IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

特開2024-83971ベルト製造装置、折り返しローラー及びベルト製造方法
<>
  • 特開-ベルト製造装置、折り返しローラー及びベルト製造方法 図1A
  • 特開-ベルト製造装置、折り返しローラー及びベルト製造方法 図1B
  • 特開-ベルト製造装置、折り返しローラー及びベルト製造方法 図2
  • 特開-ベルト製造装置、折り返しローラー及びベルト製造方法 図3
  • 特開-ベルト製造装置、折り返しローラー及びベルト製造方法 図4A
  • 特開-ベルト製造装置、折り返しローラー及びベルト製造方法 図4B
  • 特開-ベルト製造装置、折り返しローラー及びベルト製造方法 図4C
  • 特開-ベルト製造装置、折り返しローラー及びベルト製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083971
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ベルト製造装置、折り返しローラー及びベルト製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/08 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
B29D30/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198096
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大輔
【テーマコード(参考)】
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215VA11
4F215VD07
4F215VL16
4F215VM06
4F215VP29
4F501TA11
4F501TC07
4F501TF06
4F501TL28
4F501TV12
4F501TV27
(57)【要約】
【課題】タイヤのベルト層に用いる部材を薄肉化してもタイヤの信頼性や耐久性を劣化させない、ベルト製造装置、折り返しローラー及びベルト製造方法を提供する。
【解決手段】本開示に係るベルト製造装置200は、主ベルト材10の搬送部(主ベルト搬送部50)と、主ベルト材10の一方の面の幅方向両端部に配置されたゴムシート20における主ベルト材10の幅方向両端部から外側にはみ出した領域を主ベルト材10の他方の面に折り返す折り返しローラー31を有するゴムシート折り返し部30とを備え、折り返しローラー31は、ゴムシート20が当接するローラー面は、折り返しローラー31の径方向内側に弾性変形可能な弾性部材31cで形成されることを特徴とする。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ベルト材の幅方向両端部がゴムシートで包まれたベルトを製造するためのベルト製造装置であって、
前記主ベルト材の搬送部と、
前記主ベルト材の一方の面の幅方向両端部に配置された前記ゴムシートにおける前記主ベルト材の幅方向両端部から外側にはみ出した領域を前記主ベルト材の他方の面に折り返す折り返しローラーを有するゴムシート折り返し部と
を備え、
前記折り返しローラーは、前記主ベルト材の幅方向両端部に配置され、前記ゴムシートが当接するローラー面は、前記折り返しローラーの径方向内側に弾性変形可能な弾性部材で形成されている、ベルト製造装置。
【請求項2】
搬送される前記主ベルト材の一方の面の幅方向両端部に前記ゴムシートを供給するゴムシート供給部であって、搬送される前記主ベルト材の幅方向両端部から外側にはみ出すように前記ゴムシートを前記主ベルト材に重ねて供給する、該ゴムシート供給部を更に備える、請求項1に記載のベルト製造装置。
【請求項3】
前記弾性部材はばね部材である、請求項1又は2に記載のベルト製造装置。
【請求項4】
前記折り返しローラーは、前記ゴムシート折り返し部における前記主ベルト材が搬入される上流側に配置され、前記折り返しローラーよりも下流側には、前記ゴムシートの前記他方の面への折り返しを促進する補助ローラーを更に備える、請求項1又は2に記載のベルト製造装置。
【請求項5】
前記補助ローラーは、上流側に隣接する前記折り返しローラー又は他の補助ローラーに対して、前記ゴムシートが前記補助ローラーのローラー面に当接することによって前記ゴムシートの折り返し角度を大きくする方向に傾斜している、請求項4に記載のベルト製造装置。
【請求項6】
前記補助ローラーのローラー面は、軸線方向に複数配置され軸部材に対して回動可能なベアリングの外輪に設けられている、請求項4に記載のベルト製造装置。
【請求項7】
前記補助ローラーのローラー面は、表面の凹凸における凹部に樹脂を埋め込むことによる付着防止コーティングが施されている、請求項4に記載のベルト製造装置。
【請求項8】
前記主ベルト材及び前記ゴムシートは、前記ゴムシート折り返し部内において、上流側の前記搬送部における前記主ベルト材の高さ位置、並びに前記ゴムシート供給部における前記ゴムシートの高さ位置よりも高い位置を通る、請求項2に記載のベルト製造装置。
【請求項9】
幅方向両端部がゴムシートで包まれた主ベルト材を有するベルトを製造するためのベルト製造装置に用いられる、折り返しローラーであって、
前記折り返しローラーは、前記ゴムシートにおける前記主ベルト材の一方の面の幅方向両端部から外側にはみ出した領域を前記主ベルト材の他方の面に折り返す折り返しローラーであって、
軸部材と、前記軸部材の軸線方向に離隔して配置され前記軸部材周りに回動可能な複数の回転部材と、前記回転部材同士を軸線方向に連結するとともに前記ゴムシートが当接するローラー面を形成する弾性部材とを備える、折り返しローラー。
【請求項10】
幅方向両端部がゴムシートで包まれた主ベルト材を有するベルトを製造するためのベルト製造方法であって、
前記主ベルト材を搬送するステップと、
前記主ベルト材の一方の面の幅方向両端部に配置された前記ゴムシートにおける前記主ベルト材の幅方向両端部から外側にはみ出した領域を折り返しローラーによって前記主ベルト材の他方の面側に折り返すステップと
を含み、
前記折り返しローラーは、前記主ベルト材の幅方向両端部に配置され、前記ゴムシートが当接するローラー面は、前記折り返しローラーの径方向内側に弾性変形可能な弾性部材で形成されている、ベルト製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベルト製造装置、折り返しローラー及びベルト製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費を向上させるために、タイヤの転がり抵抗を低減する要求は益々高まってきている。タイヤの低転がり抵抗化の手段の一つとして、タイヤ部材の軽量化、特に、ベルト層の軽量化が挙げられる。例えば、特許文献1に記載のタイヤ補強部材の製造方法では、主ベルト材(タイヤ補強部材)や、そのエッジ部を覆うゴムシート(エッジテープ)を薄肉化することによってタイヤの軽量化を行う試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-276215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、主ベルト材やゴムシートを薄肉化すると、ゴムシートを主ベルト材のエッジ部に貼り合わせる際に皴が発生したり、主ベルト材とゴムシートの間に空気が入り易く、ベルト層の信頼性や耐久性の点で改善の余地があった。
【0005】
本開示の目的は、タイヤのベルト層に用いる部材を薄肉化してもタイヤの信頼性や耐久性を劣化させない、ベルト製造装置、折り返しローラー及びベルト製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示のベルト製造装置は、
[1]
主ベルト材の幅方向両端部がゴムシートで包まれたベルトを製造するためのベルト製造装置であって、
前記主ベルト材の搬送部と、
前記主ベルト材の一方の面の幅方向両端部に配置された前記ゴムシートにおける前記主ベルト材の幅方向両端部から外側にはみ出した領域を前記主ベルト材の他方の面に折り返す折り返しローラーを有するゴムシート折り返し部と
を備え、
前記折り返しローラーは、前記主ベルト材の幅方向両端部に配置され、前記ゴムシートが当接するローラー面は、前記折り返しローラーの径方向内側に弾性変形可能な弾性部材で形成されていることを特徴とする。
このような構成の採用によって、ゴムシートが弾性部材から主ベルト材の幅方向中央に向かう方向の弾性力を受けるので、所定の荷重でゴムシートを主ベルト材に押し付けながらゴムシートを折り曲げることができる。従って、主ベルト材の幅Wが想定の範囲内でばらついても、折り返しローラーを主ベルト材の幅Wに連続的に追従させ、弾性部材が常に主ベルト材及びゴムシートに対して幅方向中央に向かう方向に弾性力を与えることができる。よって、主ベルト材の幅が基準幅よりも小さいためにゴムシートを折り返す際にゴムシートと主ベルト材との間にエアが入り込んでしまったり、主ベルト材の幅が基準幅よりも大きいためにゴムシートを折り返す際にゴムシートに皴が発生したりする不具合の発生を抑制することができる。
【0007】
また、本開示のベルト製造装置は、
[2]
上記[1]に記載の構成において、搬送される前記主ベルト材の一方の面の幅方向両端部に前記ゴムシートを供給するゴムシート供給部であって、搬送される前記主ベルト材の幅方向両端部から外側にはみ出すように前記ゴムシートを前記主ベルト材に重ねて供給する、該ゴムシート供給部を更に備えることが好ましい。
このような構成の採用によって、主ベルト材に対してゴムシートを主ベルト材の幅方向に精度よく配置して、ゴムシートを折り返す際にゴムシートに皴が発生したりする不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0008】
また、本開示のベルト製造装置は、
[3]
上記[1]又は[2]に記載の構成において、前記弾性部材はばね部材であることが好ましい。
このような構成の採用によって、簡素な構成で折り返しローラーを主ベルト材の幅に追従させて、ゴムシートを主ベルト材の幅方向端部に所定の荷重で押圧することができる。
【0009】
また、本開示のベルト製造装置は、
[4]
上記[1]から[3]のいずれかに記載の構成において、前記折り返しローラーは、前記ゴムシート折り返し部における前記主ベルト材が搬入される上流側に配置され、前記折り返しローラーよりも下流側には、前記ゴムシートの前記他方の面への折り返しを促進する補助ローラーを更に備えることが好ましい。
このような構成の採用によって、折り返しローラーによって主ベルト材に対して概ね直角まで折り返されたゴムシートを更に主ベルト材の他方の面にならうように折り返すことができる。
【0010】
また、本開示のベルト製造装置は、
[5]
上記[4]に記載の構成において、前記補助ローラーは、上流側に隣接する前記折り返しローラー又は他の補助ローラーに対して、前記ゴムシートが前記補助ローラーのローラー面に当接することによって前記ゴムシートの折り返し角度を大きくする方向に傾斜していることが好ましい。
このような構成の採用によって、折り返しローラーによって主ベルト材に対して概ね直角まで折り返されたゴムシートを更に主ベルト材の他方の面にならうように徐々に折り返すことができる。
【0011】
また、本開示のベルト製造装置は、
[6]
上記[4]又は[5]に記載の構成において、前記補助ローラーのローラー面は、軸線方向に複数配置され軸部材に対して回動可能なベアリングの外輪に設けられていることが好ましい。
このような構成の採用によって、補助ローラーのローラー面とゴムシートとの当接の状態に応じてローラー面の回転を軸線方向に変えることができるので、補助ローラーのローラー面とゴムシートとの間の摩擦の増加を抑制することができる。
【0012】
また、本開示のベルト製造装置は、
[7]
上記[4]から[6]のいずれかに記載の構成において、前記補助ローラーのローラー面は、表面の凹凸における凹部に樹脂を埋め込むことによる付着防止コーティングが施されていることが好ましい。
このような構成の採用によって、補助ローラーのローラー面へのゴムシートの貼り付きを効果的に抑制し、搬送抵抗を抑制することができる。また、ゴムシートに意図しないテンションがかからないので、ゴムシートへの皴の発生を抑制することができる。
【0013】
また、本開示のベルト製造装置は、
[8]
上記[2]に記載の構成において、前記主ベルト材及び前記ゴムシートは、前記ゴムシート折り返し部内において、上流側の前記搬送部における前記主ベルト材の高さ位置、並びに前記ゴムシート供給部における前記ゴムシートの高さ位置よりも高い位置を通ることが好ましい。
このような構成の採用によって、ゴムシート折り返し部内において主ベルト材及びゴムシートに適切なテンションがかかる他、ゴムシート折り返し部内において、ゴムシートの幅方向端部が僅かに下方に引っ張られて、主ベルト材に対して下方に垂れ下がる。これによって、ゴムシートが折り返しローラーに強く当接することを抑制することができる。
【0014】
また、本開示の折り返しローラーは、
[9]
幅方向両端部がゴムシートで包まれた主ベルト材を有するベルトを製造するためのベルト製造装置に用いられる、折り返しローラーであって、
前記折り返しローラーは、前記ゴムシートにおける前記主ベルト材の一方の面の幅方向両端部から外側にはみ出した領域を前記主ベルト材の他方の面に折り返す折り返しローラーであって、
軸部材と、前記軸部材の軸線方向に離隔して配置され前記軸部材周りに回動可能な複数の回転部材と、前記回転部材同士を軸線方向に連結するとともに前記ゴムシートが当接するローラー面を形成する弾性部材とを備えることを特徴とする。
このような構成の採用によって、ゴムシートが弾性部材から主ベルト材の幅方向中央に向かう方向の弾性力を受けるので、所定の荷重でゴムシートを主ベルト材に押し付けながらゴムシートを折り曲げることができる。従って、主ベルト材の幅Wが想定の範囲内でばらついても、折り返しローラーを主ベルト材の幅Wに連続的に追従させ、弾性部材が常に主ベルト材及びゴムシートに対して幅方向中央に向かう方向に弾性力を与えることができる。よって、主ベルト材の幅が基準幅よりも小さいためにゴムシートを折り返す際にゴムシートと主ベルト材との間にエアが入り込んでしまったり、主ベルト材の幅が基準幅よりも大きいためにゴムシートを折り返す際にゴムシートに皴が発生したりする不具合の発生を抑制することができる。
【0015】
また、本開示のベルト製造方法は、
[10]
幅方向両端部がゴムシートで包まれた主ベルト材を有するベルトを製造するためのベルト製造方法であって、
前記主ベルト材を搬送するステップと、
前記主ベルト材の一方の面の幅方向両端部に配置された前記ゴムシートにおける前記主ベルト材の幅方向両端部から外側にはみ出した領域を折り返しローラーによって前記主ベルト材の他方の面側に折り返すステップと
を含み、
前記折り返しローラーは、前記主ベルト材の幅方向両端部に配置され、前記ゴムシートが当接するローラー面は、前記折り返しローラーの径方向内側に弾性変形可能な弾性部材で形成されていることを特徴とする。
このような構成の採用によって、ゴムシートが弾性部材から主ベルト材の幅方向中央に向かう方向の弾性力を受けるので、所定の荷重でゴムシートを主ベルト材に押し付けながらゴムシートを折り曲げることができる。従って、主ベルト材の幅Wが想定の範囲内でばらついても、折り返しローラーを主ベルト材の幅Wに連続的に追従させ、弾性部材が常に主ベルト材及びゴムシートに対して幅方向中央に向かう方向に弾性力を与えることができる。よって、主ベルト材の幅が基準幅よりも小さいためにゴムシートを折り返す際にゴムシートと主ベルト材との間にエアが入り込んでしまったり、主ベルト材の幅が基準幅よりも大きいためにゴムシートを折り返す際にゴムシートに皴が発生したりする不具合の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、タイヤのベルト層に用いる部材を薄肉化してもタイヤの信頼性や耐久性を劣化させない、ベルト製造装置、折り返しローラー及びベルト製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】本開示の一実施形態に係るベルト製造装置の構成を示す図である。
図1B】本開示の一実施形態に係るベルト製造装置によって製造されるベルトの断面図である。
図2】本開示の一実施形態に係るベルト製造装置に用いられるゴムシート折り返し部の構成を示す斜視図である。
図3】本開示の一実施形態に係るベルト製造装置に用いられるゴムシート折り返し部を構成する折り返しローラーの正面断面図である。
図4A図3に示す折り返しローラーの弾性部材に、基準幅の主ベルト材が当接したときの様子を示す断面図である。
図4B図3に示す折り返しローラーの弾性部材に、基準幅よりも小さい幅の主ベルト材が当接したときの様子を示す断面図である。
図4C図3に示す折り返しローラーの弾性部材に、基準幅よりも大きい幅の主ベルト材が当接したときの様子を示す断面図である。
図5】本開示の一実施形態に係るベルト製造方法の実施手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示に係るベルト製造装置200について、図面を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0019】
図1Aは、本開示の一実施形態に係るベルト製造装置200の構成を示している。
【0020】
図1Aに示すように、ベルト製造装置200は、ベルト100の主要部材である主ベルト材10を搬送するための主ベルト搬送部50と、搬送される主ベルト材10の一方の面(図1Aにおける上面)の幅方向両端部にゴムシート20を供給するゴムシート供給部40と、ゴムシート20における主ベルト材10の幅方向両端部から外側にはみ出した領域を主ベルト材10の他方の面(図1Aにおける下面)に折り返す折り返しローラー31を有するゴムシート折り返し部30とを備えている。なお、主ベルト材10の幅方向は、主ベルト材10の面内における長手方向(図1Aにおける左右方向)に直交する方向である。
【0021】
主ベルト搬送部50は、図1Aに示すように、ロール状に巻かれた主ベルトロール材10aから裁断されジョイントされた主ベルト材10を下流側(図1Aにおける左側)に配置されたゴムシート折り返し部30に向けて図の矢印の方向に搬送する。主ベルトロール材10aは、裁断幅W(すなわちジョイント後の主ベルト材10の幅W)が等しくなるように所定間隔で裁断されるが、裁断幅Wは2~3mm(Peak to Peak)程度のばらつきが存在するため、その裁断幅Wのばらつきがジョイント後の主ベルト材10の幅Wのばらつきとなる。
【0022】
なお、図1Aには、主ベルト搬送部50として主ベルト材10を搬送するコンベアのみを図示しているが、主ベルト搬送部50は、コンベアの他に制御モータ及び制御装置等を含んで構成されてもよい。
【0023】
本実施形態において、主ベルト材10は、例えば約0.8mmの厚みを有しており、複数本のコードがコーティングゴムに埋設された構造を備えている。主ベルト材10においては、典型的には、複数本のコードが並列に引き揃えられる。かかるコードは、一般的には、スチールコードである。また、かかるコードの構造としては、特に制限はない。但し、タイヤの耐久性向上と低転がり抵抗化とを効果的に両立させる観点から、当該コードは、N本のフィラメントを撚り合わせてなる1×N構造(Nは2~6から選択される整数である)であることが好ましい。特に、タイヤロードインデックスが100未満のタイヤにおいては、上記コードは1×2構造であることがより好ましく、タイヤロードインデックスが100以上のタイヤにおいては、上記コードは1×5構造であることがより好ましい。また、同様の観点から、当該コードは、モノフィラメントであって、互いに撚り合わされずに並列に引き揃えられていることも好ましい。また、上記1×N構造の場合において、当該コードは、フィラメント同士が接触せずに互いに間隔を設けて撚り合わされてなる1×Nオープン構造とすることができる。オープン構造のコードは、フィラメント同士が互いに接触しながら撚り合わされたコードに比べ、耐疲労性に優れる。
【0024】
なお、1×Nオープン構造のコードは、フィラメント同士の間に未加硫ゴムを挟み、一緒に撚り合わせて形成してもよく、あるいは、フィラメントの表面に未加硫ゴムを被覆してから、これらを撚り合わせて形成してもよい。
【0025】
主ベルト材10に用いられるコードを構成するフィラメントは、ISO 17832:2018に規定されるSTグレード(super tensile strength cord)又はUTグレード(ultra tensile strength cord)に分類されることが好ましく、特に、UTグレードに分類されることが好ましい。この場合、タイヤの耐久性向上と低転がり抵抗化とを効果的に両立させることができる。
【0026】
なお、主ベルト材10は、何らかの補強された構成を有していればよく上述の形態に限定されるものではない。
【0027】
主ベルト材10に用いられるコーティングゴムとしては、コードを被覆することができる一般的なゴム組成物であれば特に限定がない。ゴム成分としては、ジエン系ゴムが挙げられ、特に天然ゴム又はイソプレンゴムが好ましい。また、上記コーティングゴムには、コーティングゴムとしての接着性や耐久性等の性能に影響しない範囲であれば、カーボンブラック等の充填剤を配合してもよい。上記カーボンブラックとしては、HAFクラスのカーボンブラックが好ましく、また、コーティングゴムにおけるカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して50~70質量部とすることができる。また、上記コーティングゴムは、上述した成分以外に、例えば、加硫促進剤、硫黄、亜鉛華などの架橋系薬品;コバルト塩を含むコバルト化合物などの接着促進剤;老化防止剤;オイル;樹脂;等を適宜含有することができる。上記老化防止剤としては、6PPD等のアミン系老化防止剤、o-MBp14等のビスフェノール系老化防止剤などが挙げられ、これら老化防止剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
主ベルトロール材10aを裁断しジョイントされた主ベルト材10は、下流側(図1Aにおける左側)へと運搬され、ゴムシート供給部40からのゴムシート20が主ベルト材10の一方の面(図1Aにおける上面)の幅方向両端部に供給される。ゴムシート供給部40は、搬送される主ベルト材10の幅方向両端部から幅方向外側にはみ出すようにゴムシート20を主ベルト材10の一方の面(上面)に重ねて供給する。本実施形態では、ゴムシート20のうち主ベルト材10の上面に重なる領域の幅よりも、主ベルト材10から幅方向外側にはみ出す領域の方が幅広となるようにゴムシート20を配置している。本実施形態のベルト製造装置200により製造されるベルト100は、図1Bに示すように、主ベルト材10の一方の面(図1A及び図1Bにおける上面)に重なるゴムシート20の幅よりも、主ベルト材10の他方の面(図1A及び図1Bにおける下面)に重なるゴムシート20の幅の方が大きくなるように構成されているからである。本実施形態では、ゴムシート20の幅として30mmを採用する場合に、例えば一方の面に10mm、他方の面に20mm重なるように配置することができる。このようなベルト100の構成によって、ベルト100を2枚重ねて配置する場合に主ベルト材10の他方の面(図1A及び図1Bにおける下面)同士が密着するように積層することによってベルト100間に隙間が形成されることを抑制することができる。ただし、この態様には限定されず、主ベルト材10の一方の面に重なるゴムシート20の幅と他方の面に重なるゴムシート20の幅とが等しくなるように構成してもよいし、主ベルト材10の一方の面に重なるゴムシート20の幅よりも、主ベルト材10の他方の面に重なるゴムシート20の幅の方が小さくなるように構成してもよい。
【0029】
なお、図1Aには、ゴムシート供給部40としてゴムシート20を搬送するコンベアのみを図示しているが、ゴムシート供給部40についても、コンベアの他に制御モータ及び制御装置等を含んで構成されてもよい。
【0030】
本実施形態においてゴムシート20の厚みは例えば約0.4~0.5mmとすることができる。ゴムシート20の材料は、特に限定されないが、例えば、主ベルト材10のコーティングゴムと同じゴム組成物を用いることができる。
【0031】
ゴムシート供給部40の下流側(図1Aにおける左側)には、供給されたゴムシート20における主ベルト材10の幅方向両端部から幅方向外側にはみ出した領域を主ベルト材10の他方の面に折り返す折り返しローラー31を有するゴムシート折り返し部30が設けられている。ゴムシート折り返し部30は、図1Aに示すように、主ベルト材10が上流側における主ベルト搬送部50における高さよりも高い位置を通るように配置されている。ゴムシート折り返し部30は、図1Aに示すように、ゴムシート20が幅方向両側に重ねられた主ベルト材10の幅方向両側に設けられている。
【0032】
図2は、主ベルト材10の幅方向両側に設けられているゴムシート折り返し部30のうちの片側の構成を図示している。ゴムシート折り返し部30は、図2に示すように、供給されたゴムシート20における主ベルト材10の幅方向両端部から幅方向外側にはみ出した領域を主ベルト材10の他方の面へと折り返す折り返しローラー31を備えている。図2における左側が上流側であり主ベルト材10及びゴムシート20が、図2の左側からゴムシート折り返し部30内に矢印の方向に搬入される。
【0033】
ゴムシート20とともにゴムシート折り返し部30内に搬入された主ベルト材10は、主ベルト材支持ローラー37により下方から支持される。また、ゴムシート折り返し部30の左端における搬入される主ベルト材10の上方には、ゴムシート押さえローラー34が配置されている。ゴムシート押さえローラー34の先端部は、主ベルト材10の幅方向端部から幅方向中央に向けて主ベルト材10から上方に離隔する方向に傾斜して配置されている。ゴムシート押さえローラー34は、主ベルト材10の幅Wが基準幅に対して大きい場合などに、後述する折り返しローラー31に設けた弾性部材31c(ばね部材)に主ベルト材10及びゴムシート20が強く衝突して弾性部材31cが破損することを抑制する。すなわち、ゴムシート押さえローラー34が主ベルト材10及びゴムシート20の幅方向端部の領域を下方に押圧して折り返しローラー31との接触を和らげている。
【0034】
また本実施形態では、図1Aに示すように、ゴムシート折り返し部30内において主ベルト材10及びゴムシート20が上流側の主ベルト搬送部50における主ベルト材10の高さ位置、並びにゴムシート供給部40におけるゴムシート20の高さ位置よりも高い位置を通るように配置されている。この構成によって、ゴムシート折り返し部30内において主ベルト材10及びゴムシート20に適切なテンションがかかる他、ゴムシート折り返し部30内において、ゴムシート20の幅方向端部が僅かに下方に引っ張られて、主ベルト材10に対して下方に垂れ下がる。これによっても、ゴムシート20が折り返しローラー31に強く当接することを抑制することができる。
【0035】
ゴムシート押さえローラー34を通過した主ベルト材10及びゴムシート20は、主ベルト材10に対して概ね直交する鉛直方向に方向づけられた折り返しローラー31を通過する。折り返しローラー31は、図3に示すように、軸部材31aと、軸部材31aの軸線方向に離隔して配置され軸部材31a周りに回動可能な複数の回転部材31bと、回転部材31b同士を軸線方向に連結するとともにゴムシート20が当接するローラー面を形成する弾性部材31cとを備えている。
【0036】
本実施形態において、弾性部材31cは、引張ばねとして構成されており、軸部材31aの軸線方向両端部近傍に離隔して配置された回転部材31bにおける縮径部の外面が引張ばねの内面に嵌合することで回転部材31bに固定されている。回転部材31bに固定された弾性部材31cは、回転部材31bとともに軸部材31aに対して軸線周りに回動可能である。
【0037】
図4Aは、折り返しローラー31の弾性部材31cに、基準幅の幅Wを有する主ベルト材10及びこれに固定されたゴムシート20が当接している状態を示している。折り返しローラー31の弾性部材31cは、基準幅を有する主ベルト材10及びゴムシート20に当接した場合に弾性部材31cが軸部材31aに近づくように径方向内側に弾性変形するような幅方向位置に配置されている。この構成によって、主ベルト材10及びゴムシート20が弾性部材31cから幅方向中央に向かう方向の弾性力を受けるので、所定の荷重でゴムシート20を主ベルト材10に押し付けながらゴムシート20を折り曲げることができる。なお、径方向とは、折り返しローラー31の中心軸線(図3における左右方向中央を上下に貫く線)を通り中心軸線に垂直な直線に沿う方向である。そして、径方向内側とは、当該直線に沿って中心軸線に近づく方向を意味するものとする。
【0038】
図4Bは、主ベルト材10が基準幅よりも小さな幅Wを有する場合に、折り返しローラー31の弾性部材31cにゴムシート20が当接している状態を示している。本実施形態では、幅Wの下限値を有する主ベルト材10が搬入された場合に、弾性部材31cがゴムシート20に当接することで弾性部材31cが僅かに径方向内側に弾性変形するような幅方向位置に配置されている。この構成によって、主ベルト材10及びゴムシート20が弾性部材31cから幅方向中央に向かう方向の弾性力を受けるので、適切な荷重でゴムシート20を主ベルト材10に押し付けながらゴムシート20を折り曲げることができる。
【0039】
図4Cは、主ベルト材10が基準幅よりも大きな幅Wを有する場合に、折り返しローラー31の弾性部材31cにゴムシート20が当接している状態を示している。本実施形態では、幅Wの上限値を有する主ベルト材10が搬入された場合に、図4Cに示すように、弾性部材31cがゴムシート20に当接することで、弾性部材31cが軸部材31aに相当程度近接するものの軸部材31aに当接しない程度に径方向内側に大きく弾性変形するような幅方向位置に配置されている。この構成によって、主ベルト材10及びゴムシート20が弾性部材31cから幅方向中央に向かう方向の弾性力を受けるので、適切な荷重でゴムシート20を主ベルト材10に押し付けながらゴムシート20を折り曲げることができる。
【0040】
以上述べたように、本実施形態では、主ベルト材10の幅Wが想定の範囲内でばらついても、常に主ベルト材10及びゴムシート20が弾性部材31cから幅方向中央に向かう方向の弾性力を受けるように構成している。この構成によって、折り返しローラー31を主ベルト材10の幅Wに追従させ、折り返しローラー31によりゴムシート20を主ベルト材10の幅方向端部に所定の荷重で押圧することができる。従って、主ベルト材10の幅Wが基準幅よりも小さいためにゴムシート20を折り返す際にゴムシート20と主ベルト材10との間にエアが入り込んでしまったり、主ベルト材10の幅Wが基準幅よりも大きいためにゴムシート20を折り返す際にゴムシート20に皴が発生したりする不具合の発生を抑制することができる。
【0041】
本実施形態では、主ベルト材10の幅Wのばらつきとして2~3mm程度を想定しており、図4Aから図4Cにおける主ベルト材10の端部の位置変動として1~1.5mm程度を想定している。
【0042】
折り返しローラー31によって主ベルト材10に対して約90度他方の面側(下側)に折り曲げられたゴムシート20は、図2において折り返しローラー31の下流側に隣接配置された第1補助ローラー33aから第5補助ローラー33eまでの5つの補助ローラーによって主ベルト材10の他方の面(図1Aにおける下面)にならうように徐々に折り曲げられるように構成されている。すなわち、第1補助ローラー33aから第5補助ローラー33eまでの5つの補助ローラーも、本実施形態の折り返しローラー群の一部と考えることができる。
【0043】
図2に示す第1補助ローラー33aは、上流側(図2の左側)の折り返しローラー31を基準として、第1補助ローラー33aの上端部に対して下端部が、主ベルト材10の幅方向中央に向かって上方に15度だけ傾斜するように配置されている。また、第2補助ローラー33bは、上流側に隣接する第1補助ローラー33aを基準として、第2補助ローラー33bの上端部に対して下端部が、主ベルト材10の幅方向中央に向かって上方に更に15度だけ傾斜するように配置されている。このように、第1補助ローラー33aから第5補助ローラー33eまでの5つの補助ローラーは、上流側に隣接する補助ローラーに対して下流側に隣接する補助ローラーの方が、上端部に対して下端部が主ベルト材10の幅方向中央に向かって上方に更に15度だけ傾斜するように配置されている。したがって、第5補助ローラー33eは、上流側の折り返しローラー31に対して約75度の角度をなして配置されている。このような構成によって、上流側の折り返しローラー31を通過したゴムシート20は、第1補助ローラー33aから第5補助ローラー33eまでの5つの補助ローラーのローラー面に当接する度に折り返し角度が15度ずつ大きくなる方向に折り曲げられる。従って、ゴムシート20は、主ベルト材10に概ね直交する状態から主ベルト材10の他方の面(下面)に貼り付けられる状態までの折り曲げを徐々に円滑に行うことができる。
【0044】
本実施形態では、第1補助ローラー33aから第5補助ローラー33eのローラー面は、軸線方向に複数配置され軸部材に対して回動可能なボールベアリングの外輪に設けられている。
【0045】
なお、第1補助ローラー33aから第5補助ローラー33eのローラー面には、ゴムシート20の付着を防止する付着防止コーティングが施されていてもよい。付着防止コーティングは、ローラー面の表面の凹凸における凹部に樹脂を埋め込むことにより形成されている。付着防止コーティングの例としては、例えば、株式会社トシコが提供するトシカル(登録商標)Sコーティング(型名:TS-1080)などが挙げられる。この付着防止コーティングは、上述のボールベアリングの外輪に施してもよいし、ボールベアリング以外のローラー面に施すようにしてもよい。
【0046】
主ベルト材10の幅Wが基準幅よりも大きい場合には、主ベルト材10の幅方向端部が上方に反ることで補助ローラーの上部で主ベルト材10を支持することができる。また、主ベルト材10の幅Wが基準幅よりも小さい場合には、主ベルト材10の幅方向端部が下方に垂れ下がることで補助ローラーの下部で主ベルト材10を支持することができる。つまり、主ベルト材10の幅Wは基準幅よりも大きくても小さくても、第1補助ローラー33aから第5補助ローラー33eはゴムシート20に常に接触して主ベルト材10の下面に向かって折り返すことができる。
【0047】
第5補助ローラー33eを通過した主ベルト材10及びゴムシート20は、第5補助ローラー33eと隣接し、上下に並ぶ主ベルト材押さえローラー35及び主ベルト材支持ローラー36a,36bの間の高さ位置を通過する。
【0048】
最後に主ベルト材10は、下流側(図2の右側)の折り返しローラー31に当接する。主ベルト材10は、この下流側の折り返しローラー31によって幅方向中央方向に押圧されることでゴムシート20の折り返しが確実に行われるとともに、主ベルト材10の搬送が安定化される。以上述べた工程によって、主ベルト材10の上下面へのゴムシート20の貼り付けが終了し、ベルト100が形成される。
【0049】
本実施形態では、ゴムシート折り返し部30の上流側端部及び下流側端部にそれぞれ弾性部材31cを有する折り返しローラー31を配置するように構成したが、この態様には限定されない。弾性部材31cを有する折り返しローラー31は、ゴムシート折り返し部30の上流側にのみ設けるようにしてもよいし、3箇所以上に設けてもよい。弾性部材31cを有する折り返しローラー31は、補助ローラーの上流側に設けることが好ましい。
【0050】
また、本実施形態では、第1補助ローラー33aから第5補助ローラー33eのローラー面は、ステンレス製のベアリングで構成されるように構成したが、この態様には限定されず、第1補助ローラー33aから第5補助ローラー33eの少なくとも1つが弾性部材で構成されたローラー面を備えていてもよい。
【0051】
次に、本実施形態に係るベルト製造方法の実施手順について、図5を参照して説明する。本実施形態のベルト100を製造するに際しては、まず、主ベルトロール材10aから裁断しジョイントされた主ベルト材10を、コンベアを備えた主ベルト搬送部50により下流側に向かって搬送する(図5のステップS101)。なお、主ベルト搬送部50は、コンベア以外の搬送手段により主ベルト材10を下流側に搬送するように構成してもよい。
【0052】
次に、搬送される主ベルト材10の一方の面(図1Aにおける上面)の幅方向両端部に、ゴムシート供給部40によりゴムシート20を供給する(図5のステップS102)。ゴムシート供給部40は、搬送される主ベルト材10の幅方向両端部から幅方向外側にはみ出すようにゴムシート20を主ベルト材10の上面に重ねて供給する。
【0053】
次に、供給されたゴムシート20における主ベルト材10の幅方向両端部から外側にはみ出した領域を折り返しローラー31によって主ベルト材10の他方の面(図1Aにおける下面)側に折り返す(図5のステップS103)。本実施形態では、図2に示す折り返しローラー31を含むゴムシート折り返し部30を幅方向両端部に1つずつ設けており、各ゴムシート折り返し部30が、幅方向外側にはみ出したゴムシート20の領域を他方の面側に折り返す。本実施形態では、上述のように、上流側の折り返しローラー31により幅方向外側にはみ出したゴムシート20の領域を主ベルト材10と直交する方向に折り曲げた後、折り返しローラー31の下流側に設けた5本の補助ローラーにより徐々に他方の面にならうように折り返すことができる。
【0054】
以上述べたように、本実施形態は、主ベルト材10の幅方向両端部がゴムシート20で包まれたベルト100を製造するためのベルト製造装置200であって、主ベルト材10の搬送部(主ベルト搬送部50)と、主ベルト材10の一方の面の幅方向両端部に配置されたゴムシート20における主ベルト材10の幅方向両端部から外側にはみ出した領域を主ベルト材10の他方の面に折り返す折り返しローラー31を有するゴムシート折り返し部30とを備え、折り返しローラー31は、主ベルト材10の幅方向両端部に配置され、ゴムシート20が当接するローラー面は、折り返しローラー31の径方向内側に弾性変形可能な弾性部材31cで形成されるように構成した。このような構成の採用によって、ゴムシート20が弾性部材31cから主ベルト材10の幅方向中央に向かう方向の弾性力を受けるので、所定の荷重でゴムシート20を主ベルト材10に押し付けながらゴムシート20を折り曲げることができる。従って、主ベルト材10の幅Wが想定の範囲内でばらついても、折り返しローラー31を主ベルト材10の幅Wに連続的に追従させ、弾性部材31cが常に主ベルト材10及びゴムシート20に対して幅方向中央に向かう方向に弾性力を与えることができる。よって、主ベルト材10の幅が基準幅よりも小さいためにゴムシート20を折り返す際にゴムシート20と主ベルト材10との間にエアが入り込んでしまったり、主ベルト材10の幅が基準幅よりも大きいためにゴムシート20を折り返す際にゴムシート20に皴が発生したりする不具合の発生を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、搬送される主ベルト材10の一方の面の幅方向両端部にゴムシート20を供給するゴムシート供給部40であって、搬送される主ベルト材10の幅方向両端部から外側にはみ出すようにゴムシート20を主ベルト材10に重ねて供給する、ゴムシート供給部40を更に備えるように構成した。このような構成の採用によって、主ベルト材10に対してゴムシート20を主ベルト材10の幅方向に精度よく配置して、ゴムシート20を折り返す際にゴムシート20に皴が発生したりする不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、弾性部材31cはばね部材であるように構成した。このような構成の採用によって、簡素な構成で折り返しローラー31を主ベルト材10の幅Wに追従させて、ゴムシート20を主ベルト材10の幅方向端部に所定の荷重で押圧することができる。
【0057】
また、本実施形態では、折り返しローラー31は、ゴムシート折り返し部30における主ベルト材10が搬入される上流側に配置され、折り返しローラー31よりも下流側には、ゴムシート20の他方の面への折り返しを促進する補助ローラーを更に備えるように構成した。このような構成の採用によって、折り返しローラー31によって主ベルト材10に対して直角まで折り返されたゴムシート20を更に主ベルト材10の他方の面にならうように折り返すことができる。
【0058】
また、本実施形態では、補助ローラーは、上流側に隣接する折り返しローラー31又は他の補助ローラーに対して、ゴムシート20が補助ローラーのローラー面に当接することによってゴムシート20の折り返し角度を大きくする方向に傾斜するように構成した。このような構成の採用によって、折り返しローラー31によって主ベルト材10に対して直角まで折り返されたゴムシート20を更に主ベルト材10の他方の面にならうように徐々に折り返すことができる。
【0059】
また、本実施形態では、補助ローラーのローラー面は、軸線方向に複数配置され軸部材31aに対して回動可能なベアリングの外輪に設けられるように構成した。このような構成の採用によって、補助ローラーのローラー面とゴムシート20との当接の状態に応じてローラー面の回転を軸線方向に変えることができるので、補助ローラーのローラー面とゴムシート20との間の摩擦の増加を抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態では、補助ローラーのローラー面は、表面の凹凸における凹部に樹脂を埋め込むことによる付着防止コーティングが施されるように構成した。このような構成の採用によって、補助ローラーのローラー面へのゴムシート20の貼り付きを効果的に抑制し、搬送抵抗を抑制することができる。また、ゴムシート20に意図しないテンションがかからないので、ゴムシート20への皴の発生を抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、主ベルト材10及びゴムシート20は、ゴムシート折り返し部30内において、上流側の主ベルト搬送部50における主ベルト材10の高さ位置、並びにゴムシート供給部40におけるゴムシート20の高さ位置よりも高い位置を通るように構成した。このような構成の採用によって、ゴムシート折り返し部30内において主ベルト材10及びゴムシート20に適切なテンションがかかる他、ゴムシート折り返し部30内において、ゴムシート20の幅方向端部が僅かに下方に引っ張られて、主ベルト材10に対して下方に垂れ下がる。これによって、ゴムシート20が折り返しローラー31に強く当接することを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態は、幅方向両端部がゴムシート20で包まれた主ベルト材10を有するベルト100を製造するためのベルト製造装置200に用いられる、折り返しローラー31であって、折り返しローラー31は、ゴムシート20における主ベルト材10の一方の面の幅方向両端部から外側にはみ出した領域を主ベルト材10の他方の面に折り返す折り返しローラー31であって、軸部材31aと、軸部材31aの軸線方向に離隔して配置され軸部材31a周りに回動可能な複数の回転部材31bと、回転部材31b同士を軸線方向に連結するとともにゴムシート20が当接するローラー面を形成する弾性部材31cとを備えるように構成した。このような構成の採用によって、ゴムシート20が弾性部材31cから主ベルト材10の幅方向中央に向かう方向の弾性力を受けるので、所定の荷重でゴムシート20を主ベルト材10に押し付けながらゴムシート20を折り曲げることができる。従って、主ベルト材10の幅Wが想定の範囲内でばらついても、折り返しローラー31を主ベルト材10の幅Wに連続的に追従させ、弾性部材31cが常に主ベルト材10及びゴムシート20に対して幅方向中央に向かう方向に弾性力を与えることができる。よって、主ベルト材10の幅が基準幅よりも小さいためにゴムシート20を折り返す際にゴムシート20と主ベルト材10との間にエアが入り込んでしまったり、主ベルト材10の幅が基準幅よりも大きいためにゴムシート20を折り返す際にゴムシート20に皴が発生したりする不具合の発生を抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態は、幅方向両端部がゴムシート20で包まれた主ベルト材10を有するベルト100を製造するためのベルト製造方法であって、主ベルト材10を搬送するステップと、主ベルト材10の一方の面の幅方向両端部に配置されたゴムシート20における主ベルト材10の幅方向両端部から外側にはみ出した領域を折り返しローラー31によって主ベルト材10の他方の面側に折り返すステップとを含み、折り返しローラー31は、主ベルト材10の幅方向両端部に配置され、ゴムシート20が当接するローラー面は、折り返しローラー31の径方向内側に弾性変形可能な弾性部材31cで形成されるように構成した。このような構成の採用によって、ゴムシート20が弾性部材31cから主ベルト材10の幅方向中央に向かう方向の弾性力を受けるので、所定の荷重でゴムシート20を主ベルト材10に押し付けながらゴムシート20を折り曲げることができる。従って、主ベルト材10の幅Wが想定の範囲内でばらついても、折り返しローラー31を主ベルト材10の幅Wに連続的に追従させ、弾性部材31cが常に主ベルト材10及びゴムシート20に対して幅方向中央に向かう方向に弾性力を与えることができる。よって、主ベルト材10の幅が基準幅よりも小さいためにゴムシート20を折り返す際にゴムシート20と主ベルト材10との間にエアが入り込んでしまったり、主ベルト材10の幅が基準幅よりも大きいためにゴムシート20を折り返す際にゴムシート20に皴が発生したりする不具合の発生を抑制することができる。
【0064】
本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【0065】
例えば、本実施形態では、タイヤの補強部材としてのベルト100の製造装置、及びこれに用いる折り返しローラー31、並びにベルト100の製造方法について記載したが、タイヤの補強部材以外の用途に用いるベルト100の製造に用いることもできる。
【0066】
また、本実施形態では、ベルト製造装置200がゴムシート供給部40を備えるように構成したが、この態様には限定されない。例えば、あらかじめ主ベルト材10の一方の面の幅方向両端部にゴムシート20が配置されたものを主ベルト搬送部50によってゴムシート折り返し部30に供給し、ゴムシート20を折り返すように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示は、タイヤのベルト層に用いる部材を薄肉化してもタイヤの信頼性や耐久性を劣化させない、ベルト製造装置200、折り返しローラー31及びベルト製造方法に関する。
【符号の説明】
【0068】
10 主ベルト材
10a 主ベルトロール材
20 ゴムシート
30 ゴムシート折り返し部
31 折り返しローラー
31a 軸部材
31b 回転部材
31c 弾性部材
33a 第1補助ローラー
33b 第2補助ローラー
33c 第3補助ローラー
33d 第4補助ローラー
33e 第5補助ローラー
34 ゴムシート押さえローラー
35 主ベルト材押さえローラー
36a 主ベルト材支持ローラー
36b 主ベルト材支持ローラー
37 主ベルト材支持ローラー
40 ゴムシート供給部
50 主ベルト搬送部(搬送部)
100 ベルト
200 ベルト製造装置
W (裁断)幅
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5