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特開2024-84004セラミック電子部品、包装体、回路基板、およびセラミック電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084004
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】セラミック電子部品、包装体、回路基板、およびセラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
H01G4/30 201C
H01G4/30 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198146
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】小和瀬 裕介
(72)【発明者】
【氏名】滝田 優治
(72)【発明者】
【氏名】山根 麻衣子
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AD04
5E001AF02
5E001AH01
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082FG54
5E082GG10
5E082GG28
5E082JJ27
5E082KK01
5E082LL02
(57)【要約】
【課題】 クラックの発生を抑制することができるセラミック電子部品、包装体、回路基板、およびセラミック電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 第1方向の寸法が、前記第1方向と直交する第2方向の寸法の1.3倍以上であり、複数の誘電体層と、複数の内部電極層と、が前記第1方向に交互に積層され、略直方体形状を有し、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に対向する第1端面と第2端面とに前記複数の内部電極層が交互に露出するように形成された積層チップと、前記第1端面および前記第2端面に設けられ、前記第1端面および前記第2端面に設けられた1対の外部電極と、を備え、前記複数の内部電極層は、前記外部電極に接続される接続部の前記第2方向の幅が、他の領域の幅よりも狭くなっており、前記複数の内部電極層のうち隣り合う少なくとも2層において、前記接続部の前記第2方向の端が前記第2方向においてずれている。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向の寸法が、前記第1方向と直交する第2方向の寸法の1.3倍以上であり、
複数の誘電体層と、複数の内部電極層と、が前記第1方向に交互に積層され、略直方体形状を有し、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に対向する第1端面と第2端面とに前記複数の内部電極層が交互に露出するように形成された積層チップと、
前記第1端面および前記第2端面に設けられ、前記第1端面および前記第2端面に設けられた1対の外部電極と、を備え、
前記複数の内部電極層は、前記外部電極に接続される接続部の前記第2方向の幅が、他の領域の幅よりも狭くなっており、
前記複数の内部電極層のうち隣り合う少なくとも2層において、前記接続部の前記第2方向の端が前記第2方向においてずれていることを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項2】
前記積層チップの前記第2方向における中心と、前記複数の内部電極層の前記第2方向における中心とのずれ量の平均値をDとし、前記複数の内部電極層が前記外部電極と接続される箇所の前記第2方向における幅の平均値をHとする場合に、D/Hは、10%以上75%以下であることを特徴とする請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記接続部の幅は、異なる外部電極に接続される内部電極層同士が対向する領域における前記内部電極層の幅の、20%以上80%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記複数の内部電極層の主成分は、ニッケルであり、
前記外部電極のうち前記第1端面および前記第2端面に接する部位の主成分は、銅であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品と、
前記第1方向に垂直なシール面と、前記シール面から前記第1方向に窪み、前記セラミック電子部品を収容する凹部と、を有するキャリアテープと、
前記シール面に貼り付けられ、前記凹部を覆うトップテープと、
を備えることを特徴とする包装体。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品と、
前記第1方向に垂直な実装面と、前記実装面に設けられ、前記セラミック電子部品の前記1対の外部電極がそれぞれハンダを介して接続された1対の接続電極と、を有する実装基板と、
を備えることを特徴とする回路基板。
【請求項7】
第1方向の寸法が前記第1方向と直交する第2方向の寸法の1.3倍以上であるセラミック電子部品の製造方法であって、
誘電体グリーンシート上に内部電極パターンが成膜された積層単位が、前記第1方向に複数積層された積層体を焼成する工程と、
前記積層体を焼成する際に、または前記積層体を焼成した後に、前記積層体の前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に対向する第1端面と第2端面とに1対の外部電極を形成する工程と、を含み、
内部電極パターンは、前記外部電極に接続される接続部の前記第2方向の幅が、他の領域の幅よりも狭くなっており、
前記複数の内部電極パターンのうち隣り合う少なくとも2層において、前記接続部の前記第2方向の端が前記第2方向においてずれていることを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記積層単位を前記第1方向に複数積層し、得られる積層構造の前記第2方向の端の2面にサイドマージンシートを貼り付けることによって、前記積層体を得て、その後に前記積層体を焼成することを特徴とする請求項7に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品、包装体、回路基板、およびセラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯情報端末等の電子機器の小型化が進み、回路基板上でのセラミック電子部品の実装面積は制限されている。その一方で、機器の高機能化により、積層セラミックコンデンサのさらなる大容量化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-212295号公報
【特許文献2】特開平11-135355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層セラミックコンデンサの大容量化を実現するには、内部電極層の総対向面積の増加が重要である。特に実装面積を拡大せずに大容量化を実現するために、内部電極層の積層数を多くすることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、積層数を多くするために、高さ方向寸法(T)を幅方向寸法(W)よりも大きくする形状の場合、外部電極や内部電極層からの元素拡散が促進され、クラック発生率が大きくなるおそれがある。
【0005】
そこで、内部電極層の幅を小さくして外部電極との接触面積を小さくすることで、元素拡散を抑制することが考えられる(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、高さ方向寸法(T)を幅方向寸法(W)よりも大きくする高背構造では、内部電極層の幅を小さくすることに起因する充填率の低下の影響が大きくなり、内部電極の無い部分が凹んでしまうので、矩形性を保ちにくくなるおそれがある。さらに、上記のようないびつな構造になってしまうことで外部電極を塗布する際、稜部等で切れてしまい不良品となってしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、形状に起因する不具合の発生を抑制することができるセラミック電子部品、包装体、回路基板、およびセラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るセラミック電子部品は、第1方向の寸法が、前記第1方向と直交する第2方向の寸法の1.3倍以上であり、複数の誘電体層と、複数の内部電極層と、が前記第1方向に交互に積層され、略直方体形状を有し、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に対向する第1端面と第2端面とに前記複数の内部電極層が交互に露出するように形成された積層チップと、前記第1端面および前記第2端面に設けられ、前記第1端面および前記第2端面に設けられた1対の外部電極と、を備え、前記複数の内部電極層は、前記外部電極に接続される接続部の前記第2方向の幅が、他の領域の幅よりも狭くなっており、前記複数の内部電極層のうち隣り合う少なくとも2層において、前記接続部の前記第2方向の端が前記第2方向においてずれていることを特徴とする。
【0009】
上記セラミック電子部品において、前記積層チップの前記第2方向における中心と、前記複数の内部電極層の前記第2方向における中心とのずれ量の平均値をDとし、前記複数の内部電極層が前記外部電極と接続される箇所の前記第2方向における幅の平均値をHとする場合に、D/Hは、10%以上75%以下であってもよい。
【0010】
上記セラミック電子部品において、前記接続部の幅は、異なる外部電極に接続される内部電極層同士が対向する領域における前記内部電極層の幅の、20%以上80%以下であってもよい。
【0011】
上記セラミック電子部品において、前記複数の内部電極層の主成分は、ニッケルであり、前記外部電極のうち前記第1端面および前記第2端面に接する部位の主成分は、銅であってもよい。
【0012】
本発明に係る包装体は、上記のいずれかのセラミック電子部品と、前記第1方向に垂直なシール面と、前記シール面から前記第1方向に窪み、前記セラミック電子部品を収容する凹部と、を有するキャリアテープと、前記シール面に貼り付けられ、前記凹部を覆うトップテープと、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る回路基板は、上記いずれかのセラミック電子部品と、前記第1方向に垂直な実装面と、前記実装面に設けられ、前記セラミック電子部品の前記1対の外部電極がそれぞれハンダを介して接続された1対の接続電極と、を有する実装基板と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、第1方向の寸法が前記第1方向と直交する第2方向の寸法の1.3倍以上であるセラミック電子部品の製造方法であって、誘電体グリーンシート上に内部電極パターンが成膜された積層単位が、前記第1方向に複数積層された積層体を焼成する工程と、前記積層体を焼成する際に、または前記積層体を焼成した後に、前記積層体の前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に対向する第1端面と第2端面とに1対の外部電極を形成する工程と、を含み、内部電極パターンは、前記外部電極に接続される接続部の前記第2方向の幅が、他の領域の幅よりも狭くなっており、前記複数の内部電極パターンのうち隣り合う少なくとも2層において、前記接続部の前記第2方向の端が前記第2方向においてずれていることを特徴とする。
【0015】
上記セラミック電子部品の製造方法において、前記積層単位を前記第1方向に複数積層し、得られる積層構造の前記第2方向の端の2面にサイドマージンシートを貼り付けることによって、前記積層体を得て、その後に前記積層体を焼成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、形状に起因する不具合の発生を抑制することができるセラミック電子部品、包装体、回路基板、およびセラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る積層セラミックコンデンサの外観図である。
図2】実施形態に係る積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図2のB-B線断面図である。
図5】外部電極付近の拡大断面図である。
図6】(a)および(b)は元素拡散を例示する図である。
図7】(a)および(b)は局所的な充填率不足を例示する図である。
図8】(a)および(b)は第1領域および第2領域を例示する図である。
図9】(a)は積層チップの第1端面および第2端面を例示する図であり、(b)はエンドマージンにおける部分断面斜視図である。
図10】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
図11】積層工程を例示する図である。
図12】積層セラミックコンデンサを含む回路基板の側面図である。
図13】包装体の部分平面図である。
図14図13のD-D線に沿った包装体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0019】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の外観図である。図1で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10のいずれかの対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bと、を備える。なお、積層チップ10の当該2端面以外の4面のうち積層方向の両端の2面を、上面および下面と称する。2端面、上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、積層チップ10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20aと外部電極20bとは、互いに離間している。
【0020】
T方向は、積層チップ10内の各層の積層方向であって、積層セラミックコンデンサ100の高さ方向であり、積層チップ10の上面と下面とが対向する方向である。W方向は、積層チップ10の2側面が対向する方向である。L方向は、積層チップ10の2端面が対向する方向であり、外部電極20aと外部電極20bとが対向する方向である。L方向と、W方向と、T方向とは、互いに直交している。図1で例示するように、積層セラミックコンデンサ100のT方向の高さを高さTとし、W方向の幅を幅Wとし、L方向の長さを長さLとする。なお、高さT、幅W、および長さL、それぞれT方向、W方向、およびL方向の最大寸法である。
【0021】
図2は、積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。図3は、図2のA-A線断面図である。図4は、図2のB-B線断面図である。図2図4で例示するように、積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、金属を主成分とする内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。言い換えると、積層チップ10は、互いに対向する複数の内部電極層12と、複数の内部電極層12の間に各々挟まれた誘電体層11と、を備えている。各内部電極層12が延伸される方向の端縁は、積層チップ10の外部電極20aが設けられた第1端面と、外部電極20bが設けられた第2端面とに対して、交互に露出している。外部電極20aに接続される内部電極層12は、外部電極20bには接続されていない。外部電極20bに接続される内部電極層12は、外部電極20aには接続されていない。したがって、各内部電極層12が、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通する。また、誘電体層11と内部電極層12との積層体において、積層方向の最上層には内部電極層12が配置され、積層方向の最下層にも内部電極層12が配置され、当該積層体の2側面のそれぞれは、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13の主成分は、誘電体層11の主成分と同じである。
【0022】
誘電体層11は、例えば、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主相とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、BaTiO(チタン酸バリウム),CaZrO(ジルコン酸カルシウム),CaTiO(チタン酸カルシウム),SrTiO(チタン酸ストロンチウム),MgTiO(チタン酸マグネシウム),ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaSrTi1-zZr(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等のうち少なくとも1つから選択して用いることができる。Ba1-x-yCaSrTi1-zZrは、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよびチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムなどである。
【0023】
誘電体層11には、添加物が添加されていてもよい。誘電体層11への添加物として、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、希土類元素(イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb))の酸化物、または、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはケイ素(Si)を含む酸化物、または、Co、Ni、Li、B、Na、KもしくはSiを含むガラスが挙げられる。
【0024】
1層あたりの誘電体層11のT方向の厚みは、例えば、0.3μm以上10μm以下であり、または0.4μm以上8μm以下であり、または0.5μm以上5μm以下である。1層あたりの誘電体層11のT方向の厚みは、積層セラミックコンデンサ100の例えば図3の断面を機械研磨で露出した後、走査透過電子顕微鏡等の顕微鏡で撮影した画像から10か所の厚さの平均値を求めるようにして測定することができる。
【0025】
内部電極層12は、Ni,銅(Cu),スズ(Sn)等の卑金属やこれらを含む合金を主成分とする。内部電極層12の主成分として、白金(Pt),パラジウム(Pd),銀(Ag),金(Au)などの貴金属やこれらを含む合金を主成分として用いてもよい。1層あたりの内部電極層12のT方向の厚みは、例えば、0.1μm以上2μm以下であり、または0.2μm以上1μm以下であり、または0.3μm以上0.8μm以下である。1層あたりの内部電極層12のT方向の厚みは、積層セラミックコンデンサ100の例えば図3の断面を機械研磨で露出した後、走査透過電子顕微鏡等の顕微鏡で撮影した画像から10か所の厚さの平均値を求めるようにして測定することができる。
【0026】
図3で例示するように、外部電極20aに接続された内部電極層12と外部電極20bに接続された内部電極層12とが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において静電容量を生じる領域である。そこで、当該静電容量を生じる領域を、容量部14と称する。すなわち、容量部14は、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層同士が対向する領域である。
【0027】
外部電極20aに接続された内部電極層12同士が、外部電極20bに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域を、エンドマージン15と称する。また、外部電極20bに接続された内部電極層12同士が、外部電極20aに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域も、エンドマージン15である。すなわち、エンドマージンは、同じ外部電極に接続された内部電極層が異なる外部電極に接続された内部電極層を介さずに対向する領域である。エンドマージン15は、静電容量を生じない領域である。エンドマージン15は、容量部14の誘電体層11と同じ組成であってもよく、異なる組成であってもよい。
【0028】
図4で例示するように、積層チップ10において、W方向に側面から内部電極層12に至るまでの領域をサイドマージン16と称する。すなわち、サイドマージン16は、上記積層構造において積層された複数の内部電極層12が2側面に延びた端部を覆うように設けられた領域である。サイドマージン16も、静電容量を生じない領域である。サイドマージン16は、容量部14の誘電体層11と同じ組成であってもよく、異なる組成であってもよい。
【0029】
図5は、外部電極20a付近の拡大断面図である。図5では、ハッチを省略している。図5で例示するように、外部電極20aは、下地層21上に、めっき層22が設けられた構造を有している。下地層21は、Cuを主成分とする。下地層21は、ガラス成分を含んでいてもよい。めっき層22は、Ni、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、Snなどの金属またはこれらの2以上の合金を主成分とする。めっき層22は、単一金属成分のめっき層でもよく、互いに異なる金属成分の複数のめっき層でもよい。例えば、めっき層22は、下地層21側から順に、第1めっき層23、第2めっき層24および第3めっき層25が形成された構造を有する。第1めっき層23は、例えば、Snめっき層である。第2めっき層24は、例えば、Niめっき層である。第3めっき層25は、例えば、Snめっき層である。なお、図5では、外部電極20aについて例示しているが、外部電極20bも同様の積層構造を有する。
【0030】
大容量の積層セラミックコンデンサを実現しようとすると、内部電極層の総対向面積の増加が重要である。実装面積を拡大せずに大容量化を実現するために、内部電極層の積層数を多くすることが考えられる。そこで、本実施形態においては、高さT≧幅W×1.3とすることで、積層数を多くする。この構成により、内部電極層12の総対向面積が増加するため、大容量を実現することができる。なお、積層セラミックコンデンサ100において、内部電極層12の積層数は、例えば、50以上1000以下程度である。また、積層セラミックコンデンサ100において、内部電極層12の積層密度は、130層/mm以上、2500層/mm以下程度である。
【0031】
しかしながら、図6(a)で例示するように、外部電極20a,20bと内部電極層12との間の元素拡散に起因して、クラック40が発生するおそれがある。そこで、図6(b)で例示するように、内部電極層12の形状を、内部電極層12と外部電極20a,20bとの接触面積が小さくなるような形状にすることが考えられる。この形状により、外部電極20a,20bと内部電極層12との間の元素拡散を抑制することができるようになる。しかしながら、内部電極層12と外部電極20a,20bとの接触面積を小さくしようとすると、T方向から見た場合の平面視で内部電極層12が存在しない領域が増え、局所的な充填率不足が生じる。
【0032】
以下、局所的な充填率不足について説明する。図7(a)の左図は、内部電極層12と外部電極20a,20bとの接触面積を小さくしない場合における、積層チップ10の第1端面を例示する図である。この場合において、外部電極20bに接続される内部電極層12は第1端面まで延在していないことから、図7(a)の右図のように、第1端面側のエンドマージン15付近における充填率が低下する。それにより、積層チップ10において、第1端面における高さと、L方向の中央における高さとの間に、高低差が生じる。しかしながら、図7(a)の左図で例示するように、各内部電極層12はW方向においてサイドマージン16まで延在している。したがって、充填率の低下が抑えられ、当該高低差を比較的小さくすることができる。なお、図7(a)は、充填率について説明するための図であって、概略的に記載したものであるため、内部電極層12の層数が図2などと異なっている。図7(b)についても同様である。
【0033】
これに対して、図7(b)の左図で例示するように、内部電極層12と外部電極20a,20bとの接触面積を小さくしようとすると、積層チップ10の第1端面において内部電極層12の割合が低下する。この場合において、外部電極20bに接続される内部電極層12も第1端面まで延在しないことから、図7(b)の右図のように、第1端面側のエンドマージン15付近における充填率がさらに低下してしまう。それにより、第1端面における高さと、L方向の中央における高さとの間の高低差が大きくなってしまう。この場合、内部電極の無い部分が凹んでしまうので、矩形性を保ちにくくなるおそれがある。さらに、上記のようないびつな構造になってしまうことで外部電極を塗布する際、稜部等で切れてしまい不良品となってしまうおそれがある。この局所的な充填率の低下の影響は、高さT≧幅W×1.3の高背の構造で特に顕著となる。
【0034】
そこで、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、形状に起因する不具合の発生を抑制することができる構成を有している。
【0035】
まず、内部電極層12の幅に変化を持たせる。図8(a)で例示するように、外部電極20aに接続される内部電極層12は、エンドマージン15に相当する領域において外部電極20aに接続され幅W1を有する第1領域121(接続部)と、容量部14に相当する領域において幅W2を有する第2領域122とを有する。幅W1は、幅W2よりも小さくなっている。幅W1および幅W2は、W方向の幅のことである。幅W1は、内部電極層12におけるW方向の最大幅に対応する。この構成によれば、コーナー部において外部電極20a,20bから内部電極層12への移動距離が長くなるため、外部電極20a,20bと内部電極層12との間の元素拡散が抑制される。それにより、クラック40の発生が抑制される。外部電極20bに接続される内部電極層12においても、幅W1を有する第1領域121と、幅W2を有する第2領域122とが設けられていることが好ましい。
【0036】
図8(b)で例示するように、第1領域121は、第2領域122側から、接続される外部電極に向かって徐々にまたは段階的に幅が小さくなっていてもよい。この場合においても、コーナー部において外部電極20a,20bから内部電極層12への移動距離が長くなるため、外部電極20a,20bから内部電極層12への拡散が抑制される。それにより、クラック40の発生が抑制される。外部電極20bに接続される内部電極層12も、同様の形状を有していることが好ましい。
【0037】
また、少なくともいずれかの隣り合う2層の内部電極層12において、第1端面における各内部電極層12のW方向の端が互いにずれている。図9(a)は、積層チップ10の第1端面および第2端面を例示する図である。図9(b)は、外部電極20a側のエンドマージンにおける部分断面斜視図である。この構成によれば、内部電極層12が存在しない箇所が分散し、充填密度が低くなる箇所が分散するため、局所的なクラックの発生を抑制することができる。また、充填密度が低くなる箇所が分散することで、積層チップ10の矩形性が良好となる。それにより、サイドマージン16の剥がれを抑制することができ、外部電極20a,20bの形状が良好となり、実装時の不具合を抑制することができる。以上のように、形状に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0038】
充填密度が低くなる箇所を分散させる観点から、内部電極層12のW方向におけるずらし量に下限を設けることが好ましい。例えば、積層チップ10のW方向における中心と、各内部電極層12のW方向における中心とのずれ量を10点測定し、測定された各ずれ量の平均値をDとする。また、積層チップ10の第1端面における各内部電極層12の幅の平均値をHとする。この場合において、D/Hは、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。
【0039】
一方、D/Hが大きすぎると、積層チップ10の第1端面付近の各内部電極層12間の局所的な歪みが大きくなってしまう。それにより、ショートが発生するおそれがあり、信頼性が悪化するおそれがある。そこで、D/Hに上限を設けることが好ましい。本実施形態においては、D/Hは、75%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。
【0040】
第1領域121における幅W1が十分に小さくないと、内部電極層12と外部電極20a,20bとの間の元素拡散を十分に抑制できないおそれがある。そこで、幅W2に対する幅W1の比率に上限を設けることが好ましい。本実施形態においては、幅W2に対する幅W1の比率(W1/W2)は、80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。
【0041】
一方で、第1領域121における幅W1が小さすぎると、外部電極との接触不良による容量低下のおそれがある。そこで、幅W2に対する幅W1の比率に下限を設けることが好ましい。本実施形態においては、幅W2に対する幅W1の比率(W1/W2)は、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。
【0042】
高容量化を実現するために、高さT≧幅W×1.5であることが好ましく、高さT≧幅W×1.7であることがより好ましい。
【0043】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。図10は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0044】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11を形成するための誘電体材料を用意する。誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABOの粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。例えば、BaTiOは、ペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い誘電率を示す。このBaTiOは、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得ることができる。誘電体層11の主成分セラミックの合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾル-ゲル法、水熱法等が知られている。本実施形態においては、これらのいずれも採用することができる。
【0045】
得られたセラミック粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、Mg、Mn、Mo、V、Cr、希土類元素(Y、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYb)の酸化物、または、Co、Ni、Li、B、Na、KもしくはSiを含む酸化物、または、Co、Ni、Li、B、Na、KもしくはSiを含むガラスが挙げられる。これらのうち、主としてSiOが焼結助剤として機能する。
【0046】
例えば、セラミック原料粉末に添加化合物を含む化合物を湿式混合し、乾燥および粉砕してセラミック材料を調製する。例えば、上記のようにして得られたセラミック材料について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。以上の工程により、誘電体材料が得られる。
【0047】
(積層工程)
次に、得られた原料粉末に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に誘電体グリーンシートを塗工して乾燥させる。基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。
【0048】
次に、誘電体グリーンシート51上に、幅W1および幅W2を有する内部電極パターン52を成膜する。幅W2を、誘電体グリーンシート51のW方向の幅に一致させる。内部電極パターン52が成膜された誘電体グリーンシート51を、積層単位とする。成膜の手法は、印刷、スパッタ、蒸着などであってもよい。
【0049】
次に、誘電体グリーンシート51を基材から剥がしつつ、図11で例示するように、積層単位を積層する。この場合において、少なくともいずれかの隣り合う2層の内部電極パターン52において、積層チップ10の第1端面に対応する端面において各内部電極パターン52のW方向の端が互いにずれるように積層する。また、焼成後の積層セラミックコンデンサ100において、高さT≧幅W×1.3となるように積層数を調整する。次に、積層単位が積層されることで得られた積層体の上下にカバーシート53を所定数(例えば2~10層)だけ積層して熱圧着する。カバーシート53は、誘電体グリーンシート51と同様の手法により形成することができる。
【0050】
次に、積層体の両側面のそれぞれに、複数のサイドマージンシート54を貼り付ける。サイドマージンシート54は、誘電体グリーンシート51と同様の手法により形成することができる。
【0051】
(脱バインダ工程)
このようにして得られた積層体を、N雰囲気で脱バインダ処理する。熱処理温度は、250℃~700℃程度であり、熱処理時間は、5分~1時間程度である。
【0052】
(焼成工程)
その後、酸素分圧10-5~10-8atmの還元雰囲気中で1100℃~1300℃で10分~2時間焼成する。このようにして、積層チップ10が得られる。
【0053】
(再酸化処理工程)
その後、Nガス雰囲気中において600℃~1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
【0054】
(塗布工程)
次に、積層体の第1側面に、下地層21となる金属ペーストをディップ法などで塗布する。この金属ペーストには、ガラスフリットなどのガラス成分を含ませる。
【0055】
(焼付工程)
次に、700℃~900℃程度の温度で金属ペーストを焼き付けることで、下地層21を形成する。
【0056】
(めっき処理工程)
その後、めっき処理により、下地層21上に、銅、ニッケル、スズ等の金属コーティングを行ってもよい。例えば、下地層21上に、第1めっき層23、第2めっき層24および第3めっき層25を順に形成する。それにより、積層セラミックコンデンサ100が完成する。
【0057】
本実施形態に係る製造方法によれば、高さT≧幅W×1.3となることから、積層数が多くなる。この構成により、内部電極層12の総対向面積が増加するため、大容量を実現することができる。また、幅W1が幅W2よりも小さくなっているため、外部電極20a,20bと内部電極層12との間の元素拡散が抑制される。それにより、クラック40の発生が抑制される。また、少なくともいずれかの隣り合う2層の内部電極パターン52において、第1端面における各内部電極パターン52のW方向の端が互いにずれるようになる。それにより、充填密度が低くなる箇所が分散するため、局所的なクラックの発生を抑制することができる。また、充填密度が低くなる箇所が分散することで、積層体の矩形性が良好となる。それにより、サイドマージンシート54の剥がれを抑制することができ、外部電極20a,20bの形状が良好となり、実装時の不具合、例えば、積層セラミックコンデンサが倒れたり、ツームストーン現象が生じることで片側の外部電極が浮いてしまうことなどを抑制することができる。以上のように、形状に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0058】
なお、上記の製造方法では、積層チップ10を焼成した後に下地層21を焼き付けたが、それに限られない。例えば、積層チップ10を焼成する際に、同時に下地層21を焼成してもよい。
【0059】
ここで、積層セラミックコンデンサ100の実装について説明する。図12は、積層セラミックコンデンサ100を含む回路基板200の側面図である。回路基板200は、積層セラミックコンデンサ100が実装される実装基板210を有する。実装基板210は、L方向およびW方向の平面に沿って延び、T方向に垂直な実装面Gを有する基材211と、実装面Gに設けられた一対の接続電極212と、を有する。
【0060】
回路基板200では、積層セラミックコンデンサ100の外部電極20a,20bがそれぞれ実装基板210の一対の接続電極212に半田Hを介して接続されている。これにより、回路基板200では、積層セラミックコンデンサ100が実装基板210に対して固定されるとともに電気的に接続されている。
【0061】
積層セラミックコンデンサ100は、実装基板210に実装する際に包装体300として包装された状態で準備される。図13および図14は、包装体300を例示する図である。図13は、包装体300の部分平面図である。図14は、図13のD-D線に沿った包装体300の断面図である。
【0062】
包装体300は、積層セラミックコンデンサ100と、キャリアテープ310と、トップテープ320と、を備える。キャリアテープ310は、W方向に延びる長尺状のテープとして構成されている。キャリアテープ310には、積層セラミックコンデンサ100を1個ずつ収容する複数の凹部311がW方向に間隔をあけて配列されている。
【0063】
キャリアテープ310は、T方向と直交する上向きの面であるシール面Pを有し、複数の凹部311はシール面PからT方向の下向きに窪んでいる。つまり、キャリアテープ310は、シール面P側から複数の凹部311内の積層セラミックコンデンサ100を取り出すことが可能なように構成されている。
【0064】
キャリアテープ310では、複数の凹部311の列とはL方向にずれた位置に、W方向に間隔をあけて配列されたT方向に貫通する複数の送り孔312が設けられている。送り孔312は、テープ搬送機構がキャリアテープ310をW方向に搬送するために用いられる係合孔として構成される。
【0065】
包装体300では、トップテープ320が複数の凹部311の列に沿ってキャリアテープ310のシール面Pに貼り付けられ、複数の積層セラミックコンデンサ100を収容した複数の凹部311がトップテープ320によって一括して覆われている。これにより、複数の積層セラミックコンデンサ100が複数の凹部311内に保持される。
【0066】
図14に示すように、キャリアテープ310の凹部311内の積層セラミックコンデンサ100では、積層チップ10におけるT方向上方を向いた第1主面M1がトップテープ320と対向している。また、積層チップ10のT方向下方を向いた第2主面M2は、凹部311の底面と対向している。
【0067】
包装体300として包装された積層セラミックコンデンサ100の実装の際には、キャリアテープ310のシール面Pからトップテープ320をW方向に沿って剥離させる。これにより、包装体300では、複数の積層セラミックコンデンサ100が収容された複数の凹部311をT方向上方に順次開放させることができる。
【0068】
開放された凹部311に収容された積層セラミックコンデンサ100は、T方向上方を向いた積層チップ10の第1主面M1が実装装置の吸着ノズルの先端に吸着された状態で取り出される。実装装置は、吸着ノズルを移動させることで、実装基板210の実装面G上に積層セラミックコンデンサ100を移動させる。
【0069】
続いて、実装装置は、積層チップ10の第2主面M2を実装面Gに対向させ、外部電極20a,20bを半田ペーストが塗布された一対の接続電極212上に位置合わせした状態で、積層チップ10の第1主面M1に対する吸着ノズルによる吸着を解除する。これにより、積層セラミックコンデンサ100が実装面G上に載置される。
【0070】
そして、積層セラミックコンデンサ100が実装面G上に載置された実装基板210に対してリフロー炉などを用いて半田ペーストを溶融させた後に硬化させる。これにより、外部電極20a,20bが実装基板210の一対の接続電極212に半田Hを介して接続されることで、図12に示す回路基板200が得られる。
【0071】
なお、上記各実施形態は、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、上記各実施形態の構成は、バリスタやサーミスタなどの、他の積層セラミック電子部品に適用することもできる。
【実施例0072】
以下、各実施形態に係る積層セラミックコンデンサを作製し、特性について調べた。
【0073】
(実施例1)
BaTiOを主成分とするスラリを配合、塗工し、誘電体グリーンシートを得た。各誘電体グリーンシートに内部電極パターンを印刷した。内部電極パターンには、ニッケル粉末を用いた。各内部電極パターンにおいて、容量部ではW方向の幅W2を大きくし、エンドマージンではW方向の幅W1をW2よりも小さくした。容量部における内部電極層の幅W2は240μmであり、エンドマージンにおける内部電極層の寸法W2は150μmであった。得られた積層単位の400層を積層し、積層体を得た。
【0074】
BaTiOを主成分とするスラリを配合、塗工し、カバーシートおよびサイドマージンシートを得た。上記の積層体の積層方向の上下のそれぞれに、複数のカバーシートを積層して圧着し、積層体の両側面のそれぞれに、複数のサイドマージンシートを貼り付けた。その後、バレル研磨を行ない、脱バインダ工程を行なった。その後、焼成し、再酸化処理を行なった。得られた積層チップの2端面にCuを主成分とする金属ペーストを塗布し、800℃前後で焼き付けた。これらの工程を経て、長さL:0.6mm、幅W:0.3mm、高さT:0.45mmの積層セラミックコンデンサを作製した。
【0075】
焼成された積層セラミックコンデンサにおいて、各内部電極層のT方向の厚みは0.5μmであり、各誘電体層のT方向の厚みは0.5μmであった。各カバー層のT方向における厚みは、25μmであった。各サイドマージンのW方向における厚みは、15μmであった。D/Hは、5.3%であった。
【0076】
(実施例2)
実施例2では、D/Hが12.5%であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0077】
(実施例3)
実施例3では、D/Hが29.5%であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0078】
(実施例4)
実施例4では、D/Hが41.1%であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0079】
(実施例5)
実施例5では、D/Hが59.8%であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0080】
(実施例6)
実施例6では、D/Hが69.9%であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0081】
(実施例7)
実施例7では、D/Hが74.8%であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0082】
(実施例8)
実施例8では、D/Hが85.2%であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0083】
(比較例)
比較例では、D/Hが0%であった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0084】
(焼成クラック発生率)
実施例1~8および比較例のそれぞれの100サンプルについて、焼成後にクラックが発生しているか否かを調べた。クラック発生率が1%以下の場合には良好「〇」と判定した。クラック発生率が1%を上回って10%以下の場合にはやや良好「△」と判定した。クラック発生率が10%上回った場合には不良「×」と判定した。結果を表1に示す。
【0085】
表1に示すように、実施例1~8のいずれにおいても、やや良好「△」または良好「〇」と判定された。これは、高さT≧幅W×1.3の構成であっても、幅W1を幅W2よりも小さくし、第1領域121のW方向の位置をずらしたからであると考えられる。
【0086】
(SAP不良率)
実施例1~8および比較例のそれぞれの100サンプルについて、サイドマージンの剥がれが発生しているか否かを調べた。サイドマージンに剥がれが生じている率(SAP不良率)が1%以下の場合には良好「〇」と判定した。SAP不良率が1%を上回って10%以下の場合にはやや良好「△」と判定した。SAP不良率が10%上回った場合には不良「×」と判定した。結果を表1に示す。
【0087】
表1に示すように、実施例1~8のいずれにおいても、やや良好「△」または良好「〇」と判定された。これは、高さT≧幅W×1.3の構成であっても、幅W1を幅W2よりも小さくし、第1領域121のW方向の位置をずらしたからであると考えられる。
【0088】
(外電形状不良率)
実施例1~8および比較例のそれぞれの100サンプルについて、外部電極の形状に不良が発生しているか否かを調べた。外電形状不良率が1%以下の場合には良好「〇」と判定した。外電形状不良率が1%を上回って10%以下の場合にはやや良好「△」と判定した。外電形状不良率が10%上回った場合には不良「×」と判定した。結果を表1に示す。
【0089】
表1に示すように、実施例1~8のいずれにおいても、やや良好「△」または良好「〇」と判定された。これは、高さT≧幅W×1.3の構成であっても、幅W1を幅W2よりも小さくし、第1領域121のW方向の位置をずらしたからであると考えられる。
【0090】
(ショート不良率)
実施例1~8および比較例のそれぞれの100サンプルについて、ショート不良が発生しているか否かを調べた。ショート不良率が5%以下の場合には良好「〇」と判定した。ショート不良率が5%を上回って10%以下の場合にはやや良好「△」と判定した。ショート不良率が10%上回った場合には不良「×」と判定した。結果を表1に示す。
【0091】
表1に示すように、実施例1~8のいずれにおいても、やや良好「△」または良好「〇」と判定された。これは、高さT≧幅W×1.3の構成であっても、幅W1を幅W2よりも小さくし、第1領域121のW方向の位置をずらしたからであると考えられる。
【0092】
(高温負荷試験)
実施例1~8および比較例のそれぞれの1000サンプルについて、高温負荷試験で故障が発生しているか否かを調べた。高温負荷試験は、温度85℃で、1000時間後に故障が発生したか否かを調べた。故障率が0.5%未満の場合には良好「〇」と判定した。故障率が0.5%を上回って1%以下の場合にはやや良好「△」と判定した。故障率が1%上回った場合には不良「×」と判定した。結果を表1に示す。
【0093】
表1に示すように、実施例1~8のいずれにおいても、やや良好「△」または良好「〇」と判定された。これは、高さT≧幅W×1.3の構成であっても、幅W1を幅W2よりも小さくし、第1領域121のW方向の位置をずらしたからであると考えられる。
【0094】
(耐湿試験)
実施例1~8および比較例のそれぞれの1000サンプルについて、耐湿試験で故障が発生しているか否かを調べた。耐湿試験では、温度85℃、湿度85%で、1000時間後に故障が発生したか否かを調べた。故障率が0.5%未満の場合には良好「〇」と判定した。故障率が0.5%を上回って12%以下の場合にはやや良好「△」と判定した。故障率が12%を上回った場合には不良「×」と判定した。結果を表1に示す。
【0095】
表1に示すように、実施例1~8のいずれにおいても、やや良好「△」または良好「〇」と判定された。これは、幅W1を幅W2よりも小さくし、第1領域121のW方向の位置をずらし、D/Hを75%以下にしたからであると考えられる。
【表1】
【0096】
なお、上記実施例では外部電極は6面塗布での構造を実施したが、コの字(4面)やL字(2面)塗布でも同様の効果が得られる。
【0097】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0098】
10 積層チップ
11 誘電体層
12 内部電極層
13 カバー層
14 容量部
15 エンドマージン
16 サイドマージン
20a,20b 外部電極
21 下地層
22 めっき層
23 第1めっき層
24 第2めっき層
25 第3めっき層
40 クラック
51 誘電体グリーンシート
52 内部電極パターン
53 カバーシート
100 積層セラミックコンデンサ
121 第1領域
122 第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14