IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人豊橋技術科学大学の特許一覧 ▶ トーヨーメタル株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-乗用型屋外清掃機の自動化装置 図1
  • 特開-乗用型屋外清掃機の自動化装置 図2
  • 特開-乗用型屋外清掃機の自動化装置 図3
  • 特開-乗用型屋外清掃機の自動化装置 図4
  • 特開-乗用型屋外清掃機の自動化装置 図5
  • 特開-乗用型屋外清掃機の自動化装置 図6
  • 特開-乗用型屋外清掃機の自動化装置 図7
  • 特開-乗用型屋外清掃機の自動化装置 図8
  • 特開-乗用型屋外清掃機の自動化装置 図9
  • 特開-乗用型屋外清掃機の自動化装置 図10
  • 特開-乗用型屋外清掃機の自動化装置 図11
  • 特開-乗用型屋外清掃機の自動化装置 図12
  • 特開-乗用型屋外清掃機の自動化装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083963
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】乗用型屋外清掃機の自動化装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20240617BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240617BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20240617BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20240617BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240617BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240617BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B60W30/10
G05D1/02 W
B60W30/09
B60W40/02
B60L15/20 J
G08G1/00 X
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198086
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(71)【出願人】
【識別番号】598013404
【氏名又は名称】トーヨーメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】相馬 史拓
(72)【発明者】
【氏名】山口 尚也
(72)【発明者】
【氏名】大久保 敦之
【テーマコード(参考)】
3D241
5H125
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA33
3D241BC01
3D241BC02
3D241CA18
3D241CC03
3D241CC17
3D241CE06
3D241DA13Z
3D241DA52Z
3D241DB13Z
3D241DB15Z
3D241DB16Z
3D241DC33Z
5H125AA01
5H125AA20
5H125AB02
5H125BA00
5H125CA01
5H125CA13
5H125CA18
5H125DD15
5H125EE42
5H125EE52
5H125EE55
5H125EE66
5H181AA07
5H181AA27
5H181BB04
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF17
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL09
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB11
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD07
5H301FF11
5H301GG08
5H301GG17
5H301HH01
5H301HH02
5H301HH04
5H301LL06
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】 現在使用している乗用型屋外清掃機を使用しつつ自動化するための装置を提供する。
【解決手段】 清掃機の操舵軸を操作する第1のアクチュエータと、清掃機のアクセルペダルを操作する第2のアクチュエータと、清掃機の位置情報を取得する位置情報取得部と、清掃機の向きに関する情報を取得する向き情報取得部と、第1および第2のアクチュエータを操作する制御部とを備える。制御部は、操舵軸に対して予め定めた操舵角を出現させるとともに、アクセルペダルに対して予め定めた踏み込み量を出現させるときの位置情報取得部および向き情報取得部の情報に基づき、第1および第2のアクチュエータによる駆動力に伴う清掃機の旋回および走行速度によって特定される走行特性を算出し、走行特性により、清掃領域内を走行可能に制御する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外で使用される乗用型の清掃機を自動運転化するための自動化装置であって、
前記清掃機の操舵軸を操作する第1のアクチュエータと、前記清掃機のアクセルペダルを操作する第2のアクチュエータと、前記清掃機の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記清掃機の向きに関する情報を取得する向き情報取得部と、前記第1および第2のアクチュエータを操作する制御部とを備え、
前記制御部は、前記操舵軸に対して予め定めた操舵角を出現させるとともに、前記アクセルペダルに対して予め定めた踏み込み量を出現させるときの前記位置情報取得部および前記向き情報取得部の情報に基づき、前記第1および第2のアクチュエータによる駆動力に伴う前記清掃機の旋回および走行速度によって特定される走行特性を算出し、前記走行特性により、清掃領域内を走行可能に制御するものであることを特徴とする乗用型屋外清掃機の自動化装置。
【請求項2】
前記清掃領域は、予め定めた通過ポイントを有しており、前記制御部は、前記清掃機の位置および通過ポイントをそれぞれ該清掃機とともに移動する極座標系での位置へ極座標変換したうえ、目標軌道を演算するものである請求項1に記載の乗用型屋外清掃機の自動化装置。
【請求項3】
前記通過ポイントは、それぞれ通過順位が付されており、前記制御部は、前記通過順位の小さい通過ポイントに対して前記目標軌道を演算し、該通過ポイントに到達後、次順位の通過ポイントに対する前記目標軌道を演算するものである請求項2に記載の乗用型屋外清掃機の自動化装置。
【請求項4】
さらに、前記清掃機の前方に向けて配置される障害物検知手段を備え、
前記制御部は、前記障害物検知手段により検知された障害物の位置情報を極座標変換したうえで、前記目標軌道を迂回する迂回軌道を演算するものである請求項1~3のいずれかに記載の乗用型屋外清掃機の自動化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型屋外清掃機を自動化するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に自動化された清掃機は、掃除ロボットと称され、無人で移動しつつ床面等を清掃するものであり、自律自走型の走行装置に清掃機能が搭載されたものである。この種の技術にあっては、移動経路の選定および障害物の回避手段について各種の開発が進んでいる(特許文献1および2参照)。ところが、これらの掃除ロボットは、基本的には、屋内での使用を前提とし、かつ予め想定された走行特性(旋回および走行速度など)によって製造されることを前提とするものであり、既存の清掃機を自動化するものではなかった。特に乗用型の清掃機にあっては、走行特性は操作者によって自在に調整されるように広範囲な自由度を有するものとされており、単に移動させるだけで自動化できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-017428号公報
【特許文献2】特開2022-083886号公報
【特許文献3】特開2022-155102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
屋外を走行する走行体について自動化する場合には、障害物の検知が重要となるが、この種の技術については、車両等の移動体に関し、走行体周辺の状態を撮影し、これを画像解析することにより車外状態を認識するものとして開発されてきたものであった(特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、屋外清掃機にあっては、乗用型清掃機を操作者がアクセルとハンドルを操作しながら走行させるものであり、現在のところ自動化に関する技術開発は進んでいないのが現状である。その理由としては、公道での使用ができないことが原因と思われる。
【0006】
ところが、例えば閉園後の遊園地や施設の駐車場など、公道ではない広大な敷地においても路面等の清掃は必要であり、これを乗用型屋外清掃機によって清掃するためには、複数の清掃機を導入し、また複数の作業員が操作しなければならず、コスト面における負担が大きかった。また、無人で走行させるための方法として、誘導用電線等を埋設し、当該誘導用電線に沿って清掃機を走行させる方法なども考えられるが、そのための工事費用が高額となるうえ、誘導用電線が埋設されていない領域に清掃機を走行させることができないものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、現在使用している乗用型屋外清掃機を使用しつつ自動化するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、屋外で使用される乗用型の清掃機を自動運転化するための自動化装置であって、前記清掃機の操舵軸を操作する第1のアクチュエータと、前記清掃機のアクセルペダルを操作する第2のアクチュエータと、前記清掃機の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記清掃機の向きに関する情報を取得する向き情報取得部と、前記第1および第2のアクチュエータを操作する制御部とを備え、前記制御部は、前記操舵軸に対して予め定めた操舵角を出現させるとともに、前記アクセルペダルに対して予め定めた踏み込み量を出現させるときの前記位置情報取得部および前記向き情報取得部の情報に基づき、前記第1および第2のアクチュエータによる駆動力に伴う前記清掃機の旋回および走行速度によって特定される走行特性を算出し、前記走行特性により、清掃領域内を走行可能に制御するものであることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、乗用型屋外清掃機を操作するためのハンドルとアクセルは、それぞれアクチュエータによって操作可能となるため、無人によって走行させることが可能となる。そして、清掃機を走行させる場合には、位置情報取得部および向き情報取得部によって取得される位置および向きの変化を参照しつつ清掃機の旋回および走行速度によって特定される走行特性を算出し得ることから、個々の清掃機に応じて必要となる駆動力を提供することができる。すなわち、アクセルペダルの変化量に応じて走行速度が増減するため、所定の速度で走行させる場合のアクセルペダルの踏み込み量を調整し、また、目的とする位置までの移動に際して旋回する場合、その旋回に必要な操舵軸の回転角度のほか、旋回可能な限界角度などの情報に基づいて、移動経路を設定することが可能となる。
【0010】
上記構成の発明において、前記清掃領域は、予め定めた通過ポイントを有しており、前記制御部は、前記清掃機の位置および通過ポイントをそれぞれ該清掃機とともに移動する極座標系での位置へ極座標変換したうえ、目標軌道を演算するものとすることができる。
【0011】
上記構成の場合には、走行に必要な起点および目標点を極座標とすることにより、清掃機の現在位置を起点として通過ポイントの位置を距離と角度のみで特定することができ、清掃領域内における清掃機の位置にかかわらず、移動すべき経路(目標軌道)を正確に演算することが可能となる。そして、目標軌道が決定されることにより、当該目標軌道を基準として清掃機を走行させることで所定の清掃領域を清掃することができる。
【0012】
また、上記構成の発明において、前記通過ポイントは、それぞれ通過順位が付されており、前記制御部は、前記通過順位の小さい通過ポイントに対して前記目標軌道を演算し、該通過ポイントに到達後、次順位の通過ポイントに対する前記目標軌道を演算するものとすることができる。
【0013】
上記構成の場合には、通過ポイントの設定により、清掃機を自在に走行させることができることとなる。すなわち、清掃機は通過ポイントに対して直線的に走行するものであることから、直線的に移動する順序を確定すれば、複数回の往復移動のほか、直線的な周回移動も可能となり、また直線の組合せによる概略螺旋状となるような移動も可能となる。
【0014】
上記構成の発明においては、さらに、前記清掃機の前方に向けて配置される障害物検知手段を備えるものとし、かつ、前記制御部は、前記障害物検知手段により検知された障害物の位置情報を極座標変換したえうで、前記目標軌道を迂回する迂回軌道を演算するものとすることができる。
【0015】
上記構成の場合には、障害物を回避しつつ、最短距離によって目標軌道に復帰させることが可能となる。なお、迂回軌道の演算に際しても、走行特性が参照され、特に旋回可能な角度によって制限されつつ最短距離による迂回軌道を算出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、既存の乗用型屋外清掃機に設置することにより、自動走行を可能とすることができる。また、本発明の自動化装置は、清掃機に搭載されるものであるが、乗用型の清掃機であることから、作業員が乗車するためのスペースを使用することが可能となるため、既に使用している乗用型屋外清掃機を使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態が搭載される乗用型屋外清掃機を例示する説明図である。
図3】操舵用の駆動機構を例示する説明図である。
図4】アクセル用の駆動機構を例示する説明図である。
図5】RTK-GPSを用いる場合の基地局と移動局の区別を示す説明図である。
図6】制御部による制御方法を示すフロー図である。
図7】本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図8】第2の実施形態が搭載される乗用型屋外清掃機を例示する説明図である。
図9】第2の実施形態における制御部の制御方法を示すフロー図である。
図10】シミュレーション用の乗用型屋外清掃機のモデルを示す説明図である。
図11】シミュレーション結果を示す説明図である。
図12】実走行実験の結果を示す説明図である。
図13】第2の実験例の結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
<実施形態の概要>
図1は、本発明の乗用型屋外清掃機の自動化装置に係る実施形態の概要を示すブロック図である。本実施形態は、乗用型屋外清掃機を自動化するためのものであるため、操舵のための操舵軸、および速度調整のためのアクセルペダルは、乗用型屋外清掃機に設置されているものを使用する。そこで、これらの操舵軸およびアクセルペダルを自動制御しつつ走行させることにより、乗用型屋外清掃機を自動化するものである。
【0020】
図1に示されているように、本実施形態の自動化装置100の概要は、動作の制御のための制御部1を備えており、この制御部による制御によって、操舵用駆動モータ(第1のアクチュエータ)2およびアクセル用駆動モータ(第2のアクチュエータ)3を作動させる構成としている。この制御部1には、入力部11が設けられ、外部装置としての位置情報取得装置(位置情報取得部)4および向き情報取得装置(向き情報取得部)5によって取得される各種の情報を入力可能としている。また、入力された情報は、処理部12によって適宜処理(演算)され、保存すべきデータは記憶部13に記憶させ、また、処理結果により駆動系2,3を操作するための情報をモータドライバ(モータドライバ(1)および(2))14,15に出力し、これらの両モータドライバ14,15によって各モータ2,3を作動させるものである。
【0021】
乗用型屋外清掃機を目標に沿って走行させるための操舵用駆動モータ2およびアクセル用駆動モータ3には、それぞれの作動状況を検知するためのセンサ(センサ(1)およびセンサ(2))21,31が設置され、検出されるモータ2,3の駆動の状態は制御部1(入力部11)に入力され、想定される走行経路(目標軌道)に沿って走行するようにモータドライバ14,15を介してモータ2,3を制御するものとしている。
【0022】
ところで、乗用型屋外清掃機の位置情報を取得するための位置情報取得装置4としては、RTK-GPSを用いるものとしている。RTK-GPSを用いることにより、数cmの精度で位置情報を取得できるうえ、リアルタイムに計測が可能となるため、加速度センサ等を使用するよりも、走行する乗用型屋外清掃機の位置情報を取得することに適するものである。また、向き情報取得装置4としては、ジャイロセンサを用いるものとしている。ジャイロセンサにより検出される角速度により、乗用型屋外清掃機の向き情報を取得するものである。なお、向き情報の取得には、方位を検出する装置により、方位から向きの情報として取得する構成としてもよい。
【0023】
また、駆動用モータ2,3の作動状況の検出に使用するセンサ21,31としては、ポテンショメータを用いている。使用するモータ2,3は正逆方向へ回転するものであり、その回転に応じて駆動軸の回転角を検出するものである。なお、モータ2,3をサーボモータとして、モータ出力の状態をエンコーダで検出するものであってもよい。
【0024】
上記構成により、外部情報の取得装置4,5によって得られる情報に基づき、駆動用モータ2,3の作動を制御するため、制御部1(処理部11)は、走行特性を算出するものとしている。ここでは、走行特性を乗用型屋外清掃機の旋回および走行速度によって特定される特性と定めている。すなわち、操作すべき要素は操舵軸およびアクセルペダルであるが、双方を駆動モータ2,3の駆動によって走行させる際、乗用型屋外清掃機がどの程度の速度で走行するのか、また、操舵角がどの程度なのか、さらに操舵角と速度によってどの程度の旋回が可能なのか、などの挙動については不明である。そこで、予め想定されたアクセルペダルの踏み込み量(ペダルの移動量)および操舵軸の角度を出現させた状態で試運転を行い、そのときの位置情報および向き情報から走行特性を確認するものとしているのである。
【0025】
具体的には、速度および操舵角のそれぞれについて、最大値を100%とした場合、100%、70%、50%、30%、10%の段階的な組合せで行うものとし、これらの中から妥当な組合せを決定する。速度については、安全な速度(場所によって時速1.5km~3.0kmの範囲で妥当な速度)となるアクセルペダルの踏み込み量を確認し、操舵角については安全速度における旋回の状態を確認するものである。 これらの走行特性は、記憶部13に記憶させておき、作動時に読み出すことにより、試運転は導入当初の1回でよいものとなる。
【0026】
上記のように、走行特性が確認された状態で乗用型屋外清掃機を走行させるのであり、走行中は、位置情報および向き情報の外部情報と、操舵用駆動モータ2およびアクセル用駆動モータ3のセンサ21,31の情報とを入力値として、目標位置に向かって両モータ2,3を駆動して移動させることとなるものである。
【0027】
<実施形態の具体例>
図2は、本実施形態を搭載させる乗用型屋外清掃機を一般化した状態を例示している。ここで、例示する乗用型屋外清掃機Aは、三輪(前輪1輪かつ後輪2輪)の走行体であり、前輪の1輪を操舵するとともに、駆動軸も前輪であるものを想定している。この図に示しているように、乗用型屋外清掃機Aは、作業員が乗車できるように、床部aが設けられ、この床部aの後方に走行用駆動系収納部bが搭載され、走行用駆動系収納部bの前方にシート部cが設けられる。前方には操舵機構収納部dとアクセル部eが設置され、シート部cとの間には、適宜な空間が設けられ、作業員の脚部を乗せる作業者用スペースfが設けられている。なお、床部aの下面側には、清掃に使用される清掃器具(図は回転ブラシを例示)gが設けられ、乗用型屋外清掃機Aの移動軌跡を清掃できるように構成されたものである。また、図は、ハンドル(省略)を取り除いた状態としており、操舵軸6のみを表示している。
【0028】
そこで、本実施形態の自動化装置は、上記構成の乗用型屋外清掃機Aの床部a、特に作業者用スペースfを利用して各要素を搭載できるものとしている。具体的には、アクセル部eを包囲する領域をアクセル駆動装置の搭載領域hとし、操舵機構収納部dの上方に操舵軸駆動装置の搭載領域iを設定し、これらの後方に制御系装置の搭載領域jを設けるものとしている。各領域に応じて制御部1および駆動モータ2,3が搭載されるものであるが、これら全体が連携して一体の自動化装置を構成するものである。なお、位置情報取得装置4および向き情報取得装置5は、制御系装置の搭載領域jにおいて、制御部1の上部に設置させるものである。
【0029】
ここで、各駆動部の詳細を説明する。図3は、操舵を制御するための駆動機構を示す図である。なお、図3において、各部を支持するフレームは省略し、駆動力の伝達に必要な要素を中心に示している。操舵用の駆動機構は、図3に示すように、操舵軸6を直接作動させるように構成したものである。すなわち、操舵軸6に直接設置した2次ギア(平歯車)61を回転駆動することにより、操舵軸6を正逆方向の所定角度に回転させるものである。駆動力は、モータ60による回転力を1次ギア(平歯車)62に伝達したうえで、異なる歯数の2次ギア61に歯合させることで、減速させるようにしている。図3では、2倍の歯数として示しており、モータ60の回転速度の1/2の回転速度により2次ギア61(および操舵軸6)を回転させるものとしている。減速機構により、モータ60の回転速度は減速され、急激な操舵軸6の回転(走行体の急旋回)を防止するものである。また、減速機構により回転角度の比率が変更されることから、モータ60の回転角度よりも小さな回転角度により操舵軸6を回転させることとなる。
【0030】
なお、図3は、2つの平歯車61,62による減速機構であるため、モータ60の回転方向とは逆向きに操舵軸6を回転する構成となっている。この場合、正転方向を左旋回方向、反転方向を右旋回方向として制御すればよく、格別正逆方向の反転は操舵軸6の回転制御において問題となるものではない。また、操舵軸6の上端にポテンショメータ63を設置する構成としている。ポテンショメータ63により検出する操舵軸6の回転角情報を取得することにより、モータ60の作動に対する操舵軸6の回転状態を確認できるものとなっている。特に、モータ60に対する回転指令に対し、操舵角6の回転角が変化しない状態をもって操舵の限界値を得ることができる。
【0031】
図4は、アクセルを制御するための駆動機構を示す図である。なお、図4においても、各部を支持するフレームは省略し、駆動力の伝達に必要な要素を中心に示している。アクセル用の駆動機構は、図4に示すように、アクセルペダル7を直接作動させるように構成したものである。すなわち、アクセルペダル7の表面にラック状操作軸71を進退駆動させることにより、アクセルペダル7を踏み込む方向へ駆動力を伝達させるものである。駆動力は、モータ70による回転力をピニオンギア72に伝達し、このピニオンギア72に対し、ラック状操作軸71のラック領域73を歯合させることにより、直線駆動(進退駆動)に変換するものである。なお、ラック状操作軸71の一部はリニアガイド74に支持され、ラック状操作軸71の駆動方向(進退方向)が固定されるものとなっている。
【0032】
図4では、減速機構を設けることなくピニオンギア72を回転させるものであるから、ピニオンギア71のピッチ円の周寸法がラック状操作軸71の移動量となるため、ピニオンギア72の回転角度を制御することにより、アクセルペダル7の変化量を調整し得ることとなる。また、モータ70の正転方向への回転により、ラック状操作軸71を下降(前進)させ、アクセルペダル7を踏み込む状態とする。また、モータ70の反転方向の回転は、ラック状操作軸71を上昇(後退)させ、アクセルペダル7を復元させるような操作を可能にする。そのため、このアクセル用の駆動機構では、モータ70の回転軸にポテンショメータ75が設けられ、モータ70の回転角度を検知するものとしている。なお、モータ70に対する回転指令に対し、回転軸の回転角が変化しない状態をもって操舵の限界値を得ることができる。
【0033】
<位置情報取得装置>
乗用型屋外清掃機の位置情報を取得するための位置情報取得装置4としてRTK-GPSを用いる場合には、基地局と移動局の双方において衛星データを取得し、その差分によって高精度な位置情報を得るものである。そこで、図5に示すように、乗用型屋外清掃機を作動させる敷地内の特定位置(固定)に基地局としてサブ制御部を設け、移動局となる乗用型屋外清掃機に搭載される制御装置をメイン制御部として、双方間でTCP(Transmission Control Protocol)通信により相互の位置情報を送受信するものとしている。
【0034】
基地局および移動局の両局ともに、マルチバンド対応のGNSS(全球測位衛星システム)の受信モジュールとしてユーブロックス社製のZED-F9Pを使用し、外部アンテナを使用してGNSSの複数周波数帯の信号を受信し、測位するものとしている。なお、基地局と移動局との間の通信をTCP通信とすることにより、相互通信が可能となり、通信品質が担保されることから、乗用型屋外清掃機の自動走行に適するものである。
【0035】
<制御方法>
本実施形態は上記のような構成であることから、これらの駆動部を制御することにより、乗用型屋外清掃機の自動化を実現し得る。そこで、制御方法について説明する。図6は、制御部による制御方法をフローチャートに示したものである。以下、この図に沿って制御方法を説明する。
【0036】
まず、制御が開始されると、当該乗用型屋外清掃機に係る走行特性データを記憶部から読み出す(S101)。走行特性データが記憶されている場合は、実走行に移行するが、初期使用時には、走行特性データが存在しないことがあるため、走行特性データが存在しない場合には走行特性データを作成するような制御を行う(S102)。走行特性データの作成には、所定の駆動出力により、速度および操舵角を所定の値として試運転として乗用型屋外清掃機を走行させる(S103)。そして、この試運転の状態で位置情報および向き情報を取得し、速度および角度を入力する(S104)。この試運転の結果として、駆動出力の状態と実際の走行による速度および角度から走行特性を算出する。走行特性としては、アクセルペダルに関してはフルスロットル(100%)に対する踏み込み比率に応じた走行速度と、操舵限界(100%)に対する操舵軸の回転角比率に応じた走行方向の変化角度(向きの変化角度)を算出するものである。これらによる走行特性が算出されると、次回以降に使用可能とするため、記憶部に登録しておくものとする(S106)。
【0037】
上記のように、既に走行特性が登録されている場合、または新規に走行特性が算出されると、移動すべきターゲット(通過ポイント)の位置情報を読み出し(S107)、現在位置から目標位置までの走行経路(目標軌道)を算出し、走行を開始する。このとき、現在位置および目標位置はいずれも極座標変換されて処理されることから、距離と角度によって目標軌道が算出されることとなる。走行中の速度および操舵角は、概ね時速1.5kmとなるようなアクセルペダルの踏み込み量と、30度未満の旋回角となる操舵軸の角度に設定される。この速度と旋回角は任意に設定可能である。また、走行中は、目標位置(ターゲット)に到着したか否かが判断され(S109)、到着するまで、目標軌道に沿って走行が継続される。なお、目標位置への到達は、位置情報取得装置による乗用型屋外清掃機の位置情報により決定することとなり、目標軌道に沿った走行の検証についても位置情報により行うものである。
【0038】
前述のターゲット(通過ポイント)の位置情報の読み出し(S107)においては、ターゲット(通過ポイント)の順位が定められており、第1順位から順次目標位置として設定される。ターゲット(通過ポイント)の設定が仮に単一である場合には、当該ターゲット(通過ポイント)が最終到達位置となり、複数のターゲット(通過ポイント)が設定されているときは、最終順位のターゲット(通過ポイント)が最終到達位置となる。そこで、上述の目標位置(第1順位)に到着した後は、引き続き次順位(第2順位)のターゲットが読み出されているか(存在するか)を確認し、存在しない場合(続くターゲットが認識できない)ときは、最終到達位置に到着したものとして制御を終了し、乗用型屋外清掃機の走行も停止することとなる(S110)。これらに対し、次順位のターゲットが存在する場合は、次順位のターゲットへの目標経路を算出し、次の目標方法へ走行することとなる(S111)。
【0039】
次順位ターゲットへの走行に際しては、第1順位の場合と同様に、到着したか否かが判断され(S109)、到着するまで、目標軌道に沿って走行が継続される(S112)。そして、到着した後は、さらに次順位ターゲットの存在を確認し、存在すれば上記制御を繰り返し、次順位ターゲットが存在しない状態となるまで繰り返した後終了することとなる(S110)。
【0040】
このような制御方法によることから、乗用型屋外清掃機を目標位置に向かって所定の速度および旋回角による目標軌道を算出し、その目標軌道に沿って所定の速度および旋回角によって走行させることができる。
【0041】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。この実施形態は、図7に示すように、外部入力部として障害物センサを用いる構成としたものである。障害物センサとしては、LiDARを使用することができる。このLiDARは、レーザ光を広範囲に走査させつつセンシングするセンサであり、対象物(障害物)の距離や形状等を分析することができるものである。清掃領域として設定される領域には、乗用型屋外清掃機の走行に対して障害となる物体は存在しないものであるが、何らかの原因によって障害物が清掃領域に存在する(走行中に入ってくる)ような場合は、これを回避する回避行動を行わせるのである。なお、本実施形態ではセンサとしてLiDARを例示するが、赤外線センサなどの他のセンサを使用してもよい。
【0042】
いずれにしても障害物センサを使用する場合には、図8に示すように、乗用型屋外清掃機Aの床部aの前方に設置する。左右2箇所に各1個のセンサ81,82を設けることにより、二次元センサ(2D-LiDAR)として使用することができる。このときの仕様を下表に示す。この表に示される仕様から、当該二次元センサによれば、360度に対して分解能0.5度により障害物をセンシングすることができる。
【0043】
【表1】
【0044】
また、制御部に対して障害物センサの情報が入力されるため、制御方法についても障害物を回避する制御が追加されることとなる。この場合の制御フローを図9に示す。なお、図は、前述の制御フロー(図6)の一部として走行を開始した後を示している。従って、乗用型屋外清掃機が走行を開始するまでの制御の内容については、前述した内容と同様である。
【0045】
そして、障害物センサを有する場合の制御方法は、この図9に示されているように、目標方向へ(目標軌道に沿って)走行を開始した時点から、最終順位ターゲットに到達するまで、障害物の存否(S201,S301)を判断しながら走行させるように制御するものである。そこで、障害物の存在が確認されると、当該障害物の情報を入力し(S202,S302)、迂回軌道を算出することとなる。乗用型屋外清掃機およびターゲットは、いずれも極座標変換されており、障害物に関する情報は、乗用型屋外清掃機のからの距離と方角であるから極座標上で処理が可能となる。また、速度と旋回角度により、最も短距離により障害物との接触を回避する迂回軌道を演算することも可能であるから、算出された迂回軌道に沿って走行を継続させるように制御するのである(S204,S304)。
【0046】
このときの迂回軌道による速度および回転速度は、例えば、次式によって求めることができる。
【0047】
【数1】
【0048】
なお、障害物情報は、発見されてから通過する(進行方向から消失)するまで、存在が確認され(S201,S301)、迂回軌道が計算されるため(S203,S303)、迂回軌道の修正(変更)も可能となり、障害物が移動した場合または初期に算出した迂回起動よりも短距離通過が可能な別軌道が算出された場合は、その都度、迂回軌道を修正し、走行方向を変更することができる。
【実施例0049】
<シミュレーション>
図10は、乗用型屋外清掃機のモデル示す。このモデルは前述の前輪操舵式かつ前輪駆動式とするものである。ここで、操舵用駆動装置のポテンショメータの電圧Vstと前輪操舵角δの関係式を次式(1)と仮定する。
【0050】
【数2】
【0051】
また、ポテンショメータの電圧Vstを、ある一定電圧Vとなるように操舵しつつ走行させ、RTK-GPSにより計測周期ごとの位置情報を取得する。このときの走行軌跡を非線形最小二乗法により円の方程式(次式(2))に近似するものとして、パラメータxとyおよび旋回半径Rを推定すると、このときの操舵角δは、次式(3)として与えられ、同様に、電圧Vを変えてそれぞれの操舵角を計算し、最小二乗法により前記式(1)のパラメータαおよびβを推定する。
【0052】
【数3】
【0053】
次に、アクセル用駆動装置におけるポテンショメータの電圧Vacと走行速度vの関係式を次式(4)と仮定する。
【0054】
【数4】
【0055】
また、ポテンショメータの電圧Vacを、ある一定電圧Vとなるようにアクセルペダルを操作し、乗用型屋外清掃機を直進させ、定常状態において計測時間Tで走行距離dだけ進んだときの平均速度vは次式(5)として与えられ、同様に、電圧Vを変えてそれぞれの平均速度を計算し、最小二乗法により前記式(4)のパラメータαおよびβを推定する。
【0056】
【数5】
【0057】
さらに、乗用型屋外清掃機の走行特性(運動特性)を制約として考慮するため、モデル予測制御を適用し、RTK-GPSとジャイロセンサの計測値を用いて、目標軌道へ追従制御を行う。そこで、乗用型屋外清掃機の状態ベクトルx=[x y θ]と入力ベクトルu=[v δ]を用いて、制御周期Tで離散化された運動モデルを次式(6)~(8)で表すものとする。なお、次式におけるkは、サンプリング時点のパラメータである。
【0058】
【数6】
【0059】
ここで、上式(6)~(8)を拘束条件として、各制御ステップ(予測ステップ数=N)における入力を次式(9)および(10)によって決定する。
【0060】
【数7】
【0061】
なお、最適化計算においては、次式(11)に示す入力の制約を考慮するものとする。
【0062】
【数8】
【0063】
上記に基づき、制御周期T=1.0秒、重み行列Q=diag(1,1,1)、右最大操舵角δmin=-40.0度、左最大操舵角δmax=50.0度、走行速度下限vmin=0.15m/s、走行速度上限vmax=0.35m/sに設定し、清掃領域内の四隅の点から乗用型屋外清掃機の幅を考慮して経路を分割することで、領域被覆動作を想定した目標軌道生成を実装してシミュレーションした。なお、軌道の切り替え地点を考慮して経路ポイントには8箇所(1~8の円内記号)の順位を設定した。なお、第8のポイントが最終到達位置である。その結果を図11に示す。
【0064】
なお、図11中に表示される軌跡のうち、(a)は、上記手法により算出された目標軌道であり、(b)~(d)は、予測ステップ数Nを5、10、15とした場合の軌跡を示すものである。この結果から、乗用型屋外清掃機の走行特性における最小旋回半径の影響により、各コーナにおいて目標軌道に一致しない部分があるものの、追従誤差が小さくなる動作が得られているものと評価される。
【0065】
<実験例1>
走行実験として、各パラメータをN=5、T=1.0秒、Q=diag(1,1,1)に設定し、領域内被覆動作を想定して、目標軌道を設定した。その結果を図12に示す。なお、図中の(a)が目標軌道であり、(b)はシミュレーション結果であり、(c)が実走行実験の結果である。
【0066】
上記結果によれば、実走行実験の結果は、シミュレーション結果に近似するものとなった。なお、直線部分において、走行軌道が振動的なものとなったが、全般的に想定される軌道を走行した結果を得ることができた。
【0067】
<実験例2>
次に、同様の目標軌道について、障害物を想定し、LiDARによる障害物検知と迂回軌道に状態について実走行実験を行った。その結果を図13に示す。なお、図中に表示される軌跡のうち、(a)が目標軌道であり、(b)が実走行実験の結果である。また、*のマークは、LiDARが検知した障害物の位置を示している。
【0068】
上記の結果によれば、目標軌道を逸れる部分があるが、障害物を安全に回避することが確認できるものであった。
【0069】
<まとめ>
本発明の実施形態は、上記のとおりであるから、既に使用中の乗用型屋外清掃機に対して実施形態を搭載することにより、自動化することができる。なお、上記実施形態は、本発明の一例であって、本発明が上記実施形態に限定される趣旨ではない。従って、各要素を変形し、または他の要素を付加するものであってもよい。
【0070】
例えば、上記実施形態において想定される乗用型屋外清掃機としては、前輪操舵型かつ前輪駆動型であり、当該前輪が1輪タイプのものを例示したが、これは、シミュレーションおよび走行実験の製作に容易であったことから、上記タイプの乗用型屋外清掃機をモデルとしただけである。そのため、後輪駆動型や四輪走行体を使用するものであってもよい。また、操舵用のアクチュエータを構成する機構としては平歯車を使用し、アクセル用のアクチュエータを構成する機構としては、ラックおよびピニオンを使用した構成を例示しているが、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
1 制御部
2 操舵用駆動モータ
3 アクセル用駆動モータ
4 位置情報取得装置(RTK-GPS)
5 向き情報取得装置(ジャイロセンサ)
6 操舵軸
7 アクセルペダル
8 障害物センサ(LiDAR)
11 入力部
12 処理部
13 記憶部
14,15 モータドライバ
21,22 センサ(ポテンショメータ)
41 基地局
42 移動局
60,70 モータ
61 2次ギア(平歯車)
62 1次ギア(平歯車)
63,75 ポテンショメータ
71 ラック状操作軸
72 ピニオンギア
73 ラック領域
74 リニアガイド
100 第1の実施形態
200 第2の実施形態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13