速率設定部は、前記切替タイミングより前の時点において第1昇速率を前記昇速率設定値として設定するとともに、前記切替タイミング以後、前記昇速率設定値を前記第1昇速率よりも大きい第2昇速率まで増加させるように構成され、
前記モータ出力設定部は、前記切替タイミングより前の時点において第1出力を前記出力設定値として設定するとともに、前記切替タイミング以後、前記出力設定値を前記第1出力よりも大きい第2出力まで増加させるように構成され、
前記第2昇速率の前記第1昇速率に対する比rAと、前記第2出力の前記第1出力に対する比rBとの比rA/rBが0.8以上1.2以下である
請求項3に記載のガスタービン用の制御装置。
【請求項6】
前記昇速率設定部及び前記モータ出力設定部は、前記切替タイミング以後、前記昇速率設定値及び前記出力設定値を同時に増加させるように構成された
請求項3に記載のガスタービン用の制御装置。
【請求項7】
前記昇速率設定部は、前記切替タイミングの時点から前記ロータの回転数が300rpm増大するまでに、前記昇速率設定値の増加を開始するように構成された
請求項1又は2に記載のガスタービン用の制御装置。
【請求項8】
前記燃料指令値算出部は、前記ガスタービンの起動中、一定値である第1指令値、及び、前記ロータの実回転数と目標回転数との偏差に基づいて算出される第2指令値のうち大きい一方を前記燃料指令値として算出するように構成され、
前記切替タイミングは、前記燃料指令値算出部で算出される前記燃料指令値が前記第1指令値から前記第2指令値に切り替わるタイミングである
請求項1又は2に記載のガスタービン用の制御装置。
【請求項9】
前記燃料指令値算出部は、前記ロータの実回転数及び前記昇速率設定値に基づき前記ロータの前記目標回転数を算出するように構成された
請求項8に記載のガスタービン用の制御装置。
【請求項10】
前記昇速率設定部は、前記ガスタービンの起動中、前記切替タイミングより前の第1時点において第1昇速率を前記昇速率設定値として設定するとともに、前記第1時点より前の第2時点において、前記第1昇速率よりも大きい第3昇速率を前記昇速率設定値として設定するように構成された
請求項8に記載のガスタービン用の制御装置。
【請求項11】
ガスタービンの運転を制御するための制御装置であって、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出するための燃料指令値算出部と、
前記ガスタービンの起動用モータの出力設定値を設定するためのモータ出力設定部と、
を備え、
前記モータ出力設定部は、前記ガスタービンの起動中、前記燃料指令値算出部で算出される前記燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、前記出力設定値を増加させるように構成された
ガスタービン用の制御装置。
【請求項12】
空気を圧縮するための圧縮機と、前記圧縮機からの圧縮空気と燃料との燃焼反応により燃焼ガスを生成するための燃焼器と、前記燃焼器からの前記燃焼ガスにより駆動されるタービンと、を含むガスタービンと、
前記ガスタービンの運転を制御するように構成された請求項1又は11に記載の制御装置と、
を備えるガスタービン設備。
【請求項13】
ガスタービンの運転を制御するための制御方法であって、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出する燃料指令値算出ステップと、
前記ガスタービンのロータの昇速率設定値を設定する昇速率設定ステップと、
を備え、
前記昇速率設定ステップでは、前記ガスタービンの起動中、前記燃料指令値算出ステップで算出される前記燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、前記昇速率設定値を増加させる
ガスタービンの制御方法。
【請求項14】
ガスタービンの運転を制御するための制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出する燃料指令値算出手順と、
前記ガスタービンのロータの昇速率設定値を設定する昇速率設定手順と、
を実行させるように構成され、
前記昇速率設定手順では、前記ガスタービンの起動中、前記燃料指令値算出手順で算出される前記燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、前記昇速率設定値を増加させる
ガスタービンの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービン用の制御装置、ガスタービン設備、ガスタービンの制御方法及びガスタービンの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの起動時には、燃焼器における燃料の着火後、ロータ回転数が所定の回転数(例えば定格回転数)になるまでロータが昇速される。
【0003】
例えば特許文献1には、ガスタービンの起動時において、燃料の着火後に、ガスタービン構成機器の損傷とロータの回転加速度との関係を示す安全度指標に基づいて決定される所定の回転加速度(昇速率)でロータ回転数を上昇させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガスタービンの起動時間を短縮するために、ガスタービン起動中におけるロータの昇速率(回転加速度)を従来に比べて大きな値に設定することが考えられる。しかし、ガスタービンの着火直後の燃料供給量が比較的少ない期間に、ロータの昇速率を従来よりも大きくするために起動用モータ等の出力を従来よりも大きくすると、ロータの回転数が従来よりも大きく上昇して圧縮機における空気吸引量が増加し、これにより燃料空気比(F/A比)が低下して、燃焼器において失火が生じる可能性が高くなる。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、失火を抑制しながらガスタービンを急速に起動することが可能なガスタービン用の制御装置、ガスタービン設備、ガスタービンの制御方法及びガスタービンの制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービン用の制御装置は、
ガスタービンの運転を制御するための制御装置であって、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出するための燃料指令値算出部と、
前記ガスタービンのロータの昇速率設定値を設定するための昇速率設定部と、
を備え、
前記昇速率設定部は、前記ガスタービンの起動中、前記燃料指令値算出部で算出される前記燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、前記昇速率設定値を増加させるように構成される。
【0008】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービン用の制御装置は、
ガスタービンの運転を制御するための制御装置であって、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出するための燃料指令値算出部と、
前記ガスタービンの起動用モータの出力設定値を設定するためのモータ出力設定部と、
を備え、
前記モータ出力設定部は、前記ガスタービンの起動中、前記燃料指令値算出部で算出される前記燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、前記出力設定値を増加させるように構成される。
【0009】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービン設備は、
空気を圧縮するための圧縮機と、前記圧縮機からの圧縮空気と燃料との燃焼反応により燃焼ガスを生成するための燃焼器と、前記燃焼器からの前記燃焼ガスにより駆動されるタービンと、を含むガスタービンと、
前記ガスタービンの運転を制御するように構成された上述の制御装置と、
を備える。
【0010】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの制御方法は、
ガスタービンの運転を制御するための制御方法であって、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出する燃料指令値算出ステップと、
前記ガスタービンのロータの昇速率設定値を設定する昇速率設定ステップと、
を備え、
前記昇速率設定ステップでは、前記ガスタービンの起動中、前記燃料指令値算出ステップで算出される前記燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、前記昇速率設定値を増加させる。
【0011】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの制御プログラムは、
ガスタービンの運転を制御するための制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出する燃料指令値算出手順と、
前記ガスタービンのロータの昇速率設定値を設定する昇速率設定手順と、
を実行させるように構成され、
前記昇速率設定手順では、前記ガスタービンの起動中、前記燃料指令値算出手順で算出される前記燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、前記昇速率設定値を増加させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、失火を抑制しながらガスタービンを急速に起動することが可能なガスタービン用の制御装置、ガスタービン設備、ガスタービンの制御方法及びガスタービンの制御プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る制御装置を含むガスタービン設備の概略構成図である。
【
図2】一実施形態に係る制御装置の概略構成図である。
【
図3】一実施形態に係る制御装置の演算ロジックを示すブロック図である。
【
図4】ガスタービン起動時におけるロータ回転数と昇速率設定値との関係の一例を示すグラフである。
【
図5】ガスタービン起動時におけるロータ回転数と起動用モータの出力設定値との関係の一例を示すグラフである。
【
図6】ガスタービン起動時におけるロータ回転数と昇速率設定値との関係の一例を示すグラフである。
【
図7】ガスタービン起動時における、昇速率設定値、起動用モータの出力設定値、ロータの回転数、燃料指令値、排ガス温度及びロータの実昇速率の時間変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0015】
(ガスタービン設備の構成)
図1は、一実施形態に係る制御装置を含むガスタービン設備の概略構成図である。
図1に示すように、ガスタービン設備100は、ガスタービン1と、ガスタービン1の運転を制御するための制御装置40と、を含む。
【0016】
ガスタービン1は、空気を圧縮するための圧縮機2と、燃料(例えば天然ガス等)を燃焼させて燃焼ガスを発生させるための燃焼器3と、燃焼ガスにより回転駆動されるように構成されたタービン4と、を含む。圧縮機2とタービン4とは、回転シャフト5を介して接続されている。
【0017】
燃焼器3には、燃料(天然ガス等)が供給されるとともに圧縮機2からの圧縮空気が送り込まれるようになっており、この圧縮空気を酸化剤として燃料が燃焼され、燃焼ガスが発生するようになっている。燃焼器3に供給される燃料の流量は、燃料バルブ7によって調整可能になっている。
【0018】
燃焼器3で発生した燃焼ガスはタービン4に導かれ、タービン4を回転駆動させる。タービン4で仕事を終えた燃焼ガスは、排ガスとしてタービン4から排出されるようになっている。なお、タービン4には回転シャフト5を介して発電機(不図示)が連結され、タービン4によって発電機が駆動されて電力が生成されるようになっていてもよい。
【0019】
図1に示すように、ガスタービン1は、起動用モータ6を含んでもよい。起動用モータ6は、ガスタービン1の回転シャフト5に回転動力を与えて、回転シャフト5を回転駆動することが可能である。起動用モータ6は、ガスタービン1の起動時に、ガスタービン1が自らの燃焼エネルギーで自立して回転できるようになるまで、ガスタービン1の回転駆動を補助するように構成されていてもよい。
【0020】
幾つかの実施形態では、回転シャフト5を介してガスタービン1に接続される上述の発電機が、電力供給を受けて起動用モータ6として機能してもよい。この場合、発電機を電動機として回転させるため、静止形周波数変換装置(SFC=Static Frequency Converter)等の周波数変換装置により、可変電圧可変周波数の電力を発電機に供給するようにしてもよい。
【0021】
ガスタービン1は、ガスタービン1の回転シャフト5の回転数(ガスタービン1のロータの回転数)を計測するための回転数計測部8を含んでもよい。回転数計測部8は、エンコーダ等の回転数センサを含んでもよい。回転数計測部8によるロータの回転数の計測値を示す信号が、制御装置40に送られるようになっている。
【0022】
(制御装置の構成)
図2は、一実施形態に係る制御装置40の概略構成図である。
図2に示すように、制御装置40は、燃料指令値算出部42と、昇速率設定部44と、を備える。制御装置40は、モータ出力設定部46及び/又は記憶部48を備えていてもよい。制御装置40は、回転数計測部8から、ロータの回転数の計測値(実回転数)を示す信号を受け取り、該信号を処理するように構成される。制御装置40での演算結果は、燃料バルブ7又は起動用モータ6に送られ、燃料バルブ7又は起動用モータ6は該演算結果に基づき動作するようになっていてもよい。
【0023】
燃料指令値算出部42は、ガスタービン1に与えられる燃料指令値FIを算出するように構成される。この燃料指令値FIに基づいて、燃料バルブ7の開度が調節されるようになっている。制御装置40は、燃料指令値FIに合致するように、燃料バルブ7の開度を調節するように構成されていてもよい。
【0024】
昇速率設定部44は、ガスタービン1の起動中のロータの昇速率設定値を設定するように構成される。昇速率設定部44は、ガスタービン1の起動後の運転中の回転数(定格回転数等)に応じて異なる昇速率設定値を設定するようになっていてもよい。昇速率設定値は、燃料指令値算出部42による燃料指令値FIの演算に用いられるようになっていてもよい。
【0025】
モータ出力設定部46は、ガスタービン1の起動中の起動用モータ6の出力設定値を設定するように構成される。モータ出力設定部46で設定された出力設定値は起動用モータ6に送られ、起動用モータ6は設定された出力が得られるように動作するようになっている。なお、SFC等の周波数変換装置とともに発電機を起動用モータ6として使用する場合、モータ出力設定部46は、起動用モータ6の出力設定値として、周波数変換装置の出力設定値を設定するように構成されてもよい。
【0026】
記憶部48は、制御装置40への入出力や制御装置40での演算結果等を記憶するように構成される。昇速率設定部44は、記憶部48に記憶された昇速率設定値を読み出して設定するように構成されていてもよい。モータ出力設定部46は、記憶部48に記憶された出力設定値を読み出して設定するように構成されていてもよい。記憶部48は、制御装置40を構成する計算機の主記憶装置又は補助記憶装置を含んでもよい。
【0027】
制御装置40は、プロセッサ(CPU等)、主記憶装置(メモリデバイス;RAM等)、補助記憶装置及びインターフェース等を備えた計算機を含む。制御装置40は、インターフェースを介して、回転数計測部8から信号を受け取るようになっている。プロセッサは、このようにして受け取った信号を処理するように構成される。また、プロセッサは、主記憶装置に展開されるプログラムを処理するように構成される。これにより、上述の各機能部(燃料指令値算出部42、昇速率設定部44及びモータ出力設定部46)の機能が実現される。
【0028】
制御装置40での処理内容は、プロセッサにより実行されるプログラムとして実装される。プログラムは、例えば補助記憶装置に記憶されていてもよい。プログラム実行時には、これらのプログラムは主記憶装置に展開される。プロセッサは、主記憶装置からプログラムを読み出し、プログラムに含まれる命令を実行するようになっている。
【0029】
図3は、一実施形態に係る制御装置40の燃料指令値算出部42の演算ロジックを示すブロック図である。燃料指令値算出部42では、ガスタービン1に与えられる燃料指令値FIが算出されて出力される。
【0030】
図3において、符号11はサージ防止制御出力制限器、12はガスタービン回転数信号、14は減算器、16は関数発生器、19は比例演算器、20は低値選択器、21は信号発生器、22は加算器、23は低値選択器、24はガスタービン回転数制御演算出力、25は発電機出力制御演算出力、26はガスタービン排ガス温度制御演算出力、27及び28は信号発生器、29はガスタービン燃料着火指令信号、30はガスタービン失火防止指令信号、31及び32は各信号29及び30がオンの時閉じる接点、33は高値選択器、34はガスタービン制御演算出力(燃料指令値出力)である。
【0031】
符号11~22の部分では、後述するように、ガスタービン1のロータの回転数等に基づいて燃料流量(第2指令値F2)が算出され出力される。ガスタービン回転数制御演算出力24は、ガスタービンが定格回転数付近にある状態での燃料流量を出力する。発電機出力制御演算出力25は、ガスタービン1の発電機が電力系統に接続されこれに対し送電している状態での燃料流量を出力する。ガスタービン排ガス温度制御演算出力26は、ガスタービンのタービン翼等が異常に高温にならないように、ガスタービンの排ガス温度基づき決定される燃料流量を出力する。低値選択器23は、これらの出力のうちの最低値を選択して高値選択器33に出力する。
【0032】
ガスタービン1の起動時においては、上述の出力のうち、符号11~22の部分からの燃料流量(第2指令値F2)が最低値であるため、低値選択器23で選択されて、高値選択器33に出力される。
【0033】
一方、ガスタービン1の起動時においては、ガスタービン燃料着火指令信号29がオン時の信号発生器27の出力あるいはガスタービン失火防止指令信号30がオン時の信号発生器28の出力が高値選択器33に入力される。信号発生器27又は信号発生器28の出力(第1指令値F1)は一定値である。
【0034】
高値選択器33は、複数の入力のうちの最高値を選択して出力する。ガスタービン1の起動時においては、信号発生器27の出力(第1指令値F1)と、符号11~22の部分からの燃料流量(第2指令値F2)のうち大きい方が選択されて、ガスタービン制御演算出力34に出力される。すなわち、ガスタービン1の起動時においては、信号発生器27の出力(第1指令値F1)と、符号11~22の部分からの燃料流量(第2指令値F2)のうち大きい方が燃料指令値FIとして算出される。
【0035】
ここで、符号11~22の部分での演算について説明する。サージ防止制御出力制限器11の出力はガスタービン1の回転数(ロータ回転数)及び圧縮機の吐出圧力によって求められたものである。ガスタービン回転数信号12は、回転数計測部8から受け取った信号(ガスタービン1のロータの実回転数を示す信号)であり、減算器14及び関数発生器16に入力される。
【0036】
関数発生器16は、ガスタービン回転数信号12からロータの実回転数を受け取るとともに、昇速率設定部44(
図2参照)から昇速率設定値を受け取り、ロータの実回転数及び昇速率設定値に基づいて、ガスタービン1のロータの目標回転数を算出する。関数発生器16は、ロータの実回転数に昇速率に応じた回転数増加分を加算したものを目標回転数として算出してもよい。
【0037】
減算器14は、関数発生器16の出力からガスタービン回転数信号12を減算し、比例演算器19の入力とする。比例演算器19においてはこれに内部で設定された係数を乗じ出力する。低値選択器20ではこの比例演算器19の出力と信号発生器21の出力のうち低い方の値を出力する。信号発生器21の出力は通常零であるため、低値選択器20の出力は常に負の値となる。加算器22ではサージ防止制御出力制限器11の出力と低値選択器20の出力とを加えた値を出力する。このようにして、符号11~22の部分では、ガスタービン1の回転数等に基づいて燃料流量に係る出力(第2指令値)が算出される。
【0038】
(ガスタービンの制御フロー)
次に、幾つかの実施形態に係るガスタービン1の制御方法について説明する。なお、以下において、上述の制御装置40を用いて上述のガスタービン1を制御する場合について説明するが、幾つかの実施形態では、他の装置を用いてガスタービンの制御方法を実行するようにしてもよく、あるいは、以下に説明する手順の一部又は全部を手動で行ってもよい。
【0039】
図4及び
図6は、それぞれ、ガスタービン起動時におけるロータ回転数と昇速率設定値との関係の一例を示すグラフである。
図5は、ガスタービン起動時におけるロータ回転数と起動用モータの出力設定値との関係の一例を示すグラフである。
図7は、複数のケース(ケースA~D)についての、ガスタービン起動時における、昇速率設定値、起動用モータの出力設定値、ロータの回転数(実回転数)、燃料指令値、排ガス温度及びロータの実昇速率の時間変化の一例を示すグラフである。
【0040】
なお、
図4~
図7において、R0は、ガスタービン1の着火時(
図7におけるt0の時点)におけるロータの回転数であり、R_ratedは、ガスタービン1の起動後の運転時の回転数(例えば定格回転数)である。なお、ガスタービン1の起動時とは、ガスタービン1のロータの回転が開始してから、ロータ回転数が所定の回転数(例えば定格回転数)に上昇するまでの期間を含む。
【0041】
先ず、従来の典型例であるケースCにおける制御フローについて、
図7を参照して説明する。
【0042】
ケースCでは、時刻t0よりも前の期間は、ガスタービン1のロータは起動用モータ6によって回転駆動されている。このとき、起動用モータ6の出力設定値はM0とされる。
【0043】
時刻t0で燃焼器3にて燃料に着火される。このときのロータ回転数はR0である。時刻t0において、昇速率設定値及び起動用モータ6の出力設定値は、所定の値(例えば、ガスタービン1の起動後の回転数等に応じて予め決められた値)に設定される。ケースCでは、昇速率設定値はA1に、起動用モータ6の出力設定値はM1にそれぞれ設定される。
【0044】
時刻t0以降、燃料指令値算出部42により算出される燃料指令値FIは一定である。すなわち、燃料指令値算出部42によって、上述の第1指令値F1(一定値)と、ロータの回転数等から算出される第2指令値F2のうち、大きい方である第1指令値F1が燃料指令値FIとして算出される。この燃料指令値FIに基づきガスタービン1に燃料が供給され、グラフに示すようにロータ回転数がある程度上昇する。
【0045】
時刻t6において、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる。すなわち、燃料指令値算出部42により算出される燃料指令値FIが、一定値である第1指令値F1から、ロータ回転数等に基づき算出される第2指令値F2に切り替わる。このように、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる時点を切替タイミングと呼ぶ。
【0046】
時刻t6以後も、昇速率設定値はA1に維持され、起動用モータ6の出力設定値はM1に維持される。時刻t6以後、ロータ回転数は、ほぼ一定の傾きで上昇する。この傾きは、昇速率設定値A1に対応する。そして、ロータ回転数が所定の回転数(例えば定格回転数)になるまで、ロータ回転数を上昇させる。
【0047】
次に、一実施形態に係るケースAの制御フローについて説明する。ケースAにおける制御フローは、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング(ケースA,Cではt6の時点)に至るまではケースCと同じであるが、ケースAでは、切替タイミング以後に、昇速率設定部44は、昇速率設定値をA1(第1昇速率)からA2(第2昇速率)に増加させる。
図7のグラフに示す例では、時刻t6(切替タイミングの時点)から時刻t7の間に、昇速率設定値がA1からA2まで増加され、時刻t7以後は昇速率設定値がA2で維持される。
【0048】
なお、昇速率設定部44は、ロータ回転数に基づいて昇速率設定値を決定してもよい。すなわち、
図4に示すように、ロータ回転数がR
A1となるまでは昇速率設定値をA1に設定し、ロータ回転数がR
A1になったら、昇速率設定値をA1からA2まで増加させるようにしてもよい。ここで、R
A1は、切替タイミングとなる回転数以上の回転数である。なお、
図4に示す例では、ロータ回転数がR
A1からR
A2になる間に、昇速率設定値をA1からA2まで増加させるようになっている。
【0049】
上述のケースAでは、切替タイミング以後に設定される昇速率設定値がA2であり、ケースCにおけるA1よりも大きい。よって、ケースAでは、切替タイミング以後におけるロータ回転数の増加の傾きがケースCよりも大きくなる。このため、ロータの回転数が所定回転数に上昇するまでの所要時間が短縮され、ガスタービン1の起動時間が短縮される。
【0050】
また、ガスタービン1の起動時間を短縮すべく、ケースDとして示すように、着火時(時刻t0)から昇速率設定値を比較的大きな値(A2)に設定することも考えられる。しかし、仮に、ケースDのように、昇速率設定値を一律で大きな値(A2)に設定してしまうと、ロータ回転数が急激に大きくなり、圧縮機2における空気吸引量の増加により燃料空気比(F/A比)が低下して、燃焼器3において失火が生じる可能性が高くなる。
図7のグラフにおいて、時刻t0における着火以降、ケースDにおける排ガス温度の上昇量が低いまま低下しているのは、回転数上昇が大きいため、燃料空気比(F/A比)が低下したことに起因していることを示す。
【0051】
これに対し、上述のケースAでは、切替タイミング前は昇速率設定値を比較的低い値(A1)に設定し、燃料指令値の連続的な増加が開始する切替タイミング以後に昇速率設定値を増加させるので、燃料空気比(F/A比)の低下を抑制して失火を抑制することができる。
【0052】
したがって、上述のケースAでは、失火を抑制しながらガスタービンを急速に起動することができる。
【0053】
また、圧縮機2では、所定の回転数域にロータ回転数が保持されると、旋回失速が生じて、翼に損傷が生じる場合がある。この点、上述のケースAでは、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後の昇速率設定値を比較的大きくするので、圧縮機2において旋回失速が生じる回転数域を速やかに通過可能となる。よって、圧縮機における旋回失速を抑制しながら、ガスタービンを急速に起動することができる。
【0054】
幾つかの実施形態では、例えば上述のケースAのように、切替タイミングより前の時点において第1昇速率A1が昇速率設定値として設定され、切替タイミング以後に昇速率設定値が第2昇速率A2まで増加される。幾つかの実施形態では、第2昇速率A2の第1昇速率に対する比rA(rA=A2/A1)は1.2以上又は1.5以上であってもよい。
【0055】
このように、切替タイミング以後に、ロータの昇速率設定値を、切替タイミング前の値(第1昇速率A1)から第2昇速率A2まで増加させることにより、燃料空気比の低下による失火をより効果的に抑制しながら、比較的短時間でガスタービン1を起動させることができる。
【0056】
図7におけるケースAでは、切替タイミング以後に、モータ出力設定部46は、起動用モータ6の出力設定値をM1(第1出力)からM2(第2出力)に増加させる。
図7のグラフに示す例では、時刻t6(切替タイミングの時点)から時刻t7の間に、出力設定値がM1からM2まで増加され、時刻t7以後は出力設定値がM2で維持される。
【0057】
なお、モータ出力設定部46は、ロータ回転数に基づいて出力設定値を決定してもよい。すなわち、
図5に示すように、ロータ回転数がR
M1となるまでは出力設定値をM1に設定し、ロータ回転数がR
M1になったら、出力設定値をM1からM2まで増加させるようにしてもよい。ここで、R
M1は、切替タイミングとなる回転数以上の回転数である。なお、
図5に示す例では、ロータ回転数がR
M1からR
M2になる間に、出力設定値をM1からM2まで増加させるようになっている。
【0058】
上述のケースAでは、ガスタービン1の起動中、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後、起動用モータ6の出力設定値を増加させる。このように、切替タイミング以後に、昇速率設定値とともに起動用モータの出力設定値を増加させることで、燃料指令値の増加を抑えながら、ロータを昇速させることができる。これにより、燃焼器3からタービン4に導入される燃焼ガスの温度上昇を抑制することができる(すなわち、
図7に示す排ガス温度の上昇も抑制される)。よって、高温の燃焼ガスによるタービン構成部品の損傷を抑制しつつ、失火を抑制しながらガスタービン1を急速に起動することができる。
【0059】
幾つかの実施形態では、例えば上述のケースAのように、切替タイミングより前の時点において第1出力M1が起動用モータ6の出力設定値として設定され、切替タイミング以後に該出力設定値が第2出力M2まで増加される。幾つかの実施形態では、第2出力M2の第1出力に対する比rB(rB=M2/M1)は1.2以上又は1.5以上であってもよい。
【0060】
このように、切替タイミング以後に、起動用モータ6の出力設定値を、切替タイミング前の値(第1出力M1)から第2出力M2まで増加させることにより、燃焼器3からタービン4に導入される燃焼ガスの温度上昇を効果的に抑制することができる。よって、高温の燃焼ガスによるタービン構成部品の損傷を効果的に抑制しつつ、失火を抑制しながらガスタービン1を急速に起動することができる。
【0061】
幾つかの実施形態では、上述の第2昇速率A2の第1昇速率A1に対する比rAと、第2出力M2の第1出力M1に対する比rBとの比rA/rBが0.8以上1.2以下である。
【0062】
上述の実施形態では、ガスタービン1の起動中、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後、昇速率設定値及び起動用モータの出力設定値を同程度だけ増加させる。よって、燃料空気比に低下による失火及び燃焼ガスの温度上昇によるタービン構成部品の損傷を効果的に抑制しながら、ガスタービン1を急速に起動することができる。
【0063】
幾つかの実施形態では、昇速率設定部44及びモータ出力設定部46は、切替タイミング以後、昇速率設定値及び出力設定値を同時に増加させるように構成される。例えば、
図7におけるケースAでは、昇速率設定値及び出力設定値は、時刻t6からt7の間に、同時に増加されるようになっている。
【0064】
上述の実施形態では、ガスタービン1の起動中、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後、昇速率設定値及び起動用モータの出力設定値を同時に増加させる。よって、燃料空気比に低下による失火及び燃焼ガスの温度上昇によるタービン構成部品の損傷を効果的に抑制しながら、ガスタービン1を急速に起動することができる。
【0065】
幾つかの実施形態では、昇速率設定部44は、切替タイミングの時点からロータの回転数が300rpm増大するまでに、昇速率設定値の増加を開始するように構成される。なお、
図7におけるケースAでは、切替タイミングと同時(t6の時点)に、昇速率設定値の増加が開始されている。
【0066】
上述の実施形態では、ガスタービン1の起動中、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後、該切替タイミングの時点からロータの回転数が300rpm増大するまでの短時間の間に昇速率設定値の増加を開始するようにしたので、失火を抑制しながら、より急速にガスタービンを起動させることができる。
【0067】
幾つかの実施形態では、モータ出力設定部46は、切替タイミングの時点からロータの回転数が300rpm増大するまでに、起動用モータ6の出力設定値の増加を開始するように構成される。なお、
図7におけるケースAでは、切替タイミングと同時(t6の時点)に、出力設定値の増加が開始されている。
【0068】
上述の実施形態では、ガスタービン1の起動中、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後、該切替タイミングの時点からロータの回転数が300rpm増大するまでの短時間の間に起動用モータ6の出力設定値の増加を開始するようにしたので、燃焼ガスの温度上昇によるタービン構成部品の損傷を抑制しながら、より急速にガスタービンを起動させることができる。
【0069】
次に、一実施形態に係るケースBの制御フローについて説明する。ケースBにおける制御フローは、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング(ケースAではt6の時点、ケースBではt3の時点)以後に、昇速率設定値がA1(第1昇速率)からA2(第2昇速率)に増加する点はケースAと同じである。
【0070】
ケースBでは、ガスタービン1の起動中、切替タイミング(時刻t3)より前の時点において第1昇速率A1が昇速率設定値として設定され、それよりも前の時点において、第1昇速率A1よりも大きい第3昇速率A3が昇速率設定値として設定される。
図7のグラフに示す例では、ガスタービン1の着火の時点(時刻t0)以後、時刻t1までは昇速率設定値がA3に維持され、時刻t1からt2の間に昇速率設定値がA3からA1に減少される。その後、切替タイミング(時刻t3)を経過後の時刻t4からt5の間に、昇速率設定値がA1からA2に増加している。
【0071】
なお、昇速率設定部44は、ロータ回転数に基づいて昇速率設定値を決定してもよい。すなわち、
図6に示すように、ロータ回転数がR0から増加してR
A3となるまでは昇速率設定値をA3に設定し、ロータ回転数がR
A3になったら、昇速率設定値をA3からA1まで減少させるようにしてもよい。なお、
図6に示す例では、ロータ回転数がR
A3からR
A4になる間に、昇速率設定値をA3からA1まで減少させるようになっている。また、ロータ回転数がR
A4から増加してR
A1となるまでは昇速率設定値をA1に維持し、ロータ回転数がR
A1になったら、昇速率設定値をA1からA2まで増加させるようにしてもよい。なお、
図6に示す例では、ロータ回転数がR
A1からR
A2になる間に、昇速率設定値をA1からA2まで増加させるようになっている。
【0072】
ケースBでは、ガスタービン1の起動中、切替タイミング(時刻t3)より前に比較的低い第1昇速率A1が昇速率設定値として設定される第1時点(時刻t2~t3)よりも前の第2時点(t0~t1)において、第1昇速率A1よりも大きい第3昇速率A3が昇速率設定値として設定される。よって、第3昇速率A3を設定しないケースA等と比べて、ロータの実回転数と目標回転数との偏差に基づく第2指令値F2がより大きな値となる。このため、第2指令値F2が第1指令値F1よりも大きくなる切替タイミングを早めることができ、これにより、ガスタービンのより急速な起動が可能となる。
【0073】
なお、上述の第3昇速率A3は、切替タイミング以後に設定される第2昇速率A2よりも大きくてもよい。これにより、ロータの実回転数と目標回転数との偏差に基づく第2指令値F2がより大きな値となるため、第2指令値F2が第1指令値F1よりも大きくなる切替タイミングをさらに早めることができる。よって、ガスタービンのさらに急速な起動が可能となる。
【0074】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0075】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービン用の制御装置(40)は、
ガスタービン(1)の運転を制御するための制御装置であって、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出するための燃料指令値算出部(42)と、
前記ガスタービンのロータの昇速率設定値を設定するための昇速率設定部(44)と、
を備え、
前記昇速率設定部は、前記ガスタービンの起動中、前記燃料指令値算出部で算出される前記燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、前記昇速率設定値を増加させるように構成される。
【0076】
上記(1)の構成によれば、ガスタービンの起動中、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、ロータの昇速率設定値を増加させる。このように、切替タイミング前は昇速率設定値を比較的低い値に設定し、燃料指令値の連続的な増加が開始する切替タイミング以後に昇速率設定値を増加させるので、燃料空気比(F/A比)の低下を抑制して失火を抑制しながら、比較的短時間でガスタービンを起動させることができる。すなわち、失火を抑制しながらガスタービンを急速に起動することができる。
【0077】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記昇速率設定部は、前記切替タイミングより前の時点において第1昇速率(A1)を前記昇速率設定値として設定するとともに、前記切替タイミング以後、前記昇速率設定値を前記第1昇速率よりも大きい第2昇速率(A2)まで増加させるように構成される。
【0078】
上記(2)の構成によれば、切替タイミング以後に、ロータの昇速率設定値を、切替タイミング前の値(第1昇速率)から第2昇速率まで増加させるようにしたので、燃料空気比の低下による失火をより効果的に抑制しながら、比較的短時間でガスタービンを起動させることができる。
【0079】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記ガスタービン用の制御装置は、
前記ガスタービンの起動用モータの出力設定値を設定するためのモータ出力設定部(46)を備え、
前記モータ出力設定部は、前記切替タイミング以後、前記出力設定値を増加させるように構成される。
【0080】
上記(3)の構成によれば、ガスタービンの起動中、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後、起動用モータの出力設定値を増加させる。このように、切替タイミング以後に、昇速率設定値とともに起動用モータの出力設定値を増加させることで、燃料指令値の増加を抑えながら、ロータを昇速させることができる。これにより、燃焼器からタービンに導入される燃焼ガスの温度上昇を抑制することができる。よって、高温の燃焼ガスによるタービン構成部品の損傷を抑制しつつ、失火を抑制しながらガスタービンを急速に起動することができる。
【0081】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記モータ出力設定部は、前記切替タイミングより前の時点において第1出力(M1)を前記出力設定値として設定するとともに、前記切替タイミング以後、前記出力設定値を前記第1出力よりも大きい第2出力(M2)まで増加させるように構成される。
【0082】
上記(4)の構成によれば、切替タイミング以後に、起動用モータの出力設定値を、切替タイミング前の値(第1出力)から第2出力まで増加させるようにしたので、燃焼器からタービンに導入される燃焼ガスの温度上昇を効果的に抑制することができる。よって、高温の燃焼ガスによるタービン構成部品の損傷を効果的に抑制しつつ、失火を抑制しながらガスタービンを急速に起動することができる。
【0083】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)の構成において、
前記昇速率設定部は、前記切替タイミングより前の時点において第1昇速率を前記昇速率設定値として設定するとともに、前記切替タイミング以後、前記昇速率設定値を前記第1昇速率よりも大きい第2昇速率まで増加させるように構成され、
前記モータ出力設定部は、前記切替タイミングより前の時点において第1出力を前記出力設定値として設定するとともに、前記切替タイミング以後、前記出力設定値を前記第1出力よりも大きい第2出力まで増加させるように構成され、
前記第2昇速率の前記第1昇速率に対する比rAと、前記第2出力の前記第1出力に対する比rBとの比rA/rBが0.8以上1.2以下である。
【0084】
上記(5)の構成によれば、ガスタービンの起動中、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後、昇速率設定値及び起動用モータの出力設定値を同程度だけ増加させるようにしたので、燃料空気比に低下による失火及び燃焼ガスの温度上昇によるタービン構成部品の損傷を効果的に抑制しながら、ガスタービンを急速に起動することができる。
【0085】
(6)幾つかの実施形態では、上記(3)乃至(5)の何れかの構成において、
前記昇速率設定部及び前記モータ出力設定部は、前記切替タイミング以後、前記昇速率設定値及び前記出力設定値を同時に増加させるように構成される。
【0086】
上記(6)の構成によれば、ガスタービンの起動中、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後、昇速率設定値及び起動用モータの出力設定値を同時に増加させるようにしたので、燃料空気比に低下による失火及び燃焼ガスの温度上昇によるタービン構成部品の損傷を効果的に抑制しながら、ガスタービンを急速に起動することができる。
【0087】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記昇速率設定部は、前記切替タイミングの時点から前記ロータの回転数が300rpm増大するまでに、前記昇速率設定値の増加を開始するように構成される。
【0088】
上記(7)の構成によれば、ガスタービンの起動中、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後、該切替タイミングの時点からロータの回転数が300rpm増大するまでの短時間の間に昇速率設定値の増加を開始するようにしたので、失火を抑制しながら、より急速にガスタービンを起動させることができる。
【0089】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、
前記燃料指令値算出部は、前記ガスタービンの起動中、一定値である第1指令値、及び、前記ロータの実回転数と目標回転数との偏差に基づいて算出される第2指令値のうち大きい一方を前記燃料指令値として算出するように構成され、
前記切替タイミングは、前記燃料指令値算出部で算出される前記燃料指令値が前記第1指令値から前記第2指令値に切り替わるタイミングである。
【0090】
上記(8)の構成によれば、ガスタービンの起動中、燃料指令値が、一定値である第1指令値からロータの実回転数と目標回転数との偏差に基づく第2指令値に切り替わる切替タイミング以後に、ロータの昇速率設定値を増加させる。このように、切替タイミング前は昇速率設定値を比較的低い値に設定し、燃料指令値の連続的な増加が開始する切替タイミング以後に昇速率設定値を増加させるので、燃料空気比(F/A比)の低下を抑制して失火を抑制しながら、比較的短時間でガスタービンを起動させることができる。すなわち、失火を抑制しながらガスタービンを急速に起動することができる。
【0091】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記燃料指令値算出部は、前記ロータの実回転数及び前記昇速率設定値に基づき前記ロータの前記目標回転数を算出するように構成される。
【0092】
上記(9)の構成によれば、ロータの目標回転数は、ロータの実回転数及び昇速率設定値に基づき算出されるので、燃料指令値の第2指令値は、ロータの昇速率設定値に応じたものとなる。よって、昇速率設定値に応じて、第2指令値を適切に算出することができる。
【0093】
(10)幾つかの実施形態では、上記(8)又は(9)の構成において、
前記昇速率設定部は、前記ガスタービンの起動中、前記切替タイミングより前の第1時点において第1昇速率(A1)を前記昇速率設定値として設定するとともに、前記第1時点より前の第2時点において、前記第1昇速率よりも大きい第3昇速率(A3)を前記昇速率設定値として設定するように構成される。
【0094】
上記(10)の構成によれば、ガスタービンの起動中、切替タイミング前に比較的低い第1昇速率が昇速率設定値として設定される第1時点よりも前の第2時点において、第1昇速率よりも大きい第3昇速率が昇速率設定値として設定される。よって、ロータの実回転数と目標回転数との偏差に基づく第2指令値が第1指令値よりも大きくなる切替タイミングを早めることができ、これにより、ガスタービンのより急速な起動が可能となる。
【0095】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービン用の制御装置(40)は、
ガスタービンの運転を制御するための制御装置であって、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出するための燃料指令値算出部(42)と、
前記ガスタービンの起動用モータの出力設定値を設定するためのモータ出力設定部(46)と、
を備え、
前記モータ出力設定部は、前記ガスタービンの起動中、前記燃料指令値算出部で算出される前記燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、前記出力設定値を増加させるように構成される。
【0096】
上記(11)の構成によれば、ガスタービンの起動中、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後、起動用モータの出力設定値を増加させる。このように、切替タイミング以後に、起動用モータの出力設定値を増加させることで、燃料指令値の増加を抑えながら、ロータを昇速させることができる。これにより、燃焼器からタービンに導入される燃焼ガスの温度上昇を抑制することができる。よって、高温の燃焼ガスによるタービン構成部品の損傷を抑制することができる。
【0097】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービン設備(100)は、
空気を圧縮するための圧縮機(2)と、前記圧縮機からの圧縮空気と燃料との燃焼反応により燃焼ガスを生成するための燃焼器(3)と、前記燃焼器からの前記燃焼ガスにより駆動されるタービン(4)と、を含むガスタービン(1)と、
前記ガスタービンの運転を制御するように構成された上記(1)乃至(11)の何れか一項に記載の制御装置(40)と、
を備える。
【0098】
上記(12)の構成によれば、ガスタービンの起動中、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、ロータの昇速率設定値を増加させる。このように、切替タイミング前は昇速率設定値を比較的低い値に設定し、燃料指令値の連続的な増加が開始する切替タイミング以後に昇速率設定値を増加させるので、燃料空気比(F/A比)の低下を抑制して失火を抑制しながら、比較的短時間でガスタービンを起動させることができる。すなわち、失火を抑制しながらガスタービンを急速に起動することができる。
【0099】
(13)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの制御方法は、
ガスタービンの運転を制御するための制御方法であって、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出する燃料指令値算出ステップと、
前記ガスタービンのロータの昇速率設定値を設定する昇速率設定ステップと、
を備え、
前記昇速率設定ステップでは、前記ガスタービンの起動中、前記燃料指令値算出ステップで算出される前記燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、前記昇速率設定値を増加させる。
【0100】
上記(13)の方法によれば、ガスタービンの起動中、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、ロータの昇速率設定値を増加させる。このように、切替タイミング前は昇速率設定値を比較的低い値に設定し、燃料指令値の連続的な増加が開始する切替タイミング以後に昇速率設定値を増加させるので、燃料空気比(F/A比)の低下を抑制して失火を抑制しながら、比較的短時間でガスタービンを起動させることができる。すなわち、失火を抑制しながらガスタービンを急速に起動することができる。
【0101】
(14)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの制御プログラムは、
ガスタービンの運転を制御するための制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記ガスタービンに与えられる燃料指令値を算出する燃料指令値算出手順と、
前記ガスタービンのロータの昇速率設定値を設定する昇速率設定手順と、
を実行させるように構成され、
前記昇速率設定手順では、前記ガスタービンの起動中、前記燃料指令値算出手順で算出される前記燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、前記昇速率設定値を増加させる。
【0102】
上記(14)の構成によれば、ガスタービンの起動中、燃料指令値が一定から連続的な増加に切り替わる切替タイミング以後に、ロータの昇速率設定値を増加させる。このように、切替タイミング前は昇速率設定値を比較的低い値に設定し、燃料指令値の連続的な増加が開始する切替タイミング以後に昇速率設定値を増加させるので、燃料空気比(F/A比)の低下を抑制して失火を抑制しながら、比較的短時間でガスタービンを起動させることができる。すなわち、失火を抑制しながらガスタービンを急速に起動することができる。
【0103】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0104】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0105】
1 ガスタービン
2 圧縮機
3 燃焼器
4 タービン
5 回転シャフト
6 起動用モータ
7 燃料バルブ
8 回転数計測部
11 サージ防止制御出力制限器
12 ガスタービン回転数信号
14 減算器
16 関数発生器
19 比例演算器
20 低値選択器
21 信号発生器
22 加算器
23 低値選択器
24 ガスタービン回転数制御演算出力
25 発電機出力制御演算出力
26 ガスタービン排ガス温度制御演算出力
27 信号発生器
28 信号発生器
29 ガスタービン燃料着火指令信号
30 ガスタービン失火防止指令信号
33 高値選択器
34 ガスタービン制御演算出力
40 制御装置
42 燃料指令値算出部
44 昇速率設定部
46 モータ出力設定部
48 記憶部
100 ガスタービン設備