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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083934
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/00 20060101AFI20240617BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240617BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240617BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
C09J153/00
C09J133/04
C09J11/06
C09J11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198032
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 秀平
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DB022
4J040DF031
4J040DM001
4J040JB01
4J040KA26
4J040LA01
4J040LA06
4J040LA08
4J040MA02
4J040MA10
(57)【要約】
【課題】熱溶融させてホットメルト加工することができ、さらに低温タック、保持力、塗工性、低温ラミネート性、耐可塑剤性に優れるホットメルト接着剤の提供。
【解決手段】本発明の課題は、特定のブロック共重合体(A)および粘着付与剤(B)を含み、粘着付与剤(B)は軟化点が70℃以上100℃未満のスチレン系粘着付与剤(B1)および軟化点が110℃以上140℃以下のスチレン系粘着付与剤(B2)を含む、ホットメルト接着剤によって解決される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック共重合体(A)および粘着付与剤(B)を含み、
ブロック共重合体(A)が、アルキル基の炭素数が1~3の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む重合体ブロックとアルキル基の炭素数が4~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む重合体ブロックとのブロック共重合体であり、
ブロック共重合体(A)の重量平均分子量が5万~12万であり、
粘着付与剤(B)は軟化点が70℃以上100℃未満のスチレン系粘着付与剤(B1)および軟化点が110℃以上140℃以下のスチレン系粘着付与剤(B2)を含む、
ホットメルト接着剤。
【請求項2】
前記ブロック共重合体(A)が、メタクリル酸メチルと、アクリル酸n-ブチルおよび/またはアクリル酸2-エチルヘキシルと、のブロック共重合体である、請求項1記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
動的粘弾性測定装置で歪み量0.05% 、周波数10Hzの条件で測定した40℃における貯蔵弾性率E’が100,000Pa 以上である、請求項1記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
さらに酸化防止剤(C)を含み、
酸化防止剤(C)の含有量が、前記ブロック共重合体(A)と粘着付与剤(B)の合計100質量部に対して0質量部を超えて10質量部以下である、
請求項1~3いずれか記載のホットメルト接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘接着シート、粘接着フィルム、粘接着テープ等の、基材層の少なくとも一部の表面上に粘接着層を有する粘接着製品に使用される粘接着剤として、ゴム系粘接着剤やアクリル系粘接着剤等のベースポリマーからなる溶剤型粘接着剤が多用されている。中でも、透明性や耐候性、耐久性に優れることから、アクリル系粘接着剤が広く用いられている。
【0003】
一方、特に最近では、環境規制への対応、防災、人体への悪影響防止等の見地から脱溶剤の動きが強まっており、ホットメルト型粘接着剤が提案されている。中でもアクリル樹脂系のホットメルト型粘接着剤が注目されている。
先行文献1には、重量平均分子量が5万~25万である特定のアクリル系トリブロック共重合体および粘着付与樹脂を特定量含有するホットメルト型の粘接着剤組成物が開示されている。
しかし、記特許文献に記載されるホットメルト型の粘接着剤組成物は、低温タック、保持力、塗工性、低温ラミネート性、耐可塑剤性などにおいてなお改良の余地がある。低温ラミネート性は塩化ビニルなど高温で変形する基材にホットメルト型粘接着剤を密着させることができ、使用基材の選択肢を広げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-203172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、熱溶融させてホットメルト加工することができ、さらに低温タック、保持力、塗工性、低温ラミネート性、耐可塑剤性に優れるホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] ブロック共重合体(A)および粘着付与剤(B)を含み、
ブロック共重合体(A)が、アルキル基の炭素数が1~3の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む重合体ブロックとアルキル基の炭素数が4~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む重合体ブロックとのブロック共重合体であり、
ブロック共重合体(A)の重量平均分子量が5万~12万であり、
粘着付与剤(B)は軟化点が70℃以上100℃未満のスチレン系粘着付与剤(B1)および軟化点が110℃以上140℃以下のスチレン系粘着付与剤(B2)を含む、
ホットメルト接着剤。
[2] 前記ブロック共重合体(A)が、メタクリル酸メチルと、アクリル酸n-ブチルおよび/またはアクリル酸2-エチルヘキシルと、のブロック共重合体である、[1]記載のホットメルト接着剤。
[3] 動的粘弾性測定装置で歪み量0.05% 、周波数10Hzの条件で測定した40℃における貯蔵弾性率E’が100,000Pa 以上である、[1]または[2]記載のホットメルト接着剤。
[4] さらに酸化防止剤(C)を含み、
酸化防止剤(C)の含有量が、前記ブロック重合体(A)と粘着付与剤(B)の合計100質量部に対して0質量部を超えて10質量部以下である、
[1]~[3]いずれか記載のホットメルト接着剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、熱溶融させてホットメルト加工することができ、さらに低温タック、保持力、塗工性、低温ラミネート性、耐可塑剤性に優れるホットメルト接着剤を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
【0009】
本明細書において、「Mw」はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。重量平均分子量は、[実施例]の項に記載の方法にて測定することができる。
また、本明細書において粘着付与剤(B)の軟化点は、JIS K6863:1994『ホットメルト接着剤の軟化点試験方法』に準じて測定した値である。
【0010】
本発明のホットメルト接着剤は、「発明の効果」の段落でも述べたように、熱溶融させてホットメルト加工することができ、さらに低温タック、保持力、塗工性、低温ラミネート性、耐可塑剤性のすべての性能に優れる。一般的なホットメルト接着剤の製品は古くから市場に存在し、個々の性能を満足するようなものはあるが、これらすべての性能を同時に満たすことは難しい。例えば、低温でタック性を持たせるために柔らかい組成にすると、50℃のような高温環境で評価する保持力が低下してしまう。反対に保持力を優先すると低温タック性が悪化してしまう。また、低温タックと低温ラミネート性は似て非なる性能であり、低温タックを有するものが必ずしも低温ラミネート性を有するとは限らない。低温タックは使用する環境温度が5℃のような低温であってもタックを有する性能を指し、低温ラミネート性はホットメルト接着剤をラミネートする一般的な温度(およそ120~180℃程度)と比して90℃のような低温でラミネートしても被着体への転着や基材からの浮き、ホットメルト接着剤の凝集破壊などが起こらない性能を指す。これらの性能においても例えば低温タックを優先して柔らかい組成とすれば、低温ラミネート後に被着体への転着やホットメルト接着剤の凝集破壊が起こると言ったように、両立は困難であった。
【0011】
しかしながら、発明者は鋭意検討の結果、特定の構造と特定の分子量を有するブロック共重合体(A)、特定の構造と特定の軟化点を有する粘着付与剤(B1)、(B2)を用いる事で、上述したような性能を全て満たす事が出来るという驚くべき効果を見出した。
【0012】
≪ホットメルト接着剤≫
本発明のホットメルト接着剤は、ブロック共重合体(A)および粘着付与剤(B)を含む。さらに酸化防止剤(C)を含むことが好ましい。
【0013】
本発明のホットメルト接着剤は、動的粘弾性測定装置で歪み量0.05% 、周波数10Hz、の条件で測定した40℃における貯蔵弾性率E’が100,000Pa 以上であることが好ましい。貯蔵弾性率E’が100,000Pa以上であることによって、保持力が良好となるため好ましい。上限は特に限定されないが、100,000,000Pa以下が好ましい。
【0014】
<ブロック共重合体(A)>
本発明のホットメルト接着剤に含まれるブロック共重合体(A)は、アルキル基の炭素数が1~3の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアルキル基の炭素数が4~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとのブロック共重合体である。
ブロック共重合体(A)としては、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルから形成されるハードセグメント(AH)と、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルから形成されるソフトセグメント(AS)とが、-AH-AS-AH-と結合したトリブロック重合体、-AS-AH-と結合したジブロック重合体などが挙げられる。トリブロック重合体とジブロック重合体を併用しても良い。
【0015】
ブロック共重合体(A)のハードセグメントを形成するための、アルキル基の炭素数が1~3の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、が利用でき、40℃のせん断強度を高める観点で、メタクリル酸メチル(以下MMA)が好ましい。
【0016】
ブロック共重合体(A)のソフトセグメントを形成するための、アルキル基の炭素数が4~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシルが利用でき、低温タックを高める観点で、アクリル酸n-ブチル(以下BA)とアクリル酸2-エチルヘキシル(以下2EHA)の併用が好ましい。
【0017】
ブロック共重合体( A ) としては、クラリティLA2140(MMA-BA/トリブロック共重合体、Mw:6万) 、LA2250(MMA-BA/トリブロック共重合体、Mw:6万)、LA2330(MMA-BA/トリブロック共重合体、Mw:11万)、LK9243(MMA-[BA/2EHA]/トリブロック共重合体、Mw:6万)、KL-LK9333(MMA-[BA/2EHA]/トリブロック共重合体、Mw:8万) 以上、クラレ社製 などが挙げられ、それぞれを単独で使用することもできるし、併用することも可能である。
【0018】
ブロック共重合体( A )の重量平均分子量(Mw)は5万~12万である。Mwが5万~12万であることで、塗工性と保持力を両立できる。5万~10万がより好ましい。
【0019】
前記(A)と(B)の合計100質量%中、ブロック共重合体(A)は、50~95質量%含むことが好ましい。含有率が50~95質量%であることで、保持力と接着強度を両立できる。60~85質量%がより好ましい。
【0020】
<粘着付与剤(B)>
本発明のホットメルト接着剤は、粘着付与剤(B)として、軟化点が70℃以上100℃未満のスチレン系粘着付与剤(B1)および軟化点が110℃以上140℃以下のスチレン系粘着付与剤(B2)を含む。(B1)と(B2)を併用することで、低温タック、保持力、低温ラミネート性が向上する。
スチレン系粘着付与剤を構成するスチレン系樹脂としては、α-メチルスチレン樹脂、α-メチルスチレン/スチレン 共重合系、スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー 共重合系、スチレン系モノマー/α-メチルスチレン/脂肪族系モノマー 共重合系、スチレン系モノマー 単一重合系、スチレン系モノマー /芳香族系モノマー 共重合系などを使用することができる。アクリルブロック共重合体との相溶性と接着性に優れるα-メチルスチレン樹脂が好ましい。
【0021】
本発明のホットメルト接着剤は、粘着付与剤(B)として、(B1)、(B2)以外のその他粘着付与剤を含むことができる。その他粘着付与剤としては、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、キシレンフェノール樹脂、キシレン樹脂、シクロペンタジエン- フェノール樹脂、脂肪族系、芳香族系等の石油樹脂、フェノール- 変性石油樹脂、ロジンエステル、重合ロジン、水添されたロジンエステル及び重合ロジン、低分子量ポリスチレン系樹脂、テルペン樹脂、水添された脂肪族系及び芳香族系等の石油樹脂などが挙げられる。
【0022】
前記(A)と(B)の合計100重量%中、粘着付与剤(B)は、5~50質量%含むことが好ましい。含有率が5~50質量%であることで、接着強度と保持力を両立することができる。15~40質量%がより好ましい。
また、(B)100質量%中の(B1)の含有率は20~80質量%が好ましく、この範囲であることで、低温タック、低温ラミネート性を両立することができる。25~70質量%がより好ましい。
【0023】
<酸化防止剤(C)>
酸化防止剤としては、ラジカル捕捉剤および過酸化物分解剤等が挙げられる。ラジカル捕捉剤としては、フェノール系化合物が挙げられる。過酸化物分解剤としては、リン系化合物等が挙げられる。
【0024】
フェノール系化合物としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリン-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-,C7-C9側鎖アルキルエステル、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、およびトコフェロール等が挙げられる。
【0025】
リン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、および2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
【0026】
酸化防止剤としては安定性と酸化防止効果の観点から、ラジカル捕捉剤であるフェノール系化合物を1種以上用いること好ましく、ラジカル捕捉剤である1種以上フェノール系化合物と過酸化物分解剤である1種以上リン系化合物とを併用することがより好ましい。
【0027】
酸化防止剤(C)の含有量は、前記ブロック重合体(A)と粘着付与剤(B)の合計100質量部に対して0質量部を超えて10質量部以下が好ましい。この範囲であることで接着強度と安定性の両立ができる。0質量部を超えて5質量部以下がより好ましい。
【0028】
本発明のホットメルト接着剤の製造方法は特に限定されず、例えば、前記ブロック重合体(A)と粘着付与剤(B)を180℃に加熱した双腕型混練機へ投入し、加熱しながら溶融混練することによって製造できる。各成分を加える順序、加熱方法等は、特に制限されるものではない。
【0029】
本発明のホットメルト接着剤は、加熱溶融して使用される。接着剤の塗工方法は特に制限されず、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター、スリットコーターなどが挙げられる。塗工厚みは塗工性と接着強度の観点から10~100μmが好ましい。
【0030】
本発明のホットメルト接着剤の180℃における粘度は、1,000~50,000mPa・sが好ましい。3,000~30,000mPa・sがより好ましい。塗工性の観点から、180℃における粘度が上記範囲内にあることが好ましい。
【0031】
本発明のホットメルト接着剤は、紙、セロハン、プラスチック材料、布、木材、および金属等の種々の基材の接着に使用できる。本発明のホットメルト接着剤は可塑剤耐性に優れているので、可塑剤を含む基材の貼り合わせに好適である。
本発明のホットメルト接着剤は、種々の用途に使用できる。また該ホットメルト接着剤からなる接着層は、単体で接着シートとして使用できるし、該接着層を含む積層体も種々の用途に適用できる。例えば、表面保護等の保護用、マスキング用、結束用、包装用、事務用、ラベル用、装飾・表示用、接合用、ダイシングテープ用、シーリング用、防食・防水用、医療・衛生用、ガラス飛散防止用、電気絶縁用、電子機器保持固定用、半導体製造用、光学表示フィルム用、粘着型光学フィルム用、電磁波シールド用、または電気・電子部品の封止材用の粘接着剤、粘着テープ、フィルムまたはシート等が挙げられる。
【実施例0032】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によってその範囲を限定されるものではない。
【0033】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)の測定は、島津製作所社製GPC「LC-GPCシステム」を用い、重量平均分子量(Mw)の決定は、分子量既知のポリスチレンを標準物質とした換算で行うことができる。
装置名:島津製作所社製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を連結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/分
カラム温度 : 40℃
【0034】
<粘着付与剤(B)の軟化点の測定>
JIS K6863:1994『ホットメルト接着剤の軟化点試験方法』に準じて測定した。
【0035】
<粘度の測定>
JIS K 6862(A法)に準じて180℃粘度を測定した。予め加熱浴槽に190℃で溶融させたホットメルト接着剤300gを試験容器に入れ、大気中において棒温度計で充分に撹拌しながら180℃になったところで、B型粘度計(東機産業(株)製 TOKIMEC VISCOMETER MODEL:BM)を用いて測定した。ローターは、試料に応じて適当なものを用いた。
【0036】
実施例及び比較例で用いた原料および混合物は以下のとおりである。
【0037】
[ブロック共重合体(A)]
LA2330:MMA-BAのトリブロック共重合体(クラレ製、製品名:クラリティLA2330、Mw:11万)
LA2250:MMA-BAのトリブロック共重合体(クラレ製、製品名:クラリティLA2250、Mw:6万)
LA2140:MMA-BAのトリブロック共重合体(クラレ製、製品名:クラリティLA2140、Mw:6万)
LK9243:MMA-[BA/2EHA]のトリブロック共重合体(クラレ製、製品名:クラリティLK9243、Mw:6万)
【0038】
[その他アクリル樹脂]
LA3320:MMA-BAのトリブロック共重合体(クラレ製、製品名:クラリティLA3320、Mw:14万)
アクリペットMF:PMMA樹脂(三菱ケミカル製、製品名:アクリペットMF)
【0039】
[粘着付与剤(B)]
(軟化点が70℃以上100℃未満のスチレン系粘着付与剤(B1))
Kristalex3070:α-メチルスチレン樹脂(イーストマンケミカル製、製品名:クリスタレックス3070、軟化点70℃)
Kristalex3085:α-メチルスチレン樹脂(イーストマンケミカル製、製品名:クリスタレックス3085、軟化点85℃)
(軟化点が110℃以上140℃以下のスチレン系粘着付与剤(B2))
Kristalex1120:α-メチルスチレン樹脂(イーストマンケミカル製、製品名:クリスタレックス1120、軟化点120℃)
Kristalex5140:α-メチルスチレン樹脂(イーストマンケミカル製、製品名:クリスタレックス5140、軟化点140℃)
FTR-6110:スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー 共重合系樹脂(三井化学製、製品名:FTR-6110、軟化点110℃)
(その他粘着付与剤)
Kristalex3100:α-メチルスチレン樹脂(イーストマンケミカル製、製品名:クリスタレックス3100、軟化点100℃)
P-100:水素化石油樹脂(荒川化学工業製、製品名:アルコンP-100、軟化点100℃)
【0040】
[酸化防止剤(C)]
Irg B215:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン製、製品名:Irganox B215)
【0041】
<ホットメルト接着剤の製造>
[実施例1]
入江商会製加温ニーダー(PNV-1)にクラリティLA2330を60部、クリスタレックス3070を20部およびクリスタレックス1120を20部仕込み、減圧下で180℃設定4時間溶融混練し、ホットメルト接着剤を得た。
[実施例2~13、比較例1~5]
表1の組成にしたがって、実施例1と同様の方法で、実施例2~13、比較例1~5のホットメルト接着剤を得た。
【0042】
<40℃貯蔵弾性率の測定>
得られたホットメルト接着剤を180℃に加熱溶融し、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート(PET)製)上に、厚さが200μmになるようにアプリケーターで塗工することで接着剤層を形成した。形成した接着剤層を15枚重ね合わせて厚さ3mmの粘弾性測定用シートを作製し、幅5mm、長さ40mmに切り出し、幅5mm厚さ3mm長さ40mmの粘弾性測定用サンプルを作成した。
粘弾性測定装置(UBM社製REOGEL E-4000)にチャック間距離20mmで粘弾性測定用サンプルを取り付け、温度-60~60℃、昇温速度5℃/分、周波数10Hz、歪み0.05%、引張モード条件で測定を行い40℃の貯蔵弾性率E’を測定した。
【0043】
<接着シートの作製>
得られたホットメルト接着剤を180℃に加熱したロールコーターを用いて厚さ38μmの剥離性シート(PET製)上に厚さが50μmになるように、塗工速度5m/分で熱溶融塗工を行い、接着剤層を形成した。次いで、この接着剤層に、2.0mm厚ポリ塩化ビニルシートを貼り合せ、剥離ライナー側から90℃、0.2MPa、3秒の熱ラミネート圧着することで「剥離性シート/接着剤層/ポリ塩化ビニルシート」という構成の接着シートを得た。
【0044】
得られた接着シートを用いて、下記の方法で接着強度、低温タック、耐可塑剤性、保持力、低温ラミネート性、塗工性を評価した。
【0045】
<接着強度>
幅25mm縦100mmの接着シートを準備した。SUS板に接着シートを23℃環境下で貼り合せ、5kgロール2往復で圧着した。23℃、24時間静置後、引張試験機を用いて90度方向に300mm/分の速度で引っ張り、接着強度を測定した。
○:「接着強度が15N/25mm以上。良好。」
△:「接着強度が5N/25mm以上15N/25mm未満。実用可能レベル。」
×:「接着強度が5N/25mm未満。実用不可。」
【0046】
<低温タック>
幅25mm縦100mmの接着シートを準備した。SUS板に接着シートを5℃環境下で貼り合せ、2kgロール1往復で圧着した。圧着直後、5℃環境下で引張試験機を用いて90度方向に300mm/分の速度で引っ張り、低温タックを測定した。
○:「接着強度が3N/25mm以上。良好。」
△:「接着強度が1N/25mm以上3N/25mm未満。実用可能レベル。」
×:「接着強度が1N/25mm未満。実用不可。」
【0047】
<耐可塑剤性>
幅25mm縦100mmの接着シートを準備した。40℃環境下で240時間静置後、接着シートを取り出し23℃、2時間静置後、引張試験機を用いて90度方向に300mm/分の速度で引っ張り、接着強度を測定した。
○:「接着強度が15N/25mm以上。良好。」
△:「接着強度が5N/25mm以上15N/25mm未満。実用可能レベル。」
×:「接着強度が5N/25mm未満。実用不可。」
【0048】
<保持力>
幅25mm縦100mmの接着シートを準備した。SUS板に2kgの圧着ローラーで一往復させて貼り合わせ、24時間静置(接着部分の面積25mm×20mm)した。50℃環境下にて吊り下げて、PETフィルム端部にせん断方向に荷重200gをかけ、試験片が落下するまでの時間(保持時間)を計測し、保持力を評価した。
○:「保持時間が8時間以上。良好。」
△:「保持時間が6時間以上8時間未満。実用可能レベル。」
×:「保持時間が4時間未満。実用不可。」
【0049】
<低温ラミネート性>
接着強度測定後の接着シートにおいて、基材との密着状態を目視確認し、下記の基準で低温ラミネート性を評価した。
○:「被着体への転着は無く、基材から浮いている部分も無い。良好。」
△:「被着体への転着は無いが、基材から浮いている部分有り。実用可能レベル。」
×:「被着体への転着が見られる。実用不可。」
【0050】
<塗工性>
得られたホットメルト接着剤を180℃に加熱したロールコーターを用いて厚さ38μmの剥離性シート(PET製)上に厚さが50μmになるように塗工速度30m/分で熱溶融塗工を行った。塗工物塗面の塗工抜けを目視で観察し、下記の基準で塗工性を評価した。なお、塗工抜けとは塗布欠損による小さな穴のことである。
○:「塗工物塗面に塗工抜けが無い。良好。」
△:「塗工物塗面に1~10個/mの塗工抜けが見られる。実用可能レベル。」
×:「塗工物塗面に11個/m以上の塗工抜けが見られる。実用不可。」
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】