(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083958
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】箱抜き型枠および箱抜き部の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/32 20060101AFI20240617BHJP
E02D 27/42 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
E02D27/32 A
E02D27/42 C
E02D27/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198075
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 拓己
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA05
2D046DA37
2D046DA38
(57)【要約】
【課題】コンクリート打設時の充填確認とコンクリート硬化後の撤去作業が容易で別の工事地点に転用可能な箱抜き型枠および箱抜き部の施工方法を提供する。
【解決手段】基材5の下方に打設されるコンクリート2の上面に凹状の箱抜き部12を形成するために用いられる箱抜き型枠10A、10Bであって、前記箱抜き部12の側面を形成するために設けられ、離型性を有する側面材20と、前記箱抜き部12の上面の一部を形成するために前記側面材20の下側から内側に延び出して設けられ、離型性を有する底面材22とからなる一つまたは複数の型枠本体14と、前記型枠本体14に設けられ、前記型枠本体14を前記基材5に対して着脱可能に吊り下げ固定する固定手段16とを備えるようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の下方に打設されるコンクリートの上面に凹状の箱抜き部を形成するために用いられる箱抜き型枠であって、
前記箱抜き部の側面を形成するために設けられ、離型性を有する側面材と、前記箱抜き部の上面の一部を形成するために前記側面材の下側から内側に延び出して設けられ、離型性を有する底面材とからなる一つまたは複数の型枠本体と、
前記型枠本体に設けられ、前記型枠本体を前記基材に対して着脱可能に吊り下げ固定する固定手段とを備えることを特徴とする箱抜き型枠。
【請求項2】
前記型枠本体は、平面視で前後方向に延びる帯状の前記基材の左側と右側にそれぞれ配置されるとともに、左右の前記底面材の先端は左右方向に間隔をあけて突き合わされ、前記箱抜き部は、前後方向から見て凹溝状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の箱抜き型枠。
【請求項3】
前記基材に対する前記型枠本体の高さ位置を調整するための高さ位置調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の箱抜き型枠。
【請求項4】
基材の下方に打設されるコンクリートの上面に凹状の箱抜き部を形成するための施工方法であって、
前記箱抜き部の側面を形成するために設けられ、離型性を有する側面材と、前記箱抜き部の上面の一部を形成するために前記側面材の下側から内側に延び出して設けられ、離型性を有する底面材とからなる一つまたは複数の型枠本体と、前記型枠本体に設けられ、前記型枠本体を前記基材に対して着脱可能に吊り下げ固定する固定手段とを備える箱抜き型枠を前記固定手段を介して前記基材に吊り下げ固定するステップと、
その後、前記箱抜き型枠の側方および下方にコンクリートを打設するステップと、
打設したコンクリートが硬化した後に、コンクリートから前記箱抜き型枠を取り外すステップとを有することを特徴とする箱抜き部の施工方法。
【請求項5】
前記型枠本体は、平面視で前後方向に延びる帯状の前記基材の左側と右側にそれぞれ配置されるとともに、左右の前記底面材の先端は左右方向に間隔をあけて突き合わされ、前記箱抜き部は、前後方向から見て凹溝状に形成されることを特徴とする請求項4に記載の箱抜き部の施工方法。
【請求項6】
前記箱抜き型枠は、前記基材に対する前記型枠本体の高さ位置を調整するための高さ位置調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項4または5に記載の箱抜き部の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上風力発電設備用基礎などのコンクリート工事に用いられる箱抜き型枠および箱抜き部の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、数MWクラスの発電能力を有する陸上風力発電装置が多く建設されている。当該規模の風力発電装置は、高さが100m以上となるものも多く、その基礎の設計や施工は大きな検討事項となっている。
図5(1)、(2)に示すように、基礎1は鉄筋コンクリート製であり、通常、鉛直断面を2段の凸状とし、平面を多角形または円形として設計される(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0003】
基礎1のコンクリート2には、リング状にアンカーボルト3が埋め込まれ、それらの上部が風車タワー4のベースプレート5と連結される。
図5(3)に示すように、ベースプレート5直下は、コンクリートではなく、圧縮強度が高いグラウト6を注入する。その深さは、ベースプレート5下面から200mm程度とすることが多い。
【0004】
基礎1のコンクリート打設工事では、ベースプレート5直下に箱抜き型枠(浮き型枠)を配置してから、コンクリート2を打設する。コンクリート2が硬化した後、箱抜き型枠を撤去し、箱抜き型枠により形成された凹状の空間にグラウト6を注入する。箱抜き型枠は、スタイロフォーム(登録商標)などの押出発泡ポリスチレンや木枠などを用いて施工案件毎に設計、作製しており、鉛直断面が長方形で底のあるものを使用することが多い。また、撤去後の箱抜き型枠は処分している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4242445号公報
【特許文献2】特開2011-236731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の従来の箱抜き型枠は底のある型枠のため、コンクリート打設時に箱抜き型枠の下方のコンクリート2の充填状況を目視確認することができなかった。充填不足を防ぐために、作業員がコンクリート2に必要以上にバイブレータをかけて締固めを行う必要があった。万が一、未充填箇所があった場合は、その補修方法を構造設計の観点から検討する必要があり、結論が出るまで工事を中断せざるを得ない。
【0007】
また、箱抜き型枠の材料として押出発泡ポリスチレンを使用する場合、材料が硬化後のコンクリートに付着するため、その撤去に多大な労力を要していた。さらに、押出発泡ポリスチレンは転用ができないため、大量に産業廃棄物を発生するおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、コンクリート打設時の充填確認とコンクリート硬化後の撤去作業が容易で別の工事地点に転用可能な箱抜き型枠および箱抜き部の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る箱抜き型枠は、基材の下方に打設されるコンクリートの上面に凹状の箱抜き部を形成するために用いられる箱抜き型枠であって、前記箱抜き部の側面を形成するために設けられ、離型性を有する側面材と、前記箱抜き部の上面の一部を形成するために前記側面材の下側から内側に延び出して設けられ、離型性を有する底面材とからなる一つまたは複数の型枠本体と、前記型枠本体に設けられ、前記型枠本体を前記基材に対して着脱可能に吊り下げ固定する固定手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の箱抜き型枠は、上述した発明において、前記型枠本体は、平面視で前後方向に延びる帯状の前記基材の左側と右側にそれぞれ配置されるとともに、左右の前記底面材の先端は左右方向に間隔をあけて突き合わされ、前記箱抜き部は、前後方向から見て凹溝状に形成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の箱抜き型枠は、上述した発明において、前記基材に対する前記型枠本体の高さ位置を調整するための高さ位置調整手段をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る箱抜き部の施工方法は、基材の下方に打設されるコンクリートの上面に凹状の箱抜き部を形成するための施工方法であって、前記箱抜き部の側面を形成するために設けられ、離型性を有する側面材と、前記箱抜き部の上面の一部を形成するために前記側面材の下側から内側に延び出して設けられ、離型性を有する底面材とからなる一つまたは複数の型枠本体と、前記型枠本体に設けられ、前記型枠本体を前記基材に対して着脱可能に吊り下げ固定する固定手段とを備える箱抜き型枠を前記固定手段を介して前記基材に吊り下げ固定するステップと、その後、前記箱抜き型枠の側方および下方にコンクリートを打設するステップと、打設したコンクリートが硬化した後に、コンクリートから前記箱抜き型枠を取り外すステップとを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る他の箱抜き部の施工方法は、上述した発明において、前記型枠本体は、平面視で前後方向に延びる帯状の前記基材の左側と右側にそれぞれ配置されるとともに、左右の前記底面材の先端は左右方向に間隔をあけて突き合わされ、前記箱抜き部は、前後方向から見て凹溝状に形成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る他の箱抜き部の施工方法は、上述した発明において、前記箱抜き型枠は、前記基材に対する前記型枠本体の高さ位置を調整するための高さ位置調整手段をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る箱抜き型枠によれば、基材の下方に打設されるコンクリートの上面に凹状の箱抜き部を形成するために用いられる箱抜き型枠であって、前記箱抜き部の側面を形成するために設けられ、離型性を有する側面材と、前記箱抜き部の上面の一部を形成するために前記側面材の下側から内側に延び出して設けられ、離型性を有する底面材とからなる一つまたは複数の型枠本体と、前記型枠本体に設けられ、前記型枠本体を前記基材に対して着脱可能に吊り下げ固定する固定手段とを備えるので、底面材が存在しない部分から箱抜き部の下方周辺のコンクリートの充填状況を目視確認することができる。また、側面材および底面材は硬化後のコンクリートから容易に離型可能であり、型枠本体は基材から取り外し可能である。このため、型枠本体の撤去作業を容易に行えるとともに、撤去した型枠本体は別の工事地点に転用可能である。したがって、コンクリート打設時の充填確認とコンクリート硬化後の撤去作業が容易で別の工事地点に転用可能な箱抜き型枠を提供することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る他の箱抜き型枠によれば、前記型枠本体は、平面視で前後方向に延びる帯状の前記基材の左側と右側にそれぞれ配置されるとともに、左右の前記底面材の先端は左右方向に間隔をあけて突き合わされ、前記箱抜き部は、前後方向から見て凹溝状に形成されるので、左右の底面材の間から、凹溝状の箱抜き部の下方周辺のコンクリートの充填状況を容易に目視確認することができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る他の箱抜き型枠によれば、前記基材に対する前記型枠本体の高さ位置を調整するための高さ位置調整手段をさらに備えるので、型枠本体の高さ位置を所望の位置に設定することができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る箱抜き部の施工方法によれば、基材の下方に打設されるコンクリートの上面に凹状の箱抜き部を形成するための施工方法であって、前記箱抜き部の側面を形成するために設けられ、離型性を有する側面材と、前記箱抜き部の上面の一部を形成するために前記側面材の下側から内側に延び出して設けられ、離型性を有する底面材とからなる一つまたは複数の型枠本体と、前記型枠本体に設けられ、前記型枠本体を前記基材に対して着脱可能に吊り下げ固定する固定手段とを備える箱抜き型枠を前記固定手段を介して前記基材に吊り下げ固定するステップと、その後、前記箱抜き型枠の側方および下方にコンクリートを打設するステップと、打設したコンクリートが硬化した後に、コンクリートから前記箱抜き型枠を取り外すステップとを有するので、底面材が存在しない部分から箱抜き部の下方周辺のコンクリートの充填状況を目視確認することができる。また、側面材および底面材は硬化後のコンクリートから容易に離型可能であり、型枠本体は基材から取り外し可能である。このため、型枠本体の撤去作業を容易に行える。したがって、コンクリート打設時の充填確認とコンクリート硬化後の撤去作業が容易な箱抜き部の施工方法を提供することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る他の箱抜き部の施工方法によれば、前記型枠本体は、平面視で前後方向に延びる帯状の前記基材の左側と右側にそれぞれ配置されるとともに、左右の前記底面材の先端は左右方向に間隔をあけて突き合わされ、前記箱抜き部は、前後方向から見て凹溝状に形成されるので、左右の底面材の間から、凹溝状の箱抜き部の下方周辺のコンクリートの充填状況を容易に目視確認することができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係る他の箱抜き部の施工方法によれば、前記箱抜き型枠は、前記基材に対する前記型枠本体の高さ位置を調整するための高さ位置調整手段をさらに備えるので、型枠本体の高さ位置を所望の位置に設定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係る箱抜き型枠の実施の形態を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る箱抜き部の施工方法の実施の形態を示す側断面図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態の箱抜き型枠の吊り下げ固定状況を示す概略斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態の箱抜き部の施工方法を示す概略斜視図である。
【
図5】
図5は、従来の陸上風力発電設備の基礎構造を示す図であり、(1)は概略平面図、(2)は側断面図、(3)は(2)のA部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る箱抜き型枠および箱抜き部の施工方法の実施の形態について、陸上風力発電設備の風車タワーの基礎コンクリート打設工事に適用する場合を例にとり図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
本実施の形態に適用される基礎は、
図5(1)、(2)に示すように、側面視で凸状の鉄筋コンクリート製であり、地盤に施工されるものである。基礎1のコンクリート2の中央の立ち上がり部は平面視で円盤状であり、その上面には、円環帯状のベースプレート5が同心状に配置されている。ベースプレート5の上面には、風車タワー4の基部の鋼製部材が固定されている。ベースプレート5の円の中心と、風車アワー4の鋼製部材の断面中心は略一致している。ベースプレート5には、半径方向両側に対に配置したアンカーボルト3が円周方向に間隔をあけて複数設けられる。アンカーボルト3の下端は、コンクリート2内部に埋設される円環帯状のアンカープレート7に連結される。コンクリート2内部には、図示しない複数の鉄筋が配置される。
【0024】
図1および
図2に示すように、本実施の形態に係る箱抜き型枠10は、ベースプレート5(基材)の下方に打設されるコンクリート2の上面に凹状の箱抜き部12を形成するために用いられ、ベースプレート5の内周側に配置される箱抜き型枠10Aと、外周側に配置される箱抜き型枠10Bとにより構成される。
【0025】
図1に示すように、内周側の箱抜き型枠10Aは、鋼製の円環状の型枠本体14と、固定手段16と、高さ位置調整手段18とを備えており、基本的に他の施工地点に何度でも転用可能である。なお、外周側の箱抜き型枠10Bは、内周側の箱抜き型枠10Aと円環帯状のベースプレート5の中心線に関して略対称的な形状であるので図示を省略する。
【0026】
型枠本体14は、側面材20と底面材22とからなる。側面材20は、箱抜き部12の側面を形成するために設けられ、離型性を有し、過度なコンクリート吹き上がりを防止する返し形状の薄肉の鋼板である。底面材22は、箱抜き部12の上面の一部を形成するために側面材20の下側から折れ曲がって内側に延び出して設けられ、離型性を有する薄肉の鋼板である。内周側の型枠本体14の側面材20の側面は、円錐台の側面と相似しており、底面材22の底面は、円錐台の底面と同一平面内に配置された円環帯状の平面である。型枠本体14は、周方向に複数個(例えば5つ)に分割して構成され、ボルト接合などにより周方向に着脱自在に接続可能である。なお、外周側の型枠本体14の側面材20の側面は、逆円錐台の側面と相似し、底面材22の底面は、逆円錐台の底面の一部をなす円環帯状の平面である。なお、型枠本体14には、施工位置を容易に目視にて把握できるようにマーキング等の目印(例えば方角表示など)を設けてもよい。
【0027】
図2に示すように、外周側と内周側の箱抜き型枠10A、10Bは、平面視で円周方向(前後方向)に延びるベースプレート5の外周側(左側)と内周側(右側)にそれぞれ配置されるとともに、それぞれの底面材22の先端は内外方向(左右方向)に間隔をあけて突き合わされる。外周側と内周側の箱抜き型枠10A、10Bによってベースプレート5直下に形成される型枠は、鉛直断面視で下から上に行くにしたがって開口幅が大きくなる形状であるため、長方形断面としていた従来の箱抜き型枠と比較するとコンクリートの充填性が向上する。なお、外周側と内周側の箱抜き型枠10A、10Bは、ベースプレート5直下で左右に分離独立しているが、連結材によって互いに連結していてもよい。
【0028】
固定手段16は、
図1および
図3に示すように、型枠本体14をベースプレート5の縁部に対して着脱可能に吊り下げ固定するものであり、型枠本体14の側面材20に高さ位置調整手段18を介して接続されたコ字状のクランプ24からなる。固定手段16は、型枠本体14の周方向に所定の間隔で複数設けられる。クランプ24は、ベースプレート5の様々な厚さに対応可能なように縁部を上下から挟んで固定可能である。クランプ24には、コ字状の本体26と、その本体26の一方のフランジ28にねじ通されて他方のフランジ30に向かって進退する進退軸32と、そのハンドル34とからなるシャコ万力を用いてもよい。クランプ24を介して型枠本体14をコンクリート打設前のベースプレート5に容易に取付けることが可能である。なお、コンクリート打設時の型枠本体14の横ずれ等を防止するために、型枠本体14に対して水平方向の補強材を設けてもよい。
【0029】
高さ位置調整手段18は、ベースプレート5に対する型枠本体14の高さ位置を調整するものであり、側面材20の上面側に固定した係止部36に対して回動自在に取付けられる基部材38と、基部材38に対して上下方向移動可能に立設された可動部材40とからなる。可動部材40の上端にクランプ24の本体26が保持される。可動部材40の上下方向位置の調整は、基部材38の上部に設けた高さ調整ねじのつまみ42を締め付けたり、緩めることにより行われる。可動部材40の上下方向位置を調整することで、型枠本体14の高さ位置を無段階で所望の位置に設定することができる。これにより、箱抜き部12(グラウト部)の深さを所望の深さに設定することができる。
【0030】
上記構成の動作および作用について説明する。
図2に示すように、コンクリート5の打設前に、周方向に分割した型枠本体14を周方向に連結して、ベースプレート5の外周側および内周側に箱抜き型枠10A、10Bを配置するとともに、固定手段16を介して箱抜き型枠10A、10Bをそれぞれ直上のベースプレート5に吊り下げ固定する。
図3に、外周側の箱抜き型枠10Bの吊り下げ固定時の状況を示す。この図に示すように、固定手段16のクランプ24をベースプレート5の縁部に固定し、高さ位置調整手段18により型枠本体14の高さ位置を所定の位置に調整し、底面材22を水平に配置する。内周側の箱抜き型枠10Aについても同様にベースプレート5に吊り下げ固定する。これにより、外周側と内周側の箱抜き型枠10A、10Bをベースプレート5の外周側と内周側にそれぞれ配置し、それぞれの底面材22の先端どうしを内外方向に間隔をあけて突き合わせ、同一平面上に配置する。なお、コンクリート打設箇所には、鉄筋Sを配筋しておくものとする。
【0031】
次に、内周側の箱抜き型枠10Aの内周側方と、外周側の箱抜き型枠10Bの外周側方とに、それぞれコンクリート2を打設する。
図2に示すように、外周側と内周側の箱抜き型枠10A、10Bの底面材22の先端どうしは、内外方向に間隔をあけて突き合わされるため、底面材22どうしの間は、底面材22が存在しない中抜き部44となる。したがって、この中抜き部44から下方周辺のコンクリート2の充填状況を容易に目視確認することができる。なお、底面材22どうしの間の部分については、底面材22の高さまでコンクリート2を打設する。
【0032】
コンクリート2が硬化した後、ベースプレート5から固定手段16のクランプ24を取り外し、コンクリート2から内周側の箱抜き型枠10Aを離型して撤去する。
図4に、内周側の箱抜き型枠10Aを撤去した後の状況(ただし、固定手段16および高さ位置調整手段18の図示は省略)を示す。外周側の箱抜き型枠10Bについても同様に離型して撤去する。以上の手順により、ベースプレート5の直下に鉛直断面視で台形の凹溝状の箱抜き部12を施工することができる。施工した箱抜き部12には、後工程でグラウトを注入する。
【0033】
本実施の形態によれば、底面材22が存在しない部分から箱抜き部12の下方周辺のコンクリート2の充填状況を目視確認することができる。型枠本体14は硬化後のコンクリート2から容易に離型可能であり、型枠本体14はベースプレート5から取り外し可能である。このため、箱抜き型枠10A、10Bの撤去作業を容易に行えるとともに、撤去した箱抜き型枠10A、10Bは別の工事地点に転用可能である。したがって、コンクリート打設時の充填確認とコンクリート硬化後の撤去作業が容易で別の工事地点に転用可能な箱抜き型枠を提供することができる。
【0034】
本実施の形態によれば、未充填等の不具合の発生を防止できるため、コンクリートの充填性を高め、基礎コンクリートの品質を向上することができる。また、転用可能なため、仮設備コストを削減することができる。また、固定手段16および高さ位置調整手段18を介してベースプレート5の周辺直下に容易に配置することができ、型枠設置の施工性が向上する。また、箱抜き部12の深さの施工精度を高めることができる。
【0035】
以上説明したように、本発明に係る箱抜き型枠によれば、基材の下方に打設されるコンクリートの上面に凹状の箱抜き部を形成するために用いられる箱抜き型枠であって、前記箱抜き部の側面を形成するために設けられ、離型性を有する側面材と、前記箱抜き部の上面の一部を形成するために前記側面材の下側から内側に延び出して設けられ、離型性を有する底面材とからなる一つまたは複数の型枠本体と、前記型枠本体に設けられ、前記型枠本体を前記基材に対して着脱可能に吊り下げ固定する固定手段とを備えるので、底面材が存在しない部分から箱抜き部の下方周辺のコンクリートの充填状況を目視確認することができる。また、側面材および底面材は硬化後のコンクリートから容易に離型可能であり、型枠本体は基材から取り外し可能である。このため、型枠本体の撤去作業を容易に行えるとともに、撤去した型枠本体は別の工事地点に転用可能である。したがって、コンクリート打設時の充填確認とコンクリート硬化後の撤去作業が容易で別の工事地点に転用可能な箱抜き型枠を提供することができる。
【0036】
また、本発明に係る他の箱抜き型枠によれば、前記型枠本体は、平面視で前後方向に延びる帯状の前記基材の左側と右側にそれぞれ配置されるとともに、左右の前記底面材の先端は左右方向に間隔をあけて突き合わされ、前記箱抜き部は、前後方向から見て凹溝状に形成されるので、左右の底面材の間から、凹溝状の箱抜き部の下方周辺のコンクリートの充填状況を容易に目視確認することができる。
【0037】
また、本発明に係る他の箱抜き型枠によれば、前記基材に対する前記型枠本体の高さ位置を調整するための高さ位置調整手段をさらに備えるので、型枠本体の高さ位置を所望の位置に設定することができる。
【0038】
また、本発明に係る箱抜き部の施工方法によれば、基材の下方に打設されるコンクリートの上面に凹状の箱抜き部を形成するための施工方法であって、前記箱抜き部の側面を形成するために設けられ、離型性を有する側面材と、前記箱抜き部の上面の一部を形成するために前記側面材の下側から内側に延び出して設けられ、離型性を有する底面材とからなる一つまたは複数の型枠本体と、前記型枠本体に設けられ、前記型枠本体を前記基材に対して着脱可能に吊り下げ固定する固定手段とを備える箱抜き型枠を前記固定手段を介して前記基材に吊り下げ固定するステップと、その後、前記箱抜き型枠の側方および下方にコンクリートを打設するステップと、打設したコンクリートが硬化した後に、コンクリートから前記箱抜き型枠を取り外すステップとを有するので、底面材が存在しない部分から箱抜き部の下方周辺のコンクリートの充填状況を目視確認することができる。また、側面材および底面材は硬化後のコンクリートから容易に離型可能であり、型枠本体は基材から取り外し可能である。このため、型枠本体の撤去作業を容易に行える。したがって、コンクリート打設時の充填確認とコンクリート硬化後の撤去作業が容易な箱抜き部の施工方法を提供することができる。
【0039】
また、本発明に係る他の箱抜き部の施工方法によれば、前記型枠本体は、平面視で前後方向に延びる帯状の前記基材の左側と右側にそれぞれ配置されるとともに、左右の前記底面材の先端は左右方向に間隔をあけて突き合わされ、前記箱抜き部は、前後方向から見て凹溝状に形成されるので、左右の底面材の間から、凹溝状の箱抜き部の下方周辺のコンクリートの充填状況を容易に目視確認することができる。
【0040】
また、本発明に係る他の箱抜き部の施工方法によれば、前記箱抜き型枠は、前記基材に対する前記型枠本体の高さ位置を調整するための高さ位置調整手段をさらに備えるので、型枠本体の高さ位置を所望の位置に設定することができる。
【0041】
なお、2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施の形態に係る箱抜き型枠および箱抜き部の施工方法は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「15.陸の豊かさも守ろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明に係る箱抜き型枠および箱抜き部の施工方法は、陸上風力発電設備などの基礎コンクリート打設工事に有用であり、特に、コンクリート打設時の充填確認とコンクリート硬化後の撤去作業を容易にするのに適している。
【符号の説明】
【0043】
1 基礎
2 コンクリート
3 アンカーボルト
4 風車タワー
5 ベースプレート(基材)
6 グラウト
7 アンカープレート
10,10A,10B 箱抜き型枠
12 箱抜き部
14 型枠本体
16 固定手段
18 高さ位置調整手段
20 側面材
22 底面材
24 クランプ
36 係止部
38 基部材
40 可動部材
42 つまみ
44 中抜き部
S 鉄筋