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特開2024-83938変性数珠状シリカ、硬化性組成物、硬化膜、および積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083938
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】変性数珠状シリカ、硬化性組成物、硬化膜、および積層体
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/04 20060101AFI20240617BHJP
   C08G 77/48 20060101ALI20240617BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
C08G77/04
C08G77/48
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198039
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】金谷 慎吾
【テーマコード(参考)】
4F100
4J246
【Fターム(参考)】
4F100AA20A
4F100AG00B
4F100AK01B
4F100AK03B
4F100AK25B
4F100AK42B
4F100AK45B
4F100AT00
4F100BA02
4F100CC10A
4F100DE06A
4F100DJ10A
4F100EH462
4F100EH46A
4F100JN18A
4J246AA18
4J246BB022
4J246BB02X
4J246BB131
4J246BB13X
4J246BB341
4J246BB34X
4J246FD09
4J246GC24
4J246HA11
4J246HA12
4J246HA16
4J246HA23
4J246HA32
(57)【要約】
【課題】低屈折率の厚膜を形成することのできる、変性数珠状シリカを提供する。
【解決手段】数珠状シリカゾル(A)100重量部と、2以上のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン(B)1~5重量部との反応物である、変性数珠状シリカ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
数珠状シリカ(A)100重量部と、
2以上のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン(B)1~5重量部との反応物である、
変性数珠状シリカ。
【請求項2】
アルコキシシラン(B)が、1,6-ビス(トリメトキシシリル)-2,5-ジメチルヘキサン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリルエチル)ベンゼン、4,4’-ビス(トリエトキシシリル)-1,1’-ビフェニル、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,4-ビス(トリメトキシシリルエチルメチル)ベンゼン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、およびN,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミンからなる群から選択される1種以上である請求項1に記載の変性数珠状シリカ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の変性数珠状シリカと有機溶媒とを含む硬化性組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の硬化性組成物の硬化物であって、
製膜直後の波長589nmにおける屈折率が1.3以下である硬化膜。
【請求項5】
膜厚が1μm以上である、請求項4に記載の硬化膜。
【請求項6】
基材と、請求項4に記載の硬化膜とを有する積層体。
【請求項7】
基材と、前記基材上に形成された膜厚が1μm以上の硬化膜とを有する積層体であって、
前記硬化膜が数珠状シリカを65~100重量%含み、空隙率が52%以上であり、
波長589nmにおける屈折率が1.3以下である積層体。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性数珠状シリカ、硬化性組成物、硬化膜、および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイ分野やレンズ等の光学部品分野において、表面での反射によって視覚効果が損なわれるという問題がある。これらの反射を低減させるために、ディスプレイ等の表面に低屈折率膜を積層する工夫がなされている。低屈折率膜の材料としては、フッ素系ポリマーやシリカ蒸着材料が一般的に用いられている。しかし、フッ素系ポリマーは屈折率が1.37~1.46程度で反射率低減が不充分であった。また、シリカ蒸着材料は屈折率が1.25~1.35と充分低いものの、膜厚が数百nmレベルであり、厚膜の形成が困難であった。
【0003】
近年、LEDを用いたディスプレイ用途では、三次元的なデバイス構造に適用するため、屈折率が1.30以下で、数ミクロンに厚膜形成可能な低屈折率材料が求められている。
【0004】
特許文献1には、低屈折率膜を形成するための材料として、粒子表面が疎水性官能基で置換された、疎水性ヒュームドシリカ粒子を含むシリカゾル分散液が記載されている。しかしながら、このシリカゾル分散液の硬化膜は薄膜であり、屈折率の低減も十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-124715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低屈折率の厚膜を形成することのできる、変性数珠状シリカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々検討したところ、数珠状シリカと特定のアルコキシシランの、特定の量比での反応物を用いた場合に、低屈折率の厚膜を形成できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、数珠状シリカ(A)100重量部と、2以上のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン(B)1~5重量部との反応物である、変性数珠状シリカに関する。
【0009】
アルコキシシラン(B)が、1,6-ビス(トリメトキシシリル)-2,5-ジメチルヘキサン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリルエチル)ベンゼン、4,4’-ビス(トリエトキシシリル)-1,1’-ビフェニル、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,4-ビス(トリメトキシシリルエチルメチル)ベンゼン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、及びN,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミンからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、前記変性数珠状シリカと有機溶媒とを含む硬化性組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、前記硬化性組成物の硬化物であって、製膜直後の波長589nmにおける屈折率が1.3以下である硬化膜に関する。
【0012】
前記硬化膜は、膜厚が1μm以上であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、基材と、前記硬化膜とを有する積層体に関する。
【0014】
また、本発明は、基材と、前記基材上に形成された膜厚が1μm以上の硬化膜とを有する積層体であって、硬化膜が数珠状シリカを65~100重量%含み、空隙率が52%以上であり、波長589nmにおける屈折率が1.3以下である積層体に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の変性数珠状シリカにより形成される硬化膜は、耐久性が高く、屈折率が低い。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<<変性数珠状シリカ>>
本発明の変性数珠状シリカは、数珠状シリカ(A)100重量部と、2以上のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン(B)1~5重量部との反応物であることを特徴とする。
【0017】
<数珠状シリカ(A)>
数珠状シリカは、シリカ単粒子が数個~十数個、数珠状につながったものをいう。数珠状シリカを用いることにより、変性数珠状シリカの硬化物の空隙率を増大し、屈折率を低減することができる。数珠状シリカを構成するシリカ単粒子の数は3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。数珠状シリカに含まれるシリカ単粒子は直鎖状であってもよいし、分枝鎖状であってもよい。また、数珠状シリカは、溶媒に分散されたゾル状態であることが好ましい。
【0018】
数珠状シリカ(A)の平均粒子径は、特に限定されないが、60nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。平均粒子径が60nmを超えると、変性数珠状シリカの硬化物の透明性が悪化することがある。平均粒子径の下限は限定されないが、一般的には5nm以上である。ここで、平均粒子径は、シリカ単粒子の粒子径を指す。
【0019】
数珠状シリカ(A)のゾル状態での粘度は、1~100mPa・Sであることが好ましく、5~50mPa・Sであることがより好ましい。
【0020】
<2以上のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン(B)>
アルコキシシランとして、2以上のアルコキシシリル基を有するものを用いることにより、数珠状シリカ分子間の部分的な架橋を生じさせ、硬化物の空隙率を増大し、屈折率を低減することができる。アルコキシシリル基の数は2以上であるが、2~4が好ましく、2~3がより好ましい。
【0021】
2以上のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン(B)の具体例としては、1,6-ビス(トリメトキシシリル)-2,5-ジメチルヘキサン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリルエチル)ベンゼン、4,4’-ビス(トリエトキシシリル)-1,1’-ビフェニル、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,4-ビス(トリメトキシシリルエチルメチル)ベンゼン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミンが挙げられ、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンが好ましい。
【0022】
<反応物>
変性数珠状シリカは、数珠状シリカ(A)と、2以上のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン(B)との反応物である。この反応物は、例えば、アルコキシシラン(B)が有するアルコキシシリル基の加水分解による水酸基の形成、および、形成された水酸基と、数珠状シリカ(A)上の水酸基との間での縮合反応により生成される。これらの反応は、一段階で行うことができる。反応時の温度条件は特に限定されないが、好ましくは20~100℃、より好ましくは40~60℃である。時間条件は特に限定されないが、好ましくは0.5~24時間、より好ましくは12~18時間である。
【0023】
反応時の数珠状シリカ(A)100重量部に対する2以上のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン(B)の量は、1~5重量部であるが、2~4重量部であることが好ましい。
【0024】
アルコキシシリル基の加水分解と、水酸基間の縮合反応を一段階で行う場合、反応系に水を添加してもよい。水の添加量はアルコキシシラン(B)の合計1モルに対し0.5~5モルが好ましく、1~3モルがより好ましい。
【0025】
数珠状シリカ(A)と、2以上のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン(B)との反応時には、さらに、下記式(I)により表されるアルコキシシランの単量体や、その加水分解縮合物が共存していてもよい。
SiR(I)
(式中、Rは、水素、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいフェニル基である。但し、4つのRのうち少なくとも1個は炭素数1~4のアルコキシ基又は水酸基である。)
【0026】
式(I)における置換基としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリロキシ基、ビニル基、エポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0027】
式(I)により表されるアルコキシシランとしては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルフェノキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メトキシジメチル(フェニル)シラン、トリフェニルメトキシシラン、メトキシ(ジメチル)オクタデシルシラン、メトキシ(ジメチル)-n-オクチルシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0028】
数珠状シリカ(A)と、2以上のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン(B)との反応は、触媒、溶媒等の任意成分の存在下で行ってもよい。触媒としては、特に限定されないが、塩基性触媒、酸性触媒が挙げられる。塩基性触媒としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。酸性触媒としては、例えば、ギ酸、酢酸、氷酢酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等の有機酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等のハロゲン化アルミニウム、硝酸アルミニウム等の無機酸、酸性シリカゲル、酸性シリカゾル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(A)ポリシロキサンの重量平均分子量を向上させるために塩基性触媒を用いることが好ましく、水酸化テトラメチルアンモニウムを用いることがより好ましい。加水分解縮合反応のpH条件はpH9~14が好ましく、pH11~13がより好ましい。触媒の配合量は、特に限定されないが、2以上のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン(B)と式(I)により表されるアルコキシシランとの合計1モルに対して、0.001~0.1モルであることが好ましい。
【0029】
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチル-1-アセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
数珠状シリカ(A)と、2以上のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン(B)との反応により変性数珠状シリカが得られるが、反応終了時の系中には、未反応のアルコキシ基や、アルコキシ基が加水分解した水酸基を有するアルコキシシランが一部残存していてもよい。これらのアルコキシシランは後述する硬化性組成物に持ち込まれてもよい。また、数珠状シリカ(A)と、2以上のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン(B)との反応後に、必要に応じて反応溶液のpHの調整や溶媒の留去を行ってもよい。
【0031】
変性数珠状シリカの平均粒子径は、1~60nmであることが好ましく、5~50nmであることがより好ましい。平均粒子径が60nmを超えると、変性数珠状シリカの硬化物の透明性が悪化することがある。平均粒子径の下限は限定されないが、一般的には5nm以上である。
【0032】
変性数珠状シリカのゾル状態での粘度は、1~100mPa・Sであることが好ましく、5~50mPa・Sであることがより好ましい。
【0033】
<<硬化性組成物>>
本発明の硬化性組成物は、前記変性数珠状シリカと有機溶媒とを含む。硬化性組成物において、変性数珠状シリカは、有機溶媒に分散されたゾル状態であることが好ましい。硬化性組成物中の変性数珠状シリカの配合量は固形分中65~100重量%であることが好ましく、70~100重量%であることがより好ましい。
【0034】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチル-1-アセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
有機溶媒の配合量により、硬化性組成物の固形分率を所望の値に調整できる。硬化性組成物の固形分率は、1~25重量%であることが好ましく、2~20重量%であることがより好ましい。固形分率が1重量%未満であると、成膜性が悪化することがあり、25重量%を超えると、粘度が高すぎるため、成膜が困難となることがある。
【0036】
硬化性組成物は、変性数珠状シリカ、有機溶媒、および必要に応じて後述する任意成分を混合することにより得られる。混合は、撹拌機を用いた撹拌混合や、ロールミルを用いた混練等により行うことができる。各成分の混合順は特に限定されない。混合時の温度は1~60℃が望ましい。
【0037】
<任意成分>
硬化性組成物は、変性数珠状シリカ、有機溶媒に加えて、任意で他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、無機微粒子、導電性高分子、炭素材料、重合開始剤、レベリング剤等が挙げられる。
【0038】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の配合量は、変性数珠状シリカ100重量部に対して1~100重量部が好ましく、5~50重量部がより好ましい。
【0039】
無機微粒子としては、例えば、シリカ、金属酸化物微粒子、窒化物、2種以上の金属元素から構成される複合酸化物、金属酸化物に異種の元素がドープされた化合物等が挙げられる。金属酸化物微粒子として、具体的には、球状シリカ、中空シリカ、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化鉄(Fe、FeO、Fe)、酸化銅(CuO、CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ニオブ(Nb)、酸化モリブデン(MoO)、酸化インジウム(In、InO)、酸化スズ(SnO)、酸化タンタル(Ta)、酸化タングステン(WO、W)、酸化鉛(PbO、PbO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO、Ce)、酸化アンチモン(Sb、Sb)、酸化ゲルマニウム(GeO、GeO)等が挙げられる。これらの無機微粒子の配合量は、変性数珠状シリカ100重量部に対して1~100重量部が好ましく、5~50重量部がより好ましい。
【0040】
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン、これらの誘導体、及び、これらとドーパントとの複合体等が挙げられ、ポリ(3,4-二置換チオフェン)、又は、ポリ(3,4-二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体が好ましい。導電性高分子の配合量は、変性数珠状シリカ100重量部に対して0.5~100重量部が好ましく、1~10重量部がより好ましい。
【0041】
炭素材料としては、特に限定されず、例えば、カーボンナノ材料、グラフェン、フラーレン等が挙げられる。炭素材料の配合量は、変性数珠状シリカ100重量部に対して0.5~100重量部が好ましく、1~10重量部がより好ましい。
【0042】
重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤等を使用できる。
【0043】
レベリング剤としては特に限定されず、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等のシロキサン系化合物;パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素系化合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、プロピレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合体などのポリエーテル系化合物;ヤシ油脂肪酸アミン塩、ガムロジン等のカルボン酸;ヒマシ油硫酸エステル類、リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、コハク酸エステル等のエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイド等のアミド化合物;アクリル系化合物等が挙げられる。レベリング剤の配合量は、硬化性組成物の固形分中0.001~5重量%が好ましく、0.01~1重量%がより好ましい。
【0044】
<<硬化膜>>
本発明の硬化性組成物を基材に塗布した後、乾燥することにより硬化膜が得られる。基材への塗布は、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スリットコート、インクジェットなどの一般的な方法により行うことができる。アルコキシシラン末端の水酸基の脱水縮合を生じさせるために、乾燥温度は60~180℃が好ましく、70~150℃がより好ましい。乾燥時間は2~60分が好ましく、5~30分がより好ましい。
【0045】
基材の材質としては、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。基材の厚みは、特に限定されないが、50~200μmが好ましい。
【0046】
硬化膜は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるため、屈折率が低いという特徴を有する。硬化膜の波長589nmにおける屈折率(nD)は、1.3以下であることが好ましく、1.25以下であることがより好ましく、1.23以下であることがさらに好ましい。波長589nmにおける屈折率が1.3を超えると、硬化物表面における反射低減効果が充分に得られない場合がある。
【0047】
硬化膜の空隙率は特に限定されないが、52%以上であることが好ましく、53%以上であることがより好ましい。空隙率の上限は特に限定されないが一般的に70%以下である。空隙率が52%未満であると屈折率が高くなる傾向があり、70%を超えると硬化膜が脆くなる傾向がある。硬化膜の空隙率は、実施例に記載の評価方法により算出できる。
【0048】
硬化膜の膜厚は1μm以上とすることが好ましく、1.5μm以上とすることがより好ましい。膜厚の上限は特に限定されないが一般的に10μm以下である。
【0049】
本発明の硬化性組成物からなる硬化膜は、変性数珠状シリカを含む網目構造をもつため、基材密着性および耐薬品性に優れる。基材密着性は、JIS K5600の碁盤目剥離試験により評価できる。耐薬品性は、塗膜をアセトンに浸漬した後の外観により、実施例に記載の基準で評価できる。
【0050】
<<積層体1>>
本発明の積層体は、基材と、前記硬化膜とを有する。基材と硬化膜は、上で述べたものを使用できる。積層体は、基材と硬化膜の他に、粘着層、導電層、反射防止層等を有していてもよい。
【0051】
<<積層体2>>
本発明はまた、基材と、膜厚が1μm以上の硬化膜とを有する積層体であって、硬化膜が数珠状シリカを65~100重量%含み、空隙率が52%以上であり、波長589nmにおける屈折率が1.3以下である積層体に関する。
【0052】
基材は、上で述べたものを使用できる。硬化膜は、硬化性組成物を硬化することにより得られる。硬化膜の製造に用いる硬化性組成物は特に限定されないが、上で述べた硬化性組成物を用いることが好ましい。数珠状シリカとして、上で述べた変性数珠状シリカを用いることが好ましい。硬化条件は前述したとおりである。
【0053】
硬化膜の膜厚は1μm以上であるが、2μm以上とすることが好ましい。膜厚の上限は特に限定されないが一般的に10μm以下である。
【0054】
硬化膜中の数珠状シリカの含有量は65~100重量%であるが、70~100重量%であることが好ましく、80~100重量%であることがより好ましい。硬化膜中の数珠状シリカの含有量は、硬化膜を構成する硬化性組成物の固形分に基づき求められる。
【0055】
硬化膜は空隙率が52%以上であり、53%以上であることが好ましい。空隙率の上限は特に限定されないが一般的に70%以下である。硬化膜の波長589nmにおける屈折率は1.3以下であり、1.25以下であることが好ましく、1.23以下であることがより好ましい。
【0056】
本発明の積層体は、低屈折率で膜厚の大きい硬化膜を有するため、光学用途向けの接着層、保護層、帯電防止層に好適に使用できる。具体的には、液晶、有機EL、マイクロLEDなどのディスプレイ部材や、レンズ材料に好適に使用できる。
【実施例0057】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0058】
(1)以下に、実施例及び比較例で使用した各種薬品を示す。
(1-1)シリカゾル
数珠状シリカゾル(日産化学製、PGM-ST-UP)
珠状シリカゾル(日産化学製、PGM-ST)
(1-2)アルコキシシラン
1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(信越化学製、KBM-3066)
トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学製、KBM-9659)
(1-3)溶媒
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)(ダイセル社製)
【0059】
(2)評価方法
(2-1)屈折率
エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム社製、M-2000U)を用いて、硬化膜の波長589nmにおける屈折率を測定した。
【0060】
(2-2)空隙率
先行文献(Applied Optics,1980,19,1425)に記載の下記計算式:
ρ =(n -1)(1-ρ)+1(ρは空隙率、nはシリカの屈折率、nρは屈折率の実測値)
に基づき、シリカの屈折率は1.45として算出した。
【0061】
(2-3)基材密着性
JIS K5600の碁盤目剥離試験により、基材と塗膜との密着性を測定し、下記の基準により評価した。
○:剥離なし(100/100)
×:剥離あり
【0062】
(2-4)耐薬品性
硬化膜を有する積層体をアセトンに25℃で30分間浸漬した。浸漬後の硬化膜の外観を、下記の基準により評価した。
○:変化なし
×:白化
【0063】
(実施例1~3、比較例1~3)
下記表1に記載の重量比でシリカゾルおよびアルコキシシランを混合し、50℃で15時間保温してシリカを変性させた。なお、表1においてシリカゾルの配合量は固形分の重量比を示す。得られた変性シリカと、プロピレングリコールモノメチルエーテルを混合し、固形分が15%となるように調製することにより硬化性組成物を得た。この硬化性組成物を、ガラス製の基板上にバーコーターにより塗布した。80℃で10分間硬化させ、膜厚2μmの硬化膜を形成した。形成された硬化膜の屈折率、空隙率、基材密着性、耐薬品性の評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
比較例1ではアルコキシシランを含まないため硬化膜の密着性と耐薬品性が劣っていた。比較例2では珠状シリカゾルを用いたため、硬化膜の空隙率は低く、屈折率は高かった。比較例3ではアルコキシシランの使用量が多いため変性シリカはゲル化し、塗膜を得ることができなかった。実施例1~3では、基材密着性と耐薬品性が高く、低屈折率の硬化膜が得られた。
【0066】
本開示(1)は数珠状シリカ(A)100重量部と、2以上のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン(B)1~5重量部との反応物である、変性数珠状シリカである。
【0067】
本開示(2)はアルコキシシラン(B)が、1,6-ビス(トリメトキシシリル)-2,5-ジメチルヘキサン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリルエチル)ベンゼン、4,4’-ビス(トリエトキシシリル)-1,1’-ビフェニル、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,4-ビス(トリメトキシシリルエチルメチル)ベンゼン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、およびN,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミンからなる群から選択される1種以上である本開示(1)に記載の変性数珠状シリカである。
【0068】
本開示(3)は、本開示(1)または(2)に記載の変性数珠状シリカと有機溶媒とを含む硬化性組成物である。
【0069】
本開示(4)は、本開示(3)に記載の硬化性組成物の硬化物であって、製膜直後の波長589nmにおける屈折率が1.3以下である硬化膜である。
【0070】
本開示(5)は、膜厚が1μm以上である、本開示(4)に記載の硬化膜である。
【0071】
本開示(6)は、基材と、本開示(4)または(5)に記載の硬化膜とを有する積層体である。
【0072】
本開示(7)は、基材と、前記基材上に形成された膜厚が1μm以上の硬化膜とを有する積層体であって、前記硬化膜が数珠状シリカを65~100重量%含み、空隙率が52%以上であり、波長589nmにおける屈折率が1.3以下である積層体である。