(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083977
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/283 20060101AFI20240617BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20240617BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20240617BHJP
【FI】
H01L21/283 B
H01L21/28 301B
B23K26/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198102
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 崇
(72)【発明者】
【氏名】恩田 正一
(72)【発明者】
【氏名】小島 淳
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 千秋
(72)【発明者】
【氏名】河口 大祐
(72)【発明者】
【氏名】油井 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】原 佳祐
【テーマコード(参考)】
4E168
4M104
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168AE05
4E168FD02
4E168JA13
4M104AA03
4M104AA04
4M104BB01
4M104BB05
4M104DD08
4M104EE02
4M104EE14
4M104EE16
4M104EE17
4M104FF27
4M104GG02
4M104GG06
4M104GG09
4M104GG12
4M104HH20
(57)【要約】
【課題】レーザ剥離技術を利用する半導体装置において、電極層の変形を抑える技術を提供する。
【解決手段】半導体装置は、ワイドギャップ化合物半導体の半導体基板を備えている。半導体装置は、半導体基板の表面の少なくとも一部に配置されている電極層を備えている。半導体装置は、半導体基板の裏面と電極層の下面との間の領域のいずれかの位置に配置されており、半導体基板よりも抵抗の高い特定層を備えている。半導体基板の裏面に垂直な方向からみたときに、電極層と特定層とが重複している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイドギャップ化合物半導体の半導体基板(10)と、
前記半導体基板の表面(10f)の少なくとも一部に配置されている電極層(30)と、
前記半導体基板の裏面(10r)と前記電極層の下面との間の領域のいずれかの位置に配置されており、前記半導体基板よりも抵抗の高い特定層(20)と、
を備えており、
前記半導体基板の前記裏面に垂直な方向からみたときに、前記電極層と前記特定層とが重複している、
半導体装置(1)。
【請求項2】
前記電極層が配置されている領域(R1)には、前記半導体基板の前記表面から前記半導体基板の内部側に延びている複数の窪みパタン(RP)が形成されており、
前記複数の窪みパタンは、底面(10b)と、前記底面と前記表面とを接続している内壁面(10i)と、を備えており、
前記特定層は、前記表面および前記底面に配置されており、
前記電極層は、前記表面および前記底面に前記特定層を介して接触しているとともに、前記内壁面に前記特定層を介さずに接触している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の窪みパタンが備える前記内壁面の総面積は、前記電極層が配置されている領域の面積以上である、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板は、前記表面にイオン注入されている第1導電型の第1領域(NR)と、前記表面にイオン注入されていない第2導電型の第2領域(PR)と、を備えており、
前記第2領域に形成されている前記複数の窪みパタンの深さ(D2)は、前記第1領域に形成されている前記複数の窪みパタンの深さ(D1)よりも深い、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記内壁面は、前記底面の幅に比して前記表面の開口幅の方が小さくなるようなテーパ角度(TA)を有している、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記特定層は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムの少なくとも1つを含んでおり、
前記特定層の厚さは100ナノメートル以上である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ワイドギャップ化合物半導体は、窒化ガリウムまたは炭化ケイ素である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
ワイドギャップ化合物半導体の半導体基板の裏面と表面との間のいずれかの位置に特定層を形成する特定層形成工程(S30)であって、前記特定層は前記半導体基板よりも抵抗の高い層である、前記特定層形成工程と、
前記半導体基板の前記表面に電極層を配置する電極層配置工程(S40)であって、
前記半導体基板の前記裏面に垂直な方向からみたときに前記特定層と重複するように前記電極層が配置される、前記電極層配置工程と、
前記半導体基板の前記裏面から前記半導体基板の内部に、前記表面に平行な集光面(CS)に沿ってレーザ光を照射する照射工程(S50)と、
前記集光面を境界として、前記半導体基板を互いに分離する分離工程(S60)と、
を備え、
前記照射工程では、前記集光面を通過した前記レーザ光の少なくとも一部が、前記特定層で吸収または反射される、
半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記特定層形成工程は、前記半導体基板の前記表面から前記半導体基板の内部側に延びている複数の窪みパタンを、前記電極層が配置されている領域に加工するパタン加工工程(S31)をさらに備えており、
前記複数の窪みパタンは、底面と、前記底面と前記表面とを接続している内壁面と、を備えており、
前記特定層形成工程では、前記内壁面に前記特定層が形成されることなく、前記表面および前記底面に前記特定層が形成され、
前記電極層配置工程では、前記複数の窪みパタンの内部および前記表面に前記電極層が配置される、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記特定層形成工程は、
前記表面および前記底面の膜厚が、前記内壁面の膜厚よりも厚くなるように、前記特定層を成膜する成膜工程(S32)と、
等方エッチングにより、前記表面および前記底面の前記特定層を残存させながら前記内壁面の前記特定層を除去するエッチング工程(S33)と、
をさらに備える、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記表面および前記底面は第1の面方位を有しており、
前記内壁面の面方位は第2の面方位を有しており、
前記第1の面方位は、前記第2の面方位よりも、前記特定層の成膜速度が高い面方位である、請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記特定層は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムの少なくとも1つを含んでおり、
前記特定層の厚さは100ナノメートル以上である、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記ワイドギャップ化合物半導体は、窒化ガリウムまたは炭化ケイ素である、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウムなどのワイドギャップ半導体の半導体基板の表面に各種デバイスを製造した後に、裏面からレーザ光を照射する技術が知られている。レーザ光を基板表面に平行な集光面に沿って照射することで、デバイスが製造されている上部を剥離することができる。なお、関連する技術が、特許文献1および2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-257856号公報
【特許文献1】特開2003-257857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
集光面における改質層の形成に寄与しなかったレーザ光は、集光面を抜けて、半導体基板の表面側へ到達する。このレーザ抜け光が、デバイスが備える電極に到達すると、電極がレーザ抜け光を吸収して発熱する場合がある。電極材料の融点を超過して加熱される結果、電極が変形してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、半導体装置(1)を開示する。半導体装置は、ワイドギャップ化合物半導体の半導体基板(10)を備えている。半導体装置は、半導体基板の表面(10f)の少なくとも一部に配置されている電極層(30)を備えている。半導体装置は、半導体基板の裏面(10r)と電極層の下面との間の領域のいずれかの位置に配置されており、半導体基板よりも抵抗の高い特定層(20)を備えている。半導体基板の裏面に垂直な方向からみたときに、電極層と特定層とが重複している。
【0006】
本明細書の基板製造装置では、半導体基板の裏面に垂直な方向からみたときに、電極層が特定層によって覆われている。従って、半導体基板の裏面から照射したレーザ光が表面側に到達した場合においても、特定層によって電極層をレーザ光から保護することができる。電極層がレーザ光の影響によって変形してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】半導体装置1の製造方法について説明するフローチャートである。
【
図3】半導体装置1の製造方法について説明する断面概略図である。
【
図4】半導体装置1の製造方法について説明する断面概略図である。
【
図5】半導体装置1の製造方法について説明する断面概略図である。
【
図6】半導体装置1の製造方法について説明する断面概略図である。
【
図7】実施例2の半導体装置201の断面概略図である。
【
図8】実施例3の半導体装置301の断面概略図である。
【
図9】実施例4の半導体装置401の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記の半導体装置においては、電極層が配置されている領域(R1)には、半導体基板の表面から半導体基板の内部側に延びている複数の窪みパタン(RP)が形成されていてもよい。複数の窪みパタンは、底面(10b)と、底面と表面とを接続している内壁面(10i)と、を備えていてもよい。特定層は、表面および底面に配置されていてもよい。電極層は、表面および底面に特定層を介して接触しているとともに、内壁面に特定層を介さずに接触していてもよい。この構成によれば、内壁面を介して、半導体基板と電極層との導通を確保することが可能となる。
【0009】
上記の半導体装置においては、複数の窪みパタンが備える内壁面の総面積は、電極層が配置されている領域の面積以上であってもよい。この構成によれば、半導体基板と電極層との間の抵抗増加を、適切に抑制することが可能となる。
【0010】
上記の半導体装置においては、半導体基板は、表面にイオン注入されている第1導電型の第1領域(NR)と、表面にイオン注入されていない第2導電型の第2領域(PR)と、を備えていてもよい。第2領域に形成されている複数の窪みパタンの深さ(D2)は、第1領域に形成されている複数の窪みパタンの深さ(D1)よりも深くてもよい。この構成によれば、第2領域における接触抵抗を適切に抑制することが可能となる。
【0011】
上記の半導体装置においては、内壁面は、底面の幅に比して表面の開口幅の方が小さくなるようなテーパ角度(TA)を有していてもよい。この構成によれば、表面および底面に特定層が配置されているとともに、内壁面に特定層が配置されていない構造を、実現することが可能となる。
【0012】
上記の半導体装置においては、特定層は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムの少なくとも1つを含んでいてもよい。特定層の厚さは100ナノメートル以上であってもよい。
【0013】
上記の半導体装置においては、ワイドギャップ化合物半導体は、窒化ガリウムまたは炭化ケイ素であってもよい。
【0014】
本明細書では、半導体装置の製造方法を開示する。製造方法は、ワイドギャップ化合物半導体の半導体基板の裏面と表面との間のいずれかの位置に特定層を形成する特定層形成工程(S30)を備える。特定層は半導体基板よりも抵抗の高い層である。製造方法は、半導体基板の表面に電極層を配置する電極層配置工程(S40)を備える。半導体基板の裏面に垂直な方向からみたときに特定層と重複するように電極層が配置される。製造方法は、半導体基板の裏面から半導体基板の内部に、表面に平行な集光面(CS)に沿ってレーザ光を照射する照射工程(S50)を備える。製造方法は、集光面を境界として、半導体基板を互いに分離する分離工程(S60を備える。照射工程では、集光面を通過したレーザ光の少なくとも一部が、特定層で吸収または反射される。この方法によれば、半導体基板の裏面に垂直な方向からみたときに、電極層が特定層によって覆われている構造を作成できる。従って、集光面を抜けて半導体基板の表面側へ到達したレーザ光が存在する場合においても、特定層によって電極層をレーザ光から保護することができる。電極層がレーザ光の影響によって変形してしまうことを防止できる。
【0015】
上記の半導体装置の製造方法においては、特定層形成工程は、半導体基板の表面から半導体基板の内部側に延びている複数の窪みパタンを、電極層が配置されている領域に加工するパタン加工工程(S31)をさらに備えていてもよい。複数の窪みパタンは、底面と、底面と表面とを接続している内壁面と、を備えていてもよい。特定層形成工程では、内壁面に特定層が形成されることなく、表面および底面に特定層が形成されてもよい。電極層配置工程では、複数の窪みパタンの内部および表面に電極層が配置されてもよい。この方法によれば、内壁面を介して、半導体基板と電極層との導通を確保することが可能となる。
【0016】
上記の半導体装置の製造方法においては、特定層形成工程は、表面および底面の膜厚が、内壁面の膜厚よりも厚くなるように、特定層を成膜する成膜工程(S32)と、等方エッチングにより、表面および底面の特定層を残存させながら内壁面の特定層を除去するエッチング工程(S33)と、をさらに備えていてもよい。この方法によれば、表面および底面に特定層が配置されているとともに、内壁面に特定層が配置されていない構造を、実現することが可能となる。
【0017】
上記の半導体装置の製造方法においては、表面および底面は第1の面方位を有していてもよい。内壁面の面方位は第2の面方位を有していてもよい。第1の面方位は、第2の面方位よりも、特定層の成膜速度が高い面方位であってもよい。この方法によれば、表面および底面の膜厚が、内壁面の膜厚よりも厚くなるように、特定層を成膜することが可能となる。
【実施例0018】
(半導体装置1の構成)
図1に、実施例1に係る半導体装置1の断面概略図を示す。
図1では、半導体基板10の表面10fに平行な方向を、xおよびy方向としている。また表面10fに垂直な方向を、z方向としている。以後の図においても同様である。半導体装置1は、半導体基板10、特定層20、電極層30、を主に備えている。半導体装置1は、半導体基板10と電極層30とのコンタクト構造について説明するための装置である。従って、本明細書の半導体装置1のコンタクト構造は、様々なデバイスに適用可能である。例えば、横型MOSFET、縦型MOSFET、スーパージャンクションMOSFET、IGBT、PNダイオード、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)、HEMT、などに適用してもよい。
【0019】
半導体基板10は、ワイドギャップ化合物半導体の半導体基板である。本実施例では、窒化ガリウム(GaN)である。半導体基板10は、GaN支持基板11の上にGaN層12が積層された構造を有している。半導体基板10の表面10fの一部の領域である領域R1には、電極層30が配置されている。
【0020】
領域R1内の表面10fには、複数の窪みパタンRPが形成されている。複数の窪みパタンRPは、表面10fから半導体基板10の内部側に延びている。複数の窪みパタンRPの形状は様々であってよい。例えば、トレンチが整列している形状や、ホールが敷き詰められた形状であってもよい。本実施例では、複数の窪みパタンRPは、トレンチ形状である。複数の窪みパタンRPは、底面10bおよび内壁面10iを備えている。内壁面10iは、底面10bと表面10fとを接続している面である。
【0021】
特定層20のxy方向における配置領域を説明する。特定層20は、裏面10rに垂直な方向(-z方向)から見たときに、領域R1の全て(すなわち電極層30の配置されている領域の全て)を含むように配置されている。本実施例では、特定層20の配置領域は、領域R1と一致している。
【0022】
特定層20のz方向における配置領域を説明する。z方向において、半導体基板10の裏面10rと、表面10fに配置されている電極層30の下面30uと、の間の領域を、領域R2と定義する。特定層20のz方向の配置領域は、この領域R2の範囲内である。本実施例では、特定層20は、半導体基板10の表面10f上、および、窪みパタンRPの底面10bに配置されている。一方、内壁面10iには特定層20は配置されていない。
【0023】
表面10fおよび底面10bは、第1の面方位を有している。一方、内壁面10iは、第2の面方位を有している。第1の面方位は、第2の面方位よりも、特定層20の成膜速度が高い面方位である。本実施例では、第1の面方位はGaNウルツ鉱構造のc面の面方位である。第2の面方位は、c面以外の面の面方位である。特定層20は、酸化シリコンである。窪みパタンを配置したc面GaN基板に、プラズマCVD(PCVD)法にて酸化シリコンを成膜すると、c面上の成膜速度が、他の面の成膜速度よりも高いことが知られている。
【0024】
特定層20は、半導体基板10よりも抵抗の高い層である。また特定層20は、電極層30に比して、レーザ光を吸収または反射する特性が高い層である。例えば、特定層20は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムの少なくとも1つを含んでいてもよい。本実施例では、特定層20は、酸化シリコンである。また特定層20の厚さは、100ナノメートル以上であることが好ましい。これにより、後述するように、特定層20によって電極層30をレーザ光から保護する効果を得ることができる。
【0025】
電極層30は、複数の窪みパタンRPの内部および表面10fに配置されている。電極層30の材料は様々であってよく、例えば各種の金属や、シリコンであってよい。本実施例では、電極層30は、ニッケルを含む金属である。電極層30は、表面10fおよび底面10bに、特定層20を介して接触している。また電極層30は、内壁面10iに、特定層20を介さずに接触している。これにより、内壁面10iを介して、半導体基板10と電極層30との導通を確保することが可能とされている。
【0026】
半導体基板10の裏面10rに垂直な方向からからみたときに、電極層30と特定層20とが重複している。換言すると、-z方向からみたときに、電極層30が特定層20によって完全に覆われた状態となっている。
【0027】
複数の窪みパタンRPが備える内壁面10iの総面積は、電極層30が配置されている領域R1の面積以上であることが好ましい。理由を説明する。従来構造では、複数の窪みパタンRPを形成せずに、平坦な表面10f上に電極層30を配置している。よって従来構造では、半導体基板10と電極層30との導通を確保するためのコンタクト領域の面積は、領域R1の面積となる。一方、本明細書の技術では、コンタクト面積は、内壁面10iの総面積となる。従って、内壁面10iの総面積が領域R1の面積以上となるように、複数の窪みパタンRPのアスペクト比(窪み深さと開口幅の比)や配置密度を、適宜設計すればよい。これにより、コンタクト面積を従来構造以上とすることができる。特定層20によって電極層30をレーザ光から保護しながら、コンタクト抵抗を従来構造以下に抑制することが可能となる。
【0028】
(半導体装置1の製造方法)
図2のフローチャートおよび
図3~
図6の断面概略図を参照して、半導体装置1の製造方法について説明する。なお以下において、ステップを「S」と略記することがある。
【0029】
S10において、GaN支持基板11上にGaN層12が積層している半導体基板10が形成される。半導体基板10は、エピタキシャル成長法(例:HVPE法)によって、GaN支持基板11上にGaN層12を成長させることで形成してもよい。S20において、デバイスの下地構造が形成される。下地構造は、電極よりも下側の構造である。
【0030】
S30において、特定層形成工程が行われる。特定層形成工程は、パタン加工工程(S31)、成膜工程(S32)、エッチング工程(S33)を備えている。
【0031】
S31のパタン加工工程では、電極が配置される領域R1に、複数の窪みパタンRPが形成される。具体的には、
図3に示すように、窪みパタンRPに対応する開口部50aを備えたマスク50を作成する。マスク50は、周知のリソグラフィ技術を用いて作成することができる。マスク50は、レジストマスクでもよいし、シリコン酸化膜などを用いたハードマスクでもよい。次に、周知のドライエッチング技術を用いて、複数の窪みパタンRPを加工する。その後、マスク50を除去する。なお、マスク50にハードマスクを用いた場合には、マスク50を除去せずに次工程へ進んでもよい。
【0032】
S32の成膜工程では、特定層20が成膜される。前述したように、特定層20の成膜速度は、表面10fおよび底面10bの方が、内壁面10iよりも高い。よって
図4に示すように、表面10fおよび底面10bの膜厚T1が、内壁面10iの膜厚T2よりも厚くなるように、特定層20が成膜される。
【0033】
S33のエッチング工程では、特定層20が等方エッチングされる。等方エッチングの種類は、様々であってよく、例えばウエットエッチングや、CDE(Chemical Dry Etching)などであってよい。等方エッチングでは、エッチングレートに方向の依存性がない。従って、エッチング量を適宜調整することにより、表面10fおよび底面10bの特定層20を残存させながら、内壁面10iの特定層20を除去することができる。その後、周知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング加工を用いて、領域R1以外の特定層20を除去する。これにより、
図5に示す構造を形成することができる。
【0034】
S40において、電極層配置工程が行われる。具体的には、表面10f上の全面に、金属層を成膜する。次に、周知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング加工を用いて、領域R1以外の金属層を除去する。これにより、
図1に示すように、複数の窪みパタンRPの内部および表面10fに、電極層30が配置される。
【0035】
S50において、
図6に示すように、照射工程が行われる。照射工程では、半導体基板10の裏面10rから半導体基板10の内部に、集光面CSに沿ってレーザ光LAを照射する。これにより、集光面CS上に、複数の集光点FPを2次元配置することができる。複数の集光点FPの各々により局所的に加熱されることで、GaNの窒素がガスとなり蒸発することで、改質領域が形成される。
【0036】
S60において、分離工程が行われる。具体的には、熱や応力を半導体基板10に印加する。これにより、集光面CSに多数形成されている改質領域から伸びるクラックを、集光面CS方向に進展させる。よって、集光面CSを境界として、半導体基板10を互いに分離することができる。
【0037】
S70の研磨工程において、分離された半導体基板10の裏面10rが研磨される。これにより、ダメージ層を除去するとともに、平坦化することができる。研磨工程は、例えばCMP(化学的機械的研磨法)を用いて行われてもよい。なお、S70は省略してもよい。
【0038】
(課題)
S50の照射工程では、集光点FPにおける改質層の形成に寄与しなかったレーザ光LAは、集光面CSを抜けて、レーザ抜け光LLとなる。
図6では、レーザ抜け光LLを想像線で記載している。このレーザ抜け光LLが、表面10f側の電極層30に到達すると、電極層30がレーザ抜け光LLを吸収して発熱する場合がある。電極材料の融点を超過して加熱される結果、電極層30が変形してしまうおそれがある。
【0039】
(効果)
本実施例の技術では、半導体基板10の裏面10rに垂直な方向(-z方向)からみたときに、電極層30が特定層20によって覆われている。従って、半導体基板の裏面10rから照射されたレーザ抜け光LLが表面10f側に到達した場合においても、レーザ抜け光LLの少なくとも一部を、特定層20で吸収または反射することができる(
図6、領域R3参照)。すなわち、特定層20によって電極層30をレーザ抜け光LLから保護することができる。電極層30がレーザ抜け光LLの影響によって変形してしまうことを防止できる。
半導体装置201は、N型領域NRおよびP型領域PRを備えている。N型領域NRは、表面10fに不純物がイオン注入されて形成されている領域である。不純物は、例えば、シリコン、ゲルマニウム、酸素である。P型領域PRは、表面にイオン注入されることなく形成されている領域である。P型領域PRは、例えば、マグネシウムを含んだGaNをエピタキシャル成長させることで形成する。本実施例では、GaN層12の全体がP型領域PRである。そして、GaN層12の表面の一部に、N型領域NRが形成されている。
N型領域NRには、複数の窪みパタンRP_Nが形成されている。窪みパタンRP_Nは、深さD1を有している。また、P型領域PRには、複数の窪みパタンRP_Pが形成されている。窪みパタンRP_Pは、深さD2を有している。深さD2は、深さD1よりも深い。