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特開2024-84062電子機器、提供デバイス及び提供システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084062
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】電子機器、提供デバイス及び提供システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20240617BHJP
   H04B 11/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G06F3/01 510
G06F3/01 560
H04B11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198232
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100203264
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 未久
(72)【発明者】
【氏名】金岡 利知
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA63
5E555AA64
5E555AA76
5E555BA17
5E555BA38
5E555BB17
5E555BB38
5E555BC09
5E555BC16
5E555BC17
5E555CA44
5E555CB65
5E555CB74
5E555DA23
5E555DA24
5E555DD06
5E555EA07
5E555EA09
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】改善された、ユーザに情報を提供するための技術を提供する。
【解決手段】電子機器は、指向性を有する通信部と、ユーザの頭部の動きを検出するセンサ部と、制御部とを備える。制御部は、センサ部の検出結果に基づいてユーザが凝視状態であると判定した場合、ユーザが凝視する方向にある対象物から通信部によって通信部によって受信した信号に基づく情報をユーザに提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性を有する通信部と、
ユーザの頭部の動きを検出するセンサ部と、
前記センサ部の検出結果に基づいて前記ユーザが凝視状態であると判定した場合、前記ユーザが凝視する方向にある対象物から前記通信部によって受信した信号に基づく情報を前記ユーザに提供する制御部と、
を備える、電子機器。
【請求項2】
前記制御部は、前記ユーザが凝視状態であると判定した場合、前記ユーザの識別情報を含む搬送信号を前記通信部によって送信する、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、前記搬送信号への応答信号を前記通信部によって受信し、前記応答信号に前記ユーザの識別情報が含まれる場合、提供デバイスに関する情報を提供可能であることを前記ユーザに通知する、請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
電子機器を振動可能な振動部をさらに備え、
前記制御部は、前記振動部によって前記電子機器を振動させることにより、前記提供デバイスに関する情報を提供可能であることをユーザに通知する、請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記制御部は、前記提供デバイスの識別情報を要求する要求信号を前記通信部によって送信する、請求項3に記載の電子機器。
【請求項6】
前記制御部は、前記ユーザの識別情報及び前記提供デバイスの識別情報を含む固有信号を前記通信部によって受信した場合、前記提供デバイスの識別情報に対応付けられた音を再生する、請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記電子機器と前記提供デバイスとの間の通信は、音響通信である、請求項3から6までの何れか一項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記ユーザの識別情報は、ワンタイムパスワードである、請求項2から6までの何れか一項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記電子機器は、前記ユーザの頭部に装着される、請求項1から6までの何れか一項に記載の電子機器。
【請求項10】
指向性を有する通信部と、
ユーザの識別情報を含む搬送信号を前記通信部によって受信すると、前記ユーザの識別情報を保存し、前記搬送信号への応答信号を前記通信部によって送信する制御部と、
を備える、提供デバイス。
【請求項11】
ユーザの頭部の動きの検出結果に基づいて前記ユーザが凝視状態であると判定した場合、前記ユーザの識別情報を含む搬送信号を、指向性を有する第1通信部によって送信する電子機器と、
前記搬送信号を、指向性を有する第2通信部によって受信した場合、前記ユーザの識別情報を保存し、前記搬送信号への応答信号を前記第2通信部によって送信する提供デバイスと、
を含む、提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子機器、提供デバイス及び提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザに情報を提供するための技術が知られている。例えば、特許文献1には、ユーザの周辺で他ユーザから発信された情報を音声によりユーザに提示するよう制御する制御部を備える情報処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/180024号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術には、改善の余地がある。例えば、ユーザは、その情報の内容に興味がない場合、その情報の提供を望まない場合がある。
【0005】
かかる点に鑑みてなされた本開示の目的は、改善された、ユーザに情報を提供するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る電子機器は、
指向性を有する通信部と、
ユーザの頭部の動きを検出するセンサ部と、
前記センサ部の検出結果に基づいて前記ユーザが凝視状態であると判定した場合、前記ユーザが凝視する方向にある対象物から前記通信部によって受信した信号に基づく情報を前記ユーザに提供する制御部と、
を備える。
【0007】
本開示の一実施形態に係る提供デバイスは、
指向性を有する通信部と、
ユーザの識別情報を含む搬送信号を前記通信部によって受信すると、前記ユーザの識別情報を保存し、前記搬送信号への応答信号を前記通信部によって送信する制御部と、
を備える。
【0008】
本開示の一実施形態に係る提供システムは、
ユーザの頭部の動きの検出結果に基づいて前記ユーザが凝視状態であると判定した場合、前記ユーザの識別情報を含む搬送信号を、指向性を有する第1通信部によって送信する電子機器と、
前記搬送信号を、指向性を有する第2通信部によって受信した場合、前記ユーザの識別情報を保存し、前記搬送信号への応答信号を前記第2通信部によって送信する提供デバイスと、
を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、改善された、ユーザに情報を提供するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る提供システムの概略を示す図である。
図2図1に示す提供システムのブロック図である。
図3図2に示す提供デバイスが実行する超音波信号の受信処理の手順を示すフローチャートである。
図4図2に示す電子機器が実行する搬送信号の送信処理の手順を示すフローチャートである。
図5図2に示す電子機器が実行する超音波信号の受信処理の手順を示すフローチャートである。
図6図2に示す提供システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(提供システムの構成)
図1に示すように、提供システム1は、提供デバイス10と、電子機器20とを含む。本実施形態では、提供システム1が含む提供デバイス10及び電子機器20の数は、それぞれ、1つである。ただし、提供システム1が含む提供デバイス10及び電子機器20の数は、任意であってよい。
【0013】
提供デバイス10と電子機器20とは、音響通信を実行可能である。本実施形態に係る音響通信は、超音波を伝送媒体とする通信である。超音波は、例えば、18[kHz]以上の帯域の音である。音響通信では、18[kHz]-22[kHz]の帯域の超音波が用いられてもよいし、22[kHz]以上の帯域の超音波が用いられてもよい。音響通信における送信プロトコルでは、例えば最小偏移変調(MSK:Minimum-Shift Keying)又は位相変調(PSK:Phase Shift Keying)等のデジタル変調方式が採用されてよい。
【0014】
提供デバイス10は、例えば、案内板である。ただし、提供デバイス10は、看板であってもよい。提供デバイス10は、屋外に位置する。ただし、提供デバイス10は、博物館等の屋内に位置してもよい。提供デバイス10は、例えば、板状である。提供デバイス10は、2つの面を有する。提供デバイス10の一方の面には、案内情報が記載される。案内情報は、例えば、周辺地図、周辺情報又は周辺の展示物の情報等である。
【0015】
以下において、「提供デバイス10の前方」とは、提供デバイス10が有する2つの面のうちの、案内情報が記載されていない面から、案内情報が記載された面に向かう方向を意味する。
【0016】
提供デバイス10は、提供デバイス10の前方に超音波信号を送信することができる。提供デバイス10は、提供デバイス10の前方からの超音波信号を受信することができる。
【0017】
電子機器20は、ユーザの頭部に装着可能である。電子機器20は、ユーザの頭部に装着可能なウェアラブルデバイスであってよい。本実施形態では、電子機器20は、ウェアラブルデバイスの一種であるヒアラブルデバイスである。ただし、電子機器20は、ユーザの頭部に装着可能であり、ユーザに情報を提供可能であれば、後述するようにヒアラブルデバイスに限定されない。電子機器20は、図1に示すようなヘッドホン型のヒアラブルデバイスであってもよいし、イヤホン型のヒアラブルデバイスであってもよい。
【0018】
以下において、「電子機器20の前方」は、電子機器20がユーザの頭部に装着された場合に、ユーザの顔が向く方向と一致する方向を意味する。ユーザの顔が向く方向は、ユーザの視線方向と一致してよい。
【0019】
電子機器20は、電子機器20の前方に超音波信号を送信することができる。電子機器20は、電子機器20の前方からの超音波信号を受信することができる。
【0020】
電子機器20は、複数の提供デバイス10のそれぞれの固有IDと、複数の提供デバイス10のそれぞれの音データとを対応付けた情報を保持する。提供デバイス10の固有IDは、提供デバイス10を一意に識別可能な提供デバイス10の識別情報である。
【0021】
提供システム1は、例えば提供デバイス10の案内情報に興味を持ったユーザに、提供デバイス10に関する情報を音声によって提供することができる。以下、この処理を簡単に説明する。
【0022】
ユーザは、例えば提供デバイス10の案内情報に興味を持った場合、提供デバイス10の前方に立ち止まる。提供デバイス10の前方に立ち止まったユーザは、提供デバイス10の案内情報を凝視する。
【0023】
電子機器20は、ユーザが凝視状態であると判定すると、ユーザの識別情報を含む搬送信号を電子機器20の前方に送信する。搬送信号は、ユーザの識別情報を搬送する信号である。以下、ユーザの識別情報は、ワンタイムパスワードであるものとする。
【0024】
提供デバイス10は、提供デバイス10の前方から搬送信号を受信し得る。提供デバイス10は、搬送信号を受信すると、搬送信号に含まれるワンタイムパスワードを保存する。提供デバイス10は、ワンタイムパスワードの保存後、搬送信号への応答として応答信号を提供デバイスの前方に送信する。
【0025】
電子機器20は、搬送信号の送信後、電子機器20の前方から応答信号を受信し得る。電子機器20は、応答信号を受信すると、提供デバイス10に関する情報を提供可能であることをユーザに通知する。このような通知により、ユーザは、提供デバイス10に関する情報を音声によって聞くことが可能であることを知り得る。さらに、電子機器20は、提供デバイス10の固有IDを要求する要求信号を電子機器20の前方に送信する。
【0026】
ここで、ユーザは、提供デバイス10に関する情報を音声によって聞きたいと思った場合、提供デバイス10を凝視し続ける。ユーザが提供デバイス10を凝視し続けた場合、電子機器20が送信した要求信号は、提供デバイス10まで届く。一方、ユーザは、提供デバイス10に関する情報に興味がない場合、提供デバイス10の前から立ち去るか又は頭部の向きを変える。ユーザが提供デバイス10の前から立ち去る等した場合、電子機器20が電子機器20の前方に送信した要求信号は、提供デバイス10まで届かない。
【0027】
提供デバイス10は、電子機器20から要求信号を受信した場合、固有IDを含む固有信号を提供デバイス10の前方に超音波信号として送信する。電子機器20は、固有信号を受信すると、固有信号から固有IDを抽出する。電子機器20は、保持している提供デバイス10の音データのうち、抽出した固有IDに対応付けられた提供デバイス10の音データを再生する。このような構成により、ユーザは、ユーザの前の提供デバイス10の音データを聞くことができる。
【0028】
(提供デバイスの構成)
図2に示すように、提供デバイス10は、通信部11と、記憶部14と、制御部15とを備える。通信部11は、第2通信部ともいう。
【0029】
通信部11は、指向性を有する。通信部11は、提供デバイス10の前方において送受信する超音波信号の強度が他の方向よりも強くなる指向性を有する。通信部11は、音響通信を実行可能な少なくとも1つの通信モジュールを含んで構成される。本実施形態では、通信部11は、スピーカ部12と、マイク部13とを含む。
【0030】
スピーカ部12は、超音波を出力可能な少なくとも1つのスピーカを含んで構成される。スピーカ部12は、例えば、指向性スピーカ又はパラメトリックスピーカ等を含んで構成される。
【0031】
スピーカ部12は、超音波信号を送信する。スピーカ部12は、提供デバイス10の部分のうち、図1に示すように提供デバイス10の前方に向けて超音波信号を送信可能な部分に位置する。スピーカ部12は、提供デバイス10の前方に送信する超音波信号の強度が他の方向よりも強くなるような指向性を有するように配置される。
【0032】
マイク部13は、超音波を集音可能な少なくとも1つのマイクを含んで構成される。マイク部13は、例えば、ビームフォーミングによって超音波を集音可能なマルチマイク又は指向性マイク等を含んで構成される。マイク部13は、単一指向性マイク又は超指向性マイクを含んで構成されてもよい。
【0033】
マイク部13は、超音波を集音することにより、超音波信号を受信する。マイク部13は、提供デバイス10の部分のうち、図1に示すように提供デバイス10の前方からの超音波信号を受信可能な部分に位置する。マイク部13は、提供デバイス10の前方から受信する超音波信号の強度が他の方向よりも強くなるような指向性を有するように配置される。マイク部13がマルチマイク又は指向性マイクを含んで構成されることにより、マイク部13が超音波信号を受信可能な提供デバイス10の前方の範囲を限定することができる。
【0034】
記憶部14は、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ又はこれらのうちの少なくとも2種類の組み合わせを含んで構成される。半導体メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等である。RAMは、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)又はDRAM(Dynamic Random Access Memory)等である。ROMは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等である。記憶部14は、主記憶装置、補助記憶装置又はキャッシュメモリとして機能してよい。記憶部14には、提供デバイス10の動作に用いられるデータと、提供デバイス10の動作によって得られたデータとが記憶される。
【0035】
制御部15は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含んで構成される。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)若しくはGPU(Graphics Processing Unit)等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等である。制御部15は、提供デバイス10の各部を制御しながら、提供デバイス10の動作に関わる処理を実行する。
【0036】
制御部15は、超音波信号をマイク部13によって受信する。この超音波信号は、提供デバイス10の前方に位置する電子機器20からの搬送信号であるか又は要求信号である。受信した超音波信号が搬送信号であるか又は要求信号であるかを判定するために、制御部15は、超音波信号からワンタイムパスワードを抽出する。制御部15は、抽出したワンタイムパスワードが記憶部14に保存済のワンタイムパスワードの何れかと一致するか否かを判定する。
【0037】
制御部15は、抽出したワンタイムパスワードが記憶部14に保存済のワンタイムパスワードの何れとも一致しないと判定した場合、受信した超音波信号が搬送信号であると判定する。上述したように搬送信号はワンタイムパスワードを搬送する信号であるため、搬送信号を受信する前では、記憶部14には、その搬送信号に含まれるワンタイムパスワードが保存されていない。制御部15は、受信した超音波信号が搬送信号であると判定した場合、受信した超音波信号すなわち搬送信号から抽出したワンタイムパスワードを記憶部14に保存する。制御部15は、ワンタイムパスワードの保存後、受信した搬送信号への応答として応答信号を生成する。制御部15は、受信した搬送信号から抽出したワンタイムパスワードを、応答信号に含ませる。制御部15は、生成した応答信号を超音波信号としてスピーカ部12に送信させる。スピーカ部12によって、応答信号は、提供デバイス10の前方に送信される。制御部15は、応答信号を送信するときのみスピーカ部12の電源をオン状態にしてよい。このような構成により、提供デバイス10の消費電力を削減することができる。
【0038】
制御部15は、抽出したワンタイムパスワードが記憶部14に保存済のワンタイムパスワードの何れかと一致すると判定した場合、受信した超音波信号が要求信号であるか否かを判定する。例えば、制御部15は、受信した超音波信号に送信済みの応答信号が含まれる場合、受信した超音波信号が要求信号であると判定する。制御部15は、受信した超音波信号が要求信号であると判定した場合、提供デバイス10の固有IDを含む固有信号を生成する。制御部15は、要求信号から抽出したワンタイムパスワードを固有信号に含ませてよい。制御部15は、生成した固有信号を超音波信号としてスピーカ部12に送信させる。スピーカ部12によって、固有信号は、提供デバイス10の前方に送信される。制御部15は、固有信号を送信するときのみスピーカ部12の電源をオン状態にしてよい。このような構成により、提供デバイス10の消費電力を削減することができる。
【0039】
(電子機器の構成)
図2に示すように、電子機器20は、通信部21と、通信部22と、入力部25と、スピーカ部26と、測位部27と、センサ部28と、振動部29と、記憶部30と、制御部31とを備える。通信部22は、第1通信部ともいう。
【0040】
通信部21は、移動体通信網及びインターネット等を含む任意のネットワークに接続可能な少なくとも1つの通信モジュールを含んで構成される。通信モジュールは、例えば、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)若しくは5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応した通信モジュールである。
【0041】
通信部22は、指向性を有する。通信部22は、電子機器20の前方において送受信する超音波信号の強度が他の方向よりも強くなる指向性を有する。電子機器20がユーザの頭部に装着される場合、通信部22は、ユーザの顔が向く方向すなわちユーザの視線方向において送受信する超音波信号の強度が他の方向よりも強くなる指向性を有し得る。通信部22は、音響通信を実行可能な少なくとも1つの通信モジュールを含んで構成される。本実施形態では、通信部22は、スピーカ部23と、マイク部24とを含む。
【0042】
スピーカ部23は、超音波を出力可能な少なくとも1つのスピーカを含んで構成される。スピーカ部23は、例えば、指向性スピーカ又はパラメトリックスピーカ等を含んで構成される。
【0043】
スピーカ部23は、超音波信号を送信する。スピーカ部23は、電子機器20の部分のうち、図1に示すように電子機器20の前方に向けて超音波信号を送信可能な部分に位置する。スピーカ部23は、電子機器20の前方に送信する超音波信号の強度が他の方向よりも強くなるような指向性を有するように配置される。
【0044】
マイク部24は、超音波を集音可能な少なくとも1つのマイクを含んで構成される。マイク部24は、例えば、ビームフォーミングによって超音波を集音可能なマルチマイク又は指向性マイク等を含んで構成される。マイク部24は、単一指向性マイク又は超指向性マイクを含んで構成されてもよい。
【0045】
マイク部24は、超音波信号を受信する。マイク部24は、電子機器20の部分のうち、図1に示すように電子機器20の前方からの超音波信号を受信可能な部分に位置する。マイク部24は、電子機器20の前方から受信する超音波信号の強度が他の方向よりも強くなるような指向性を有するように配置される。マイク部24がマルチマイク又は指向性マイクを含んで構成されることにより、マイク部24が超音波信号を受信可能な電子機器20の前方の範囲を限定することができる。ここで、ユーザが移動したり、ユーザの頭部が動いたりすると、マイク部24が受信する超音波信号においてドップラー効果が生じる場合がある。そこで、マイク部24は、受信対象とする超音波信号の周波数について、予め設定された周波数に対して例えば±5%の周波数の変化を許容するように構成されてもよい。
【0046】
入力部25は、ユーザからの入力を受け付け可能である。入力部25は、ユーザからの入力を受け付け可能な少なくとも1つの入力用インタフェースを含んで構成される。入力用インタフェースは、例えば、物理キー又は静電容量キー等である。
【0047】
スピーカ部26は、可聴音を出力可能な少なくとも1つのスピーカを含んで構成される。スピーカ部26は、例えば、ステレオスピーカ等を含んで構成される。
【0048】
スピーカ部26は、電子機器20の部分のうち、ユーザに可聴音を出力可能な部分に位置する。例えば、スピーカ部26のステレオスピーカは、左用のスピーカ及び右用のスピーカを含む。左用のスピーカは、電子機器20が有する左用のイヤパッドに位置する。右用のスピーカは、電子機器20が有する右用のイヤパッドに位置する。
【0049】
測位部27は、電子機器20の位置情報を取得可能である。測位部27は、衛星測位システムに対応する少なくとも1つの受信モジュールを含んで構成される。受信モジュールは、例えば、GPS(Global Positioning System)に対応した受信モジュールである。ただし、受信モジュールは、これに限定されない。受信モジュールは、任意の衛星測位システムに対応した受信モジュールであってよい。
【0050】
センサ部28は、電子機器20の動きを検出可能な少なくとも1つのセンサを含んで構成される。センサ部28は、電子機器20がユーザの頭部に装着される場合、電子機器20の動きとしてユーザの頭部の動きを検出することができる。センサ部28によって検出されるユーザの頭部の動きは、例えば、ユーザの頭部の向き、ユーザの頭部の加速度又は速度等である。センサ部28は、例えば、慣性センサを含んで構成される。
【0051】
振動部29は、電子機器20を振動可能である。振動部29は、例えば、圧電素子等の振動素子を含んで構成される。
【0052】
記憶部30は、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ又はこれらのうちの少なくとも2種類の組み合わせを含んで構成される。半導体メモリは、例えば、RAM又はROM等である。RAMは、例えば、SRAM又はDRAM等である。ROMは、例えば、EEPROM等である。記憶部30は、主記憶装置、補助記憶装置又はキャッシュメモリとして機能してよい。記憶部30には、電子機器20の動作に用いられるデータと、電子機器20の動作によって得られたデータとが記憶される。
【0053】
記憶部30には、例えば、地図情報が記憶される。地図情報は、提供デバイス10の位置情報を含む。
【0054】
制御部31は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含んで構成される。プロセッサは、例えば、CPU若しくはGPU等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA又はASIC等である。制御部31は、電子機器20の各部を制御しながら、電子機器20の動作に関わる処理を実行する。
【0055】
<提供デバイスの音データの取得処理>
制御部31は、電子機器20の位置情報を測位部27によって取得する。電子機器20の位置情報は、ユーザが電子機器20を装着していることにより、ユーザの位置情報とみなすことができる。
【0056】
制御部31は、電子機器20の位置情報を取得すると、電子機器20の位置すなわちユーザの位置から所定範囲内にある提供デバイス10の固有ID及び音データを、ネットワークを介して外部サーバから通信部21によって受信する。所定範囲は、地域に設置される提供デバイス10の密度等に基づいて設定されてよい。所定範囲は、例えば、1[km]-2[km]の範囲である。制御部31は、受信した提供デバイス10の固有IDと音データとを対応付けて記憶部30に記憶させる。
【0057】
制御部31は、所定時間毎に、電子機器20の位置情報を取得して提供デバイス10の固有ID及び音データを受信することにより、記憶部30の提供デバイス10の固有ID及び音データを更新してよい。所定時間は、ユーザの歩行速度に基づいて設定されてよい。
【0058】
<搬送信号の送信処理>
制御部31は、センサ部28から、センサ部28の検出結果を取得する。制御部31は、センサ部28の検出結果に基づいて、ユーザが凝視状態であるか否かを判定する。センサ部28の検出結果は、電子機器20がユーザの頭部に装着される場合、ユーザの頭部の動きの検出結果となり得る。
【0059】
一例として、制御部31は、センサ部28の検出結果に基づいて、ユーザの顔の方向が第1時間閾値以上所定範囲内にあると判定した場合、ユーザが凝視状態であると判定してもよい。第1時間閾値は、人間が物体を凝視する時間を想定して設定されてよい。所定範囲は、人間が物体を凝視している間に人間の顔の方向が変化する範囲を想定して設定されてよい。
【0060】
他の例として、制御部31は、センサ部28の検出結果に基づいて、ユーザの頭部が第2時間閾値以上静止状態であると判定した場合、ユーザが凝視状態であると判定してもよい。第2時間閾値は、人間が物体を凝視する時間を想定して設定されてよい。
【0061】
制御部31は、ユーザが凝視状態であると判定した場合、ワンタイムパスワードを生成する。制御部31は、現在時刻に基づいてワンタイムパスワードを生成してよい。例えば、制御部31は、ユーザに固有の情報と現在時刻とを組み合わせることにより、ワンタイムパスワードを生成してもよい。制御部31は、現在時刻をユーザに固有の超音波帯域の情報に変換することにより、ワンタイムパスワードを生成してもよい。
【0062】
制御部31は、ワンタイムパスワードを生成すると、ワンタイムパスワードを搬送する搬送信号を生成する。つまり、搬送信号は、ワンタイムパスワードを含む。
【0063】
制御部31は、搬送信号を生成すると、搬送信号を超音波信号としてスピーカ部23に送信させる。スピーカ部23によって、搬送信号は、電子機器20の前方に向けて送信される。搬送信号が電子機器20の前方に向けて送信され、さらに電子機器20がユーザの頭部に装着されることにより、搬送信号は、ユーザの視線方向に向けて送信される。
【0064】
<超音波信号の受信処理>
制御部31は、搬送信号を送信すると、超音波信号の受信処理を開始する。受信する超音波信号は、電子機器20の前方すなわちユーザの顔が向く方向に位置する提供デバイス10からの応答信号又は固有信号となる。
【0065】
制御部31は、搬送信号を送信してから設定時間以内に超音波信号を受信した場合、受信した超音波信号からワンタイムパスワードを抽出する。設定時間は、ユーザが1つの提供デバイス10を凝視し続ける時間を想定して設定されてよい。設定時間は、例えば、5秒である。制御部31は、抽出したワンタイムパスワードが、搬送信号を生成したときに生成済みのワンタイムパスワードと一致するか否かを判定する。抽出したワンタイムパスワードが生成済みのワンタイムパスワードと一致する場合、受信した超音波信号は、電子機器20からの搬送信号を受信した提供デバイス10が送信した超音波信号となる。そこで、制御部31は、抽出したワンタイムパスワードが生成済みのワンタイムパスワードと一致すると判定した場合、受信した超音波信号が応答信号であるか又は固有信号であるかを判定する。以下に説明するように、制御部31は、受信した超音波信号が応答信号であるか又は固有信号であるかによって異なる処理を実行する。
【0066】
<<応答信号に対する処理>>
制御部31は、受信した超音波信号が応答信号であると判定した場合、提供デバイス10に関する情報を提供可能であることをユーザに通知する。一例として、制御部31は、振動部29によって電子機器20を振動させることにより、提供デバイス10に関する情報を提供可能であることをユーザに通知してもよい。他の例として、制御部31は、効果音をスピーカ部26に出力させることにより、提供デバイス10に関する情報を提供可能であることをユーザに通知してもよい。このような構成により、ユーザは、提供デバイス10に関する情報を音声によって聞くことが可能であることを知り得る。ユーザは、提供デバイス10に関する情報を音声によって聞きたいと思った場合、提供デバイス10を凝視し続ける。一方、ユーザは、提供デバイス10に関する情報に興味がない場合、提供デバイス10の前から立ち去るか又は頭部の向きを変える。
【0067】
制御部31は、ユーザへ通知すると、要求信号を生成する。上述したように、要求信号は、提供デバイス10の固有IDを要求する信号である。制御部31は、要求信号に、搬送信号を生成したときに生成済みのワンタイムパスワードを含めてよい。制御部31は、応答信号への応答として要求信号を生成してよい。例えば、制御部31は、要求信号に提供デバイス10から受信した応答信号を含めることにより、応答信号への応答としての要求信号を生成する。
【0068】
制御部31は、生成した要求信号を超音波信号としてスピーカ部23に出力させる。スピーカ部23によって、要求信号は、ユーザの顔が向く方向に向けて送信される。ここで、ユーザへの通知後、ユーザが提供デバイス10に関する情報を音声によって聞きたいと思い、提供デバイス10を凝視し続けている場合、要求信号は、ユーザの顔が向く方向に位置する提供デバイス10まで届く。一方、ユーザが提供デバイス10に関する情報に興味がなく、ユーザが提供デバイス10の前から立ち去ったり又は頭部の向きを変えた場合、要求信号は、提供デバイス10まで届かない。
【0069】
<<固有信号に対する処理>>
制御部31は、受信した超音波信号が固有信号であると判定した場合、固有信号から固有IDを抽出する。制御部31は、固有IDを抽出すると、記憶部30から固有IDに対応付けられた音データを取得する。制御部31は、音データを取得すると、取得した音データをスピーカ部26に出力させる。このような構成により、ユーザは、提供デバイス10に対応する案内情報を音として聞くことができる。
【0070】
(提供デバイスの動作)
図3は、図2に示す提供デバイス10が実行する超音波信号の受信処理の手順を示すフローチャートである。制御部15は、電子機器20から提供デバイス10に超音波信号が送信されると、ステップS1の処理を開始する。
【0071】
制御部15は、超音波信号をマイク部13によって受信する(ステップS1)。
【0072】
制御部15は、受信した超音波信号からワンタイムパスワードを抽出する。制御部15は、抽出したワンタイムパスワードが記憶部14に保存済のワンタイムパスワードの何れかと一致するか否かを判定する(ステップS2)。制御部15は、抽出したワンタイムパスワードが記憶部14に保存済のワンタイムパスワードの何れとも一致しないと判定した場合(ステップS2:NO)、ステップS3の処理に進む。一方、制御部15は、抽出したワンタイムパスワードが記憶部14に保存済のワンタイムパスワードの何れかと一致すると判定した場合(ステップS2:YES)、ステップS6の処理に進む。
【0073】
ステップS3の処理では、制御部15は、ステップ1の処理で受信した超音波信号すなわち搬送信号から抽出したワンタイムパスワードを、記憶部14に保存する。
【0074】
ステップS4の処理では、制御部15は、搬送信号への応答として応答信号を生成する。ステップS5の処理では、制御部15は、ステップS4の処理で生成した応答信号を超音波信号としてスピーカ部12に送信させる。
【0075】
ステップS6の処理では、制御部15は、ステップS1の処理で受信した超音波信号が要求信号であるか否かを判定する。制御部15は、受信した超音波信号が要求信号であると判定した場合(ステップS6:YES)、ステップS7の処理に進む。一方、制御部15は、受信した超音波信号が要求信号ではないと判定した場合(ステップS6:NO)、超音波信号の受信処理を終了する。
【0076】
ステップS7の処理では、制御部15は、固有信号を生成する。ステップS8の処理では、制御部15は、ステップS7の処理で生成した固有信号を超音波信号としてスピーカ部12に送信させる。
【0077】
ここで、ステップS2の処理において、制御部15は、抽出したワンタイムパスワードが記憶部14に保存済のワンタイムパスワードの何れかと一致すると判定した場合、当該保存済のワンタイムパスワードの保存時間を取得してよい。ワンタイムパスワードの保存時間は、例えば、ワンタイムパスワードを記憶部14に保存してからステップS2の処理を実行するまでの時間である。制御部15は、取得した保存済のワンタイムパスワードの保存時間が規定時間以上であるか否かを判定してもよい。規定時間は、提供デバイス10の用途に応じて設定されてよい。制御部15は、取得した保存済のワンタイムパスワードの保存時間が規定時間以上であると判定した場合、抽出したワンタイムパスワードが記憶部14に保存済のワンタイムパスワードの何れとも一致しないとみなしてよい(ステップS2:NO)。この場合、制御部15は、ステップS3の処理に進む。一方、制御部15は、取得した保存済のワンタイムパスワードの保存時間が規定時間を下回ると判定した場合、ステップS6の処理に進んでよい。
【0078】
ステップS3の処理において、制御部15は、記憶部14に保存済のワンタイムパスワードについて、保存時間が規定時間以上であるワンタイムパスワードを削除してもよい。
【0079】
(電子機器の動作)
図4は、図2に示す電子機器が実行する搬送信号の送信処理の手順を示すフローチャートである。制御部31は、電子機器20の電源をオンにするための入力を入力部25によって受け付けると、ステップS11の処理を開始する。
【0080】
制御部31は、センサ部28から、センサ部28の検出結果を取得する(ステップS11)。制御部31は、センサ部28の検出結果に基づいて、ユーザが凝視状態であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0081】
制御部31は、ユーザが凝視状態であると判定した場合(ステップS12:YES)、ステップS13の処理に進む。制御部31は、ユーザが凝視状態ではないと判定した場合(ステップS12:NO)、ステップS11の処理に戻る。
【0082】
ステップS13の処理では、制御部31は、ワンタイムパスワードを生成する。
【0083】
ステップS14の処理では、制御部31は、ステップS13の処理で生成したワンタイムパスワードを含む搬送信号を生成する。
【0084】
ステップS15の処理では、制御部31は、ステップS14の処理で生成した搬送信号を超音波信号としてスピーカ部23に出力させる。
【0085】
図5は、図2に示す電子機器20が実行する超音波信号の受信処理の手順を示すフローチャートである。制御部31は、図4に示すようなステップS15の処理後、ステップS21の処理を開始する。
【0086】
制御部31は、超音波信号をマイク部24によって受信したか否かを判定する(ステップS21)。制御部31は、超音波信号を受信したと判定しない場合(ステップS21:NO)、ステップS22の処理に進む。一方、制御部31は、超音波信号を受信したと判定した場合(ステップS21:YES)、ステップS23の処理に進む。
【0087】
ステップS22の処理では、制御部31は、図4に示すようなステップS15の処理で搬送信号を送信してから設定時間が経過したか否かを判定する。制御部31は、搬送信号を送信してから設定時間が経過したと判定した場合(ステップS22:YES)、超音波信号の受信処理を終了する。一方、制御部31は、搬送信号を送信してから設定時間が経過したと判定しない場合(ステップS22:NO)、ステップS21の処理に戻る。
【0088】
ステップS23の処理では、制御部31は、ステップS21の処理で受信した超音波信号からワンタイムパスワードを抽出する。制御部31は、抽出したワンタイムパスワードが図4に示すようなステップS13の処理で生成済みのワンタイムパスワードと一致するか否かを判定する。
【0089】
制御部31は、抽出したワンタイムパスワードが生成済みのワンタイムパスワードと一致すると判定した場合(ステップS23:YES)、ステップS24の処理に進む。一方、制御部31は、抽出したワンタイムパスワードが生成済みのワンタイムパスワードと一致しないと判定した場合(ステップS23:NO)、ステップS21の処理に戻る。
【0090】
ステップS24の処理では、制御部31は、ステップS21の処理で受信した超音波信号が応答信号であるか否かを判定する。制御部31は、ステップS21の処理で受信した超音波信号が応答信号であると判定した場合(ステップS24:YES)、ステップS25の処理に進む。制御部31は、ステップS21の処理で受信した超音波信号が応答信号ではないと判定した場合すなわち固有信号であると判定した場合(ステップS24:NO)、ステップS28の処理に進む。
【0091】
ステップS25の処理では、制御部31は、提供デバイス10に関する情報を提供可能であることをユーザに通知する。
【0092】
ステップS26の処理では、制御部31は、要求信号を生成する。ステップS27の処理では、制御部31は、ステップS26の処理で生成した要求信号を超音波信号としてスピーカ部23に出力させる。制御部31は、ステップS27の処理後、ステップS21の処理に戻る。
【0093】
ステップS25の処理後、ユーザが提供デバイス10の音データを聞きたいと思い、提供デバイス10を凝視し続けている場合、ステップS27の処理で送信された要求信号は、ユーザの前方の提供デバイス10まで届く。ステップS25の処理後、ユーザが提供デバイス10の前から立ち去ったり又は頭部の向きを変えた場合、ステップS27の処理で送信された要求信号は、提供デバイス10まで届かない。
【0094】
ステップS28の処理では、制御部31は、固有信号から固有IDを抽出する。ステップS29の処理では、制御部31は、記憶部30から固有IDに対応付けられた音データを取得する。ステップS30の処理では、制御部31は、ステップS29の処理で取得した音データをスピーカ部26に出力させる。
【0095】
制御部31は、ステップS21~S30の処理と並行してステップS11~S15の処理を実行してもよい。この場合、制御部31は、ステップS30の処理にて音データをスピーカ部26に出力させている間、ステップS29によって新たな提供デバイス10の音データを取得する場合がある。ステップS29によって新たな提供デバイス10の音データを取得した場合、制御部31は、新たな提供デバイス10の音データをスピーカ部26に出力させてよい。
【0096】
(提供システムの動作)
図6は、図2に示す提供システム1の動作を示すシーケンス図である。
【0097】
電子機器20は、ユーザが凝視状態であると判定すると、搬送信号を送信する(ステップS41)。提供デバイス10は、搬送信号を受信すると、応答信号を送信する(ステップS42)。電子機器20は、応答信号を受信すると、要求信号を送信する(ステップS43)。提供デバイス10は、要求信号を受信すると、固有信号を送信する(ステップS44)。
【0098】
このように本実施形態に係る電子機器20では、制御部31は、センサ部28の検出結果に基づいてユーザが凝視状態であると判定した場合、ユーザが凝視する方向にある対象物から通信部22によって受信した信号に基づく情報をユーザに提示する。例えば、制御部31は、指向性を有するマイク部24によって受信した固有信号に基づいて、対象物としての提供デバイス10の音データをユーザに対して出力することにより、情報を提供する。このような構成により、ユーザが提供デバイス10を凝視している場合に、ユーザにその提供デバイス10に関する情報を提供することができる。つまり、ユーザが視覚的に注意を払っている提供デバイス10に関する情報をユーザに提供することができる。このような構成により、ユーザの利便性を向上させることができる。また、ユーザが視覚的に注意を払っていない提供デバイス10に関する情報をユーザに提供してしまう可能性を低減させることができる。結果として、ユーザが煩わしさを感じる可能性を低減させることができる。
【0099】
よって、本実施形態によれば、改善された、ユーザに情報を提供するための技術を提供することができる。
【0100】
さらに、本実施形態に係る電子機器20では、制御部31は、センサ部28の検出結果に基づいてユーザが凝視状態であると判定した場合、ユーザの識別情報を含む搬送信号を通信部22によって送信してもよい。搬送信号がユーザの識別情報を含むことにより、提供デバイス10と電子機器20とは、送受信する超音波信号にユーザの識別情報を含めることができる。例えば、提供デバイス10は、ユーザの識別情報としてワンタイムパスワードを応答信号及び固有信号に含めることができる。電子機器20は、ユーザの識別情報としてワンタイムパスワードを要求信号に含めることができる。このような構成により、複数の提供デバイス10と複数の電子機器20との間で超音波信号が送受信される場合、以下に説明するように、超音波信号が錯綜する可能性を低減させることができる。
【0101】
例えば、提供システム1は、複数の提供デバイス10として提供デバイス10A,10Bと、複数の電子機器20として電子機器20A,20Bとを含むものとする。また、電子機器20Aのユーザ2Aが提供デバイス10Aを凝視し、電子機器20Bのユーザ2Bが提供デバイス10Bを凝視するものとする。電子機器20Aは、ユーザ2Aが凝視状態であると判定すると、ユーザ2Aの識別情報を含む搬送信号3Aを送信する。電子機器20Bは、ユーザ2Bが凝視状態であると判定すると、ユーザ2Bの識別情報を含む搬送信号3Bを送信する。提供デバイス10Aは、搬送信号3Aを受信すると、ユーザ2Aの識別情報を保存し、ユーザ2Aの識別情報を含む応答信号4Aを送信する。また、提供デバイス10Bは、搬送信号3Bを受信すると、ユーザ2Bの識別情報を保存し、ユーザ2Bの識別情報を含む応答信号4Bを送信する。ここで、電子機器20Aが応答信号4A,4Bの両方を受信しても、応答信号4Aがユーザ2Aの識別情報を含むことにより、電子機器20Aは、応答信号4Aへの応答として要求信号5Aを送信することができる。また、電子機器20Bが応答信号4A,4Bの両方を受信しても、応答信号4Bがユーザ2Bの識別情報を含むことにより、電子機器20Bは、応答信号4Bへの応答として要求信号5Bを送信することができる。提供デバイス10Aは、要求信号5A及び要求信号5Bの両方を受信しても、保存済のユーザ2Aの識別情報と要求信号5Aに含まれるユーザ2Aの識別情報とが一致することにより、ユーザ2Aへの固有信号6Aを送信することができる。同じく、提供デバイス10Bは、要求信号5A及び要求信号5Bの両方を受信しても、保存済のユーザ2Bの識別情報と要求信号5Bに含まれるユーザ2Bの識別情報とが一致することにより、ユーザ2Bへの固有信号6Bを送信することができる。電子機器20Aは、ユーザ2Aの識別情報を含む固有信号6A及びユーザ2Bの識別情報を含む固有信号6Bの両方を受信しても、固有信号6Aがユーザ2Aの識別情報を含むため、固有信号6Aに含まれる提供デバイス10Aの固有IDを抽出することができる。つまり、電子機器20Aは、提供デバイス10Aの固有IDによって、ユーザ2Aに提供デバイス10Aに関する情報を音声によって提供することができる。同じく、電子機器20Bは、固有信号6A及び固有信号6Bの両方を受信しても、固有信号6Bに含まれる提供デバイス10Bの固有IDによって、ユーザ2Bに提供デバイス10Bに関する情報を音声によって提供することができる。
【0102】
また、本実施形態に係る電子機器20では、制御部31は、搬送信号への応答信号を通信部22によって受信した場合、提供デバイス10に関する情報を提供可能であることをユーザに通知してもよい。このような通知により、ユーザは、提供デバイス10に関する情報を音声によって聞くことが可能であることを知り得る。ユーザは、提供デバイス10に関する情報を音声によって聞きたいと思った場合、提供デバイス10を凝視し続ける。ユーザが提供デバイス10を凝視し続けた場合、提供デバイス10と電子機器20との間で通信が続行されるため、結果として、電子機器20は、提供デバイス10に関する音声を提供することができる。一方、ユーザは、提供デバイス10に関する情報に興味がない場合、提供デバイス10の前から立ち去るか又は頭部の向きを変える。ユーザが提供デバイス10の前から立ち去る等した場合、提供デバイス10と電子機器20との間で通信が続行されなくなるため、結果として、電子機器20は、提供デバイス10に関する音声を提供しない。このような構成により、ユーザは、自身の行動によって、提供デバイス10に関する音声の提供を受けるか否かを選択することができる。よって、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0103】
また、本実施形態に係る電子機器20では、制御部31は、振動部29によって電子機器20を振動させることにより、提供デバイス10に関する情報を提供可能であることをユーザに通知してもよい。ここで、ユーザによっては、制御部31が搬送信号への応答信号を受信する毎に提供デバイス10に関する情報を提供可能であることを効果音によって通知すると、煩わしく感じることがある。電子機器20を振動させることによって提供デバイス10に関する情報を提供可能であることをユーザに通知することにより、ユーザが煩わしく感じる可能性を低減させることができる。
【0104】
また、本実施形態では、提供デバイス10と電子機器20との間の通信は、音響通信であってよい。超音波信号を用いた音響通信は、電磁波の信号を用いた通信よりも、通信範囲が狭くなる。通信範囲が狭くなることにより、ユーザが凝視している提供デバイス10に加えて、ユーザが凝視していない他の提供デバイス10に、搬送信号が届く可能性を低減させることができる。結果として、電子機器20がユーザが凝視していない提供デバイス10に関する情報を音声によって提供する可能性を低減させることができる。
【0105】
さらに、本実施形態では、ユーザの識別情報は、ワンタイムパスワードであってもよい。ユーザの識別情報がワンタイムパスワードであることにより、複数の提供デバイス10と複数の電子機器20との間で超音波信号が送受信される場合に、超音波信号が錯綜する可能性をさらに低減させることができる。
【0106】
一実施形態において、(1)電子機器は、
指向性を有する通信部と、
ユーザの頭部の動きを検出するセンサ部と、
前記センサ部の検出結果に基づいて前記ユーザが凝視状態であると判定した場合、前記ユーザが凝視する方向にある対象物から前記通信部によって受信した信号に基づく情報を前記ユーザに提供する制御部と、
を備える。
【0107】
(2)上記(1)に記載の電子機器では、
前記制御部は、前記ユーザが凝視状態であると判定した場合、前記ユーザの識別情報を含む搬送信号を前記通信部によって送信してもよい。
【0108】
(3)上記(1)又は(2)に記載の電子機器では、
前記制御部は、前記搬送信号への応答信号を前記通信部によって受信し、前記応答信号に前記ユーザの識別情報が含まれる場合、提供デバイスに関する情報を提供可能であることを前記ユーザに通知してもよい。
【0109】
(4)上記(1)から(3)までの何れか1つに記載の電子機器では、
電子機器を振動可能な振動部をさらに備え、
前記制御部は、前記振動部によって前記電子機器を振動させることにより、前記提供デバイスに関する情報を提供可能であることをユーザに通知してもよい。
【0110】
(5)上記(1)から(4)までの何れか1つに記載の電子機器では、
前記制御部は、前記提供デバイスの識別情報を要求する要求信号を前記通信部によって送信してもよい。
【0111】
(6)上記(1)から(5)までの何れか1つに記載の電子機器では、
前記制御部は、前記ユーザの識別情報及び前記提供デバイスの識別情報を含む固有信号を前記通信部によって受信した場合、前記提供デバイスの識別情報に対応付けられた音を再生してもよい。
【0112】
(7)上記(1)から(6)までの何れか1つに記載の電子機器では、
前記電子機器と前記提供デバイスとの間の通信は、音響通信であってもよい。
【0113】
(8)上記(1)から(7)までの何れか1つに記載の電子機器では、
前記ユーザの識別情報は、ワンタイムパスワードであってもよい。
【0114】
(9)上記(1)から(8)までの何れか1つに記載の電子機器では、
前記電子機器は、前記ユーザの頭部に装着されてもよい。
【0115】
一実施形態において、(10)提供デバイスは、
指向性を有する通信部と、
ユーザの識別情報を含む搬送信号を前記通信部によって受信すると、前記ユーザの識別情報を保存し、前記搬送信号への応答信号を前記通信部によって送信する制御部と、
を備える。
【0116】
一実施形態において、(11)提供システムは、
ユーザの頭部の動きの検出結果に基づいて前記ユーザが凝視状態であると判定した場合、前記ユーザの識別情報を含む搬送信号を、指向性を有する第1通信部によって送信する電子機器と、
前記搬送信号を、指向性を有する第2通信部によって受信した場合、前記ユーザの識別情報を保存し、前記搬送信号への応答信号を前記第2通信部によって送信する提供デバイスと、
を含む。
【0117】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことができる。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段又は各ステップ等は論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段又は各ステップ等と置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段又は各ステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0118】
例えば、上述した実施形態では、電子機器20は、ヒアラブルデバイスであるものとして説明した。ただし、電子機器20は、ユーザの頭部に装着可能であり、ユーザに情報を提供可能であれば、ヒアラブルデバイスに限定されない。他の例として、電子機器20は、眼鏡型のウェアラブルデバイスであってもよい。この場合、電子機器20は、テキストデータをグラスに表示させることにより情報を提供してよい。
【0119】
例えば、電子機器20の制御部31は、外部サーバから、提供デバイス10の固有IDと、その固有IDの提供デバイス10に関する2つ以上の音データとを受信してよい。この場合、制御部31は、記憶部30に、提供デバイス10の固有IDと提供デバイス10に関する2つ以上の音データとを対応付けて記憶させてよい。提供デバイス10に関する2つ以上の音データは、要約情報を提供するための第1音データと、詳細情報を提供するための第2音データとを含んでよい。この場合、電子機器20では、制御部31は、提供デバイス10の固有IDを含む固有信号を最初に受信したとき、第1音データをスピーカ部26に再生させてよい。ユーザが提供デバイス10を凝視し続けることにより、制御部31は、同じ固有IDを含む固有信号を再度受信し得る。同じ固有IDを含む固有信号を再度受信した場合、制御部31は、第2音データをスピーカ部26に再生させてよい。ここで、電子機器20では、制御部31は、ワンタイムパスワードのリセット指示を入力部25によって受け付けてもよい。ユーザは、第1音データを聞きたい場合、ワンタイムパスワードのリセット指示を入力部25から入力してよい。制御部31は、ワンタイムパスワードのリセット指示を入力部25によって受け付けた場合に、ユーザが凝視状態であると判定した場合、新たなワンタイムパスワードを生成してよい。制御部31は、新たなワンタイムパスワードを含む搬送信号を通信部22によって送信してよい。このような構成により、ユーザは、第1音データを再度聞くことができる。
【0120】
例えば、電子機器20の制御部31は、2つ以上の提供デバイス10と同時に音響通信してもよい。この場合、制御部31は、マイク部24のマルチマイクのビームフォーミングによって、又は、複数のそれぞれ異なる指向性を有するマイクによって、異なる提供デバイス10との間の音響通信を分離してもよい。例えば、制御部31は、電子機器20の左右方向に、異なる提供デバイス10との間の音響通信を分離してよい。
【0121】
例えば、電子機器20の制御部31は、2つ以上の提供デバイス10と同時に音響通信してもよい。この場合、制御部31は、2つ以上の提供デバイス10についての通知処理を同時に実行し得る。2つ以上の提供デバイス10についての通知処理を同時に実行する場合、制御部31は、電子機器20から提供デバイス10までの距離に応じて、スピーカ部26から出力する効果音の音源定位及び効果音の音量を変えてもよい。制御部31は、提供デバイス10から受信する超音波信号の強度によって、電子機器20から提供デバイス10までの距離を測定してよい。例えば、制御部31は、電子機器20からの距離が遠い提供デバイス10の効果音の音量を、電子機器20からの距離が近い提供デバイス10の効果音の音量よりも、小さくしてよい。制御部31は、電子機器20からの距離が遠い提供デバイス10の効果音の音源定位を、電子機器20からの距離が近い提供デバイス10の効果音の効果音の音源定位よりも、ユーザの上方向に配置してよい。このような構成により、ユーザは、自身の頭部を音声による情報を聞きたい提供デバイス10の効果音の音源定位の方に向け得る。制御部31は、ユーザの頭部の向きをセンサ部28によって検出することにより、ユーザが声による情報を聞きたい提供デバイス10の効果音の音源定位を特定してよい。制御部31は、音源定位を特定することにより、ユーザが音声による情報を聞きたい提供デバイス10を特定してよい。制御部31は、特定した提供デバイス10に対して要求信号を生成して送信してよい。
【0122】
例えば、上述した実施形態では、提供デバイス10は、案内板であるものとして説明した。ただし、提供デバイス10は、看板であってもよい。
【0123】
例えば、上述した実施形態では、提供デバイス10は、屋外に位置するものとして説明した。ただし、提供デバイス10は、博物館等の屋内に位置してもよい。この場合、提供デバイス10が含む2つの面のうちの一方の面には、博物館等の展示物の情報が記載されていてよい。電子機器20には、博物館等の専用のアプリケーションプログラムがインストールされていてよい。制御部31は、このアプリケーションプログラムに従い、音情報をダウンロードしてよい。
【符号の説明】
【0124】
1 提供システム
10,10A,10B 提供デバイス
11 通信部
12 スピーカ部
13 マイク部
14 記憶部
15 制御部
20,20A,20B 電子機器
21 通信部
22 通信部
23 スピーカ部
24 マイク部
25 入力部
26 スピーカ部
27 測位部
28 センサ部
29 振動部
30 記憶部
31 制御部
2A,2B ユーザ
3A,3B 搬送信号
4A,4B 応答信号
5A,5B 要求信号
6A,6B 固有信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6