(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008414
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】コンパウンドクリーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20240112BHJP
A23D 7/01 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A23D7/00 508
A23D7/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110270
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯部 敏秀
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG03
4B026DG04
4B026DG15
4B026DK10
4B026DL08
4B026DP01
4B026DP04
4B026DP10
4B026DX04
(57)【要約】
【課題】輸送時の乳化安定性が高いにも関わらず、ミキサーによるホイップ時間が短いコンパウンドクリームを提供すること。
【解決手段】生クリームの含有量がコンパウンドクリーム全体中5重量%未満のコンパウンドクリームであって、前記コンパウンドクリーム全体中、植物性油脂を4~35重量%、生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪を3~34重量%、水を40~67重量%、乳蛋白質を0.4~1.5重量%、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が80重量%以上の乳化剤を0.05~0.5重量%、構成脂肪酸全体中の不飽和脂肪酸含量が75重量%以上の乳化剤を0.03~0.3重量%、前記植物性油脂と前記乳脂肪の合計量が28~38重量%で含有するように混合され予備乳化された混合物が、1段目10~25MPa/2段目3~5MPaの圧力で均質化され、殺菌され、冷却された後に、再度1段目10~25MPa/2段目3~5MPaの圧力で均質化され、前記コンパウンドクリームに含まれる脂肪球のメジアン径が0.8~2μmであり、且つ前記脂肪球の粒度分布の標準偏差が0.35~0.9μmであり、前記脂肪球の表面のゼータ電位が-25~-50mVである、ホイップドクリームの作製に用いるためのコンパウンドクリーム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生クリームの含有量がコンパウンドクリーム全体中5重量%未満のコンパウンドクリームであって、
前記コンパウンドクリーム全体中、
植物性油脂を4~35重量%、生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪を3~34重量%、水を40~67重量%、乳蛋白質を0.4~1.5重量%、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が80重量%以上の乳化剤を0.05~0.5重量%、構成脂肪酸全体中の不飽和脂肪酸含量が75重量%以上の乳化剤を0.03~0.3重量%、前記植物性油脂と前記乳脂肪の合計量が28~38重量%で含有するように混合され予備乳化された混合物が、
1段目10~25MPa/2段目3~5MPaの圧力で均質化され、殺菌され、冷却された後に、再度1段目10~25MPa/2段目3~5MPaの圧力で均質化され、
前記コンパウンドクリームに含まれる脂肪球のメジアン径が0.8~2μmであり、且つ前記脂肪球の粒度分布の標準偏差が0.35~0.9μmであり、
前記脂肪球の表面のゼータ電位が-25~-50mVである、ホイップドクリームの作製に用いるためのコンパウンドクリーム。
【請求項2】
請求項1に記載のコンパウンドクリームがホイップされた、ホイップドコンパウンドクリーム。
【請求項3】
請求項2に記載のホイップドコンパウンドクリームを含む食品。
【請求項4】
コンパウンドクリーム全体中、生クリームの含有量が5重量%未満であり、前記コンパウンドクリームに含まれる脂肪球のメジアン径が0.8~2μmであり、且つ前記脂肪球の粒度分布の標準偏差が0.35~0.9μmであり、前記脂肪球の表面のゼータ電位が-25~-50mVである、ホイップドクリームの作製に用いるためのコンパウンドクリームの製造方法であって、
コンパウンドクリーム全体中、植物性油脂を4~35重量%、生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪を3~34重量%、水を40~67重量%、乳蛋白質を0.4~1.5重量%、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が80重量%以上の乳化剤を0.05~0.5重量%、構成脂肪酸全体中の不飽和脂肪酸含量が75重量%以上の乳化剤を0.03~0.3重量%、前記植物性油脂と前記乳脂肪の合計量が28~38重量%で含有するように混合し、予備乳化した混合物を、
1段目10~25MPa/2段目3~5MPaの圧力で均質化し、殺菌し、冷却した後に、再度1段目10~25MPa/2段目3~5MPaの圧力で均質化する、ホイップドクリームの作製に用いるためのコンパウンドクリームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性油脂と乳脂肪を油相の主原料とするコンパウンドクリーム、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品の製造において、人手不足に起因して生産性の向上がますます重要になっている。菓子パンやケーキ等の中には、油相中の油脂として乳脂肪と植物性油脂を含み、乳風味とさっぱりとした口当たりが特徴のコンパウンドクリームを使用した商品があるが、大量生産する際に該コンパウンドクリームのホイップ時間が長いと作業ライン全体の生産性が落ちてしまう。
【0003】
前記コンパウンドクリームは、一般的に流通時は液状であるため、輸送時の振動による乳化状態の破壊に耐えられる乳化安定性が求められる。そのため、圧力をかけて均質化処理を行うこと等で、脂肪球のサイズを小さく、且つ均一化させて乳化安定性を高めている。一方、ミキサー等による撹拌時には、速やかに起泡(ホイップ)が可能な解乳化性が求められる。ホイップ時間を短縮するためには、コンパウンドクリーム中の油分含量を高めたり、不飽和脂肪酸からなる乳化剤含量を多くして、解乳化を起こり易くするが、油分が多いと油っぽく感じられたり、不飽和脂肪酸からなる乳化剤が多いと不飽和脂肪酸からなる乳化剤由来の劣化臭等が感じられ、更には乳化安定性が悪くなるため、輸送時の振動で乳化状態が破壊され、乳化液の固化(ボテ)が起こり易くなる。
【0004】
このような課題を解決するために、例えば、特許文献1では、特定量の乳脂肪とベヘン酸を含むことで、短いホイップ時間と、含気能力と口どけを兼ね備えた水中油型乳化物が開示されている。しかしながら、水中油型乳化物中の乳蛋白質含量や脂肪球のメジアン径については特に言及されてはおらず、実施例の水中油型乳化物は、水中油型乳化物中の乳蛋白質含量が1.8重量%と多く、且つ均質化工程でかける圧力が0.5~10MPa程度と低いため、乳化安定性が高くなり過ぎて解乳化性が低くなり、ホイップ時間が十分に短縮されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
我々は、コンパウンドクリーム製造時の均質化工程に着目し、乳化安定性と高い解乳化性を両立させる検討を行ってきた。そこで本発明の目的は、輸送時の乳化安定性が高いにも関わらず、ミキサーによるホイップ時間が短いコンパウンドクリームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、植物性油脂、生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪、水、乳蛋白質、飽和脂肪酸が主体の乳化剤、不飽和脂肪酸が主体の乳化剤、及び前記植物性油脂と前記乳脂肪の合計の含有量がそれぞれ特定量となるように混合され予備乳化された混合物が、特定の条件で均質化され、並びにメジアン径、粒度分布の標準偏差、及び表面のゼータ電位がそれぞれ特定範囲である脂肪球を有するコンパウンドクリームは、輸送時の乳化安定性が高いにも関わらず、ミキサーによるホイップ時間が短いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第一は、生クリームの含有量がコンパウンドクリーム全体中5重量%未満のコンパウンドクリームであって、前記コンパウンドクリーム全体中、植物性油脂を4~35重量%、生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪を3~34重量%、水を40~67重量%、乳蛋白質を0.4~1.5重量%、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が80重量%以上の乳化剤を0.05~0.5重量%、構成脂肪酸全体中の不飽和脂肪酸含量が75重量%以上の乳化剤を0.03~0.3重量%、前記植物性油脂と前記乳脂肪の合計量が28~38重量%で含有するように混合され予備乳化された混合物が、1段目10~25MPa/2段目3~5MPaの圧力で均質化され、殺菌され、冷却された後に、再度1段目10~25MPa/2段目3~5MPaの圧力で均質化され、前記コンパウンドクリームに含まれる脂肪球のメジアン径が0.8~2μmであり、且つ前記脂肪球の粒度分布の標準偏差が0.35~0.9μmであり、前記脂肪球の表面のゼータ電位が-25~-50mVである、ホイップドクリームの作製に用いるためのコンパウンドクリームに関する。本発明の第二は、前記コンパウンドクリームがホイップされた、ホイップドコンパウンドクリームに関する。本発明の第三は、前記ホイップドコンパウンドクリームを含む食品に関する。本発明の第四は、コンパウンドクリーム全体中、生クリームの含有量が5重量%未満であり、前記コンパウンドクリームに含まれる脂肪球のメジアン径が0.8~2μmであり、且つ前記脂肪球の粒度分布の標準偏差が0.35~0.9μmであり、前記脂肪球の表面のゼータ電位が-25~-50mVである、ホイップドクリームの作製に用いるためのコンパウンドクリームの製造方法であって、コンパウンドクリーム全体中、植物性油脂を4~35重量%、生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪を3~34重量%、水を40~67重量%、乳蛋白質を0.4~1.5重量%、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が80重量%以上の乳化剤を0.05~0.5重量%、構成脂肪酸全体中の不飽和脂肪酸含量が75重量%以上の乳化剤を0.03~0.3重量%、前記植物性油脂と前記乳脂肪の合計量が28~38重量%で含有するように混合し、予備乳化した混合物を、1段目10~25MPa/2段目3~5MPaの圧力で均質化し、殺菌し、冷却した後に、再度1段目10~25MPa/2段目3~5MPaの圧力で均質化する、ホイップドクリームの作製に用いるためのコンパウンドクリームの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従えば、輸送時の乳化安定性が高いにも関わらず、ミキサーによるホイップ時間が短いコンパウンドクリームを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき、更に詳細に説明する。本発明のコンパウンドクリームは、植物性油脂、生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪、水、乳蛋白質、特定の乳化剤をそれぞれ特定量含有するように混合され予備乳化された混合物が、特定の条件で均質化されて得られ、並びにメジアン径、粒度分布の標準偏差、及び表面のゼータ電位がそれぞれ特定範囲である脂肪球を有し、該コンパウンドクリームを、空気を抱き込むように攪拌することでホイップでき、ホイップ後は保形性を有する。
【0011】
本発明におけるコンパウンドクリームは、起泡性水中油型乳化油脂組成物であり、その油相である油滴中に植物性油脂と生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪を主に含む。但し、コストの観点からはできるだけ少ない方が良いものの、前記コンパウンドクリームには、生クリームを含んでも良い。具体的に生クリームの含有量は、前記コンパウンドクリーム全体中5重量%未満が好ましく、3重量%未満がより好ましく、1重量%未満が更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0012】
前記植物性油脂は、植物を原料とする油脂であり、特に限定されないが、パーム系油脂、ラウリン系油脂(パーム核油、ヤシ油)、菜種油、コーン油、大豆油、綿実油、ひまわり油、サフラワー油、及び、オリーブ油等の植物性油脂とこれら全ての植物性油脂の分別油、硬化油、エステル交換油等が例示でき、それらの群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。中でも、パーム系油脂、ラウリン系油脂(パーム核油、ヤシ油)とこれら植物性油脂の分別油、硬化油、エステル交換油が好ましい。前記植物性油脂は、コンパウンドクリームの油相に含まれる。
【0013】
前記植物性油脂の含有量は、コンパウンドクリーム全体中、4~35重量%が好ましく、10~30重量%がより好ましく、15~25重量%が更に好ましい。4重量%より少ないと、生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪が多くなって、原料コストが高くなる場合があり、35重量%より多いと、生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪が少なくなって風味が低下する場合がある。
【0014】
前記生クリームを除く乳製品としては、バター、チーズ、牛乳、濃縮乳、無糖練乳、加糖練乳、全粉乳、バターミルク、バターミルクパウダー等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。
【0015】
前記生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪の含有量は、コンパウンドクリーム全体中、3~34重量%が好ましく、5~30重量%がより好ましく、7~25重量%が更に好ましい。3重量%より少ないと風味が低下する場合があり、34重量%より多いと、原料コストが高くなる場合がある。
【0016】
前記植物性油脂と前記生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪の合計量は、コンパウンドクリーム全体中、28~38重量%が好ましく、30~36重量%がより好ましく、31.5~34.5重量%が更に好ましい。28重量%より少ないと、ホイップ時間が長くなったり、ホイップドクリームの保形性が低下する場合があり、38重量%より多いと、輸送時の乳化安定性が低下する場合がある。
【0017】
前記水の含有量は、コンパウンドクリーム全体中、40~67重量%が好ましく、45~62重量%がより好ましく、50~58重量%が更に好ましい。40重量%より少ないと、輸送時の乳化安定性が低下する場合があり、67重量%より多いと、ホイップ時間が長くなる場合がある。
【0018】
前記乳蛋白質は、乳に由来する蛋白質の総称であり、生乳、牛乳、及び乳製品に多く含まれている。前記乳蛋白質としては、例えばカゼイン、トータルミルクプロテイン、ホエイ蛋白質、又は、これらの塩類もしくは濃縮物である、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、ホエイプロテインコンセントレート、ミルクプロテインコンセントレート等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0019】
そして、乳蛋白質源としては、前記乳蛋白質そのものでもよいし、前記乳蛋白質を含有する生乳、牛乳、又は乳製品を使用することもできる。前記乳蛋白質又は前記乳蛋白質を含有する生乳、牛乳、若しくは乳製品は、コンパウンドクリームの水相に含まれる。そして、輸送時の乳化安定性やホイップ時間の短さの観点からは、ホエイ蛋白質やカゼインカリウムの使用が好ましい。
【0020】
前記乳製品としては、例えば、脱脂粉乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、バターミルク、バターミルクパウダー、全脂粉乳、全脂濃縮乳、加糖練乳、無糖練乳、チーズ、ホエイパウダー等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0021】
前記乳蛋白質の含有量は、コンパウンドクリーム全体中、0.4~1.5重量%が好ましく、0.5~1.2重量%がより好ましく、0.6~1重量%が更に好ましい。0.4重量%より少ないと、輸送時の乳化安定性が低下する場合があり、1.5重量%より多いと、輸送時の乳化安定性が低下したり、口当たりが重くなる場合がある。
【0022】
前記コンパウンドクリームは、前記乳化剤として、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が80重量%以上の乳化剤、及び、構成脂肪酸全体中の不飽和脂肪酸含量が75重量%以上の乳化剤を含有することが好ましい。そして、それらの乳化剤は、油溶性であれば油相に、水溶性であれば水相に含ませる。
【0023】
前記飽和脂肪酸含量は、構成脂肪酸全体中90重量%以上がより好ましく、95重量%以上が更に好ましい。前記不飽和脂肪酸含量は、構成脂肪酸全体中80重量%以上がより好ましく、85重量%以上が更に好ましい。
【0024】
前記構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が80重量%以上の乳化剤の含有量は、コンパウンドクリーム全体中、0.05~0.5重量%が好ましく、0.1~0.45重量%がより好ましく、0.15~0.4重量%が更に好ましい。0.05重量%より少ないと、輸送時の乳化安定性が低下する場合があり、0.5重量%より多いと、ホイップ時間が長くなる場合がある。
【0025】
前記構成脂肪酸全体中の不飽和脂肪酸含量が75重量%以上の乳化剤の含有量は、コンパウンドクリーム全体中、0.03~0.3重量%が好ましく、0.1~0.27重量%がより好ましく、0.15~0.25重量%が更に好ましい。0.03重量%より少ないと、ホイップ時間が長くなる場合があり、0.3重量%より多いと、輸送時の乳化安定性が低下する場合がある。
【0026】
なお、乳化安定性と解乳化性のバランスの観点から、前記構成脂肪酸全体中の不飽和脂肪酸含量が75重量%以上の乳化剤/前記構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が80重量%以上の乳化剤(重量比)は、0.2~2が好ましく、0.3~1.5がより好ましく、0.5~1が更に好ましい。上記範囲にあると、より良好な輸送時の乳化安定性とホイップ時間の短さを得ることができる。
【0027】
本発明のコンパウンドクリームの油相には、前記植物性油脂、前記生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪や前記乳化剤以外にも、油溶性の着色料、油溶性の香料、油溶性の酸化防止剤等の油溶性成分を含むことができる。
【0028】
前記油溶性の着色料としては、天然成分や人工成分に関わらず、食品用途であれば特に制限はなく、例えば、パプリカ色素、アナトー色素(ノルビキシン、ビキシン等)、トマト色素、マリーゴールド色素、ウコン色素、ヘマトコッカス藻色素、デュナリエラカロチン、ニンジンカロチン、パーム油カロチン、α-カロチン、β-カロチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、リコピン、ルテイン、アポカロテナール、クルクミン、フコキサンチン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、ノルビキシン、ビキシン、シフォナキサンチン、及びクロロフィル等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0029】
前記油溶性の香料としては、天然成分や人工成分に関わらず、食品用途であれば特に制限はなく、例えば、油溶性のミルクフレーバー(ミルク香料)、油溶性のバターフレーバー(バター香料)、油溶性のクリームフレーバー等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0030】
前記油溶性の酸化防止剤としては、例えば、トコフェロ-ル類、アスコルビン酸パルミテ-ト、カテキン、ローズマリー抽出物等の抗酸化成分を主成分とする食品用途として使用できるもの等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0031】
また本発明のコンパウンドクリームの水相には、前記水、前記乳蛋白質、前記乳化剤以外にも、増粘剤、糖類、呈味剤、水溶性の着色料、水溶性の香料、水溶性の酸化防止剤、塩類、ビタミン類、ミネラル類等の水溶性成分を含むことができる。
【0032】
前記増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、寒天、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ローカストビーンガム、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、結晶セルロース、微結晶セルロース、澱粉、デキストリン等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0033】
前記糖類としては、例えば、ラクトース、グラニュー糖や上白糖等の砂糖、ブドウ糖、果糖、異性化糖、澱粉糖化物、澱粉又は糖アルコール等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0034】
前記呈味剤としては、例えば、前記生乳、牛乳、及び乳製品を酵素分解、加熱、分離、分画等をしたもの等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0035】
前記水溶性の着色料としては、天然成分や人工成分に関わらず、食品用途であれば特に制限はなく、例えば、水溶性のβ-カロテン、カラメル、紅麹色素、ウコン色素等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0036】
前記水溶性の香料としては、天然成分や人工成分に関わらず、食品用途であれば特に制限はなく、例えば、水溶性のミルクフレーバー(ミルク香料)、水溶性のバターフレーバー(バター香料)、水溶性のクリームフレーバー等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0037】
前記水溶性の酸化防止剤としては、ビタミンC、カテキン、アミノ酸、ヤマモモ抽出物、クエン酸、クエン酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、クロロゲン酸及びその誘導体、糖アミノ反応物、プロアントシアニジン、フラボン誘導体、茶抽出物、ブドウ種子抽出物及びルチン等の抗酸化成分が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0038】
前記塩類としては、一般に食品に用いられている塩類であれば特に制限はなく、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、乳酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0039】
前記ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKを主成分とする食品用途として使用できるもの等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0040】
前記ミネラル類としては、例えば、亜鉛、カリウム、カルシウム、クロム、セレン、鉄、銅、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ヨウ素、リン等が挙げられ、これらの成分を含む食品及び食品添加物に分類されるものを少なくとも1種を使用することができる。
【0041】
本発明のコンパウンドクリームに含まれる脂肪球のメジアン径は、0.8~2μmが好ましく、1~1.8μmがより好ましく、1~1.5μmが更に好ましい。0.8μmより小さいと、ホイップ時間が長くなる場合があり、2μmより大きいと、輸送時の乳化安定性が低下する場合がある。なお、該脂肪球には脂肪球の凝集体も含まれる。
【0042】
また前記脂肪球の粒度分布の標準偏差は、0.35~0.9μmが好ましく、0.45~0.7μmがより好ましく、0.5~0.65μmが更に好ましい。0.35μmより小さいと、均質すぎて解乳化性が不十分でホイップ時間が長くなる場合があり、0.9μmより大きいと、解乳化しやすくて輸送時の乳化安定性が低下する場合がある。
【0043】
前記メジアン径、及び、粒度分布の標準偏差は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-960V2」((株)堀場製作所製)を用いて測定することができる。即ち、コンパウンドクリームを攪拌して均一にした後、約0.1gを採取し、水が約250ml入った測定容器に投入し、1.7s-1で撹拌し均一に分散してから測定することができる。
【0044】
前記脂肪球の表面のゼータ電位は、-25~-50mVが好ましく、-27~-45mVがより好ましく、-30~-42mVが更に好ましい。ゼータ電位が-25mVより高いと、輸送時の乳化安定性が低下する場合がある。また、-50mVより低いと、ホイップ時間が長くなる場合がある。
【0045】
ゼータ電位とは、溶液中の微粒子の周りに形成される電気二重層中の滑り面と、界面から充分に離れた部分との間の電位差のことである。ここで、界面とは溶液と微粒子との界面である。ゼータ電位がゼロに近づくと、微粒子の相互の反発力が弱まり、やがて凝集する。前記ゼータ電位は、コンパウンドクリームを攪拌して均一にした後、イオン交換水で100倍希釈し0.75mlを専用のセルに注入し、動的光散乱式ゼータ電位測定装置「ゼータサイザーナノZSP」(Malvern Panalytical(株)社製)を用いて測定することができる。
【0046】
本発明のコンパウンドクリームの製造方法を以下に例示する。まず、50~70℃に加温溶融した前記植物性油脂と生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪に、油溶性の前記構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が好ましくは80重量%以上の乳化剤、油溶性の前記構成脂肪酸全体中の不飽和脂肪酸含量が好ましくは75重量%以上の乳化剤、及び必要に応じてそれら以外の前記油溶性成分を混合し、該混合物を50~70℃に維持しながら攪拌して油相を得る。
【0047】
一方、50~70℃に加温した前記水と、前記乳蛋白質、水溶性の前記構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が好ましくは80重量%以上の乳化剤、水溶性の前記構成脂肪酸全体中の不飽和脂肪酸含量が好ましくは75重量%以上の乳化剤、及び必要に応じてそれら以外の前記水溶性成分を混合し、50~70℃に維持しながら攪拌して水相を得る。
【0048】
前記水相を撹拌しながらそこへ前記油相を添加し、予備乳化した混合物を、好適には1段目10~25MPa/2段目3~5MPaの圧力で均質化し、次いで殺菌し、冷却した後に、再度、好適には1段目10~25MPa/2段目3~5MPaの圧力で均質化することで本発明のコンパウンドクリームが得られる。
【0049】
殺菌前の均質化においては、1段目12~25MPa/2段目4~5MPaの圧力がより好ましく、1段目15~25MPa/2段目4~5MPaの圧力が更に好ましい。
【0050】
また殺菌、冷却後の均質化においては、1段目12~25MPa/2段目4~5MPaの圧力がより好ましく、1段目15~25MPa/2段目4~5MPaの圧力が更に好ましい。
【0051】
前記均質化の条件が上記範囲内であれば、得られるコンパウンドクリームの脂肪球のメジアン径、該脂肪球の粒度分布の標準偏差、及び該脂肪球の表面のゼータ電位の各数値が前記範囲に入るように容易に調整することができる。
【0052】
そして、得られたコンパウンドクリームを、オープン式ホイッパーや密閉式連続ホイップマシン等のミキサーを用いて、トッピング、ナッペ、サンド等の使用目的に沿った適度な硬さに到達するまでホイップすることで、ホイップドコンパウンドクリームが得られる。
【0053】
本発明のホイップドコンパウンドクリームのオーバーランは、食感に優れるため、100~250%が好ましく、100~210%がより好ましく、140~200%が更に好ましく、160~190%が特に好ましい。ホイップドコンパウンドクリームのオーバーランは、下記式により求められる。
オーバーラン(%)=[(単位体積あたりのコンパウンドクリームの重量)-(単位体積あたりのホイップドコンパウンドクリームの重量)]/(単位体積あたりのホイップドコンパウンドクリームの重量)×100
【0054】
本発明のコンパウンドクリームがホイップされたホイップドコンパウンドクリームは、スポンジケーキ、ブッセ、クッキー、ビスケット等の菓子類に代表される食品のナッペ用、サンド用、又はトッピング用等のホイップドコンパウンドクリームとして、好適に使用することができる。
【実施例0055】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0056】
また、実施例及び比較例で使用した原料は以下の通りである。
1)よつ葉乳業(株)製「無塩バター」(よつ葉バター(食塩不使用))を溶解し、遠心分離して水相部を除去して得た乳脂肪
2)ADM(株)製「Yelkin TS」(構成脂肪酸全体中の不飽和脂肪酸含量:79重量%)
3)阪本薬品工業(株)製「SYグリスター PS-3S」(構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量:99.9重量%、HLB:2.6)
4)阪本薬品工業(株)製「SYグリスター MS-3S」(構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量:99.9重量%、HLB:8.4)
5)HILMAR社製「ラクトースHILMAR FINE GRAIND」(水分含量:0.2重量%)
6)よつ葉乳業(株)製「ホエイパウダー」(蛋白質含量:12重量%、水分含量:2.3重量%)
7)FrieslandCampina DMV社製「カゼインカリウムSPRAY」(蛋白質含量:89重量%、水分含量:5.7重量%)
8)阪本薬品工業(株)製「SYグリスター MS-5S」(構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量:99.9重量%、HLB:11.6)
9)阪本薬品工業(株)製「SYグリスター MO-5S」(構成脂肪酸全体中の不飽和脂肪酸:90重量%、HLB:11.6)
10)Archer Daniels Midland社製「ノヴァザン200メッシュ」(水分含量:7重量%)
11)星和(株)製「グアーガムXS-5000」(水分含量:14重量%)
12)昭和産業(株)製「VIANDEX B-H(DE9)」(水分含量:3.7重量%)
13)三菱化学フーズ(株)製「リョートーシュガーエステル S-570」(構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量:99.9重量%、HLB:5)
14)三菱化学フーズ(株)製「リョートーシュガーエステル P-1670」(構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量:99.9重量%、HLB:16)
【0057】
<コンパウンドクリームの評価>
(脂肪球のメジアン径、及び、脂肪球の粒度分布の標準偏差の測定)
コンパウンドクリーム中の脂肪球のメジアン径、及び、脂肪球の粒度分布の標準偏差は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-960V2」((株)堀場製作所製)を用いて測定した。具体的には、コンパウンドクリームを攪拌して均一にした後、約0.1gを採取し、水が約250ml入った測定容器に投入し、1.7s-1で撹拌し均一に分散してから測定した。
【0058】
(脂肪球のゼータ電位の測定)
コンパウンドクリームの脂肪球の表面のゼータ電位は、動的光散乱式ゼータ電位測定装置(Malvern Panalytical社製「ゼータサイザーナノZSP」)を用いて測定した。即ち、コンパウンドクリームを攪拌して均一にした後、イオン交換水で100倍希釈し0.75mlを専用のセルに注入して測定した。
【0059】
(ホイップ時間の測定)
実施例・比較例で得られたコンパウンドクリーム:3kgとグラニュー糖(東洋精糖(株)製「グラニュー糖」):0.24kgを、カントーミキサー(関東混合機工業株式会社製「HPi-20M」)を用いて、高速撹拌条件(回転速度:6.55s-1)でホイップし、トッピングするのに適度な硬さに到達するまでの時間を測定した。
【0060】
(オーバーランの測定)
実施例・比較例で得られたコンパウンドクリーム:3kgとグラニュー糖(東洋精糖(株)製「グラニュー糖」):0.24kgを、カントーミキサー(関東混合機工業株式会社製「HPi-20M」)を用いて、高速撹拌条件(回転速度:6.55s-1)でホイップし、トッピングするのに適度な硬さに到達するまでホイップした時のホイップドコンパウンドクリームの体積あたりの含気率の計算値をオーバーラン(%)とした。ホイップドコンパウンドクリームのオーバーラン(%)は上記式により求めた。
【0061】
ホイップ時間の測定及びオーバーランの測定における、前記トッピングするのに適度な硬さとは、ホイップ直後のサンプルを容器に入れた後、クリープメーター(「RE2-33005S」、株式会社山電製)を用いて直径16mmの円柱状のプランジャーにて、速度5mm/sの速さで1cm貫入時の最大荷重が0.25~0.35Nになる硬さのことである。
【0062】
(乳化安定性の評価)
実施例・比較例で得られたコンパウンドクリームを100ml容ガラスビーカーに60g取り分け、15℃で1時間静置した後、パドル型インペラを装着したジャーテスター(株式会社大同工業所製)にて2s-1で撹拌し、増粘するまでの時間(ボテ時間)(分′秒″)を測定し、以下の基準で評価して評価点とした。
5点:ボテ時間が60分以上で、乳化安定性が非常に良好である
4点:ボテ時間が50分以上、60分未満で、乳化安定性が良好である
3点:ボテ時間が30分以上、50分未満で、乳化安定性がやや劣るが、商品性に問題はないレベルである
2点:ボテ時間が15分以上、30分未満で、乳化安定性が悪い
1点:ボテ時間が15分未満で、乳化安定性が非常に悪い
【0063】
(ホイップ時間の短さの評価)
比較例1のコンパウンドクリームと比較し、以下の基準で評価して評価点とした。
5点:比較例1のホイップ時間の50%未満で、ホイップ時間が非常に短い
4点:比較例1のホイップ時間の50%以上60%未満で、ホイップ時間が短い
3点:比較例1のホイップ時間の60%以上80%未満で、ホイップ時間が比較的短い
2点:比較例1のホイップ時間の80%以上110%未満で、ホイップ時間は普通である
1点:比較例1のホイップ時間の110%以上で、ホイップ時間が長い
【0064】
(総合評価)
乳化安定性、及び、ホイップ時間の短さの評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
A:乳化安定性、及び、ホイップ時間の短さの評価が、どちらも5点であるもの
B:乳化安定性、及び、ホイップ時間の短さの評価がどちらも4点以上5点以下であって、且つ4点が少なくとも一つあるもの
C:乳化安定性、及び、ホイップ時間の短さの評価がどちらも3点以上5点以下であって、且つ3点が少なくとも一つあるもの
D:乳化安定性、及び、ホイップ時間の短さの評価がどちらも2点以上5点以下であって、且つ2点が少なくとも一つあるもの
E:乳化安定性、及び、ホイップ時間の短さの評価において、少なくともどちらか一方が1点であるもの
【0065】
(製造例1) 植物性油脂の混合油の作製
パーム核油((株)カネカ製「パーム核油」):9.7重量部、パーム中融点部((株)カネカ製「パーム中融点部」):55重量部、パーム軟質部((株)カネカ製「パーム軟質部」):35重量部、ハイエルシン菜種極度硬化油((株)カネカ製「ハイエルシン菜種極度硬化油」):0.3重量部を混合して、植物性油脂の混合油を作製した。
【0066】
(実施例1) コンパウンドクリームの作製
表1の配合や製造条件に従って、コンパウンドクリームを作製した。即ち、植物性油脂の混合油(製造例1):16.0重量部、乳脂肪:16.0重量部を配合した油脂混合物を65℃で溶融したところに、バター香料:0.015重量部、大豆レシチン:0.18重量部、テトラグリセリンペンタステアリン酸エステル:0.10重量部、テトラグリセリンモノステアリン酸エステル:0.25重量部を添加し、65℃で溶解して油相を作製した。
【0067】
一方、ラクトース:3.0重量部、ホエイパウダー:3.0重量部、カゼインカリウム:0.3重量部、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル:0.075重量部、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル:0.035重量部、キサンタンガム:0.01重量部、グアーガム:0.04重量部、デキストリン:2.5重量部、ミルク香料:0.05重量部を表1の配合と最終的に同じになるようにスチームインジェクション(蒸気加熱工程)での水分増加量を考慮した量の60℃の温水に溶解して水相を作製した。
【0068】
前記油相と前記水相を混合して得られた混合物を20分間予備乳化後、高周速回転式乳化機(エム・テクニック(株)製「クレアミックス」)を用いて周速31.4m/sの回転速度で微細化した後、高圧ホモジナイザーを用いて1段目25.0MPa/2段目5.0MPaの圧力で均質化処理した後に、プレート式加熱機を用いて90℃まで予備加熱した後、UHT殺菌機(スチームインジェクション)を用いて140℃で4秒間殺菌処理し、蒸発冷却せずにその後プレート式冷却機を用いて60℃まで冷却し、再び高圧ホモジナイザーを用いて1段目25.0MPa/2段目5.0MPaの圧力で均質化処理した。
【0069】
その後、プレート式冷却機で5℃まで冷却したものを容器に充填し、コンパウンドクリームを得た。得られたコンパウンドクリームの成分組成、脂肪球のメジアン径、脂肪球の粒度分布の標準偏差、及び、脂肪球の表面のゼータ電位の測定値を表1に示した。
【0070】
更に、このコンパウンドクリームを用い、上記に記載した方法に沿ってホイップドコンパウンドクリームを作製した。得られたホイップドコンパウンドクリームのホイップ時間、オーバーラン、ホイップ時間の短さの評価結果を、コンパウンドクリームの乳化安定性の評価結果と合わせて表1に示した。
【0071】
【0072】
(実施例2~3) コンパウンドクリームの作製
表1の配合に従って、植物性油脂の混合油:16.0重量部と乳脂肪:16.0重量部をそれぞれ、19.0重量部と19.0重量部(実施例2)、又は、14.0重量部と14.0重量部(実施例3)に変更し、添加した水量で全体量を調整した以外は、実施例1と同様にしてコンパウンドクリームを得た。
【0073】
得られたコンパウンドクリームの成分組成、脂肪球のメジアン径、脂肪球の粒度分布の標準偏差、及び、脂肪球の表面のゼータ電位の測定値を表1に示した。更に得られたコンパウンドクリームを実施例1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを作製し、ホイップドコンパウンドクリームのホイップ時間、オーバーラン、ホイップ時間の短さの評価結果を、コンパウンドクリームの乳化安定性の評価結果と合わせて表1に示した。
【0074】
(比較例1) コンパウンドクリームの作製
表1の条件に従って、テトラグリセリンペンタステアリン酸エステル:0.10重量部を0.16重量部、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル:0.075重量部を0.100重量部に変更して添加した水量で全体量を調整し、予備乳化後の均質化圧力:1段目25.0MPa/2段目5.0MPaを1段目4.0MPa/2段目2.0MPa、殺菌冷却後の均質化圧力:1段目25.0MPa/2段目5.0MPaを1段目9.0MPa/2段目2.5MPaに変更した以外は、実施例1と同様にしてコンパウンドクリームを得た。
【0075】
得られたコンパウンドクリームの成分組成、脂肪球のメジアン径、脂肪球の粒度分布の標準偏差、及び、脂肪球の表面のゼータ電位の測定値を表1に示した。更に得られたコンパウンドクリームを実施例1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを作製し、ホイップドコンパウンドクリームのホイップ時間、オーバーラン、ホイップ時間の短さの評価結果を、コンパウンドクリームの乳化安定性の評価結果と合わせて表1に示した。
【0076】
表1から明らかなように、コンパウンドクリーム全体中、植物性油脂を4~35重量%、生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪を3~34重量%、植物性油脂と乳脂肪の合計量が28~38重量%、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が80重量%以上の乳化剤を0.05~0.5重量%の範囲で含有し、脂肪球の粒度分布の標準偏差が0.35~0.9μmの範囲にあるコンパウンドクリーム(実施例1~3)は、いずれも乳化安定性、及び、ホイップ時間の短さの評価が良好であった。一方、コンパウンドクリーム全体中、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が80重量%以上の乳化剤が0.510重量%と多く、脂肪球の粒度分布の標準偏差が0.30μmと小さいコンパウンドクリーム(比較例1)は、ホイップ時間の短さの評価が悪く、総合評価はDであった。
【0077】
(実施例4~6、比較例2~3) コンパウンドクリームの作製
表2の条件に従って、予備乳化後の均質化圧力、及び、殺菌冷却後の均質化圧力を変更した以外は、実施例1と同様にしてコンパウンドクリームを得た。得られたコンパウンドクリームの成分組成、脂肪球のメジアン径、脂肪球の粒度分布の標準偏差、及び、脂肪球の表面のゼータ電位の測定値を表2に示した。更に得られたコンパウンドクリームを実施例1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを作製し、ホイップドコンパウンドクリームのホイップ時間、オーバーラン、ホイップ時間の短さの評価結果を、コンパウンドクリームの乳化安定性の評価結果と合わせて表2に示した。
【0078】
【0079】
表2から明らかなように、予備乳化後の均質化圧力が1段目10~25MPa/2段目3~5MPa、殺菌冷却後の均質化圧力が1段目10~25MPa/2段目3~5MPaの範囲で製造され、脂肪球のメジアン径が0.8~2μm、脂肪球の粒度分布の標準偏差が0.35~0.9μm、脂肪球の表面のゼータ電位が-25~-50mVの範囲にあるコンパウンドクリーム(実施例1、4~6)は、いずれも乳化安定性、及び、ホイップ時間の短さの評価が良好であった。
【0080】
一方、予備乳化後の均質化圧力が1段目8.0MPa/2段目2.0MPa、殺菌冷却後の均質化圧力が1段目8.0MPa/2段目2.0MPaと低い圧力で製造され、脂肪球の粒度分布の標準偏差が0.33μmと小さいコンパウンドクリーム(比較例2)は、ホイップ時間の短さの評価が悪く、総合評価はDであった。また、予備乳化後の均質化圧力が1段目30.0MPa/2段目5.0MPa、殺菌冷却後の均質化圧力が1段目30.0MPa/2段目5.0MPaと高い圧力で製造され、脂肪球のメジアン径が2.12μmと大きく、脂肪球の粒度分布の標準偏差が0.97μmと大きく、脂肪球の表面のゼータ電位が-23mVと高いコンパウンドクリーム(比較例3)は、乳化安定性の評価が悪く、総合評価はDであった。
【0081】
(実施例7~9、比較例4~5) コンパウンドクリームの作製
表3の配合に従って、乳化剤の配合量(実施例7~8、比較例4~5)、又は、乳化剤の種類と配合量(実施例9)を変更し、添加した水量で全体量を調整した以外は、実施例1と同様にしてコンパウンドクリームを得た。得られたコンパウンドクリームの成分組成、脂肪球のメジアン径、脂肪球の粒度分布の標準偏差、及び、脂肪球の表面のゼータ電位の測定値を表3に示した。更に得られたコンパウンドクリームを実施例1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを作製し、ホイップドコンパウンドクリームのホイップ時間、オーバーラン、ホイップ時間の短さの評価結果を、コンパウンドクリームの乳化安定性の評価結果と合わせて表3に示した。
【0082】
【0083】
表3から明らかなように、コンパウンドクリーム全体中、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が80重量%以上の乳化剤を0.05~0.5重量%、構成脂肪酸全体中の不飽和脂肪酸含量が75重量%以上の乳化剤を0.03~0.3重量%の範囲で含有するコンパウンドクリーム(実施例1、7~9)は、いずれも乳化安定性、及び、ホイップ時間の短さの評価が良好であった。
【0084】
一方、コンパウンドクリーム全体中、構成脂肪酸全体中の不飽和脂肪酸含量が75重量%以上の乳化剤が0.020重量%と少ないコンパウンドクリーム(比較例4)は、ホイップ時間の短さの評価が悪く、総合評価はEであった。また、コンパウンドクリーム全体中、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が80重量%以上の乳化剤が0.040重量%と少ないコンパウンドクリーム(比較例5)は、乳化安定性の評価が悪く、総合評価はEであった。
【0085】
(実施例10~11、比較例6~7) コンパウンドクリームの作製
表4の配合に従って、ホエイパウダー、及び/又は、カゼインカリウムの配合量を変更し、添加した水量で全体量を調整した以外は、実施例1と同様にしてコンパウンドクリームを得た。得られたコンパウンドクリームの成分組成、脂肪球のメジアン径、脂肪球の粒度分布の標準偏差、及び、脂肪球の表面のゼータ電位の測定値を表4に示した。更に得られたコンパウンドクリームを実施例1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを作製し、ホイップドコンパウンドクリームのホイップ時間、オーバーラン、ホイップ時間の短さの評価結果を、コンパウンドクリームの乳化安定性の評価結果と合わせて表4に示した。
【0086】
【0087】
表4から明らかなように、コンパウンドクリーム全体中、乳蛋白質が0.4~1.5重量%の範囲で、脂肪球のメジアン径が0.8~2μmで、脂肪球の粒度分布の標準偏差が0.35~0.9μmで、脂肪球の表面のゼータ電位が-25~-50mVの範囲にあるコンパウンドクリーム(実施例1、10~11)は、いずれも乳化安定性、及び、ホイップ時間の短さの評価が良好であった。一方、コンパウンドクリーム全体中、乳蛋白質が0.36重量%と少なく、脂肪球のメジアン径が2.15μmと大きく、脂肪球の粒度分布の標準偏差が0.96μmと大きく、脂肪球表面のゼータ電位が-22mVと高いコンパウンドクリーム(比較例6)は、乳化安定性の評価が悪く、総合評価はEであった。
【0088】
また、コンパウンドクリーム全体中、乳蛋白質が1.63重量%と多く、脂肪球の粒度分布の標準偏差が0.93μmと大きいコンパウンドクリーム(比較例7)は、乳化安定性の評価が悪く、総合評価はEであった。
【0089】
(実施例12~14) コンパウンドクリームの作製
表5の配合に従って、植物性油脂の混合油:16.0重量部と乳脂肪:16.0重量部をそれぞれ、29.0重量部と3.0重量部(実施例12)、25.0重量部と7.0重量部(実施例13)、又は、4.0重量部と28.0重量部(実施例14)に変更した以外は、実施例1と同様にしてコンパウンドクリームを得た。
【0090】
得られたコンパウンドクリームの成分組成、脂肪球のメジアン径、脂肪球の粒度分布の標準偏差、及び、脂肪球の表面のゼータ電位の測定値を表5に示した。更に得られたコンパウンドクリームを実施例1と同様にしてホイップドコンパウンドクリームを作製し、ホイップドコンパウンドクリームのホイップ時間、オーバーラン、ホイップ時間の短さの評価結果を、コンパウンドクリームの乳化安定性の評価結果と合わせて表5に示した。
【0091】
【0092】
表5から明らかなように、コンパウンドクリーム全体中、植物性油脂と乳脂肪の合計量が28~38重量%の範囲にある32.0重量%で、植物性油脂を4~35重量%、生クリームを除く乳製品由来の乳脂肪を3~34重量%の範囲で含有するコンパウンドクリーム(実施例1、12~14)は、いずれも乳化安定性、及び、ホイップ時間の短さの評価が良好であった。