(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083948
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】離型剤塗布装置
(51)【国際特許分類】
B22D 17/20 20060101AFI20240617BHJP
B22C 23/02 20060101ALI20240617BHJP
B05B 7/08 20060101ALI20240617BHJP
B05B 7/14 20060101ALI20240617BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20240617BHJP
【FI】
B22D17/20 D
B22C23/02 D
B05B7/08
B05B7/14
B05B12/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198058
(22)【出願日】2022-12-12
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000153270
【氏名又は名称】株式会社日本高熱工業社
(74)【代理人】
【識別番号】100112531
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 亮
(72)【発明者】
【氏名】渡部 一樹
【テーマコード(参考)】
4E094
4F033
4F035
【Fターム(参考)】
4E094CC55
4E094CC56
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB05
4F033QB12Y
4F033QB16Y
4F033QD02
4F033QD03
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4F033QD20
4F033QD21
4F033QD25
4F033QE05
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4F033QF02X
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4F033QH02
4F033QH04
4F033QH05
4F033QH10
4F035AA04
4F035BA06
4F035BB06
4F035BC02
4F035BC06
(57)【要約】
【課題】 ダイカストマシンの金型内面に液体と粉体を混合させた離型剤を塗布することができる離型剤塗布装置を提供する。
【解決手段】 液体送路1から圧送された液体と、気体送路2から圧送された気体を混合して噴霧するミスト噴出部4と、粉体送路3から圧送された粉体を噴出する粉体噴出部5とを備え、ミスト噴出部4から噴出されたミスト中の液体と粉体噴出部5から噴出された粉体とを空中で混合させた後に金型17,18に塗布するようにしたことを特徴としている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と粉体を混合させた離型剤をダイカストマシンの金型に塗布する離型剤塗布装置であって、
液体供給源から供給される前記液体を圧送する液体送路と、気体供給源から供給される気体を圧送する気体送路と、粉体供給源から供給される前記粉体を圧送する粉体送路と、前記液体送路から圧送された前記液体と前記気体送路から圧送された前記気体を混合して噴霧するミスト噴出部と、前記粉体送路から圧送された前記粉体を噴出する粉体噴出部とを備え、
前記ミスト噴出部から噴出された前記ミスト中の前記液体と前記粉体噴出部から噴出された前記粉体とを空中で混合させた後に前記金型に塗布するようにしたことを特徴とする離型剤塗布装置。
【請求項2】
前記粉体噴出部は、前記ミスト噴出部から噴出された前記ミストに向かって噴出するように該ミスト噴出部に対し角度を設けて設置されていることを特徴とする請求項1記載の離型剤塗布装置。
【請求項3】
前記ダイカストマシンに前記ミスト噴出部及び前記粉体噴出部を前記金型の適宜箇所に移動させる移動手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の離型剤塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストマシンの金型に液体と粉体を混合させた離型剤を塗布する離型剤塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶融したアルミニウム合金などの金属(溶湯)を高速・高圧で金型内に射出して成型するダイカストマシンによる鋳造は、生産性や寸法精度に優れていることから、種々の工業製品の生産に広く用いられている。そして、このようなダイカストマシンを利用する場合、金型から成形品を取り出す際の型離れを容易にする目的、あるいは、金型に流入させる溶湯の焼付きを防止したり、溶湯の保温性を維持して金型への湯流れを良好にする目的で、成型前の金型内面に予め離型剤を塗布しておくといったことが行われている。
【0003】
そして、前述した離型剤として、現在最も一般的なものとして、水性離型剤が使用されている。この水性離型剤が広く利用されている理由としては、特殊な設備装置を必要としない、すなわち、一般的なノズルを用いて塗布することが可能であること、また、ノズルを用いることで金型に対し均一に離型剤を塗布することができ、また、液状であるが故に、塗布装置における詰まり、吐出不足が生じ難いといったことが挙げられる。その反面、水性離型剤は、溶湯の焼付けに対する耐性、低鋳巣性の不足といった問題を有している。
【0004】
そこで、水性離型剤に代わるものとして、粉体離型剤を使用したり(特許文献1)、水性離型剤に粉体を含有させた粉体分散型離型剤を使用する場合(特許文献2)もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-351462号公報
【特許文献2】特開2000-301286号公報
【0006】
もっとも、これらの離型剤は、水性離型剤の問題を解消し得る反面、水性離型剤の利点を享受し得なくなってしまうという問題を有している。ここで、粉体離型剤のケースについて特許文献1を例にみると、特許文献1記載発明は、粉体離型剤をダイカストマシン1のキャビティCへ供給するための機構を別途設けており、その結果、設備に要するコストを上昇させてしまっている。また、特許文献1に記載された発明は、金型に粉体離型剤を均一に塗布するという問題を解決しきれていない。具体的には、特許文献1記載発明は、粉体離型剤を溶湯の供給口96aから射出スリーブ96へ吐出させた後、キャビティCを減圧することで、粉体離型剤をキャビティCへ供給するようにしているが、この方法では、粉体離型剤を供給口96aから真空タンク130に至るまで一方通行的に流入させるため、その流入の際にキャビティCの影となる部位に粉体離型剤を付着させ難いという問題を解消できていない。特に、複雑に入り組んだ金型に使用する場合には、この問題が顕著となって現れる。他方、特許文献2に示されているような粉体分散型離型剤を用いた場合、当該離型剤は比重差のある粉体を液体に分散させている以上、粉体が液体内に沈降してしまうといった欠点を完全には回避することができず、ひいては、金型に塗布される離型剤の不均一化を招いてしまう。また、仮に粉体と液体をしっかりと攪拌し均一化された離型剤を使用したとしても、マシントラブルによる停止時や休日の操業停止時に、搬送路で粉体が再び沈降してしまうことによる詰まりや、吐出部での水分蒸発による閉塞を発生させてしまうおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべく、水性離型剤と粉体離型剤の利点を共有し得る離型剤塗布装置、すなわち、特殊な機構を必要とせず、また、金型に離型剤を均一に塗布することができると共に、離型剤の送路や噴出部に詰まり等の問題を生じさせない離型剤塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明は、液体と粉体を混合させた離型剤をダイカストマシンの金型に塗布する離型剤塗布装置であって、液体供給源から供給される前記液体を圧送する液体送路と、気体供給源から供給される気体を圧送する気体送路と、粉体供給源から供給される前記粉体を圧送する粉体送路と、前記液体送路から圧送された前記液体と前記気体送路から圧送された前記気体を混合して噴霧するミスト噴出部と、前記粉体送路から圧送された前記粉体を噴出する粉体噴出部とを備え、前記ミスト噴出部から噴出された前記ミスト中の前記液体と前記粉体噴出部から噴出された前記粉体とを空中で混合させた後に前記金型に塗布するようにしたことを特徴としている。
【0009】
また、本発明における前記粉体噴出部は、前記ミスト噴出部から噴出された前記ミストに向かって噴出するように該ミスト噴出部に対し角度を設けて設置されていることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明においては、前記ダイカストマシンに前記ミスト噴出部及び前記粉体噴出部を前記金型の適宜箇所に移動させる移動手段を設けることが好ましい。
【0011】
なお、本発明を方法として捉え、液体と粉体を混合させた離型剤をダイカストマシンの金型に塗布する方法であって、液体供給源から供給される前記液体を液体送路によって圧送すると共に、気体供給源から供給される気体を気体送路によって圧送し、これら圧送された前記液体と前記気体を混合させてミスト噴出部から噴出し、他方、粉体供給源から供給される前記粉体を粉体粉体送路によって圧送し、この圧送された前記粉体を粉体噴出部から噴出し、前記ミスト噴出部から噴出された前記ミスト中の前記液体と前記粉体噴出部から噴出された前記粉体とを空中で混合させてから前記金型に塗布するようにしたことに特徴があるとすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ミスト噴出部から噴出されたミスト中の液体と粉体噴出部から噴出された粉体を空中で混合させてから金型に塗布するようにしたことから、水性離型剤と粉体離型剤のそれぞれが有する利点をいずれも享受することができる。具体的には、離型剤を金型に対して均一に付着させることができると共に、離型剤を金型の狙った箇所に適切に付着させることができる。また、液体と粉体が混合した離型剤を塗布するにあたり必要となる特殊な機構が不要である。さらに、粉体分散型離型剤を使用した際に起こり得る送路や噴出部での詰まり等の発生を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】ミスト噴出部及び粉体吐出部が噴霧流及び粉体を噴出する状態を示す模式図。
【
図4】ミスト噴出部及び粉体噴出部を1つにまとめて形成したノズルの側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。本発明は、ダイカストマシンの金型に液体と粉体を混合させた離型剤を塗布する離型剤塗布装置に係るものであり、この離型剤塗布装置は、液体供給源から供給される液体を圧送する液体送路1と、気体供給源から供給される気体を圧送する気体送路2と、粉体供給源から供給される粉体を圧送する粉体送路3と、液体送路1から圧送された液体と気体送路2から圧送された気体を混合して噴霧するミスト噴出部4と、粉体送路3から圧送された粉体を噴出する粉体噴出部5とによって概略構成されている。なお、本発明に係る離型剤塗布装置は、ダイカストマシンに設けられていることを前提としているため、まず、この実施形態におけるダイカストマシンMの構成について簡単に説明しておく。
【0015】
図1は、本実施形態に係るダイカストマシンMの模式図であり、ダイカストマシンMは、次のように概略構成されている。なお、ここでは、位置関係を明確にするため、便宜上、
図1の左側をダイカストマシンMの前側、
図1の右側をダイカストマシンMの後側として説明する。このダイカストマシンMにおいては、基台10上に固定プラテン11、可動プラテン12、リアプラテン13が所定の間隔をもって立設されている。具体的には、ダイカストマシンMの前寄りの位置に固定プラテン11、ダイカストマシンMの略中央部に可動プラテン12、ダイカストマシンMの後端よりの位置にリアプラテン13が立設されている。そして、固定プラテン11と可動プラテン12のそれぞれの四隅には、両者を連結するようにタイバー14が張架され、可動プラテン12とリアプラテン13のそれぞれの四隅には、両者を連結するようにタイバー15が張架されている。また、固定プラテン11及び可動プラテン12の下端と基台10の間に、可動プラテン12を摺動自在に支持するスライド板16が介装されている。さらに、固定プラテン11の内側面には固定型17が、可動プラテン12の内側面には可動型18がそれぞれ固設されている。また、可動プラテン12とリアプラテン13の間には、トグルリンク19が設けられており、このトグルリンク19は、油圧シリンダによって、可動プラテン12を固定プラテン11に対して接近、あるいは離隔し得るようになっている。すなわち、このトグルリンク19によって、可動プラテン12に固設された可動型18を移動させていわゆる型締め、型開きが行えるようになっている。
【0016】
一方、固定型17からダイカストマシンMの前方にかけて射出機構20が形成されている。具体的には、固定プラテン11及び固定型17の下端部であり、その左右方向の中央部に貫通するように溶湯スリーブ21が形成されている。また、溶湯スリーブ21の前端部は、固定プラテン11の前方に突出し、その上面に給湯口21aが開口されている。さらに、射出スリーブ20の前端部に射出シリンダ22が連結されており、この射出シリンダ22内には、先端に射出プランジャ23を備えたプランジャロッド24が設けられている。そして、射出プランジャ23は射出シリンダ22内を摺動可能になっており、射出スリーブ22の給湯口21aから射出スリーブ22内に給湯されたアルミニウム合金等の金属溶湯を加圧して、型締めされた状態の固定型17と可動型18の間に射出して注湯するようになっている。
【0017】
さらに、固定プラテン11の上端には、ロボット25が配置されている。このロボット25には、支持部26に回転自在に連結されたリンク部材27が設けられ、このリンク部材27にアーム28を介して装置ホルダー29が装着されている。そして、装置ホルダー29の先端部に後述する離型剤塗布装置Sのミストノズル30及び粉体吐出ノズル31が複数固着されている。そして、固定型17に対し可動型18が型開きしている状態において、ロボット25のリンク部材27及びアーム28によって、装置ホルダー29を固定型17及び可動型18の間の所定位置に移動させ、ひいては、離型剤塗布装置Sが固定型17及び可動型18の内面の適宜箇所に離型剤を塗布させられるようになっている。すなわち、離型剤塗布装置Sのミストノズル30(ミスト噴出部)及び粉体吐出ノズル31(粉体吐出部)を金型内面の適宜箇所に移動させる移動手段が、ダイカストマシンMに設けられている。
【0018】
次に、上述のダイカストマシンMに設けられている離型剤塗布装置Sについて説明する。
図2は、本実施形態に係る離型剤塗布装置の設置概要図である。この
図2に示されているように、液体を圧送する液体送路1と粉体を圧送する粉体送路3とは、それぞれ別個に独立して存在し、各々が液体及び粉体を圧送している。他方、気体供給源から供給される気体を圧送する気体送路2は、第1気体送路2aと第2気体送路2bに分岐されていて、このうち第2気体送路2bは、粉体送路3に連結されている。これら各送路について、さらに具体的に説明すると、液体送路1は、その上流側が液体供給源としてのタンク35に接続され、下流側が後述するミストノズル30に接続されている。そして、液体送路1の途中には、電磁弁36が設けられている。一方、気体送路2は、上流側が気体供給源としての工場内エアー37に接続されており、これを第1気体送路2aと第2気体送路2bに分岐させ、このうち、第1気体送路2aは、その下流側が後述するミストノズル30に接続されており、第2気体送路2bは、その途中で粉体送路3に接続されている。また、これら第1気体送路2aと第2気体送路2bのそれぞれに上流側から順に圧力調整装置38,40、電磁弁39,41が設けられている。他方、粉体送路3は、その上流側が粉体供給源としての粉体ホッパー42に接続されており、その途中において第2気体送路2bと接続されて一体化している。すなわち、粉体送路3と第2気体送路2bは、それぞれの途中でエジェクタ43を介して一体となり、その下流側が粉体噴出部5に接続されている。なお、この実施形態における粉体送路3(第2気体送路2b)は、下流側でさらに2つに枝分かれし、それぞれが2つの粉体噴出部5,5に接続されている。もっとも、上記実施形態のように、必ず気体送路2を分岐させて粉体送路3に接続しなければならないわけではなく、ミストノズル30と粉体吐出ノズル31のそれぞれに別々の気体送路を設けることも可能である。
【0019】
前記ミスト噴出部4は、この実施形態においては、ミストノズル30によって構成されている。そして、このミストノズル30は、
図3に示されているように、金属により形成された円柱形状の部材で、その先端部はやや径を細くした細径部45になっており、その他端部(上流側端部)には中央部と同径の端嵌部材46が固着されている。また、ミストノズル30の軸方向中央には、貫通状の液体噴出路47が形成されている。さらに、液体噴出路47は、その先端(下流側端)が開口しており、この開口部分が液体の吐出口48になっている一方、液体噴出路47の他端側(上流側端部)である端嵌部材46には、前述の液体送路1と連結させるための連結部49が形成されている。そして、液体送路1の下流端部が連結部49に連結されて、タンク35から圧送された液体が液体送路1を介して液体噴出路47に供給され、最終的に、液体吐出口48から噴出されるようになっている。また、液体噴出路47から外方へやや離れた位置に周回状、すなわち、液体噴出路47の外周をぐるりと囲むように気体噴出路50が形成されている。さらに、気体噴出路50は、その先端(下流側端)が開口されており、この開口部分が気体吐出口51になっている。一方、気体噴出路50の他端側(上流側端部)は、端嵌部材46の手前で途切れている。さらに、ミストノズル30の外周面であり軸方向中央やや上流側に前述の気体送路2と連結させるための連結部52が形成されている。そして、気体送路2の下流側端部が連結部52に連結されて、工場内エアー37から圧送された空気が第1気体送路2aを介して気体噴出路50に供給され、気体噴出路50の気体吐出口51から噴出されるようになっている。なお、液体吐出口48から噴出された液体と気体吐出口51から噴出された空気は、噴出直後に互いに混合して霧状になり、吐出方向に向かって拡がる略円錐形状に噴霧されることになる。なお、この実施形態では、ミスト噴出部4を前述した構成のミストノズル30によって形成しているが、ミストノズル30の細かな構成は自由に設計可能である。また、上述のミスト噴出部4は、液体噴出路、液体吐出口、気体噴出路、気体吐出口を1つのミストノズル30に集約しているが、液体の吐出と気体の吐出をそれぞれ別の部材で行うことも可能である。要するに、ミスト噴出部は、液体と気体を混合しミストとして噴出し得るようになっていればよい。
【0020】
前記粉体噴出部5は、この実施形態においては、粉体吐出ノズル31によって構成されている。この粉体吐出ノズル31は、
図3に示されているように、金属によって形成された管体からなる部材で、その先端(下流側端)が開口しており、この開口部分が粉体吐出口55になっている一方、他端側(上流側端部)が前述の粉体送路3(第2気体送路2b)と連結されている。また、この実施形態における粉体吐出ノズル31は、前述のミスト噴出部4(ミストノズル30)の外方(左右)に2つ配置されている。さらに、粉体吐出ノズル31の先端側が内側(ミストノズル30側)に向かって傾斜しており、粉体が粉体吐出口55から内側に向かって、すなわち、ミストノズル30から噴出したミストに向かって噴出されるようにしている。なお、この実施形態における粉体噴出部5は、ミスト噴出部4と共に、ロボット25の装置ホルダー29に装着されている。
【0021】
なお、本発明における液体とは、主として水およびアルコールや炭化水素などの有機溶媒からなるものを指し、それらに以下の成分が、溶解・乳化・分散された溶液でも良い。上記溶液の成分としては、シリコーンオイル、鉱物油、油脂類、ワックス類、界面活性剤、金属石鹸類、無機塩類、有機酸塩類、増粘剤、防錆剤、防腐剤、塗料等を、一種、もしくは複数種含有していても良い。また、市販の鋳造用離型剤などの製品も本発明における液体として利用可能である。他方、本発明における粉体とは、黒鉛、窒化ホウ素、窒化ケイ素、タルク、マイカ等の無機化合物、有機酸塩、耐熱性樹脂などの有機化合物が利用可能である。また、市販の粉体離型剤などの製品も本発明における粉体として利用可能である。
【0022】
次に上記のように構成された本実施形態における離型剤塗布装置の動作について説明する。まず、液体送路1に設けられている電磁弁36を作動させて液体送路1にタンク35の液体を流入させると共に、気体送路2に設けられている電磁弁40,41を作動させて、気体送路2に工場内エアー37の空気を流入させる。そして、液体送路1の液体は、ミストノズル30の液体噴出路47へと圧送された後、ミストノズル30の液体吐出口48から噴出する。また、気体送路2の空気は、第1気体送路2aと第2気体送路2bで分岐して、それぞれの送路2a,2bの双方に圧送される。このうち、第1気体送路2aの空気は、ミストノズル30の気体噴出路50に到達した後、ミストノズル30の気体吐出口51から噴出する。この時、ミストノズル30の液体吐出口48から噴出した液体と気体吐出口51から噴出した空気は噴出直後に互いに混合して噴霧流となり、この噴霧流は、
図3に示されているように、吐出方向に進むに従って拡がる略円錐形状に噴霧されることになる。他方、第2気体送路2bの空気は、エジェクタ43を通過する際、エジェクタ43の駆動力となって粉体送路3の上流側を真空状態にし、粉体ホッパー42の粉体を粉体送路3へと流入させる。これにより、粉体は、エジェクタ43に吸引されて第2気体送路2b(下流側の粉体送路3)に合流し、第2気体送路2bの空気と共に、粉体吐出ノズル31へ供給され、最終的に、粉体吐出ノズル31の粉体吐出口55から噴出されることになる。なお、粉体吐出口55から噴出された粉体は、粉体吐出ノズル31が内向きに角度を付けて配置されていることから、ミストノズル30から噴出した噴霧流に向かうように飛び出して、噴霧流に空中で混じり合うことになる。そして、最終的に、ダイカストマシンMの金型内面の目的の箇所に液体と粉体が混合した状態の離型剤を付着させることになる。また、前述のとおり、ミストノズル30(ミスト噴出部4)及び粉体吐出ノズル31(粉体吐出部5)は、ダイカストマシンMのロボット25の装置ホルダー29に設けられていることから、ロボット25のアーム28を移動させることにより、離型剤を金型内面の狙った箇所に確実に付着させることができ、仮に金型が複雑に入り組むようなものであっても、金型の影となる部位に離型剤を漏れなく付着させることができる。なお、ミストノズル30から噴出させる噴霧流と粉体吐出ノズル31から噴出させる粉体の噴出タイミングは、任意に選択可能であり、同時に噴出させてもよいが、両者の噴出タイミングをずらすとより効果的である。すなわち、粉体のみでは金型に衝突しても金型に付着することができないため、仮に粉体を液体よりも先に噴出させると、その多くが飛散してしまうことになるが、先に噴霧流を噴出し、この噴霧流に後から粉体を合流させるようにすれば、無駄に飛散してしまう粉体をかなり減少させることができる。また、同様に、ミストノズル30と粉体吐出ノズル31を停止させるタイミングも任意に選択でき、例えば、先に粉体吐出ノズル31を停止させれば、無駄に飛散してしまう粉体を減少させることができる。
【0023】
図4は、ミスト噴出部4と粉体噴出部5を1つの部材(ノズル)にまとめて形成した他の実施形態を示している。なお、この実施形態のものは、前述の実施形態に示したものと多くの部分で構成が一致するため、当該一致部分については、
図4において前述の実施形態と同一符号を付している。この実施形態では、ミストノズル30の先端側の外周面から外方(軸方向と垂直な方向)へ突出する円柱形状の張出部分を形成し、ここに粉体噴出部5を形成している。すなわち、この実施形態では、ミストノズル30の張出部分に前記粉体吐出ノズル31に替わる粉体噴出路81を形成している。ちなみに、粉体噴出路81は、ミストノズル30の張出部分に周回状に形成してもよい。なお、
図4における符号82は、粉体送路3と連結させるための連結部である。このように、ミスト噴出部4と粉体噴出部5を1つの部材にまとめて形成すると、ダイカストマシンMに設けられている前記移動手段の装置ホルダーの取付部に単に嵌合させるのみで装着を完了させることができるという利点がある。
【実施例0024】
表1は、粉体吐出ノズル31を異なる角度で内向きに傾斜させた場合において、いかなる角度が適正かについて試験をした結果を示すものである。なお、ここでの角度は、
図3に示したミストノズル30の中心からその軸方向に延びる仮想線Aと粉体ノズル31の粉体吐出口55の中心から軸方向に延びる仮想線Bとの間の角度θとする。この試験結果によると、ミストノズル30の液体吐出口48と粉体吐出ノズル31の粉体吐出口55が平行となっている0度からやや角度をつけた2度の範囲においては、粉体の飛散が多く生じる結果となった。その傾向は、4度から改善し6度以上になると粉体の飛散・浮遊が少ない混合塗布が実現できている。一方、角度を大きく持たせた25度~20度の範囲では付着膜が不均一となってしまう。その傾向は、18度、16度で改善し、14度以下で均一に成膜することが判明した。
【0025】
【表1】
評価指標
飛散:塗布対象に付着せず飛散・浮遊する粉体を目視評価
〇 飛散・浮遊が少ない
△ 飛散・浮遊がやや多い
× 飛散・浮遊が多い
付着:付着膜の均一性を目視評価
〇 付着範囲内の膜が均一な成膜
△ 付着範囲内の膜がやや不均一
× 付着範囲内の膜が不均一
【0026】
表2は、ミストノズル30の液体吐出口48と粉体吐出ノズル31の粉体吐出口55がどの程度離れていると噴霧流と粉体が良好に混合するかについて試験をした結果を示すものである。この試験結果によると、液体吐出口48と粉体吐出口55が近距離である10mmでは粉体の飛散が多く、また、付着膜が均一にならないことが判明している。その傾向は20mmから改善し、30mm以上で粉体の飛散が少ない混合塗布を実現できている。一方、150mmから飛散がやや多くなり、200mmを超えると飛散が多く、やや不均一な付着状態となることがわかった。
【0027】
【表2】
評価指標
飛散:塗布対象に付着せず飛散・浮遊する粉体を目視評価
〇 飛散・浮遊が少ない
△ 飛散・浮遊がやや多い
× 飛散・浮遊が多い
付着:付着膜の均一性を目視評価
〇 付着範囲内の膜が均一な成膜
△ 付着範囲内の膜がやや不均一
× 付着範囲内の膜が不均一
【0028】
表3は、ミストノズル30から噴出する液体と粉体吐出ノズル31から噴出する粉体の相対的な噴出速度を示す試験結果である。通常においては、離型剤を3~50m/sの速度で金型に向けて噴出するのが一般的である。試験の結果、液体と粉体に速度差が生じる場合、液体と粉体の相対速度は、同速から液体の方が速いと良い結果となることが判明した。すなわち、液体と粉体の噴出速度が同速から液体が4割ほど早い条件では、粉体の飛散が少なく、均一に付着した。これは空間を浮遊する粉体を液体が効率よくキャッチして成膜するためであると考えられる。但し、液体の速度が速くなりすぎる、具体的には、粉体の噴出速度より液体が6割程度速くなると付着膜が不均一になることが判明した。一方、液体が2割ほど遅い条件では粉体の飛散量が増し、それよりも遅くなるほど飛散量が増していくことが判明した。
【0029】
【表3】
評価指標
飛散:塗布対象に付着せず飛散・浮遊する粉体を目視評価
〇 飛散・浮遊が少ない
△ 飛散・浮遊がやや多い
× 飛散・浮遊が多い
付着:付着膜の均一性を目視評価
〇 付着範囲内の膜が均一な成膜
△ 付着範囲内の膜がやや不均一
× 付着範囲内の膜が不均一
【0030】
なお、前記実施形態においては、粉体噴出部が2つ設けられている例を示したが、これに限られるわけではなく、粉体噴出部は1つでも3つ以上であっても本発明の目的を達成することができる。また、前記実施形態では、液体噴出部と粉体噴出部を別々に設けた例を示したが、これに限られるわけではなく、1つの部材にまとめて構成することも可能である。さらに、前記実施形態では、ミストノズルの気体吐出口を周回状、すなわち、全周に亘って開口している例を示したが、比較的数の多い複数の開口を形成するのであれば、必ず周回状でなければならないわけではない。
【0031】
ちなみに、上記実施形態における離型剤塗布装置Sは、装置内に粉体を流通させないで、液体離型剤のみを金型に塗布したり、液体のみを噴射させて金型を冷却することも可能である。