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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083955
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/20 20180101AFI20240617BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20240617BHJP
   F21W 103/60 20180101ALN20240617BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240617BHJP
【FI】
F21S43/20
F21S43/14
F21W103:60
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198068
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】安部 俊也
(57)【要約】
【課題】路面に照射されるパターンの外観の低下を抑制する。
【解決手段】車両用灯具は、光源と、板状であり、光源からの光の波面を変換するメタサーフェス部を有し、波面が変換された光を出射する光源側レンズと、出射された光の一部を通過させるスリットを有する遮光部材と、スリットを通過した光を路面に照射して照射パターンを形成する投影レンズとを備え、スリットは、一方向に長手方向を有するように形成され、メタサーフェス部は、光源側レンズの光軸に対応する基準位置を中心として、スリットの長手方向に平行な第1方向と、第1方向と直交する第2方向とに所定のピッチで複数配置されたピラー部を有し、メタサーフェス部は、基準位置を含み当該基準位置から離れるにつれてピラー部の径が徐々に小さくなる部分を含む中央領域を有し、中央領域は、基準位置に対して第1方向の一方側の方が第1方向の他方側よりもピラー部の径の変化が緩やかである。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
板状であり、前記光源からの前記光の波面を変換するメタサーフェス部を有し、波面が変換された前記光を出射する光源側レンズと、
前記光源側レンズから出射された前記光の一部を通過させるスリットを有する遮光部材と、
前記スリットを通過した前記光を路面に照射して照射パターンを形成する投影レンズと
を備え、
前記スリットは、一方向に長手方向を有するように形成され、
前記メタサーフェス部は、前記光源側レンズの光軸に対応する基準位置を中心として、前記スリットの長手方向に平行な第1方向と、前記第1方向と直交する第2方向とに所定のピッチで複数配置されたピラー部を有し、
前記メタサーフェス部は、前記基準位置を含み当該基準位置から離れるにつれて前記ピラー部の径が徐々に小さくなる部分を含む中央領域を有し、
前記中央領域は、前記基準位置に対して前記第1方向の一方側の方が前記第1方向の他方側よりも前記ピラー部の径の変化が緩やかである
車両用灯具。
【請求項2】
前記メタサーフェス部は、前記中央領域において、前記基準位置から前記第2方向の一方側と前記第2方向の他方側とで前記ピラー部の径の変化が同一である
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記メタサーフェス部は、前記中央領域において、前記基準位置から前記第1方向の一方側の前記ピラー部の径の変化が、前記基準位置から前記第2方向の一方又は他方側の前記ピラー部の径の変化よりも緩やかである
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記メタサーフェス部は、前記中央領域において、前記基準位置から前記第1方向の他方側の前記ピラー部の径の変化が、前記基準位置から前記第2方向の一方又は他方側の前記ピラー部の径の変化よりも急峻である
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記メタサーフェス部は、前記中央領域において、前記第1方向で前記ピラー部の径が最大となるピーク位置が前記基準位置よりも一方側に配置される
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記中央領域は、前記基準位置を基準として前記第1方向の前記ピラー部の数が前記第2方向の前記ピラー部の数よりも多い
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記中央領域は、前記基準位置から前記第1方向の一方側に配置される前記ピラー部の数は前記基準位置から前記第2方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置される前記ピラー部の数に対して20%以上多く、前記基準位置から前記第1方向の他方側に配置される前記ピラー部の数は前記基準位置から前記第2方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置される前記ピラー部の数に対して10%以上少ない
請求項6に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記メタサーフェス部は、前記基準位置を含む中心部から前記入射面に沿った放射方向に位相が周期的に変化するように位相分布が設定され、
前記中央領域は、前記基準位置を含む前記位相分布の第1周期に対応する領域であり、
前記メタサーフェス部は、前記中央領域を囲うように環状に設けられ前記位相分布の第2周期以降の周期に対応する周辺領域を有し、
前記周辺領域は、前記中央領域から前記入射面に沿って離れるにつれて前記ピラー部の径が徐々に小さくなるように形成される
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記周辺領域は、前記中央領域から外側に離れる方向に多重に設けられ、前記第1方向の一方側よりも他方側の方が前記ピラー部の径が最大となるピーク位置の数が多い
請求項8に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
路面にパターンを照射することが可能な車両用灯具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-111465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両用灯具は、光源からの光を遮光部材のスリットに向けて集光レンズで集光し、スリットを通過した光を投影レンズにより路面に照射する構成である。この構成では、集光レンズとして凸レンズが用いられる。そのため、凸レンズの厚さの分、凸レンズの出射面を遮光部材側に配置する必要があり、スリットに向けた集光角度を大きくする必要がある。集光レンズの集光角度が大きくなると、スリットを通過した光が投影レンズの外周側まで入射するため、投影レンズの収差の影響を受けやすくなる。この場合、路面に形成されるパターンのエッジ部分がぼやけたり、カラーフリンジが発生したりする等、パターンの外観が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、路面に照射されるパターンの外観が低下することを抑制することが可能な車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車両用灯具は、光を出射する光源と、板状であり、前記光源からの前記光の波面を変換するメタサーフェス部を有し、波面が変換された前記光を出射する光源側レンズと、前記光源側レンズから出射された前記光の一部を通過させるスリットを有する遮光部材と、前記スリットを通過した前記光を路面に照射して照射パターンを形成する投影レンズとを備え、前記スリットは、一方向に長手方向を有するように形成され、前記メタサーフェス部は、前記光源側レンズの光軸に対応する基準位置を中心として、前記スリットの長手方向に平行な第1方向と、前記第1方向と直交する第2方向とに所定のピッチで複数配置されたピラー部を有し、前記メタサーフェス部は、前記基準位置を含み当該基準位置から離れるにつれて前記ピラー部の径が徐々に小さくなる部分を含む中央領域を有し、前記中央領域は、前記基準位置に対して前記第1方向の一方側の方が前記第1方向の他方側よりも前記ピラー部の径の変化が緩やかである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、路面に照射されるパターンの外観が低下することを抑制することが可能な車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る車両用灯具の一例を示す分解斜視図である。
図2図2は、車両用灯具を前方から見た状態を示す図である。
図3図3は、光源側レンズの一例を示す図である。
図4図4は、メタサーフェス部における位相分布の一例を示す図である。
図5図5は、メタサーフェス部を光軸の軸線方向から見た場合の一例を示す図である。
図6図6は、図5で示すメタサーフェス部におけるピラー部の径の変化を示す図である。
図7図7は、本実施形態に係る車両用灯具の動作の一例を示す図である。
図8図8は、本実施形態に係る車両用灯具の動作の一例を示す図である。
図9図9は、車両用灯具により路面に形成される照射パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る車両用灯具の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
図1は、本実施形態に係る車両用灯具100の一例を示す分解斜視図である。図2は、車両用灯具100を前方から見た状態を示す図である。図1及び図2に示すように、車両用灯具100は、光源部10と、光源側レンズ20と、遮光部材30と、投影レンズ40と、支持部材50とを備える。
【0011】
光源部10は、光源11及び基板12を有する。光源11は、例えばLED等の半導体型光源である。光源11は、光を出射する発光面11aを有する。発光面11aは、光源側レンズ20の入射面20aに対向して配置される。光源11は、発光面11aから単一色の光、例えば橙色(アンバー)の光を出射する。光源11は、例えば1つ配置される。なお、光源11は、複数設けられてもよい。また、発光面11aから出射される光の色は、橙色に限定されない。
【0012】
基板12は、光源11が実装される。基板12は、光源11に信号を伝達する配線、回路等が形成される。基板12は、後述する支持部材50のベース部51に固定される。
【0013】
光源側レンズ20は、光源11から出射される光を遮光部材30側に出射する。光源側レンズ20は、例えば石英ガラス等、光を透過可能な材料を用いて例えば平板状等の板状に形成される。光源側レンズ20は、厚さ(前後方向の寸法)を0.1mm~1mm程度に形成することができる。光源側レンズ20は、基板12に固定されてもよいし、後述する支持部材50のベース部51に固定されてもよい。図3は、光源側レンズ20の一例を示す図である。なお、図3では、光源側レンズ20に加えて、光源部10及び後述する遮光部材30についても示している。
【0014】
図3に示すように、光源側レンズ20は、入射面20a及び出射面20bを有する。入射面20a及び出射面20bは、例えば平面状である。なお、入射面20a及び出射面20bは、湾曲した面であってもよい。光源側レンズ20は、入射面20aが光源11に対向し、出射面20bが遮光部材30に対向するように配置される。
【0015】
光源側レンズ20は、当該光源側レンズ20の表面のうち例えば入射面20aにメタサーフェス部21を有する、いわゆるメタレンズである。なお、メタサーフェス部21は、出射面20bに設けられてもよい。メタサーフェス部21は、入射面20a及び出射面20bの少なくとも一方に設けられる構成とすることができる。メタサーフェス部21は、光源11からの入射波面を後述するスリット33に向けて変換する。メタサーフェス部21は、例えばGaN(窒化ガリウム)、Si(窒化ケイ素)等を用いて形成される。入射面20aに設けられるメタサーフェス部21の作用により、入射面20aから入射した光の波面が後述するスリット33に向けて変換されて出射面20bから出射される。このため、出射面20bから出射される光は、凸レンズのレンズ面から出射される場合と同様に、遮光部材30の後述するスリット33の形状に合わせて光軸AX側に収束するように集光された状態となる。
【0016】
メタサーフェス部21は、複数のピラー部22を有する。ピラー部22は、柱状であり、入射面20aから光源11側に突出する。複数のピラー部22は、例えば左右方向及び前後方向に沿って、所定のピッチでマトリクス状に配置される。複数のピラー部22は、所定方向の寸法がそれぞれ光源11から出射される光の波長の2倍以下である。このように複数のピラー部22の所定方向の寸法を光源11からの光の波長の2倍以下とすることで、位相への安定性が高くなり、より作り易くなるためコストを低減できる。本実施形態において、所定方向については、例えば前後方向又は左右方向のいずれかの寸法とすることができる。
【0017】
複数のピラー部22は、例えば電子ビームリソグラフィ法、イオンエッチング法などの技術により形成することができる。なお、光源側レンズ20は、メタサーフェス部21と当該メタサーフェス部21以外の部分とが誘電率及び透磁率の異なる材料で構成することができる。
【0018】
光源側レンズ20において、メタサーフェス部21は、光源11から所定角度α以下の出射角度で出射される光が入射する範囲に設けられる。すなわち、光源側レンズ20の入射面20aには、光源11から所定角度α以下の出射角度で出射される光が入射する範囲に複数のピラー部22が形成される。また、光源側レンズ20は、遮光部材30側に進行する光の集光角度が光軸AX側に対して例えば水平方向で所定角度β以下となるように、複数のピラー部22が形成される。
【0019】
本実施形態において、基板12と光源側レンズ20の入射面20aとの距離をD1、入射面20aから遮光部材30までの距離をD2、遮光部材30の後述するスリット33について光軸AXから左右方向の両端までの距離をD3、メタサーフェス部21について光軸AXから左右方向の両端までの寸法をD4とする。ここで、距離D1を2.5mm、距離D2を13.5mm、距離D3を2mm、距離D4を4.0mmとした場合、所定角度αを例えば60°とすることができ、所定角度βを例えば15°とすることができる。なお、距離D1から距離D4の各値、所定角度α、βの値については、上記に限定されない。メタサーフェス部21の具体的な構成については、後述する。
【0020】
図1及び図2に戻り、遮光部材30は、スリット形成部31及びフレーム部32を有する。遮光部材30は、スリット形成部31及びフレーム部32が一つの部材として平板状に形成される。遮光部材30は、光を遮光可能な材料を用いて全体が形成される。このような材料としては、例えば金属等の材料が挙げられるが、他の材料が用いられてもよい。なお、遮光部材30は、スリット形成部31とフレーム部32とが別部材で形成された構成であってもよい。
【0021】
スリット形成部31は、例えば円形状に設けられる。スリット形成部31は、スリット33を有する。スリット33は、光源側レンズ20から出射された光の一部を通過させる。スリット33は、例えば上下方向に3つ並んだ状態で形成される。スリット33の数及び配置については上記に限定されない。本実施形態において、スリット33は、全体として一方向、例えば上下方向に長手方向を有するように形成される。なお、スリット33は、全体として左右方向、斜め方向等のように、上下方向とは異なる方向に長手方向を有する構成であってもよい。
【0022】
フレーム部32は、スリット形成部31から左右方向に直線状に突出する。フレーム部32は、左右方向の両側の角部は、丸みを帯びた形状となっている。フレーム部32は、前側及び後側の両面が平面状である。フレーム部32は、位置決め用開口部32a及び固定用開口部32bを有する。位置決め用開口部32aは、後述する支持部材50の位置決め用突出部53aが挿入される。固定用開口部32bは、後述する固定部材60が挿入される。
【0023】
遮光部材30は、前方から見て、光源側レンズ20を覆うように形成される。この構成により、光源側レンズ20を通過した光を遮光部材30により遮光することが可能となる。
【0024】
投影レンズ40は、レンズ部41と、筒状部42と、フレーム部43とを有する。レンズ部41は、スリット33を通過した光を車両前方の路面に投影して照射パターンを形成する。投影レンズ40は、レンズ部41、筒状部42及びフレーム部43が一つの部材として形成される。なお、投影レンズ40は、レンズ部41、筒状部42及びフレーム部43の少なくとも1つが別部材で形成された構成であってもよい。レンズ部41は、光源11からの光を透過可能な材料を用いて形成される。このような材料としては、例えばアクリル等の樹脂材料が挙げられるが、他の材料が用いられてもよい。この場合、レンズ部41を構成する材料を用いて一体成型することで、投影レンズ40の全体を容易に形成することができる。投影レンズ40は、光源側レンズ20とは異なる材料により全体が形成された構成であるが、光源側レンズ20と同一の材料を用いて全体が形成されてもよい。なお、投影レンズ40は、レンズ部41とは異なる部分、すなわち筒状部42及びフレーム部43のうちの少なくとも一部がレンズ部41とは異なる材料を用いて形成されてもよい。
【0025】
レンズ部41は、入射面41aと、出射面41bとを有する(図7参照)。入射面41aは、スリット33を通過した光が入射する。出射面41bは、入射面41aから入射した光を前方に出射する。
【0026】
筒状部42は、レンズ部41を保持する。筒状部42は、例えば円筒状である。筒状部42は、レンズ部41とフレーム部43との間を接続する。筒状部42は、フレーム部43に対して前方に突出するように設けられる。この構成により、レンズ部41がフレーム部43に対して前方に配置された状態となる。
【0027】
フレーム部43は、筒状部42を介してレンズ部41を保持する。フレーム部43は、平板状である。フレーム部43は、筒状部42から上下方向に突出する環状部45と、筒状部42から左右方向に突出する帯状部46とを有する。環状部45は、筒状部42の外周に沿って環状に設けられる。帯状部46は、筒状部42から左右方向に直線状に設けられる。帯状部46の左右方向の両側の角部は、丸みを帯びた形状となっている。帯状部46は、位置決め用開口部46a及び固定用開口部46bを有する。位置決め用開口部46aは、後述する支持部材50の位置決め用突出部53aが挿入される。固定用開口部46bは、後述する固定部材60が挿入される。帯状部46は、接触部46c、46dを有する。接触部46cは、位置決め用開口部46aの外周に沿って配置され、帯状部46から後方に突出する。接触部46dは、固定用開口部46bの外周に沿って配置され、帯状部46から後方に突出する。接触部46c、46dは、突出方向の先端面が平面状に形成される。フレーム部43は、接触部46c、46dにおいて遮光部材30に接触する。この構成により、帯状部46のうち接触部46c、46dの突出方向の高さ等の寸法を適切に規定することで、フレーム部43の位置精度を確保することができる。
【0028】
支持部材50は、ベース部51と、フィン52と、固定部53とを有する。ベース部51は、平板状である。ベース部51は、光源部10を支持する支持面51aを有する。支持面51aは、ベース部51の前側の面であり、基板12を支持する。
【0029】
フィン52は、ベース部51から後方に突出する。フィン52は、複数設けられる。フィン52は、光源11において発生する熱を放出する。
【0030】
固定部53は、ベース部51の支持面51aから前方に突出している。固定部53は、フレーム部32及びフレーム部43を固定する。固定部53は、位置決め用突出部53aと、固定用開口部53bとを有する。位置決め用突出部53a及び固定用開口部53bは、固定部53の前方の端面53cに設けられる。
【0031】
位置決め用突出部53aは、前方に突出し、フレーム部32に設けられる位置決め用開口部32a、フレーム部43の帯状部46に設けられる位置決め用開口部46aを前後方向に貫通する。固定用開口部53bは、後述する固定部材60が挿入される。
【0032】
端面53cは、例えば平面状に形成される。端面53cは、光軸AXに垂直又はほぼ垂直となるように形成される。
【0033】
固定部材60は、フレーム部32及びフレーム部43を固定部53に固定する。固定部材60は、例えばねじ等の締結部材が用いられる。固定部材60は、フレーム部32に設けられる固定用開口部32b、フレーム部43の帯状部46に設けられる固定用開口部46bを貫通して、固定部53の固定用開口部53bに挿入される。
【0034】
次に、メタサーフェス部21の構成について具体的に説明する。図4は、メタサーフェス部21における位相分布の一例を示す図である。図4に示すように、メタサーフェス部21は、光源側レンズ20の光軸AXに対応する基準位置Qを含む基準領域21aから入射面20aに沿った放射方向に位相が周期的に変化するように位相分布が設定される。具体的には、メタサーフェス部21は、位相分布において基準領域21aから放射方向に位相が2πから0まで変化する第1周期に対応する部分を有する。本実施形態では、当該第1周期に対応する部分が中央領域23である。
【0035】
メタサーフェス部21は、中央領域23の外側に、第2周期以降の各周期に対応する部分を有する。第2周期に対応する部分は、中央領域23の外周部から放射方向に位相が2πから0まで変化する。本実施形態では、当該第2周期に対応する部分が周辺領域24である。また、位相分布における第3周期に対応する部分は、周辺領域24の外周部から放射方向に位相が2πから0まで変化する。本実施形態では、当該第3周期に対応する部分が周辺領域25である。また、位相分布における第4周期に対応する部分は、周辺領域25の外周部から放射方向に位相が2πから減少する。本実施形態では、当該第4周期に対応する部分が周辺領域26である。
【0036】
図5は、メタサーフェス部21を光軸AXの軸線方向から見た場合の一例を模式的に示す図である。図5に示すように、メタサーフェス部21において、ピラー部22は、中央領域23、周辺領域24、25、26の全体に亘って、基準位置Qを中心として第1方向C1と第2方向C2とに所定のピッチで複数配置される。第1方向C1は、入射面20aに沿ってスリット33の長手方向に平行な方向である。第2方向C2は、入射面20aに沿って第1方向C1に直交する方向である。本実施形態において、第1方向C1は上下方向であり、第2方向C2は左右方向である。
【0037】
メタサーフェス部21において、中央領域23は、基準位置Qを含み当該基準位置Qから離れるにつれてピラー部22の径が小さくなる部分を有する。中央領域23では、上記した基準領域21a(図4図5参照)において、ピラー部22の径が最大となっている。本実施形態において、基準領域21aに配置されるピラー部22は、径が同一である。中央領域23では、基準領域21aから放射方向に離れるにつれて、ピラー部22の径が徐々に小さくなっている。
【0038】
中央領域23では、基準領域21aにおいて、第1方向C1及び第2方向C2における中心位置が、ピラー部22の径が最大となるピーク位置21bとなる。当該ピーク位置21bは、基準位置Qに対して第1方向C1の下方にずれた位置である。このように、ピーク位置21bは、基準位置Qよりも第1方向C1の下方に配置される。
【0039】
中央領域23では、基準位置Qを基準として第1方向C1のピラー部22の数が第2方向C2のピラー部22の数よりも多い。中央領域23において、基準位置Qから第1方向C1の下方側に配置されるピラー部22の数は、基準位置Qから第2方向C2の左方側及び右方側にそれぞれ配置されるピラー部22の数に対して20%以上多くなっている。また、基準位置Qから第1方向C1の上方側に配置されるピラー部22の数は、基準位置Qから第2方向C2の左方側及び右方側にそれぞれ配置されるピラー部22の数に対して10%以上少なくなっている。なお、第1方向C1及び第2方向C2についての上記のピラー部22の数については、基準位置Qのピラー部22を含まない数である。また、上記のピラー部22の数については、一例であり、上記に限定されない。
【0040】
図6は、図5で示すメタサーフェス部21におけるピラー部22の径の変化を示す図である。図6では、基準位置Qから第1方向C1の下方(第1方向の一方)及び上方(第1方向の他方)に向けた径の変化を白抜き四角及び破線で示し、基準位置Qから第2方向C2の左方(第2方向の一方)及び右方(第2方向の他方)に向けた径の変化を黒丸及び実線で示している。
【0041】
図5及び図6に示すように、中央領域23において、基準位置Qに対して第1方向C1の下方側の方が、第1方向C1の上方側よりも、基準位置Qから離れる方向へのピラー部22の径の変化が緩やかである。つまり、基準位置Qから第1方向C1の下方側と上方側とにそれぞれ等しい距離だけ離れる場合において、ピラー部22の径の変化の割合は、下方側の方が上方側よりも小さい。換言すると、中央領域23において、基準位置Qに対して第1方向C1の下方側よりも、第1方向C1の上方側の方が、基準位置Qから離れる方向へのピラー部22の径の変化が急峻である。つまり、基準位置Qから第1方向C1の下方側と上方側とにそれぞれ等しい距離だけ離れる場合において、ピラー部22の径の変化の割合は、下方側よりも上方側の方が大きい。
【0042】
また、中央領域23において、基準位置Qから第2方向C2の左方側と第2方向C2の右方側とでは、ピラー部22の径の変化が同一である。つまり、中央領域23においては、基準位置Qを基準とした場合、ピラー部22の径の変化が第2方向C2について対称となっている。
【0043】
中央領域23において、基準位置Qから第1方向C1の下方側のピラー部22の径の変化は、基準位置Qから第2方向C2の左方側又は右方側のピラー部22の径の変化よりも緩やかである。つまり、基準位置Qから第1方向C1の下方側と第2方向C2の左方側(又は右方側)とにそれぞれ等しい距離だけ離れる場合において、ピラー部22の径の変化の割合は、第1方向C1の下方側の方が第2方向C2の左方側(又は右方側)よりも小さい。
【0044】
中央領域23において、基準位置Qから第1方向C1の上方側のピラー部22の径の変化は、基準位置Qから第2方向C2の左方側又は右方側のピラー部22の径の変化よりも急峻である。つまり、基準位置Qから第1方向C1の上方側と第2方向C2の左方側(又は右方側)とにそれぞれ等しい距離だけ離れる場合において、ピラー部22の径の変化の割合は、第1方向C1の上方側の方が第2方向C2の左方側(又は右方側)よりも大きい。
【0045】
中央領域23において、第1方向C1で径が最大となるピラー部22は、基準位置Qを含み当該基準位置Qから下方に延びる領域に設けられる。具体的には、基準位置Qに配置されるピラー部22と、当該基準位置Qから下方に並ぶ複数のピラー部22とが、第1方向C1で径が最大となる。
【0046】
また、周辺領域24、25、26は、中央領域23の外周を囲うように環状に設けられる。周辺領域24、25、26は、中央領域23から入射面20aに沿って離れる方向に多重に設けられる。それぞれの周辺領域24、25、26において、ピラー部22は、中央領域23から入射面20aに沿って離れるにつれて径が徐々に小さくなるように形成される。周辺領域24、25、26は、第1方向C1の下方側よりも上方側の方がピラー部22の径が最大となるピーク位置21cの数が多い。
【0047】
次に、上記のように構成された車両用灯具100の動作の一例を説明する。図7及び図8は、本実施形態に係る車両用灯具100の動作の一例を示す図である。図7は上方から見た図であり、図8は左方から見た図である。図8では、光源11及び光源側レンズ20側の構成を拡大して示している。運転者による方向指示器等の操作に応じて、又はハザードランプ等の点灯に連動して、車両用灯具100は、光源11の発光面11aから光を出射する。
【0048】
発光面11aの中心から出射された光Lは、光源側レンズ20の入射面20aに入射し、入射面20aに設けられるメタサーフェス部21の作用により入射波面が収束方向の湾曲波面に変換される。波面が変換された光Lは、第1方向C1については下方側に光が拡散され、かつ上方側に光の拡散が抑制されるように(図8参照)、第2方向C2については光軸AX側に集光されるように(図3及び図7参照)、出射面20bから前方に出射される。また、本実施形態において、光Lは、第1方向C1の最上部において、光軸AXに平行又はほぼ平行な方向に出射される。
【0049】
出射面20bから前方に出射された光Lは、遮光部材30のスリット形成部31に到達する。スリット形成部31に到達した光Lの一部は、遮光部材30のスリット33を通過し、残りは遮光部材30により遮光される。本実施形態では、メタサーフェス部21により第1方向C1の下方側に光Lが拡散された状態でスリット形成部31に到達するため、第1方向C1に長手方向を有するスリット33をカバーするように光Lが効率的に供給される。スリット33を通過した光Lは、レンズ部41の入射面41aに入射し、出射面41bから車両前方に出射される。
【0050】
図9は、車両用灯具100により路面に形成される照射パターンの一例を示す図である。図9に示すように、車両前方に出射された光Lにより、車両前方の路面上に、一方向に長手方向を有する照射パターンPが形成される。照射パターンPは、長手方向の全体に亘って十分な明るさで照射される。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る車両用灯具100は、光を出射する光源11と、板状であり、光源11からの光の波面を変換するメタサーフェス部21を有し、波面が変換された光を出射する光源側レンズ20と、光源側レンズ20で集光された光の一部を通過させるスリット33を有する遮光部材30と、スリット33を通過した光を路面に照射して照射パターンPを形成する投影レンズ40とを備え、スリット33は、一方向に長手方向を有するように形成され、メタサーフェス部21は、光源側レンズ20の光軸に対応する基準位置Qを中心として、スリット33の長手方向に平行な第1方向C1と、第1方向C1と直交する第2方向C2とに所定のピッチで複数配置されたピラー部22を有し、メタサーフェス部21は、基準位置Qを含み当該基準位置Qから離れるにつれてピラー部22の径が徐々に小さくなる部分を含む中央領域23を有し、中央領域23は、基準位置Qに対して第1方向C1の一方側の方が第1方向C1の他方側よりもピラー部22の径の変化が緩やかである。
【0052】
この構成によれば、光源側レンズ20が入射面20a及び出射面20bを有する平板状であり、光源11からの光の波面を収束方向の湾曲波面に変換するメタサーフェス部21を入射面20aに有するため、凸レンズを用いる場合に比べて、厚さを薄くすることができる。このため、出射面20bの位置を光源11側に配置させる構成とすることができ、遮光部材30への集光角度を小さくすることができる。したがって、投影レンズ40のうち収差の影響が大きい部分を利用することなく照射パターンPを形成できるため、照射パターンPの外観の低下を抑制することができる。また、スリット33が一方向に長手方向を有する構成において、メタサーフェス部21の中央領域23が、基準位置Qに対して第1方向C1の一方側の方が他方側よりもピラー部22の径の変化が緩やかであるため、メタサーフェス部21により第1方向C1の下方側に光Lが拡散された状態でスリット形成部31に到達する。このため、第1方向C1に長手方向を有するスリット33をカバーするように光Lが効率的に供給され、一方向に長手方向を有する照射パターンPが長手方向の全体に亘って十分な明るさで照射される。これにより、路面に照射されるパターンの外観が低下することを抑制することができる。
【0053】
本実施形態に係る車両用灯具100において、メタサーフェス部21は、中央領域23において、基準位置Qから第2方向C2の一方側と第2方向C2の他方側とでピラー部22の径の変化が同一である。この構成によれば、スリット33に対して第2方向C2については均一な光量で光を到達させることができる。これにより、照射パターンPが短手方向について均一な明るさで照射される。
【0054】
本実施形態に係る車両用灯具100において、メタサーフェス部21は、中央領域23において、基準位置Qから第1方向C1の一方側のピラー部22の径の変化が、基準位置Qから第2方向C2の一方又は他方側のピラー部22の径の変化よりも緩やかである。この構成によれば、第1方向C1の下方側に光Lを適切に拡散させることができる。
【0055】
本実施形態に係る車両用灯具100において、メタサーフェス部21は、中央領域23において、基準位置Qから第1方向C1の他方側のピラー部22の径の変化は、基準位置Qから第2方向C2の一方又は他方側のピラー部22の径の変化よりも急峻である。この構成によれば、第1方向C1の上方側については光Lの拡散を抑制しつつ、下方側に光Lを適切に拡散させることができる。
【0056】
本実施形態に係る車両用灯具100において、メタサーフェス部21は、中央領域23において、第1方向C1でピラー部22の径が最大となるピーク位置21bが基準位置Qよりも一方側に配置される。この構成によれば、第1方向C1の下方側に光Lを適切に拡散させることができる。
【0057】
本実施形態に係る車両用灯具100において、中央領域23は、基準位置Qを基準として第1方向C1のピラー部22の数が第2方向C2のピラー部22の数よりも多い。この構成によれば、第1方向C1の下方側に光Lを適切に拡散させることができる。
【0058】
本実施形態に係る車両用灯具100において、中央領域23は、基準位置Qから第1方向C1の一方側に配置されるピラー部22の数は基準位置Qから第2方向C2の左方側及び右方側にそれぞれ配置されるピラー部22の数に対して20%以上多く、基準位置Qから第1方向C1の他方側に配置されるピラー部22の数は基準位置Qから第2方向C2の左方側及び右方側にそれぞれ配置されるピラー部22の数に対して10%以上少ない。この構成によれば、第1方向C1の下方側に光Lを適切に拡散させることができる。
【0059】
本実施形態に係る車両用灯具100において、メタサーフェス部21は、基準位置Qから入射面20aに沿った放射方向に位相が周期的に変化するように位相分布が設定され、中央領域23は、基準位置Qを含む位相分布の第1周期に対応する領域であり、メタサーフェス部21は、中央領域23を囲うように環状に設けられ位相分布の第2周期以降の周期に対応する周辺領域24、25、26を有し、周辺領域24、25、26は、中央領域23から入射面20aに沿って離れるにつれてピラー部22の径が徐々に小さくなるように形成される。この構成によれば、第1方向C1の下方側に光Lを適切に拡散させることができる。
【0060】
本実施形態に係る車両用灯具100において、周辺領域24、25、26は、中央領域23から外側に離れる方向に多重に設けられ、第1方向C1の一方側よりも他方側の方がピラー部22の径が最大となるピーク位置21cの数が多い。この構成によれば、第1方向C1の下方側に光Lを適切に拡散させることができる。
【0061】
本開示の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、車両用灯具100が車両Mの前部に配置される構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。車両用灯具100は、車両Mの後部又は側部に配置される構成であり、車両Mの後方又は側方の路面に照射パターンを形成する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
AX…光軸、C1…第1方向、C2…第2方向、D1,D2,D3,D4…距離、L…光、M…車両、P…照射パターン、Q…基準位置、10…光源部、11…光源、11a…発光面、12…基板、20…光源側レンズ、20a,41a…入射面、20b,41b…出射面、21…メタサーフェス部、21a…基準領域、21b,21c…ピーク位置、22…ピラー部、23…中央領域、24,25,26…周辺領域、30…遮光部材、31…スリット形成部、32,43…フレーム部、32a,46a…位置決め用開口部、32b,46b,53b…固定用開口部、33…スリット、40…投影レンズ、41…レンズ部、42…筒状部、45…環状部、46…帯状部、46c,46d…接触部、50…支持部材、51…ベース部、51a…支持面、52…フィン、53…固定部、53a…位置決め用突出部、53c…端面、60…固定部材、100…車両用灯具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9