(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083941
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ワーク整列装置及びワーク整列方法
(51)【国際特許分類】
B65G 47/90 20060101AFI20240617BHJP
B65G 59/06 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B65G47/90 A
B65G59/06 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198043
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
【テーマコード(参考)】
3F030
3F072
【Fターム(参考)】
3F030CC01
3F072AA01
3F072GE01
3F072GG10
(57)【要約】
【課題】ワークにピッグテール整形を行って効率的にトレイ内に整列させることが可能なワーク整列装置及び方法を提供する。
【解決手段】本発明のワーク整列方法は、直方体状の本体と、本体から一方に突き出したピッグテールとを有するワークを、トレイの受け部及び溝部に、本体が受け部に収まり、ピッグテールが溝部に収まるようにトレイに並べるワーク整列方法であって、フィードステップS1と、仮整形ステップS2と、切出しステップS3と、固定ステップS4と、本整形ステップS5と、引渡しステップS6と、整列ステップS7とを含む。
【選択図】
図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体状の本体(71)と、前記本体から一方に突き出したピッグテール(72)とを有するワーク(7)を、トレイ(8)の受け部(81)及び溝部(82)に、前記本体が前記受け部に収まり、前記ピッグテールが前記溝部に収まるように前記トレイに並べるワーク整列装置であって、
外部から投入された複数のワークを、ピッグテールが同一方向に突き出し、かつ本体のピッグテール側がワーク進行方向に沿って同じ側になるように並べられた状態で前進させるリニアフィーダ(13)と、
前記リニアフィーダの進行経路の途中に設けられ、互いに対向する第1仮プレス(21)及び第2仮プレス(22)によりワークのピッグテールを両側から挟持して圧力をかけ、ピッグテールの曲がりを真直に近づけるように矯正する仮整形部(2)と、
前記仮整形部に対し前記リニアフィーダの進行方向前方に設けられ、前記仮整形部による矯正後のワークを一つずつ切出す一個切出し部(3)と、
移動テーブル(42)と、
前記移動テーブルに設けられ、前記一個切出し部により切出されたワークが挿入される固定部(411)、及び、前記固定部に挿入されたワークをクランプ固定するクランパ(412)を有する治具部(41)と、
互いに対向する第1プレス(51)及び第2プレス(52)により、前記治具部の前記固定部に固定されたワークから突き出たピッグテールを両側から挟持し、圧力をかけたままピッグテールの長手方向に沿って移動しながらピッグテールが真直に延びるように形状を整える本整形部(5)と、
前記本整形部によりピッグテールの形状が整えられたワークを把持し、前記トレイに並べる配列装置(6)と、
を備えるワーク整列装置。
【請求項2】
直方体状の本体(71)と、前記本体から一方に突き出したピッグテール(72)とを有するワーク(7)を、トレイ(8)の受け部(81)及び溝部(82)に、前記本体が前記受け部に収まり、前記ピッグテールが前記溝部に収まるように前記トレイに並べるワーク整列方法であって、
外部から投入された複数のワークを、ピッグテールが同一方向に突き出し、かつ本体のピッグテール側がワーク進行方向に沿って同じ側になるように並べられた状態でリニアフィーダ(13)上を前進させるフィードステップ(S1)と、
前記リニアフィーダの進行経路の途中に設けられた仮整形部(2)において、互いに対向する第1仮プレス(21)及び第2仮プレス(22)によりワークのピッグテールを両側から挟持して圧力をかけ、ピッグテールの曲がりを真直に近づけるように矯正する仮整形ステップ(S2)と、
前記仮整形部に対し前記リニアフィーダの進行方向前方に設けられた一個切出し部(3)において、前記仮整形ステップ後のワークを一つずつ切出し、移動テーブル(42)に設けられた治具部(41)の固定部(411)に挿入する切出しステップ(S3)と、
前記治具部の前記固定部に挿入されたワークをクランパ(412)によりクランプ固定する固定ステップ(S4)と、
本整形部(5)において、互いに対向する第1プレス(51)及び第2プレス(52)により、前記治具部の前記固定部に固定されたワークから突き出たピッグテールを両側から挟持し、圧力をかけたままピッグテールの長手方向に沿って移動しながらピッグテールが真直に延びるように形状を整える本整形ステップ(S5)と、
前記本整形ステップ後のワークを配列装置(6)に引渡して把持させる引渡しステップ(S6)と、
前記配列装置がワークを前記トレイに並べる整列ステップ(S7)と、
を含むワーク整列方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク整列装置及びワーク整列方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、さまざまなワーク整列装置及びワーク整列方法が知られている。例えば、特許文献1の装置は、吸着ハンド、水平移動部、鉛直移動部及び傾斜部を備え、短い時間で位置精度良く基板を詰替可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータ用ブラシなど、ピッグテール(銅より線)付きワーク用の整列装置では、袋詰めにされた複数のワークをばらして整列させ、形状が異なるピッグテールを整形し、同じ向きに揃えてトレイに並べ、後工程の組付装置に供給する必要がある。
【0005】
このとき、ピッグテール整形がうまくできないという問題に加え、逆向きワークが検知できない、整形過程で生じる粉塵で搬送中のワーク姿勢が安定しない、整形中のピッグテール抜けが検知できない、不揃い状態でチャックするためワーク姿勢が悪い、といった理由でトレイへの投入ミスが多発し、目視によるチェック、ミスワーク入れ直し、不良品選別などの工数増大が問題となっていた。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、ワークにピッグテール整形を行って効率的にトレイ内に整列させることが可能なワーク整列装置及びワーク整列方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<第1態様>
本発明の第1態様は、直方体状の本体(71)と、本体から一方に突き出したピッグテール(72)とを有するワーク(7)を、トレイ(8)の受け部(81)及び溝部(82)に、本体が受け部に収まり、ピッグテールが溝部に収まるようにトレイに並べるワーク整列装置であって、リニアフィーダ(13)と、仮整形部(2)と、一個切出し部(3)と、移動テーブル(42)と、治具部(41)と、本整形部(5)と、配列装置(6)とを備える。
【0008】
リニアフィーダは、外部から投入された複数のワークを、ピッグテールが同一方向に突き出し、かつ本体のピッグテール側がワーク進行方向に沿って同じ側になるように並べられた状態で前進させる。
【0009】
仮整形部は、リニアフィーダの進行経路の途中に設けられ、互いに対向する第1仮プレス(21)及び第2仮プレス(22)によりワークのピッグテールを両側から挟持して圧力をかけ、ピッグテールの曲がりを真直に近づけるように矯正する。
【0010】
一個切出し部は、仮整形部に対しリニアフィーダの進行方向前方に設けられ、仮整形部による矯正後のワークを一つずつ切出す。治具部は、移動テーブルに設けられる固定部(411)、及び、クランパ(412)を有する。一個切出し部により切出されたワークは、固定部に挿入される。クランパは、固定部に挿入されたワークをクランプ固定する。
【0011】
本整形部は、互いに対向する第1プレス(51)及び第2プレス(52)により、治具部の固定部に固定されたワークから突き出たピッグテールを両側から挟持し、圧力をかけたままピッグテールの長手方向に沿って移動しながらピッグテールが真直に延びるように形状を整える。
【0012】
配列装置は、本整形部によりピッグテールの形状が整えられたワークを把持し、トレイに並べる。
【0013】
<第2態様>
本発明の第2態様は、直方体状の本体(71)と、本体から一方に突き出したピッグテール(72)とを有するワーク(7)を、トレイ(8)の受け部(81)及び溝部(82)に、本体が受け部に収まり、ピッグテールが溝部に収まるようにトレイに並べるワーク整列方法であって、フィードステップ(S1)と、仮整形ステップ(S2)と、切出しステップ(S3)と、固定ステップ(S4)と、本整形ステップ(S5)と、引渡しステップ(S6)と、整列ステップ(S7)とを含む。
【0014】
フィードステップでは、外部から投入された複数のワークを、ピッグテールが同一方向に突き出し、かつ本体のピッグテール側がワーク進行方向に沿って同じ側になるように並べられた状態でリニアフィーダ(13)上を前進させる。
【0015】
仮整形ステップでは、リニアフィーダの進行経路の途中に設けられた仮整形部(2)において、互いに対向する第1仮プレス(21)及び第2仮プレス(22)によりワークのピッグテールを両側から挟持して圧力をかけ、ピッグテールの曲がりを真直に近づけるように矯正する。
【0016】
切出しステップでは、仮整形部に対しリニアフィーダの進行方向前方に設けられた一個切出し部(3)において、仮整形ステップ後のワークを一つずつ切出し、移動テーブル(42)に設けられた治具部(41)の固定部(411)に挿入する。
【0017】
固定ステップでは、治具部の固定部に挿入されたワークをクランパ(412)によりクランプ固定する。
【0018】
本整形ステップでは、本整形部(5)において、互いに対向する第1プレス(51)及び第2プレス(52)により、治具部の固定部に固定されたワークから突き出たピッグテールを両側から挟持し、圧力をかけたままピッグテールの長手方向に沿って移動しながらピッグテールが真直に延びるように形状を整える。
【0019】
引渡しステップでは、本整形ステップ後のワークを配列装置(6)に引渡して把持させる。
【0020】
整列ステップでは、配列装置がワークをトレイに並べる。
【0021】
以上の構成により、本発明のワーク整列装置及びワーク整列方法は、ワークにピッグテール整形を行って効率的にトレイ内に整列させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態のピッグテール付きワークの(a)斜視図、(b)略側面図。
【
図5】一実施形態の仮整形部をピッグテールとの直交面からみた図。
【
図6】一実施形態の仮整形部と一個切出し部の斜視図。
【
図7】一実施形態の逆向き検知部とワーク群を示す図。(a)正常に並んだワーク群、(b)1個だけ逆向きに並んだワーク群。
【
図8】一実施形態の1個切り出し部の回転部と待機部の斜視図。
【
図9】一実施形態の1個切り出し部の回転部の(a)回転前の位置、(b)回転後の位置を示す正面図。
【
図10】一実施形態の治具部と移動テーブルの平面図。
【
図11】一実施形態の治具部と移動テーブルの左側面図。
【
図12】一実施形態の治具部を示す(a)右側面略断面図、(b)正面図。
【
図13】一実施形態の(a)クランプ固定時のワーク、(b)クランプ固定後のワークを示す平面図。
【
図15】一実施形態の治具部周辺のピッグテール挟持前の(a)側面図、(b)平面図。
【
図16】一実施形態の治具部周辺のピッグテール整形中の(a)側面図、(b)平面図。
【
図17】一実施形態のピッグテール抜け検知部の斜視図。
【
図19】一実施形態の配列装置のアームの拡大正面断面図。
【
図20】一実施形態のワーク整列方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、一実施形態のワーク整列装置及び方法を図面に基づき説明する。符号付き名称は初出の際、鍵括弧付き(「…」)で示す。
【0024】
<一実施形態>
一実施形態の「ワーク整列装置」は、直方体状の「ワーク7」の「本体71」及び「ピッグテール72」を、「トレイ8」の「受け部81」及び「溝部82」に、本体71が受け部81に収まり、ピッグテール72が溝部82に収まるようにしてトレイ8に並べる装置である。
【0025】
図1に一実施形態において整形及び整列の対象となるピッグテール付きワークを示す。ワーク7は、略直方体状の本体71と、本体71の「基面711」から垂直に延び出るピッグテール72とを有する。以下、本体71の「長手方向Dn」に直交する2つの側面のうちピッグテール72に近い側の側面を「頂面712」とする。本実施形態は、ピッグテール付きワークとして、モータ製造工程におけるピッグテール形状を有するブラシ部材を想定し、例えば
図1(b)のように曲がったピッグテール72を真直にするものである。
図2以下では、ピッグテール付きワークはすべてピッグテール整形後の理想的形状を有するものとして表す。
【0026】
図2及び3に一実施形態においてピッグテール整形後のピッグテール付きワークを整列収納するためのトレイ形状を示す。トレイ8は、ワーク7の本体71を収容可能な受け部81と、ピッグテール72を収容可能な溝部82をそれぞれ複数有し、ピッグテール整形後の形状が整ったワーク7を多数収納して後工程(組付け工程)に供給可能なものである。
【0027】
ワーク整列装置は、「フィーダ1」と、「仮整形部2」と、「一個切出し部3」と、「治具部41」と、「移動テーブル42」と、「本整形部5」と、「配列装置6」とを備える。
【0028】
図4にフィーダ1を示す。フィーダ1は、「ロボットアーム11」と、「ワーク受け12」と、「リニアフィーダ13」とを有する。内側が階段形状にされたボウルのような形状を呈するワーク受け12に、ランダムに袋詰めされたワーク7がまとめて投入されると、ワーク受け12が揺動し、ランダムに重なり合いピッグテール72同士が絡みあった一群のワーク7を解きほぐし、ばらけやすくする。
【0029】
次にロボットアーム11がワーク受け12に投入されたワーク7を1個ずつピックアップし、ワーク7のピッグテール72が天地方向に沿って置かれ、かつ本体71のピッグテール72側が「ワーク進行方向Dw」に沿って同じ側になるように向きを揃え、順にリニアフィーダ13上に並べる。本実施形態ではワーク7の頂面712(
図1、段落0025)が後側になる。リニアフィーダ13は、フィーダ1から仮整形部2を経由して一個切出し部3の「回転室311」まで延びており、これらの並べられたワーク7を互いに当接した状態のまま前進させ、ワーク整列装置の後工程である仮整形部2と一個切出し部3に供給する。
【0030】
図5に仮整形部2を示す。
図5はワーク7の基面711から延び出るピッグテール72を垂直方向からみた図であり、ピッグテール72の頂面712が円形で表されている。複数のワーク7がリニアフィーダ13上に同じ向きに揃えて並べられ、互に当接したままリニアフィーダ13上を一定間隔で前進する。仮整形部2は、複数のワーク7が前進するたびに、「第1仮プレス21」及び「第2仮プレス22」により各ワーク7のピッグテール72を両側から挟持して圧力をかけ、ピッグテール72の向きを所定の向きに矯正する。
【0031】
本実施形態では、最大5個のピッグテール72について一度に圧力をかけることができる。各ピッグテール72は、合わせて5回、「押圧ポイントP1~P5」において、順に以下の押圧処理を受ける。
(1)押圧ポイントP1ではワーク進行方向Dwとの垂直方向の両側から押圧される。
(2)押圧ポイントP2では全方向から押圧され、基面711から直立するように押圧される。このときピッグテール72の理想の中心軸位置に対して均一に圧力がかけられる。
(3)押圧ポイントP3、P4では(1)~(2)で立ち上げられた線を保持するように再びワーク進行方向Dwとの垂直方向両側から押圧される。
(4)押圧ポイントP5では本整形部5の本整形処理を受ける前の許容誤差範囲に入るように押圧され、ピッグテール72の立ち上がり方向がガイドされる。
【0032】
また、第1仮プレス21及び第2仮プレス22は、ばね力により定圧整形が可能に構成されている。このようにワーク7のピッグテール72は、繰り返し圧力を受けることで、当初は大きく変形していたものでも徐々に所定の方向に向けて矯正され、仕上げとしての本整形処理に備える。
【0033】
図6に仮整形部2、及び仮整形部2から接続する一個切出し部3の周辺を示す。なお、本実施形態では、仮整形部2付近に「逆向き検知部23」が併設される。そこで、説明の都合上、まず
図7を参照し、逆向き検知部23について先に説明する。上述の通り、フィーダ1のロボットアーム11はワーク7の向きを判別しながらリニアフィーダ13上に並べていくが、このとき、ワーク7のピッグテール72の向きがワーク進行方向Dwに対して逆向きになってしまうことがある。この場合、仮整形部2の形状と5個のワーク7からなるワーク群の形状が不一致を生じて正常に仮整形ができなくなるおそれがあるため、そのような不具合を検知する必要がある。
【0034】
そこで、逆向き検知部23は、「センサ231」により、前後のワーク7のピッグテール72間のピッチ長さPiが違うことを検出する。
図7(a)のように正常に全てのワーク7が同じ向きになっている場合、センサ231はピッグテール72の存在を検出し、正常と判断する。
【0035】
しかし、
図7(b)のようにワーク群のうち1個のワーク7だけが逆向きに並べられている場合、その箇所と直後箇所のみ、前後のワーク7のピッグテール71間のピッチPiが異なる状態となる。このとき、逆向き検知部23はこれを異常と判定する。なお、
図6~7では、逆向き検知部23は、仮整形部2による仮整形の終了地点直後に設置されているように図示されているが、本来は仮整形前に逆向き検知可能な位置に設置される。
【0036】
再度、
図6を参照する。一個切出し部3は、「回転室311」を有する「回転部31」と、「前室321」を有する「待機部32」と、「プッシャ33」と、「くさび部34」とを有する。ここで、回転室311と前室321は、ちょうどワーク7が長手方向Dn(
図1、段落0025)に1個だけ収まる長さに形成されている。またリニアフィーダ13は、フィーダ1から仮整形部2を経由して一個切出し部3の回転室311直前まで延び出ており、リニアフィーダ13がワーク群を押し出すと、リニアフィーダ13の最終端からワーク群の先頭ワークのみが回転室311に押し出され、ちょうど収まるように形成されている。
【0037】
図8~9に、回転部31と待機部32のみを取り出してワーク7とともに示す。
図9には回転部31の回転動作を示す。仮整形部2を通過したワーク7を、リニアフィーダ13がさらに前進させて回転部31の回転室311に1個挿入する(
図8、9(a))。次に回転部31は「回転方向Dr」に沿って回転して回転室311に挿入されたワーク7をワーク群から切出し、待機部32の前室321と回転部31の回転室311とが連通する位置で停止する(
図9(b))。すると、プッシャ33が、回転部31が回転した後の回転室311のワーク進行方向Dwに沿って移動し、回転室311にあるワーク7を押し出して前室321に挿入する。その後、回転部31が回転方向Drに沿って逆向きに回転して元の位置に戻ると、プッシャ33は、前室321のワーク7をさらにワーク進行方向Dwに沿って移動して押し出し、後述する固定部411に挿入する。
【0038】
ここで、本実施形態では、待機部33に「切出し部清掃部323」が設置されている。本実施形態のワーク7はモータ用のカーボンブラシであるため、一個切出し工程では、ワーク7表面から削られた細かなカーボン粉によりワーク汚れが生じる。切出し部清掃部312はこのカーボン粉を吸引して回収するものである。
図8に示すように、待機部32の表面には切出し部清掃部323が負圧をかけるとカーボン粉が回収されるように「清掃溝部322」が彫りこまれている。清掃溝部32は待機部32の内部を経由して、待機部33に連結された切出し清掃部323内部に連通する。切出し部の清掃作業は、回転部31が回転して回転室311と待機部32の前室321が連通したとき、又は回転部31が逆向きに回転して元に戻ったときなどに行うことができる。
【0039】
図10~11に、治具部41及び移動テーブル42を示す。本実施形態では、移動テーブル42はインデックステーブルであり、また4基の治具部41が移動テーブル42の上下左右に設置される。待機部32の前室321からが押し出されたワーク7は、プッシャ33及びくさび部34により、「本整形ポイントPA」に位置する治具部41にある固定部411に挿入される。「引渡しポイントPB」については後述する。
【0040】
図12~13に、治具部41の細部を示す。治具部41は、固定部411、クランパ412、弾性部材413及び開口部414を有する。固定部411は、前室321から押し出されたワーク7が挿入される空間であり、固定部411の奥の隙間は、ワーク7の本体71の幅よりも小さくなっているため、ワーク7は壁に当接し、それ以上進入できずに停止する。クランパ412は、カムフォロワにより水平面上を回転可能に設置され、弾性部材413の付勢力を得て、固定部411に収容されたワーク7の本体71に当接し、ワーク7を固定部411に押し付け、固定する(クランプ固定)。開口部414は、固定部411への入口に隣接した空間であり、クランパ412を回転させるために一個切出し部3のくさび部34が進入する空間である。
【0041】
以上の構成により、一個切出し部3のプッシャ33が、待機部32の前室321に収まったワーク7を固定部411に押し出す動きに連動し、一個切出し部3のくさび部34も前進して、固定部411に隣接する開口部414に進入し、クランパ412をカムフォロワにより回転させる。これによりクランパ412を固定部411に進入するワーク7から遠ざけ、ワーク7の動きに干渉しないようにする。その後、プッシャ33及びくさび部34が退避すると、クランパ412は弾性部材413に付勢されて固定部411のワーク7をクランプ固定する。
【0042】
本実施形態では、治具部41に「治具部清掃部415」が設置されている。
図14に、治具部清掃部415の構造を示す。段落0038でも述べた通り、本実施形態のワーク7はカーボン製であり、治具部へのワーク固定や本整形の過程においてもワーク7表面から削れたカーボン粉が生じてワーク汚れが生じる。このため、治具部清掃部312はこのようなカーボン粉を吸引回収する。
図14に示した通り、固定部411の奥の狭い空間から治具部清掃部415に連通する空間が形成され、治具部清掃部415が稼働するとワーク汚れの原因となるカーボン粉を吸引方向Dvに沿って吸引して回収することができる。
【0043】
図15~16に、治具部41の固定部411にクランプ固定されたワーク7と、本整形部5の第1プレス51と第2プレス52の位置関係を示す。
図15はピッグテール挟持前の状態を、
図16はピッグテール挟持後の本整形作業を示す。本整形部5は、エアチャック装置Ac(後述する
図17)に第1プレス51と第2プレス52が装着され、互に水平方向に対向しながら接近することにより、固定部411から立ち上がっているピッグテール72を挟持することができる。ストッパ機構St(同じく
図17)が第1プレス51と第2プレス52をピッグテール72の位置で停止させる。これにより、
図15のようにピッグテール72に接近した第1プレス51と第2プレス52が、
図16のようにピッグテール72を全方向から包囲し、圧力をかける。
【0044】
本実施形態では、
図16(a)のようにワーク7のピッグテール72が固定部411上面の部材から突き出た箇所を第1プレス51と第2プレス52が挟み込む。次に、
図16(b)に示すように、第1プレス51と第2プレス52は、ピッグテール72をがっちりと包囲したまま、「本整形方向Dx」に沿って上昇後、ピッグテール72から離れて退避する。このように締め代を設けてピッグテール72をしごくことで、理想的方向になるようにピッグテール72にクセを付け、整形後の形状の安定性を向上させる。
【0045】
また、本実施形態では、本整形部5に、「ピッグテール抜け検知部53」が設置されている。
図17に、ピッグテール抜け検知部53を示す。このように、ピッグテール抜け検知部53は、本整形作業前後に渡って本整形されるピッグテール72を「カメラ部531」で撮影し、ピッグテール72が存在するはずの位置に実際にピッグテール72が存在しているかどうかを確認する。本整形完了後のワーク7にピッグテール72がない場合、ピッグテール抜け検知部53は、これを異常と判定する。
【0046】
図10~11を再び参照する。本整形ポイントPAにある治具部41でワーク7の本整形作業が完了すると、移動テーブル42は、その治具部41を180度回転させて、引渡しポイントPBに移動する。
図10に示したように、移動テーブル42は本実施形態ではおよそ45度傾斜しているため、本整形ポイントPAで(本整形後に)天地方向に直立するピッグテール72は、引渡しポイントPBに移動すると横倒しになり、水平方向に突き出る状態となる。このため、
図18に示す配列装置6は、引渡しポイントPBで受け取ったワーク7を、本体71がトレイ8の受け部81に収まりかつピッグテール72がトレイ8の溝部82に収まる向きにしやすい状態で把持することができる。本実施形態では、配列装置6は2つのアーム61を有し、引渡しポイントPBで受け取ったワーク7を旋回方向Dtに沿って旋回し、トレイ8上方に移動して配列作業を行う。
【0047】
図19に、配列装置のアーム61の細部の例を示す。本実施形態のような複雑な外形を有するワーク7に関しては、従来のチャック装置では安定的に把持することが難しかったが、このようにチャック接触面を多くとる形状とし、さらにばねの弾性力で上下方向へ移動可能な押さえ治具611を追加することで、安定的に把持することを可能にしている。
【0048】
図20に、本実施形態によるワーク整列方法のフローチャートを示す。フィードステップS1は、フィーダ1が、ロボットアーム11でワーク受け12に投入されたワーク群を1個ずつピックアップしてリニアフィーダ13上に並べるステップである。
【0049】
仮整形ステップS2は、仮整形部2が、第1仮プレス21及び第2仮プレス22を用いて仮整形作業を行うステップである。
【0050】
切出しステップは、一個切出し部3により、リニアフィーダ13がフィードする仮整形済みワーク7を回転室311、前室321を経てワーク7を一個切出すステップである。また、固定ステップS4は、一個切出し部3のプッシャ33及びくさび部34を用いて、ワーク7を治具部41の固定部411に押し込み、クランパ412を用いてクランプ固定するステップである。
【0051】
本整形ステップS5は、固定部411にクランプ固定されたワーク7を、本整形部5の第1プレス51及び第2プレス52がピッグテール72を押圧しながら昇降し、しごくようにしてピッグテール72を整形するステップである。
【0052】
引渡しステップS6は、移動テーブル42が治具部41の位置を本整形ポイントPAから後工程である整列ステップS7を担う配列装置6にピッグテール72の本整形完了後のワーク7を引渡しポイントPBに移動するステップである。
【0053】
整列ステップS7は、配列装置6が引渡しステップS6で引渡しされたワーク7を把持して旋回し、トレイ8に本体71がトレイ8の受け部81にピッグテール72がトレイ8の溝部82に収まるように整列させるステップである。
【0054】
以上の構成により、本実施形態のワーク整列装置及びワーク整列方法は、ピッグテール整形を行って効率的にワークをトレイ内に整列させることが可能であり、さらに段落0005で述べたようなその他の課題を解決し、さらに効率性を高めている。
【0055】
<他の実施形態>
上述の実施形態では、ワーク7として、モータ用ブラシを想定した例を紹介した。しかし、ワーク7は上述の例に限られず、直方体状であってピッグテール形状を有するワークであれば適用可能である。
【0056】
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0057】
13 リニアフィーダ、2 仮整形部、21 第1仮プレス、22 第2仮プレス
3 一個切出し部、41 治具部、411 固定部、412 クランパ
42 移動テーブル、5 本整形部、51 第1プレス、52 第2プレス
6 配列装置、7 ワーク、71 本体、72 ピッグテール、8 トレイ
81 受け部、82 溝部