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特開2024-84066積層体、その製造方法、および、その利用
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  • 特開-積層体、その製造方法、および、その利用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084066
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】積層体、その製造方法、および、その利用
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20240617BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B32B27/10
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198237
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】村島 健介
(72)【発明者】
【氏名】窪田 智文
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086AD02
3E086AD05
3E086AD06
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA16
3E086BA18
3E086BA19
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA29
3E086BA35
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB23
3E086BB37
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB75
3E086CA01
3E086CA11
3E086CA28
3E086CA31
3E086CA40
3E086DA08
4F100AK01B
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AK41D
4F100AK41E
4F100BA10C
4F100DG10A
4F100EH17
4F100EJ02
4F100EJ02C
4F100EJ42
4F100GB16
4F100JA04C
4F100JA04D
4F100JB16C
4F100JB16D
4F100JJ02
4F100JJ02C
4F100JL11B
4F100JL11E
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】      (修正有)
【課題】発泡層形成後に高い断熱性能を有し、さらに紙基材層と樹脂層との間に十分なラミネート強度を有する発泡積層体を製造するために好適な積層体を提供すること。
【解決手段】紙基材(A)層2と、該紙基材(A)層の一方の面に、第1の接着性樹脂(C1)層5と、ポリ(3―ヒドロキシブチレート)系樹脂を主成分とする第1の熱可塑性樹脂(B1)層3と、がこの順に形成され、前記紙基材(A)層の他方の面に、ポリ(3―ヒドロキシブチレート)系樹脂を主成分とする第2の熱可塑性樹脂(B2)層4が形成された積層体1であって、下記要件を満たす、生分解性積層体。
(要件1)前記第1の接着性樹脂(C1)層の目付量が0.1g/m以上2.0g/m未満である
(要件2)前記第1の接着性樹脂(C1)層の融点は、前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層の融点より高い温度である
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材(A)層と、
該紙基材(A)層の一方の面に、第1の接着性樹脂(C1)層と、
ポリ(3―ヒドロキシブチレート)系樹脂を主成分とする第1の熱可塑性樹脂(B1)層と、がこの順に形成され、
前記紙基材(A)層の他方の面に、ポリ(3―ヒドロキシブチレート)系樹脂を主成分とする第2の熱可塑性樹脂(B2)層が形成された積層体であって、
下記要件を満たす、生分解性積層体。
(要件1)前記第1の接着性樹脂(C1)層の目付量が0.1g/m以上2.0g/m未満である
(要件2)前記第1の接着性樹脂(C1)層の融点は、前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層の融点より高い温度である
【請求項2】
前記紙基材(A)層の水分含有率が4.0%以上10.0%未満である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第2の熱可塑性樹脂(B2)層の融点は、前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層の融点より高い温度である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層は、融点が130℃未満であり、かつ、層厚みが
10μm以上50μm未満である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項5】
前記第1の接着性樹脂(C1)層は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項6】
前記紙基材(A)層と、
前記第2の熱可塑性樹脂(B2)層と、の間に、第2の接着性樹脂(C2)層を含む、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項7】
前記第2の接着性樹脂(C2)層は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層および/または前記第2の熱可塑性樹脂(B2)層は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含む、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1または2に記載の積層体を含む、成形体。
【請求項10】
請求項1または2に記載の積層体において、前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層が発泡樹脂層である、発泡積層体。
【請求項11】
前記発泡樹脂層の層厚みが15μm以上500μm以上である、請求項10に記載の発泡積層体。
【請求項12】
請求項10の発泡積層体における発泡樹脂層を、最外面に有する、断熱成形体。
【請求項13】
請求項1または2に記載の積層体を、90℃以上、かつ、第1の接着性樹脂(C1)層の融点より低い温度で加熱する、発泡工程を含む、発泡積層体の製造方法。
【請求項14】
請求項1または2に記載の積層体を、成形加工した後に、90℃以上、かつ、第1の接着性樹脂(C1)層の融点より低い温度で加熱する、断熱成形体の製造方法。















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙基材の両面にそれぞれ熱可塑性樹脂層を有する積層体、その製造方法、、および、その利用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄プラスチックによる環境問題がクローズアップされている。中でも、廃棄プラスチックによる海洋汚染は深刻であり、自然環境下で分解する生分解性樹脂の普及が期待されている。そのような生分解性樹脂としては、種々のものが知られているが、中でも、3-ヒドロキシブチレート(以下、「3HB」と称することがある。)と3-ヒドロキシヘキサノエート(以下、「3HH」と称することがある。)との共重合体(以下、「PHBH」と称することがある。)は、多くの微生物種の細胞内にエネルギー貯蔵物質として生産、蓄積される熱可塑性ポリエステルであり、土中だけでなく、海水中でも生分解が進行しうる材料であるため、上記の問題を解決する素材として注目されている。その中でも紙等の基材と一体化させたPHBH/紙複合材は環境負荷の小さい食品接触容器等に応用できることから、社会的な関心が特に高い。
【0003】
上記背景から近年、PHBHと紙とを一体化させた積層体を飲料用カップなどの食品接触容器に応用することが提案されてきた。しかしPHBHラミネート紙コップは一般に断熱性能に乏しく、ホットコーヒーなどの高温液体を充填した際にはコップ外面が熱くなってしまい、そのまま使用することが難しかった。
【0004】
特許文献1では、熱可塑性樹脂を押出ラミネートすることで紙と一体化させた後に加熱し、紙中の水分の蒸発を利用してラミネート層を発泡させることで、積層体の断熱性能を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5256708号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている製造方法に基づいてPHBH/紙積層体を加熱すると、紙中の水分の蒸気によるPHBH層の発泡層の形成により断熱性能は向上するものの、発泡時にPHBH層が紙基材から剥離してしまうといった課題があった。PHBH層の剥離は成形体の印刷物の外観不良だけでなく、カップ成形における接着不良の発生につながるおそれがあった。
【0007】
そこで本発明は上記現状に鑑み、発泡層形成後に高い断熱性能を有し、さらに紙基材層と樹脂層との間に十分なラミネート強度を有する発泡積層体を製造するために好適な積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、紙基材(A)層と、紙基材(A)層の一方の面に第1の接着性樹脂(C1)層とP3HB系樹脂を主成分とする第1の熱可塑性樹脂(B1)層とがこの順に積層し、紙基材(A)層の他面にはP3HB系樹脂を主成分とする第2の熱可塑性樹脂(B2)層が積層した積層体とし、第1の接着性樹脂(C1)層の目付量および融点を特定の範囲とすることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、紙基材(A)層と、
該紙基材(A)層の一方の面に、第1の接着性樹脂(C1)層と、
ポリ(3―ヒドロキシブチレート)系樹脂を主成分とする第1の熱可塑性樹脂(B1)層と、がこの順に形成され、
前記紙基材(A)層の他方の面に、ポリ(3―ヒドロキシブチレート)系樹脂を主成分とする第2の熱可塑性樹脂(B2)層が形成された積層体であって、
下記要件を満たす、生分解性積層体に関する。
【0010】
(要件1)前記第1の接着性樹脂(C1)層の目付量が0.1g/m以上2.0g/m未満である
(要件2)前記第1の接着性樹脂(C1)層の融点は、前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層の融点より高い温度である
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発泡層形成後に高い断熱性能を有し、さらに紙基材層と樹脂層との間に十分なラミネート強度を有する発泡積層体を製造するために好適な積層体を提供することができる。
また、本発明の積層体から製造される断熱成形体は、高い断熱性により、当該成形体に高温液体を充填した場合でも問題なく把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一態様に係る積層体の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
[積層体]
本発明に係る積層体は、紙基材(A)層と、紙基材(A)層の一方の面に第1の接着性樹脂(C1)層とP3HB系樹脂を主成分とする第1の熱可塑性樹脂(B1)層とがこの順に形成されており、紙基材(A)層の他面にはP3HB系樹脂を主成分とする第2の熱可塑性樹脂(B2)層が形成されている。ここで、耐水性や光沢性を付与するなどの目的で第1の熱可塑性樹脂(B1)層や第2の熱可塑性樹脂(B2)層の上には、さらに別の樹脂層が積層されていてもよい。
【0015】
本発明にかかる積層体において、第1の接着性樹脂(C1)層の融点は、第1の熱可塑性樹脂(B1)層の融点よりも高い温度である。これにより後述する発泡工程において、第1の熱可塑性樹脂(B1)層が発泡により紙基材(A)層から剥離することを防ぐことができ、第1の熱可塑性樹脂(B1)層と紙基材(A)層との間で高いラミネート強度を発現できる。
【0016】
本発明にかかる積層体において、第2の熱可塑性樹脂(B2)層の融点は、第1の熱可塑性樹脂(B1)層の融点よりも高い温度であることが好ましい。これにより後述する発泡工程において、第1の熱可塑性樹脂(B1)層を効率よく発泡させることができる。
【0017】
本発明にかかる積層体において、紙基材(A)層と第2の熱可塑性樹脂(B2)層との間に、第2の接着性樹脂(C2)層を含むことが好ましい。これにより紙基材(A)層と第2の熱可塑性樹脂(B2)層とのラミネート強度を向上させることができ、後述の発泡工程において、第1の熱可塑性樹脂(B1)層を効率よく発泡させることができる。
【0018】
[紙基材(A)層]
本発明に係る紙基材(A)層としては紙を主成分とするものであれば特に限定されないが、生分解性であることが望ましい。また、紙(主成分がセルロース)のほかに、セロハン、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ポリグリコール酸、プルランを混合した紙基材や、またはこれらの紙基材にアルミ、シリカ等の無機物を蒸着したもの等が挙げられる。紙の種類は、特に限定されず、カップ原紙、クラフト紙、上質紙、コート紙、薄葉紙、グラシン紙、板紙等が挙げられる。紙の種類は、積層体の用途に応じて適宜選択することができる。紙には、必要に応じて、耐水剤、撥水剤、無機物等を添加してもよく、酸素バリア層コーティング、水蒸気バリアコーティング等の表面処理が施されたものであってもよい。また、基材層表面に、コロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、フレーム処理、アンカーコート処理、酸素バリア層コーティング、水蒸気バリアコーティング等の表面処理が施されたものであってもよく、これらの表面処理は、単独で行ってもよいし、複数の表面処理を併用してもよい。
【0019】
紙基材(A)層の水分含有率は、後述する第1の熱可塑性樹脂(B1)層を発泡させる工程の前段階で4%以上10%未満であることが好ましく、5%以上9%未満であることがより好ましい。4%未満であると、積層体を加熱して発泡させるために発生する水蒸気の量が不十分となり、発泡不良が生じる場合があるだけでなく、紙基材そのものの伸び性が悪く、紙カップなどの成形工程において断紙してしまうおそれがある。一方10%以上であると紙基材としてのこしがなく、強度が不足することから、紙カップなどの成形体への適応に不向きである。
【0020】
[第1の熱可塑性樹脂(B1)層]
本発明に係る第1の熱可塑性樹脂(B1)層は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)
系樹脂を50wt%以上含んでいる。P3HB系樹脂としては、3-ヒドロキシブチレート単位を有していればよく、3-ヒドロキシブチレート単位のみを含む重合体であってもよいし、3-ヒドロキシブチレート単位以外の繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。3-ヒドロキシブチレート単位以外の繰り返し単位としては、本発明の効果を損なわない範囲で特に限定されないが、生分解性に優れる点で、ヒドロキシアルカノエート(以下、「HA」と称することがある。)単位を含むことが好ましい。P3HB系樹脂としては、例えば、ポリ3-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)(PHB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(PHB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)(PHB3HO)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)(PHB3HOD)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)(PHB3HD)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHB3HV3HH)などを好ましく用いることができ、単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。P3HB系樹脂の中でも、工業的に生産が容易で入手しやすい、加工性や機械的特性などの特性バランスに優れている等の点で、特にポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)を好ましく用いることができる。第1の熱可塑性樹脂(B1)層は、P3HB系樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲であればポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレート等の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂等を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0021】
また、前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層には、本発明の効果を阻害しない範囲で、樹脂材料に通常添加される他の添加剤、例えば、無機充填剤、顔料、染料などの着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、可塑剤、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤、その他の副次的添加剤を1種または2種以上添加してもよい。ただしこれらは任意の成分であり、前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層はもちろん、これらの成分を含有しないものであってもよい。任意成分としては、前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層のラミネートの際に冷却ロールなどの圧着面からの剥離性をさらに改善することができるという観点から、滑剤、無機充填剤の使用が好ましい。
【0022】
前記滑剤としては、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の飽和または不飽和の脂肪酸アミドや、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド等のアルキレン脂肪酸アミド等の脂肪族アミド化合物やペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0023】
前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層における滑剤の配合量は、前記第1の熱可塑性樹脂(B1)100重量部に対して0.1~2重量部であることが好ましく、0.2~1重量部がさらに好ましい。配合量を0.1重量部以上とすることにより、滑剤配合による剥離性改善効果を得ることができる。逆に配合量が2重量部を超えると、圧着時に滑剤がブリードして冷却ロール等の圧着面に付着し、長時間の連続加工が困難になる問題がある。
【0024】
前記無機充填材としては、例えば、平均粒子径が0.5μm以上の、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、クレイ、カオリン、酸化チタン、アルミナ、ゼオライト等が挙げられる。
【0025】
前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層における無機充填剤の配合量は、前記第1の熱可塑性樹脂(B1)100重量部に対して0.5~5重量部であることが好ましく、1~3重量部がさらに好ましい。配合量を0.5重量部以上とすることにより、無機充填剤配合による剥離性改善効果を得ることができる。逆に配合量が5重量部を超えると、前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層に割れが生じ易くなる場合がある。
【0026】
P3HB系樹脂が、3‐ヒドロキシブチレート単位とその他単位からなる共重合体の場合は、各々の繰り返し単位の組成比を変えることのより特性を制御することができる。特に、PHBHは3-ヒドロキシブチレート単位と3-ヒドロキシヘキサノエート単位の組成比を変えることで、融点、結晶化度を変化させ、結果として、ヤング率、耐熱性等の物性を容易に調整することができ、かつ、ポリプロピレンとポリエチレンとの間の物性を付与することが可能であることから、工業的に特に有用なプラスチックである。
【0027】
PHBHの具体的な製造方法は、例えば、国際公開第2010/013483号に記載されている。また、PHBHの市販品としては、株式会社カネカ「カネカ生分解性ポリマーGreen Planet」(登録商標)などが挙げられる。
【0028】
前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層の融点は、130℃未満であることが好ましく、115℃未満であることがより好ましく、100℃未満であることがさらに好ましい。融点が130℃以上であると、例えば、後述する第1の熱可塑性樹脂(B1)層内の少なくとも一部分に気泡を発生させる工程において、十分な気泡が発生しない場合があり、発明の効果が十分には得られにくくなる場合がある。
【0029】
前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層の発泡前の厚みは10μm以上50μm未満であることが好ましく、15μm以上45μm未満であることがより好ましく、20μm以上40μm未満であることが特に好ましい。10μm未満であると、例えば押出ラミネート法によって紙基材(A)層と積層する際に、押し出された樹脂の溶融張力が不足するために、幅や厚みの安定したラミネートが難しいだけでなく、熱量が不足するために十分なラミネート強度が得られにくいといった懸念がある。また50μm以上であると押し出される樹脂の溶融状態を均一にすることが難しく、やはりこの場合も幅や厚みの安定したラミネートを実現することは困難である。
【0030】
前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層の発泡後の厚みは15μm以上500μm未満であることが好ましく、30μm以上400μm未満であることがより好ましく、45μm以上300μm未満であることがさらに好ましい。15μm未満であると断熱性能に乏しく、本発明において得られる効果が不十分となる。500μm以上であると発泡によって紙カップ胴巻きヒートシール部の剥離が発生する場合がある。
【0031】
本発明における第1の熱可塑性樹脂(B1)層に含まれるP3HB系樹脂の重量平均分子量(以下、Mwと称することがある)は、紙基材(A)層へ接着性またはラミネート強度を良くする観点から10万以上75万未満であれば好ましく、20万以上65万未満がより好ましく、30万以上55万未満がさらに好ましい。なお、重量平均分子量が10万未満では、加温時の溶出物が多くなる可能性があり、食品容器としては使用できない場合があるだけでなく、押出加工時にも分解物の寄与が大きくなり、紙基材(A)層とのラミネート強度が低下する可能性がある。また75万を超えると、溶融粘度が高くなるために、紙基材(A)への接着性またはラミネート強度が低下する場合がある。なお、本願において、P3HB系樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(昭和電工社製「Shodex GPC-101」)によって、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K-804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。
【0032】
本発明の一実施形態において、第1の熱可塑性樹脂(B1)層には重量平均分子量の異なる複数種のP3HB系樹脂を混合して用いることが出来る。
【0033】
尚、複数種のP3HB系樹脂を混合して用いる場合、あるいは、他の樹脂成分を混合する場合における、第1の熱可塑性樹脂(B1)層の樹脂成分の重量平均分子量とは、層全体に含まれる樹脂成分の重量平均分子量を指す。
【0034】
[第2の熱可塑性樹脂(B2)層]
本発明に係る第2の熱可塑性樹脂(B2)層としては、前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層と同様のものを用いることができるが、第2の熱可塑性樹脂(B2)層の融点が、第1の熱可塑性樹脂(B1)層の融点よりも高い温度であることが好ましく、130℃以上160℃未満であることがより好ましい。130℃未満であると、紙基材(A)層から発生させた水蒸気が第2の熱可塑性樹脂(B2)層を発泡させてしまうことで耐水性を悪化させてしまい、紙コップとしての性能を著しく低下させてしまうだけでなく、第1の熱可塑性樹脂(B1)層の発泡が不十分となり、断熱性能も低下してしまうおそれがある。一方、160℃以上であるとカップ成形をする際のヒートシール性に優れず、良好な成形体を得ることが難しくなる場合がある。
【0035】
[第1の接着性樹脂(C1)層]
本発明における第1の接着性樹脂(C1)層に含有される樹脂成分としては、塗工紙分野または樹脂フィルム分野で一般的に使用されているものであれば特に限定されないが、紙基材およびPHBHとの親和性に優れる成分が少なくとも1種類以上含まれていることが望ましく、PHBH等のP3HB系樹脂、エステル系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、スチレン-イソプレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、尿素樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、イミン系樹脂などを挙げることができる。これらは1種類で用いることもできるし、必要に応じて2種類以上の樹脂を任意の割合で混合して用いることもできる。
上記の接着性樹脂の中でも、第1の熱可塑性樹脂(B1)層との親和性に優れる点で、P3HB系樹脂、特に、PHBHを主成分として用いることが好ましい。
【0036】
また各々の樹脂は水溶性のものであっても有機溶媒に溶けるものであってもよいが、例えば水に不溶の樹脂である場合、後述する積層体の形成時の当該樹脂の水系の分散エマルジョンまたは分散スラリーのコーティングにおいて、水中での分散性と塗工性を改良するために他の添加剤を加えることもできる。水系の分散エマルジョンまたは分散スラリーまたは水溶性樹脂をコーティングする場合、樹脂の固形分濃度は特に制限されないが、乾燥に必要な熱量を低く抑えるために30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。また、分散した樹脂の沈降によって塗工性に悪影響が出る場合があることから、60%以下であることが好ましい。
【0037】
紙基材(A)層上に形成される第1の接着性樹脂(C1)層の目付量は0.1g/m以上2.0g/m未満である。紙基材(A)層と第1の熱可塑性樹脂(B1)層との間の十分なラミネート強度を確保する観点から、下限は0.3g/m以上が好ましく、0.5g/m以上がさらに好ましい。第1の熱可塑性樹脂(B1)層の発泡を効率よく行う観点から、上限は、1.5g/m以下が好ましく、1.0g/m以下がさらに好ましい。
【0038】
0.1g/m未満であると接着層としての機能が不十分となり、紙基材(A)層と第1の熱可塑性樹脂(B1)層との間の接着強度が低く、双方が剥離してしまうおそれがある。2.0g/m以上であると後述する発泡工程において、紙基材(A)層から発生した水蒸気が第1の熱可塑性樹脂(B1)層へ到達しづらくなり、発泡不良を引き起こす可能性がある。
【0039】
第1の接着性樹脂(C1)層の融点は、第1の熱可塑性樹脂(B1)層の融点よりも高い温度であり、さらに、130℃以上であることが好ましい。130℃未満である場合、第1の接着性樹脂(C1)そのものが発泡してしまう場合があり、それにともなって紙基材(A)層から、第1の接着性樹脂(C1)層が剥落してしまうおそれがある。
【0040】
[第2の接着性樹脂(C2)層]
本発明に係る第2の接着性樹脂(C2)層は、紙基材(A)層と第2の熱可塑性樹脂(B2)層との間の接着強度が不十分な場合に必要に応じて用いることができる。第2の接着性樹脂(C2)層を構成する成分としては第1の接着性樹脂(C1)層と同様のものを用いてもよいし、異なっていてもよいが、第1の接着性樹脂(C1)層と同様、P3HB系樹脂、特に、PHBHを主成分として用いることが好ましい。
【0041】
第2の接着性樹脂(C2)層においては、カップ成形性を阻害しない限りは、その目付量については特に限定されず、必要に応じて2.0g/m以上の高目付量のものを用いることも可能である。
【0042】
[積層体の製造方法]
本発明に係る積層体は、紙基材(A)層の一方の面に第1の接着性樹脂(C1)層、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂、を主成分とする第1の熱可塑性樹脂(B1)層をこの順に形成し、紙基材(A)層の他面にポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を主成分とする第2の熱可塑性樹脂(B2)層を形成することにより製造される。また、紙基材(A)層と第2の熱可塑性樹脂(B2)層との間の接着強度を改善する目的から、紙基材(A)層とのうち第2の接着性樹脂(B2)層の間に第2の接着性樹脂(C2)層を形成してもよい。
【0043】
前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層および第2の熱可塑性樹脂(B2)層の形成方法としては、押出ラミネーション、熱ラミネーションや、水等の液体に第1の熱可塑性樹脂(B1)および第2の熱可塑性樹脂(B2)をそれぞれ溶解あるいは分散させた水系コーティング液を、紙等の基材層の表面に塗布し、加熱して乾燥及び成膜することにより形成する方法(以下、「コーティング法」と称することがある。)を挙げることができる。特に、他の層を介さずに、紙基材(A)層等の層表面に熱可塑性樹脂層を直接積層する場合、前記コーティング液の一部が紙基材層等の層表面に染み込むため、各熱可塑性樹脂層と前記層表面との接着強度を高くしやすい点で、コーティング法を好ましく用いることができる。
【0044】
押出ラミネーション、又は熱ラミネーションを実施する時の加熱温度は、公知の条件の中から適宜設定してよいが、樹脂材料(熱可塑性樹脂を構成する、P3HB系樹脂を含む樹脂材料)の融点以上、かつ、該融点+30℃未満の温度であることが好ましい。この範囲内の温度で押出ラミネーション、又は熱ラミネーションを実施すると、P3HB系樹脂の分解を回避しながら、熱可塑性樹脂層の形成を実現できる。
【0045】
コーティング法では、水系コーティング液を基材の表面に塗布して塗布膜を形成した後、熱風の吹き付け、赤外線照射、超音波照射、及び加熱ロールとの接触からなる群より選択される少なくとも1つの方法を用いて、該塗布膜を、前記樹脂材料の融点以上、かつ、該融点+30℃未満の温度に加熱して製膜することが好ましい。この範囲内の温度で成膜することにより、P3HB系樹脂の分解を回避しながら基材表面でP3HB系樹脂を溶融させることにより、均一性の高い熱可塑性樹脂層を形成できる。
【0046】
前記第1の接着性樹脂(C1)層および/または第2の接着性樹脂(C2)層の形成方法としては、紙基材(A)層上に均一に形成される方法であれば特に限定されないが、生産性や品質の安定性を高くする観点からはコーティング法を好ましく用いることができる。前記第1の接着性樹脂(C1)層および/または第2の接着性樹脂(C2)層に用いる樹脂をコーティング液とする場合、各々の樹脂は水溶性のものであっても有機溶媒に溶けるものであってもよく、例えばPHBHのように水に不溶の樹脂である場合には、上述の第1の熱可塑性樹脂(B1)層や第2の熱可塑性樹脂(B2)層と同様の手法を用いることが可能である。
【0047】
尚、第1の熱可塑性樹脂(B1)層および第2の熱可塑性樹脂(B2)層と、第1の接着性樹脂(C1)層および/または第2の接着性樹脂(C2)層との接着性を改善するなどの目的で、第1の接着性樹脂(C1)層および/または第2の接着性樹脂(C2)層の表面に対してコロナ処理等を行うこともできる。
【0048】
[発泡積層体の製造方法]
本発明の積層体を任意の方法で加熱し第1の熱可塑性樹脂(B1)層を気泡を発生(発泡)させることにより、発泡積層体を製造できるが、加熱方式としては例えば、熱風加熱、赤外線加熱、マイクロウェーブ加熱、ロール加熱、熱板加熱などが挙げられ、これらは単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。加熱温度は水が蒸発を始める90℃以上であり、かつPHBH等のP3HB系樹脂の分解点である180℃未満であれば良いが、第1の熱可塑性樹脂(B1)層を選択的に発泡させる目的からは130℃未満であることが好ましい。発泡層の厚みは加熱時間によって容易に調整することができるが、紙基材(A)層の機械特性の悪化を抑制する観点からは1分間以上7分間未満であることが好ましい。
【0049】
第1の熱可塑性樹脂(B1)層を発泡させる工程は、後述する成形体を形成する工程の前で実施されてもよく、あるいは後で実施されても良いが、成形歩留まりを向上させる目的からは、成形体を形成した後に行われることが好ましい。
【0050】
[成形体、断熱成形体]
本発明の一実施形態に係る成形体または断熱成形体(以下、「本(断熱)成形体」と称することがある。)は、本発明の積層体および/または発泡積層体(以下、「本(発泡)積層体」と称することがある。)を含む。本(断熱)成形体は、P3HB系樹脂を含むラミネート層またはコーティング層の表面状態が良好である本(発泡)積層体から形成されているため、種々の用途において有利である。
【0051】
断熱成形体は、本発明の積層体を加熱し発泡後に成形加工して製造してもよいし、本発明の積層体を成形加工した成形体を加熱し樹脂層の一部を発泡させて製造してもよい。
【0052】
本(断熱)成形体は、本(発泡)積層体を含むものであれば特に限定されないが、例えば、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器(例えば、ボトル容器)、袋、部品等が挙げられる。本(断熱)成形体は、海洋汚染の対策の観点から、好ましくは、袋またはボトル容器である。
【0053】
本発明の一実施形態において、本(断熱)成形体は、本(発泡)積層体それ自体であってもよいし、本(発泡)積層体を用いた2次加工されたものであってもよい。
【0054】
本(発泡)積層体が2次加工されていることにより、それを含む本(断熱)成形体は、ショッピングバッグ、各種製袋、食品・菓子包装材、カップ、トレー、カートン等の各種包装容器資材として(換言すれば、食品、化粧品、電子、医療、薬品等の各種分野で)、好適に利用することができる。本(発泡)積層体は、基材への高い接着性および良好な耐熱性を有する樹脂組成物を含むために、液体を入れる容器、特に、即席麺、即席スープ、コーヒー等の飲食品カップ、総菜、弁当、電子レンジ食品等に用いるトレー等、温かい内容物を入れる容器として、より好ましい。
【0055】
上記の各種2次加工は、従来の樹脂ラミネート紙またはコート紙と同じ方法、すなわち、各種製袋機、充填包装機等を用いて行うことができる。また、紙カップ成型機、打抜き機、函機等の装置を用いて加工することもできる。これらの加工機において、本(発泡)積層体の接着方法は公知の技術を使用することができ、例えば、ヒートシール法、インパルスシール法、超音波シール法、高周波シール法、ホットエアシール法、フレームシール法等が使用できる。
【0056】
本(発泡)積層体のヒートシール温度は、接着法により異なるが、例えば、本(発泡)積層体のヒートシール温度は、シールバーを有する加熱式ヒートシール試験機を使用した場合、通常は樹脂温度が180℃以下、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下となるように設定する。上記範囲内であると、シール部近傍の樹脂の溶け出しを回避し、適当な樹脂層の膜厚の確保およびシール強度の確保を行うことができる。また、シールバーを有する加熱式ヒートシール試験機を使用した場合の下限値は、通常は100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上である。上記範囲内であると、シール部における適当な接着を確保することができる。
【0057】
本(発泡)積層体のヒートシール圧力は、接着法により異なるが、例えば本(発泡)積層体のヒートシール圧力は、シールバーを有する加熱式ヒートシール試験機を使用した場合、通常は0.1MPa以上、好ましくは0.5MPa以上である。上記範囲内であると、シール部における適当な接着を確保することができる。また、シールバーを有する加熱式ヒートシール試験機を使用した場合の上限値は、通常は1.0MPa以下、好ましくは0.75MPa以下である。上記範囲内であると、シール端部の膜厚の薄肉化を回避し、シール強度を確保することができる。
【0058】
また、本(断熱)成形体は、その物性を改善するために、本(断熱)成形体とは異なる材料から構成される成形体(例えば、繊維、糸、ロープ、織物、編物、不織布、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器、袋、部品、発泡体等)と複合化することもできる。これらの材料も、生分解性であることが好ましい。
【0059】
以下の各項目では、本開示における好ましい態様を列挙するが、本発明は以下の項目に限定されるものではない。
[項目1]
紙基材(A)層と、
該紙基材(A)層の一方の面に、第1の接着性樹脂(C1)層と、
ポリ(3―ヒドロキシブチレート)系樹脂を主成分とする第1の熱可塑性樹脂(B1)層と、がこの順に形成され、
前記紙基材(A)層の他方の面に、ポリ(3―ヒドロキシブチレート)系樹脂を主成分とする第2の熱可塑性樹脂(B2)層が形成された積層体であって、
下記要件を満たす、生分解性積層体。
【0060】
(要件1)前記第1の接着性樹脂(C1)層の目付量が0.1g/m以上2.0g/m未満である
(要件2)前記第1の接着性樹脂(C1)層の融点は、前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層の融点より高い温度である
[項目2]
前記紙基材(A)層の水分含有率が4.0%以上10.0%未満である、項目1に記載の積層体。
[項目3]
前記第2の熱可塑性樹脂(B2)層の融点は、前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層の融点より高い温度である、項目1または2に記載の積層体。
[項目4]
前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層は、融点が130℃未満であり、かつ、層厚みが
10μm以上50μm未満である、項目1または2に記載の積層体。
[項目5]
前記第1の接着性樹脂(C1)層は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む、項目1または2に記載の積層体。
[項目6]
前記紙基材(A)層と、
前記第2の熱可塑性樹脂(B2)層と、の間に第2の接着性樹脂(C2)層を含む、項目1または2に記載の積層体。
[項目7]
前記第2の接着性樹脂(C2)層は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む、項目6に記載の積層体。
[項目8]
前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層および/または前記第2の熱可塑性樹脂(B2)層は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含む、項目1または2に記載の積層体。
[項目9]
項目1または2に記載の積層体を含む、成形体。
[項目10]
項目1または2に記載の積層体において、前記第1の熱可塑性樹脂(B1)層が発泡樹脂層である、発泡積層体。
[項目11]
前記発泡樹脂層の層厚みが15μm以上500μm以上である、項目10に記載の発泡積層体。
[項目12]
項目10の発泡積層体における発泡樹脂層を、最外面に有する、断熱成形体。
[項目13]
項目1または2に記載の積層体を、90℃以上、かつ、第1の接着性樹脂(C1)層の融点より低い温度で加熱する、発泡工程を含む、発泡積層体の製造方法。
[項目14]
項目1または2に記載の積層体を、成形加工した後に、90℃以上、かつ、第1の接着性樹脂(C1)層の融点より低い温度で加熱する、断熱成形体の製造方法。
【実施例0061】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲を限定されるものではない。
【0062】
〔製造例〕
<PHBHを主成分とする樹脂パウダーの製造方法>
実施例および比較例で使用したPHBHパウダーはいずれも国際公開公報WO2019-142845の実施例に記載の方法に準拠して製造した。具体的な処方を以下に示す。
【0063】
PHBHパウダー1:PHBH中の3HBと3HHの合計に対する3HHの割合が11モル%、融点が115℃であるPHBHパウダー
PHBHパウダー2:PHBH中の3HBと3HHの合計に対する3HHの割合が15モル%、融点が100℃であるPHBHパウダー
PHBHパウダー3:PHBH中の3HBと3HHの合計に対する3HHの割合が5モル%、融点が155℃であるPHBHパウダー
PHBHパウダー4:PHBH中の3HBと3HHの合計に対する3HHの割合が8モル%、融点が135℃であるPHBHパウダー
<PHBHを主成分とする樹脂ペレットの製造方法>
実施例および比較例で使用したPHBHペレットの具体的な製造方法を示す。
【0064】
PHBHペレット1:PHBHパウダー1(100重量部)に対し、ベヘン酸アミド(0.5重量部)をドライブレンドし、2軸押出機を用いて、設定温度150℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練してストランド状に押出し、40℃の温水に通して固化させてペレット状にカットした。
【0065】
PHBHペレット2~4:PHBHパウダー1に代えてPHBHパウダー2~4を用いた以外は、上記PHBHペレット1の製造方法と同様の方法で、PHBHペレット2~4を製造した。
【0066】
<PHBHを主成分として含むフィルムの製造方法>
上述のPHBHペレットを用いて、押出機の出口に巾400mmのT型ダイスを具備した単軸押出機を用いて、シリンダー内の設定温度が165℃、スクリューの回転数が20rpm、引取速度が20m/分となるようにフィルム状に押し出し、60℃の冷却ロールで固化させた後に巻き取ることでPHBHを主成分として含むフィルムを得た。
【0067】
<PHBHを主成分とする水系コーティング液の製造方法>
水系コーティング液1:国際公開第2004/041936号の実施例に記載の方法に準拠して、PHBH中の3HBと3HHの合計に対する3HHの割合が5モル%、PHBHの固形分濃度が50重量%となる樹脂分散液を得た。上記分散液100重量部に対し、PHBHの沈降防止剤(Optigel MW、BYK社製)0.3重量部、2%メチルセルロース(メトロース SM-400、信越化学社製)水溶液30重量部を加えて撹拌し、水系コーティング液1を得た。
【0068】
水系コーティング液2:水系コーティング液1の製造方法と同様の方法で、PHBH中の3HBと3HHの合計に対する3HHの割合が11モル%を含む、水系コーティング液2を得た。
【0069】
<紙基材(A)層の水分量の測定方法>
紙基材(A)層の水分量は日本工業規格JIS P8127:2010(紙及び板紙-ロットの水分試験方法-乾燥機による方法)に準拠して測定を行った。
【0070】
<生分解性積層体およびカップ成形体の製造>
(実施例1)
紙基材(A)層(水分含有率が5.0%、目付210g/mのA4サイズの原紙)に対し、水系コーティング液1をバーコーターNo.4でコーティングした直後に100℃に加熱した熱風オーブンに30秒間入れて乾燥させ、紙基材(A)層上に第1の接着性樹脂(C1)層(目付0.5g/m)を形成した。続いて、前記で得られた第1の接着性樹脂(C1)層付きの紙基材と、予めPHBH-1ペレットから作製されたPHBH-1フィルム(厚み20μm)を、紙面側に加熱ロール、フィルム側に冷却ロールが接するように挟み込み、PHBH-1フィルムの表面温度が170℃なるように条件を調整し、紙基材(A)層に、第1の接着性樹脂(C1)層、第1の熱可塑性樹脂(B1)層をこの順に形成させた。さらに、第1の熱可塑性樹脂(B1)層が形成された面の他面に対して、上記と同様の方法で、予めPHBHペレット3から作製されたPHBH-3フィルム(厚み20μm)を紙基材(A)層の表面上に形成させて積層体を得た。得られた積層体の構成を表1に示した。
【0071】
得られた積層体を胴部および底部の2ピースからなる紙カップ状に成形したものについて、120℃の熱風オーブンに2分間入れることで第1の熱可塑性樹脂(B1)層を発泡させた。発泡処理を行った後のカップ胴部の断面を切り出し光学顕微鏡で観察したところ、第1の熱可塑性樹脂(B1)の厚みは80μmであった。
【0072】
(実施例2)
第1の熱可塑性樹脂(B1)層の厚さが45μmとなるように調整した以外は実施例1に記載の方法と同様にして、積層体を得た。得られた積層体の構成を表1に示した。
発泡処理を行った後のカップ胴部の断面を切り出し光学顕微鏡で観察したところ、第1の熱可塑性樹脂(B1)の厚みは180μmであった。
【0073】
(実施例3)
得られた積層体を胴部および底部の2ピースからなる紙カップ状に成形したものについて、120℃の熱風オーブンに4分間入れたこと以外は実施例2に記載の方法と同様にして、積層体を得た。得られた積層体の構成を表1に示した。
【0074】
発泡処理を行った後のカップ胴部の断面を切り出し光学顕微鏡で観察したところ、第1の熱可塑性樹脂(B1)の厚みは300μmであった。
【0075】
(実施例4)
水系コーティング液1をバーコーターNo.1でコーティングした以外は実施例1に記載の方法と同様にして、積層体を得た。得られた積層体の構成を表1に示した。
【0076】
発泡処理を行った後のカップ胴部の断面を切り出し光学顕微鏡で観察したところ、第1の熱可塑性樹脂(B1)の厚みは150μmであった。
【0077】
(実施例5)
水系コーティング液1をバーコーターNo.20でコーティングした以外は実施例1に記載の方法と同様にして、生分解性積層体を得た。得られた積層体の構成を表1に示した。
【0078】
発泡処理を行った後のカップ胴部の断面を切り出し光学顕微鏡で観察したところ、第1の熱可塑性樹脂(B1)の厚みは40μmであった。
【0079】
(実施例6)
水分含有率が8.0%の原紙を用いた以外は実施例1に記載の方法と同様にして、積層体を得た。得られた積層体の構成を表1に示した。発泡処理を行った後のカップ胴部の断面を切り出し光学顕微鏡で観察したところ、第1の熱可塑性樹脂(B1)の厚みは120μmであった。
【0080】
(実施例7)
紙基材(A)層と、第1の接着性樹脂(C1)層と、第1の熱可塑性樹脂(B1)層とをこの順に形成した後、第1の熱可塑性樹脂(B1)層が形成された面の他面に対して、紙基材(A)層の表面にコーティング液2を用いて第2の接着性樹脂(C2)層を目付0.5g/mとなるように積層させた以外は実施例1に記載の方法と同様にして、積層体を得た。得られた積層体の構成を表1に示した。
【0081】
発泡処理を行った後のカップ胴部の断面を切り出し光学顕微鏡で観察したところ、第1の熱可塑性樹脂(B1)の厚みは80μmであった。
【0082】
(実施例8)
PHBHペレット1に代えてPHBHペレット2を用いた以外は実施例1に記載の方法と同様にして、積層体を得た。得られた積層体の構成を表1に示した。発泡処理を行った後のカップ胴部の断面を切り出し光学顕微鏡で観察したところ、第1の熱可塑性樹脂(B1)の厚みは100μmであった。
【0083】
(実施例9)
PHBHペレット3に代わってPHBHペレット4を用いた以外は実施例1に記載の方法と同様にして、積層体を得た。得られた積層体の構成を表1に示した。発泡処理を行った後のカップ胴部の断面を切り出し光学顕微鏡で観察したところ、第1の熱可塑性樹脂(B1)の厚みは60μmであった。
【0084】
(比較例1)
紙基材(A)層上に第1の接着性樹脂(C1)層を形成しなかった以外は、実施例1に記載の方法と同様にして、生分解性積層体を得た。得られた生分解性積層体の構成を表1に示した。発泡処理を行った後のカップ胴部の断面を切り出し光学顕微鏡で観察したところ、第1の熱可塑性樹脂(B1)の厚みは80μmであった。
【0085】
(比較例2)
水系コーティング液1をバーコーターNo.40でコーティングした以外は実施例1に記載の方法と同様にして、生分解性積層体を得た。得られた生分解性積層体の構成を表1に示した。発泡処理を行った後のカップ胴部の断面を切り出し光学顕微鏡で観察したところ、第1の熱可塑性樹脂(B1)の厚みは20μmであった。
【0086】
(比較例3)
水系コーティング液1に代えて水系コーティング液2を用いた以外は実施例1に記載の方法と同様にして、生分解性積層体を得た。得られた生分解性積層体の構成を表1に示した。
【0087】
【表1】
〔成形体の評価方法〕
実施例および比較例において得られた生分解性積層体を用いたカップ成形体について断熱性、および、第1の熱可塑性樹脂(B1)層のラミネート強度の評価を行い、結果を表2に示した。尚、評価は、以下の方法で行った。
【0088】
(断熱性の評価)
得られたカップ成形体の中に沸騰させたお湯を十分に充填し、その直後から手で把持した。カップを持っている手が熱いと感じて、カップを持てなくなるまでの時間を計測した。
【0089】
<評価基準>
A:1分以上
B:30秒以上1分未満
C:10秒以上30秒未満
D:10秒未満
上記評価結果がAまたはBまたはCであれば、十分な断熱性がある。
【0090】
(第1の熱可塑性樹脂(B1)のラミネート強度の評価)
第1の熱可塑性樹脂(B1)のラミネート強度の評価として、紙基材(A)とラミネートされた第1の熱可塑性樹脂(B1)との接着(ピール強度)を評価した。
【0091】
ラミネート強度試験は、カップ成形を行った翌日以降に行った。具体的には、押出ラミネート加工された第1の熱可塑性樹脂(B1)面にカッターの刃で薄くクロスカットをいれ、切込みの部分にニチバンNo.CT-17のテープをしっかりと貼り合わせた後、軽く手で剥がしてきっかけを入れた。その後、幅15mmになるように調整して切り出し、剥がれたラミネート層と紙とをそれぞれ180°の角度となるように冶具で掴み、ピール強度試験を行った。引張速度は200mm/分で行った。ピール試験機は、島津オートグラフ EZ-LX(株式会社島津製作所製)を用いた。
【0092】
<評価基準>
A:3.5N/15mm以上
B:2.5N/15mm以上3.5N/15mm未満
C:1.5N/15mm以上2.5N/15mm未満
D:1.5N/15mm未満
上記評価結果がAまたはBまたはCであれば、十分なラミネート強度がある。
【0093】
【表2】
〔結果〕
表1および表2より、実施例では紙基材(A)層と第1の熱可塑性樹脂(B1)層との間に十分なラミネート強度があり、本発明の積層体から作製されたカップ成形体は高い断熱性を持っていることがわかる。
【0094】
一方、比較例では紙基材(A)層と第1の熱可塑性樹脂(B1)層との間の十分なラミネート強度と、作製されたカップ成形体が高い断熱性を兼ね備えることができない。したがって、本発明によれば、発泡層形成後に高い断熱性能を有し、さらに紙基材層と樹脂層との間に十分なラミネート強度を有する発泡積層体を製造するために好適な積層体を提供することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 積層体
2.紙基材(A)層
3.第1の熱可塑性樹脂(B1)層
4.第2の熱可塑性樹脂(B2)層
5.第1の接着性樹脂(C1)層
図1