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特開2024-84125エアゾールキャップ及びエアゾール製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084125
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】エアゾールキャップ及びエアゾール製品
(51)【国際特許分類】
   B05B 9/04 20060101AFI20240617BHJP
   B65D 83/20 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B05B9/04
B65D83/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197628
(22)【出願日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2022197720
(32)【優先日】2022-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕城
(72)【発明者】
【氏名】木本 芙美子
(72)【発明者】
【氏名】叶井 真美
【テーマコード(参考)】
3E014
4F033
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB01
3E014PD01
3E014PE17
3E014PF10
4F033RA02
4F033RB08
4F033RC16
4F033RC17
(57)【要約】
【課題】内容物の到達距離や内容物の噴射時の勢いを増大させる。
【解決手段】エアゾールキャップ1は、ノズル3と、内容物の到達距離を延長する到達距離延長構造4とを備えている。到達距離延長構造4は、ノズル3の下流側に形成された合流空間46と、ノズル3の外側の空気を合流空間46へ導く外気導入路43とを有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを含む噴射剤を少なくとも含んだ内容物を収容したエアゾール容器に取り付けられるエアゾールキャップにおいて、
前記内容物を噴射するノズルと、
前記ノズルから噴射された前記内容物の到達距離を延長する到達距離延長構造とを備え、
前記到達距離延長構造は、前記ノズルの噴射方向下流端よりも下流側に形成された合流空間と、前記ノズルの外側を前記ノズルの下流端よりも上流側から前記合流空間まで延びるように形成され、前記ノズルの外側の空気を前記合流空間へ導く外気導入路と、を有することを特徴とするエアゾールキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のエアゾールキャップにおいて、
前記外気導入路は、前記内容物の噴射方向に対して略平行な方向で前記外気を前記合流空間に導入するように構成されていることを特徴とするエアゾールキャップ。
【請求項3】
請求項2に記載のエアゾールキャップにおいて、
前記ノズルは筒状に形成され、
前記到達距離延長構造は、前記ノズルの噴射方向下流端の外周を少なくとも覆う外筒部を備え、
前記外気導入路は、前記ノズルの外周面と、前記外筒部の内周面と、の間に形成されていることを特徴とするエアゾールキャップ。
【請求項4】
請求項3に記載のエアゾールキャップにおいて、
前記外筒部の空気流れ方向上流端は、前記ノズルの噴射方向中間部に位置するとともに当該中間部で開放されており、
前記外気導入路は、前記ノズルの外周面に沿って噴射方向下流端まで延びていることを特徴とするエアゾールキャップ。
【請求項5】
請求項3に記載のエアゾールキャップにおいて、
前記ノズルの噴射方向下流端を通り噴射方向に直交する断面において、前記外筒部の内周面で囲まれた領域の断面積が、前記ノズルの開口の断面積の12倍未満であることを特徴とするエアゾールキャップ。
【請求項6】
請求項1に記載のエアゾールキャップと、
前記エアゾールキャップが取り付けられたエアゾール容器とを備えていることを特徴とするエアゾール製品。
【請求項7】
請求項6に記載のエアゾール製品において、
前記内容物は、殺虫成分を含むことを特徴とするエアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアゾール容器に取り付けられるエアゾールキャップ及びそのエアゾールキャップを備えたエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば殺虫剤などに用いられるエアゾール製品においては、噴射ノズルの内部形状や、ノズル開口形状等を工夫することにより、噴射性状の改善・最適化が試みられてきた。しかしながら、単にノズル内部や開口等の形状を工夫することによる噴射性状の改善にも限界がある。
【0003】
この点、特許文献1は、第1噴出口から噴霧される液に外気を混合する混合室を備えた構成を開示している。特許文献1の構成によれば、窒素ガスを用いたエアゾールにおいて噴霧を微細化できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-169759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、窒素ガス等の圧縮ガスを噴射剤として用いて内容物を微粒化するための構造を有するエアゾールは、噴霧口から近い距離でふんわりと優しく噴霧する用途に適しており、一般的には化粧品などで採用されている。特許文献1もこのような用途を想定していると考えられる。
【0006】
一方で、例えば殺虫剤エアゾールなどにおいては、強くて安定した噴射力が要求されるため、噴射剤としては一般的に液化ガスが用いられている。液化ガスを噴射剤として用いる場合は、特許文献1のように噴霧を微細化する構成は不要である。
【0007】
ところでこのような殺虫剤エアゾールなどにおいては、ある程度離れた所にいる害虫を駆除するため、遠くまで内容物を到達させたい場合があり、内容物の到達距離や内容物の噴射時の勢いが求められる場合がある。従ってこのような用途においては、内容物の到達距離や内容物の噴射時の勢いを増大させることが可能な構成が求められる。
【0008】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、内容物の到達距離や内容物の噴射時の勢いを増大させることが可能なエアゾールキャップ及びエアゾール製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の一態様は、液化ガスを含む噴射剤を少なくとも含んだ内容物を収容したエアゾール容器に取り付けられるエアゾールキャップを前提とすることができる。エアゾールキャップは、前記内容物を噴射するノズルと、前記ノズルから噴射された前記内容物の到達距離を延長する到達距離延長構造とを備えている。前記到達距離延長構造は、前記ノズルの噴射方向下流端よりも下流側に形成された合流空間と、前記ノズルの外側を前記ノズルの下流端よりも上流側から前記合流空間まで延びるように形成され、前記ノズルの外側の空気を前記合流空間へ導く外気導入路と、を有するように構成できる。
【0010】
この構成によれば、内容物はノズルを流通して合流空間に達する。一方、ノズルの外側の空気(外気)は外気導入路を流通して合流空間に達する。合流空間では内容物が噴射剤によって勢いよく噴射されているので、外気導入路内の外気はその勢いによって合流空間に引き込まれて内容物と合流する。これにより、エアゾールキャップから噴射される内容物の勢いが増すので、外気を混合しない場合に比べて内容物の到達距離が延びる。
【0011】
前記外気導入路は、前記内容物の噴射方向に対して略平行な方向で前記外気を前記合流空間に導入することが好ましい。この点、例えば特許文献1は、内容物の噴射方向に対して交差するように外気を導入することにより噴霧を微細化する構成を開示しているが、仮にこのような構成を液化ガスを用いたエアゾールのキャップに採用したとすると気流の乱れが生じて噴霧の勢いが低下してしまうと考えられる。本発明のように、内容物の噴射方向に対して略平行な方向で外気を導入することにより、気流の乱れを抑えて噴霧の勢いを増加させる効果が好適に得られる。
【0012】
本開示の他の態様に係るノズルは筒状に形成されていてもよい。この場合、前記到達距離延長構造は、前記ノズルの噴射方向下流端の外周を少なくとも覆う外筒部を備えており、前記外気導入路は、前記ノズルの外周面と、前記外筒部の内周面と、の間に形成されていてもよい。これにより、ノズルの外周面と外筒部の内周面との間に形成されている外気導入路を全周に亘って狙い通りの形状にすることができる。
【0013】
また、前記外筒部の空気流れ方向上流端は、前記ノズルの噴射方向中間部に位置するとともに当該中間部で開放されていてもよい。この場合、前記外気導入路は、前記ノズルの外周面に沿って噴射方向下流端まで延びるように形成することができ、合流空間へ向かう外気の流れがスムーズに形成される。
【0014】
また、前記ノズルの噴射方向下流端を通り噴射方向に直交する断面において、前記外筒部の内周面で囲まれた領域の断面積が、前記ノズルの開口の断面積の12倍未満であってもよい。すなわち、ノズルに対して外筒部の径が大きすぎると、導入される外気の速度が高まらず、内容物の到達距離を延長する効果が得られないが、外筒部の断面積を、ノズルの断面積に対して上記範囲内とすることにより、内容物の到達距離を延長する効果が十分に得られる。
【0015】
また、前記エアゾールキャップが取り付けられたエアゾール容器を備えたエアゾール製品とすることできる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、ノズルの下流側に形成された合流空間に外気を導入するようにしたので、噴射剤として液化ガスを含むエアゾールから噴射される内容物の到達距離や内容物の噴射時の勢いを増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るエアゾール製品の側面図である。
図2】エアゾールキャップの正面図である。
図3】エアゾールキャップの部分断面図である。
図4】エアゾールキャップを分解した状態を示す部分断面図である。
図5】実施例1~7に係るエアゾールキャップの断面図である。
図6】比較例に係るエアゾールキャップの断面図である。
図7】実施例8~10に係るエアゾールキャップの断面図である。
図8】比較例と実施例1の流速のシミュレーション結果を示す図である。
図9】比較例に係るノズル先端近傍の流速のシミュレーション結果を示す図である。
図10】実施例1及び実施例5に係るノズル先端近傍の流速のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るエアゾール製品1を示すものである。エアゾール製品Aは、エアゾール容器100と、エアゾール容器100に取り付けられるエアゾールキャップ1とを備えている。本実施形態では、エアゾール製品Aがエアゾール容器100とエアゾールキャップ1とで構成されている例について説明するが、エアゾール製品Aはこれら以外の部材を備えていてもよい。エアゾールキャップ1は、例えばエアゾール容器用キャップなどと呼ぶこともできる。
【0020】
エアゾール製品Aは、エアゾール容器100内の内容物を、ある程度離れた距離まで噴霧できるように構成されている。エアゾール製品Aによる内容物の到達距離は、後述の弁機構101aの構成、ノズル3の径、噴射剤の組成および到達距離延長構造4の構成などによって設定できる。エアゾール製品Aによる内容物の到達距離は、0.5m以上とすることができ、1m以上が好ましく、3m以上が更に好ましい。なおここでいう到達距離とは、エアゾール製品Aを無風条件において水平方向に噴霧したとき、その霧を目視で確認できる範囲の水平方向の距離のことである。
【0021】
エアゾールキャップ1の説明の前に、エアゾール容器100について説明する。エアゾール容器100は、エアゾール原液と、エアゾール原液を噴出させるための噴射剤とを内容物として収容した縦長の容器本体101と、容器本体101の上部に設けられた弁機構101a及びステム(噴出管)102とを備えた周知の構造のものである。容器本体101は、円筒状に形成された耐圧容器である。また、ステム102は、容器本体101の上壁部の略中心部に設けられている。ステム102の下端部は、弁機構101aを介して容器本体101の内部に連通可能となっている。ステム102は、弁機構101aによって容器本体101の上壁部から上方へ突出するように上方へ付勢されており、下方(容器本体101の内方)へ押動可能となっている。
【0022】
ステム102を下方へ押動した状態で弁機構101aが開放されてステム102と容器本体101の内部とが連通状態になり、内容物が噴射剤の圧力によって噴出される。ステム102に対する下方への外力を除くと、ステム102が弁機構101aの付勢力によって元の位置に戻って弁機構101aが閉状態になる。
【0023】
容器本体101に収容するエアゾール原液には、各種の成分を含有させることができる。成分としては特に制限はなく、例えば、殺虫剤、害虫忌避剤、消臭剤、殺菌剤、除草剤、芳香剤、制汗剤、日焼け止め成分、塗料、撥水剤等を挙げることができ、これらのうち、1種のみまたは任意の2種以上を混合した薬剤であってもよい。なお、本発明は内容物の到達距離を延ばすことを目的の1つとしたものであるから、離れた位置から噴霧したいというニーズを有する成分が特に好適であり、このような成分として殺虫剤を挙げることができる。エアゾール原液には、溶剤や共力剤等が含まれていてもよい。
【0024】
容器本体101に収容する噴射剤は、液化ガスを含んでいる。噴射剤としての液化ガスは、エアゾール製品Aの使用に伴って内容物が減っても噴射力が低下しないという点で、圧縮ガスよりも優れている。また、圧縮ガスを噴射剤とする場合は、噴霧を微細化するための構造をエアゾールキャップに設ける必要があるが(例えば特許文献1)、液化ガスの場合はこのような構造が不要である。液化ガスとしては、例えばLPガスやジメチルエーテル(DME)等が一般的であるが、これに限らず、例えばハイドロフルオロオレフィン等のフッ素系液化ガスやその他の冷媒ガスであっても良く、これらからなる群のうち、任意の1種または任意の2種以上を混合した噴射剤であってもよい。
【0025】
なお、容器本体101に収容する内容物は、エアゾール原液を省略し、噴射剤のみであっても良い。この場合、たとえば、噴射剤に含まれる液化ガスの一部が液状のまま噴射されて対象物に付着した後に気化することによる冷却作用を利用した冷却エアゾールとして利用できる。
【0026】
エアゾールキャップ1は、エアゾール容器100の上部に取り付けられる。エアゾールキャップ1は、ステム102に接続される接続管部2と、内容物を噴射するノズル3と、ノズル3から噴射された内容物の到達距離を延長する到達距離延長構造4とを備えているが、その他の部材としてカバーや操作用ボタン、操作用レバー、装飾部材等を備えていてもよい。接続管部2と操作用ボタンとが一体化されていてもよいし、接続管部2とカバーとが一体化されていてもよい。また、エアゾールキャップ1は、エアゾール容器100の上部に嵌合する嵌合部等を有していてもよい。
【0027】
接続管部2は、上下方向に延びる筒状をなしている。接続管部2の下端部がステム102の上端部の外側に嵌合している。接続管部2の内部には、ステム102からノズル3に至るまで上下方向に延びる接続通路2aが形成されている。接続通路2aの下流端(下端)がステム102の上端と気密状態で接続されている。
【0028】
ノズル3は、接続管部2の上側部分から水平方向に延びる筒状をなしている。より具体的には、図2に示すようにノズル3は円筒状をなしている。図1に示すように、ノズル3の外径は基端(噴射方向上流端)から先端(噴射方向下流端)まで同一径となっている。また、ノズル3の内径も基端から先端まで同一径となっている。
【0029】
ノズル3の径は特に限定されないが、径が小さすぎると噴霧の勢いが減殺されるため本発明に適さない。従ってノズル3の先端の内径は、0.1mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1.0mm以上が更に好ましい。またノズルの径が大きすぎても噴霧性状が悪化するため、ノズル3の先端の内径は10.0mm以下が好ましく5.0mm以下が更に好ましい。
【0030】
ノズル3の基端は接続管部2の上部と一体化されている。ノズル3の内部には、内容物が流通する流通路3aが形成されている。流通路3aの上流端が接続通路2aの下流端と接続されている。接続管部2とノズル3とは、例えば樹脂材により一体成形されていてもよいし、接続管部2とノズル3とをそれぞれ別部材で成形した後、結合することによって一体化してもよい。
【0031】
この例では、接続管部2が上下方向に延び、ノズル3が水平方向に延びているので、接続通路2aと流通路3aとは略直角に交わることになる。これに限らず、ノズル3が接続管部2に対して所定角度で傾斜していてもよく、例えばノズル3が噴射方向下流側へいくほど上に位置するように上向きに傾斜する形態、ノズル3が噴射方向下流側へいくほど下に位置するように下向きに傾斜する形態であってもよい。
【0032】
また、この例ではノズル3の下流側を開放端としているが、例えばノズル3の下流側端部を塞ぐノズルチップを設け、当該ノズルチップに形成された噴射孔を介して内容物を噴出する構成としても良い。この場合、ノズルチップに形成される噴射孔は1つでも良く、複数でも良い。
【0033】
図3図4にも示すように、到達距離延長構造4は、外筒部40を備えている。外筒部40は、ノズル3とは別部材で構成されている。外筒部40は、ノズル3の噴射方向下流端の外周を少なくとも覆うように形成されている。外筒部40は、全体的に円筒状をなしており、外筒部40の軸線とノズル3の軸線とが一致するように、外筒部40がノズル3に対して位置決めされている。外筒部40の軸線方向の寸法は、ノズル3の軸線方向の寸法よりも短く設定されており、外筒部40がノズル3に対して位置決めされた状態で、外筒部40の基端(ノズル3の噴射方向を基準として上流端)がノズル3の基端よりも先端側、即ち、ノズル3の噴射方向中間部に位置するとともに、当該中間部で開放されている。
【0034】
また、外筒部40がノズル3に対して位置決めされた状態で、外筒部40の先端(ノズル3の噴射方向を基準として下流端)がノズル3の先端よりも噴射方向下流側へ突出するように配置される。
【0035】
この例において、外筒部40は、第1部材41と第2部材42とが組み合わされて構成されている。以下、この構成に基づいて説明するが、外筒部40の構成はこれに限るものではなく、例えば外筒部40は一体成形品であってもよい。また、外筒部40がノズル3と別体である必要もなく、外筒部40の一部または全部がノズル3と一体成形されていてもよい。
【0036】
第1部材41及び第2部材42は共に円筒状をなしている。第1部材41の内径は、ノズル3の外径よりも大きく設定されており、ノズル3の外周面と第1部材41の内周面との間には外気導入路43が形成されている。
【0037】
第1部材41の内径は、軸線方向中間部よりも先端側部分が、軸線方向中間部よりも基端側部分に比べて大きく設定されている。これにより、第1部材41の内周面には、軸線方向中間部に段部41aが形成されることになる。第1部材41の段部41aには、第2部材42の基端が嵌まるようになっている。これにより、第1部材41と第2部材42の軸線方向の相対位置関係を決定することができる。
【0038】
第2部材42の外径は、第1部材41における軸線方向中間部よりも先端側部分の内径と略等しく設定されている。これにより、第2部材42と第1部材41の径方向の相対位置関係を決定することができ、この状態で第1部材41の軸線と第2部材42の軸線とは一致している。
【0039】
第2部材42の先端は、第1部材41の先端から軸線方向(噴射方向下流側)へ突出するとともに、ノズル3の先端からも噴射方向下流側へ突出している。第2部材42の内周面には、外筒部40をノズル3に支持するための複数の支持部44が設けられている。支持部44は、第2部材42の内周面からノズル3の外周面に向けて突出するとともに、ノズル3の周方向に互いに間隔をあけて配置される。全ての支持部44の突出方向先端面がノズル3の外周面に当接することにより、外筒部40とノズル3との径方向の相対位置関係を決定することができる。この実施形態では、支持部44が3つ設けられており、周方向に等間隔に配置されているが、これに限らず、支持部44は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、支持部44は不等間隔に配置されていてもよい。
【0040】
第2部材42の内周面には、支持部44よりも先端側に複数の位置決め突起45が設けられている。位置決め突起45は、支持部44よりも径方向内方まで突出しており、第1部材41の先端面が位置決め突起45の噴射方向上流側の端面に当接するようになっている。これにより、外筒部40とノズル3との軸線方向の相対位置関係を決定することができる。ノズル3を先端側から見たとき、位置決め突起45がノズル3の先端開口と重複しないように、当該位置決め突起45の突出量が設定されている。位置決め突起45の数及び位置は、支持部44の数及び位置と同様にすることができる。
【0041】
尚、支持部44および位置決め突起45は、ノズル3に対して外筒部40の相対位置を固定するための構成であるから、外筒部40の相対位置を固定するための手段を別に設ける場合には、支持部44および位置決め突起45を省略できる。
【0042】
外筒部40の第2部材42の内部空間により、ノズル3の噴射方向下流端よりも下流側に合流空間46が形成される。この合流空間46と、外気導入路43とは、到達距離延長構造4の一部を構成している。外気導入路43は、ノズル3の外側を当該ノズル3の下流端よりも上流側から合流空間46まで延びるように形成され、ノズル3の外側の空気を合流空間46へ導くための通路である。この例では、外気導入路43がノズル3の外周面と第1部材41の内周面との間に形成されているので、外気導入路43は、ノズル3の外周面に沿って当該ノズル3の噴射方向下流端まで延び、合流空間46と連通する。
【0043】
合流空間46の軸線方向の長さは特に限定されないが、その下限は例えば1.0mm以上とすることができ、2.0mm以上とすることもできる。また合流空間46の軸線方向の長さは、その上限を50.0mm以下とすることができ、10.0mm以下とすることが好ましい。
【0044】
ノズル3の噴射方向下流端を通り噴射方向に直交する断面において、外筒部40の内周面で囲まれた領域の断面積が、ノズル3の開口の断面積(ノズル3の内周面で囲まれた領域の断面積)の12倍未満に設定されている。この例では、ノズル3の噴射方向下流端を通り噴射方向に直交する断面が、第2部材42の軸線に直交する方向の断面に相当するので、第2部材42の内周面で囲まれた領域の断面積が、ノズル3の開口の断面積の12倍未満になっている。このように断面積が設定されている理由については後述する。
【0045】
以上の構成で、エアゾールキャップ1が押し下げ操作されると、容器本体101内の内容物が、噴射剤の圧力によって、ノズル3の先端から合流空間46に向けて噴射される。これにより合流空間46内では、外筒部40の先端に向かう気流が生ずるので、この気流によって外気導入路43内の空気(外気)が合流空間46に引き込まれる。これにより、ノズル3から噴射された内容物と、外気導入路43を介して導入された外気とが、合流空間46で合流し、外筒部40の先端から噴射される。従って、外気を混合しない場合に比べて噴射の勢いが増すので、内容物の到達距離を延ばすことができる。
【0046】
また、外気導入路43は、ノズル3の軸線を通る断面(例えば図5)において、ノズル3の軸線と平行に構成されている。従って、外気導入路43を介して導入される外気は、ノズル3から噴射される内容物と略平行な方向で合流空間46に導入されることになる。これにより、合流空間46内で内容物と外気が合流したときの気流の乱れが最小限に抑えられるので、内容物の到達距離を更に延ばすことができる。また別の表現をすれば、外気導入路43は、ノズル3を包むような円筒形に構成されている。従って、外気導入路43を介して導入される外気は、ノズル3から噴射される内容物を径方向外側から包むようにして合流空間46に導入されることになる。これにより、内容物の流れが、外気の流れで包まれたような状態で外筒部40の先端から噴射されるので、噴射後も内容物の流れが乱れにくくなり、内容物の到達距離を更に延ばすことができる。
【0047】
ただし外気導入路43の構成はこれに限らず、適宜変更することができる。例えば、外気導入路43は、ノズル3の軸線を通る断面において、ノズル3の軸線に対して若干斜めになるように形成されていても良い。外気導入路43とノズル3の軸線が成す角度が僅かであれば、合流空間46内で内容物と外気が合流したときに気流が大きく乱れることはない。特に、ノズル3の軸線を通る断面において、外気導入路43を流れる外気が下流側に進むにつれてノズル3の軸線に徐々に近づくように当該外気導入路43が斜めに形成されていれば、内容物と外気がスムーズに合流するため好ましい。この場合、ノズル3の軸線を通る断面において、外気導入路43の延長線とノズル3の軸線が成す角度は、10°以下が好ましく、5°以下が更に好ましい。
【0048】
また、外気導入路43は、ノズル3を包むような円筒形に限らず、例えばノズル3に対して略平行に形成された複数の管路によって構成されていても良い。
【実施例0049】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
(到達距離確認試験)
上記のように構成されたエアゾールキャップ1を使用した場合における内容物の到達距離確認試験について説明する。エアゾール容器100には、エアゾール原液としてケロシン(灯油)、噴射剤としてLPガス、を内容物として収容している。エアゾール原液:噴射剤の液容量比率、いわゆる液ガス比は、3:7とした。尚、このエアゾール原液に含まれるケロシンは、殺虫剤エアゾールなどで一般的に用いられている溶媒の1つである。このエアゾール原液に、有効量の殺虫剤、害虫忌避剤、消臭剤、殺菌剤、芳香剤、等を混合しても本試験と同様な試験結果が得られる。
【0051】
また、噴射剤はLPガスに限らず、ジメチルエーテルである場合、LPガスとジメチルエーテルが混合されている場合や、フッ素系液化ガス等が混合されている場合であっても、同様な試験結果が得られる。また、液ガス比についても、2:8~4:6の間であれば、同様な試験結果が得られる。なお、上記の液ガス比の範囲を外れた場合は、本試験とは若干異なる結果を示す可能性があるものの、到達距離を延長するという本発明の効果は得られる。すなわち本発明は、極めて広い液ガス比の範囲で成立する。また前述のとおり、エアゾール原液は省略しても良く、つまり液ガス比は0:10でも良い。
【0052】
試験場所は、十分な広さを持った無風恒温室であり、気温は25℃に設定した。無風恒温室に高さ90cm(無風恒温室の床面からの高さが90cm)の台を設置し、その台に実施例1~7、比較例のエアゾールキャップがそれぞれ取り付けられたエアゾール製品を置き、各々、噴射操作を行った。
【0053】
また、無風恒温室には、床面からの高さが1mのところに目印を設置した。この目印は、エアゾールキャップからの距離が1m、2m、3m、4m、5mの所にそれぞれ設置した。エアゾールキャップから噴射された霧を目視で確認し、設置した目印を通過したか否かをビデオ撮影により評価した。実施例1~7、比較例のエアゾールキャップのそれぞれについて3回試験を行い、平均到達距離を求めた。
【0054】
図5は、実施例1~7に係るノズル3及び到達距離延長構造4の縦断面図である。実施例1~7は、ノズル3の外径が4.6mm、内径が3.0mmであり、外気導入路43の軸線に沿った長さL1が15mmであり、合流空間46の軸線に沿った長さL2が3.5mmである。実施例1の合流空間46の径D1は6.0mm、実施例2の合流空間46の径D1は6.3mm、実施例3の合流空間46の径D1は6.6mm、実施例4の合流空間46の径D1は7.0mmであり、実施例5の合流空間46の径D1は8.0mmであり、実施例6の合流空間46の径D1は10.0mmであり、実施例7の合流空間46の径D1は12.0mmである。
【0055】
一方、比較例に係るノズル30を図6に示す。このノズル30は、外径が4.6mm、内径が3.0mmの直管状であり、到達距離延長構造を有していない。比較例のノズル30の長さは、実施例1~7のノズル3の長さと同じである。
【0056】
実施例1の平均到達距離は3.7m、実施例2の平均到達距離は3.3m、実施例3の平均到達距離は4.0m、実施例4の平均到達距離は3.3m、実施例5の平均到達距離は3.3m、実施例6の平均到達距離は3.3m、実施例7の平均到達距離は2.7mであったのに対し、比較例の平均到達距離は2.3mであった。このように、到達距離延長構造4を設けることで、設けない場合(比較例)に比べて内容物の到達距離が長くなる。特に、合流空間46の径D1を10.0mm以下とすることで、平均到達距離を3m以上確保できる。
【0057】
ところで、上記のように径D1が10.0mmのとき(実施例6)、ノズル3の先端を通りノズル3の軸線に直交する断面における合流空間46の断面積(外筒部40の内周面で囲まれた領域の断面積)は、78.5mmである。また、実施例で用いた内径が3.0mmのノズル3の開口の断面積(ノズル3の内周面で囲まれた領域の断面積)は、7.06mmである。流体の効果は断面積に対して作用することが知られているので、流体の到達距離の延長効果は上記断面積と相関関係があると考えられる。ここで、実施例6において、外筒部40の内周面で囲まれた領域の断面積とノズル3の開口の断面積との比を計算すると78.5mm÷7.06mm≒11.1であり、このときは上記のとおり到達距離を延ばす効果が十分に得られている。そこで、外筒部40の内周面で囲まれた領域の断面積が、ノズル3の開口の断面積の12倍未満の場合に、到達距離の延長効果が特に高まるといえる。
【0058】
次に、実施例8~10について説明する。実施例8~10に係るエアゾールキャップ1の断面図を図7に示す。実施例8~10は、合流空間46の噴射方向下流端に「拡径部」を設けた例である。すなわち、この実施例8~10では、合流空間46の下流側端部の径D1を、外気導入路43の径D2よりも拡大している。具体的には、実施例8において合流空間46の下流側端部の径D1は8.0mmで外気導入路43の径D2は6.0mmであり、実施例9において合流空間46の下流側端部の径D1は9.0mmで外気導入路43の径D2は7.0mmであり、実施例10において合流空間46の下流側端部の径D1は10.0mmで外気導入路43の径D2は8.0mmである。
【0059】
実施例8の平均到達距離は3.7m、実施例9の平均到達距離は3.0m、実施例10の平均到達距離は3.0mであり、いずれも3.0m以上であったことから、比較例に比べて内容物の到達距離が長くなることが分かる。
【0060】
以上を踏まえると、「拡径部」の有無によって若干の差はあるものの、いずれにしても到達距離を延長する効果が得られることが分かる。
【0061】
次に、合流空間46の噴射方向下流端に「縮径部」を設けた場合、すなわち、合流空間46の下流側端部の径D1を外気導入路43の径D2よりも縮小した場合について説明する(図は省略)。すなわち、内容物の噴射の勢いを増加させるという観点では、例えば圧縮空気や液体に用いられる一般的なノズルにおいて、下流側端部を縮径させて絞ることにより流速を高める構成が用いられることがある。本発明においても、合流空間46の噴射方向下流端に「縮径部」を設けることにより、噴射の勢いを増加させ、到達距離をより延ばすことができると考えられる。ただし、縮径部を有する場合は、液だれしない構造とすることが必要である。すなわち、エアゾール原液を多く配合したエアゾールにおいて大きな縮径部を設けると、当該箇所に内容物が衝突して液滴化し、「液だれ」を生じる可能性がある。
【0062】
この点、この実施例の液ガス比(3:7)で実際に縮径部を設けたエアゾールキャップで噴射試験を行ったところ、縮径部に内容物が衝突して液滴化し、「液だれ」が生じた。このためエアゾール製品としては非実用的であった。以上を踏まえると、この実施例の液ガス比においては、「液だれ」防止の観点から、合流空間46の下流側端部の径D1は外気導入路43の径D2以上であることが好ましい。
【0063】
一方で、エアゾール原液の配合比率を減らして噴射剤の配合比率を増やすことにより、「液だれ」は生じにくくなる傾向にあることが確認された。特に、エアゾール原液を省略し、噴射剤のみとした場合は、縮径部を設けたとしても「液だれ」は生じず、噴射性状も良好だった。このようにエアゾール原液の配合比率が低い場合は、液だれが生じない程度に縮径部を形成することができる。液だれが生じないよう配慮して縮径部を設計した場合、勢いよく遠くまで内容物をとばすことができる。縮径部を設ける場合の液ガス比は、特に限定されないが、2:8~0:10の範囲であることが好ましい。
【0064】
(シミュレーション結果)
次に、CFD解析によるシミュレーション結果について説明する。図8は、比較例と実施例1の内容物をそれぞれ噴射した場合の流速のシミュレーション結果を示すものである。図中、左側の白い四角形のものがエアゾール容器100であり、比較例ではエアゾール容器100の上部に図6に示すようなエアゾールキャップ30を取り付けた3次元モデルを用意し、また実施例1ではエアゾール容器100の上部に図5に示すようなエアゾールキャップ30を取り付けた3次元モデルを用意してシミュレーションを実行した。
【0065】
図中、白い部分ほど流速が高いことを示している。実施例1では、比較例に比べて白い部分がきれいに延びていることから噴射流の乱れが少なくなっていることが分かる。また、実施例1では、比較例に比べて白い部分が遠くまで延びていることから、より遠くまで勢いよく噴射できることが分かる。
【0066】
図9は、比較例に係るノズル30先端近傍の流速のシミュレーション結果を示すものである。一方、図10は、実施例1及び実施例5に係るノズル3先端近傍の流速のシミュレーション結果を示すものである。実施例1および実施例5では、外気導入路43内に空気の流れが生じている、すなわち外気が合流空間4に向けて流れていることが分かる。また、ノズル3から噴射された内容物と外気が混合された後も、内容物の流れに大きな乱れはない事が分かる。なお、実施例1では実施例5に比べて、外気導入路43内の外気の流速が高まっている。
【0067】
以上のシミュレーション結果から、本実施例のエアゾールキャップ1による内容物の到達距離の延長効果は、噴射流の乱れを抑える効果と、噴射の勢いを増大させる効果が複合した結果によるものであると推察できる。
【0068】
(作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、内容物は、エアゾールキャップ1のノズル3を流通して合流空間46に達する。一方、ノズル3の外側の空気(外気)は外気導入路43を流通して合流空間46に達する。合流空間46では内容物が噴射剤によって勢いよく噴射されているので、外気導入路43内の外気はその勢いによって合流空間46に引き込まれて内容物及び噴射剤と合流する。これにより、エアゾールキャップ1から噴射される内容物の勢いが増すので、外気を混合しない場合に比べて内容物の到達距離が延びる。
【0069】
また、本実施形態の外気導入路43は、内容物の噴射方向に対して略平行な方向で外気を合流空間46に導入する。これにより、気流の乱れを抑えて噴霧の勢いを増加させる効果が好適に得られる。
【0070】
内容物には、殺虫成分が含まれていてもよい。殺虫成分としては、例えばピレスロイド系、有機リン系、カーバメート系、ネオニコチノイド系、精油等を挙げることができる。ピレスロイド系は、例えばd-T80-フタルスリン、d-T80-レスメトリン、シフルトリン、β-シフルトリン、トラロメトリン、モンフルオロトリン、フェノトリン、シフェノトリン、イミプロトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、エムペントリン、テラレスリン、ペルメトリン、シペルメトリン、ジメフルトリン、テトラメトリン、エトフェンプロックス、ビフェントリン、シラフルオフェン、アレスリン、プラレトリン、フラメトリン、ピレトリン等である。有機リン系は、アセフェート、フェニトロチオン、ジクロルボス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェンチオン等である。カーバメート系は、カルバリル、プロポクスル等である。精油は、ハッカ油、ペパーミント油、ローズマリー油、オレンジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレビン油、ユーカリ油、ヒノキ油、ヒバ油、パチュリ油、サンダルウッド油、カンファー油、ジャスミン油、ネロリ油、ベルガモット油、ブチグレン油、レモン油、レモングラス油、シナモン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、コパイバ油、ジンジャー油、シトラール、L-メントール、酢酸シトロネリル、シンナミックアルデヒド、テルピネオール、ノニルアルコール、シス-ジャスモン、リモネン、リナロール、1,8-シネオール、ゲラニオール、α-ピネン、p-メンタン-3,8-ジオール、オイゲノール、酢酸メンチル、チモール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル等である。ネオニコチノイド系は、アセタミプリド、チアメトキサム、イミダクロプリド、ジノテフラン等である。他にも、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト、ブロフラニリド等が挙げられる。また、内容物には、殺虫成分が溶解する溶剤が含まれていてもよい。溶剤としては、例えば炭化水素系、エーテル系、エステル系、アルコール系、フッ素系、水等を挙げることができる。炭化水素系は、キシレン、トルエン、アルキルナフタレン、フェニルキシリルエタン、ケロシン(灯油)、軽油、ヘキサン、シクロヘキサン等である。エーテル系は、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等である。エステル系は、ミリスチン酸イソプロピル等である。アルコール系は、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等である。フッ素系は、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等である。水は、水道水、イオン交換水、蒸留水、ろ過処理した水、滅菌処理した水、地下水等である。
【0071】
(殺虫試験例1)
殺虫試験例1の供試虫はイエバエ(Musca domestica)のメスの成虫とした。1回の試験につき、供試虫を10匹用いた。試験場所は16畳の無風状態の部屋で、気温は26℃プラスマイナス1℃に調整し、湿度は50%プラスマイナス20%に調整した。
【0072】
エアゾールキャップは、到達距離確認試験と同様のものを使用した。供試剤は、エアゾール原液中に対して、有効成分をd-T80-フタルスリン0.1w/w%とし、エアゾール原液をケロシン(灯油)、噴射剤をLPG0.28とした。供試剤の液ガス比は3:7(容量比)とした。
【0073】
供試虫を直径90mmのガラスリングに入れ、ガラスリングにナイロンメッシュと輪ゴムで蓋をして供試虫が逃げ出さないようにした。供試虫を入れたガラスリングを、エアゾール噴霧装置の噴射口から3m離れた位置に設置した。なお、噴霧口の高さと同じ高さに供試虫が位置するようにガラスリングを設置した。このときのガラスリングの床面からの高さは約1.1mであった。エアゾール噴霧装置から供試剤を噴射する際、1回の噴射時間は3秒間とした。エアゾール噴霧装置から供試剤を噴射した直後から所定の時間、供試虫のノックダウン(仰天)数をカウントした。同じ試験を4回反復し、その結果からKT50(50%ノックダウン時間)を算出した。その結果を表1に示す。「流入口径」とは、第1部材41の上流端の開口径である。外筒部40はノズル3に対して3つの支持部44で支持されている。
【0074】
【表1】
【0075】
(殺虫試験例2)
殺虫試験例2の供試虫は殺虫試験例2と同じである。1回の試験につき、供試虫を10匹用いた。試験場所は無風状態の輸送用40フィートハイキューブコンテナ(内寸:奥行12.0m×幅2.3m×高さ2.7m)内で、気温は30℃プラスマイナス1℃に調整し、湿度は60%プラスマイナス10%に調整した。
【0076】
エアゾールキャップは、到達距離確認試験と同様のものを使用した。供試剤は、エアゾール原液中に対して、有効成分をd-T80-フタルスリン4w/w%、βシフルトリン0.5w/w%とし、エアゾール原液をケロシン(灯油)と他3微量成分からなるようにし、噴射剤をLPG0.40とした。供試剤の液ガス比は3:7(容量比)とした。
【0077】
供試虫を直径90mmのガラスリングに入れ、ガラスリングにナイロンメッシュと輪ゴムで蓋をして供試虫が逃げ出さないようにした。供試虫を入れたガラスリングを、エアゾール噴霧装置の噴射口から6m離れた位置に設置した。なお、噴霧口の高さと同じ高さに供試虫が位置するようにガラスリングを設置した。このときのガラスリングの床面からの高さは約1.1mであった。エアゾール噴霧装置から供試剤を噴射する際、1回の噴射時間は2秒間とした。エアゾール噴霧装置から供試剤を噴射した直後から所定の時間、供試虫のノックダウン数をカウントした。同じ試験を5回反復し、その結果からKT50を算出した。その結果を表2に示す。外筒部40はノズル3に対して3つの支持部44で支持されている。
【0078】
【表2】
【0079】
(殺虫試験例3)
殺虫試験例3の供試虫はキイロスズメバチ(Vespa simillima)のメスの成虫とした。1回の試験につき、供試虫を1匹用いた。試験場所は無風状態の輸送用40フィートハイキューブコンテナ(内寸:奥行12.0m×幅2.3m×高さ2.7m)内で、気温は30℃プラスマイナス1℃に調整し、湿度は60%プラスマイナス10%に調整した。
【0080】
エアゾールキャップは、到達距離確認試験と同様のものを使用した。供試剤は、エアゾール原液中に対して、有効成分をd-T80-フタルスリン4w/w%、βシフルトリン0.5w/w%とし、エアゾール原液をケロシン(灯油)と他3微量成分からなるようにし、噴射剤をLPG0.40とした。供試剤の液ガス比は3:7(容量比)とした。
【0081】
供試虫を直径90mmのガラスリングに入れ、ガラスリングに金網蓋とセロハンテープで蓋をして供試虫が逃げ出さないようにした。供試虫を入れたガラスリングを、エアゾール噴霧装置の噴射口から6m離れた位置に設置した。なお、噴霧口の高さと同じ高さに供試虫が位置するようにガラスリングを設置した。このときのガラスリングの床面からの高さは約1.1mであった。エアゾール噴霧装置から供試剤を噴射する際、1回の噴射時間は2秒間とした。エアゾール噴霧装置から供試剤を噴射した直後から、供試虫がノックダウンするまでの時間を計測した。同じ試験を5回反復し、その結果から平均ノックダウン時間を算出した。その結果を表3に示す。外筒部40はノズル3に対して3つの支持部44で支持されている。
【0082】
【表3】
【0083】
このように、エアゾールキャップ及びエアゾール製品は、イエバエ、キイロスズメバチのような飛翔害虫を駆除する場合に効果を発揮する。イエバエ、キイロスズメバチに対して駆除効果を発揮するということは、蚊、アブ、蛾のような飛翔害虫にも駆除効果を発揮するといえる。また、対象害虫までの距離は、3m、6mに限られるものではなく、例えば30cm程度の短距離から6m程度の長距離までの間であれば、駆除効果を発揮できる。また、噴射剤はLPG0.28、LPG0.40に限られるものではなく、他の噴射剤(ジメチルエーテル)等を用いても同様な駆除効果が得られる。有効成分は、d-T80-フタルスリンに限られるものではなく、他の有効成分を用いることもできる。他の有効成分を用いても30cm程度の短距離から6m程度の長距離までの間で駆除効果を発揮できる。また、有効成分の濃度は0.1%に限られるものではなく、例えば0.01%以上5%以下の範囲であれば、30cm程度の短距離から6m程度の長距離までの間で駆除効果を発揮できる。また、溶剤はケロシンに限られるものではなく、有効成分を溶解可能な溶剤を用いることができる。他の溶剤であっても、30cm程度の短距離から6m程度の長距離までの間で駆除効果を発揮できる。
【0084】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本開示に係るエアゾールキャップ及びエアゾール製品は、例えば殺虫剤や害虫忌避剤等の薬剤を噴射する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0086】
1 エアゾールキャップ
3 ノズル
4 到達距離延長構造
40 外筒部
43 合流空間
44 支持部
46 外気導入路
100 エアゾール容器
A エアゾール製品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10