(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000084
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】バルブ構造体及びバルブ構造体を備えた蓄圧式スプレイヤ
(51)【国際特許分類】
B05B 11/00 20230101AFI20231225BHJP
F04B 9/14 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B05B11/00 102M
B05B11/00 102G
F04B9/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098628
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】390028196
【氏名又は名称】キャニヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】赤築 充昭
【テーマコード(参考)】
3H075
【Fターム(参考)】
3H075AA01
3H075BB03
3H075CC18
3H075CC40
3H075DA06
3H075DB14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バネ力の低減を抑制し、高蓄圧性能を発揮できる蓄圧式スプレイヤのバルブ構造体、及び当該バルブ構造体を備えた蓄圧式スプレイヤを提供する。
【解決手段】メインシリンダ部B1とサブシリンダ部B2を有するシリンダボディ部Bと、シリンダボディ部Bを覆うように取り付けられたカバー部Cと、を有する蓄圧式スプレイヤXのバルブ構造体Aであって、蓄圧式スプレイヤXが、容器J内の液を、ファーストバルブFVを介してメインシリンダ部B1に吸い上げ、液に圧を加えて、一定圧を超えた時点でノズル部Fから噴出するものであり、バルブ構造体Aが、スプリング部と、バルブピストン部とよりなり、バルブピストン部が、スプリング取付部を備え、スプリング部がスプリング取付部に取り付けられ、スプリング部がバルブピストン部を鉛直方向に押圧し、スプリング部が前記バルブピストン部より高い剛性を有するものである、バルブ構造体A。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインシリンダ部とサブシリンダ部を有するシリンダボディ部と、該シリンダボディ部を覆うように取り付けられたカバー部と、を有する蓄圧式スプレイヤの前記サブシリンダ部に取り付けて用いられるバルブ構造体であって、
該蓄圧式スプレイヤが、容器に取り付けて、該容器内の液を、ファーストバルブを介して前記メインシリンダ部に吸い上げ、前記メインシリンダ部内の前記液に圧を加えて、一定圧を超えた時点でバルブ構造体を介してノズル部から噴出するものであり、
前記バルブ構造体が、
スプリング部と、該スプリング部と別体に設けられたバルブピストン部とよりなり、
該バルブピストン部が、前記スプリング取付部を備え、
前記スプリング部が前記スプリング取付部に取り付けられており、
前記スプリング部が前記バルブピストン部を鉛直方向に押圧するものであり、
前記スプリング部が前記バルブピストン部より高い剛性を有するものであるバルブ構造体。
【請求項2】
前記スプリング部が、金属により形成されており、
前記バルブピストン部が樹脂により形成されている請求項1記載のバルブ構造体。
【請求項3】
前記スプリング部がSUSにより形成されたコイルスプリングである請求項2記載のバルブ構造体。
【請求項4】
前記スプリング部がコイルスプリングであり、
前記スプリング取付部が、基部と、前記基部に立設された芯棒部と、前記基部と前記芯棒部とを接続するコーナー部と、よりなり、
前記スプリング部が前記基部に載置されたものである請求項1記載のバルブ構造体。
【請求項5】
前記スプリング部が逆ドーム状であり、
前記スプリング取付部が、基部と、前記基部に立設された芯棒部とよりなり、
前記スプリング部が前記芯棒部の先端に載置されたものである請求項1記載のバルブ構造体。
【請求項6】
前記スプリング部が、天板部と、該天板部より下垂された板バネ部とよりなり、
前記スプリング取付部が、すり鉢状に設けられたすり鉢部を有し、
前記板バネ部が、前記すり鉢部に載置されたものである請求項1記載のバルブ構造体。
【請求項7】
前記スプリング部が、天板部と、該天板部より下垂された波状の板バネ部と、該板バネ部の先端に設けられた底板部とよりなり、
前記スプリング取付部が、上方が解放した筒状であり、
前記底板部が前記スプリング取付部に載置されたものである請求項1記載のバルブ構造体。
【請求項8】
請求項1~7いずれか1項に記載のバルブ構造体を備えた蓄圧式スプレイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄圧式スプレイヤのバルブ構造体及び当該バルブ構造体を備えた蓄圧式スプレイヤに関し、更に詳しくは使用によるバネ力の低減を抑制し、さらにポリプロピレン製のスプリング以上の高蓄圧性能を発揮できる蓄圧式スプレイヤのバルブ構造体、及び当該バルブ構造体を備えた蓄圧式スプレイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、液を噴出するためのトリガーを備えた蓄圧式スプレイヤが広く知られている。
この蓄圧式スプレイヤは、トリガーを引き込みシリンダに対してピストンをスライドさせることでシリンダ内の液の圧を高め、一定圧を超えた時点でシリンダ内の液を勢いよくノズルから噴出させる構造となっている。
【0003】
より具体的には、シリンダは2つの一方向弁(すなわち、ファーストバルブとセカンドバルブ)の中間に配設されており、ファーストバルブを介して導入されたシリンダ内の液が一定以上に蓄圧されると、セカンドバルブの弁体と弁座との間が解放されて開弁し、液がシリンダ内から勢いよく押し出されてノズルを介して外部に噴出される構造である。
【0004】
この場合、セカンドバルブの弁体はバネが発揮する弾発力によって弁座に常に押圧されており、ファーストバルブが閉じている状態でシリンダ内の液圧が当該弾発力を超えると、セカンドバルブが開弁して液が勢いよく通過する。
ノズルから液が噴出され、シリンダ内が放圧されることで液圧より弾発力が勝り、バネが弁体を弁座に対して押圧することでセカンドバルブは再び閉弁する。
トリガーを備えた蓄圧式スプレイヤは、このようにしてシリンダ内の液を勢いよく外部に噴出することができ、有用である。
【0005】
このような蓄圧式スプレイヤとしては、例えば出願人によるものがいくつか開発されている。
【0006】
例えば、特許文献1記載の発明は、容器内の液を吸い上げて噴出するためのトリガースプレイヤーであって、液の圧力に応じて開閉する第2バルブを備え、該第2バルブが第2バルブピストン部と該第2バルブピストン部を付勢するための逆ドーム状のドームスプリング部とを備えるものである。
また、特許文献2記載の発明も同様のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2020-219863号
【特許文献2】特願2020-219864号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献2記載の発明のように、弁体とスプリングが一体となったスプレイヤにおいては、弁体及びスプリングの素材として合成樹脂が採用されている。
この場合、蓄圧式スプレイヤの使用期間が長くなり、トリガーを動かす回数が多くなると、バネ機能を担う合成樹脂に負荷が加わる。
負荷が蓄積することで合成樹脂に塑性変形が生じてバネ力が弱まり、十分なバネ力を発揮することができなくなる。
【0009】
また、合成樹脂の特質上、スプリングが一定程度を超える蓄圧力を発揮することは難しい。
具体的には、より強いバネ力を発揮させるためには合成樹脂を硬質なものとする必要がある一方で、合成樹脂を硬質なものとすると弁体としての移動量が減少しバルブの開閉に支障を生じる。
そのため、より多くの液を噴射するために必要な高蓄圧性を実現することは困難である。
ここで高蓄圧性とは、バルブが高圧で開弁すること、弁体が十分に移動することで液の流路が大きく開くこと、及び液を噴出するとバルブが素早く閉弁することをいう。
【0010】
本発明は、上述の課題を受けて開発されたものである。
すなわち、本発明はトリガーを動かす回数が多くなった場合であってもバネ力の低減を抑制し、さらに高蓄圧性能を発揮できる蓄圧式スプレイヤのバルブ構造体、及び当該バルブ構造体を備えた蓄圧式スプレイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は鋭意検討の結果、バルブ構造体においてスプリング部と弁体として機能するバルブピストン部とを別体に設け、スプリング部がバルブピストン部を鉛直方向に押圧するものとし、かつスプリング部が従来のバルブピストン部より高い剛性を有するものとすることによって上記課題を解決可能であることを見出した。本発明はこの知見に基づく。
【0012】
本発明は、メインシリンダ部とサブシリンダ部を有するシリンダボディ部と、シリンダボディ部を覆うように取り付けられたカバー部と、を有する蓄圧式スプレイヤのサブシリンダ部に取り付けて用いられるバルブ構造体であって、蓄圧式スプレイヤが、容器に取り付けて、容器内の液を、ファーストバルブを介してメインシリンダ部に吸い上げ、メインシリンダ部内の液に圧を加えて、一定圧を超えた時点でバルブ構造体を介してノズル部から噴出するものであり、バルブ構造体が、スプリング部と、スプリング部と別体に設けられたバルブピストン部とよりなり、バルブピストン部が、スプリング取付部を備え、スプリング部がスプリング取付部に取り付けられており、スプリング部がバルブピストン部を鉛直方向に押圧するものであり、スプリング部が前記バルブピストン部より高い剛性を有するものであるバルブ構造体に存する。
【0013】
本発明は、スプリング部が、金属により形成されており、バルブピストン部が樹脂により形成されている上記記載のバルブ構造体に存する。
【0014】
本発明は、スプリング部がSUSにより形成されたコイルスプリングである上記記載のバルブ構造体に存する。
【0015】
本発明は、スプリング部がコイルスプリングであり、スプリング取付部が、基部と、基部に立設された芯棒部と、基部と芯棒部とを接続するコーナー部と、よりなり、スプリング部が基部に載置されたものである上記記載のバルブ構造体に存する。
【0016】
本発明は、スプリング部が逆ドーム状であり、スプリング取付部が、基部と、基部に立設された芯棒部とよりなり、スプリング部が芯棒部の先端に載置されたものである記載のバルブ構造体に存する。
【0017】
本発明は、スプリング部が、天板部と、天板部より下垂された板バネ部とよりなり、スプリング取付部が、すり鉢状に設けられたすり鉢部を有し、板バネ部が、すり鉢部に載置されたものである上記記載のバルブ構造体に存する。
【0018】
本発明は、スプリング部が、天板部と、天板部より下垂された波状の板バネ部と、板バネ部の先端に設けられた底板部とよりなり、スプリング取付部が、上方が解放した筒状であり、底板部がスプリング取付部に載置されたものである上記記載のバルブ構造体に存する。
【0019】
本発明は、上記記載のバルブ構造体を備えた蓄圧式スプレイヤに存する。
【0020】
また、本発明はこれらを適宜組み合わせたものであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のバルブ構造体は、スプリング部がスプリング取付部に取り付けられていることにより、バネとして機能するスプリング部と弁体として機能するバルブピストン部とを別体とすることができる。
そのため、スプリング部とバルブピストン部とを、剛性の点で異なる性質のものとすることが可能となる。
また、スプリング部がバルブピストン部を鉛直方向に押圧するものであり、スプリング部が前記バルブピストン部より高い剛性を有するものであることにより、スプリング部がバルブピストン部を十分に押圧することができ、高蓄圧性を発揮することが可能となる。
【0022】
本発明のバルブ構造体は、スプリング部が、金属により形成されており、バルブピストン部が樹脂により形成されていることにより、スプリング部がバルブピストン部を十分に押圧することができる。
【0023】
本発明のバルブ構造体は、スプリング部が、SUSにより形成されたコイルスプリングであることにより、スプリング部の復帰力が向上し、セカンドバルブ内の液圧がノズル部から液が噴出されることで低下した場合に、スプリング部がバルブピストン部を直ちに押圧してセカンドバルブが閉弁する。
これにより、バルブ構造体を備える蓄圧式スプレイヤが応答性に優れたものとなる。
ここで、応答性とは、蓄圧式スプレイヤにおいて、トリガー部の引き込みを中断した場合に、バルブが直ちに閉弁し、液の噴出が止まることである。
また、スプリング部がコイルスプリングであることにより、スプリング部のバネ力の変更を容易に行うことができ、蓄圧式スプレイヤの応答性を容易に変更することが可能となる。
【0024】
本発明のバルブ構造体は、スプリング取付部が、基部と基部に律説された芯棒部とよりなることにより、スプリング部が適正に位置決めされ、バルブピストン部を押圧することができる。
そのため、スプリング部が十分な押圧力を発揮することができる。
また、基部と芯棒部とを接続するコーナー部を備えることで、スプリング部がコーナー部に当接して、スプリング部の位置決めが行われ、スプリング部のバネ力がバルブピストン部に均等に加わる。
これにより、セカンドバルブが的確に閉弁するとともに、蓄圧式スプレイヤの応答性が向上する。
また、スプリング部がコイルスプリングであることにより、スプリング部のバネ力の変更を容易に行うことができ、蓄圧式スプレイヤの応答性を容易に変更することが可能となる。
【0025】
本発明のバルブ構造体は、スプリング部が逆ドーム状であることにより、スプリング部の復帰速度が速くなり、トリガー部の引き込みを中断した場合の、セカンドバルブの閉弁が直ちに行われる。
そのため、応答性が向上する。
また、スプリング取付部が、基部と、基部に立設された芯棒部とよりなり、スプリング部が芯棒部の先端に載置されたものであることにより、スプリング部がバルブピストン部を偏りなく押圧することが可能となる。
そのため、セカンドバルブの開閉が安定し、結果として蓄圧式スプレイヤによる液の噴出が安定する。
【0026】
本発明のバルブ構造体は、スプリング部が、天板部と、天板部より下垂された板バネ部とよりなり、スプリング取付部が、すり鉢状に設けられたすり鉢部を有し、板バネ部が、すり鉢部に載置されたものであることにより、スプリング部がバルブピストン部を偏りなく押圧することが可能となる。
そのため、セカンドバルブの開閉が安定し、結果として蓄圧式スプレイヤによる液の噴出が安定する。
【0027】
本発明のバルブ構造体は、スプリング部が、天板部と、天板部より下垂された波状の板バネ部と、板バネ部の先端に設けられた底板部とよりなり、スプリング取付部が、上方が解放した筒状であり、底板部がスプリング取付部に載置されたものであることにより、スプリング部の上端及び下端において、スプリング部が発揮する弾発力が面的に伝わる。
このため、スプリング部がバルブピストン部を偏りなく押圧することが可能となる。
そのため、セカンドバルブの開閉が安定し、結果として蓄圧式スプレイヤによる液の噴出が安定する。
【0028】
本発明の蓄圧式スプレイヤは、上記記載のバルブ構造体を備えることにより、高蓄圧性を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る蓄圧式スプレイヤを示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のバルブ構造体を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るバルブピストン部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るスプリング部を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、サブシリンダ部の内周壁を示す説明図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係るバルブ構造体を拡大して示す断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係るバルブピストン部を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係るスプリング部を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係るバルブ構造体を拡大して示す断面図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係るバルブピストン部を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係るスプリング部を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、第4実施形態に係るバルブ構造体を拡大して示す断面図である。
【
図13】
図13は、第4実施形態に係るバルブピストン部を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、第4実施形態に係るスプリング部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0031】
〔第1実施形態〕
本発明の蓄圧式スプレイヤXは、容器Jに取り付けて、容器J内の液を、ファーストバルブFVを介してメインシリンダ部B1に吸い上げ、メインシリンダ部B1内の液に圧を加えて、液圧が一定圧を超えた時点でバルブ構造体Aを介してノズル部Fから勢いよく噴出するものである。
【0032】
図1は、第1実施形態に係る蓄圧式スプレイヤX示す断面図である。
【0033】
また、
図2は、
図1のバルブ構造体Aを拡大して示す断面図である。
蓄圧式スプレイヤXは、ノズル部Fと、シリンダボディ部B(メインシリンダ部B1、サブシリンダ部B2、第1通路部P1、第2通路部P2、及び第3通路部P3等を有する)と、ピストン部Dと、カバー部Cと、トリガー部Eと、ファーストバルブFVと、セカンドバルブと、導入管Hと、トリガー用復帰バネIと、キャップ部Gと、を備えている。
【0034】
シリンダボディ部Bは、液の流れる通路を有する部分であり、ピストン部Dを受け入れるメインシリンダ部B1と、容器J内の液をメインシリンダ部B1に導入する第1通路部P1と、液をメインシリンダ部B1からバルブ構造体Aが装着されるサブシリンダ部B2に導入する第2通路部P2と、液をサブシリンダ部B2からノズル部Fに導入する第3通路部P3と、を備える。
導入管Hは円筒状であり、シリンダボディ部Bの下方に嵌合されている。
導入管Hは第1通路部P1を介してメインシリンダ部B1と連通している。
【0035】
メインシリンダ部B1は円筒形状の部材である。メインシリンダ部B1には、トリガー部Eの動きに連動してメインシリンダ部B1内を摺動するピストン部Dが挿入されている。
メインシリンダ部B1と第1通路部P1との間にはファーストバルブFVが設けられている。
ファーストバルブFVは第1通路部P1からメインシリンダ部B1内へ液を通過させる一方向弁である。
メインシリンダ部B1は、第2通路部P2を介してサブシリンダ部B2と連通している。
【0036】
サブシリンダ部B2は、上方が解放した筒状に形成されている。サブシリンダ部B2にはバルブ構造体Aが装着される。
具体的には、サブシリンダ部B2の底部はバルブ構造体Aを支持する下支持部B23となっており、バルブ構造体Aは下支持部B23に載置される。
ここで後述するように、サブシリンダ部B2の内壁が弁座として機能し、バルブ構造体Aのバルブピストン部2、より具体的には内スカート部23が弁体として機能することで、いわゆるセカンドバルブが形成されている。
サブシリンダ部B2のノズル部F側には、後述する縦溝部B21及び貫通孔B22が設けられ、該貫通孔B22が第3通路部P3と連通している。
【0037】
なお、シリンダボディ部Bの下端には鍔部が設けられており(
図1参照)、この鍔部を容器Jの上端部とキャップ部Gとで挟み込むことで蓄圧式スプレイヤXが容器Jに固定される。
【0038】
カバー部Cは、シリンダボディ部B全体を覆うように取り付けられる。
カバー部Cをシリンダボディ部Bに取り付けた状態で、カバー部Cとシリンダボディ部Bのサブシリンダ部B2との間には空間が生じ、当該空間にバルブ構造体Aが装着される。
カバー部Cには、バルブ構造体Aを支持するための上支持部C1が設けられている。
この上支持部C1は、スプリング部1の上端を支持するカバー部Cの内側上壁の部分である。
【0039】
図3は、第1実施形態に係るバルブピストン部2を示す斜視図である。
また、
図2は、第1実施形態に係るスプリング部1を示す斜視図である。
バルブピストン部2が上方に移動すると、スプリング部1が
図2のように上支持部C1に当接する。さらにバルブピストン部2が上方に移動し、スプリング部1が変形することでバルブピストン部2に対して押圧力を発揮する。
【0040】
バルブ構造体Aは、スプリング部1と、スプリング部1とは別体に設けられたバルブピストン部2とよりなる。
バルブピストン部2は、基部24aを有し、基部の略中央には基部24aから上方に向けて筒状の芯棒部21が立設されている。
基部24aには、さらに基部24aと芯棒部21とを接続するコーナー部24bが設けられている。
芯棒部21、基部24a及びコーナー部24bは、スプリング取付部24を構成している。
具体的には、コイル状のスプリング部1には芯棒21が下側から挿通され、スプリング部1が基部24aに載置されることで、スプリング部1とバルブピストン部2が取り付けられる。
【0041】
スプリング取付部24が、基部24aとコーナー部24bとよりなり、スプリング部1がコーナー部24bに当接して位置決めされることにより、スプリング部1が、適正に位置決めされた状態でバルブピストン部2を押圧することができる。
そのため、スプリング部1が十分な押圧力を発揮し、高蓄圧性を発揮することが可能となる。
また、スプリング部1がコーナー部24bに当接して位置決めされることにより、スプリング部1のバネ力がバルブピストン部に均等に加わる。これにより、セカンドバルブが的確に閉弁するとともに、蓄圧式スプレイヤXの応答性が向上する。
【0042】
バルブピストン部2においては、基部24aの周辺から連続して、下方に延びる外スカート部22が形成されている。
さらに、外スカート部22の内側には、外スカート部22より長く下方に延びるうちスカート部が形成されている。
すなわち、芯棒部21、外スカート部22及び内スカート部23がバルブピストン部2を構成している。
【0043】
コイルスプリングであるスプリング部1がスプリング取付部24に取り付けられることで、スプリング部1の弾発力が、バルブピストン部2に対して均等に加わる。
そのため、スプリング部1による押圧力が適正に伝わり、バルブピストン部2の軸心が安定し、上下移動時の横ブレが防止される。
また、スプリング部1がコイルスプリングであることにより、スプリング部1のバネ力の変更を容易に行うことができ、蓄圧式スプレイヤXの応答性を容易に変更することが可能となる。
【0044】
スプリング部1の材質としては、剛性に優れた素材、具体的にはSUS、硬鋼線(SWC)、ピアノ線等の金属を好適に用いることができる。とくに、SUSによるスプリング部1は、耐腐食性や耐熱性の観点から好ましい。
これらの素材を用いることにより、スプリング部1の復帰力が向上し、セカンドバルブ内の液圧がノズル部から液が噴出されることで低下した場合に、スプリング部1がバルブピストン部2を直ちに押圧してセカンドバルブが閉弁する。
そのためバルブ構造体Aを備える蓄圧式スプレイヤXが応答性に優れたものとなる。
また、バルブピストン部2の材質としてはPP樹脂、又はポリエチレン樹脂等の合成樹脂素材が好適に用いられる。
このとき、スプリング部1及びバルブピストン部2それぞれの材質において、スプリング部1がパルブピストン部2よりも高い剛性を有するものとすることとし、且つ、スプリング部1がバルブピストン部2を鉛直方向に押圧するものとするにより、スプリング部1がバルブピストン部2を十分に押圧することができ、高蓄圧性を発揮することが可能となる。
【0045】
また、蓄圧式スプレイヤXにおいては、スプリング部1と外スカート部22との間の芯棒部21が、スプリング部1と外スカート部22との間で筒状に形成されたものであることにより、バルブ構造体Aが上下に移動する場合にサブシリンダ部B2の壁面に接書臆するものがなく、移動の妨げとならずに、バルブ構造体Aによる開弁及び閉弁がスムーズに行われる。
【0046】
外スカート部22及び内スカート部23は、いずれも下方が外側へ拡径したテーパー状に形成されている。
後述するように、外スカート部22は封止の機能を発揮し、内スカート部23は弁体として機能する。
【0047】
芯棒部21は上端が解放され、中心穴21bが形成されている。
また、解放された中心穴21bの周辺は凸状となって筒状突起21aを形成している。
すなわち、スプリング部1の略中央には中心穴21b及び筒状突起21aが形成されている。
後述するように、筒状突起21aは弁体として機能するバルブ構造体Aのストッパとして機能する。
【0048】
蓄圧式スプレイヤXにおいては、バルブピストン部2に上方が解放された中心穴21bが形成されていることにより、バルブ構造体Aを軽量化することが可能となる。
また、バルブ構造体Aが押圧された場合に軸曲がりが防止される。
【0049】
蓄圧式スプレイヤXにおいて、バルブ構造体Aはサブシリンダ部B2に装着される。上述したように、サブシリンダ部B2は上方が解放された筒状であり、外スカート部22及び内スカート部23が、サブシリンダ部B2の内壁を押圧するように装着される。
このとき、バルブ構造体Aはサブシリンダ部B2の底部に形成された下支持部B23に載置されている。
スプリング部1はカバー部Cの上支持部C1に支持されている。
【0050】
カバー部Cの上支持部C1は、カバー部Cの内壁においてスプリング部1が当接する部位である。
カバー部Cにおいては、筒状突起21aに対応する位置に凸状のストッパ部C2が設けられている。
ストッパ部C2は、バルブ構造体Aの上方への移動を制限するためのものである。
また、上支持部C1には、ストッパ部C2を中心に、スプリング部1が当接するための溝がリング状に形成されている。
これにより、ストッパ部C2と筒状部21が当接することでバルブピストン部2の上方への移動を制限しながら、スプリング部1は溝にはまり込んで変形することで、バルブピストン部に対して十分な押圧力を発揮することが出来る。
【0051】
図5は、サブシリンダ部B2の内周壁を示す説明図である。
サブシリンダ部B2の内周壁には、全方位に上下方向に延びる凹状の縦溝部B21が複数個、一定の間隔を置いて設けられている。
このうち、ノズル部F側に位置する第3通路部P3に対応する位置に設けられた縦溝部B21の底には、第3通路部P3に通じる貫通孔B22が設けられている。ノズル部Fに対応する位置以外の縦溝部B21には、貫通孔B22は設けられていない。
【0052】
縦溝部B21の間は、内壁が柱として機能する。
これにより、バルプピストン部2に圧が加わった際にも、縦溝部B21周辺が変形することがなく、バルブピストン部2の摺動がスムーズに行われる。
【0053】
第3通路部P3は、サブシリンダ部B2の底部から一定の間隔をあけて設けられている。具体的には、底部から2~3mmの高さに設けられている。
これにより、初期状態からトリガー部Eが回動され、メインシリンダ部B1内の液圧が高まることでバルブピストン部2が移動を始めてから、内スカート部23が貫通孔B22を通過してセカンドバルブが開弁するまで、タイムラグが生じる。
このため、トリガー部Eを回動させても液が噴出されない状態(いわゆる遊び)が発生し、蓄圧式スプレイヤXの使い勝手が向上する。
【0054】
ここで、
図1を参照して蓄圧式スプレイヤXを用いて液を噴出する場合の液の流れについて説明する。
液は、容器J、導入管H、第1通路部P1、ファーストバルブFV、メインシリンダ部B1、第2通路部P2、サブシリンダ部B2、縦溝部B21(貫通孔B22)、第3通路部P3、ノズル部Fの順に流通し、ノズル部Fから外部へと噴出される。
【0055】
初期状態においては、ファーストバルブFV及びセカンドバルブは閉弁しており、かつ導入管Hからサブシリンダ部B2まで、液が充填された状態となっている。
また、トリガー部Eは回動されていない状態にある。
【0056】
トリガー部Eを回動させると、トリガー部Eと連動してメインシリンダ部B1内でピストン部Dが移動し、メインシリンダ部B1内の圧が高まる(蓄圧される)。
このとき、メインシリンダ部B1と、バルブピストン部2の下側空間とは、第2通路部P2を通じて連通しており、液が満たされた状態である。
【0057】
液圧が十分に高まると、これに押し上げられるように、バルブピストン部2が上方へ移動し、スプリング部1が押圧されて変形する。
【0058】
さらに液圧によりバルブ構造体Aが上方へ移動すると、上述したように筒状突起21aがストッパ部C2に当接することによりバルブ構造体Aの移動が制限される。
これにより、バルブ構造体Aが上死点へ至り、スプリング部1の変形が一定の範囲内に抑制される。
このとき、スプリング部1は、カバー部Cに設けられた溝にはまり込み、さらに変形する。
【0059】
バルブピストン部2が十分に上昇すると、縦溝部B21の貫通孔B22と第3通路部P3とが連通し、液がノズル部Fへと移動する。
このとき、液は蓄圧された状態であるため、ノズル部Fから外部へと勢いよく噴出される。
なおこのとき、ファーストバルブFVは閉弁している。
【0060】
液が噴出されることで、メインシリンダ部B1からノズル部Fまでの液圧が下がり、スプリング部1の弾発力がこれに打ち勝つと、バルブピストン部2が押し下げられる。
ピストン部Dが押し下げられると、内スカート部23が第3通路部P3を覆い、セカンドバルブが閉弁する。
【0061】
また、トリガー部Eはトリガー用復帰バネIのバネ力によって初期位置へと復帰する。
トリガー部Eが復帰に連動してメインシリンダ部B1においてピストン部Dが移動し、メインシリンダ部B1内が負圧になってファーストバルブFVが開弁する。
このとき、容器Jからメインシリンダ部B1内までが連通しているので、負圧によって容器Jから導入管H及び第1通路部P1を通じて、メインシリンダ部B1内へ液が吸い上げられる。
液の流入によってメインシリンダ部B1内の負圧状態が解消されると、ファーストバルブFVが閉弁し、液の移動が止まる。
なお、このときセカンドバルブ(バルブ構造体A)は、上述したように閉弁した状態にある。
【0062】
これによって、蓄圧式スプレイヤXは初期状態に復帰する。
このとき、ファーストバルブFV、及びセカンドバルブは共に閉弁しており、かつ導入管Hからサブシリンダ部B2まで、液が充填された状態となっている。
【0063】
なお、以上説明したメインシリンダ部B1やサブシリンダ部B2を有するベース体Bの材質としてはPP樹脂(ポリプロピレン樹脂)等が好適に用いられる。
【0064】
蓄圧式スプレイヤAを本実施形態のバルブ構造体Aを蓄圧式スプレイヤに備えることにより、高蓄圧性を実現することが可能となる。
【0065】
〔第2実施形態〕
以下に、本発明の第2実施形態について述べる。第1実施形態と重複する部分は割愛する。
図6は、第2実施形態に係るバルブ構造体Aを拡大して示す断面図である。
また、
図7は、第2実施形態に係るバルブピストン部2を示す斜視図である。
また、
図8は、第2実施形態に係るスプリング部1を示す斜視図である。
第2実施形態においては、スプリング部1が逆ドーム状であり、スプリング取付部24が、基部24aと、基部24aに立設された芯棒部21とよりなり、スプリング部1が芯棒部21の先端に載置されることでバルブピストン部2に取り付けられるものである。
第2実施形態においては、スプリング部1とピストンバルブ部2とは、共に周方向に均一であるため、スプリング部1がバルブピストン部2を偏りなく押圧することが可能となる。
これにより、セカンドバルブの開閉が安定し、結果として蓄圧式スプレイヤXによる液の噴出が安定する。
また、スプリング部1が逆ドーム状であることにより、スプリング部1の復帰速度が速くなり、トリガー部Eの引き込みを中断した場合に、セカンドバルブの閉弁が直ちに行われる。
そのため、応答性が向上する。
【0066】
〔第3実施形態〕
以下に、本発明の第2実施形態について述べる。
第1実施形態及び第2実施形態と重複する部分は割愛する。
図9は、第3実施形態に係るバルブ構造体を拡大して示す断面図である。
また、
図10は、第3実施形態に係るバルブピストン部2を示す斜視図である。
また、
図11は、第3実施形態に係るスプリング部1を示す斜視図である。
第3実施形態においては、スプリング部1が、天板部1Cと、天板部1Cより下垂された板バネ部1Dとよりなる。
また、スプリング取付部24が、すり鉢状に設けられたすり鉢部24cを有し、板バネ部1Dが、すり鉢部24cに載置されることで、スプリング部1がバルブピストン部2に取り付けられるものである。
天板部1Cは上支持部C1に対して面的に当接し、押圧される。
また、板バネ部1Dがすり鉢部24cを押圧することにより、スプリング部1がピストンバルブ部2を偏りなく押圧することが可能となる。
そのため、セカンドバルブの開閉が安定し、結果として蓄圧式スプレイヤXによる液の噴出が安定する。
第3実施形態においては、スプリング部1にはPOM樹脂が好適に用いられる。
これにより、スプリング部1がポリプロピレン樹脂製のスプリング以上の剛性を有するものとすることができる。
また、射出成形によりスプリング部1を製造することが可能となる。
また、バルブピストン部2については、第1実施形態と同様である。
【0067】
〔第4実施形態〕
以下に、本発明の第4実施形態について述べる。
第1実施形態から第3実施形態と重複する部分は割愛する。
図12は、第4実施形態に係るバルブ構造体Aを拡大して示す断面図である。
また、
図13は、第4実施形態に係るバルブピストン部2を示す斜視図である。
また、
図14は、第4実施形態に係るスプリング部1を示す斜視図である。
第4実施形態においては、スプリング部1が天板部1Eと、天板部1Eより下垂された波状の板バネ部1Fと、板バネ部の先端に設けられた底板部1Gとよりなる。
スプリング取付部24は上方が解放した筒状であり、底板部1Gが載置されることにより、スプリング部1がバルブピストン部2に取り付けられる。
天板部1Eは上支持部C1に対して面的に当接する。
また、底板部1Gも同様にバルブピストン部2に対して面的に当接する。
これにより、スプリング部1の上端(天板部1E)及び下端(底板部1G)において、スプリング部が発揮する弾発力が面的に伝わる。
これらのことによりスプリング部1がピストンバルブ部2を偏りなく押圧することが可能となる。
そのため、セカンドバルブの開閉が安定し、結果として蓄圧式スプレイヤXによる液の噴出が安定する。
第4実施形態においては、スプリング部1にはPOM樹脂が好適に用いられる。
これにより、スプリング部1がポリプロピレン樹脂製のスプリング以上の剛性を有するものとすることができる。
また、射出成形によりスプリング部1を製造することが可能となる。
【0068】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0069】
スプリング部1及びバルブピストン部2の形状は、上記実施形態に限られず、スプリング部1がバルブピストン部2を押圧できる適宜の形状を採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のバルブ構造体Aは、トリガーを備えた蓄圧式スプレイヤXに好適に用いることができる。
また、本発明のバルブ構造体Aを備えた蓄圧式スプレイヤXは、高蓄圧性を発揮し、液の噴出に広く用いることが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
X・・・蓄圧式スプレイヤ
A・・・バルブ構造体
1・・・スプリング部
1C、1E・・・天板部
1D、1F・・・板バネ部
1G・・・底板部
2・・・バルブピストン部
21・・・芯棒部
21a・・・筒状突起
21b・・・中心穴
22・・外スカート部
23・・・内スカート部
24・・・スプリング取付部
24a・・・基部
24b・・・コーナー部
24c・・・すり鉢部
B・・・シリンダボディ部
B1・・・メインシリンダ部
B2・・・サブシリンダ部
B21・・・縦溝部
B22・・・貫通孔
B23・・・下支持部
C・・・カバー部
C1・・・上支持部
C2・・・ストッパ部
D・・・ピストン部
E・・・トリガー部
F・・・ノズル部
G・・・キャップ部
H・・導入管
I・・・トリガー用復帰バネ
J・・・容器
FV・・・ファーストバルブ
P1・・・第1通路部
P2・・・第2通路部
P3・・・第3通路部