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特開2024-84055ジオポリマー発泡体、ジオポリマー発泡体の製造方法および耐火断熱材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084055
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ジオポリマー発泡体、ジオポリマー発泡体の製造方法および耐火断熱材
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/02 20060101AFI20240617BHJP
   C04B 28/26 20060101ALI20240617BHJP
   C04B 12/04 20060101ALI20240617BHJP
   F16L 59/04 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
C04B38/02 G
C04B28/26
C04B12/04
F16L59/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198222
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】内藤 直記
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 祥子
【テーマコード(参考)】
3H036
4G112
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB25
3H036AE01
4G112PA02
4G112PC01
(57)【要約】
【課題】優れた圧縮強度を有するジオポリマー発泡体を製造することができる。
【解決手段】骨材の存在下でアルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを反応させてジオポリマーを含む反応スラリーを形成するとともに、前記反応スラリーを発泡剤により発泡させて密度が100kg/m以上600kg/m以下であるジオポリマー発泡体を形成するジオポリマー発泡体の製造方法であって、前記骨材が、ジオポリマー粉体を含み、前記ジオポリマー粉体の平均粒子径が5μm以上300μm以下であり、前記ジオポリマー粉体の比表面積が20m/g以下であり、前記ジオポリマー粉体の添加量が、アルミノケイ酸塩100質量部に対して、100質量部以上300質量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材の存在下でアルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを反応させてジオポリマーを含む反応スラリーを形成するとともに、前記反応スラリーを発泡剤により発泡させて密度が100kg/m以上600kg/m以下であるジオポリマー発泡体を形成するジオポリマー発泡体の製造方法であって、
前記骨材が、ジオポリマー粉体を含み、前記ジオポリマー粉体の平均粒子径が5μm以上300μm以下であり、前記ジオポリマー粉体の比表面積が20m/g以下であり、前記ジオポリマー粉体の添加量が、アルミノケイ酸塩100質量部に対して、100質量部以上300質量部以下であることを特徴とするジオポリマー発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記ジオポリマー粉体の比表面積が10m/g以下であることを特徴とする請求項1に記載のジオポリマー発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記ジオポリマー粉体のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来するピークの面積が下記式(1)を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載のジオポリマー発泡体の製造方法。
(geo)/D(pur)≧0.5・・・(1)
(D(geo)は、前記ジオポリマー粉体のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積であり、D(pur)は、リューサイト純物質のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積である)
【請求項4】
前記ジオポリマー粉体が、ジオポリマー発泡体由来の回収ジオポリマー粉体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のジオポリマー発泡体の製造方法。
【請求項5】
前記ジオポリマー粉体のアスペクト比が2以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のジオポリマー発泡体の製造方法。
【請求項6】
アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応物と、骨材とを含み、体積が300cm以上であるジオポリマー発泡体であって、
前記発泡体の圧縮強さが0.25MPa以上であり、前記発泡体の密度が100kg/m以上600kg/m以下であり、前記発泡体の結晶化度が30%以上70%以下であることを特徴とするジオポリマー発泡体。
【請求項7】
前記骨材が回収ジオポリマー粉体を含み、前記発泡体のX線回折スペクトルにおける、リューサイト結晶に由来するピークの面積が下記式(2)を満足することを特徴とする請求項6に記載のジオポリマー発泡体。
0.45≧D(geo)/D(pur)≧0.1・・・(2)
(D(geo)は、前記発泡体のX線回折スペクトルにおける、リューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積であり、D(pur)は、リューサイト純物質のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積である)
【請求項8】
前記回収ジオポリマー粉体のX線回折スペクトルにおける、リューサイト結晶に由来するピークの面積が下記式(3)を満足することを特徴とする請求項7に記載のジオポリマー発泡体。
3(geo)/D(pur)≧0.5・・・(3)
(D3(geo)は、前記回収ジオポリマー粉体のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積であり、D(pur)は、リューサイト純物質のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積である)
【請求項9】
請求項6又は7に記載の前記ジオポリマー発泡体からなる耐火断熱材。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマー発泡体およびジオポリマー発泡体の製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無機材料の一種であるジオポリマーは、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを反応させることで製造される非晶質の縮重合体無機ポリマーである。ジオポリマーは、原材料の製造から製品の製造までに排出される二酸化炭素量が少ないため、環境に優しい素材として注目されている。
【0003】
具体的には、ジオポリマーは、SiOとAlOとから形成される四面体構造を有し当該四面体構造によるネットワーク中に、AlOの負電荷を補償する陽イオンを保有している構造を有する無機高分子である。そして、ジオポリマーは、メソ孔を有する。
【0004】
ジオポリマーは、軽量ながらセメントと同等の機械的強度を有し、セメントに比べて二酸化炭素量の発生量を大幅に低減できる。さらに、ジオポリマーは不燃性であることから、骨材とともにジオポリマーを発泡させて得られるジオポリマー発泡体は、建築物の耐火断熱材などの建材としても使用されている。
【0005】
ここで、ジオポリマー発泡体を製造する際に、加工する場合には、ジオポリマー発泡体の端材、屑や粉体が発生する。これらのジオポリマー発泡体の端材等は、製品としての形状を形成することができず、廃棄される。そこで、この端材などのジオポリマーを骨材として利用できれば、大きな費用削減が望める。
【0006】
例えば、特許文献1には、ジオポリマー組成物を用いたイオン交換体が開示されている。具体的には、アルミノケイ酸塩(活性フィラー)に、珪酸アルカリ又はアルカリ溶液を加えて得られる無機ポリマーを結合材として用いて、比重調整材として気泡剤(AE剤)を用いてジオポリマー組成物が作製される。そして、骨材としてイオン交換体を粉砕した回収材料が用いることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-028728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術では、特に骨材における回収材料(ジオポリマー粉体)の比率を高めようとすると、ジオポリマー粉体が水分を吸収し、スラリーの粘度が上昇する。そして、スラリーの粘度を調整するために水を追加すると、ジオポリマー発泡体の圧縮強度が低下するという問題があった。本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、優れた圧縮強度を有するジオポリマー発泡体、当該ジオポリマーの製造方法および当該ジオポリマー発泡体からなる耐火断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]骨材の存在下でアルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを反応させてジオポリマーを含む反応スラリーを形成するとともに、前記反応スラリーを発泡剤により発泡させて密度が100kg/m以上600kg/m以下であるジオポリマー発泡体を形成するジオポリマー発泡体の製造方法であって、前記骨材が、ジオポリマー粉体を含み、前記ジオポリマー粉体の平均粒子径が5μm以上300μm以下であり、前記ジオポリマー粉体の比表面積が20m/g以下であり、前記ジオポリマー粉体の添加量が、アルミノケイ酸塩100質量部に対して、100質量部以上300質量部以下であることを特徴とするジオポリマー発泡体の製造方法。
【0010】
[2]前記[1]のジオポリマー発泡体の製造方法は、前記ジオポリマー粉体の比表面積が10m/g以下であることを特徴とする。
【0011】
[3]前記[1]又は[2]のジオポリマー発泡体の製造方法は、前記ジオポリマー粉体のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来するピークの面積が下記式(1)を満足することを特徴とする。D(geo)/D(pur)≧0.5・・・(1)
(D(geo)は、前記ジオポリマー粉体のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積であり、D(pur)は、リューサイト純物質のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積である)
【0012】
[4]前記[1]から[3]の何れかのジオポリマー発泡体の製造方法は、前記ジオポリマー粉体が、ジオポリマー発泡体由来の回収ジオポリマー粉体であることを特徴とする。
【0013】
[5]前記[1]から[4]の何れかのジオポリマー発泡体の製造方法は、前記ジオポリマー粉体のアスペクト比が2以下であることを特徴とする。
【0014】
[6]アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応物と、骨材とを含み、体積が300cm以上であるジオポリマー発泡体であって、前記発泡体の圧縮強さが0.25MPa以上であり、前記発泡体の密度が100kg/m以上600kg/m以下であり、前記発泡体の結晶化度が30%以上70%以下であることを特徴とするジオポリマー発泡体。
【0015】
[7]前記[6]のジオポリマー発泡体は、前記骨材が回収ジオポリマー粉体を含み、前記発泡体のX線回折スペクトルにおける、リューサイト結晶に由来するピークの面積が下記式(2)を満足することを特徴とする請求項5に記載のジオポリマー発泡体。0.45≧D(geo)/D(pur)≧0.1・・・(2)(D(geo)は、前記発泡体のX線回折スペクトルにおける、リューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積であり、D(pur)は、リューサイト純物質のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積である)
【0016】
[8]前記[7]のジオポリマー発泡体は、回収ジオポリマー粉体のX線回折スペクトルにおける、リューサイト結晶に由来するピークの面積が下記式(3)を満足することを特徴とする。D3(geo)/D(pur)≧0.5・・・(3)(D3(geo)は、前記回収ジオポリマー粉体のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積であり、D(pur)は、リューサイト純物質のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積である)
【0017】
[9]前記[6]から[8]の何れかのジオポリマー発泡体からなる耐火断熱材。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法によれば、優れた圧縮強度を有するジオポリマー発泡体を製造することができる。特に、ジオポリマー粉体を骨材として使用した場合であっても優れた圧縮強度を有するジオポリマー発泡体を製造できる。
【0019】
本発明のジオポリマー発泡体は、優れた圧縮強度を有する。
【0020】
本発明の耐火断熱材によれば、優れた圧縮強度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<ジオポリマー発泡体の製造方法>
本発明に係るジオポリマー発泡体の製造方法の一例について説明する。概略的には、本発明の製造方法は、骨材の存在下でアルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを反応させてジオポリマーを含む反応スラリーを形成した後に、当該反応スラリーを発泡剤により発泡させて、多数の気泡が形成されたジオポリマー発泡体を形成する。すなわち、ジオポリマー発泡体は、発泡したジオポリマー中に骨材が分散された成形体である。
【0022】
本発明の製造方法で製造されたジオポリマー発泡体は、密度が100kg/m以上600kg/m以下である。本発明で用いられる骨材は、ジオポリマー粉体を含む。本発明で用いられるジオポリマー粉体の特徴は後述する。
【0023】
ここで、従来の技術においては、骨材としてジオポリマー粉体を使用した場合(特にジオポリマー粉体の配合量が多い場合)には、反応時における反応スラリーの粘度が上昇しやすくなることから水の添加量を増やす必要があった。そして、水の添加量が増えると、気泡壁に水分の蒸発による微細孔が増えてジオポリマー発泡体の圧縮強度が低下するという問題があった。本発明者らは、所定の特徴を有するジオポリマー粉体を骨材として添加することで、この問題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0024】
まず、本発明の製造方法に用いられるアルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩と骨材との特徴について説明する。
【0025】
[アルミノケイ酸塩]
本発明のジオポリマー発泡体の製造方法においては、アルミノケイ酸塩が用いられる。アルミノケイ酸塩は、ケイ酸塩中にあるケイ素原子の一部をアルミニウム原子に置き換えた構造を持つ化合物である。
【0026】
アルミノケイ酸塩におけるSiO(二酸化ケイ素)の含有量は、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。アルミノケイ酸塩中のSiOの含有量がこの範囲であると、製造されたジオポリマー発泡体は、多数の気泡による良好な気泡構造が形成されやすい。
【0027】
アルミノケイ酸塩におけるAlの含有量の下限は、アルミノケイ酸塩の総質量に対して20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、アルミノケイ酸塩中のAlの含有量の上限は、アルミノケイ酸塩の総質量に対して70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。Alの含有量がこの範囲であると、ジオポリマー発泡体の圧縮強度を高めやすい。
【0028】
アルミノケイ酸塩におけるSiOの含有量およびAlの含有量は、蛍光X線分析装置(例えば日立ハイテクサイエンス製EA6000V)を用いて各元素を定量することにより求めることができる。
【0029】
具体的には、アルミノケイ酸塩としては、例えば、バイデライト、ベントナイト、メタカオリン、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、パイロフィライト、バーミキュライト、雲母、緑泥石、サポナイト、セピオライト、酸性白土等の粘土鉱物、フライアッシュ、赤泥、シリカフューム、高炉スラグ、籾殻、及び、下水汚泥焼却灰等の産業廃棄物;天然アルミノシリケート鉱物及びそれらの仮焼物(例えばメタカオリン:Al・2SiO)、火山灰、および、その他のアルミニウムを含むケイ酸塩鉱物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて使用してよい。アルミノケイ酸塩として2種以上を組み合わせて使用する場合には、SiOの含有量とAlの含有量が上記好ましい範囲を満足するように配合することが好ましい。これらの中でも、アルミノケイ酸塩としてはメタカオリンが好ましい。これらの物質を適宜粉砕分級して特定の画分を用いることにより、所望の組成のアルミノケイ酸塩に調整することができる。
【0030】
メタカオリンをアルミノケイ酸塩として用いる場合、アルミノケイ酸塩中のメタカオリンの割合は50質量%以上であることが好ましい。アルミノケイ酸塩中のメタカオリンの割合が上記範囲であると、多数の気泡による良好な気泡構造が形成されやすくなる。以上の観点から、メタカオリンの割合は60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0031】
アルミノケイ酸塩の平均粒子径は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.3μm以上30μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。アルミノケイ酸塩の平均粒子径がこの範囲であると、製造されたジオポリマー発泡体は、良好な気泡構造が形成される。
なお、平均粒子径は、粒子と同体積を有する仮想球の直径を意味する。
【0032】
アルミノケイ酸塩の結晶化度は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。アルミノケイ酸塩の結晶化度がこの範囲であると、水溶液中で後述するアルカリ金属ケイ酸塩と反応させた際に、アルカリ金属ケイ酸塩に由来するアルカリ成分によって、アルミノケイ酸塩源からアルミニウムイオンが溶出しやすくなるとともに、ケイ酸モノマーが生じやすくなり、重縮合が安定して行われるため、良好な気泡構造を形成させやすくなる。
【0033】
結晶化度は、JIS K0131-1996に記載の方法(絶対法)に基づき求めることができる。例えば、二次元検出器を有するX線解析装置(例えば、株式会社リガク製、SmartLab)を使用し、室温にて2θ範囲を10~40°に設定し、アルミノケイ酸塩の粉末に対してX線回折測定を行うことで、結晶化度を測定することができる。なお、結晶化度は、X線回折測定により測定される回折パターンに対してプロファイルフィッティングを行い、得られたX線回折から、全ピーク面積([結晶質成分のピーク面積]+[非晶質成分のハローパターン面積])に対する結晶質成分のピーク面積の比を算出することで求めることができる。
【0034】
[アルカリ金属ケイ酸塩]
本発明のジオポリマー発泡体の製造方法においては、アルカリ金属ケイ酸塩が用いられる。アルカリ金属ケイ酸塩は、水に溶解させると高アルカリ性の水溶液を形成する。
【0035】
アルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)およびケイ酸リチウムが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でもアルカリ金属ケイ酸塩は、ケイ酸カリウムであることが好ましい。
【0036】
アルカリ金属ケイ酸塩は、水溶液の状態で用いることが好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩を水溶液として用いる場合には、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液におけるアルカリ金属ケイ酸塩の濃度は、20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、22質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、25質量%以上45質量%以下であることがさらに好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩の濃度が上記の範囲内であると、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを混合した反応スラリーの発泡成形性を向上させることができる。
【0037】
アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液と、アルミノケイ酸塩とを反応させることにより、アルミノケイ酸塩からは、Al等の陽イオンが溶出するとともに、ケイ酸モノマーを生じる。一方で、アルカリ金属ケイ酸塩は、重縮合によりジオポリマーを形成するケイ酸モノマーの供給源になる。
【0038】
なお、水溶液の水素イオン濃度(pH)を調整し、所望とするアルカリ性を示す水溶液とするために、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液には、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物を添加してもよい。
【0039】
特に、反応スラリーのpHを調整し、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応を促進させるため、アルカリ金属ケイ酸塩100質量部に対して、例えば10質量部以上90質量部以下の水酸化カリウムを添加することができ、より好ましくは50質量部以上80質量部以下の水酸化カリウムを添加することが好ましい。
【0040】
以上に説明したアルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とが反応すると、四面体構造による良好なポリマーネットワークを有し、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応物からなるジオポリマーが形成される。
【0041】
[骨材]
本発明のジオポリマー発泡体の製造方法においては、骨材としてジオポリマー粉体を含む。以下の説明では、骨材として添加されるジオポリマー粉体をジオポリマー粉体(A)とも表記する。
【0042】
骨材中のジオポリマー粉体(A)の含有量は、例えば50質量%以上である。反応スラリーの粘度制御性を良好にする観点からは、骨材中のジオポリマー粉体(A)の含有量は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。骨材中のジオポリマー粉体(A)の含有量の上限は、特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0043】
ジオポリマー粉体(A)としては、ジオポリマー発泡体由来の回収ジオポリマー粉体であることが好ましい。ジオポリマー発泡体由来とは、ジオポリマー発泡体の製造時における端材や屑であってもよいし、元々粒状のジオポリマー発泡体であってもよい。回収ジオポリマー粉体に用いられるジオポリマー発泡体には、本発明に係るジオポリマー発泡体と、本発明以外に係るジオポリマー発泡体との双方が含まれる。ジオポリマー発泡体由来の回収ジオポリマー粉体をジオポリマー粉体(A)として用いることで、無発泡のジオポリマーよりも容易に粉砕できるから、粉砕時間の短縮および粉砕時のエネルギー削減が可能になる。また、回収ジオポリマー粉体を廃棄せずに有効に骨材として活用できることができるから、回収ジオポリマー粉体を用いない場合と比較して、ジオポリマー発泡体の製造費用も削減できるという利点がある。回収ジオポリマー粉体としては、焼成した回収ジオポリマー粉体であることが好ましい。
【0044】
ただし、ジオポリマー粉体(A)は、ジオポリマー発泡体由来の回収ジオポリマー粉体には限定されない。例えば、無発泡のジオポリマー由来の回収ジオポリマー粉体や、回収ジオポリマー粉体(回収材料)ではないジオポリマー粉体をジオポリマー粉体(A)として用いてもよい。また、複数種のジオポリマー粉体を組み合わせてジオポリマー粉体(A)としてもよい。
【0045】
ジオポリマー粉体(A)は、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを反応させて得られるジオポリマーとは区別され、反応スラリーに骨材として別途添加される。ジオポリマー粉体(A)は、ジオポリマーの生成過程の反応スラリー中において反応スラリーの発熱を抑制する要素としても機能すると考えられる。
【0046】
ジオポリマー粉体(A)の平均粒子径は、5μm以上300μm以下であり、好ましくは10μm以上200μm以下であり、より好ましくは20μm以上150μm以下であり、さらに好ましくは30μm以上100μm以下である。ジオポリマー粉体(A)の平均粒子径がこの範囲内であると、反応スラリーの粘度が良好になることに加えて、ジオポリマーの生成や気泡構造の構築に好適な反応スラリーとなり、圧縮強度に優れるジオポリマー発泡体を安定して得ることができる。
【0047】
なお、ジオポリマー粉体(A)およびアルミノケイ酸塩の平均粒子径は、粒子径分布測定装置(HORIBA製:Laser Scattering Particle Size Distribution Partica LA-960)を用いて、JIS Z8825:2022に基づき、レーザー回折散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱法によって測定される体積基準の粒度分布をもとに、粒子の形状を球として仮定して個数基準の粒度分布に換算することにより、個数基準の粒度分布を得る。そして、この個数基準の粒度分布に基づく粒子径を算術平均することにより個数基準の算術平均粒子径を求め、この値を本発明における平均粒径とする。なお、上記平均粒径は、粒子と同体積を有する仮想球の直径を意味する。
【0048】
ジオポリマー粉体(A)の比表面積(BET比表面積)は、20m/g以下であり、好ましくは10m/g以下であり、より好ましくは5m/g以下であり、さらに好ましくは1m/g以下であり、特に好ましくは0.8m/g以下である。
【0049】
ジオポリマー粉体(A)の比表面積が高すぎると、吸水率が高くなり、反応スラリーの粘度が過度に上昇してしまう。反応スラリーの粘度が過度に高い場合、水を加える等によって反応スラリーを混練するのに適切な粘度となるように粘度を下げる必要がある。そして、水の添加量が増えると、気泡壁に水分の蒸発による微細孔が増えて圧縮強度が低下するという問題がある。本発明では、ジオポリマー粉体(A)の比表面積が上記の範囲内であることで、吸水率が低下し、反応スラリーの粘度の上昇を抑制することができる。ひいては、ジオポリマー発泡体の圧縮強度を良好にすることができる。ジオポリマー粉体(A)の比表面積を上記範囲とする方法として、例えばジオポリマーを焼成し、焼成したジオポリマー粉体をジオポリマー粉体(A)とする方法が挙げられる。
【0050】
一方で、ジオポリマー粉体(A)の比表面積の下限は、圧縮強度に優れる発泡体が得られやすくなることから、例えば0.01m/g程度である。
【0051】
ジオポリマー粉体(A)の比表面積は、JIS R1626-1996に記載のBET法(窒素吸着法)に基づき測定することができる。具体的には、無作為に選択したジオポリマー粉体(A)のサンプル1g以上を4連式比表面積・細孔分布測定装置NOVA-TOUCH型(Quantachrome製)を用いて、窒素吸着量からBET多点法を用いて比表面積を算出する。以上の操作を異なるサンプルについて3回行い、算術平均した値を、ジオポリマー粉体(A)の比表面積とする。
【0052】
ジオポリマー粉体(A)の結晶化度は、例えば70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。ジオポリマー粉体(A)の結晶化度が上記の範囲内にあることで、ジオポリマー粉体(A)の吸水率を低くすることができ、ジオポリマー発泡体の圧縮強度を良好にすることができる。ジオポリマー粉体(A)の結晶化度の上限は、特に限定されず、100%であってもよい。ジオポリマー粉体(A)の結晶化度を上記範囲とする方法として、例えばジオポリマーを焼成し、焼成したジオポリマー粉体をジオポリマー粉体(A)とする方法が挙げられる。
【0053】
ジオポリマー粉体(A)の結晶化度は、X線回折装置を用い、JIS K0131-1996に記載の方法(絶対法)に基づき求めることができる。例えば、二次元検出器を有するX線解析装置(例えば、株式会社リガク製、Rint2550)を使用し、室温にて2θ範囲を15~40°に設定し、ジオポリマー粉体(A)に対してX線回折測定を行うことで、結晶化度を測定することができる。なお、結晶化度は、X線回折測定により測定される回折パターンに対してプロファイルフィッティングを行い、得られたX線回折から、全ピーク面積([結晶質成分のピーク面積]+[非晶質成分のハローパターン面積])に対する結晶質成分のピーク面積の比を算出することで求めることができる。
【0054】
ジオポリマー粉体(A)は、リューサイト結晶構造を有することが好ましい。リューサイト結晶は、化学式がKAlSiまたはKO・Al・4SiOで表記される。本発明においては、ジオポリマー粉体(A)がリューサイト結晶構造を有することで、気泡壁の強度を向上させることができ、優れた耐熱性と圧縮強度を有するジオポリマー発泡体とすることができる。
【0055】
具体的には、ジオポリマー粉体(A)は、ジオポリマー発泡体の圧縮強度を良好にする観点からは、X線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来するピークの面積が下記式(1)を満足することが好ましい。
(geo)/D(pur)≧0.5・・・(1)
式(1)において、D(geo)は、ジオポリマー粉体(A)のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積であり、D(pur)は、リューサイト純物質のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積である。なお、2θ=27.3°に位置するピークとは、そのピークトップが27.3°となっていなくても、ピークが27.3°を含んでいればよい。なお、リューサイト純物質は、例えば、株式会社ニチカ製(製品名:高純度鉱物試料 白榴石)の結晶成分100%のものを用いることができる。
【0056】
ジオポリマー発泡体の圧縮強度をさらに良好にするという観点からは、D(geo)/D(pur)≧0.6であることがより好ましく、D(geo)/D(pur)≧0.7であることがさらに好ましい。なお、D(geo)/D(pur)の上限は、特に限定されないが、概ね0.9≧D(geo)/D(pur)である。
【0057】
(geo)/D(pur)は、X線回折装置(例えば、理学電機株式会社 RINT2550H(ローターフレックス型))を用いて、JIS K0131-1996に記載の方法(絶対法)に基づき求めることができる。
【0058】
以上に説明したジオポリマー粉体(A)は、例えば、焼成したジオポリマー発泡体を粉砕することにより得られる。例えば、ジオポリマー発泡体を、5℃/minで600℃まで加熱した後に2℃/minで1200℃まで加熱して1200℃で1時間以上保持することで、焼成したジオポリマー発泡体を得た後、粉砕することによりジオポリマー粉体(A)を製造することができる。また、ジオポリマー粉体(A)は、焼成していない回収ジオポリマー粉体を焼成することにより得ることもできる。
【0059】
反応スラリーの混練時における過度な粘度上昇の抑制及び発熱の抑制という観点からは、ジオポリマー粉体(A)のアスペクト比が2以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.6以下であることがさらに好ましく、その下限は特に制限はないが、概ね1.05である。
【0060】
本明細書におけるアスペクト比は、次のようにして求められる。任意に分散させた骨材を走査型電子顕微鏡等で拡大撮影し、写真中からランダムに選んだ5000個以上の骨材をサンプルとし、サンプルの「長軸の長さ」/「短軸の長さ」の数平均を求め、その値をアスペクト比とする。
【0061】
骨材は、ジオポリマー粉体(A)以外のその他の材料を含んでもよい。ジオポリマー粉体(A)以外のその他の材料としては、マイカ、ウォラストナイト、チョーク、タルク、モロカイト、コージエライト、玄武岩、長石、ジルコン、グラファイト、及び、ホウ砂等のうちの1種又は2種以上を例示することができる。骨材中におけるジオポリマー粉体(A)以外のその他の材料の含有量は、例えば50質量%未満である。骨材に含有されるその他の材料としては、マイカが好ましい。マイカは、一般的に白雲母(muscovite、マスコバイト)と呼ばれるケイ酸塩鉱物であり、KAl(AlSi10)(F,OH)の化学組成で示される。なお、本発明において、「マイカ」の用語は、物理的及び化学的に類似しているシート状ケイ酸塩(フィロケイ酸塩)鉱物を包含する。マイカは、平面方向に成長した結晶面が層状に重なった構造をしており、平面に薄く剥がれる性質がある。そのため、マイカのアスペクト比は一般的に2を超えるものとなる。骨材にマイカを含む場合、マイカは、良好な気泡構造を形成する観点から、平均粒径が50μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0062】
本発明の製造方法は、以上に説明したアルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩と骨材とを用いて、ジオポリマー発泡体を製造する。以下、本発明の製造方法の一例について説明する。具体的には、本発明に係る製造方法は、例えば、第1工程と第2工程と第3工程とを含む。
【0063】
第1工程:アルミノケイ酸塩と、ジオポリマー粉体(A)を含む骨材とを含有する混合物と、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを混合して反応スラリーを得る工程。
第2工程:反応スラリーに発泡剤を添加することで発泡性組成物を得る工程。
第3工程:発泡性組成物からジオポリマー発泡体を得る工程。
【0064】
以下、各工程について詳述する。
【0065】
<1>第1工程
第1工程では、アルミノケイ酸塩と、ジオポリマー粉体(A)を含む骨材とを含有する混合物(以下「混合物β」と表記する)と、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と、粘度調製用の水とを混合することで、反応スラリーを得る。反応スラリーにおいて、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とが反応することで、ジオポリマーが形成される。
【0066】
第1工程における混合方法は、特に限定されず、例えば、室温(25℃)において公知の撹拌機(例えば、モルタルミキサー、可傾式ミキサー、トラックミキサー、2軸式ミキサー、オムニミキサー、パンミキサー、プラネタリーミキサー及びアイリッヒミキサー等)を用いて各材料を混合する。各材料をミキサー等に投入する順序は特に限定されない。
【0067】
ジオポリマー粉体(A)の添加量は、アルミノケイ酸塩100質量部に対して、100質量部以上300質量部以下である。ジオポリマー粉体(A)の添加量が少なすぎるとジオポリマー発泡体に割れが生じやすくなる。一方で、ジオポリマー粉体(A)の添加量が多すぎるとジオポリマー発泡体の圧縮強度が低下するという問題がある。ジオポリマー粉体(A)の添加量が上記の範囲内であると、ジオポリマー発泡体に割れが生じるのを抑制しつつ、圧縮強度を良好にすることができる。以上の観点からは、ジオポリマー粉体(A)の添加量は、アルミノケイ酸塩100質量部に対して、好ましくは120質量部以上270質量部以下であり、より好ましくは130質量部以上250質量部以下である。なお、骨材全体の添加量は、アルミノケイ酸塩100質量部に対して、例えば100質量部以上300質量部以下である。
【0068】
アルカリ金属ケイ酸塩の添加量は、発泡性組成物における各成分を均質に分散させる観点から、混合物β100質量部に対して、例えば5質量部以上100質量部以下であり、好ましくは10質量部以上80質量部以下である。アルカリ金属ケイ酸塩の添加量が以上の範囲内になるように、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液を混合物βに添加することが好ましい。
【0069】
第1工程において、反応スラリーのAlに対するSiのモル比Si/Alが1以上になるように、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とを混合することが好ましい。Si/Alのモル比がこの範囲であると、ジオポリマー発泡体中に交換性陽イオンを適度に存在させることができるとともに、良好な気泡構造を形成することができる。以上の観点から、モル比Si/Alは、1.1以上であることがより好ましく、1.2以上5.0以下であることがさらに好ましい。
【0070】
反応スラリーの粘度を調整するための水の添加量は、特に限定されないが、例えば、後述する第2工程で得られる発泡性組成物100質量%に対して、20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、25質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。水は、独立して添加してもよいし、アルカリ金属ケイ酸塩として水ガラスを使用する場合等には溶媒として添加してもよい。
【0071】
第1工程で得られる反応スラリーの粘度は、スピンドルの回転数6rpmで測定したときに100・s以下であることが好ましく、60rpmで測定したときに1Pa・s以上15Pa・s以下であることがより好ましい。反応スラリーの粘度が上記の範囲内であると、ジオポリマー粉体(A)が分散した反応スラリーにおいて剪断力が加えられることによる急激な粘度上昇が生じずに、気泡の形成が容易になる。
【0072】
反応スラリーの粘度は、粘度計(例えば、アタゴ製ATAGO VISCO、A3スピンドル装着)を使用して測定される。なお、粘度の測定は、アルミノケイ酸塩と骨材とを含む混合物βと、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液(またはアルカリ金属ケイ酸塩および水)とを混合した直後(加熱前)に行う。
【0073】
第1工程においては、アルミノケイ酸塩と骨材との混合物βの中に、その他の各種の添加剤を添加してもよい。その他の添加剤としては、気泡連通剤や補強繊維である。補強繊維は、ジオポリマー発泡体の強度向上やクラック防止を図る目的で添加することができる。補強繊維としては、例えば、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、カーボン繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウムウイスカー、アルミナ繊維、スチールウール、スラグウール等が挙げられる。補強繊維を添加することにより、ジオポリマー発泡体の強度を高めることができる。気泡連通剤としては、例えば、酵母や藻類などの微生物、タンパク質、界面活性剤などを使用することができる。
【0074】
その他の添加剤の添加量は、本発明の目的を達成できる範囲であれば、特に限定されず、アルミノケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩及びジオポリマー粉体(A)の合計100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0075】
第1工程で得られる反応スラリーは、固体成分が水に分散して存在している流動体を意味する。固体成分には、混合物βの粒子、骨材、および、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応により生じたジオポリマー等の粒子が含まれる。なお、反応スラリーにおいて、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とが完全に反応してジオポリマーが形成されている必要は無く、反応スラリーの一部として、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩とから形成されたジオポリマーが存在していればよい。反応スラリーの固体成分の割合は、30%以上80%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましい。スラリーの媒体は水を主成分とするものであるが、副成分として水溶性のアルコールなどを添加してもよい。
【0076】
<2>第2工程
第2工程では、第1工程で得られた反応スラリーに発泡剤を添加することで発泡性組成物を得る。発泡剤としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過ほう酸ナトリウム、非鉄金属粉末などを例示することができる。非鉄金属粉末としては、アルミニウム粉末を例示することができる。これらの中でも、過酸化水素、非鉄金属粉末の少なくともいずれかを用いることが好ましく、過酸化水素を用いることがより好ましい。
【0077】
発泡剤として過酸化水素を用いる場合には、過酸化水素水として用いるのが好ましい。この場合、過酸化水素水中の過酸化水素の濃度は、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。過酸化水素水中の過酸化水素の濃度が以上の範囲内であると、発泡性組成物を安定して発泡させることができ、良好な気泡構造を有する無機発泡体を得やすくできる。以上の観点から、過酸化水素水中の過酸化水素の濃度は20質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
【0078】
発泡剤の添加量は、製造するジオポリマー発泡体の設計に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、過酸化水素を発泡剤として用いる場合には、発泡剤の添加量は、発泡性組成物100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上3質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以上2質量%以下である。発泡剤の添加量が以上の範囲内であることで、発泡性組成物が十分に発泡し、優れた断熱性を有するジオポリマー発泡体を安定して得ることができる。
【0079】
<3>第3工程
第3工程では、発泡性組成物から多数の気泡を有するジオポリマー発泡体(成形体)を得る。具体的には、第3工程は、発泡性組成物を発泡させることでジオポリマー中に多数の気泡を形成した後に、当該発泡性組成物を固化することにより、多数の気泡を有するジオポリマー発泡体を得る。
【0080】
第3工程では、各種の成形方法により、第2工程で得られた発泡性組成物を所望の形状に成形することができる。第3工程で用いられる成形方法としては、例えば、成形型内に発泡性組成物を流し込み成形する注型法、成形型内で発泡性組成物をプレスして水分を吸引することにより脱水して成形する脱水成形法、および、押出機等を用いて押出機の下流側に設けられたダイスから発泡性組成物を押し出すとともに、発泡性組成物を発泡させつつ賦形する押出成形法等を採用することができる。
【0081】
発泡性組成物を発泡させる際の条件は、所望とするジオポリマー発泡体の物性に応じて、適宜に設定される。例えば、注型法により発泡性組成物を発泡させる場合、温度20~100℃(好ましくは50~80℃)で、保持持間30分~24時間の条件で、発泡性組成物を成形型内で反応及び発泡させることで、ジオポリマー発泡体を得ることができる。
【0082】
注型法を採用した場合には、第3工程において、発泡性組成物が発泡することにより形成される気泡は、発泡剤添加後から30分~1時間程度経過するまでの間に成長して大きくなる。なお、ジオポリマー発泡体は、通常、ジオポリマー構造に由来するメソ孔を有するが、このようなメソ孔と発泡剤により形成される多数の気泡とは区別される。
【0083】
本発明における製造方法においては、攪拌等により気泡を形成する物理的な発泡とは異なり、発泡剤の添加により徐々に気泡を成長させて発泡させるため、気泡の微細化が起こりにくく、気泡径のムラが少ない、均一な気泡構造を有するジオポリマー発泡体を得やすい。
【0084】
なお、ジオポリマー発泡体の製造方法は、第1工程と第2工程と第3工程とに加えて、その他の工程を含んでもよい。例えば、成形工程により得られたジオポリマー発泡体を焼成する工程を製造方法が含んでもよい。焼成後のジオポリマー発泡体は、高温時の寸法変化を防止することが可能である。
【0085】
本発明に係るジオポリマー発泡体の製造方法によれば、骨材としてジオポリマー粉体(A)を特定の添加量で用いることで、圧縮強度が良好なジオポリマーを製造することができる。
【0086】
<ジオポリマー発泡体>
本発明のジオポリマー発泡体は、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応物(ジオポリマー)と、骨材とを含む。具体的には、ジオポリマー発泡体は、体積が300cm以上であり、圧縮強さが0.25MPa以上であり、密度が100kg/m以上600kg/m以下であり、結晶化度が30%以上70%以下である。
【0087】
本発明に係るジオポリマー発泡体は、例えば上述した製造方法により製造される。ただし、本発明のジオポリマー発泡体には、アルミノケイ酸塩とアルカリ金属ケイ酸塩との反応物と骨材とを含み、体積が300cm以上であり、圧縮強さが0.25MPa以上であり、密度が100kg/m以上600kg/m以下であり、結晶化度が30%以上70%以下であれば、上述した製造方法以外で製造したジオポリマー発泡体も包含される。本発明により得られたジオポリマー発泡体は、焼成させることにより焼成ジオポリマー発泡体とすることもできる。
【0088】
以下、本発明に係るジオポリマー発泡体の特徴を説明する。
【0089】
[体積]
ジオポリマー発泡体の体積は、例えば300cm以上であり、好ましくは500cm以上であり、より好ましくは1000cm以上である。ジオポリマー発泡体の体積が上記を満足すると特に耐火断熱材として好適に用いることができる。
【0090】
[密度]
ジオポリマー発泡体の密度は、100kg/m以上600kg/m以下である。軽量性の観点からは、ジオポリマー発泡体の密度は、105kg/m以上500kg/m以下であることが好ましく、110kg/m以上400kg/m以下であることがより好ましい。
【0091】
密度の測定は、ジオポリマー発泡体の重量をジオポリマー発泡体の外径寸法で割ることにより求めることができる。
【0092】
[圧縮強さ]
ジオポリマー発泡体の圧縮強さは、0.25MPa以上であり、好ましくは0.4MPa以上であり、より好ましくは0.5MPa以上である。ジオポリマー発泡体の圧縮強さの上限は、特に限定されないが、例えば20MPa以下である。
【0093】
ジオポリマー発泡体の圧縮強さは、試験片(サイズ:圧縮面1×1cm、高さ3cm)に切り出して、荷重速度0.5mm/sにて、JIS R1608:2003ファインセラミックスの圧縮強さの試験方法に準拠して測定する。
【0094】
[平均気泡径]
ジオポリマー発泡体の平均気泡径は、0.1mm以上4mmであることが好ましい。平均気泡径を上記の範囲内にすることにより、強度に優れる気泡壁が形成され易くなる。以上の観点から、平均気泡径は、より好ましくは0.3mm以上3mm以下であり、さらに好ましくは0.5mm以上2mm以下である。
【0095】
ジオポリマーの平均気泡径の求め方は、以下の通りである。具体的に、試験片の断面について、拡大倍率20倍で画像データを測定装置(株式会社キーエンス製 デジタルマイクロスコープ VHX-7000)を用いて取得する。この画像データにおいて、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K-proを用いることにより個々の気泡の面積を測定する。得られた個々の気泡の面積を気泡が円であると換算し、更にその円に換算した場合の直径を求め、それらの値の各々を算術平均して求める。
【0096】
なお、気泡壁内に存在する気泡は、気泡径の測定からは除外して算出する。また、試験片の断面を作製した際に気泡壁が欠落したと考えられる気泡についても、上記気泡径の測定からは除外して算出する。
【0097】
画像データを取得するための詳細な設定条件は、以下の条件とする(モノクロ変換、平滑化フィルタ(3×3、8近傍、処理回数=1)、濃度ムラ補正(背景より明るい、大きさ=5)、NS法2値化(背景より暗い、鮮明度=9、感度=1、ノイズ除去、濃度範囲=0~255)、収縮(8近傍、処理回数=1)、特徴量(面積)による画像の選択(10000~∞μm2のみ選択、8近傍)、隣と接続されない膨張(8近傍、処理回数=3)、各円相当径計測(面積から計算、8近傍)))。
【0098】
[X線回折スペクトル]
<1>結晶化度
ジオポリマー発泡体の結晶化度は、30%以上70%以下である。結晶化度が以上の範囲内であることで、ジオポリマー発泡体の圧縮強さが良好になる。以上の観点から、結晶化度は、好ましくは50%以上70%以下であり、さらに好ましくは55%以上70%以下である。
【0099】
結晶化度は、X線回折装置を用いて、JIS K0131―1996に記載の方法(絶対法)に基づき求めることができる。結晶化度の算出には、以下の式(F)が用いられる。
T=(全結晶性部分からの回折X線強度)/(全体の回折X線強度)×100・・・(F)
【0100】
式(F)に示される通り、2θ=15~40°の範囲の全結晶性部分からの回折X線強度と、2θ=15~40°の範囲の全体の回折X線強度とを求め、全体の回折X線強度に対する全結晶性部分のX線回折強度の比から算出した。なお、全体の回折X線強度とは、2θ=15~40°の範囲における回折X線の積分強度を意味し、全結晶性部分からの回折X線強度とは、2θ=15~40°の範囲における結晶性部分の回折X線の積分強度を意味する。
【0101】
なお、ジオポリマー発泡体の結晶成分には、リューサイト結晶成分に加えて、カリオフィライト結晶成分も含まれる場合がある。本発明の効果が達成できる範囲内であれば、ジオポリマー発泡体にカリオフィライト結晶が含まれていてもよい。
【0102】
<2>リューサイトピーク面積比(D(geo)/D(pur))
ジオポリマー発泡体のX線回折スペクトルにおける、リューサイト結晶に由来するピークの面積が下記式(2)を満足することが好ましい。
0.45≧D(geo)/D(pur)≧0.1・・・(2)
【0103】
(geo)は、ジオポリマー発泡体のX線回折スペクトルにおける、リューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積であり、D(pur)は、リューサイト純物質のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積である。
【0104】
ジオポリマー発泡体の強度をさらに良好にするという観点からは、0.43≧D(geo)/D(pur)≧0.13であることがより好ましく、0.40≧D(geo)/D(pur)≧0.15であることがさらに好ましい。
【0105】
(geo)/D(pur)は、X線回折装置(例えば理学電機株式会社 RINT2550H(ローターフレックス型))を用いて、JIS K0131-1996に記載の方法(絶対法)に基づき求めることができる。
【0106】
[成分]
本発明に係るジオポリマー発泡体は、ジオポリマーを基材とする。具体的には、ジオポリマー発泡体におけるジオポリマーの含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。なお、ジオポリマー発泡体におけるジオポリマーの含有量には、後述する骨材として用いられるジオポリマー粉体の含有量は含まれない。
【0107】
ジオポリマー発泡体における骨材の含有量は、好ましくは40質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは42質量%以上55質量%以下である。
【0108】
骨材としては、例えば、ジオポリマー粉体、マイカ、ウォラストナイト、チョーク、タルク、モロカイト、コージエライト、玄武岩、長石、ジルコン、グラファイト、及び、ホウ砂等の1種以上が使用でき、これらの中でもジオポリマー粉体を含むことが好ましい。ジオポリマー粉体としては、上述したジオポリマー粉体(A)が好ましく用いられるが、ジオポリマー粉体(A)には限定されない。
【0109】
骨材に用いられるジオポリマー粉体は、X線回折スペクトルにおける、リューサイト結晶に由来するピークの面積が下記式(3)を満足することが好ましい。
3(geo)/D(pur)≧0.5・・・(3)
(D3(geo)は、ジオポリマー粉体のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積であり、D(pur)は、リューサイト純物質のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積である)
【0110】
3(geo)/D(pur)≧0.6であることがより好ましく、D3(geo)/D(pur)≧0.7であることがさらに好ましい。なお、D3(geo)/D(pur)の上限は、特に限定されないが、概ね0.9≧D3(geo)/D(pur)である。
【0111】
また、ジオポリマー粉体として、回収ジオポリマー粉体を用いてもよい。特に、回収ジオポリマー粉体として、上記式(3)を満足するものが好ましい。回収ジオポリマー粉体は、ジオポリマー成形体の製造時における端材や屑であってもよいし、元々粒状のジオポリマーであってもよい。また、回収ジオポリマー粉体は、発泡しているものであっても無発泡であるものでもよい。
【0112】
骨材としてジオポリマー粉体を用いる場合には、ジオポリマー発泡体中のジオポリマー粉体の含有量は、好ましくは40質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは42質量%以上55質量%以下である。
【0113】
なお、ジオポリマー発泡体には、その他の各種の添加剤(例えば気泡連通剤や補強繊維)が含有されてもよい。
【0114】
以上に説明したジオポリマー発泡体は、耐火断熱材として好適に用いられる。ただし、ジオポリマー発泡体の用途は、耐火断熱材には限定されない。
【実施例0115】
本発明を実施例とともに詳述する。ただし、本発明は実施例には限定されない。
【0116】
実施例および比較例は、以下の通り、製造した。原料の配合は、表1に示す通りである。
【0117】
[原料]
アルミノケイ酸塩:メタカオリン(兵庫クレー製:HC-K―1300W、結晶化度0%)
アルカリ金属ケイ酸塩:ケイ酸カリウム(日本化学工業製:2K珪酸カリ)
発泡核剤:タルク(松村産業製:Hi-filler5000PJS)
発泡剤:過酸化水素水(富士フィルム和光純薬製:過酸化水素濃度30質量%)
骨材:
ジオポリマー粉体A(略称:GP粉体A):後述する製造方法により得た平均粒子径27μm、比表面積0.4m/g、アスペクト比1.5のジオポリマー粉体
ジオポリマー粉体B(略称:GP粉体B):後述する製造方法により得た平均粒子径49μm、比表面積0.4m/g、アスペクト比1.5のジオポリマー粉体
ジオポリマー粉体C(略称:GP粉体C):後述する製造方法により得た平均粒子径118μm、比表面積0.3m/g、アスペクト比1.5のジオポリマー粉体
ジオポリマー粉体D(略称:GP粉体D):後述する製造方法により得た平均粒子径364μm、比表面積0.1m/g、アスペクト比1.5のジオポリマー粉体
ジオポリマー粉体E(略称:GP粉体E):後述する製造方法により得た平均粒子径85μm、比表面積0.4m/g、アスペクト比1.5のジオポリマー粉体
ジオポリマー粉体F(略称:GP粉体F):後述する製造方法により得た平均粒子径50μm、比表面積1m/g、アスペクト比1.5のジオポリマー粉体
ジオポリマー粉体G(略称:GP粉体G):後述する製造方法により得た平均粒子径85μm、比表面積30m/g、アスペクト比1.5のジオポリマー粉体
マイカ(セイシン企業製: C100M)、平均粒子径78μm、比表面積1m/g、アスペクト比2.3
【0118】
骨材に用いたジオポリマー粉体A~Dは、以下の通りに製造した。
【0119】
まず、メタカオリンと、骨材としてマイカを混合し、粉体原料混合物を形成した。また、ケイ酸カリウム、水酸化カリウム、蒸留水を混合し、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液(濃度37%、pH=13~14)を作製した。骨材は、アルミノケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩及び骨材の合計100質量%に対して35.6質量%となるように配合した。
【0120】
次に、粉体原料混合物100重量部に対してアルカリ金属ケイ酸塩が104部となるように混合し、撹拌速度60rpmで攪拌し、反応スラリーを形成した。そして、形成した反応スラリーに、発泡剤(30%過酸化水素水)を反応スラリー100重量部に対して1.5部添加し、攪拌ベラを用いて、撹拌速度60rpmで1分間攪拌することで発泡性組成物を形成した。その後、型枠(成形型)内に発泡性組成物を注入して成形型を密閉し、温度60℃で成形型を1時間保持することで、ジオポリマー発泡体を得た。その後、成形型を型開きし、形成されたジオポリマー発泡体を取り出し、さらに60℃で約1日保持することで乾燥させた。
【0121】
次に、作製したジオポリマー発泡体を焼成炉にて、常温から1200℃までは、昇温速度5℃/分で、昇温時間4時間かけて加熱した。その後、1200℃で温度を1時間保持した後、5時間焼成を行った。焼成後、1200℃から常温になるまで、加熱を中止して自然放冷(24時間)した。その後、ハイスピードミル(日陶科学ALG-200WD)を用いて粉砕し、目開きの異なるふるいを使用して粒径を分けることにより、異なる粒径の焼成ジオポリマー粉体A~Dを得た。
【0122】
骨材に用いたジオポリマー粉体Eは、骨材(マイカ)を使用しなかったこと以外はジオポリマー粉体A~Dと同様にして製造した。
【0123】
骨材に用いたジオポリマー粉体Fは、焼成を1000℃で行ったこと以外はジオポリマー粉体A~Dと同様にして製造した。
【0124】
骨材に用いたジオポリマー粉体Gは、焼成を行わなかったこと以外はジオポリマー粉体A~Dと同様にして製造した。
【0125】
なお、実施例7は、骨材としてGP粉体B/マイカ(セイシン企業製:C100M)=80重量%/20重量%、GP粉体Bの添加量として114重量部となるように添加した。実施例12は、GP粉体B/GP粉体G=50重量%/50重量%を使用した。
【0126】
そして、骨材について、表1の「リューサイトピーク面積比」「結晶化度」「比表面積」「平均粒子径」を以下の通りに測定した。その結果を表1に示す。なお、表1の骨材における「配合量」は、アルミノケイ酸塩100質量部に対しての値である。
【0127】
<1>リューサイトピーク面積比(D(geo)/D(pur))
リューサイトピーク面積比としてD(geo)/D(pur)を求めた。D(geo)は、ジオポリマー粉体(A)のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積であり、D(pur)は、リューサイト純物質(株式会社ニチカ製、製品名 高純度鉱物試料 白榴石、結晶成分100%)のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積である。なお、2θ=27.3°に位置するピークとは、そのピークトップが27.3°となっていなくても、ピークが27.3°を含んでいればよい。
【0128】
<2>結晶化度
結晶化度は、JIS K0131-1996に記載の方法(絶対法)に基づき求めた。例えば、二次元検出器を有するX線解析装置(例えば、株式会社リガク製、Rint2550)を使用し、室温にて2θ範囲を15~40°に設定し、アルミノケイ酸塩の粉末に対してX線回折測定を行うことで、結晶化度を測定した。なお、結晶化度は、X線回折測定により測定される回折パターンに対してプロファイルフィッティングを行い、得られたX線回折から、全ピーク面積([結晶質成分のピーク面積]+[非晶質成分のハローパターン面積])に対する結晶質成分のピーク面積の比を算出することで求めた。
【0129】
<3>比表面積
骨材の比表面積は、JIS R1626-1996に記載のBET法(窒素吸着法)に基づき測定した。具体的には、無作為に選択したジオポリマー粉体(A)のサンプル約2gを4連式比表面積・細孔分布測定装置NOVA-TOUCH型(Quantachrome製)を用いて、窒素吸着量からBET多点法を用いて比表面積を算出した。以上の操作を異なるサンプルについて3回行い、算術平均した値を、ジオポリマー粉体(A)の比表面積とした。
【0130】
<4>平均粒子径
ジオポリマー粉体の平均粒子径は、粒子径分布測定装置(HORIBA製:Laser Scattering Particle Size Distribution Partica LA-960)を用いて、JIS Z 8825に基づき、レーザー回折散乱法により測定した。具体的には、レーザー回折散乱法によって測定される体積基準の粒度分布をもとに、粒子の形状を球として仮定して個数基準の粒度分布に換算することにより、個数基準の粒度分布を得た。そして、この個数基準の粒度分布に基づく粒子径を算術平均することにより個数基準の算術平均粒子径を求め、この値を本発明における平均粒径とした。なお、上記平均粒径は、粒子と同体積を有する仮想球の直径を意味する。
【0131】
<5>アスペクト比
骨材のアスペクト比は、任意に分散させた骨材を走査型電子顕微鏡で拡大撮影し、写真中からランダムに選んだ5000~6000個の骨材をサンプルとし、サンプルの「長軸の長さ」/「短軸の長さ」の数平均を求め、その値をアスペクト比とした。
【0132】
[製造方法]
まず、アルミノケイ酸塩(メタカオリン)と骨材とを表1に示す割合(骨材/メタカオリン)で混合して混合物βを形成した。また、ケイ酸カリウム、水酸化カリウム、蒸留水を混合することで、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液を調製した。
【0133】
次に、混合物βとアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを表1に示す割合で混合し、必要に応じ蒸留水を添加し、撹拌速度60rpmで攪拌することにより、Si/Al=1.4、スピンドル回転数60rpm時の粘度1~15Pa・sの反応スラリーを調製し、次に、反応スラリーに、表1に示す割合で発泡剤(過酸化水素水)を添加して、攪拌ベラを用いて、撹拌速度60rpmで1分間攪拌することで発泡性組成物を調製した。
【0134】
そして、直径90mm、高さ60mmの円柱状の成形空間を有する型枠(成形型)内に発泡性組成物を注入して成形型を密閉し、オーブンにて温度60℃で1時間保持することで、発泡性組成物を反応させるとともに発泡、形成させて発泡ジオポリマーを得た。この際、成形型内の圧力は大気圧で、約30分で発泡は完了し、約1時間で固化が完了した。その後、成形型を型開きし、形成されたジオポリマー発泡体を取り出し、さらに60℃で約1日保持することで乾燥させた。
【0135】
以下の通り、反応スラリーと、得られたジオポリマー発泡体とについて、評価を行った。表1にその結果を示す。
【0136】
[反応スラリー]
60rpmと6rpmとでそれぞれ撹拌したときの反応スラリーの粘度(Pa・s)を測定した。そして、以下の評価基準に基づき評価した。なお、反応スラリーの粘度は、粘度計(アタゴ製ATAGO VISCO)を使用して測定した。表1において「測定不可」となっているものは、反応スラリーの粘度が高すぎて粘度を測定できなかった。
〇:60rpm時スラリー粘度(Pa・s)が15Pa・s以下であった。
△:60rpm時スラリー粘度(Pa・s)が15Pa・s超であり、6rpm時スラリー粘度(Pa・s)が100Pa・s以下であった。
った。
×:60rpm時スラリー粘度(Pa・s)が15Pa・s超であり、6rpm時スラリー粘度(Pa・s)が100Pa・s超であった。
【0137】
[ジオポリマー発泡体]
<外観>
ジオポリマー発泡体を目視で確認し、以下の基準で評価した。
〇:割れ、欠けがない
×:割れ、欠けがある
【0138】
<リューサイトピーク面積比(D(geo)/D(pur))>
リューサイトピーク面積比(D(geo)/D(pur))をX線回測定により求めた。求めた。D(geo)は、ジオポリマー発泡体のX線回折スペクトルにおける、リューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積であり、D(pur)は、リューサイト純物質のX線回折スペクトルにおけるリューサイト結晶に由来する2θ=27.3°に位置するピークの面積である。
【0139】
(geo)/D(pur)は、X線回折装置(理学電機株式会社 RINT2550H(ローターフレックス型))を用いて、JIS K0131-1996に記載の方法(絶対法)に基づき求めた。
【0140】
<結晶化度>
ジオポリマー発泡体の結晶化度を求めた。結晶化度は、X線回折装置(株式会社リガク製、SmartLab)を用いて、JIS K0131―1996に記載の方法(絶対法)に基づき求めた。結晶化度の算出には、以下の式(F)を用いた。
T=(全結晶性部分からの回折X線強度)/(全体の回折X線強度)×100・・・(F)
【0141】
2θ=15~40°の範囲の全結晶性部分からの回折X線強度と、2θ=15~40°の範囲の全体の回折X線強度とを求め、全体の回折X線強度に対する全結晶性部分のX線回折強度の比から算出した。なお、全体の回折X線強度とは、2θ=15~40°の範囲における回折X線の積分強度を意味し、全結晶性部分からの回折X線強度とは、2θ=15~40°の範囲における結晶性部分の回折X線の積分強度を意味する。
【0142】
<密度>
ジオポリマー発泡体の密度は、ジオポリマー発泡体の重量をジオポリマー発泡体の外径寸法で割ることにより求めた。
【0143】
<平均気泡径>
平均気泡径は、試験片の断面について、測定装置(株式会社キーエンス製 デジタルマイクロスコープ VHX-7000)を用いて拡大倍率20倍で取得した画像データから求めた。具体的には、この画像データにおいて、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K-proを用いることにより個々の気泡の面積を測定した。得られた個々の気泡の面積を気泡が円であると換算し、更にその円に換算した場合の直径を求め、それらの値の各々を算術平均して求めた。
【0144】
なお、気泡壁内に存在する気泡は、気泡径の測定からは除外して算出した。また、試験片の断面を作製した際に気泡壁が欠落したと考えられる気泡についても、上記気泡径の測定からは除外して算出した。
【0145】
画像データを取得するための詳細な設定条件は、以下の条件とする(モノクロ変換、平滑化フィルタ(3×3、8近傍、処理回数=1)、濃度ムラ補正(背景より明るい、大きさ=5)、NS法2値化(背景より暗い、鮮明度=9、感度=1、ノイズ除去、濃度範囲=0~255)、収縮(8近傍、処理回数=1)、特徴量(面積)による画像の選択(10000~∞μm2のみ選択、8近傍)、隣と接続されない膨張(8近傍、処理回数=3)、各円相当径計測(面積から計算、8近傍)))。
【0146】
<圧縮強さ>
圧縮強さは、試験片(サイズ:圧縮面1×1cm、高さ3cm)に切り出して、荷重速度0.5mm/sにて、JIS R1608:2003ファインセラミックスの圧縮強さの試験方法に準拠して測定した。
【0147】
【表1】
【0148】
実施例1-12では、特定のジオポリマー粉体を用いたことで、比較例1-5と比較して、圧縮強度が良好(0.25MPa以上)であることが確認できた。