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特開2024-84034タイヤ外傷モニタリング装置、タイヤ外傷モニタリング方法、及びプログラム
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  • 特開-タイヤ外傷モニタリング装置、タイヤ外傷モニタリング方法、及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084034
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】タイヤ外傷モニタリング装置、タイヤ外傷モニタリング方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198198
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】近藤 周
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB02
2G051CA04
2G051ED09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タイヤの外傷をモニタリングする技術の有用性を向上させることができる、タイヤ外傷モニタリング装置、タイヤ外傷モニタリング方法、及びプログラムを提供することにある。
【解決手段】本開示に係るタイヤ外傷モニタリング装置は、タイヤを撮像した画像を取得し、前記画像内に写された前記タイヤの外表面上の1つ以上の基準位置を特定し、前記画像内に写された前記タイヤの前記外表面上の外傷を検出し、前記検出された前記外傷の、前記タイヤの前記外表面上における、前記1つ以上の基準位置に対する位置情報を含む、外傷情報を出力するように構成された制御部を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ外傷モニタリング装置であって、
タイヤを撮像した画像を取得し、
前記画像内に写された前記タイヤの外表面上の1つ以上の基準位置を特定し、
前記画像内に写された前記タイヤの前記外表面上の外傷を検出し、
前記検出された前記外傷の、前記タイヤの前記外表面上における、前記1つ以上の基準位置に対する位置情報を含む、外傷情報を出力するように構成された制御部を備える、タイヤ外傷モニタリング装置。
【請求項2】
前記外表面は、前記タイヤのサイド部の外表面又はトレッド部の外表面の少なくとも一方を含む、請求項1に記載のタイヤ外傷モニタリング装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記画像内に写された前記タイヤの前記外表面上の前記外傷の長さ又は幅の少なくとも一方から、前記外傷の深さを推定するように更に構成されており、
前記外傷情報は、前記外傷の前記深さを含む、請求項1に記載のタイヤ外傷モニタリング装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記タイヤに関連付けられた基準部材の実際の長さと、前記画像内に写された前記基準部材の長さとに基づいて、前記画像における単位ピクセルあたりの実際の長さを判定するように構成されている、請求項3に記載のタイヤ外傷モニタリング装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記画像内で、前記外傷が前記タイヤの接地位置から所定の範囲内に位置しているか否かを判定し、
前記外傷が前記所定の範囲内に位置している場合に、前記画像に基づいて、前記1つ以上の基準位置に対する位置情報を含む外傷情報を出力するように更に構成されている、請求項3に記載のタイヤ外傷モニタリング装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記画像内で、前記外傷が前記タイヤの接地位置から所定の範囲内に位置しているか否かを判定し、
前記外傷が前記所定の範囲内に位置している場合に、前記画像に基づいて、前記外傷の前記深さを推定するように更に構成されている、請求項3に記載のタイヤ外傷モニタリング装置。
【請求項7】
前記タイヤの前記接地位置から前記所定の範囲は、前記画像内の高さ方向において、前記タイヤの前記接地位置からリムの下端までの範囲である、請求項5または請求項6に記載のタイヤ外傷モニタリング装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記外傷の前記深さが所定の閾値範囲から外れた場合に、アラートを出力する、請求項3に記載のタイヤ外傷モニタリング装置。
【請求項9】
前記所定の閾値範囲は、前記外傷の前記1つ以上の基準位置に対する位置情報に応じて異なる、請求項8に記載のタイヤ外傷モニタリング装置。
【請求項10】
前記タイヤを撮像した前記画像は、サーモグラフィカメラにより撮像されたサーモグラフィ画像である、請求項1に記載のタイヤ外傷モニタリング装置。
【請求項11】
前記1つ以上の基準位置を特定することは、前記タイヤの前記外表面上の複数の基準位置のうちの少なくとも1つの基準位置を特定することを含む、請求項1に記載のタイヤ外傷モニタリング装置。
【請求項12】
前記外傷情報を出力することは、前記タイヤの前記外傷情報を前記1つ以上の基準位置を基準として視覚化して表示させる要求を出力することを含む、請求項1に記載のタイヤ外傷モニタリング装置。
【請求項13】
1つ以上のコンピュータが実行するタイヤ外傷モニタリング方法であって、
タイヤを撮像した画像を取得することと、
前記画像内に写された前記タイヤの外表面上の1つ以上の基準位置を特定することと、
前記画像内に写された前記タイヤの前記外表面上の外傷を検出することと、
前記検出された前記外傷の、前記タイヤの前記外表面上における、前記1つ以上の基準位置に対する位置情報を含む、外傷情報を出力することと、
を含む、タイヤ外傷モニタリング方法。
【請求項14】
1つ以上のコンピュータに、
タイヤを撮像した画像を取得することと、
前記画像内に写された前記タイヤの外表面上の1つ以上の基準位置を特定することと、
前記画像内に写された前記タイヤの前記外表面上の外傷を検出することと、
前記検出された前記外傷の、前記タイヤの前記外表面上における、前記1つ以上の基準位置に対する位置情報を含む、外傷情報を出力することと、
を含む動作を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ外傷モニタリング装置、タイヤ外傷モニタリング方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの外傷をモニタリングする技術が知られている。例えば、特許文献1には、リムホイールに組み付けられたタイヤの画像データに基づいて、リムホイールの径を基準としたタイヤの外傷部分のサイズを検出するタイヤ外傷検出システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-202729
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、タイヤの外傷をモニタリングする技術の有用性の更なる向上が求められている。例えば、タイヤの外傷の状態を経時的にモニタリングできるように、タイヤにおける外傷の位置情報を特定することが求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、タイヤの外傷をモニタリングする技術の有用性を向上させる、タイヤ外傷モニタリング装置、タイヤ外傷モニタリング方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリング装置は、タイヤを撮像した画像を取得し、前記画像内に写された前記タイヤの外表面上の1つ以上の基準位置を特定し、前記画像内に写された前記タイヤの前記外表面上の外傷を検出し、前記検出された前記外傷の、前記タイヤの前記外表面上における、前記1つ以上の基準位置に対する位置情報を含む、外傷情報を出力するように構成された制御部を備える。
本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリング装置によれば、タイヤの外表面上における外傷の位置を把握することができる。このため、当該タイヤ外傷モニタリング装置によれば、タイヤの外傷をモニタリングする技術の有用性を向上させることができる。
【0007】
〔2〕本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリング装置は、上記〔1〕に記載のタイヤ外傷モニタリング装置であって、前記外表面は、前記タイヤのサイド部の外表面又はトレッド部の外表面の少なくとも一方を含むことが好ましい。かかる構成を有するタイヤ外傷モニタリング装置によれば、タイヤの外傷をモニタリングする技術の有用性を更に向上させることができる。
【0008】
〔3〕本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリング装置は、上記〔1〕又は〔2〕に記載のタイヤ外傷モニタリング装置であって、前記制御部は、前記画像内に写された前記タイヤの前記外表面上の前記外傷の長さ又は幅の少なくとも一方から、前記外傷の深さを推定するように更に構成されており、前記外傷情報は、前記外傷の前記深さを含むことが好ましい。かかる構成を有するタイヤ外傷モニタリング装置によれば、タイヤの外傷の位置と共に、外傷の深さを把握することができる。
【0009】
〔4〕本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリング装置は、上記〔3〕に記載のタイヤ外傷モニタリング装置であって、前記制御部は、前記タイヤに関連付けられた基準部材の実際の長さと、前記画像内に写された前記基準部材の長さとに基づいて、前記画像における単位ピクセルあたりの実際の長さを判定するように構成されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ外傷モニタリング装置によれば、タイヤの外傷の深さを推定する精度を向上させることができる。
【0010】
〔5〕本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリング装置は、上記〔3〕又は〔4〕に記載のタイヤ外傷モニタリング装置であって、前記制御部は、前記画像内で、前記外傷が前記タイヤの接地位置から所定の範囲内に位置しているか否かを判定し、前記外傷が前記所定の範囲内に位置している場合に、前記画像に基づいて、前記1つ以上の基準位置に対する位置情報を含む外傷情報を出力するように更に構成されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ外傷モニタリング装置によれば、タイヤの外傷情報の精度を向上させることができる。
【0011】
〔6〕本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリング装置は、上記〔3〕又は〔4〕に記載のタイヤ外傷モニタリング装置であって、前記制御部は、前記画像内で、前記外傷が前記タイヤの接地位置から所定の範囲内に位置しているか否かを判定し、前記外傷が前記所定の範囲内に位置している場合に、前記画像に基づいて、前記外傷の前記深さを推定するように更に構成されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ外傷モニタリング装置によれば、タイヤの外傷の深さを推定する精度を向上させることができる。
【0012】
〔7〕本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリング装置は、上記〔5〕又は〔6〕に記載のタイヤ外傷モニタリング装置であって、前記タイヤの前記接地位置から前記所定の範囲は、前記画像内の高さ方向において、前記タイヤの前記接地位置からリムの下端までの範囲であることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ外傷モニタリング装置によれば、タイヤの外傷の深さを推定する精度を更に向上させることができる。
【0013】
〔8〕本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリング装置は、上記〔3〕から〔7〕のいずれか一項に記載のタイヤ外傷モニタリング装置であって、前記制御部は、前記外傷の前記深さが所定の閾値範囲から外れた場合に、アラートを出力することが好ましい。かかる構成を有するタイヤ外傷モニタリング装置によれば、タイヤの外傷をモニタリングする技術の有用性を更に向上させることができる。
【0014】
〔9〕本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリング装置は、上記〔8〕に記載のタイヤ外傷モニタリング装置であって、前記所定の閾値範囲は、前記外傷の前記1つ以上の基準位置に対する位置情報に応じて異なることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ外傷モニタリング装置によれば、タイヤにおける外傷の位置に応じて異なる条件でアラートを出力することができ、アラートを出力する精度を向上させることができる。
【0015】
〔10〕本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリング装置は、上記〔1〕から〔9〕のいずれか一項に記載のタイヤ外傷モニタリング装置であって、前記タイヤを撮像した前記画像は、サーモグラフィカメラにより撮像されたサーモグラフィ画像であることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ外傷モニタリング装置によれば、撮像されたタイヤの外表面が泥等で汚れている場合、或いは夜間にタイヤ2が撮影される場合でも、タイヤの外傷を検出する精度が低下しにくい。
【0016】
〔11〕本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリング装置は、上記〔1〕から〔10〕のいずれか一項に記載のタイヤ外傷モニタリング装置であって、前記1つ以上の基準位置を特定することは、前記タイヤの前記外表面上の複数の基準位置のうちの少なくとも1つの基準位置を特定することを含むことが好ましい。かかる構成を有するタイヤ外傷モニタリング装置によれば、撮像されたタイヤの外表面が泥等で汚れている場合でも、タイヤの外傷の位置を特定する精度が低下しにくい。
【0017】
〔12〕本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリング装置は、上記〔1〕から〔11〕のいずれか一項に記載のタイヤ外傷モニタリング装置であって、前記外傷情報を出力することは、前記タイヤの前記外傷情報を前記1つ以上の基準位置を基準として視覚化して表示させる要求を出力することを含むことが好ましい。かかる構成を有するタイヤ外傷モニタリング装置によれば、タイヤの外傷をモニタリングする技術の有用性を更に向上させることができる。
【0018】
〔13〕本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリング方法は、1つ以上のコンピュータが実行するタイヤ外傷モニタリング方法であって、タイヤを撮像した画像を取得することと、前記画像内に写された前記タイヤの外表面上の1つ以上の基準位置を特定することと、前記画像内に写された前記タイヤの前記外表面上の外傷を検出することと、前記検出された前記外傷の、前記タイヤの前記外表面上における、前記1つ以上の基準位置に対する位置情報を含む、外傷情報を出力することと、を含む。
本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリング方法によれば、タイヤの外表面上における外傷の位置を把握することができる。このため、当該タイヤ外傷モニタリング方法によれば、タイヤの外傷をモニタリングする技術の有用性を向上させることができる。
【0019】
〔14〕本開示の一実施形態に係るプログラムは、1つ以上のコンピュータに、タイヤを撮像した画像を取得することと、前記画像内に写された前記タイヤの外表面上の1つ以上の基準位置を特定することと、前記画像内に写された前記タイヤの前記外表面上の外傷を検出することと、前記検出された前記外傷の、前記タイヤの前記外表面上における、前記1つ以上の基準位置に対する位置情報を含む、外傷情報を出力することと、を含む動作を実行させる。
本開示の一実施形態に係るプログラムによれば、タイヤの外表面上における外傷の位置を把握することができる。このため、当該プログラムによれば、タイヤの外傷をモニタリングする技術の有用性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、タイヤの外傷をモニタリングする技術の有用性を向上させることができる、タイヤ外傷モニタリング装置、タイヤ外傷モニタリング方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリングシステムの概略構成を示す図である。
図2図1に示されるサーバの構成を示すブロック図である。
図3図1に示されるタイヤ外傷モニタリングシステムの動作を示すフローチャートである。
図4】タイヤを撮像した画像の一例を示す図である。
図5】タイヤの外傷情報を表示した画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の一実施形態に係るタイヤ外傷モニタリングシステムについて、図面を参照して説明する。各図において共通する部材及び部位には同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。
【0023】
(タイヤ外傷モニタリングシステムの構成)
はじめに、図1を参照して、本実施形態に係るタイヤ外傷モニタリングシステム1の概要について説明する。図1は、タイヤ外傷モニタリングシステム1の概略構成を示す図である。図1に示されるように、タイヤ外傷モニタリングシステム1は、サーバ10と、撮像装置20と、端末装置30とを含む。図1では、それぞれ1つのサーバ10、撮像装置20、及び端末装置30が示されている。しかしながら、タイヤ外傷モニタリングシステム1は、任意の数のサーバ10、撮像装置20、及び端末装置30を含んでいてもよい。
【0024】
サーバ10は、1つ以上のコンピュータで構成されている。本実施形態では、サーバ10は、1つのコンピュータで構成されているものとして説明する。しかしながら、サーバ10は、クラウドコンピューティングシステム等、複数のコンピュータによって構成されていてもよい。本開示において、サーバ10は、「タイヤ外傷モニタリング装置」とも称される。
【0025】
撮像装置20は、1つ以上のカメラを含むコンピュータで構成されている。カメラは、例えば、可視光カメラであるが、これに限られず、サーモグラフィカメラ、赤外線カメラ等、画像を撮像可能な任意のカメラであってもよい。撮像装置20が撮像する画像は、写真等の静止画であってもよく、動画であってもよい。撮像装置20は、タイヤ2を撮像した画像を生成し、サーバ10に送信する。タイヤ2を撮像した画像には、タイヤ2の少なくとも一部が写されている。なお、タイヤ2を撮像した画像には、タイヤ2の少なくとも一部に加え、タイヤ2を装着した車両3の少なくとも一部が写されていてもよい。撮像装置20は、車両3の走行経路に設置された固定式の撮像装置であってもよく、或いは、人間により携帯可能なタブレット端末等の、移動可能な撮像装置であってもよい。
【0026】
端末装置30は、例えばスマートフォン、タブレット端末、又はパーソナルコンピュータ等の、コンピュータである。
【0027】
ネットワーク40は、サーバ10、撮像装置20及び端末装置30が相互に通信可能な、任意の通信網である。本実施形態におけるネットワーク40は、例えばインターネット、移動体通信網、LAN(Local Area Network)、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0028】
タイヤ外傷モニタリングシステム1は、1つ以上のタイヤ2の外傷をモニタリングするために用いられる。タイヤ外傷モニタリングシステム1において、サーバ10は、例えば撮像装置20からタイヤ2を撮像した画像を取得する。そして、サーバ10は、画像内に写されたタイヤ2の外表面上の1つ以上の基準位置を特定するとともに、画像内に写されたタイヤ2の外表面上の外傷を検出する。サーバ10は、検出された外傷の、タイヤ2の外表面上における、1つ以上の基準位置に対する位置情報を含む、外傷情報を出力する。例えば、このタイヤ2の外傷情報は、サーバ10から端末装置30に送信され、端末装置30によって視覚化して表示されてもよい。このように、撮像装置20から取得した画像に基づいて、タイヤ2の外表面上における外傷の位置を精度よく特定することができる。その結果、タイヤ2の外傷をモニタリングする技術の有用性を向上させることができる。
【0029】
本開示において、タイヤ2は、特に限定されないが、鉱山サイト等で利用される、建設車両、工事車両又は重機車両等の大型車両に装着されるOR(Off The Road)タイヤであってもよい。ただし、タイヤ2は、ORタイヤ以外のタイヤであってもよい。
【0030】
また、本開示において、車両3は、例えば、鉱山サイト等において利用される、建設車両、工事車両又は重機車両等の大型車両である。ただし、車両3は、上述した大型車両に限られず、例えば、トラック、バス、乗用車、バイク、自転車、又は飛行機等、タイヤ2を装着可能な任意の車両であってもよい。
【0031】
次に、図2を参照して、タイヤ外傷モニタリング装置であるサーバ10の構成について、詳細に説明する。図2は、サーバ10の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、サーバ10は、通信部11と、出力部12と、入力部13と、記憶部14と、制御部15と、を備える。サーバ10において、通信部11、出力部12、入力部13、記憶部14、及び制御部15は、有線又は無線で互いに通信可能に接続されている。
【0032】
通信部11は、ネットワーク40に接続するための通信モジュールを含む。通信モジュールは、例えば4G(4th Generation)又は5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応した通信モジュールである。通信モジュールは、例えば有線LAN又は無線LAN等の規格に対応した通信モジュールであってもよい。通信モジュールは、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又は赤外線通信等の近距離無線通信規格に対応した通信モジュールであってもよい。本実施形態において、サーバ10は、通信部11を介してネットワーク40に接続される。これによって、サーバ10は、撮像装置20、端末装置30、又は他のコンピュータ等と通信することができる。
【0033】
出力部12は、1つ以上の出力装置を含む。出力部12に含まれる出力装置は、例えばディスプレイ、スピーカ又はランプ等である。これにより、出力部12は、画像、音又は光等を出力する。
【0034】
入力部13は、1つ以上の入力装置を含む。入力部13に含まれる入力装置は、例えばタッチパネル、カメラ又はマイク等である。入力部13は、例えば、サーバ10の利用者による入力操作を受け付ける。
【0035】
記憶部14は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等である。記憶部14は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部14は、サーバ10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部14は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、組み込みソフトウェア、又はデータベース等を記憶する。記憶部14に記憶された情報は、例えば通信部11を介してネットワーク40から取得される情報で更新可能であってもよい。
【0036】
例えば、記憶部14は、外傷モニタリングの対象となる1つ以上のタイヤ2のタイヤ識別情報を記憶していてもよい。タイヤ2のタイヤ識別情報は、タイヤ2を一意に識別可能な情報である。タイヤ識別情報は、例えば、サーバ10によって一意に払い出されたタイヤ2のID(Identifier)であるが、これに限られず、タイヤ2の製造番号などであってもよい。さらに、記憶部14は、タイヤ2のタイヤ識別情報と関連付けて、タイヤ2に関する情報を記憶していてもよい。
【0037】
タイヤ2に関する情報は、例えば、タイヤ2の外傷情報、タイヤ2の基準位置の情報、タイヤ2の基準部材の情報、タイヤ2の構成情報、タイヤ2を装着する車両3の情報、又は車両3におけるタイヤ2が装着されている位置情報の少なくとも1つを含む。タイヤ2の外傷情報は、例えば、タイヤ2が過去に負った外傷の位置、形状、深さ、及び登録日時等を含む時系列データであってもよい。タイヤ2の基準位置の情報は、タイヤ2の外表面上の外傷の位置を特定するための基準となる位置の情報である。例えば、タイヤ2の基準位置の情報は、基準位置の形状、色、又は模様等の特徴を含む。そして、タイヤ2の基準位置の情報は、例えば座標等の位置情報により、タイヤ2の外表面上における位置と関連付けられている。タイヤ2の基準部材の情報は、画像50内に写された外傷の長さ等を評価する際の基準となる部材の情報である。タイヤ2の基準部材の情報は、例えば、基準部材の形状、色、又は模様等の特徴と、基準部材の実際の長さとを含む。タイヤ2の構成情報は、例えば、タイヤ2の種類、型番、材料物性、ベルト角度、サイズ、又は重量等を含む。タイヤ2を装着する車両3の情報は、車両3の識別情報、種類、型番、排気量、装着タイヤ数、又はシャフト数等を含む。
【0038】
制御部15は、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサ等であってもよい。制御部15は、プロセッサに限られず、1つ以上の専用回路を含んでもよい。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。制御部15は、上述した、通信部11、出力部12、入力部13、及び記憶部14等の構成要素の機能を含む、サーバ10の機能を実現させるために、それぞれの構成要素を制御する。
【0039】
(タイヤ外傷モニタリングシステムの動作)
図3図4及び図5を参照して、タイヤ外傷モニタリングシステム1の動作を説明する。図3は、タイヤ外傷モニタリングシステム1の動作を示すフローチャートである。図4は、タイヤ2を撮像した画像50の一例を示す図である。図5は、タイヤ2の外傷情報を表示した画面の一例を示す図である。図3に示されるフローチャートには、タイヤ外傷モニタリングシステム1に含まれる、サーバ10、撮像装置20、及び端末装置30の動作が示されている。そのため、本動作の説明は、タイヤ外傷モニタリングシステム1の制御方法に相当するとともに、タイヤ外傷モニタリングシステム1に含まれる、サーバ10、撮像装置20、及び端末装置30のそれぞれの制御方法に相当する。
【0040】
本動作の説明にあたり、サーバ10の制御部15は、記憶部14に、タイヤ2のタイヤ識別情報と、タイヤ2のタイヤ識別情報に関連付けられた、タイヤ2に関する情報と、を記憶しているものとする。上述のとおり、タイヤ2に関する情報は、例えば、タイヤ2の過去の外傷の履歴、タイヤ2の基準位置の情報、タイヤ2の基準部材の情報等を含む。
【0041】
また、サーバ10の制御部15は、記憶部14に、画像50内に写された対象物の実際の長さを算出するために、画像50における単位ピクセルあたりの実際の長さを記憶していてもよい。
【0042】
また、本動作例では、一例として、図4に示されるように、サーバ10が、タイヤ2のサイド部2Aの外表面上の外傷60を検出する動作を説明する。かかる場合、撮像装置20は、車両3の側面を撮像可能な位置に設置されていてもよい。
【0043】
図3を参照すると、ステップS101において、撮像装置20は、カメラにより、タイヤ2を撮像した画像50をサーバ10に送信する。
【0044】
具体的には、ステップS101において、撮像装置20は、カメラを用いて、タイヤ2を撮像し、タイヤ2を撮像した画像50を生成する。画像50は、連続的に撮像された複数の静止画又は動画であることが好ましい。ただし、画像50は、1枚の静止画であってもよい。また、タイヤ2を撮像した画像50には、タイヤ2の少なくとも一部に加え、タイヤ2を装着した車両3の少なくとも一部も写されていてもよい。本動作例では、一例として、図4に示される画像50が撮像装置20からサーバ10に送信されるものとして説明する。画像50には、タイヤ2の全体と、タイヤ2を装着した車両3の一部が写されている。
【0045】
撮像装置20がサーモグラフィカメラを備えている場合、タイヤ2を撮像した画像50は、サーモグラフィカメラにより撮像されたサーモグラフィ画像とされてもよい。一般に、車両3の走行に伴い、タイヤ2の内腔の温度が上昇する。そして、タイヤ2の外表面上の外傷60は、他の部分に比べてタイヤ2の内腔に近いため表面温度が高くなる。このため、後述する処理において、サーモグラフィ画像を、タイヤ2の外表面上の外傷60の位置及び深さ等の検出に使用することができる。サーモグラフィ画像を用いることで、撮像されたタイヤ2の外表面が泥等で汚れている場合、或いは夜間にタイヤ2が撮影される場合でも、タイヤ2の外傷を検出する精度が低下しにくくなる。ただし、画像50は可視光カメラ等の任意のカメラにより撮像された画像であってもよい。
【0046】
再び図3を参照すると、ステップS102において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2を撮像した画像を取得する。
【0047】
具体的には、サーバ10の制御部15は、通信部11を介して、タイヤ2を撮像した画像50を撮像装置20から受信する。ただし、制御部15は、撮像装置20以外のコンピュータを介して、撮像装置20によって撮像された画像50を受信してもよい。制御部15は、受信した画像50を、タイヤ2の識別情報と関連付けて記憶部14に記憶してもよい。
【0048】
ステップS102において、更に、サーバ10の制御部15は、画像50内に写された、タイヤ2又はタイヤ2を装着している車両3に表示されたタイヤ2の識別情報を特定してもよい。これにより、画像50内に写されたタイヤ2が予め特定されていない場合でも、制御部15が画像50からタイヤ2を特定することができる。具体的には、制御部15は、画像処理により、画像50内のタイヤ2の識別情報を示す表示部分51を特定する。図4に示されるように、表示部分51は、例えば、QR(Quick Response)コード(登録商標)またはAR(Augmented Reality)マーカー等の二次元コードであってもよい。かかる場合、制御部15は、二次元コードである表示部分51からタイヤ2の識別情報を読み取ることができる。ただし、表示部分51は、二次元コードに限られず、文字列、記号、図形、模様、又は一次元コード等任意の表示とされてもよい。
【0049】
タイヤ2の識別情報を示す表示部分51は、任意の位置に表示されていてもよい。例えば、図4では、表示部分51A及び51Bが示されている。表示部分51Aは、タイヤ2のサイド部2Aに設けられている。かかる場合、タイヤローテーション等により、タイヤ2が他の車両3に装着された場合でも、同じ表示部分51に基づいてタイヤ2の識別情報を特定することができる。表示部分51Bは、タイヤ2を装着した車両3の車体に設けられている。かかる場合、表示部分51が車両3の車体に設けられていることで、タイヤ2の外表面が泥で汚れた場合、或いは傷付いた場合であっても、表示部分51の視認性が低下しにくい。
【0050】
再び図3を参照すると、ステップS103において、サーバ10の制御部15は、画像50内に写されたタイヤ2の外表面上の1つ以上の基準位置52を特定する。
【0051】
上述の通り、基準位置52は、タイヤ2の外表面上における外傷60の位置を特定するために用いられる。例えば、基準位置52は、タイヤ2の外表面上に設けられた文字、記号、図形、又は模様とされてもよい。そして、基準位置52の情報は、例えば座標等の位置情報により、タイヤ2の外表面上における位置と関連付けられている。基準位置52がタイヤ2の外表面上にあることにより、タイヤローテーション等により、タイヤ2が他の車両3又はホイールに装着された場合でも、同じ基準位置52に基づいて、継続してタイヤ2の外傷60の位置を特定することができる。このため、タイヤ2の外傷60の位置の特定精度が低下しにくい。
【0052】
基準位置52の特定には、任意の手法が採用可能である。例えば、サーバ10の制御部15は、予め記憶部14に記憶しているタイヤ2の基準位置52の情報に基づいて、画像50の画像解析を行う。例えば、基準位置52の情報は、基準位置52の形状、色、又は模様等の特徴を含む。これにより、制御部15は、画像50内に写されたタイヤ2の外表面上の1つ以上の基準位置52を特定することができる。図4では、タイヤ2のサイド部2Aの外表面上に、3つの基準位置52A、52B、及び52Cが設けられている。3つの基準位置52A、52B、及び52Cは、それぞれ異なる特徴を有し、区別可能とされている。制御部15は、タイヤ2の外表面上の複数の基準位置52A、52B、又は52Cのうちの少なくとも1つを特定し、それ(又はそれら)をタイヤ2の基準位置52としてもよい。このように、タイヤ2の外表面上に複数の基準位置52が設けられていることで、タイヤ2の一部が泥で汚れたり、傷付いたりした場合であっても、基準位置52を特定しやすくなる。例えば図4の例では、制御部15は、基準位置52Aが泥で汚れており画像解析により抽出できない場合には、基準位置52B又は52Cを基準として、後続の処理により外傷60の位置を特定することができる。ただし、タイヤ2の外表面上に設けられる基準152の数は、1つであってもよい。
【0053】
再び図3を参照すると、ステップS104において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2に関連付けられた基準部材の実際の長さと、画像50内に写された基準部材の長さとに基づいて、画像50における単位ピクセルあたりの実際の長さを判定する。
【0054】
タイヤ2に関連付けられた基準部材は、例えば、タイヤ2のリム径であってもよい。或いは、基準部材は、タイヤ2の外表面上に設けられた文字、記号、図形、又は模様とされてもよい。例えば、上述した基準位置52が、基準部材として使われてもよい。
【0055】
単位ピクセルあたりの実際の長さの判定には、任意の手法が採用可能である。例えば、サーバ10の制御部15は、画像50内に写された基準部材の輪郭を特定する。制御部15は、特定した基準部材の輪郭のうち、最も距離が離れている2点間の距離を画像50内に写された基準部材の長さとして特定する。画像50内に写された基準部材の長さは、ピクセル数で表わされてもよい。制御部15は、画像50内に写された基準部材の長さに相当するピクセル数と、タイヤ2に関連付けられた基準部材の実際の長さとから、画像50における単位ピクセルあたりの実際の長さを判定することができる。これにより、後続処理におけるタイヤ2の外傷60の深さを推定する精度を向上させることができる。ただし、画像50における単位ピクセルあたりの実際の長さは、予め定められていてもよい。
【0056】
ステップS105において、サーバ10の制御部15は、画像50内に写されたタイヤ2の外表面上の外傷60を検出する。
【0057】
外傷60の検出には、任意の手法が採用可能である。例えば、サーバ10の制御部15は、画像50内に写されたタイヤ2の外傷60を特定するための画像解析アルゴリズムを記憶部14に予め記憶していてもよい。制御部15は、画像解析アルゴリズムを用いて、画像50内に写されたタイヤ2の外表面上に存在するカット又は亀裂等の外傷60の輪郭を外傷60として検出する。
【0058】
本実施形態では、画像解析アルゴリズムは、機械学習又はディープラーニング等の統計的手法により構築されていてもよい。例えば、画像解析アルゴリズムは、タイヤ2を撮像した画像50と、人間等により特定されたタイヤ2における外傷60の輪郭と、を教師データとして、統計的手法により構築されてもよい。これにより、教師データの蓄積により、タイヤ2の外表面上の外傷60の検出精度を向上させることができる。ただし、画像解析アルゴリズムは、統計的手法によらない、所定の演算処理を含んでいてもよい。
【0059】
そして、ステップS105において、制御部15は、検出された外傷60の、タイヤ2の外表面上における、1つ以上の基準位置52に対する位置情報を生成する。外傷60の位置情報は、例えば、タイヤ2の外表面上における、基準位置52を基準とした座標情報である。図4では、3つの基準位置52A、52B、及び52Cのそれぞれに異なる座標が設定されている。制御部15は、外傷60と、3つの基準位置52A、52B、又は52Cのいずれかとの位置関係から、外傷60の座標を特定することができる。
【0060】
再び図3を参照すると、ステップS106において、サーバ10の制御部15は、画像50内に写されたタイヤ2の外表面上の外傷60の長さ又は幅の少なくとも一方から、外傷60の深さを推定する。
【0061】
外傷60の深さの推定には、任意の手法が採用可能である。例えば、サーバ10の制御部15は、画像50内に写されたタイヤ2の外傷60の長さ又は幅の少なくとも一方から外傷60の深さを推定するための対応付けアルゴリズムを記憶部14に予め記憶していてもよい。制御部15は、ステップS105において特定された外傷60の輪郭のうち、最も距離が離れている2点間の距離を長さとし、長さの方向に直交する方向において最も距離が離れている2点間の距離を幅としてもよい。制御部15は、外傷60の長さ及び幅を算出する際に、ステップS104で算出した画像50における単位ピクセルあたりの実際の長さを用いてもよい。そして、制御部15は、対応付けアルゴリズムを用いて、外傷60の長さ又は幅の少なくとも一方から外傷60の深さを推定する。外傷60の深さは、例えば、タイヤ2の外表面から外傷60の最も深い部分までの距離であるが、これに限られない。
【0062】
本実施形態では、対応付けアルゴリズムは、機械学習又はディープラーニング等の統計的手法により構築されていてもよい。例えば、対応付けアルゴリズムは、タイヤ2の外傷60の長さ又は幅の少なくとも一方と、人間等により計測された外傷60の深さと、を教師データとして、統計的手法により構築されてもよい。これにより、教師データの蓄積により、タイヤ2の外傷60の深さを推定する精度を向上させることができる。ただし、対応付けアルゴリズムは、統計的手法によらない、所定の演算処理を含んでいてもよい。
【0063】
ステップS106において外傷60の深さを推定する際に、画像50内で、外傷60がタイヤ2の接地位置から所定の範囲内に位置していることが好ましい。好ましくは、タイヤ2の接地位置から所定の範囲は、図4に示されるように、画像50内の高さ方向において、タイヤ2の接地位置からリムの下端までの範囲Hである。より好ましくは、タイヤ2の接地位置から所定の範囲は、画像50内の高さ方向において、タイヤ2の接地位置からリムの下端までの範囲Hであり、且つ、画像50内の幅方向において、リムの両端間の範囲Wである。さらに好ましくは、タイヤ2の接地位置から所定の範囲は、画像50内で、タイヤ2の中心Cと、画像50内の幅方向におけるタイヤ2の接地位置の両端E1、E2のそれぞれとを結んだ直線に挟まれた範囲である。制御部15は、外傷60が所定の範囲内に位置している場合に、画像50に基づいて、外傷60の深さを推定してもよい。このように、外傷60が接地位置の近傍に位置している場合には、タイヤ2に掛かる荷重によって外傷60が開くため、外傷60の長さ又は幅が計測しやすくなり、ひいては、外傷60の深さの推定精度を向上させることができる。このため、画像50が連続的に撮像された複数の静止画又は動画である場合、サーバ10の制御部15は、ステップS106において、画像50内で、外傷60がタイヤ2の接地位置から所定の範囲内に位置しているか否かを判定してもよい。制御部15は、外傷60が所定の範囲内に位置している画像(フレーム)を選択して、ステップS106における外傷60の深さの推定に使用してもよい。
【0064】
再び図3を参照すると、ステップS107において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の外傷情報を出力する。
【0065】
ステップS107において、タイヤ2の外傷情報を出力するにあたり、サーバ10の制御部15は、ステップS105で特定した外傷60の位置情報及び輪郭と、S106で特定された外傷60の長さ、幅、及び深さ等の情報とを、タイヤ2のタイヤ識別情報と関連付けて、タイヤ2の外傷情報として、記憶部14に記憶してもよい。タイヤ2の外傷情報には、複数の外傷60の情報が含まれていてもよい。制御部15は、タイヤ2の外傷情報に、過去に検出された同じ位置情報を持つ外傷60の情報が既に記憶されている場合には、当該情報を新たな輪郭及び深さ等の情報で更新してもよく、或いは、時系列データとして新たな情報を当該情報に追加してもよい。
【0066】
タイヤ2の外傷情報の出力には、任意の手法が採用可能である。例えば、サーバ10の制御部15は、ディスプレイ等の出力部12を介して、タイヤ2の外傷情報を1つ以上の基準位置52を基準として視覚化して表示させてもよい。或いは、制御部15は、通信部11を介して、タイヤ2の外傷情報を1つ以上の基準位置52を基準として視覚化して表示させる要求を、端末装置30に送信してもよい。かかる場合、端末装置30は、サーバ10から受信した要求に基づいて、ディスプレイ等を介して、タイヤ2の外傷情報を視覚化して表示することができる。例えば、図5に示されるように、タイヤ2の写真又はイラスト上に、基準位置52を基準とした外傷60の位置をマッピングして、ハイライト表示させた画面が表示されてもよい(図示例では斜線により表示)。
【0067】
その結果、タイヤ外傷モニタリングシステム1の利用者は、タイヤ2の外表面上における外傷60の位置を容易に把握することができる。また、基準位置52をタイヤ2の外表面上において特定することで、タイヤ2が他の車両3又はホイールに装着された場合でも、継続してタイヤ2の外傷60の位置を特定することができる。このため、タイヤ2の過去の外傷情報と比較して、新たな外傷60の発生、或いは、外傷60の深さの変化等、経時的な外傷60のモニタリングが可能になる。このように、タイヤ外傷モニタリングシステム1によれば、タイヤ2の外傷をモニタリングする技術の有用性を向上させることができる。さらに、タイヤ2の外傷情報に外傷60の長さ、幅、又は深さ等の情報が含まれている場合には、図5に示されるように、タイヤ2における外傷60の位置に加えて、外傷60の長さ、幅、又は深さ等の情報を表示させることができる。これにより、タイヤ2の外傷をモニタリングする技術の有用性を更に向上させることができる。
【0068】
再び図3を参照すると、ステップS108において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の外傷60の深さが所定の閾値範囲から外れた場合に、アラートを出力させてもよい。所定の閾値範囲は、例えば、タイヤ2の耐久性の許容範囲を示す閾値であってもよい。或いは、所定の閾値範囲は、タイヤ2の交換、リトレッド、又はローテーションの少なくとも1つと対応付けられていてもよい。例えば、所定の閾値範囲が、タイヤ2の交換と対応付けられている場合、制御部15は、タイヤ2の外傷情報が所定の閾値範囲から外れた場合に、タイヤ2の交換を促すアラートを出力させることができる。
【0069】
アラートの出力には、任意の手法が採用可能である。サーバ10の制御部15は、出力部12を介して、情報の表示、音又は光の出力を行ってもよい。或いは、制御部15は、通信部11を介して、アラートを出力させる要求を、端末装置30に送信してもよい。かかる場合、端末装置30が、サーバ10から受信した要求に基づいて、ディスプレイ等を介して、アラートを出力することができる。その結果、タイヤ外傷モニタリングシステム1の利用者に、タイヤ2の交換、リトレッド、或いはローテーション等の行動を促すことができる。
【0070】
なお、上述したアラートの出力に用いられる、所定の閾値範囲は、外傷60のタイヤ2の外表面上の位置、即ち外傷60の1つ以上の基準位置52に対する位置情報に応じて異なっていてもよい。例えば、サーバ10の制御部15は、所定の閾値範囲として、タイヤ2の外表面上の1つ以上の基準位置52に対する位置に応じて異なる複数の閾値範囲を記憶部14に記憶していてもよい。具体的には、ベルト又はカーカスプライの端部の近傍など、タイヤ2の構造上、故障リスクが高い位置では、アラートを出力する傷の深さが他の部分よりも浅く設定されていてもよい。これにより、タイヤ2における外傷60の位置の故障リスクに応じてアラートを出力することができ、アラートを出力する精度を向上させることができる。
【0071】
以上述べたように、本実施形態において、タイヤ外傷モニタリング装置であるサーバ10は、タイヤ2を撮像した画像50を取得する。そして、サーバ10は、画像50内に写されたタイヤ2の外表面上の1つ以上の基準位置52を特定するとともに、画像50内に写されたタイヤ2の外表面上の外傷60を検出する。サーバ10は、検出された外傷60の、タイヤ2の外表面上における、1つ以上の基準位置52に対する位置情報を含む、外傷情報を出力する。
【0072】
かかる構成によれば、サーバ10は、取得した画像50に基づいて、タイヤ2の外表面上における外傷60の位置を精度よく特定することができる。特に、1つ以上の基準位置52をタイヤ2の外表面上において特定することで、タイヤ2が他の車両3又はホイールに装着された場合でも、継続してタイヤ2の外傷60の位置を特定することができる。したがって、本実施形態によれば、タイヤ2の外傷をモニタリングする技術の有用性を向上させることができる。
【0073】
なお、上述の本動作例では、タイヤ外傷モニタリングシステム1において、タイヤ2のサイド部2Aの外表面上の外傷60を検出する動作を説明したが、この限りではない。タイヤ外傷モニタリングシステム1の処理対象となるタイヤ2の外表面は、タイヤ2のサイド部2Aの外表面又はトレッド部2Bの外表面の少なくとも一方を含んでいてもよい。すなわち、タイヤ外傷モニタリングシステム1は、タイヤ2のサイド部2Aに加えて/代えて、タイヤ2のトレッド部2Bの外表面上の外傷60を検出するために用いられてもよい。かかる場合、撮像装置20は、タイヤ2のトレッド部2Bを撮像するために、車両3の正面又は背面を撮像可能な位置に設置されていてもよい。そして、上述した動作例と同様に、サーバ10は、撮像装置20からタイヤ2のトレッド部2Bを撮像した画像50を取得する。そして、サーバ10は、画像50内に写されたタイヤ2のトレッド部2Bの外表面上の1つ以上の基準位置52を特定するとともに、画像50内に写されたタイヤ2のトレッド部2Bの外表面上の外傷60を検出する。基準位置52は、例えば、タイヤ2のトレッド部2Bの外表面上に設けられた文字、記号、図形、又は模様とされてもよい。サーバ10は、検出された外傷60の、タイヤ2のトレッド部2Bの外表面上における、1つ以上の基準位置52に対する位置情報を含む、外傷情報を出力する。これにより、サーバ10は、タイヤ2のサイド部2Aに加えて/代えて、タイヤ2のトレッド部2Bの外表面上の外傷60を検出し、その位置を特定することができる。
【0074】
本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【0075】
また例えば、汎用のコンピュータを、上述した実施形態に係るサーバ10として機能させる実施形態も可能である。具体的には、上述した実施形態に係るサーバ10の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、汎用のコンピュータのメモリに格納し、プロセッサによって当該プログラムを読み出して実行させる。したがって、本開示は、プロセッサが実行可能なプログラム、又は当該プログラムを記憶する非一時的なコンピュータ読取可能な媒体としても実現可能である。非一時的なコンピュータ読取可能な媒体には、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリ等が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示によれば、タイヤの外傷をモニタリングする技術の有用性を向上させることができる、タイヤ外傷モニタリング装置、タイヤ外傷モニタリング方法、及びプログラムを提供することができる。
【0077】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本発明の一実施形態は「No.9_産業と技術革新の基盤を作ろう」などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0078】
1:タイヤ外傷モニタリングシステム、 2:タイヤ、 2A:サイド部、 2B:トレッド部、 3:車両、 10:サーバ(タイヤ外傷モニタリング装置)、 11:通信部、 12:出力部、 13:入力部、 14:記憶部、 15:制御部、 20:撮像装置、 30:端末装置、 40:ネットワーク、 50:画像、 51(51A、51B):表示部分、 52(52A、52B、52C):基準位置、 60:外傷、 H:高さ方向の範囲、 W:幅方向の範囲、 C:中心、 E1、E2:接地位置の両端
図1
図2
図3
図4
図5