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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084080
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198268
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】504119424
【氏名又は名称】株式会社魁半導体
(72)【発明者】
【氏名】山原 基裕
(72)【発明者】
【氏名】登尾 一幸
(72)【発明者】
【氏名】田口 貢士
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004BA04
5F004BB13
5F004CA03
5F004DA00
5F004DA01
5F004DA22
5F004DA23
5F004DB01
(57)【要約】
【課題】簡便なドライプロセスであり複雑な液体原料のガス化が不要で、且つ安定的に還元処理、又はエッチング処理をすることが可能であり、液体原料をガス化する手段を有しないプラズマ装置を提供する。
【解決手段】プラズマによる処理対象物表面を還元処理、又はエッチング処理するプラズマ装置であって、真空チャンバー内に、前記還元ガス、又はエッチングガスの液体原料を配置する構造を有し、且つ、前記還元ガス、又はエッチングガスの液体原料を上記真空チャンバー内でガス化し、前記還元ガス、又はエッチングガスの液体原料のプラズマにより、基板表面上を還元処理、又はエッチング処理することを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマによる処理対象物表面を還元処理、又はエッチング処理するプラズマ装置であって、
真空チャンバー内に、前記還元ガス、又はエッチングガスの液体原料を配置する構造を有し、
且つ、前記還元ガス、又はエッチングガスの液体原料を上記真空チャンバー内でガス化し、前記還元ガス、又はエッチングガスの液体原料のプラズマにより、基板表面上を還元処理、又はエッチング処理することを特徴とするプラズマ装置。
【請求項2】
前記還元ガス、又はエッチングガスの液体原料を配置する構造が、溝形状であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ装置。
【請求項3】
前記還元ガス、又はエッチングガスの液体原料を配置する構造が、少なくとも1個以上の容器であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ装置。
【請求項4】
前記プラズマ装置に於いて、
低圧のチャンバー内に前記液体原料を配置することにより、前記処理対象物が処理される前記液体原料が、
揮発性の低い液体を使用することを特徴とする請求項1乃至3のプラズマ装置。
【請求項5】
前記揮発性の低い液体が、
二価アルコール(ジオール)以上のポリオールであることを特徴する請求項4に記載のプラズマ装置。
【請求項6】
前記プラズマ装置に於いて、
エッチング処理を施すときに使用する前記揮発性の低い液体が、
二価アルコール(ジオール)以上のポリオールにその他のエッチングに作用する液体原料が含有する組成物を使用することを特徴とするプラズマ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板等の対象物に対して、プラズマ処理により不要な層をエッチング又は還元する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の製造工程等においては、表面に存在している不要な有機物や酸化物等の層を除去する処理が必要となる工程が多く存在する。
【0003】
従来の減圧プラズマ処理は、先ず、被処理物を真空チャンバー内の陰極電極上又は平行平板電極間に配置し、被処理物全体が真空チャンバー(真空容器)内に配置された状態で、真空チャンバー内を真空ポンブで減圧することにより、減圧プラズマを励起する雰囲気が調整される。そして、この減圧霧囲気内において、プラズマガスが供給され、放電することによりプラズマを生成し、被処理物がプラズマ処理される。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されたプラズマ処理は、真空チャンバー内に水素プラズマを発生させて、真空チャンバー内に配置したペレット(半導体素子)の電極部に設けたはんだ端子を水素プラズマで還元することにより、はんだ表面の酸化物を除去している。
【0005】
また、例えば特許文献2に記載されたプラズマ処理は、シリコンチップ上のはんだをフッ素プラズマ処理する場合に、シリコンがフッ素プラズマと反応してフッ化珪素を生じ、このフッ化珪素がはんだバンプと反応することにより、はんだバンプを損傷することが指摘されている。
【0006】
これに対して、例えば特許文献3に記載されたプラズマ処理は、水あるいは水を含む混合物をプラズマ原料としてこれをプラズマ化することによって、水蒸気プラズマ(水蒸気プラズマ単体、あるいは、少なくとも一部に水蒸気プラズマを含む混合プラズマ)が形成される。前記水蒸気プラズマが高い還元力を有し、対象物の表面に露出している銅酸化物を還元して銅に戻すことができることが開示されている。
【0007】
また、例えば特許文献4に記載されたプラズマ処理は、水と酸素ガスとから成る混合ガスをプラズマ化することにより、洗浄対象物の表面にプラズマ洗浄を施す前から酸化銀が存在している場合に、有機物汚れを除去するだけでなく、表面の酸化銀を還元して銀に戻すことができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平02-057686号公報
【特許文献2】特開平11-163036号公報
【特許文献3】特開2018-098353号公報
【特許文献4】特開2017-136517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1や特許文献2で開示されている従来のプラズマ処理は、水素ガスやフッ素系ガスをチャンバー内に供給するため、防爆設備や除害設備を必要とするだけでなく、危険性を伴うガスを使用することが課題となる。
【0010】
そこで、特許文献3や特許文献4に開示されているプラズマ処理は、水あるいは水を含む混合物をプラズマ原料としてこれをプラズマ化することによって、水蒸気プラズマが形成され、水蒸気プラズマが高い還元力により、還元処理を施すことができるが、混合ガスにおいて水蒸気と混合される気体の酸化力が酸素より小さい場合と大きい場合で水蒸気の体積比率を変化させる必要性があり、水蒸気の体積比率を20~70%に調節する課題がある。
【0011】
その上、特許文献4で開示されているプラズマ処理は、発光分光測定装置、又は質量分析装置を用いて、原子状酸素の単位時間当たりの消費量や一酸化炭素と二酸化炭素のどちらかの単位時間当たりの生成量の測定値が、一定値以下になったタイミングで処理を終了することになるが、プラズマの発光強度や質量分析の測定値により、有機物が洗浄されたと同時に対象物表面が還元されているかどうかを判断できるかが課題であり、装置としても、測定装置を装備するという装置の複雑化の課題がある。
【0012】
本発明の目的は、簡便なドライプロセスであり、危険なガス使用が不要で、且つ安定的にプラズマによる還元処理をすることが可能であり、還元ガスの原料として液体原料を使用し、前記還元ガスの液体原料をチャンバー外にガス化する手段を有しないプラズマ装置を提供することである。
【0013】
また、本発明の目的は、簡便なドライプロセスであり、危険なガス使用が不要で、且つ安定的にプラズマによるエッチング処理をすることが可能であり、エッチングガスの原料として液体原料を使用し、前記エッチングガスの液体原料をチャンバー外にガス化する手段を有しないプラズマ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために、下記の[1]~[7]のいずれかに記載のプラズマ装置を提供するものである。
【0015】
[1]プラズマによる処理対象物表面を還元処理、又はエッチング処理するプラズマ装置であって、真空チャンバー内に、前記還元ガス、又はエッチングガスの液体原料を配置する構造を有し、且つ、前記還元ガス、又はエッチングガスの液体原料をガス化し、前記還元ガス、又はエッチングガスの液体原料のプラズマにより、基板表面上を還元処理、又はエッチング処理する。
[2]前記還元ガス、又はエッチングガスの液体原料を配置する構造が、溝形状である。
[3]前記還元ガス、又はエッチングガスの液体原料を配置する構造が、少なくとも1個以上の容器である。
[4]前記プラズマ装置に於いて、低圧のチャンバー内に前記液体原料を配置することにより、前記処理対象物が処理される前記液体原料が、揮発性の低い液体を使用する。
[5]前記揮発性の低い液体が、二価アルコール(ジオール)以上のポリオールである。
[6]前記プラズマ装置に於いて、エッチング処理を施すときに使用する前記揮発性の低い液体が、二価アルコール(ジオール)以上のポリオールにその他のエッチングに作用する液体原料が含有する組成物を使用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、液体原料をチャンバー内に供給する前にガス化することなく、液体のままで、安定的に還元処理をすることができ、液体原料のガス化装置を必要としないため、製造コストを低減することができるプラズマ装置を提供することができる。
また、本発明によれば、液体原料をチャンバー内に供給する前にガス化することなく、液体のままで、安定的にエッチング処理をすることができ、液体原料のガス化装置を必要としないため、製造コストを低減することができるプラズマ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る積層体製造を実施するための積層体製造装置の全体構成を示す模式図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る積層体製造を実施するための積層体製造装置の(a)真空チャンバーの断面図と(b)真空チャンバー内の上面図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る積層体製造を実施するための積層体製造装置の(a)真空チャンバーの断面図と(b)真空チャンバー内の上面図である。
図4】実施例1に於いて施した還元処理の処理前と処理後の10円硬貨の写真。
図5】実施例2に於いて施したシリコンチップの未処理部分とエッチング部分のFT―IRスペクトル。
図6】実施例2に於いて施したシリコンチップのエッチング処理に対するエッチング段差の電圧依存性。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態を図1から図3により説明する。
図1は、実施形態に係るプラズマ装置の全体構成を示す模式図である。図2および図3は、それぞれ第1実施形態および第2実施形態に係るプラズマ装置の真空チャンバーの断面図である。
【0019】
本実施形態に係るプラズマ装置1は、対象物の表面の還元、又はエッチングを実施するための装置である。
【0020】
本実施形態では、サンプルとして、少なくとも2つの面を有する対象物Sが使用される。サンプルSを構成する材料は、特に限定されず、例えば、SiO(ガラス)、Si、アルミナ、銅、銀、サファイア等の無機材料、プラスチック、フィルム等の有機材料等が挙げられる。
【0021】
図1に示すようにプラズマ装置1は、サンプルSを収容するチャンバー2と、チャンバー2内にサンプルSを配置するサンプルステージを兼ねる下部電極3と、下部電極3に対向する上部電極4を有し、下部電極3には、プラズマ生成用電源7が接続されている。図1においては、下部電極3がサンプルステージを兼ねているが、上部電極4がサンプルステージを兼ねても良いし、下部電極3と上部電極4の両方がサンプルステージを兼ねても良い。また、プラズマ生成用電源7は、低周波電源を用いても良いし、高周波電源を用いても良い。さらに、チャンバー2内の圧力を監視する圧力ゲージ5と、アース6と、真空ポンプ9とがチャンバー2に接続されている。その上、プラズマ処理に使用するガス導入口10から導入するプラズマ処理に使用するガスはガスボンベ(図示せず)から供給され、流量調整バルブ/マスフローコントローラ11を介してチャンバー2に導入される。
本実施の形態の場合、上記ガス導入口10から導入されるガスは、主にプラズマによる上記チャンバー2内を洗浄する為のガスが供給されるが、他の目的用のガスも供給することができる。
(第1の実施形態)
【0022】
図2(a)に示すように本実施形態におけるチャンバー2は、上部チャンバー30と、下部チャンバー31とを有し、前記下部チャンバー31にO-リング29を有する。
【0023】
本実施形態において、前記上部チャンバー30と、前記下部チャンバー31は電気的に接地された電気伝導体で構成されており、前記チャンバー2の内壁面全体は、電位が接地となっている接地電位面となっている。前記上部チャンバー30と、前記下部チャンバー31を構成する電気導電体は、例えば、銅、ニッケル、チタン等の遷移金属、これらの合金、ステンレス鋼、モリブデン、タングステン等の高融点金属等で構成される金属材料である。
【0024】
本実施形態では、前記上部チャンバー30の上部にガス導入部21を有し、主に前記チャンバー2内の洗浄等のプラズマ処理に使用する前記ガス導入口10からの配管が前記ガス導入部21に接続される。
【0025】
本実施形態では、前記下部電極3は、電流導入端子22と電極ステージ23から構成されており、前記電流導入端子22の周囲と前記電極ステージ23の下部に絶縁部材26を配置している。また、前記電流導入端子22は前記高周波電源7と接続されている。前記下部電極3に対向している前記上部電極4はガスシャワー板24を兼ねている構造を有している。
【0026】
本実施の形態において、還元、又はエッチング処理するサンプル基板を配置するサンプルステージは、前記下部電極3の前記電極ステージ23にサンプルホルダーを配置しても良いし、前記上部電極4の前記ガスシャワー板24にサンプルホルダーを配置しても良い。
【0027】
本実施形態では、前記下部チャンバー32には、前記電極ステージ23を囲む形態でアースリング25が設けられている構造を有する。前記電極ステージ23と前期アースリング25の高さの差は略0mmとなることが好ましく、前記電極ステージ23より前記アースリング25の方が高い方がよい。前記アースリング25は前記電極ステージ23との間隔が1mm以上5mm以下となるように形成されている。前記間隔を形成することにより、ガスの流れを制御し、プラズマの均一な領域を可能な限り広げることが可能となる。
【0028】
前記アースリング25と前記電極ステージ23との間隔が1mm未満の場合、真空ポンプでガスを引く時に間隔が狭すぎて充分にガスを引くことができず、その上、異常放電が起こることにより、所望のプラズマを発生させることができない。また、前記アースリング25と前記電極ステージ23との間隔が5mmより大きくなると、前記電極ステージ23と前記アースリング25との間で異常放電が起こり、所望の均一なプラズマを発生させることができない。
【0029】
更に、前記アースリング25には、液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料を配置する溝27を有する。図2(b)においては、前記アースリングの中央全周に溝を有する構造を記載しているが、溝の構造は図2の構造に制限されない。
【0030】
また、図2(b)においては、前記アースリング25に、液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料を配置する溝27を有する構造であるが、前記電極ステージ23上に溝形状の電極の外周形状に近い容器を設置しても構わない。その時の液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料を配置する溝27の形状及び材質は、放電時に異常放電せずにプラズマが安定して生成するものであれば制限されない。
【0031】
前記液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料を配置する溝27に液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料、又はそれらの原料を含有する組成物を注入する。チャンバー内を低圧状態にするが、この時点では液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料が僅かに気化される。放電させることにより僅かに気化された前記液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料のプラズマを発生させ、サンプル表面の還元反応、又はエッチングが促進される。
【0032】
また、前記下部チャンバー32には、前記電流導入端子22と前記アースリング25との間に真空排気口28を有し、前記排気機構9と接続しており、前記排気流量調整バルブ8で真空度を調整する構成を有している。
【0033】
本実施例形態においては、前記ガス導入口10から導入するプラズマ処理に使用するガスはガスボンベ(図示せず)から供給され、流量調整バルブ/マスフローコントローラ11を介してチャンバー2に導入される。主にチャンバーのプラズマ洗浄に使用されるガスとしては、酸素(O)が選択される。
【0034】
本実施形態においては、その他の目的のガスとして、主に希ガスが選択される。例えば、アルゴン(Ar)やヘリウム(He)、キセノン(Xe)、四フッ化炭素(CF)等が挙げられ、混合ガス等何ら限定するものではない。
(第2の実施形態)
【0035】
図3(a)に示すように本実施形態におけるチャンバー2は、上部チャンバー50と、下部チャンバー51とを有し、前記下部チャンバー51にO-リング49を有する。
【0036】
本実施形態において、前記上部チャンバー50と、前記下部チャンバー51は電気的に接地された電気伝導体で構成されており、チャンバー2の内壁面全体は、電位が接地となっている接地電位面となっている。前記上部チャンバー50と、前記下部チャンバー51を構成する電気導電体は、例えば、銅、ニッケル、チタン等の遷移金属、これらの合金、ステンレス鋼、モリブデン、タングステン等の高融点金属等で構成される金属材料である。
【0037】
本実施形態では、前記上部チャンバー50の上部にガス導入部41を有し、主に前記チャンバー2内の洗浄等のプラズマ処理に使用する前記ガス導入口10からの配管が前記ガス導入部21に接続される。
【0038】
本実施形態では、前記下部電極3は、電流導入端子42と電極ステージ43から構成されており、前記電流導入端子42の周囲と前記電極ステージ43の下部に絶縁部材46を配置している。また、前記電流導入端子42は前記高周波電源7と接続されている。前記下部電極3に対向している前記上部電極4はガスシャワー板44を兼ねている構造を有している。
【0039】
本実施の形態において、還元処理、又はエッチング処理するサンプル基板を配置するサンプルステージは、前記下部電極3の前記電極ステージ43にサンプルホルダーを配置しても良いし、前記上部電極4の前記ガスシャワー板44にサンプルホルダーを配置しても良い。
【0040】
本実施形態では、前記下部チャンバー51には、前記電極ステージ43を囲む形態でアースリング45が設けられている構造を有する。前記電極ステージ43と前期アースリング45の高さの差は略0mmとなることが好ましく、前記電極ステージ43より前記アースリング45の方が高い方がよい。前記アースリング45は前記電極ステージ43との間隔が1mm以上5mm以下となるように形成されている。前記間隔を形成することにより、ガスの流れを制御し、プラズマの均一な領域を可能な限り広げることが可能となる。
【0041】
前記アースリング45と前記電極ステージ43との間隔が1mm未満の場合、真空ポンプでガスを引く時に間隔が狭すぎて充分にガスを引くことができず、その上、異常放電が起こることにより、所望のプラズマを発生させることができない。また、前記アースリング45と前記電極ステージ43との間隔が5mmより大きくなると、前記電極ステージ43と前記アースリング45との間で異常放電が起こり、所望の均一なプラズマを発生させることができない。
【0042】
更に、前記アースリング45には、液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料を配置する容器47を有する。図3(b)においては、前記アースリング上に皿状の形状を有する容器を記載しているが、容器の形状は図3の構造に制限されない。また、液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料を配置する皿状の容器47の材質は特に限定はしないが、ステンレス製等の金属やガラス製であることが望ましい。また、図3において、前記液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料を配置する皿状の容器47は、前記アースリング45上に配置されているが、固定されていても良いし、還元ガス、又はエッチングガスの液体原料を含有する液体を注入後、前記液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料を配置する容器47を前記電極ステージ43上に移動させても良く、移動させる機構を有していても構わない。その他に、還元ガス、又はエッチングガスの液体原料を含有する液体を注入後、前記液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料を配置する容器47は図示しているものとは別に複数用意しておき(図示せず)、チャンバー2の低圧状態を維持しつつ、図示している前記液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料を配置する容器47の液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料が枯れたとき、前記液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料を配置する容器47を交換する機構を有していても構わない。ただ、その時の液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料を配置する容器47の形状及び材質は、放電時に異常放電せずにプラズマが安定して生成するものであれば制限されない。また、液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料を容器47に追加に注入できる機構を設けてもよい。
また、図3(b)においては、前記液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料を配置する容器47が4個配置されているが、少なくとも1個以上あれば、何個あっても配置できるだけあれば問題ない。
【0043】
前記液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料を配置する容器47に液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料、又はそれらの原料を含有する組成物を注入する。チャンバー内を低圧状態にするが、この時点では液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料が僅かに気化される。放電させることにより僅かに気化された前記液体である還元ガスの原料、又はエッチングガスの原料のプラズマを発生させ、サンプル表面の還元反応、又はエッチングが促進される。
【0044】
また、前記下部チャンバー51には、前記電流導入端子42と前記アースリング45との間に真空排気口48を有し、前記排気機構9と接続しており、前記排気流量調整バルブ8で真空度を調整する構成を有している。
【0045】
本実施例形態においては、前記ガス導入口10から導入するプラズマ処理に使用するガスはガスボンベ(図示せず)から供給され、流量調整バルブ/マスフローコントローラ11を介してチャンバー2に導入される。主にチャンバーのプラズマ洗浄に使用されるガスとしては、酸素(O)が選択される。
【0046】
本実施形態においては、その他の目的のガスとして、主に希ガスが選択される。例えば、アルゴン(Ar)やヘリウム(He)、キセノン(Xe)、四フッ化炭素(CF)等が挙げられ、混合ガス等何ら限定するものではない。
(還元ガス/スパッタガスの原料及びそれを含有する組成物)
【0047】
本実施形態において、還元処理を行う場合は、低圧のチャンバー内に液体を配置する容器を設けたプラズマ装置用の液体である還元ガスの原料として、揮発性の低い液体を使用する。
【0048】
第1の実施形態に記載した前記プラズマ装置において、前記液体である還元ガス原料を配置する溝27に注入する液体は、二価アルコール(ジオール)以上のポリオールが好ましい。二価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングルコール等のグリコール類、三価アルコールとして、グリセロール(グリセリン)等があり、ポリエーテルポリオール等が用いることができる。
【0049】
また、第2の実施形態に記載した前記プラズマ装置において、前記液体である還元ガス原料を配置する溝27に注入する液体は、二価アルコール(ジオール)以上のポリオールが好ましい。二価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングルコール等のグリコール類、三価アルコールとして、グリセロール(グリセリン)等があり、ポリエーテルポリオール等が用いることができる。
【0050】
本実施形態において、エッチング処理を行う場合は、低圧のチャンバー内に液体を配置する容器を設けたプラズマ装置用の液体であるエッチングガスの原料として、揮発性の低い液体のみ、又は前記揮発性の低い液体にその他のエッチングに作用する液体を含有させた組成物を使用する。
【0051】
第1の実施形態に記載した前記プラズマ装置において、前記液体であるエッチングガスの原料を配置する溝27に注入する液体は、二価アルコール(ジオール)以上のポリオールが好ましい。二価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングルコール等のグリコール類、三価アルコールとして、グリセロール(グリセリン)等があり、ポリエーテルポリオール等が用いることができる。
更に、前記別のエッチングに作用する液体として、フッ素系の化合物を使用することができ、ペルフルオロアルカン化合物として、例えば、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロノナン等があり、アルコール系化合物として、トリフルオロエタノール等が使用でき、フッ素系化合物に限定されず、エッチングの効果として有する化合物は添加しても構わない。
【0052】
また、第2の実施形態に記載した前記プラズマ装置において、前記液体である還元ガスの原料を配置する溝27に注入する液体は、二価アルコール(ジオール)以上のポリオールが好ましい。二価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングルコール等のグリコール類、三価アルコールとして、グリセロール(グリセリン)等があり、ポリエーテルポリオール等が用いることができる。
更に、前記別のエッチングに作用する液体として、フッ素系の化合物を使用することができ、ペルフルオロアルカン化合物として、例えば、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロノナン等があり、アルコール系化合物として、トリフルオロエタノール等が使用でき、フッ素系化合物に限定されず、エッチングの効果として有する化合物は添加しても構わない。
【実施例0053】
[実施例1]
図1に示すプラズマ装置1において、サンプルSである10円硬貨をチャンバー2の下部電極3のサンプルホルダー部に設置し、図3に示すチャンバー2内の液体である還元ガスの原料を配置する容器47に前記還元ガスの液体原料を注入した。前記還元ガスの液体原料として、揮発性の低い液体であるグリセロール物を注入し、上部チャンバー51で蓋をし、下部電極3に対して上部電極4が平行に対向するように設置した。
【0054】
サンプルの表面に還元処理の工程を行った。チャンバー2内の雰囲気圧力を5~8Paに減圧し、プラズマ生成電源7には13.56MHzの高周波電源を用いて、500Wの電力で6分間のプラズマ照射を実施した。
【0055】
プラズマ照射後、チャンバー2を大気解放し、サンプルの10円硬貨の酸化銅層が還元されているか確認したところ、図4に示すように還元されていた。
【0056】
[実施例2]
図1に示すプラズマ装置1において、サンプルSであるシリコンウエハのサンプル基板をチャンバー2の下部電極3のサンプルホルダー部に設置し、図3に示すチャンバー2内の液体であるエッチングガスの原料を配置する容器47に前記エッチングガスの液体原料を注入した。前記エッチングガスの液体原料として、揮発性の低い液体であるグリセロール注入し、上部チャンバー51で蓋をし、下部電極3に対して上部電極4が平行に対向するように設置した。
【0057】
サンプルの表面にエッチングの工程を行った。チャンバー2内の雰囲気圧力を約20Paに減圧し、プラズマ生成電源7には13.56MHzの高周波電源を用いて、200~650Wで150W間隔での電力で6分間のプラズマ照射を実施した。
【0058】
プラズマ照射後、チャンバー2を大気解放し、サンプルのシリコンウエハ基板がエッチングされているか確認したところ、エッチングされており、マスクされていた未処理部分とエッチングされた部分をFT-IR(島津製作所社製 IR Affinity-IS)を用いて、IRスペクトル測定を行った。図5に示したIRスペクトルからを未処理部分とエッチング部分でほぼ同じスペクトルであることを確認した。
【0059】
また、エッチングの段差の電力依存性を図6に示した。エッチングの段差は電力に依存し、リニアに変化していることが確認された。
【0060】
以上の結果から、真空チャンバー内に、還元ガス又はエッチングガスの液体原料、又はエッチングガスの揮発性が低い液体原料とその他のエッチングに作用する液体が含有する組成物を使用し、上記真空チャンバー内で解離、分解反応を促進させ、対象物表面の還元処理又はエッチング処理を進行させることができる。
【符号の説明】
【0061】
1・・・積層体製造装置
2・・・チャンバー
3・・・サンプルステージを兼ねる下部電極
4・・・サンプル上部電極
5・・・圧力ゲージ
6・・・アース
7・・・プラズマ生成用電源
8・・・排気流量調整バルブ
9・・・排気機構
10・・・ガス導入口
11・・・流量調整バルブ/マスフローコントローラ
21、41・・・ガス導入部
22、42・・・電流導入端子
23、43・・・電極ステージ
24、44・・・ガスシャワー板
25、45・・・アースリング
26、46・・・絶縁部材
27・・・液体であるCVD膜原料を配置する溝
47・・・液体であるCVD膜原料を配置する容器
28、48・・・真空排気口
29、49・・・O-リング
30、50・・・上部チャンバー
31、51・・・下部チャンバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6