(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084054
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3205 20060101AFI20240617BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20240617BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20240617BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H01L21/88 T
H01L21/90 A
H01L29/58 G
H01L21/88 S
H01L21/90 K
H01L29/78 653A
H01L29/78 652K
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198221
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 由晴
(72)【発明者】
【氏名】白川 徹
【テーマコード(参考)】
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4M104BB01
4M104BB25
4M104CC05
4M104EE05
4M104EE15
4M104FF16
4M104FF27
4M104GG09
4M104GG18
4M104HH09
5F033HH09
5F033JJ19
5F033KK04
5F033NN07
5F033RR04
5F033RR06
5F033RR13
5F033RR15
5F033RR22
5F033VV07
5F033XX02
(57)【要約】
【課題】半導体装置においては、ゲートパッドの剥離を防ぐことが好ましい。
【解決手段】半導体基板の上面の上方に設けられた層間絶縁膜と、層間絶縁膜の上面の上方に設けられたゲートパッドと、半導体基板の上面から内部に向かって設けられた1つ以上のトレンチ部とを有し、それぞれのトレンチ部は内側にポリシリコンを含むゲート電極を有し、層間絶縁膜には、ゲートパッドと重なる範囲におけるトレンチ部のゲート電極とゲートパッドを接続するコンタクトホールが設けられ、コンタクトホールの底部には、バリアメタルが形成されている半導体装置を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を備える半導体装置であって、
前記半導体基板の上面の上方に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜の上面の上方に設けられたゲートパッドと、
前記半導体基板の前記上面から内部に向かって設けられた1つ以上のトレンチ部と
を有し、
それぞれの前記トレンチ部は内側にポリシリコンを含むゲート電極を有し、
前記層間絶縁膜には、前記ゲートパッドと重なる範囲における前記トレンチ部の前記ゲート電極と前記ゲートパッドを接続するコンタクトホールが設けられ、
前記コンタクトホールの底部には、バリアメタルが形成されている
半導体装置。
【請求項2】
前記層間絶縁膜には、ボロンが含まれている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲートパッドと重なる範囲において、前記トレンチ部は、第1の方向に長手を有する第1トレンチ部と、
前記第1の方向とは異なる第2の方向に長手を有する第2トレンチ部と
を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1トレンチ部と前記第2トレンチ部は交差している
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板の前記上面の上方に設けられたエミッタ電極を更に備え、
前記ゲートパッドと重なる範囲における前記トレンチ部の密度が、前記エミッタ電極と重なる範囲における前記トレンチ部の密度よりも高い
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ゲートパッドと重なる範囲において、前記範囲の面積に対する前記トレンチ部の面積の割合が20%以上50%以下である
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ゲートパッドと重なる範囲において、前記層間絶縁膜と前記半導体基板の前記上面との間には、前記ゲート電極を除いて、ポリシリコンが設けられていない
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体基板は第1導電型のドリフト領域を有し、
前記ゲートパッドと重なる範囲における前記トレンチ部は、第2導電型のウェル領域に設けられている
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体基板の前記上面の上方に設けられたエミッタ電極を更に備え、
前記エミッタ電極と重なる範囲における前記トレンチ部は、第1方向が長手方向である第1部分を有し、
前記ゲートパッドと重なる範囲における前記トレンチ部は、前記第1方向が長手方向である第2部分とを有し、
前記第1部分と前記第2部分とが、前記第1方向において向かい合っている
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ゲート電極の前記ポリシリコンは、前記半導体基板の内部において、前記バリアメタルと接続している
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記半導体基板の前記上面の上方に設けられたエミッタ電極を更に備え、
前記エミッタ電極と重なる範囲における前記トレンチ部の少なくとも一部は、前記ゲートパッドと重なる範囲まで連続して設けられ、前記ゲートパッドと重なる範囲における前記トレンチ部と交差している
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体基板の前記上面の上方に設けられたエミッタ電極を更に備え、
前記トレンチ部は、前記エミッタ電極および前記ゲートパッドの両方と重なる複数の第3トレンチ部と、前記ゲートパッドと重なり、前記エミッタ電極と重ならない第4トレンチ部とを含み、
前記第4トレンチ部の少なくとも一部分は、前記ゲートパッドと重なる範囲において、2つの前記第3トレンチ部の間に設けられる
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記バリアメタルはチタンを含む
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記半導体基板の前記上面の上方に設けられたエミッタ電極を更に備え、
前記トレンチ部は、前記エミッタ電極と重なる複数の第3トレンチ部を有し、
それぞれの前記第3トレンチ部は長手方向に延伸して設けられ、
複数の前記第3トレンチ部は前記長手方向と異なる方向に並んで配置されている
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置において電極の密着性を向上させるため、バリアメタルを使用しない構成またはバリアメタルとしてTiNを設ける構成が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。またゲートパッドの下方にトレンチを設ける構成が知られている(例えば、特許文献3、4参照)。
特許文献1 特開2016-111084号公報
特許文献2 特開2021-168418号公報
特許文献3 特開2022-007788号公報
特許文献4 特開2014-135367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置においては、ゲートパッドの剥離を防ぐことが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、半導体基板を備える半導体装置を提供する。半導体装置は、半導体基板の上面の上方に設けられた層間絶縁膜を有してよい。上記いずれかの半導体装置は、層間絶縁膜の上面の上方に設けられたゲートパッドを有してよい。上記いずれかの半導体装置は、半導体基板の上面から内部に向かって設けられた1つ以上のトレンチ部を有してよい。上記いずれかの半導体装置において、それぞれのトレンチ部は内側にポリシリコンを含むゲート電極を有してよい。上記いずれかの半導体装置において、層間絶縁膜には、ゲートパッドと重なる範囲におけるトレンチ部のゲート電極とゲートパッドを接続するコンタクトホールが設けられてよい。上記いずれかの半導体装置において、コンタクトホールの底部には、バリアメタルが形成されてよい。
【0005】
上記いずれかの半導体装置において、層間絶縁膜には、ボロンが含まれてよい。
【0006】
上記いずれかの半導体装置は、ゲートパッドと重なる範囲において、トレンチ部は、第1の方向に長手を有する第1トレンチ部を有してよい。上記いずれかの半導体装置は、第1の方向とは異なる第2の方向に長手を有する第2トレンチ部とを有してよい。
【0007】
上記いずれかの半導体装置において、第1トレンチ部と第2トレンチ部は交差していてよい。
【0008】
上記いずれかの半導体装置は、半導体基板の上面の上方に設けられたエミッタ電極を更に備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、ゲートパッドと重なる範囲におけるトレンチ部の密度が、エミッタ電極と重なる範囲におけるトレンチ部の密度よりも高くてよい。
【0009】
上記いずれかの半導体装置において、ゲートパッドと重なる範囲において、範囲の面積に対するトレンチ部の面積の割合が20%以上50%以下であってよい。
【0010】
上記いずれかの半導体装置において、ゲートパッドと重なる範囲において、層間絶縁膜と半導体基板の上面との間には、ゲート電極を除いて、ポリシリコンが設けられていなくてよい。
【0011】
上記いずれかの半導体装置において、半導体基板は第1導電型のドリフト領域を有してよい。上記いずれかの半導体装置において、ゲートパッドと重なる範囲におけるトレンチ部は、第2導電型のウェル領域に設けられてよい。
【0012】
上記いずれかの半導体装置は、半導体基板の上面の上方に設けられたエミッタ電極を更に備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、エミッタ電極と重なる範囲におけるトレンチ部は、第1方向が長手方向である第1部分を有してよい。上記いずれかの半導体装置において、ゲートパッドと重なる範囲におけるトレンチ部は、第1方向が長手方向である第2部分とを有してよい。上記いずれかの半導体装置において、第1部分と第2部分とが、第1方向において向かい合っていてよい。
【0013】
上記いずれかの半導体装置において、ゲート電極のポリシリコンは、半導体基板の内部において、バリアメタルと接続していてよい。
【0014】
上記いずれかの半導体装置は、半導体基板の上面の上方に設けられたエミッタ電極を更に備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、エミッタ電極と重なる範囲におけるトレンチ部の少なくとも一部は、ゲートパッドと重なる範囲まで連続して設けられ、ゲートパッドと重なる範囲におけるトレンチ部と交差していてよい。
【0015】
上記いずれかの半導体装置は、半導体基板の上面の上方に設けられたエミッタ電極を更に備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、トレンチ部は、エミッタ電極およびゲートパッドの両方と重なる複数の第3トレンチ部と、ゲートパッドと重なり、エミッタ電極と重ならない第4トレンチ部とを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、第4トレンチ部の少なくとも一部分は、ゲートパッドと重なる範囲において、2つの第3トレンチ部の間に設けられてよい。
【0016】
上記いずれかの半導体装置において、バリアメタルはチタンを含んでよい。
【0017】
上記いずれかの半導体装置は、半導体基板の上面の上方に設けられたエミッタ電極を更に備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、トレンチ部は、エミッタ電極と重なる複数の第3トレンチ部を有してよい。上記いずれかの半導体装置において、それぞれの第3トレンチ部は長手方向に延伸して設けられてよい。上記いずれかの半導体装置において、複数の第3トレンチ部は長手方向と異なる方向に並んで配置されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】半導体装置100の一例を示す上面図である。
【
図2】半導体装置100の一例を示す上面視である。
【
図3】
図2におけるA-A断面の一例を示す図である。
【
図4】
図2におけるB-B断面の一例を示す図である。
【
図5】
図2におけるA-A断面の比較例を示す図である。
【
図6】
図2におけるA-A断面の他の比較例を示す図である。
【
図8】
図2における領域Dの他の例を示す図である。
【
図10】
図2におけるC-C断面の一例を示す図である。
【
図11】接続領域66に対するコンタクトホール36の密度と電極剥がれ発生率の関係を示す実験結果である。
【
図12】
図3における領域Gの一例を示す図である。
【
図13】
図2における領域Fの一例を示す図である。
【
図14】
図2における領域Fの他の例を示す図である。
【
図15】
図2における領域Fの他の例を示す図である。
【
図16】
図2における領域Fの他の例を示す図である。
【
図17】
図2における領域Fの他の例を示す図である。
【
図18】
図2における領域Fの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、又、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また、1つの図面において、同一の機能、構成を有する要素については、代表して符合を付し、その他については符合を省略する場合がある。
【0020】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体モジュールの実装時における方向に限定されない。
【0021】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0022】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0023】
図1は、半導体装置100の一例を示す上面図である。半導体装置100は、半導体基板10、エミッタ電極52、ゲートパッド30、ゲート配線32およびエッジ終端構造部110を備えている。半導体基板10は、シリコンまたは化合物半導体等の半導体材料で形成された基板である。半導体基板10は、上面視において端辺102を有する。本明細書では、半導体基板10または半導体装置100等の所定の部材の上面に、各部材の位置を投影することを上面視と称する。本例の半導体基板10は、上面視において互いに向かい合う2組の端辺102を有する。
図1においては、互いに向かい合う1組の端辺102-1および端辺102-2を示している。
図1においては、端辺102-1および端辺102-2と平行な方向をX軸方向、端辺102-1および端辺102-2と垂直な方向をY軸方向とする。
【0024】
エミッタ電極52およびゲートパッド30は、半導体基板10の上面の上方に設けられている。エミッタ電極52およびゲートパッド30は、アルミニウム等の金属を含む電極である。エミッタ電極52およびゲートパッド30は、アルミニウムとシリコンを含む合金であってよい。エミッタ電極52およびゲートパッド30は、上面視において互いに分離している。エミッタ電極52およびゲートパッド30の間には、ポリイミド等の保護部材が設けられてよい。エミッタ電極52およびゲートパッド30と、半導体基板10との間には層間絶縁膜が設けられている。エミッタ電極52およびゲートパッド30は、当該層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを介して半導体基板10または半導体基板10の上面に設けられた部材と接続する。
【0025】
ゲートパッド30は、上面視においてエミッタ電極52と、端辺102-1との間に配置されている。ゲートパッド30は、X軸方向においてエミッタ電極52に挟まれていてもよい。
【0026】
エミッタ電極52の上面には、図示しないリードフレームまたはワイヤ等の配線が接続されている。また、ゲートパッド30の上面には、ゲートワイヤが接続されているが、
図1では省略している。
【0027】
半導体基板10には活性部120が設けられている。活性部120は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に半導体基板10の上面と下面との間で、深さ方向に主電流が流れる領域である。活性部120は、半導体基板10の内部に、IGBT等のトランジスタ、または、FWD(還流ダイオード)等のダイオードが設けられた領域である。エミッタ電極52により覆われた領域を活性部120としてもよい。この場合、上面視においてエミッタ電極52に挟まれた領域も活性部120としてもよい。また、半導体基板10の外周に沿って、ガードリングまたはフィールドプレートが環状に設けられている場合、ガードリングまたはフィールドプレートに囲まれた領域を活性部120としてもよい。ガードリングは、半導体基板10の上面から所定の深さ位置まで設けられたP型の領域である。また、フィールドプレートは、半導体基板10の上面の上方に設けられた、導電性部材である。フィールドプレートと半導体基板10の間には絶縁膜が設けられている。ガードリングおよびフィールドプレートは、ゲートパッド30と、端辺102-1との間を通過するように設けられてよい。
【0028】
ゲートパッド30にはゲート電位が印加される。ゲート配線32は、ゲートパッド30と活性部120に設けられたトレンチ部のゲート電極を電気的に接続する。本例のゲート配線32は、上面視において活性部120と半導体基板10の端辺102との間に配置されている。本例のゲート配線32は、上面視において活性部120を囲んでいる。上面視においてゲート配線32に囲まれた領域を活性部120としてもよい。また、ゲート配線32の下方にはウェル領域が形成されている。ウェル領域とは、後述するベース領域よりも高濃度のPまたはP+型領域であり、半導体基板10の上面からベース領域よりも深い位置まで形成されている。上面視においてウェル領域で囲まれる領域を活性部120としてもよい。
【0029】
ゲート配線32は、ゲートパッド30と接続されている。ゲート配線32は、半導体基板10の上方に配置されている。ゲート配線32は、アルミニウム等を含む金属配線であってよい。
【0030】
本例の半導体装置100は、上面視において、活性部120と端辺102との間に、エッジ終端構造部110を備える。本例のエッジ終端構造部110は、ゲート配線32と端辺102との間に配置されている。エッジ終端構造部110は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部110は、活性部120を囲んで環状に設けられたガードリング、フィールドプレートおよびリサーフのうちの少なくとも一つを備えていてよい。
【0031】
図2は、半導体装置100の一例を示す上面視である。
図2では、
図1と同一の半導体装置100において、一部のトレンチ部40の位置を上面に投影している。半導体装置100は、半導体基板10の上面から内部に向かって設けられた1つ以上のトレンチ部40を有する。本例のトレンチ部40は上面視においてエミッタ電極52と重なる範囲およびゲートパッド30と重なる範囲の両方に設けられている。
【0032】
本例において、エミッタ電極52と重なる範囲に設けられたトレンチ部40はY軸方向に長手を有し、Y軸方向における一方のゲート配線32と重なる位置から、他方のゲート配線32と重なる位置まで延伸している。Y軸方向においてゲートパッド30と向かい合うトレンチ部40は、一方のゲート配線32に代えて、ゲートパッド30と重なる位置まで延伸してよい。本例において、エミッタ電極52と重なる範囲に設けられたトレンチ部40はX軸方向に複数本並んでいる。本明細書では、所定の方向に複数並んでいる状態を、配列と表現する場合がある。
図2においては一部のトレンチ部40のみを図示しているが、X軸方向においてエミッタ電極52の端から端までトレンチ部40が設けられている。
【0033】
本例において、ゲートパッド30と重なる範囲には、Y軸方向に長手を有し、X軸方向に配列しているトレンチ部40と、X軸方向に長手を有し、Y軸方向に配列しているトレンチ部40が設けられている。ゲートパッド30と重なる範囲に設けられたトレンチ部40の配列はこれに限定されるものではなく、一方向に長手を有するトレンチ部40のみが配列されてもよい。
【0034】
トレンチ部40が延伸している長手方向の先端部分の少なくとも一部は、上面視において曲線状に設けられることが好ましい。2つの直線上のトレンチ部40の先端部分を接続することで、トレンチ部40の先端部分における電界集中を緩和することができる。本例においては、すべてのトレンチ部40の先端部分が、他のいずれかのトレンチ部40の先端部分に接続されている。
【0035】
図3は、
図2におけるA-A断面の一例を示す図である。A-A断面は、ゲートパッド30および接続部62を通過するXZ面である。
【0036】
本例の半導体装置100は当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、バリアメタル54、タングステンプラグ56、ゲートパッド30および保護部材58を有する。半導体基板10は第1導電型のドリフト領域20と、半導体基板10の上面21とドリフト領域20の間に設けられた第2導電型のウェル領域11を有する。一例として、第1導電型はN型を意味し、第2導電型はP型を意味する。本例のドリフト領域20はN-型であり、ウェル領域11はP+型である。
【0037】
層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面21の上方に設けられ、上面21の少なくとも一部を覆って設けられる。層間絶縁膜38は、BSG、BPSG等のシリケートガラスであってよく、酸化膜または窒化膜等であってもよい。層間絶縁膜38には、ボロンが含まれていてよい。層間絶縁膜38におけるボロン濃度は、2wt%以上、5wt%以下であってよい。層間絶縁膜38におけるボロン濃度は、2.1wt%以上であってもよい。層間絶縁膜38におけるボロン濃度は、4.0wt%以下であってもよい。なお、wt%は、重量パーセント濃度を示している。ボロン濃度が低すぎると、層間絶縁膜38の製造が難しくなる。層間絶縁膜38の製造が難しくなる理由は、例えば、層間絶縁膜38を熱処理した時に、流動化による変形が起こりにくく、トレンチ部40上方の層間絶縁膜38に凹みが残り、タングステンプラグ56をエッチバックする際にその凹みにタングステンが残りやすくなるためである。また、ボロン濃度が高すぎると、後述するバリアメタル54のチタンとボロンとの反応が生じやすくなり、バリアメタル54と層間絶縁膜38との界面の密着性が低くなり、この界面で剥離しやすくなる。
【0038】
トレンチ部40は半導体基板10の上面21から内部に向かって設けられている。トレンチ部40は、半導体基板10の上面21に設けられたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜44およびゲート電極42を有する。ゲート絶縁膜44は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜44は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート電極42は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜44よりも内側に設けられる。つまりゲート絶縁膜44は、ゲート電極42と半導体基板10とを絶縁する。ゲート電極42は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。それぞれのトレンチ部40は内側にポリシリコンを含むゲート電極42を有する。本例のゲート電極42の上面は、ゲート絶縁膜44に覆われていない。
【0039】
ゲートパッド30と重なる範囲におけるトレンチ部40は、第2導電型のウェル領域11に設けられている。ウェル領域11の拡散深さは、トレンチ部40の深さよりも深い。本例においては、ゲートパッド30と重なる範囲におけるトレンチ部40の全体は、上面視においてウェル領域11に設けられる。これにより、各トレンチ部40の当該底部における電界集中を緩和できる。
【0040】
層間絶縁膜38にはコンタクトホール(貫通孔)36が設けられている。コンタクトホール36により、半導体基板10の上面21が露出する。コンタクトホール36の底部には、バリアメタル54が形成されている。本例のバリアメタル54は、層間絶縁膜38の上面24およびコンタクトホール36の内部を覆うように形成されており、コンタクトホール36により露出する半導体基板10の上面21と接触している。バリアメタル54は、2つ以上のコンタクトホール36にまたがって、連続して設けられている。バリアメタル54は、ゲートパッド30が設けられた全領域に配置されてよい。バリアメタル54はチタンを含んでいてよく、チタンを含む層と窒化チタンを含む層が積層されていてもよい。
【0041】
ゲートパッド30は、層間絶縁膜38の上面24の上方に設けられる。本例のゲートパッド30は、バリアメタル54上に設けられている。ゲートパッド30は、コンタクトホール36の内部にも設けられていてよい。本例においては、コンタクトホール36の内部におけるバリアメタル54上には、タングステンを含むタングステンプラグ56が設けられている。本例のタングステンプラグ56は、コンタクトホール36以外の領域には設けられていない。ゲートパッド30は、タングステンプラグ56上にも設けられている。タングステンプラグ56を設けることで、コンタクトホール36の幅が微細になった場合でも、ゲートパッド30と半導体基板10との電気的な接続を容易にとることができる。
【0042】
エミッタ電極52(
図1、2参照)、ゲートパッド30およびエッジ終端構造部110(
図1、2参照)の上方には、ポリイミド等の保護部材58が形成される。また、半導体装置100は、パッケージ内に配置され封止ゲルで覆われた状態や樹脂モールドされた状態で使用される場合がある。この場合エミッタ電極52およびゲートパッド30は、シリコーンゲル等の封止ゲルやエポキシ系樹脂等のモールド樹脂と接触している。エミッタ電極52またはゲートパッド30に欠損等が生じていると、封止ゲルもしくはモールド樹脂からの樹脂イオンがエミッタ電極52またはゲートパッド30を通過して、ゲート絶縁膜44に到達する場合がある。樹脂イオンがゲート絶縁膜44にトラップされると、半導体装置100の閾値電圧が変動してしまう。バリアメタル54をエミッタ電極52およびゲートパッド30に設けることで、ゲート絶縁膜44に樹脂イオンが到達することを抑制できる。バリアメタル54は、エミッタ電極52およびゲートパッド30と重なる範囲の全体にわたって設けられてよい。
【0043】
本例のコンタクトホール36により露出する半導体基板10の上面21にはゲート電極42が設けられている。コンタクトホール36は、ゲートパッド30と重なる範囲におけるトレンチ部40のゲート電極42とゲートパッド30を接続する。本例のコンタクトホール36は、コンタクトホール36内のバリアメタル54およびタングステンプラグ56を介して、ゲートパッド30と重なる範囲におけるトレンチ部40のゲート電極42とゲートパッド30を接続している。
【0044】
ゲートパッド30の上面の一部の領域は、ポリイミド等の保護部材58で覆われている。ゲートパッド30の上面のうち、保護部材58で覆われずに露出した領域を開口領域64とする。
【0045】
接続部62は、開口領域64においてゲートパッド30の上面に接続されている。ゲートパッド30の上面において、接続部62と接する部分を接続領域66と称する。接続部62には、ゲートワイヤ60が接続されている。接続部62は、はんだ等の固定材料であってよく、ワイヤ配線の一部であってもよい。ワイヤ配線は、接続部62においてエミッタ電極52の上面に超音波接合されてよく、圧着されていてもよい。ゲートパッド30には、外部からゲートワイヤ60を介してゲート電位が印加される。なお、半導体装置100の上面は、シリコーンゲル等の封止樹脂で封止される。これにより、半導体装置100の上面を外部から電気的に絶縁し、また、水分等の異物から半導体装置100を保護できる。
【0046】
図4は、
図2におけるB-B断面の一例を示す図である。B-B断面は、エミッタ電極52を通過するXZ面である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、バリアメタル54、タングステンプラグ56、シリサイド層72、およびエミッタ電極52を有する。
【0047】
層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面21の上方に設けられ、上面21の少なくとも一部を覆っている。層間絶縁膜38は、BSG、BPSG等のシリケートガラスであってよく、酸化膜または窒化膜等であってもよい。層間絶縁膜38は、ボロンを含んでいてよい。層間絶縁膜38には、
図3において説明したコンタクトホール36が設けられている。ただし、
図4のコンタクトホール36により露出する半導体基板10の上面21にはエミッタ領域22およびベース領域25が設けられている。
【0048】
層間絶縁膜38の上面24の上方およびコンタクトホール36の内部には
図3において説明したバリアメタル54が設けられている。コンタクトホール36の内部にはバリアメタル54の上方に
図3において説明したタングステンプラグ56が設けられている。
【0049】
半導体基板10にはN-型のドリフト領域20が設けられている。ドリフト領域20と半導体基板10の上面21との間にはP型のベース領域25が設けられている。トレンチ部40のゲート絶縁膜44と接する部分において、ベース領域25と半導体基板10の上面21との間には、N+型のエミッタ領域22が設けられている。
【0050】
半導体基板10の上面21側には、1以上のトレンチ部40が設けられる。各トレンチ部40は、半導体基板10の上面21から、ベース領域25を貫通して、ドリフト領域20に到達する。エミッタ領域22等が設けられている領域においては、各トレンチ部40はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域20に到達する。トレンチ部40がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部40を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部40を形成した後に、トレンチ部40の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部40がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0051】
トレンチ部40は
図3と同様のゲート電極42およびゲート絶縁膜44を有する。ゲート電極42は、深さ方向において、ゲート絶縁膜44を挟んで、少なくとも隣接するベース領域25と対向する領域を含む。当該断面におけるトレンチ部40は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート電極42に所定のゲート電圧が印加されると、ベース領域25のうちトレンチ部40に接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0052】
図3において、バリアメタル54を設けることでゲート絶縁膜44に樹脂イオンが到達することを抑制できることを述べたが、バリアメタル54を全面に設けると、水素イオンの通過が抑制される。半導体基板10の内部には、ドナーイオンまたはアクセプタイオンの注入等による結晶欠陥等のダメージが存在するが、水素イオンを注入してアニールすることでダメージを回復できる。このため、バリアメタル54を全面に設けると、半導体基板10の内部のダメージを回復しにくくなる。
【0053】
本例の半導体装置100においては、コンタクトホール36の底部に形成され、半導体基板10の上面21と接して配置されたバリアメタル54がシリサイド化している。本例においては、半導体基板10の上面21と接して配置されたバリアメタル54の全体がシリサイド化している。
図4においては、シリサイド化したバリアメタル54をシリサイド層72としている。シリサイド層72は、バリアメタル54とシリコンよりなる化合物のことを指し、一例としてTiSiやTiSi2などがあり、これらが単独で存在してもよいし、または混在していてもよい。また、
図3で示したゲートパッド30部においても、シリサイド層72が設けられてもよい。
【0054】
シリサイド層72は、バリアメタル54を設けた後に、半導体基板10をアニールすることで形成できる。アニールは、所定の厚みのバリアメタル54を、厚み方向の全領域に渡ってシリサイド化できる条件で行われてよい。一例としてシリサイド化を促進するため、アニール温度は650~750℃である。
【0055】
コンタクトホール36の底部のバリアメタル54をシリサイド化することで、シリサイド層72を介して、水素が通過しやすくなる。このため、水素が半導体基板10の内部に入り込みやすくなり、半導体基板10の内部の結晶欠陥等によるダメージを回復しやすくなる。また、シリサイド層72を設けることで、バリアメタル54と半導体基板10との接触抵抗を低減できる。
【0056】
例えば、タングステンプラグ56を形成する工程において、フッ素等を除去するために多くの水素が用いられる場合がある。このような工程において、シリサイド層72を介して水素イオンが半導体基板10の内部に注入され、基板内のダメージが回復する。
【0057】
図5は、
図2におけるA-A断面の比較例を示す図である。本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面21の上方にゲート酸化膜46を有する。またゲート酸化膜46の上方にポリシリコン70を有する。ポリシリコン70はゲート酸化膜46によって半導体基板10と絶縁されている。本例において、ゲートパッド30はコンタクトホール36を介してポリシリコン70と接続している。本例において、ポリシリコン70はゲートパッド30の下方の一部の領域には設けられておらず、当該領域において層間絶縁膜38がゲート酸化膜46と接している。当該領域において層間絶縁膜38にコンタクトホール36は形成されていない。
【0058】
図5においては
図3と比べて、当該領域の下方において層間絶縁膜38とバリアメタル54が広い範囲にわたって接している。層間絶縁膜38とバリアメタル54は密着性が低いため、当該領域において電極剥がれが起こりやすい。特にバリアメタル54のシリサイド化のために高温で半導体基板10をアニールした場合は密着性がより悪化し、電極剥がれが生じやすくなってしまう。
【0059】
図6は、
図2におけるA-A断面の他の比較例を示す図である。本例の半導体装置は、半導体基板10の上面21の上方にゲート酸化膜46を有し、ゲート酸化膜46の上方にポリシリコン70を有する。本例においてポリシリコン70はゲートパッド30の下方の全体にわたって設けられている。層間絶縁膜38には
図3、
図5と同様のコンタクトホール36が形成されている。コンタクトホール36はゲートパッド30の下方の全体にわたって形成されている。ゲートパッド30はコンタクトホール36を介してポリシリコン70と接続している。
【0060】
図6においては、ゲートパッド30とポリシリコン70が全体にわたって接続しており、層間絶縁膜38とバリアメタル54が連続して接している範囲は
図5と比べて限定されている。このため全体として密着性の低さを改善し電極剥がれを抑制している。
【0061】
図3に示す本発明の実施例の構成においても、層間絶縁膜38とバリアメタル54が連続して接している範囲は限定されている。そのため層間絶縁膜38とバリアメタル54の密着性の低さを改善し電極剥がれを抑制することができる。さらに本発明の実施例においては、ゲートパッド30がコンタクトホール36を介してポリシリコンを含むゲート電極42と接続しており、ゲートパッド30と重なる範囲において、層間絶縁膜38と半導体基板10の上面21との間には、ゲート電極42を除いて、ポリシリコン70が設けられていない。そのため、ポリシリコン70のパターニング工程の削除、チップサイズの低減を行うことができチップコストを低減することができる。
【0062】
ゲートワイヤ60をゲートパッド30に接続する際に、接続領域66に大きな応力が加わる。そのため、接続領域66の下方において電極剥がれが起こりやすい。そのため本発明の実施例においては、少なくとも接続領域66の下方において、トレンチ部40が設けられ、ゲートパッド30がコンタクトホール36を介してゲート電極42と接続していてよい。
【0063】
図7は、
図2における領域Dの一例を示す図である。本例において、エミッタ電極52の下方に形成されているトレンチ部40は、Y軸方向において一方のゲート配線32と重なる範囲から他方のゲート配線32と重なる範囲まで延伸している。ゲート配線32およびエミッタ電極52とトレンチ部40の間には、層間絶縁膜38が設けられている。ゲート配線32は、層間絶縁膜38に設けられたコンタクトホール36を介してトレンチ部40と接続している。
【0064】
図8は、
図2における領域Dの他の例を示す図である。本例のトレンチ部40は、ゲートトレンチ部48およびダミートレンチ部49を有する。ゲートトレンチ部48およびダミートレンチ部49内部構造は、
図3に示したトレンチ部40の内部構造と同様である。ゲートトレンチ部48はコンタクトホール36を介してゲート配線32と接続している。ダミートレンチ部49はコンタクトホール36を介してエミッタ電極52と接続している。本例のダミートレンチ部49はゲート配線32と重なる範囲まで延伸しているが、ダミートレンチ部49は、ゲート配線32と重ならなくてもよい。
【0065】
図9は、
図2における領域Eの一例を示す図である。
図9においてはゲートパッド30の下方に設けられるトレンチ部40を示している。ゲートパッド30と重なる範囲において、トレンチ部40は、第1の方向に長手を有する第1トレンチ部81と、第1の方向とは異なる第2の方向に長手を有する第2トレンチ部82とを有してよい。第1トレンチ部81と第2トレンチ部82は交差していてよい。本例の第1の方向はY軸方向であり、第2の方向はX軸方向である。本例の第1トレンチ部81と第2トレンチ部82は直交し、十字に設けられている。第1トレンチ部81と第2トレンチ部82はコンタクトホール36を介してゲートパッド30と接続している。
【0066】
第1トレンチ部81および第2トレンチ部82を設けることで、ゲートパッド30下方の、トレンチ部40の水平方向における密度を増やすことができる。それによって、ゲートパッド30とゲート電極42の接触する面積の割合を増やすことができ、より密着性が向上する。
【0067】
図10は、
図2におけるC-C断面の一例を示す図である。C-C断面はエミッタ電極52を通過するXZ面である。本例の半導体装置100は当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、バリアメタル54、タングステンプラグ56、エミッタ電極52および保護部材58を備える。本例の半導体装置100は、
図3に示す半導体装置100と比べて、層間絶縁膜38の上面24の上方にエミッタ電極52が設けられ、保護部材58に開口領域64が設けられていない。また、トレンチ部40の水平方向における密度が
図3に示す半導体装置100と比べて低い。他の構成は
図3と同一である。
【0068】
ゲートパッド30と重なる範囲におけるトレンチ部40の密度が、エミッタ電極52と重なる範囲におけるトレンチ部40の密度よりも高くてよい。トレンチ部40の密度とは、上面視における単位面積当たりに占める、トレンチ部40の面積の割合である。例えば上面視において、エミッタ電極52と重なる範囲におけるトレンチ部40の面積を、エミッタ電極52の面積で除算した値を、エミッタ電極52と重なる範囲のトレンチ部40の密度としてよい。また、上面視において、ゲートパッド30と重なる範囲におけるトレンチ部40の面積を、ゲートパッド30の面積で除算した値を、ゲートパッド30と重なる範囲のトレンチ部40の密度としてよい。本明細書では、上面視における密度を、水平方向における密度と称する場合がある。これによって、ゲートパッド30とゲート電極42の接触する面積の割合を増やすことができ、より密着性が向上する。ゲートパッド30と重なる範囲のトレンチ部40の密度は、エミッタ電極52と重なる範囲のトレンチ部40の密度の1.2倍以上であってよく、1.5倍以上であってよく、2倍以上であってもよい。また、ゲートパッド30と重なる範囲のトレンチ部40の密度に代えて、接続領域66と重なる範囲のトレンチ部40の密度を用いてもよい。
【0069】
図11は、接続領域66に対するコンタクトホール36の密度と電極剥がれ発生率の関係を示す実験結果である。横軸は、ゲートワイヤ60の接続部62と接する部分である接続領域66に対するコンタクトホール36の水平方向における密度を示している。縦軸は、それぞれの当該密度における電極剥がれの発生率を示している。当該密度が20%以下場合、電極剥がれが発生してしまうが、当該密度を20%以上とすることで電極剥がれを抑制することができる。
【0070】
接続領域66の下方において、接続領域66の面積に対するコンタクトホール36の面積が20%以上50%以下であってよい。接続領域66の下方において、接続領域66の面積に対するトレンチ部40の面積が20%以上50%以下であってよい。ゲートパッド30と重なる範囲において、ゲートパッド30と重なる範囲の面積に対するコンタクトホール36の面積が20%以上50%以下であってよい。ゲートパッド30と重なる範囲において、ゲートパッド30と重なる範囲の面積に対するトレンチ部40の面積の割合が20%以上50%以下であってよい。上記いずれかの場合において、上記割合は25%以上50%以下であってよく、25%以上30%以下であってよく、20%以上30%以下であってよい。
【0071】
図12は、
図3における領域Gの一例を示す図である。本例において、コンタクトホール36は、層間絶縁膜38から半導体基板10の内部に設けられたゲート電極42の一部にまで形成されている。コンタクトホール36の内部にはバリアメタル54およびタングステンプラグ56が設けられている。ゲート電極42のポリシリコンは、半導体基板10の内部において、バリアメタル54と接続している。これにより、ポリシリコンとバリアメタル54の接触面積が増加するため、ゲートパッド30と層間絶縁膜38の密着性がより向上する。
【0072】
図12において、コンタクトホール36の幅をT1とし、トレンチ部40の幅をT2とする。T1は、0.5μmを基準として0.3μm以上0.7μm以下であってよい。T2は1.0μmを基準として0.7μm以上1.3μm以下であってよい。また、ゲート電極42とバリアメタル54との界面シリサイド層を設けてもよい。
【0073】
タングステンプラグ56の上端は、層間絶縁膜38の上面24よりも下側に位置してよい。ゲートパッドはコンタクトホール36の内部における、層間絶縁膜38の上面24よりも下側でタングステンプラグ56と接続してよい。
【0074】
図13は、
図2における領域Fの一例を示す図である。本例においては、ゲートパッド30の下方にトレンチ部40が十字に設けられている。またエミッタ電極52と重なる範囲においてもトレンチ部40が設けられている。本例においては、エミッタ電極52と重なる範囲に設けられたトレンチ部40がゲートパッド30の下方まで延伸し、コンタクトホール36を介してゲートパッド30と接続している。当該トレンチ部40はゲートトレンチ部であってよい。なお、
図13において他のコンタクトホール36は省略している。
【0075】
エミッタ電極52と重なる範囲におけるトレンチ部40は、第1方向が長手方向である第1部分91を有してよい。本例において第1方向はY軸方向である。ゲートパッド30と重なる範囲におけるトレンチ部40は、第1方向が長手方向である第2部分92を有してよい。本例において、第1部分91と第2部分92が、第1方向において向かい合っている。
【0076】
図14は、
図2における領域Fの他の例を示す図である。本例において、エミッタ電極52と重なる範囲におけるトレンチ部40の少なくとも一部は、ゲートパッド30と重なる範囲まで連続して設けられ、ゲートパッド30と重なる範囲におけるトレンチ部40と交差している。エミッタ電極52と重なる範囲における全てのトレンチ部40が、ゲートパッド30と重なる範囲まで連続して設けられ、ゲートパッド30と重なる範囲におけるトレンチ部40と交差してよい。このような構成によって、トレンチ部40のゲート容量が増加するため、ゲート容量を調整することができる。
【0077】
図15は、
図2における領域Fの他の例を示す図である。本例において、トレンチ部40は、エミッタ電極52およびゲートパッド30の両方と重なる複数の第3トレンチ部83と、ゲートパッド30と重なり、エミッタ電極52と重ならない第4トレンチ部84とを含む。第4トレンチ部84の少なくとも一部分は、ゲートパッド30と重なる範囲において、2つの第3トレンチ部83の間に設けられる。本例において、第4トレンチ部84は、X軸方向において2つの第3トレンチ部83の間に設けられている。このような構成によっても、ゲート容量を調整することができる。トレンチ部40は、エミッタ電極52と重なる複数の第3トレンチ部83を有し、それぞれの第3トレンチ部83は長手方向に延伸して設けられ、複数の第3トレンチ部83は長手方向と異なる方向に並んで配置されてよい。本例の第3トレンチは、Y軸方向に長手を有し、X軸方向に並んで配置されている。
【0078】
図16は、
図2における領域Fの他の例を示す図である。半導体装置100は、
図15に示す第3トレンチ部83および第4トレンチ部84と交差するトレンチ部40を有してよい。本例の半導体装置100は、第3トレンチ部83および第4トレンチ部84に直交するトレンチ部40を有している。このような構成によって、ゲート電極42のポリシリコンとバリアメタル54との接触面積が増加するため、ゲートパッド30と層間絶縁膜38の密着性がより改善されるとともに、ゲート容量を調整することができる。
【0079】
図17は、
図2における領域Fの他の例を示す図である。本例においては、エミッタ電極52と重なる範囲にゲートトレンチ部48およびダミートレンチ部49が設けられている。ダミートレンチ部49はエミッタ電極52と重なる範囲で終端しており、ダミートレンチ部49の先端部分は他のいずれのトレンチ部40の先端部分とも接続していない。本例のダミートレンチ部49は、I字状である。本例では、X軸方向において、2本のゲートトレンチ部48がダミートレンチ部49の間に設けられているため、ゲートトレンチ部48とダミートレンチ部49の比率は2対1となっているが、当該比率はこれに限定されない。
【0080】
図18は、
図2における領域Fの他の例を示す図である。本例においては、エミッタ電極52と重なる範囲に設けられたゲートトレンチ部48およびダミートレンチ部49の先端部分が、他のいずれのトレンチ部40の先端部分とも接続していない。また、ゲートパッド30と重なる範囲に設けられたトレンチ部40の先端部分が、他のいずれのトレンチ部40の先端部分とも接続していない。本例では、ゲートパッド30と重なる範囲に設けられた全てのトレンチ部40がI字状である。このような構成によっても、ゲートパッド30とゲート電極42の接触する面積の割合を増やすことができ、密着性が向上する。
【0081】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0082】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、20・・・ドリフト領域、21・・・上面、22・・・エミッタ領域、24・・・上面、25・・・ベース領域、30・・・ゲートパッド、32・・・ゲート配線、36・・・コンタクトホール、38・・・層間絶縁膜、40・・・トレンチ部、42・・・ゲート電極、44・・・ゲート絶縁膜、46・・・ゲート酸化膜、48・・・ゲートトレンチ部、49・・・ダミートレンチ部、52・・・エミッタ電極、54・・・バリアメタル、56・・・タングステンプラグ、58・・・保護部材、60・・・ゲートワイヤ、62・・・接続部、64・・・開口領域、66・・・接続領域、70・・・ポリシリコン、72・・・シリサイド層、81・・・第1トレンチ部、82・・・第2トレンチ部、83・・・第3トレンチ部、84・・・第4トレンチ部、91・・・第1部分、92・・・第2部分、100・・・半導体装置、102・・・端辺、110・・・エッジ終端構造部、120・・・活性部