(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083954
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】コイル体、電機子及び回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
H02K3/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198067
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立石 祐介
(72)【発明者】
【氏名】牧田 真治
(72)【発明者】
【氏名】小出 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】林 祐史
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA04
5H603BB01
5H603BB09
5H603BB10
5H603BB12
5H603CA05
5H603CB01
5H603CB23
5H603CC02
5H603CC17
5H603CD02
5H603CE05
5H603FA02
(57)【要約】
【課題】コイル体の占積率を上げる。
【解決手段】コイル体32は、帯部材34と、複数のコイル部16と、を備えている。帯部材34は、絶縁性の材料を用いて周方向に延在するシート状に形成され、径方向に積層されている。複数のコイル部16は、導電性の材料を用いて帯部材34上にそれぞれ形成され、周方向に沿って並んで配置された複数の導体部16Bを有している。一の層の帯部材34上に形成された導体部16Bと他の層の帯部材34上に形成された導体部16Bとが周方向に沿って交互に配置されている。また、一の層の帯部材34上に形成された複数の導体部16Bと他の層の帯部材34上に形成された複数の導体部16Bとが周方向に重なっている。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の材料を用いて周方向に延在するシート状に形成され、径方向に積層されたシート状部材(34)と、
導電性の材料を用いて前記シート状部材上にそれぞれ形成され、周方向に沿って並んで配置された複数の導体部(16B)を有し、一の層の前記シート状部材上に形成された前記導体部と他の層の前記シート状部材上に形成された前記導体部とが周方向に沿って交互に配置されていると共に一の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記導体部と他の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記導体部とが周方向に重なっている構成となっている複数のコイル部(16)と、
を備えたコイル体(32)。
【請求項2】
径方向に隣り合う一の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部及び他の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部の構成であって、
一の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部のパターンと他の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部のパターンとが一致している請求項1に記載のコイル体。
【請求項3】
径方向に隣り合う一の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部及び他の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部の構成であって、
一の層の前記シート状部材上に形成された前記導体部の周方向への幅寸法(W1)が、他の層の前記シート状部材側へ向かうにつれて次第に小さくなっており、
他の層の前記シート状部材上に形成された前記導体部の周方向への幅寸法が、一の層の前記シート状部材側へ向かうにつれて次第に小さくなっている請求項1に記載のコイル体。
【請求項4】
軟磁性材料を用いて前記シート状部材上にそれぞれ形成され、周方向に沿って並んで配置された複数の磁性体部(150)をさらに備えた請求項1に記載のコイル体。
【請求項5】
一の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部及び一の層の前記シート状部材よりも径方向外側に配置された他の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部の構成であって、
一の層の前記シート状部材側から他の層の前記シート状部材側へ向かうにつれて前記導体部の周方向への幅寸法(W1)が次第に大きくなっている請求項1に記載のコイル体。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のコイル体を備えた電機子(14)。
【請求項7】
軟磁性材料を用いて環状に形成された電機子コア(26)をさらに備え、
前記コイル体は、前記電機子コアに沿って配置されており、
前記電機子コアと対向して配置された層の前記シート状部材上に形成された前記導体部と前記電機子コアとが凹凸嵌合している請求項6に記載の電機子。
【請求項8】
請求項1、請求項3、請求項4及び請求項5のいずれか1項に記載のコイル体を備えた電機子(14)において、
軟磁性材料を用いて環状に形成された電機子コア(26)をさらに備え、
前記コイル体は、前記電機子コアに沿って配置されており、
前記電機子コアと対向して配置された層の前記シート状部材上に形成された前記導体部と前記電機子コアに形成された凸部とが凹凸嵌合しており、
前記電機子コアと対向して凹凸嵌合している前記導体部の周方向への幅寸法が、前記電機子コアの前記凸部の周方向への幅寸法よりも小さな寸法に設定されている電機子。
【請求項9】
請求項6に記載の電機子を含んで構成された固定子(14)及び回転子(12)の一方と、
前記コイル体と径方向又は軸方向に対向して配置されたマグネット(18)を有する固定子及び回転子の他方と、
を備えた回転電機(10)。
【請求項10】
前記コイル体と前記マグネットとが対向する径方向への前記導体部の寸法を厚み寸法(T1)とした場合に、
前記マグネット側に配置された層の前記シート状部材上に形成された前記導体部の厚み寸法が、前記マグネットとは反対側に配置された層の前記シート状部材上に形成された前記導体部の厚み寸法よりも小さな寸法に設定されている請求項9に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル体、電機子及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、円筒状基体の外表面上にコイルパターン溝を形成し、このコイルパターン溝に導電体を充填することにより、コイルパターンを円筒状基体上に形成した円筒状コイルが開示されている。この円筒状コイルでは、コイルの真円度や振れの精度を高くすることができる。また、この円筒状コイルを含んで構成された回転電機では、磁気ギャップを小さくすることが可能となり、回転電機の出力や効率を向上させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回転電機の高効率化や高トルク化を図るという観点では、コイル体(円筒状コイル)の占積率を上げることが望ましいが、上記特許文献1に記載された構成にはこの点で改善の余地がある。
【0005】
上記事実を考慮し、コイル体の占積率を上げることを本開示が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するコイル体(32)は、絶縁性の材料を用いて周方向に延在するシート状に形成され、径方向に積層されたシート状部材(34)と、導電性の材料を用いて前記シート状部材上にそれぞれ形成され、周方向に沿って並んで配置された複数の導体部(16B)を有し、一の層の前記シート状部材上に形成された前記導体部と他の層の前記シート状部材上に形成された前記導体部とが周方向に沿って交互に配置されていると共に一の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記導体部と他の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記導体部とが周方向に重なっている構成となっている複数のコイル部(16)と、を備えている。また、上記課題を解決する電機子(14)は、前記コイル体を備えている。また、上記課題を解決する回転電機(10)は、前記電機子を含んで構成された固定子(14)及び回転子(12)の一方と、前記コイル体と径方向又は軸方向に対向して配置されたマグネット(18)を有する固定子及び回転子の他方と、を備えている。
【0007】
この様に構成することで、コイル体の占積率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】モータを示す斜視図であり、モータの一部を切断して示している。
【
図2】モータを分解して示す分解斜視図であり、一部の部品を切断して示している。
【
図7】
図6に示されたコイル部とは異なる構成のコイル部を示す図である。
【
図9】U相の第1コイル群を構成する複数のコイル部とU相の第2コイル群を構成する複数のコイル部とを軸方向にオフセットして図示した模式図である。
【
図13】コイル体を径方向に沿って切断した断面を示す断面図である。
【
図14】第1実施形態のモータのコイル部において、特定の層の帯部材の一部及び当該帯部材上に形成されたコイル部の断面を示す断面図である。
【
図15】第1実施形態のモータのコイル部において、複数の層の帯部材の一部及び複数の層の帯部材上にそれぞれ形成されたコイル部の断面を示す断面図である。
【
図16】第1実施形態のモータのコイル部の製造工程おいて、一の層の帯部材と他の層の帯部材とが重ね合わされる工程を模式的に示す斜視図である。
【
図17】第1実施形態のモータのコイル体における一の層の帯部材及び当該一の層の帯部材と径方向に隣り合う他の層の帯部材を平面状に展開した図である。
【
図18】
図17に示された一の層の帯部材と他の層の帯部材とが重ね合わされた状態を示す図である。
【
図19】第2実施形態のモータのコイル部において、特定の層の帯部材の一部及び当該帯部材上に形成されたコイル部の断面を示す断面図である。
【
図20】第2実施形態のモータのコイル部において、複数の層の帯部材の一部及び複数の層の帯部材上にそれぞれ形成されたコイル部の断面を示す断面図である。
【
図21】第2実施形態のモータのコイル部の製造工程おいて、一の層の帯部材と他の層の帯部材とが重ね合わされる工程を模式的に示す斜視図である。
【
図22】第2実施形態のモータのコイル体における一の層の帯部材及び当該一の層の帯部材と径方向に隣り合う他の層の帯部材を平面状に展開した図である。
【
図23】
図22に示された一の層の帯部材と他の層の帯部材とが重ね合わされた状態を示す図である。
【
図24】第3実施形態のモータのステータを径方向に沿って切断した断面の模式図である。
【
図25】第4実施形態のモータのステータを径方向に沿って切断した断面の模式図である。
【
図26】第5実施形態のモータのステータを径方向に沿って切断した断面の模式図である。
【
図27】第6実施形態のモータのステータを径方向に沿って切断した断面の模式図である。
【
図28】第7実施形態のモータのステータを径方向に沿って切断した断面の模式図である。
【
図29】第8実施形態のモータのステータを径方向に沿って切断した断面の模式図である。
【
図30】第9実施形態のモータのコイル体における一の層の帯部材及び当該一の層の帯部材と径方向に隣り合う他の層の帯部材を平面状に展開した図である。
【
図31】
図30に示された一の層の帯部材と他の層の帯部材とが重ね合わされた状態を示す図である。
【
図32】第10実施形態のモータのコイル体において、帯部材の周方向の両端部の接合の態様を説明するための図である。
【
図33】第11実施形態のモータのコイル体において、帯部材の周方向の両端部の接合の態様を説明するための図である。
【
図34】環状に巻かれる前の状態の1層目の帯部材及び当該帯部材上に形成されたコイル部の断面を示す図である。
【
図35】帯部材が巻付芯金に沿って巻かれる工程を説明するための図である。
【
図36】環状に巻かれる前の状態の1層目の帯部材及び当該帯部材上に形成されたコイル部の断面を示す図である。
【
図37】帯部材が巻付芯金に沿って巻かれる工程を説明するための図である。
【
図38】帯部材が巻付芯金に沿って巻かれる工程を説明するための図である。
【
図39】帯部材がステータコアに沿って巻かれる工程を説明するための図である。
【
図40】第12実施形態のモータのコイル体を径方向に沿って切断した断面の模式図である。
【
図41】第13実施形態のモータのコイル体を径方向に沿って切断した断面の模式図である。
【
図42】第14実施形態のモータのコイル体を径方向に沿って切断した断面の模式図である。
【
図43】第15実施形態のモータのコイル体を径方向に沿って切断した断面の模式図である。
【
図44】第16実施形態のモータのコイル体を径方向に沿って切断した断面の模式図である。
【
図45】第17実施形態のモータのコイル体を径方向に沿って切断した断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(モータの基本構成)
図1~
図13を用いて本開示のモータ10の基本構成について説明する。なお、図中に適宜示す矢印Z方向、矢印R方向及び矢印C方向は、後述するロータ12の回転軸方向一方側、回転径方向外側及び回転周方向一方側をそれぞれ示すものとする。また、以下、単に軸方向、径方向、周方向を示す場合は、特に断りのない限り、ロータ12の回転軸方向、回転径方向、回転周方向を示すものとする。また、モータ10及び後述する各実施形態のモータは、回転電機の一例である。
【0010】
図1及び
図2に示されるように、モータ10は、回転子としてのロータ12が電機子及び固定子としてのステータ14の径方向内側に配置されたインナロータ型のブラシレスモータである。なお、
図1及び
図2に示された図は、一例として示したモータ10等の図であり、後の説明とコイル部16の数やマグネット18の数、細部の形状が互いに一致していない箇所がある。
【0011】
ロータ12は、一対のベアリング20を介して回転可能に支持された回転軸22と、回転軸22に固定されたロータコア24と、ロータコア24の径方向外側の面に固定された複数のマグネット18と、を含んで構成されている。なお、一対のベアリング20は、フレーム21及びフレームエンド23にそれぞれ支持されている。フレーム21とフレームエンド23との間には、ステータ14等が収容される。
【0012】
ロータコア24は、円筒状に形成されていると共に回転軸22が圧入等により固定される第1円筒部24Aと、第1円筒部24Aの径方向外側に配置されていると共に円筒状に形成された第2円筒部24Bと、を備えている。第2円筒部24Bの径方向外側の面である外周面は、周方向に沿って円筒面状に形成されている。この第2円筒部24Bの外周面には、後述するマグネット18が固定されている。
【0013】
複数のマグネット18は、固有保磁力Hcが400[kA/m]以上かつ残留磁束密度Brが1.0[T]以上の磁性化合物を用いて形成されている。一例として、マグネット18は、NdFe11TiN、Nd2Fe14B、Sm2Fe17N3、FeNi等の磁性化合物を用いて形成されている。また、複数のマグネット18が、ロータコア24の第2円筒部24Bの外周面に固定されている。また、径方向外側の面がN極とされたマグネット18と径方向外側の面がS極とされたマグネット18とは、周方向に交互に配列されている。なお、マグネット18の数は、モータ10に要求される出力等を考慮して適宜設定すればよい。
【0014】
ステータ14は、環状に形成された電機子コアとしてのステータコア26と、ステータコア26に取付けられたコイル体32と、を備えている。
図1~
図3に示されるように、ステータ14は、コイル体32の一部を構成するコイル部16の内部にステータコア26の一部が配置されないティースレス構造となっている。
【0015】
図1及び
図2に示されるように、ステータコア26は、鋼材等の軟磁性材料を用いて環状に形成されている。このステータコア26は、ロータ12と同軸上に配置されており、ステータコア26の軸方向の中心位置とロータコア24に固定された複数のマグネット18の軸方向の中心位置とは軸方向に一致している。
【0016】
図3及び
図4に示されるように、コイル体32は、絶縁性の材料を用いてシート状に形成されたシート状部材としての帯部材34と、帯部材34上に形成された複数のコイル部16と、を含んで構成されている。
【0017】
帯部材34は、軸方向を短手方向とすると共に軸方向と直交する周方向を長手方向とする帯状に形成されている。なお、径方向は帯部材34の厚み方向となっている。帯部材34の厚みは、当該帯部材34を周方向に湾曲させることが可能な程度の厚みに設定されている。帯部材34が周方向に沿って複数回巻かれた状態で、当該帯部材34が円筒状になっている。なお、帯部材34の大部分が、径方向に4層となっている。この点については後に詳述する。
【0018】
図3に示されるように、複数のコイル部16は帯部材34上に形成されている。そして、
図3及び
図4に示されるように、帯部材34が周方向に沿って複数回巻かれることで、複数のコイル部16が周方向及び径方向の所定の位置に配置されるようになっている。
【0019】
ここで、
図5に示されるように、U相を構成する複数のコイル部16(U相のコイル群42U)と、V相を構成する複数のコイル部16(V相のコイル群42V)と、W相を構成する複数のコイル部16(W相のコイル群42W)と、がスター結線で結線されている。
【0020】
図6には、U相のコイル群42Uの一部を構成する単一のコイル部16が示されている。この図に示されるように、コイル部16を帯部材34の厚み方向から見た形状は、帯部材34の短手方向一方側(軸方向一方側)が開放されかつ短手方向他方側(軸方向他方側)が閉止された略V字(U字)形状に形成されている。
【0021】
詳述すると、コイル部16は、周方向一方側へ向かうにつれて軸方向他方側へ傾斜している第1直線部A1と、第1直線部A1における周方向一方側の端から軸方向他方側に向けて伸びる第2直線部A2と、を備えている。また、コイル部16は、第2直線部A2における第1直線部A1とは反対側の端から周方向一方側へ向かうにつれて軸方向他方側へ傾斜している第3直線部A3と、第3直線部A3における第2直線部A2とは反対側の端から周方向一方側へ向かうにつれて軸方向一方側へ傾斜している第4直線部A4と、を備えている。さらに、コイル部16は、第4直線部A4における第3直線部A3とは反対側の端から軸方向一方側へ向けて伸びる第5直線部A5と、第5直線部A5における第4直線部A4とは反対側の端から周方向一方側へ向かうにつれて軸方向一方側へ傾斜している第6直線部A6と、を備えている。なお、以下の説明においては、第1直線部A1~第6直線部A6を導体部16Bと呼ぶ場合がある。本構成のコイル体32では、導体部16Bが周方向に規則的に並んで配置された構成となっている。
【0022】
ここで、
図4、
図6及び
図7に示されるように、第1直線部A1、第2直線部A2及び第3直線部A3は、帯部材34の一方側の面34A(径方向内側の面)側に形成されている。また、第4直線部A4、第5直線部A5及び第6直線部A6は、帯部材34の他方側の面34B(径方向外側の面)側に形成されている。第3直線部A3と第4直線部A4とは、帯部材34を貫通する図示しないビアやスルーホール等を介して電気的に接続されている。なお、コイル部16において帯部材34の一方側の面34Aに形成されている部分を実線で示している。また、コイル部16において帯部材34の他方側の面34Bに形成されている部分を破線で示している。
【0023】
なお、以上説明した第2直線部A2及び第5直線部A5を鉛直部36と呼ぶ場合がある。また、第1直線部A1及び第6直線部A6を一方のコイルエンド部であるコイル端部38Aと呼び、第3直線部A3及び第4直線部A4を他方のコイルエンド部である接続部38Bと呼ぶ場合がある。第1直線部A1と第6直線部A6との周方向への間隔が、軸方向一方側へ向かうにつれて次第に広くなっている。
【0024】
また、コイル部16の第1直線部A1と、第2直線部A2と、第3直線部A3と、第4直線部A4と、第5直線部A5と、第6直線部A6とが、周方向に二分割されている。詳述すると、コイル部16の第1直線部A1と、第2直線部A2と、第3直線部A3と、第4直線部A4と、第5直線部A5と、第6直線部A6とが、各々の伸びる方向と直交する方向に二分割されている。なお、以下の説明においては、第1直線部A1においてコイル部16の周方向の中央側に配置されている部分を「第1直線部A1(内)」と呼び、第1直線部A1においてコイル部16の周方向の中央とは反対側に配置されている部分を「第1直線部A1(外)」と呼ぶことにする。また、第2直線部A2、第3直線部A3、第4直線部A4、第5直線部A5及び第6直線部A6についても同様に、符号の末尾に(内)又は(外)の表示を設けて説明する。また、各図においては、図面の見やすさを考慮して、(内)又は(外)の表示を省略している箇所がある。
【0025】
図6に示されるように、第1直線部A1(内)と第1直線部A1(外)とは、その間に形成されたスリット60を介して離間していると共に互いに平行に伸びている。
【0026】
また、第2直線部A2(内)と第2直線部A2(外)とは、その間に形成されたスリット60を介して離間していると共に互いに平行に伸びている。さらに、第2直線部A2(内)及び第2直線部A2(外)は、第1直線部A1(内)及び第1直線部A1(外)とそれぞれつながっている。
【0027】
また、第3直線部A3(内)と第3直線部A3(外)とは、その間に形成されたスリット60を介して離間していると共に互いに平行に伸びている。さらに、第3直線部A3(内)及び第3直線部A3(外)は、第2直線部A2(内)及び第2直線部A2(外)とそれぞれつながっている。
【0028】
また、第4直線部A4(内)と第4直線部A4(外)とは、その間に形成されたスリット60を介して離間していると共に互いに平行に伸びている。さらに、第4直線部A4(内)及び第4直線部A4(外)は、第3直線部A3(内)及び第3直線部A3(外)とそれぞれつながっている。
【0029】
また、第5直線部A5(内)と第5直線部A5(外)とは、その間に形成されたスリット60を介して離間していると共に互いに平行に伸びている。さらに、第5直線部A5(内)及び第5直線部A5(外)は、第4直線部A4(内)及び第4直線部A4(外)とそれぞれつながっている。
【0030】
また、第6直線部A6(内)と第6直線部A6(外)とは、その間に形成されたスリット60を介して離間していると共に互いに平行に伸びている。さらに、第6直線部A6(内)及び第6直線部A6(外)は、第5直線部A5(内)及び第5直線部A5(外)とそれぞれつながっている。
【0031】
第1直線部A1(内)における第2直線部A2(内)とは反対側の端部と第1直線部A1(外)における第2直線部A2(外)とは反対側の端部とは、第1結線部62を介して結線されている。なお、第1結線部62は第1直線部A1の一部となっている。また、第6直線部A6(内)における第5直線部A5(内)とは反対側の端部と第6直線部A6(外)における第5直線部A5(外)とは反対側の端部とは、第2結線部64を介して結線されている。なお、第2結線部64は第6直線部A6の一部となっている。これにより、第1直線部A1(外)、第2直線部A2(外)、第3直線部A3(外)、第4直線部A4(外)、第5直線部A5(外)及び第6直線部A6(外)による経路と第1直線部A1(内)、第2直線部A2(内)、第3直線部A3(内)、第4直線部A4(内)、第5直線部A5(内)及び第6直線部A6(内)による経路とが、第1結線部62及び第2結線部64によって結線された閉回路66が形成されている。
【0032】
なお、以上説明した例では、コイル部16の各部がスリット60を介して周方向に二分割されている例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図7に示されるように、コイル部16の各部が周方向に分割されていない構成としてもよい。また、コイル部16の各部がスリット60を介して周方向に三分割以上に分割された構成としてもよい。さらに、コイル部16の一部分がスリット60によって周方向に分割された構成としてもよい。
【0033】
図8及び
図9に示されるように、U相を構成する他のコイル部16も
図6に示されたコイル部16と同様に構成されている。すなわち、U相を構成する全てのコイル部16がほぼ同一の構成となっている。
【0034】
図8には、帯部材34上に形成されたU相の複数のコイル部16が示されている。この図に示されるように、複数のコイル部16のうちの半分のコイル部16が直列で結線されている。なお、直列で結線されたこれらのコイル部16をU相の第1コイル群42U1と呼ぶことにする。また、複数のコイル部16のうちの残り半分のコイル部16が直列で結線されている。なお、直列で結線されたこれらのコイル部16をU相の第2コイル群42U2と呼ぶことにする。そして、U相のコイル群42Uは、U相の第1コイル群42U1及びU相の第2コイル群42U2によって構成されている。また、U相の第1コイル群42U1とU相の第2コイル群42U2とは、並列で接続されている。
【0035】
ここで、
図9には、U相の第1コイル群42U1を構成する複数のコイル部16とU相の第2コイル群42U2を構成する複数のコイル部16とを軸方向にオフセットして図示した模式図が示されている。この図に示されるように、U相の第1コイル群42U1を構成する複数のコイル部16は、周方向に沿って定められた間隔で配置されている。そして、周方向に隣り合う一のコイル部16の第1結線部62と他のコイル部16の第2結線部64とが、ビアやスルーホール等を介して接続されている。
【0036】
U相の第2コイル群42U2を構成する複数のコイル部16は、U相の第1コイル群42U1を構成する複数のコイル部16と同様に、周方向に沿って定められた間隔で配置されている。そして、周方向に隣り合う一のコイル部16の第1結線部62と他のコイル部16の第2結線部64とが、ビアやスルーホール等を介して接続されている。
【0037】
ここで、U相の第2コイル群42U2を構成する複数のコイル部16は、U相の第1コイル群42U1を構成する複数のコイル部16に対して周方向一方側にオフセットして配置されている。このオフセット距離は、コイル部16の第2直線部A2と第5直線部A5との周方向への間隔と対応している。これにより、U相の第1コイル群42U1を構成するコイル部16の第5直線部A5とU相の第2コイル群42U2を構成するコイル部16の第2直線部A2とが、帯部材34を介して径方向に重ねて配置されるようになっている。また、U相の第1コイル群42U1を構成するコイル部16の第2直線部A2とU相の第2コイル群42U2を構成するコイル部16の第5直線部A5とが、帯部材34を介して径方向に重ねて配置されるようになっている。
【0038】
なお、U相の第1コイル群42U1を構成する複数のコイル部16のうち最も周方向他方側に配置されたコイル部16の第1結線部62は、電源に接続される入力点43となっている。また、U相の第1コイル群42U1を構成する複数のコイル部16のうち最も周方向一方側に配置されたコイル部16の第2結線部64は、中性点44となっている。
【0039】
また、U相の第2コイル群42U2を構成する複数のコイル部16のうち最も周方向他方側に配置されたコイル部16の第1結線部62は、中性点44となっている。また、U相の第2コイル群42U2を構成する複数のコイル部16のうち最も周方向一方側に配置されたコイル部16の第2結線部64は、電源に接続される入力点43となっている。
【0040】
なお、図面に符号を付した詳細な説明は省略するが、
図4に示されるように、V相のコイル群42Vは、下記の点を除いては、U相のコイル群42Uと同様の構成となっている。V相のコイル群42Vは、V相の第1コイル群及びV相の第2コイル群によって構成されている。また、V相の第1コイル群とV相の第2コイル群とは、並列で接続されている。ここで、V相の第1コイル群を構成する複数のコイル部16のうち最も周方向他方側に配置されたコイル部16の第1結線部62は、中性点44となっている。また、V相の第1コイル群を構成する複数のコイル部16のうち最も周方向一方側に配置されたコイル部16の第2結線部64は、電源に接続される入力点43となっている。また、V相の第2コイル群を構成する複数のコイル部16のうち最も周方向他方側に配置されたコイル部16の第1結線部62は、電源に接続される入力点43となっている。また、V相の第2コイル群を構成する複数のコイル部16のうち最も周方向一方側に配置されたコイル部16の第2結線部64は、中性点44となっている。
【0041】
また、W相のコイル群42Wは、U相のコイル群42Uと同様の構成となっている。W相のコイル群42Wは、W相の第1コイル群及びW相の第2コイル群によって構成されている。また、W相の第1コイル群とW相の第2コイル群とは、並列で接続されている。ここで、W相の第1コイル群を構成する複数のコイル部16のうち最も周方向他方側に配置されたコイル部16の第1結線部62は、電源に接続される入力点43となっている。また、W相の第1コイル群を構成する複数のコイル部16のうち最も周方向一方側に配置されたコイル部16の第2結線部64は、中性点44となっている。また、W相の第2コイル群を構成する複数のコイル部16のうち最も周方向他方側に配置されたコイル部16の第1結線部62は、中性点44となっている。また、W相の第2コイル群を構成する複数のコイル部16のうち最も周方向一方側に配置されたコイル部16の第2結線部64は、電源に接続される入力点43となっている。
【0042】
図4に示されるように、V相のコイル群42Vを構成する複数のコイル部16は、U相のコイル群42Uを構成する複数のコイル部16に対して周方向一方側にオフセットして配置されている。また、W相のコイル群42Wを構成する複数のコイル部16は、V相のコイル群42Vを構成する複数のコイル部16に対して周方向一方側にオフセットして配置されている。これにより、U相のコイル部16と、V相のコイル部16と、W相のコイル部16とが、周方向に沿ってこの順で配置されている。なお、以下の説明においては、U相のコイル部16を単にコイル部16Uと呼び、V相のコイル部16を単にコイル部16Vと呼び、W相のコイル部16を単にコイル部16Wと呼ぶ場合がある。
【0043】
帯部材34の周方向他方側の端部に配置されたコイル部16U、16V、16Wの入力点43からは入力線70が軸方向一方側へ向けて延出されている。また、帯部材34の周方向一方側の端部に配置されたコイル部16U、16V、16Wの入力点43からは入力線70が軸方向一方側へ向けて延出されている。
【0044】
帯部材34の周方向他方側の端部に配置されたコイル部16U、16V、16Wの中性点44は、帯部材34上に形成された中性点接続パターン部72を介して互いに接続されている。また、帯部材34の周方向一方側の端部に配置されたコイル部16U、16V、16Wの中性点44は、帯部材34上に形成された中性点接続パターン部72を介して互いに接続されている。
【0045】
ここで、
図10には、
図4に示されたA-A線に沿って切断した帯部材34及び複数のコイル部16の第2直線部A2及び第5直線部A5の断面の一部が示されている。なお、
図10に示された断面は、帯部材34の周方向他方側の端部における断面である。
図10に示されるように、この部分においては、コイル部16Uの第2直線部A2(外)、コイル部16Uの第2直線部A2(内)、コイル部16Vの第2直線部A2(外)、コイル部16Vの第2直線部A2(内)、コイル部16Wの第2直線部A2(外)、コイル部16Wの第2直線部A2(内)が、帯部材34の一方側の面34Aにこの順で形成されている。
【0046】
また、
図11には、
図4に示されたA-A線に沿って切断した帯部材34及び複数のコイル部16の第2直線部A2及び第5直線部A5の断面の一部が示されている。なお、この
図11に示された断面は、
図4において矢印Eで示された範囲に対応する断面である。
図11に示された断面においては、コイル部16Uの第2直線部A2(外)、コイル部16Uの第2直線部A2(内)、コイル部16Vの第2直線部A2(外)、コイル部16Vの第2直線部A2(内)、コイル部16Wの第2直線部A2(外)、コイル部16Wの第2直線部A2(内)、コイル部16Uの第2直線部A2(外)、コイル部16Uの第2直線部A2(内)が、帯部材34の一方側の面34A側にこの順で形成されている。また、
図11に示された断面においては、コイル部16Uの第5直線部A5(内)、コイル部16Uの第5直線部A5(外)、コイル部16Vの第5直線部A5(内)、コイル部16Vの第5直線部A5(外)、コイル部16Wの第5直線部A5(内)、コイル部16Wの第5直線部A5(外)、コイル部16Uの第5直線部A5(内)、コイル部16Uの第5直線部A5(外)が、帯部材34の他方側の面34B側にこの順で形成されている。
【0047】
また、
図12には、
図4に示されたA-A線に沿って切断した帯部材34及び複数のコイル部16の第2直線部A2及び第5直線部A5の断面の一部が示されている。なお、この
図12に示された断面は、帯部材34の周方向一方側の端部における断面である。
図12に示された断面においては、コイル部16Uの第5直線部A5(内)、コイル部16Uの第5直線部A5(外)、コイル部16Vの第5直線部A5(内)、コイル部16Vの第5直線部A5(外)、コイル部16Wの第5直線部A5(内)、コイル部16Wの第5直線部A5(外)が、帯部材34の他方側の面34B側にこの順で形成されている。
【0048】
前述したように、帯部材34が周方向に沿って複数回巻かれることで、複数のコイル部16が周方向及び径方向の所定の位置に配置される。
図13には、帯部材34が巻かれた状態のコイル体32を径方向に沿って切断した断面の一部が示されている。なお、この断面は、各コイル部16の鉛直部36(
図6参照)と対応する部分の断面である。
【0049】
図13に示された断面では、複数のコイル部16の鉛直部36が径方向に積層された状態で、周方向に等間隔に配置されている。なお、複数のコイル部16の鉛直部36が径方向に積層された状態では、第1絶縁層54A又は第2絶縁層54Bが、径方向に隣り合う一対の鉛直部36の間に介在している。第1絶縁層54Aは、帯部材34であり、一例としてポリイミドフィルムや絶縁紙である。また、
図10~
図13に示されるように、第2絶縁層54Bは、帯部材34上に形成されかつコイル部16を覆うように形成された絶縁性の膜であり、一例として絶縁性の塗料である。絶縁性の塗料としては、ポリイミド塗膜やワニス等を用いることができる。
【0050】
ここで、
図13に示されるように、複数のコイル部16の鉛直部36の各部が径方向に積層されることによって形成されたものを鉛直部積層体56と呼ぶことにする。すなわち、コイル部16Uの第2直線部A2(外)及びコイル部16Uの第5直線部A2(内)が径方向に積層されることによって形成されたもの、コイル部16Vの第2直線部A2(外)及びコイル部16Vの第5直線部A2(内)が径方向に積層されることによって形成されたもの及びコイル部16Wの第2直線部A2(外)及びコイル部16Wの第5直線部A2(内)が径方向に積層されることによって形成されたものをそれぞれ鉛直部積層体56と呼ぶことにする。
【0051】
図13に示されるように、径方向内側の端部がコイル部16Uの第2直線部A2(外)となっている鉛直部積層体56、径方向内側の端部がコイル部16Uの第2直線部A2(内)となっている鉛直部積層体56は、周方向にこの順で配置されたU相の導体群46Uを構成している。また、径方向内側の端部がコイル部16Vの第2直線部A2(外)となっている鉛直部積層体56、径方向内側の端部がコイル部16Vの第2直線部A2(内)となっている鉛直部積層体56は、周方向にこの順で配置されたV相の導体群46Vを構成している。さらに、径方向内側の端部がコイル部16Wの第2直線部A2(外)となっている鉛直部積層体56、径方向内側の端部がコイル部16Wの第2直線部A2(内)となっている鉛直部積層体56は、周方向にこの順で配置されたW相の導体群46Wを構成している。
【0052】
(作用並びに効果)
次に、上記構成のモータ10の作用並びに効果について説明する。
【0053】
図1、
図2、
図4、
図5に示されるように、モータ10では、ステータ14の一部を構成するU相のコイル群42U、V相のコイル群42V、W相のコイル群42Wへの通電が切り替えられることで、ステータ14に回転磁界が生じる。これにより、ロータ12が回転する。
【0054】
ここで、コイル体32が、絶縁性の材料を用いて帯状に形成された帯部材34と、帯部材34上に形成された複数のコイル部16と、を含んで構成されている。そして、帯部材34が周方向に沿って複数回巻かれることで、複数のコイル部16が周方向及び径方向の所定の位置に配置される。この構成により、コイル体32の径方向への体格の大型化を抑制することができる。その結果、モータ10の体格の大型化を抑制することができる。
【0055】
また、
図4、
図8及び
図9に示されるように、複数のコイル部16の形状が、帯部材34の厚み方向から見て略V字状に形成されている。これに加えて、周方向に隣り合う一のコイル部16の第1結線部62と他のコイル部16の第2結線部64とが、帯部材34の軸方向一方側において接続されている。この構成では、コイル部16間を接続する配線経路を帯部材34上に別途設けることが不要となり、コイル体32の軸方向への体格の大型化を抑制することができる。これにより、モータ10の体格の大型化を抑制することができる。また、コイル部16間を接続する配線経路を帯部材34上に別途設けることが不要となることにより、コイル部16間の配線経路が長くなることを抑制することができる。その結果、コイル部16間の電気抵抗が低減され、モータ10のトルクの向上を図ることができる。
【0056】
また、
図6及び
図13に示されるように、コイル部16の各部がスリット60によって周方向に二分割されている。これにより、鉛直部積層体56がロータ12のマグネット18の対向する面積を小さくすることができる。その結果、径方向磁束により鉛直部積層体56に発生する渦電流を抑制でき、モータ10のトルクをより一層向上させることができる。
【0057】
また、
図6及び
図9に示されるように、コイル部16の第1直線部A1と第6直線部A6との周方向への間隔が、軸方向一方側へ向かうにつれて次第に広くなっている。これにより、周方向に隣り合うコイル部16同士を第2直線部A2及び第5直線部A5の周方向の両側において接続し易くすることができる。
【0058】
また、同じ相のコイル群42U、42V、42Wのコイル部16が、径方向に積層されることにより鉛直部積層体56が構成されている。これにより、コイル部16の積層数を調節することにより、ターン数を調節することと同様の効果を得ることができる。なお、ターン数とは、導電性の巻線が巻回されることによって形成されたコイルにおける巻線の巻回数のことである。
【0059】
(コイル体32の占積率を上げるための構成)
次に、コイル体32の占積率を上げるための各実施形態の構成について説明する。なお、以下の説明で用いる図においては、断面のハッチングを省略している。
【0060】
(第1実施形態)
図14~
図18を用いて、第1実施形態のモータについて説明する。なお、第1実施形態のモータにおいて既に説明したモータ10と対応する部材及び部分には、モータ10と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0061】
図14及び
図15には、第1実施形態のモータのコイル体32の一部を径方向に沿って切断した断面が示されている。詳述すると、
図14には、特定の層の帯部材34の一部及び当該帯部材34上に形成されたコイル部16(導体部16B)の断面が示されている。また、
図15には、複数の層の帯部材34の一部及び複数の層の帯部材34上にそれぞれ形成されたコイル部16(導体部16B)の断面が示されている。
図14、
図15及び
図16に示されるように、本実施形態では、一の層の帯部材34と他の層の帯部材34とが径方向に積層された状態では、一の層の帯部材34上に形成された導体部16Bと他の層の帯部材34上に形成された導体部16Bとが周方向に沿って交互に配置される。また、一の層の帯部材34と他の層の帯部材34とが径方向に積層された状態では、一の層の帯部材34上に形成された複数の導体部16Bと他の層の帯部材34上に形成された複数の導体部16Bとが周方向に重なっている。これにより、本実施形態のモータのコイル体32では、前述のモータのコイル体32の構成と比べて、占積率を上げることが可能となっている。なお、本実施形態のモータのコイル体32の構成は、前述のモータのコイル体32の構成とは異なり、環状に巻かれた複数の帯部材34が径方向に積層された構成となっている。また、コイル体32の積層数は、モータに要求される出力等を考慮して適宜設定すればよい。
【0062】
図17には、本実施形態のモータのコイル体32における一の層の帯部材34及び当該一の層の帯部材34と径方向に隣り合う他の層の帯部材34を平面状に展開した図が示されている。なお、一の層の帯部材34には、当該一の層の帯部材34を示す符号の末尾に符号S1を括弧書きで付すことにする。また、他の層の帯部材34には、当該他の層の帯部材34を示す符号の末尾に符号S2を括弧書きで付すことにする。
【0063】
図17(
図7も参照)に示されるように、一の層の帯部材34(S1)上には、U相の複数のコイル部16Uが形成されている。なお、
図17においては、一の層の帯部材34(S1)の一方側の面34A上に形成されたコイル部16の各部を実線で描いており、一の層の帯部材34(S1)の他方側の面34B上に形成されたコイル部16の各部を破線で描いている。また、
図17においては、一の層の帯部材34(S1)の周方向一方側の端部、周方向の中間部の一部及び周方向他方側の端部を第2直線部A2及び第5直線部A5と対応する箇所において径方向に沿って切断した断面140A、140B、140Cを示している。
【0064】
詳述すると、一の層の帯部材34(S1)上には、U相の20個のコイル部16Uが形成されている。そして、U相の20個のコイル部16Uのうちの5個のコイル部16Uは、直列で結線されたU相の第1コイル群42U1となっている。また、U相の20個のコイル部16Uのうちの5個のコイル部16Uは、直列で結線されたU相の第2コイル群42U2となっている。また、U相の20個のコイル部16Uのうちの5個のコイル部16Uは、直列で結線されたU相の第3コイル群42U3となっている。また、U相の20個のコイル部16Uのうちの5個のコイル部16Uは、直列で結線されたU相の第4コイル群42U4となっている。
【0065】
U相の第2コイル群42U2は、U相の第1コイル群42U1に対して周方向一方側にオフセットして配置されている。このオフセット距離D1は、周方向に隣り合うU相の第1コイル群42U1のコイル部16UとU相の第2コイル群42U2のコイル部16Uとの間にもう一つのコイル部16Uを配置可能な寸法に設定されている。一例として、このオフセット距離D1は、コイル16の第2直線部A2の周方向への幅寸法よりも若干大きな寸法に設定されている。また、U相の第1コイル群42U1を構成する各々のコイル部16Uの各部(第1直線部A1~第6直線部A6)とU相の第2コイル群42U2を構成する各々のコイル部16Uの各部(第1直線部A1~第6直線部A6)とは、それぞれ周方向に隣り合って配置されている。また、U相の第1コイル群42U1とU相の第2コイル群42U2とは、並列で接続されている。
【0066】
U相の第3コイル群42U3を構成する各々のコイル部16U及びU相の第4コイル群42U4を構成する各々のコイル部16Uは、それぞれU相の第1コイル群42U1を構成する各々のコイル部16U及びU相の第2コイル群42U2を構成する各々のコイル部16Uに対してV相の2個のコイル部16V及びW相の2個のコイル部16Wを挟んで周方向一方側にオフセットして配置されている。
【0067】
U相の第4コイル群42U4は、U相の第3コイル群42U3に対して距離D1だけ周方向一方側にオフセットして配置されている。また、U相の第3コイル群42U3を構成する各々のコイル部16Uの各部(第1直線部A1~第6直線部A6)とU相の第4コイル群42U4を構成する各々のコイル部16Uの各部(第1直線部A1~第6直線部A6)とは、それぞれ周方向に隣り合って配置されている。また、U相の第3コイル群42U3とU相の第4コイル群42U4とは、並列で接続されている。
【0068】
また、U相の第1コイル群42U1及びU相の第2コイル群42U2とU相の第3コイル群42U3及びU相の第4コイル群42U4とは、並列で接続されている。
【0069】
また、一の層の帯部材34(S1)における周方向の両端部を除く周方向の中間部分においては、U相の一のコイル部16Uの第2直線部A2と他のコイル部16Uの第5直線部A5とが、周方向にオフセットしてかつ周方向他方側から一方側へ向かって交互に配置されている。すなわち、U相の一のコイル部16Uの第2直線部A2と他のコイル部16Uの第5直線部A5とが、周方向の異なる位置に配置されている。なお、一の層の帯部材34(S1)における周方向の両端部が互いに重ねられた状態では、当該部分においても、U相の一のコイル部16Uの第2直線部A2と他のコイル部16Uの第5直線部A5とが、周方向にオフセットしてかつ周方向他方側から一方側へ向かって交互に配置される。
【0070】
一の層の帯部材34(S1)上には、U相の20個のコイル部16に対してそれぞれ周方向一方側にオフセットして配置されたV相の20個のコイル部16が形成されている。V相の20個のコイル部16は、U相の20個のコイル部16と同様の関係で配置及び結線されている。また、一の層の帯部材34(S1)上には、V相の20個のコイル部16に対してそれぞれ周方向一方側にオフセットして配置されたW相の20個のコイル部16が形成されている。W相の20個のコイル部16は、U相の20個のコイル部16と同様の関係で配置及び結線されている。
【0071】
他の層の帯部材34(S2)上には、U相の複数のコイル部16、V相の複数のコイル部16及びW相の複数のコイル部16が形成されている。ここで、
図17においては、他の層の帯部材34(S2)の一方側の面34A上に形成されたコイル部16の各部を破線で描いており、他の層の帯部材34(S2)の他方側の面34B上に形成されたコイル部16の各部を実線で描いている。すなわち、他の層の帯部材34(S2)上に形成されたコイル部16では、一の層の帯部材34(S1)の一方側の面34A上に形成されたコイル部16の各部と対応する部分が、他の層の帯部材34(S2)の他方側の面34B上に形成されている。また、他の層の帯部材34(S2)上に形成されたコイル部16では、一の層の帯部材34(S1)の他方側の面34B上に形成されたコイル部16の各部と対応する部分が、他の層の帯部材34(S2)の一方側の面34A上に形成されている。また、
図17においては、他の層の帯部材34(S2)の周方向一方側の端部、周方向の中間部の一部及び周方向他方側の端部を第2直線部A2及び第5直線部A5と対応する箇所において径方向に沿って切断した断面142A、142B、142Cを示している。
【0072】
他の層の帯部材34(S2)の構成及び他の層の帯部材34(S2)上に形成された複数のコイル部16の構成は、上記の点を除いては一の層の帯部材34(S1)の構成及び一の層の帯部材34(S1)上に形成された複数のコイル部16の構成と同様の構成となっている。また、他の層の帯部材34(S2)上に形成された複数のコイル部16のパターン(回路の型)と一の層の帯部材34(S1)上に形成された複数のコイル部16のパターン(回路の型)とが一致している。
【0073】
図18には、
図17に示された一の層の帯部材34(S1)と他の層の帯部材34(S2)とが重ね合わされた状態(積層された状態)の図が示されている。また、
図18には、一の層の帯部材34(S1)の周方向一方側の端部、周方向の中間部の一部及び周方向他方側の端部、並びに、他の層の帯部材34(S2)の周方向一方側の端部、周方向の中間部の一部及び周方向他方側の端部を第2直線部A2及び第5直線部A5と対応する箇所において径方向に沿って切断した断面144A、144B、144Cが示されている。この図に示されるように、一の層の帯部材34(S1)と他の層の帯部材34(S2)とが重ね合わされた状態では、一の層の帯部材34(S1)上に形成されたコイル部16の各部(導体部16B)と他の層の帯部材34(S2)上に形成されたコイル部16の各部(導体部16B)とが周方向に沿って交互に配置される。また、一の層の帯部材34(S1)と他の層の帯部材34(S2)とが重ね合わされた状態では、一の層の帯部材34(S1)上に形成された複数の導体部16Bと他の層の帯部材34上に形成された複数の導体部16Bとが周方向に重なっている。これにより、本実施形態のモータのコイル体32では、占積率を上げることができる。
【0074】
また、本実施形態のモータのコイル体32では、帯部材34上における導体部16Bの周方向への間隔を広くとることができる。これにより、例えば、エッチング処理を施すことにより帯部材34上に導体部16Bを形成する製法を採用した場合において、導体部16Bの厚みの制限を少なくすることができる。これにより、導体部16Bの厚みを厚くすることが可能となり、これによってもコイル体32の占積率を上げることができる。
【0075】
また、本実施形態のモータのコイル体32では、各層の帯部材34上に形成された複数のコイル部16のパターン(回路の型)が互いに一致している。これにより、各層の複数のコイル部16のパターン設計を相似的に行うことができ、設計工数を削減することができる。
【0076】
また、
図14及び
図15に示されるように、本実施形態のモータのコイル体32では、一の層の帯部材34(S1)上に形成された導体部16Bの周方向への幅寸法W1が、他の層の帯部材34(S2)側へ向かうにつれて次第に小さくなっている。また、他の層の帯部材34上に形成された導体部16Bの周方向への幅寸法W1が、一の層の帯部材34側へ向かうにつれて次第に小さくなっている。これにより、一の層の帯部材34(S1)と他の層の帯部材34(S2)とを重ね合わせる際に、一の層の帯部材34(S1)上に形成された複数の導体部16Bの間に他の層の帯部材34上に形成された複数の導体部16Bを配置させ易くすることができる。
【0077】
(第2実施形態)
図19~
図23を用いて、第2実施形態のモータについて説明する。なお、第2実施形態のモータにおいて既に説明したモータ10等と対応する部材及び部分には、モータ10等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0078】
図19~
図23は、第2実施形態のモータのコイル体32の構成を説明するための図であり、第1実施形態のモータの説明で用いた
図14~
図18にそれぞれ対応する図である。これらの図に示されるように、第2実施形態のモータのコイル体32の構成は、後述する点を除いては、第1実施形態のモータのコイル体32と同様の構成となっている。
【0079】
図20及び
図22に示されるように、第2実施形態のモータのコイル体32では、一の層の帯部材34(S1)における周方向の両端部を除く周方向の中間部分において、U相の一のコイル部16Uの第2直線部A2と他のコイル部16Uの第5直線部A5とが、周方向の同じ位置に配置されている。なお、一の層の帯部材34(S1)における周方向の両端部が互いに重ねられた状態では、当該部分においても、U相の一のコイル部16Uの第2直線部A2と他のコイル部16Uの第5直線部A5とが、周方向の同じ位置に配置される。
【0080】
なお、一の層の帯部材34(S1)上に形成されたV相の複数のコイル部16V及びW相の複数のコイル部16Wについても、U相の複数のコイル部16Uと同様の構成となっている。また、他の層の帯部材34(S2)上に形成された複数のコイル部16は、一の層の帯部材34(S1)上に形成された複数のコイル部16と同様の構成となっている。
【0081】
図23には、
図22に示された一の層の帯部材34(S1)と他の層の帯部材34(S2)とが重ね合わされた状態(積層された状態)の図が示されている。この図に示されるように、一の層の帯部材34(S1)と他の層の帯部材34(S2)とが重ね合わされた状態では、一の層の帯部材34(S1)上に形成されたコイル部16の各部(導体部16B)と他の層の帯部材34(S2)上に形成されたコイル部16の各部(導体部16B)とが周方向に沿って交互に配置される。また、一の層の帯部材34(S1)と他の層の帯部材34(S2)とが重ね合わされた状態では、一の層の帯部材34(S1)上に形成された複数の導体部16Bと他の層の帯部材34上に形成された複数の導体部16Bとが周方向に重なっている。これにより、本実施形態のモータのコイル体32では、占積率を上げることができる。
【0082】
(第3実施形態)
図24を用いて、第3実施形態のモータについて説明する。なお、第3実施形態のモータにおいて既に説明したモータ10等と対応する部材及び部分には、モータ10等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0083】
図24には、第3実施形態のモータのステータ14を径方向に沿って切断した断面の模式図が示されている。この図に示されるように、ステータ14の一部を構成するコイル体32の構成は、前述の第1実施形態のモータのコイル体32と同様の構成となっている。
【0084】
ここで、本実施形態のモータのステータ14では、ステータコア26と対向して配置された層の帯部材34上に形成された導体部16Bとステータコア26とが凹凸嵌合している。詳述すると、ステータコア26の外周部には、径方向外側へ向けて突出する複数の嵌合凸部26Aが形成されている。そして、これらの嵌合凸部26Aは、ステータコア26と対向して配置された層の帯部材34上に形成された一対の導体部16Bの間にそれぞれ嵌合している。このように構成することで、コイル体32のステータコア26に対する固定を行うことができる。また、複数の嵌合凸部26Aをティースにように機能させることができる。なお、ティースとは、ステータコアの一部分のことであり、導電性の巻線が巻回されることによってコイルが形成される構成においては当該ステータコアの一部分のまわりにコイルが形成される。本実施形態のモータのステータ14では、ステータコア26と対向して配置された層の帯部材34上に形成された導体部16Bがステータコア26の外周部に入り込んだ状態となることにより、ステータコア26の外周面からコイル体32の径方向外側の面までの距離が長くなることを抑制することができる。
【0085】
(第4実施形態)
図25を用いて、第4実施形態のモータについて説明する。なお、第4実施形態のモータにおいて既に説明したモータ10等と対応する部材及び部分には、モータ10等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0086】
図25には、第4実施形態のモータのステータ14を径方向に沿って切断した断面の模式図が示されている。この図に示されるように、ステータ14の構成は、後述する点を除いては前述の第3実施形態のモータのステータ14と同様の構成となっている。
【0087】
第4実施形態のモータのコイル体32では、ステータコア26と凹凸嵌合している導体部16Bの周方向への幅寸法W1が、ステータコア26と凹凸嵌合していない導体部16Bの周方向への幅寸法W1よりも小さな寸法に設定されている。具体的には、帯部材34におけるステータコア26側の面上に形成された導体部16Bの周方向への幅寸法W1が、帯部材34におけるステータコア26とは反対側の面上に形成された導体部16Bの周方向への幅寸法W1よりも小さい寸法に設定されている。また、嵌合凸部26Aの周方向への幅寸法W2が、前述の第3実施形態のモータの嵌合凸部26Aの周方向への幅寸法よりも大きな寸法に設定されている。また、ステータコア26と凹凸嵌合している導体部16Bの周方向への幅寸法W1が、嵌合凸部26Aの周方向への幅寸法W2よりも小さな寸法に設定されている。このように構成することで、第4実施形態のモータのステータ14では、第3実施形態のモータのステータ14と比べて、マグネット18とステータコア26との間の磁気ギャップG1を短縮した効果が得られる。これにより、モータの出力を向上させることができる。
【0088】
(第5実施形態)
図26を用いて、第5実施形態のモータについて説明する。なお、第5実施形態のモータにおいて既に説明したモータ10等と対応する部材及び部分には、モータ10等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0089】
図26には、第5実施形態のモータのステータ14を径方向に沿って切断した断面の模式図が示されている。この図に示されるように、ステータ14の一部を構成するコイル体32の構成は、前述の第2実施形態のモータのコイル体32と同様の構成となっている。また、ステータ14の一部を構成するステータコア26の構成は、前述の第3実施形態のモータのステータコア26と同様の構成となっている。
【0090】
以上説明した第5実施形態のモータのステータ14においても、前述の第3実施形態のモータのステータ14と同様の効果を得ることができる。
【0091】
(第6実施形態)
図27を用いて、第6実施形態のモータについて説明する。なお、第6実施形態のモータにおいて既に説明したモータ10等と対応する部材及び部分には、モータ10等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0092】
図27には、第6実施形態のモータのステータ14を径方向に沿って切断した断面の模式図が示されている。この図に示されるように、ステータ14の一部を構成するコイル体32では、最もステータコア26側に配置された帯部材34上に形成された導体部16Bの周方向への幅寸法W1が、それ以外の帯部材34上に形成された導体部16Bの周方向への幅寸法W1よりも小さな寸法に設定されている。また、ステータ14の一部を構成するステータコア26の構成は、前述の第4実施形態のモータのステータコア26と同様の構成となっている。
【0093】
以上説明した第6実施形態のモータのステータ14においても、前述の第4実施形態のモータのステータ14と同様の効果を得ることができる。
【0094】
(第7実施形態)
図28を用いて、第7実施形態のモータについて説明する。なお、第7実施形態のモータにおいて既に説明したモータ10等と対応する部材及び部分には、モータ10等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0095】
図28には、第7実施形態のモータのステータ14を径方向に沿って切断した断面の模式図が示されている。この図に示されるように、ステータ14の一部を構成するコイル体32の構成は、後述する点を除いては前述の第1実施形態のモータのコイル体32と同様の構成となっている。
【0096】
本実施形態のモータのコイル体32では、マグネット18側に配置された層の帯部材34上に形成された導体部16Bの厚み寸法T1が、マグネット18とは反対側に配置された層の帯部材34上に形成された導体部16Bの厚み寸法T1よりも小さな寸法に設定されている。なお、導体部16Bの厚み寸法T1とは、コイル体32とマグネット18とが対向する方向(径方向)への導体部16Bの寸法のことである。
【0097】
本実施形態のモータのコイル体32では、5枚の帯部材34が径方向に積層された構成となっている。ここで、5枚の帯部材34をステータコア26側からマグネット18側へかけて順番に1層目の帯部材34、2層目の帯部材34、3層目の帯部材34、4層目の帯部材34、5層目の帯部材34と呼ぶことにする。
【0098】
2層目の帯部材34と3層目の帯部材34との間に配置された導体部16Bの厚み寸法T1は、1層目の帯部材34と2層目の帯部材34との間に配置された導体部16Bの厚み寸法T1よりも小さな寸法に設定されている。また、3層目の帯部材34と4層目の帯部材34との間に配置された導体部16Bの厚み寸法T1は、2層目の帯部材34と3層目の帯部材34との間に配置された導体部16Bの厚み寸法T1よりも小さな寸法に設定されている。また、4層目の帯部材34と5層目の帯部材34との間に配置された導体部16Bの厚み寸法T1は、3層目の帯部材34と4層目の帯部材34との間に配置された導体部16Bの厚み寸法T1よりも小さな寸法に設定されている。ここで、
図28に示された矢印T2は鎖交磁束を表しており、矢印T3は漏れ磁束を表している。漏れ磁束T3が周方向に鎖交するマグネット18側の層の帯部材34上に形成された導体部16Bの厚み寸法T1を小さくすることにより、いわゆる渦損を低減することができる。また、周方向鎖交磁束の少ないマグネット18とは反対側の層の帯部材34上に形成された導体部16Bの厚み寸法T1を大きくすることにより、いわゆる直流損を低減することができる。
【0099】
(第8実施形態)
図29を用いて、第8実施形態のモータについて説明する。なお、第8実施形態のモータにおいて既に説明したモータ10等と対応する部材及び部分には、モータ10等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0100】
図29には、第8実施形態のモータのステータ14を径方向に沿って切断した断面の模式図が示されている。この図に示されるように、ステータ14の一部を構成するコイル体32の基本的な構成は、前述の第2実施形態のモータのコイル体32と同様の構成となっている。また、本実施形態のモータのコイル体32では、各導体部16Bの厚み寸法T1が前述の第7実施形態のモータのコイル体32と同様の寸法に設定されている。
【0101】
以上説明した本実施形態のモータのコイル体32においても、第7実施形態のモータのコイル体32と同様の効果を得ることができる。
【0102】
(第9実施形態)
図30及び
図31を用いて、第9実施形態のモータについて説明する。なお、第9実施形態のモータにおいて既に説明したモータ10等と対応する部材及び部分には、モータ10等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0103】
図30及び
図31は、第9実施形態のモータのコイル体32の構成を説明するための図であり、第2実施形態のモータの説明で用いた
図22及び
図23にそれぞれ対応する図である。これらの図に示されるように、第9実施形態のモータのコイル体32の構成は、後述する点を除いては、第2実施形態のモータのコイル体32と同様の構成となっている。
【0104】
図30に示されるように、本実施形態のモータのコイル体32では、U相の第1コイル群42U1と第4コイル群42U4とが、折返し導体パターン部78を介して直列で結線されている。また、U相の第2コイル群42U2と第3コイル群42U3とが、折返し導体パターン部78を介して直列で結線されている。
【0105】
以上説明した本実施形態のコイル体32では、前述の第2実施形態のモータのコイル体32と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態のコイル体32では、前述の第2実施形態のモータのコイル体32に対してターン数を増やした効果を得ることができる。なお、ターン数とは、導電性の巻線が巻回されることによって形成されたコイルにおける巻線の巻回数のことである。
【0106】
(第10実施形態及び第11実施形態)
図32及び
図33を用いて、第10実施形態及び第11実施形態のモータについて説明する。なお、第10実施形態及び第11実施形態のモータにおいて既に説明したモータ10等と対応する部材及び部分には、モータ10等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0107】
図32に示されるように、第10実施形態のモータのコイル体32では、帯部材34の周方向一方側の端部34Dと周方向他方側の端部34Cとが重ね合わされることにより、帯部材34の周方向一方側の端部34Dに配置された各々の入力線70と帯部材34の周方向他方側の端部34Cに配置された各々の入力線70とが結線されるようになっている。この構成は、一例として、前述の第2実施形態のモータのコイル体32に適用することができる。
【0108】
図33に示されるように、第11実施形態のモータのコイル体32では、帯部材34の周方向一方側の端部34Dと周方向他方側の端部34Cとが重ね合わされることにより、帯部材34の周方向一方側の端部34Dに配置された各々の入力線70と帯部材34の周方向他方側の端部34Cに配置された各々の入力線70とが結線されるようになっている。この構成は、一例として、前述の第1実施形態のモータのコイル体32に適用することができる。
【0109】
(コイル体32の製造方法の一例について)
次に、
図34~
図39を用いて、コイル体32の製造方法の一例について説明する。
【0110】
図34には、環状に巻かれる前の状態の1層目の帯部材34及び当該帯部材34上に形成されたコイル部16の断面が示されている。なお、1層目の帯部材34及び当該帯部材34上に形成されたコイル部16の構成は、第2実施形態のモータの帯部材34及び当該帯部材34上に形成されたコイル部16と同様の構成となっている。また、この帯部材34は、周方向一方側の端部34D側から環状に巻かれる。具体的には、
図35に示されるように、1層目の帯部材34は、周方向一方側の端部34D側から金型である巻付芯金146に沿って環状に巻かれる。そして、1層目の帯部材34の周方向一方側の端部34Dと周方向他方側の端部34Cとが重ね合わされて接合されることで、1層目の帯部材34が環状に巻かれた状態が保たれる。また、これと同様の手順で、2層目の帯部材34が、1層目の帯部材34に沿って環状に巻かれる。
【0111】
図36には、環状に巻かれる前の状態の1層目の帯部材34及び当該帯部材34上に形成されたコイル部16の断面が示されている。なお、1層目の帯部材34及び当該帯部材34上に形成されたコイル部16の構成は、第1実施形態のモータの帯部材34及び当該帯部材34上に形成されたコイル部16と同様の構成となっている。
図37に示されるように、1層目の帯部材34は、周方向一方側の端部34D側から巻付芯金146に沿って環状に巻かれる。そして、1層目の帯部材34の周方向一方側の端部34Dと周方向他方側の端部34Cとが重ね合わされて接合されることで、1層目の帯部材34が環状に巻かれた状態が保たれる。また、これと同様の手順で、2層目の帯部材34が、1層目の帯部材34に沿って環状に巻かれる。
【0112】
図38には、
図35及び
図37に示された巻付芯金146とは異なる構成の巻付芯金148が示されている。この巻付芯金148の外周部には、径方向外側へ向けて突出する複数の巻付嵌合凸部148Aが形成されている。そして、この巻付芯金148を用いた場合、巻付嵌合凸部148Aを1層目の帯部材34上に形成された一対の導体部16Bの間に嵌合させながら、1層目の帯部材34を巻付芯金148に沿って巻くことができる。これにより、1層目の帯部材34を巻付芯金148に沿って巻く際に、1層目の帯部材34が巻付芯金148に対して周方向へずれ動くことを抑制することができる。
【0113】
図39には、第3実施形態のモータのステータコア26と同様の構成のステータコア26が示されている。この構成では、嵌合凸部26Aを1層目の帯部材34上に形成された一対の導体部16Bの間に嵌合させながら、1層目の帯部材34をステータコア26に沿って巻くことができる。これにより、1層目の帯部材34をステータコア26に沿って巻く際に、1層目の帯部材34がステータコア26に対して周方向へずれ動くことを抑制することができる。
【0114】
(第12実施形態~第15実施形態)
図40を用いて、第12実施形態のモータについて説明する。なお、第12実施形態のモータにおいて既に説明したモータ10等と対応する部材及び部分には、モータ10等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0115】
図40には、第12実施形態のモータのコイル体32が示されている。本実施形態のモータのコイル体32では、帯部材34上に複数の軟磁性部150が形成されている。複数の軟磁性部は、軟磁性材料を用いて形成されており、周方向に沿って並んで配置されている。本実施形態のモータのコイル体32では、帯部材34におけるステータコア26側の面上にのみ複数の軟磁性部150が形成されている。また、複数の軟磁性部150は、周方向に隣り合う一対の導体部16Bの間に配置されている。このように構成することで、複数の軟磁性部150を前述の嵌合凸部26A(
図24参照)と同様にティースのように機能させることができる。
【0116】
なお、複数の軟磁性部150の配置は、モータに要求される特性を考慮して適宜設定すればよい。例えば、
図41に示された第13実施形態のモータのコイル体32のように、複数の軟磁性部150のみが1層目の帯部材34及び3層目の帯部材34上に形成された構成としてもよい。また、
図42に示された第14実施形態のモータのコイル体32のように、複数の軟磁性部150及び複数の導体部16Bの両方が1層目の帯部材34及び3層目の帯部材34上に形成された構成としてもよい。また、
図43に示された第15実施形態のモータのコイル体32のように、複数の軟磁性部150及び複数の導体部16Bの両方が全ての層の帯部材34上に形成された構成としてもよい。
【0117】
(第16実施形態)
図44を用いて、第16実施形態のモータについて説明する。なお、第16実施形態のモータにおいて既に説明したモータ10等と対応する部材及び部分には、モータ10等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0118】
図44には、第16実施形態のモータのコイル体32を径方向に沿って切断した断面の模式図が示されている。この図に示されるように、本実施形態のモータのコイル体32では、一のコイル部16の第2直線部A2と他のコイル部16の第5直線部A5との周方向へのオフセット距離を前述の第1実施形態のモータのコイル体32の設定と第2実施形態のモータのコイル体32の設定との間の中間の範囲に設定している。このように構成しても、コイル体32の占積率を上げることができる。
【0119】
(第17実施形態)
図45を用いて、第17実施形態のモータについて説明する。なお、第17実施形態のモータにおいて既に説明したモータ10等と対応する部材及び部分には、モータ10等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0120】
図45には、第17実施形態のモータのコイル体32を径方向に沿って切断した断面の模式図が示されている。この図に示されるように、本実施形態のモータのコイル体32では、一の層の帯部材34側から当該一の層の帯部材34よりも径方向外側に配置された他の層の帯部材34側へ向かうにつれて導体部16Bの周方向への幅寸法(W1)が次第に大きくなっている。このように構成することで、導体部16Bの断面積を径方向外側に向かうにつれて次第に大きくすることができ、コイル部16の占積率を高めることができる。
【0121】
以上、本開示の各実施形態について説明したが、本開示は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。また、以上説明した各実施形態の構成の全部又は一部は、互いに組み合わせることができる。
【0122】
例えば、モータ10等の用途に応じて適宜選択すればよい。また、モータ10等の構成は、発電機に適用してもよい。また、モータ10等の構成は、ロータ12がステータ14の径方向外側に配置されたアウタロータ型のブラシレスモータにも適用することができる。また、コイル体32を含んで構成されたロータにも、本開示の構成を適用することができる。
【0123】
<付記>
(付記1)
絶縁性の材料を用いて周方向に延在するシート状に形成され、径方向に積層されたシート状部材(34)と、
導電性の材料を用いて前記シート状部材上にそれぞれ形成され、周方向に沿って並んで配置された複数の導体部(16B)を有し、一の層の前記シート状部材上に形成された前記導体部と他の層の前記シート状部材上に形成された前記導体部とが周方向に沿って交互に配置されていると共に一の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記導体部と他の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記導体部とが周方向に重なっている構成となっている複数のコイル部(16)と、
を備えたコイル体(32)。
(付記2)
径方向に隣り合う一の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部及び他の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部の構成であって、
一の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部のパターンと他の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部のパターンとが一致している付記1に記載のコイル体。
(付記3)
径方向に隣り合う一の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部及び他の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部の構成であって、
一の層の前記シート状部材上に形成された前記導体部の周方向への幅寸法(W1)が、他の層の前記シート状部材側へ向かうにつれて次第に小さくなっており、
他の層の前記シート状部材上に形成された前記導体部の周方向への幅寸法が、一の層の前記シート状部材側へ向かうにつれて次第に小さくなっている付記1又は付記2に記載のコイル体。
(付記4)
軟磁性材料を用いて前記シート状部材上にそれぞれ形成され、周方向に沿って並んで配置された複数の磁性体部(150)をさらに備えた付記1~付記3のいずれか1項に記載のコイル体。
(付記5)
一の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部及び一の層の前記シート状部材よりも径方向外側に配置された他の層の前記シート状部材上に形成された複数の前記コイル部の構成であって、
一の層の前記シート状部材側から他の層の前記シート状部材側へ向かうにつれて前記導体部の周方向への幅寸法(W1)が次第に大きくなっている付記1~付記4のいずれか1項に記載のコイル体。
(付記6)
付記1~付記5のいずれか1項に記載のコイル体を備えた電機子(14)。
(付記7)
軟磁性材料を用いて環状に形成された電機子コア(26)をさらに備え、
前記コイル体は、前記電機子コアに沿って配置されており、
前記電機子コアと対向して配置された層の前記シート状部材上に形成された前記導体部と前記電機子コアとが凹凸嵌合している付記6に記載の電機子。
(付記8)
付記1、付記3、付記4及び付記5のいずれか1項に記載のコイル体を備えた電機子(14)において、
軟磁性材料を用いて環状に形成された電機子コア(26)をさらに備え、
前記コイル体は、前記電機子コアに沿って配置されており、
前記電機子コアと対向して配置された層の前記シート状部材上に形成された前記導体部と前記電機子コアに形成された凸部とが凹凸嵌合しており、
前記電機子コアと対向して凹凸嵌合している前記導体部の周方向への幅寸法が、前記電機子コアの前記凸部の周方向への幅寸法よりも小さな寸法に設定されている電機子。
(付記9)
付記6に記載の電機子を含んで構成された固定子(14)及び回転子(12)の一方と、
前記コイル体と径方向又は軸方向に対向して配置されたマグネット(18)を有する固定子及び回転子の他方と、
を備えた回転電機(10)。
(付記10)
前記コイル体と前記マグネットとが対向する径方向への前記導体部の寸法を厚み寸法(T1)とした場合に、
前記マグネット側に配置された層の前記シート状部材上に形成された前記導体部の厚み寸法が、前記マグネットとは反対側に配置された層の前記シート状部材上に形成された前記導体部の厚み寸法よりも小さな寸法に設定されている付記9に記載の回転電機。
【符号の説明】
【0124】
10 モータ(回転電機)、12 ロータ(回転子)、14 ステータ(固定子、電機子)、16 コイル部、16B 導体部、26 ステータコア(電機子コア)、32 コイル体、34 帯部材(シート状部材)、150 磁性体部、W1 導体部の周方向への幅寸法、T1 導体部の厚み寸法