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特開2024-8397墜落制止用器具用のランヤード、および、墜落制止用器具
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  • 特開-墜落制止用器具用のランヤード、および、墜落制止用器具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008397
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】墜落制止用器具用のランヤード、および、墜落制止用器具
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20240112BHJP
   A62B 35/04 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A62B35/00 A
A62B35/04
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110236
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】522275267
【氏名又は名称】松原 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】松原 誠
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184JA03
2E184KA09
2E184KA11
2E184LB02
(57)【要約】
【課題】作業性や安全性を高めた墜落制止用器具用のランヤードおよび墜落制止用器具を提供する。
【解決手段】ランヤード5が、左右の肩にそれぞれ掛け回された肩帯2の背中部分において肩帯2に取り付けられる取り付け部11と、取り付け部11から下方に延設されたショックアブソーバ12と、ショックアブソーバ12の下方かつ使用者の腰部の高さに対応する分岐部13と、分岐部13から左右に分岐して設けられたロープ15と、その先端に設けられたランヤードフック10とを備えたフック部14と、を有し、墜落制止用器具1が、左右の肩にそれぞれ掛け回されて腰部に至る肩帯2と、肩帯2の下端部に接続されて、左右の太腿にそれぞれ掛け回される腿帯3と、肩帯2または腿帯3の使用者の腰部の高さと同じ位置またはそれよりも低い位置に設けられる休止フック4と、ランヤード5と、を有し、ランヤードフック10が、休止フック4に係止可能となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の左右の肩にそれぞれ掛け回された肩帯(2)の背中部分において前記肩帯(2)に取り付けられる取り付け部(11)と、
前記取り付け部(11)から下方に延設されたショックアブソーバ(12)と、
前記ショックアブソーバ(12)の下方かつ使用者の腰部の高さに対応する分岐部(13)と、
前記分岐部(13)から左右に分岐して設けられたロープ(15)と、前記ロープ(15)の先端に設けられたランヤードフック(10)とを備えたフック部(14)と、
を有する墜落制止用器具用のランヤード。
【請求項2】
使用者の左右の肩にそれぞれ掛け回されて腰部に至る肩帯(2)と、
前記肩帯(2)の下端部に接続されて、使用者の左右の太腿にそれぞれ掛け回される腿帯(3)と、
前記肩帯(2)または前記腿帯(3)の使用者の腰部の高さと同じ位置またはそれよりも低い位置に設けられる休止フック(4)と、
請求項1に記載の墜落制止用器具用のランヤード(5)と、
を有し、前記墜落制止用器具用のランヤード(5)のランヤードフック(10)が、前記休止フック(4)に係止可能に構成された墜落制止用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工事現場などにおける高所作業に用いられる墜落制止用器具用のランヤード、および、このランヤードを採用した墜落制止用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の工事現場などにおける高所作業の際には、墜落を制止するための墜落制止用器具の装着が必須である。この墜落制止用器具は、使用者の左右の肩に掛け回される肩帯と、肩帯の下端部に接続されて使用者の左右の太腿にそれぞれ掛け回される腿帯を備えている。
【0003】
例えば下記特許文献1に示す構成においては、肩帯の背中部分(左右の肩甲骨の中間付近)に接続部(接続金具)が設けられ、この接続部から下方に向かって緩衝ベルト(ショックアブソーバ)が延設されている。緩衝ベルトの下端(使用者の背中のほぼ中央部分)には接続部が設けられている。接続部には、左右に分岐してロープが接続されている。それぞれのロープの先端には、工事現場の手すりなどに係止されるランヤードフックが設けられている(特許文献1の段落0008、図7などを参照)。このランヤードフックは、例えば下記特許文献2に示すように、その不使用時に使用者の胸前に設けられた休止フックに係止されるのが一般的である(特許文献2の段落0019、図4などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-18479号公報
【特許文献2】特開2013-150665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工事現場における使用者の安全確保のため、墜落制止用器具の装着に加えて、熱中症防止のために冷却用のファンなどが設けられた冷却ジャケットなどの空調服、冬季に体温を保つための防寒着、落水対策としてのライフジャケット、夜間工事および昼間においても高速道路などの工事において装着が要求される反射ベストなどの二次装備を墜落制止用器具の上から装着する機会が増えている。
【0006】
ところが、特許文献1および特許文献2に記載の構成においては、緩衝ベルトの下端から分岐したロープによって二次装備の裾が捲れ上がってしまうとともに、ロープ先端のランヤードフックを係止する休止フックが二次装備によって大きく隠れてしまい、作業性や安全性が低下するおそれがある。
【0007】
墜落制止用器具を装着した際の作業性を確保するために、通常は墜落制止用器具を装着した後に二次装備を装着するところ、その装着順序を入れ替えて、二次装備を装着した後に墜落制止用器具を装着することが考えられる。このようにすると、墜落制止用器具の作業性は確保することができる反面、例えば、空調服が墜落制止用器具の肩帯や腰帯などによって圧迫されてこの空調服内の空気の流れが妨げられる、防寒着の中綿が墜落制止用器具の肩帯や腰帯などによって圧縮されて本来の暖かさが損なわれる、反射ベストの反射材の大半が墜落制止用器具の肩帯、腰帯、ランヤードなどに隠されて本来の視認性が発揮できない、などの問題を生じることがある。
【0008】
そこで、この発明は、空調服などの二次装備の性能を損なうことなく作業性や安全性を高めた墜落制止用器具用のランヤードおよび墜落制止用器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明では、
使用者の左右の肩にそれぞれ掛け回された肩帯の背中部分において前記肩帯に取り付けられる取り付け部と、
前記取り付け部から下方に延設されたショックアブソーバと、
前記ショックアブソーバの下方かつ使用者の腰部の高さに対応する分岐部と、
前記分岐部から左右に分岐して設けられたロープと、前記ロープの先端に設けられたランヤードフックとを備えたフック部と、
を有する墜落制止用器具用のランヤードを構成した。
【0010】
さらに、この発明では、
使用者の左右の肩にそれぞれ掛け回されて腰部に至る肩帯と、
前記肩帯の下端部に接続されて、使用者の左右の太腿にそれぞれ掛け回される腿帯と、
前記肩帯または前記腿帯の使用者の腰部の高さと同じ位置またはそれよりも低い位置に設けられる休止フックと、
上記に記載の墜落制止用器具用のランヤードと、
を有し、前記墜落制止用器具用のランヤードのランヤードフックが、前記休止フックに係止可能に構成された墜落制止用器具を構成した。
【0011】
上記のように、墜落制止用器具用のランヤードおよび墜落制止用器具を構成すると、使用者が墜落制止用器具を装着した上で二次装備を装着した際に、フック部のロープが二次装備の裾の下側となりやすいため、この裾の捲れ上がりを防止することができる。また、ランヤードフックを係止するための休止フックが使用者の腰部の高さに設けられているため、二次装備を装着した状態でランヤードフックの着脱を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、上記のように、墜落制止用器具用ランヤードおよび墜落制止用器具を構成したので、空調服などの二次装備の性能を損なうことなくこの墜落制止用器具用のランヤードを用いた墜落制止用器具の作業性や安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明に係る墜落制止用器具の第一実施形態を示す背面図
図2図1に示す墜落制止用器具を装着した状態の前方側からの斜視図
図3図1に示す墜落制止用器具を装着した状態の後方側からの斜視図
図4図1に示す墜落制止用器具に用いられるランヤードの背面図
図5】この発明に係る墜落制止用器具の第二実施形態を示す背面図
図6図5に示す墜落制止用器具を装着した状態の前方側からの斜視図
図7図5に示す墜落制止用器具を装着した状態の後方側からの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明に係る墜落制止用器具1の第一実施形態を図面に基づいて説明する。この墜落制止用器具1は、図1から図4に示すように、肩帯2、腿帯3、休止フック4、および、ランヤード5を主要な構成要素としている。
【0015】
肩帯2は、使用者の左右の肩にそれぞれ掛け回されて腰部に至る部材である。左肩に掛かる帯(以下、左帯6という。)と右肩に係る帯(以下、右帯7という。)は、使用者の背中の上部(左右の肩甲骨の間付近)で交差している。右帯7の前側と左帯6の後側は、使用者の右脇腹で交差しつつ互いに縫い付け固定されている。また、左帯6の前側と右帯7の後側は、使用者の左脇腹で交差しつつ互いに縫い付け固定されている。使用者の胸側において、左帯6と右帯7は、水平方向に設けられた分離接続自在の胸部固定部材8によって固定可能となっている。
【0016】
腿帯3は、肩帯2(左帯6、右帯7)の下端部に接続されて、使用者の左右の太腿にそれぞれ掛け回される。腿帯3は環状をなしており、それぞれ左帯6および右帯7の端部と縫い付け固定されている。
【0017】
使用者の腰部に対応する高さ位置には、腰部に掛け回される腰帯9が設けられている。この腰帯9は、肩帯2(左帯6、右帯7)と互いに縫い付け固定されるとともに、ランヤード5とも縫い付け固定されている。ランヤード5との縫い付け固定の縫い付け強度は、肩帯2などとの縫い付け強度よりも小さく、例えば墜落時に大きな衝撃がランヤード5に作用するとその縫い付けが外れて、腰帯9とランヤード5が分離するように構成されている。このように分離することにより、使用者が墜落しそうになった際に従来の墜落制止用器具と同様の吊り下がり姿勢となり、四肢と胴体に衝撃を分散しつつ墜落を制止することができる。
【0018】
休止フック4は、後述するランヤードフック10を不使用時に係止するための部材であって、腰帯9に設けられている。この位置は、使用者が空調服などの二次装備を装着したときのこの二次装備の裾の下端(図2および図3に示す一点鎖線を参照)の付近であって、その裾を少し捲り上げることで、休止フック4にランヤードフック10を容易に係止することができるよう構成されている。
【0019】
ランヤード5は、図4に示すように、取り付け部11、ショックアブソーバ12、分岐部13、および、フック部14を主要な構成要素としている。
【0020】
取り付け部11は、使用者の左右の肩にそれぞれ掛け回された肩帯2の背中部分(左帯6と右帯7が交差する部分)において、この肩帯2に取り付けられる部材である。この実施形態においては、肩帯2と取り付け部11は、取り外しできないように設けられているが、肩帯2と取り付け部11を着脱可能(ランヤード5を交換可能)とすることもできる。
【0021】
ショックアブソーバ12は、墜落時にその衝撃でその長さ方向に展開することで、墜落に伴う衝撃を吸収するための部材である。このショックアブソーバ12は、取り付け部11から下方に向かって延設されている。
【0022】
ショックアブソーバ12の下端には、伸縮性を有するロープ15が金具16を介して設けられている。このロープ15は金具16の部分でその全長を2等分するように折り返されている。この折り返し部分の近傍(金具16の下側)には、折り返された2本のロープ15を束ねる保持部材17が設けられている。この保持部材17による保持力は、墜落に伴って衝撃が作用した際に保持が解消して、束ねたロープ15が展開する(左右に分かれる)程度の小さな保持力である。保持部材17による保持が解消して束ねたロープ15が展開することによって衝撃が吸収される。この保持部材17として、衝撃の作用時に束ねたロープ15から外れるように構成された金具、面ファスナ、糸の縫い付け、易破断シートなどの各種の手段を採用することができる。なお、ショックアブソーバ12の位置は図1に示した位置に限定されず、上下方向に多少移動することもできる。
【0023】
分岐部13は、ショックアブソーバ12の下方かつ使用者の腰部の高さと同程度の高さに対応するように位置している。この実施形態では、保持部材17の下端が分岐部13に対応している。
【0024】
フック部14は、分岐部13から左右に分岐して設けられたロープ15と、ロープ15の先端に設けられたランヤードフック10を有している。この実施形態では、左右に分岐した2本のロープ15を有する、いわゆる「2丁掛け」の構成について示したが、ロープ15が1本のみの「1丁掛け」の構成とすることもできる。このランヤードフック10は、その不使用時に、腰帯9に設けられた休止フック4に係止しておくことができる。
【0025】
この墜落制止用器具1の使用態様について説明する。まず、肩帯2の左帯6を左肩に、右帯7を右肩にそれぞれ掛け回した上で、左帯6と右帯7を胸部固定部材8によって固定する。次に、腿帯3を左右の太腿に、腰帯9を腰にそれぞれ巻き付けて固定する。そして、ランヤード5の左右のランヤードフック10をそれぞれ休止フック4に係止する。さらに、空調服などの二次装備を墜落制止用器具の上から装着する。
【0026】
この実施形態に係る墜落制止用器具1(ランヤード5)は、使用者が二次装備を装着した状態において、分岐部13がこの二次装備の裾とほぼ同じ高さ位置となるように構成されており、この分岐部13から分岐して設けられたロープ15が二次装備の裾の下側となりやすいため、この裾の捲れ上がりを防止することができる。また、ランヤードフック10を係止するための休止フック4が使用者の腰部の高さに設けられているため、二次装備を装着した状態でランヤードフック10の休止フック4への着脱を容易に行うことができる。このため、二次装備の性能を損なうことなくこの墜落制止用器具用のランヤード5を用いた墜落制止用器具1の作業性や安全性を高めることができる。
【0027】
また、この実施形態に係る墜落制止用器具1は、その使用中に使用者が墜落してランヤード5に衝撃が作用すると、その衝撃によって保持部材17が破断して束ねたロープ15とショックアブソーバ12が展開するとともに、ロープ15の伸縮性によって衝撃が吸収される。このため、使用者に対し大きな衝撃が作用するのを防止することができる。
【0028】
この発明に係る墜落制止用器具1の第二実施形態を図5から図7に示す。第二実施形態に係る墜落制止用器具1の基本構成は第一実施形態に係る墜落制止用器具1と共通するが、腰帯9が設けられていない点で相違する。第二実施形態においては、休止フック4は腿帯3に設けられている。この位置は、第一実施形態と同様に、使用者が空調服などの二次装備を装着したときのこの二次装備の裾の下端(図6および図7に示す一点鎖線を参照)の付近であって、休止フック4にランヤードフック10を容易に係止することができるよう構成されている。このため、この墜落制止用器具用のランヤード5を用いた墜落制止用器具1の作業性や安全性を高めることができる。なお、腿帯3の代わりに肩帯2の下端近傍に休止フック4を設ける構成とすることもできる。
【0029】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およびすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0030】
1 墜落制止用器具
2 肩帯
3 腿帯
4 休止フック
5 ランヤード
6 左帯
7 右帯
8 胸部固定部材
9 腰帯
10 ランヤードフック
11 取り付け部
12 ショックアブソーバ
13 分岐部
14 フック部
15 ロープ
16 金具
17 保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7