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特開2024-84058発電システム、及び発電システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084058
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】発電システム、及び発電システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 110
H02J3/38 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198225
(22)【出願日】2022-12-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、環境省、CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業(業務用・産業用純水素燃料電池(PEFC)の低コスト化及びシステム化開発・実証)委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊介
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HA06
5G066HA11
5G066HB04
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB09
(57)【要約】
【課題】マスタ機による能動的方法により電力系統の異常、或いは単独運転を検出する場合に、不検出期間の発生を抑制可能である発電システム、及び発電システムの制御方法を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る発電システムは、電力系統へ連系する複数の発電装置と、主制御部と、を備える。発電システムは、電力系統へ連系する。複数の発電装置それぞれは、電力系統の異常を検出するために能動的に外乱を発生するマスタ機と、マスタ機の出力信号に基づき動作するスレーブ機とのいずれとしても動作可能な単独運転防止部を有する。主制御部は、複数の発電装置それぞれの運転情報を用いた所定の判定基準に基づき、複数の発電装置それぞれが有する単独運転防止部のうちの一つをマスタ機とし、他の単独運転防止部を、スレーブ機として動作させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統へ連系する複数の発電装置と、
主制御部と、を備え、
前記複数の発電装置それぞれは、前記電力系統の異常を検出するために能動的に外乱を発生するマスタ機と、マスタ機の出力信号に基づき動作するスレーブ機とのいずれとしても動作可能であり、
前記主制御部は、前記複数の発電装置それぞれの運転情報を用いた所定の判定基準に基づき、前記複数の発電装置のうちの一つを前記マスタ機とし、他の発電装置を、前記スレーブ機として動作させる、
発電システム。
【請求項2】
前記主制御部は、前記複数の発電装置それぞれの累積運転時間、累積発電電力、及び発電装置が有する発電部の電圧の少なくともいずれかに基づき、前記複数の発電装置のうちの少なくとも一つを前記マスタ機として、設定する、請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記主制御部は、累積運転時間が短い発電装置を優先的に発電させる制御において、前記複数の発電装置のうちの累積運転時間が最も短い発電装置を前記マスタ機として、設定する、請求項2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記主制御部は、累積発電電力が小さい発電装置を優先的に発電させる制御において、前記複数の発電装置のうちの累積発電電力が最も小さい発電装置を前記マスタ機として、設定する、請求項2に記載の発電システム。
【請求項5】
前記複数の発電装置のそれぞれは、発電部として燃料電池を有しており、
前記主制御部は、前記燃料電池の電圧が高い発電装置を優先的に発電させる制御において、前記燃料電池の電圧が最も高い発電装置を前記マスタ機として、設定する、請求項4に記載の発電システム。
【請求項6】
前記主制御部は、前記複数の発電装置の累積運転時間、累積発電電力、及び発電装置が有する発電部の電圧の少なくともいずれかに基づき、前記単独運転防止部それぞれの優先順位を設定し、前記マスタ機が停止する場合に、停止前に前記優先順位に従い定められた発電装置を次のマスタ機とする、請求項1に記載の発電システム。
【請求項7】
前記主制御部は、前記複数の発電装置の累積運転時間、累積発電電力、及び発電装置が有する発電部の電圧の少なくともいずれかに基づき、優先順位を前記複数の発電装置のそれぞれに設定し、前記主制御部の制御によらずに前記マスタ機が停止した場合に、前記優先順位に従い定められた発電装置を次のマスタ機とする、請求項1に記載の発電システム。
【請求項8】
前記複数の発電装置それぞれは、前記電力系統の異常を検出するために能動的に外乱を発生するマスタ機と、マスタ機の出力信号に基づき動作するスレーブ機とのいずれとしても動作可能である単独運転防止部を有し、
前記マスタ機としての単独運転防止部は、所定の信号を他の前記スレーブ機としての単独運転防止部に出力しており、前記スレーブ機としての単独運転防止部は、前記所定の信号が停止した場合に、前記優先順位に従い定められた単独運転防止部が自律的に次のマスタ機となる、請求項7に記載の発電システム。
【請求項9】
前記主制御部は、前記複数の発電装置の少なくとも1つに構成され、
前記複数の発電装置のそれぞれは、
更に電力を発電する発電部
を有し、
前記単独運転防止部の出力信号に従い、前記発電部から前記電力系統への電力の供給を停止させる、請求項1に記載の発電システム。
【請求項10】
電力系統へ連系する複数の発電装置を備える発電システムの制御方法であって、
前記複数の発電装置のそれぞれは、前記電力系統の異常を検出するために能動的に外乱を発生するマスタ機と、マスタ機の出力信号にしたがい動作するスレーブ機とのいずれとしても動作可能であり、
前記複数の発電装置それぞれの運転情報を用いた所定の判定基準に基づき、前記複数の発電装置のうちの一つを前記マスタ機とし、他の発電装置を、前記スレーブ機として動作させる、発電システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発電システム、及び発電システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電装置を電力系統に接続する場合、パワーコンディショナーは、単独運転を防止するための単独運転防止装置を備えている。このような単独運転防止装置の単独運転の検出方法として能動的方法が知られている。また、複数の発電装置が並列運転されている場合に、能動的方法の相互干渉を抑制するために、複数の発電装置の中の一つの発電装置をマスタ機として、単独運転を検出することが行われる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3876562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、マスタ機が故障した場合や、マスタ機としての発電装置が発電を停止する場合などに、単独運転の検出が遅れる可能性がある。本発明が解決しようとする課題は、マスタ機による能動的方法により電力系統の異常、或いは単独運転を検出する場合に、不検出期間の発生を抑制可能である発電システム、及び発電システムの制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る発電システムは、電力系統へ連系する複数の発電装置と、主制御部と、を備える。発電システムは、電力系統へ連系する。複数の発電装置それぞれは、電力系統の異常を検出するために能動的に外乱を発生するマスタ機と、マスタ機の出力信号に基づき動作するスレーブ機とのいずれとしても動作可能な単独運転防止部を有する。主制御部は、複数の発電装置それぞれの運転情報を用いた所定の判定基準に基づき、複数の発電装置のうちの一つをマスタ機とし、他の発電装置を、スレーブ機として動作させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る発電システムの概略的な全体構成例を示すブロック図。
図2】発電装置のより詳細な構成例を示すブロック図。
図3】制御装置の構成例を示すブロック図。
図4】発電システムにおける起動時の処理例を示すフローチャート。
図5】マスタ機とした単独運転防止部の停止時の処理例を示すフローチャート。
図6】マスタ機が予定外に停止する場合の処理例を示すフローチャート。
図7】第1実施形態の変形例に係る発電システムの構成を示すブロック図。
【効果】
【0007】
マスタ機により電力系統の異常、或いは単独運転を検出する場合に、不検出期間の発生を抑制可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る発電システム、及び発電システムの制御方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る発電システム1の概略的な全体構成例を示すブロック図である。図1に示すように発電システム1は、複数の発電装置10により発電を行い、商用の電力系統Pgに配電系統dsを介して、電力供給が可能なシステムである。より具体的には、この発電システム1は、複数の発電装置10と、制御装置20と、計測計30と、上位制御装置40と、を備える。これら複数の発電装置10は、それぞれが単独運転を防止することが可能な単独運転検出機能を有している。図1には、更に負荷60が図示されている。
【0010】
発電装置10は、配電系統dsを介して、電力系統Pgへの電力供給が可能である。制御装置20は、例えばEMS(Energy Management System)であり、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、例えば複数の発電装置10の総発電量を制御する。制御装置20は、例えば発電システム1における総発電量の情報を含む電力指令信号を複数の発電装置10に出力する。また、制御装置20は、複数の発電装置10のなかのマスタ機を設定可能である。さらにまた、複数の発電装置10のなかの他の発電装置10をスレーブ機として設定可能である。すなわち、複数の発電装置10それぞれは、電力系統Pgの異常を検出するために能動的に外乱を発生するマスタ機と、マスタ機の出力信号に基づき動作するスレーブ機とのいずれとしても動作可能である。制御装置20は、複数の発電装置10それぞれの運転情報を用いた所定の判定基準に基づき、複数の発電装置10のうちの一つをマスタ機とし、他の発電装置10を、スレーブ機として動作させる。なお、本実施形態では、制御装置20を複数の発電装置10の外部に構成しているが、これに限定されない。例えば、制御装置20を複数の発電装置10のうちの少なくとも1つの装置内に構成することも可能である。
【0011】
計測計30は、例えば電力系統Pgへ供給される電力を計測する。そして、計測計30の計測値は、例えば複数の発電装置10、及び制御装置20に供給される。
【0012】
上位制御装置40は、例えばEMS(Energy Management System)であり、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、複数の制御装置20を制御可能である。例えば、1つの制御装置20が複数の発電装置10を制御し、更に上位制御装置40が複数の制御装置20それぞれを制御可能に構成される。
【0013】
図2は、第1実施形態に係る発電装置10のより詳細な構成例を示すブロック図である。発電装置10は、発電部102と、パワーコンディショナー104と、上位指令送受信部106と、制御部108と有する。更に、パワーコンディショナー104は、インバータ回路104aと、単独運転防止部104bと、解列部104cとを有する。
【0014】
発電部102は、制御部108の制御に従い、電力を発電する。発電部102は、例えば燃料電池であり、水素を電気エネルギーに変換する。発電部102は発電した電力(直流電力)を、パワーコンディショナー104に出力する。なお、本実施形態では、発電装置10は燃料電池であるが、これに限定されない。発電部102は、例えば蓄電池、太陽電池、風力発電装置などでもよい。
【0015】
パワーコンディショナー104は、単独運転検出機能を有し、発電部102が発電した電力(直流電力)を交流電力に変換する。そして、変換した交流電力を電力系統Pgに出力する。すなわち、パワーコンディショナー104のインバータ回路104aは、制御部108の制御に従い、発電部102から入力される直流電力を電力系統Pgと同期がとれた交流電力に変換する。単独運転防止部104bは、マスタ機又はスレーブ機として、電力系統Pgの停電などの異常を検出する。なお、単独運転防止部104bの詳細は、後述する。
【0016】
解列部104cは、単独運転防止部104b、制御部108、制御装置20などの制御により、発電装置10を電力系統Pgから解列させることが可能である。なお、発電装置10は、分散型電源と称する場合がある。
【0017】
上位指令送受信部106は、制御装置20と、制御部108との間の制御信号などを送受信する。制御部108は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、上位指令送受信部106を介して、例えば制御装置20から指示される総発電量に対応して発電装置10ごとに予め定められた発電量を発電部102に発電させる制御を行う。
【0018】
制御部108は、解列部104cを制御して、パワーコンディショナー104を電力系統Pgから電気的に切り離すことが可能である。また、制御部108は、パワーコンディショナー104のインバータ回路104aから出力される交流電圧を昇圧(または降圧)する制御を行う。さらにまた、制御部108は、単独運転防止部104bに対する制御が可能である。
【0019】
ここで、単独運転防止部104bの詳細を説明する。上述のように、単独運転防止部104bは、マスタ機として、電力系統Pgの停電などの異常を検出する。マスタ機として動作する発電装置10の単独運転防止部104bをマスタ機として動作させ、スレーブ機として動作する発電装置10の単独運転防止部104bをスレーブ機として動作させる。すなわち、マスタ機として動作させる単独運転防止部104bをマスタ機と称し、スレーブ機として動作させる単独運転防止部104bをスレーブ機と称する。
【0020】
単独運転防止部104bのマスタ機は、能動的方法(能動式)により発電装置10の単独運転の検出を行うことが可能である。この単独運転防止部104bは、例えば停電などの異常を検出した場合に、電力系統Pgへの電力供給を停止することが可能である。例えば、単独運転防止部104bのマスタ機は、解列部104cを制御して、例えば0.5秒以上1秒以内にパワーコンディショナー104を電力系統Pgから切り離すことが可能である。すなわち、単独運転防止部104bは、単独運転状態になった場合に、解列部104cにより、発電装置10を解列させることが可能である。なお、単独運転防止部104bは、単独運転防止装置と称する場合がある。
【0021】
このような能動式による検出方法として、例えば周波数シフト方式、スリップモード周波数シフト方式、無効電力変動方式、及びQCモード周波数シフト方式のいずれかを用いることが可能である。すなわち、マスタ機としての単独運転防止部104bは、配電系統dsに対して、能動的に外乱を発生する機能を有する。なお、単独運転とは、電力系統Pgが停電などの異常により電力供給を停止している場合、或いは、電力系統Pgの開閉装置などが解放した場合に、発電部102が電力系統Pgから解列されずに電力の供給を継続可能な状態にあることを称する。また、能動式は、周波数シフト方式、スリップモード周波数シフト方式、無効電力変動方式、及びQCモード周波数シフト方式のいずれかに限定されず、他の能動式を用いてもよい。なお、本実施形態では、能動式を用いて、電力系統の異常、或いは単独運転を検出する単独運転防止部104bを上述のマスタ機とする。一方で、マスタ機の出力信号に従い動作する単独運転防止部104bを上述のスレーブ機とする。
【0022】
また、単独運転防止部104bは、スレーブ機として動作中には、マスタ機の出力信号に従い、解列部104cを制御して、パワーコンディショナー104を電力系統Pgから切り離すことが可能である。このスレーブ機としての単独運転防止部104bも、例えば停電が発生して単独運転状態になった場合に、例えば0.5秒以上1秒以内にパワーコンディショナー104を電力系統Pgから切り離すことが可能である。このように、単独運転防止部104bは、電力系統Pgの異常を検出するために能動的に外乱を発生するマスタ機と、マスタ機の出力信号に基づき動作するスレーブ機とのいずれとしても動作可能である。
【0023】
図3は、制御装置20の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、制御装置20は、記憶部200と、主制御部202とを有する。
【0024】
記憶部200は、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク等により実現される。記憶部200は、例えば、各発電装置10の運転情報として、動作状態を記憶している。この記憶部200は、例えば発電装置10の上位指令送受信部を介して、発電装置10ごとの運転情報を記憶している。なお、記憶部を各発電装置10に備えて、発電装置10ごとの運転情報を記憶してもよい。この場合には、主制御部202は、各発電装置10の記憶部から運転情報を逐次取得し、記憶部200に記憶させることが可能である。
【0025】
主制御部202は、上位制御装置40と連携して、発電システム1全体を制御する。主制御部202は、発電装置10の上位指令送受信部106を介して、パワーコンディショナー104の駆動情報を記憶部200に記憶させる。より具体的には、主制御部202は、発電装置10ごとの累積運転時間、累積発電電力、及び燃料電池の電圧に関する情報を取得し、各発電装置10と関連付けて記憶部200に記憶させる。
【0026】
主制御部202は、各発電装置10の運転情報を用いて、各発電装置10の単独運転防止部104bのなかからマスタ機とする発電装置10を判定する。主制御部202は、主制御部202の判定情報に基づき、発電装置10のなかからマスタ機を1台設定する。そして、主制御部202は、残りの発電装置10をスレーブ機として設定する。マスタ機として設定された発電装置10の単独運転防止部104bがマスタ機として動作する。一方で、スレーブ機として設定された発電装置10の単独運転防止部104bがスレーブ機として動作する。このように、本実施形態では、発電装置10がマスタ機として設定された場合には、マスタ機として設定された発電装置10の単独運転防止部104bがマスタ機として動作することとする。一方で、発電装置10がスレーブ機として設定された場合には、スレーブ機として設定された発電装置10の単独運転防止部104bがスレーブ機として動作することとする。
【0027】
また、主制御部202は、各発電装置10の運転情報を用いて、各発電装置10のマスタ機とする優先順位を判定する。この判定順位は、マスタ機として使用している単独運転防止部104bを有する発電装置10が停止する場合に、次にマスタ機として使用する順位である。すなわち、主制御部202は、単独運転防止部104bを有する発電装置10が停止する場合に、判定順位に従い、次にマスタ機として使用する発電装置10を設定する。また、主制御部202は、マスタ機として使用している発電装置10が何らかの原因により、主制御部202の制御によらず停止した場合にも、この判定順位により、次にマスタ機として使用する発電装置10を設定する。これにより、より短時間でマスタ機を変更可能となる。
【0028】
主制御部202は、例えば3つの判定基準を有する。主制御部202は、例えば3つの判定基準それぞれ、単独で判定してもよいし、或いは、複合的に判定してもよい。
【0029】
主制御部202は、1番目の判定基準として、発電部102の累積運転時間に基づき、マスタ機とする単独運転防止部104bを判定する。例えば、主制御部202は、発電部102の累積運転時間が最も短い発電装置10をマスタ機とする判定を行う。発電部102の累積運転時間が最も短い発電装置10は、最も故障する可能性が低いので、より継続的、且つより安定して単独運転防止部104bを使用可能となる。これにより、マスタ機により電力系統の異常を検出する場合に、不検出期間の発生が抑制可能となる。
【0030】
また、主制御部202は、2番目の判定基準として、発電部102の累積発電電力に基づき、マスタ機とする単独運転防止部104bを判定する。例えば、主制御部202は、発電部102の累積発電電力が最も小さい発電装置10をマスタ機とする判定を行う。発電部102の累積発電電力が最も小さい発電装置10は、最も寿命が長くなる可能性が高いので、より継続的、且つより安定して単独運転防止部104bを使用可能となる。これにより、マスタ機により電力系統の異常を検出する場合に、不検出期間の発生が抑制可能となる。
【0031】
さらにまた、主制御部202は、3番目の判定基準として、発電部102である燃料電池の電圧に基づき、マスタ機とする単独運転防止部104bを判定する。例えば、主制御部202は、発電部102の電圧が高いが最も高い発電装置10の単独運転防止部104bをマスタ機とする判定を行う。発電部102の電圧が高いが最も高い発電装置10は、発電状況がよく、最も寿命が長くなる可能性が高いので、より継続的、且つより安定して単独運転防止部104bを使用可能となる。このように、制御装置20の主制御部202は、各発電部102の運転情報を用いて、マスタ機とする単独運転防止部104bを設定するので、より安定した発電装置10の単独運転防止部104bをマスタ機とすることが可能となる。これにより、マスタ機により電力系統の異常を検出する場合に、不検出期間の発生が抑制可能となる。
【0032】
図4は、本実施形態に係る発電システム1における起動時の処理例を示すフローチャートである。ここでは、3つの判定基準のうちの一つが予め設定されいる場合について説明する。
【0033】
図4に示すように、まず、主制御部202は、起動前に各発電装置10の運転情報を記憶部200から取得する(ステップS100)。続けて、主制御部202は、判定基準に従い、複数の発電装置10の中から、マスタ機とする発電装置10を判定する(ステップS102)。なお、マスタ機は、動作予定の発電装置10の中から設定される。
【0034】
次に、主制御部202は、主制御部202の判定情報に基づき、各発電装置10のなかからマスタ機を1台設定すると共に、マスタ機とする発電装置10の単独運転防止部104bをマスタ機として設定する。続けて、主制御部202は、残りの発電装置10をスレーブ機として設定すると共に、スレーブ機とする発電装置10の単独運転防止部104bをスレーブ機として設定する。(ステップS104)。
【0035】
次に、主制御部202は、マスタ機による単独運転の検出を開始する(ステップS106)。このように、制御装置20の主制御部202は、各発電部102の運転情報を用いて、マスタ機とする発電装置10を設定すると共に、マスタ機とする発電装置10の単独運転防止部104bをマスタ機として設定する。
【0036】
次に、マスタ機とした単独運転防止部104bを有する発電装置10を停止する場合の処理例を説明する。図5は、マスタ機とした単独運転防止部104bの停止時の処理例を示すフローチャートである。
【0037】
図5に示すように、まず、主制御部202は、マスタ機とした単独運転防止部104bを有する発電装置10が停止予定か否かを判定する(ステップS200)。停止しないと判定する場合、(ステップS200のNO)、主制御部202は、判定基準に従い、複数の発電装置10の中から、マスタ機の優先順の判定を継続する(ステップS202)。
【0038】
一方で、主制御部202が停止すると判定する場合、(ステップS200のYES)、主制御部202は、マスタ機の優先順に従い、複数の発電装置10の中から、次のマスタ機を設定する(ステップS204)。続けて、主制御部202は、次のマスタ機の単独運転防止部104bに単独運転の検出を開始させるとともに(ステップS206)、元のマスタ機の単独運転防止部104bに対して、単独運転の検出を停止する(ステップS208)。また、主制御部202は、複数の単独運転防止部104bがマスタ機として、同時に動作している場合に、マスタ機の判定を一時的に停止させることが可能である。このように、主制御部202は、各発電部102の運転情報を用いた優先順に従い、マスタ機の入れ替えを行うので、より短時間により安定性の高い単独運転防止部104bの入れ替えが可能となる。これにより、マスタ機により電力系統の異常を検出する場合に、不検出期間の発生が抑制可能となる。
【0039】
次に、マスタ機とした発電装置10が予定外に停止する場合の処理例を説明する。図6は、マスタ機とした発電装置10が予定外に停止する場合の処理例を示すフローチャートである。ここでは、マスタ機とした発電装置10の単独運転防止部104bがスレーブ機とした発電装置10の単独運転防止部104bに継続信号を定期的に出力している場合について説明する。
【0040】
図6に示すように、まず、主制御部202は、主制御部202を介して、各発電装置10に優先順位を設定する(ステップS300)。例えば、主制御部202は、優先順2位の発電装置10における単独運転防止部104bに優先順2位であることを示す情報を設定する。同様に、優先順3位の発電装置10における単独運転防止部104bに優先順3位であることを示す情報を設定する。各単独運転防止部104bは、自身の優先順を記憶する。
【0041】
次に、マスタ機とした優先順1位の発電装置10における単独運転防止部104bによる単独運転の検出を開始すると共に、運転継続の情報を有する継続信号を定期的に出力する(ステップS302)。スレーブ機とした発電装置10における単独運転防止部104bは、マスタ機とした発電装置10が駆動しているか否かを判定する(ステップS304)。スレーブ機とした各単独運転防止部104bは、所定の時間内に継続信号を受信している場合に、マスタ機は停止していないと判定する(ステップS304のNO)。
【0042】
一方で、スレーブ機とした各単独運転防止部104bは、所定の時間内に継続信号を受信していない場合に、マスタ機は停止したと判定する(ステップS304のYES)。この場合、優先順2位であることを示す情報が設定された単独運転防止部104bは、直ちにマスタ機として単独運転の検出を開始する(ステップS306)。このように、制御装置20の制御を介さずに、ハードワイヤード信号でスレーブ機にマスタ機が停止したことを伝達し、あらかじめ決まった優先順位の機体が自律的にマスタ機となるので、直ちにマスタ機を交代した駆動が可能となる。これにより、マスタ機により電力系統の異常を検出する場合に、不検出期間の発生が抑制可能となる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の単独運転防止部104bは、複数の発電装置10のそれぞれに対応し、電力系統Pgの異常を検出するために能動的に外乱を発生するマスタ機と、マスタ機の出力信号にしたがい動作するスレーブ機とのいずれとしても動作可能に構成し、複数の発電装置10それぞれの運転情報を用いた所定の判定基準に基づき、複数の発電装置10のうちの一つをマスタ機とし、他の発電装置10を、スレーブ機として動作させることとした。これにより、複数の発電装置10の状態を反映して、スレーブ機を選択できるので、より安定した発電装置10の単独運転防止部104bをマスタ機とすることが可能となる。
【0044】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の変形例に係る発電システム1aは、制御部108aが制御装置20の機能も有する点で、第1実施形態に係る発電システム1と相違する。以下では、第1実施形態に係る発電システム1と相違する点を説明する。
【0045】
図7は、第1実施形態の変形例に係る発電システム1aの構成を示すブロック図である。各発電装置10の制御部108aは、制御装置20と同等の制御を行うことが可能である。すなわち、制御部108aは、主制御部202と、記憶部200と、主制御部202とを有する。
【0046】
各発電装置10は、制御装置20となる優先順が設定されている。この優先順1位の発電装置10の制御部108aが、起動時に制御装置20と同等の制御を行う。なお、本実施形態では、全ての制御部108aが制御装置20の機能を有すが、これに限定されない。例えば、少なくとも1つの制御部108aが制御装置20の機能を有するように構成してもよい。この場合、制御装置20の機能を有する制御部108aの動作を、発電装置10の制御と独立して動作させることが可能である。
【0047】
次に、発電システム1aの起動後は、第1実施形態に係る発電システム1と同様の優先順に従い、マスタ機が設定される。また、マスタ機となった発電装置10の制御部108aが、制御装置20として制御する。このように、発電装置10の制御部108aの例えばCPUを、制御装置20としても使用可能となる。これにより、制御装置20を不要とし、発電システム1aの構成をより小型化可能となる。
【0048】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1、1a:発電システム、10:発電装置、20:制御装置、30:計測計、102:発電部、104b:単独運転防止部、108、108a:制御部、200:記憶部、202:主制御部、204:判定部、Pg:電力系統。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7