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特開2024-84142周囲センサシステム用のシミュレーション装置およびこのようなシミュレーション装置を作動させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084142
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】周囲センサシステム用のシミュレーション装置およびこのようなシミュレーション装置を作動させる方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
G01S7/40 152
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023208540
(22)【出願日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】10 2022 133 033.8
(32)【優先日】2022-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506012213
【氏名又は名称】ディスペース ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】dSPACE GmbH
【住所又は居所原語表記】Rathenaustr.26,D-33102 Paderborn, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ディルク ベルネック
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヒムラー
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー トラップ
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB01
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本願は周囲センサシステム(US)用のシミュレーション装置に関する。
【解決手段】周囲センサシステム(US)によって送信された第1の信号(SG1)を受信し第1の動作信号(A1)に変換する受信装置(RX)と、第1の動作信号(A1)を取り込むために受信装置(RX)に接続された信号路(SP)と、を有し、信号路(SP)は、第1の信号処理部(SV1)を用いて第1の動作信号(A1)およびそれぞれの信号エコー(SE)に依存する第2の動作信号(A2)を生成し、信号エコー(SE)は、信号パラメータ(Δt,f,AMP)によって特徴付けられ、第2の信号処理部(SV2)は、信号パラメータ(Δt,f,AMP)に変動(SW)を付与し、シミュレーション装置は、第2の動作信号(A2)を第2の信号(SG2)に変換して、周囲センサシステム(US)に第2の信号(SG2)を送信する送信装置(TX)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの信号エコー(SE)に基づいて、少なくとも1つのそれぞれの対象体を検出するように構成された周囲センサシステム(US)用のシミュレーション装置であって、前記シミュレーション装置は、
前記周囲センサシステム(US)によって送信された第1の信号(SG1)を受信して、第1の動作信号(A1)に変換するように構成された受信装置(RX)と、
前記第1の動作信号(A1)を取り込むために前記受信装置(RX)に接続された信号路(SP)と、
送信装置(TX)と、
を有し、
前記信号路(SP)は、第1の信号処理部(SV1)を用いて、前記第1の動作信号(A1)およびそれぞれの前記信号エコー(SE)に依存する第2の動作信号(A2)を生成するように構成されており、それぞれの前記信号エコー(SE)は、少なくとも1つの信号パラメータ(Δt,f,AMP)によって特徴付けられており、第2の信号処理部(SV2)は、少なくとも1つの前記信号パラメータ(Δt,f,AMP)に変動(SW)を付与するように構成されており、
前記送信装置(TX)は、前記第2の動作信号(A2)を第2の信号(SG2)に変換して、前記周囲センサシステム(US)に前記第2の信号(SG2)を送信するように構成されている、
シミュレーション装置。
【請求項2】
前記第2の信号処理部(SV2)は、入力信号(E)を受信するためのインタフェース(IF)を有し、
前記第2の信号処理部(SV2)は、前記入力信号(E)に依存して前記変動(SW)を生成するように構成されている、
請求項1記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記第1の信号処理部(SV1)は、少なくとも1つの前記信号パラメータとして、遅延および/または信号強度(AMP)および/または信号周波数を生成するように構成されている、
請求項1または2記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記第2の信号処理部(SV2)は、周期的にかつ/またはランダムにかつ/またはあらかじめ設定された期間の間、前記変動(SW)を生成するように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記第2の信号処理部(SV2)は、前記変動(SW)の絶対値および/または前記変動(SW)の繰返し周波数を確定するように構成されており、前記確定は、特に、入力信号(E)に依存して行われる、
請求項1から4までのいずれか1項記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
前記第1の信号処理部(SV1)は、デジタル式にかつ/またはアナログ式に形成されており、
前記第2の信号処理部(SV2)はデジタル式にかつ/またはアナログ式に形成されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載のシミュレーション装置。
【請求項7】
前記アナログ式の形成のためにスイッチング可能な遅延素子(VZ1~VZ3)が設けられており、前記遅延素子(VZ1~VZ3)を介して前記信号エコーおよび/または前記変動が生成可能である、
請求項6記載のシミュレーション装置。
【請求項8】
それぞれの信号エコー(SE)に基づいて、少なくとも1つのそれぞれの対象体を検出するように構成された周囲センサシステム(US)用のシミュレーション装置を作動させる方法であって、前記方法は、以下の方法ステップ、すなわち、
前記周囲センサシステム(US)によって送信された第1の信号(SG1)を受信装置(RX)によって受信するステップと、
前記受信装置(RX)により、前記第1の信号(SG1)を第1の動作信号(A1)に変換するステップと、
信号路(SP)により、前記第1の動作信号(A1)を取り込むステップと、
第1の信号処理部(SV1)により、それぞれの前記信号エコー(SE)と前記第1の動作信号(A1)とから導出した第2の動作信号(A2)を生成するステップであって、それぞれの前記信号エコー(SE)は、少なくとも1つの信号パラメータ(Δt,f,AMP)によって特徴付けられており、第2の信号処理部(SV2)により、少なくとも1つの前記信号パラメータ(Δt,f,AMP)に変動(SW)を付与するステップと、
前記第2の動作信号(A2)を第2の信号(SG2)に変換して、送信装置(TX)によって前記第2の信号(SG2)を送信するステップと、
を有する方法。
【請求項9】
前記第2の信号処理部(SV2)により、入力信号(E)に依存して前記変動(SW)を生成する、
請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記第1の信号処理部(SV1)により、少なくとも1つの前記信号パラメータとして、遅延(Δt)および/または信号強度(AMP)および/または信号周波数(f)を生成する、
請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記第2の信号処理部(SV2)により、周期的にかつ/またはランダムにかつ/またはあらかじめ設定された期間の間、前記変動(SW)を生成する、
請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記第2の信号処理部(SV2)により、前記変動(SW)の絶対値および/または前記変動(SW)の繰返し周波数を確定し、特に、入力信号(E)に依存して前記確定を行う、
請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記第1の信号処理部および/または前記第2の信号処理部(SV2)のアナログ式の形成のために遅延素子(VZ1~VZ3)をスイッチングする、
請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、周囲センサシステム用のシミュレーション装置と、このようなシミュレーション装置を作動させる方法とに関する。周囲センサシステムは、例えば、レーダまたはライダーの基本方式に基づいていてよい。レーダセンサは、無線周波数領域における電磁波に基づいており、ライダーセンサは、レーザ周波数領域における電磁波に基づいている。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2020/141151号からは、電磁波で動作する距離センサをテストするためのシミュレータ装置を作動させる方法が公知である。ここでは、距離センサによって受信された信号に対応して、周波数シフトが付与された所望の反射信号が生成される。付加された周波数シフトから、距離センサにより、相対速度についての情報が取得可能である。シミュレータ装置を用いて距離センサをテストすることができる。
【0003】
国際公開第2020/136279号からは、電磁波に基づく距離センサ用に、空間距離をシミュレーションするための信号遅延装置が公知である。ここでは、距離センサによって受信された信号に対応して、遅延が付与された所望の反射信号が生成される。受信された信号の付加された遅延から、距離センサにより、距離情報が取得可能である。シミュレータ装置を用いて距離センサをテストすることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
周囲センサシステムは、対象体を検出するように構成されている。周囲センサシステムは、それぞれの信号エコーに基づいて、少なくとも1つのそれぞれの対象体を検出することができる。このような周囲センサシステム用のシミュレーション装置は、シミュレートされるそれぞれの対象体に対応する信号エコーを生成するように構成されている。このシミュレーション装置は、
周囲センサシステムによって送信された第1の信号を受信して、第1の動作信号に変換するように構成された受信装置と、
第1の動作信号を取り込むために受信装置に接続されている信号路と、を有し、この信号路は、第1の信号処理部を用いて、第1の動作信号とそれぞれの信号エコーとに依存する第2の動作信号を生成するように構成されており、ここではそれぞれの信号エコーは、少なくとも1つの信号パラメータによって特徴付けられており、第2の信号処理部が、少なくとも1つの信号パラメータに変動を付与するように構成されており、シミュレーション装置はさらに、
第2の動作信号を第2の信号に変換して、周囲センサシステムに第2の信号を送信するように構成された送信装置を有する。
【0005】
さらに、周囲センサシステム用のシミュレーション装置を作動させる方法が提案される。周囲センサシステムは、それぞれの信号エコーに基づいて、少なくとも1つのそれぞれの対象体を検出するように構成されている。この方法は、次の方法ステップ、すなわち、
周囲センサシステムによって送信された第1の信号を受信装置によって受信するステップと、
受信装置により、第1の信号を第1の動作信号に変換するステップと、
信号路により、第1の動作信号を取り込むステップと、
第1の信号処理部により、それぞれの信号エコーと、第1の動作信号とから導出した第2の動作信号を生成するステップであって、ここでそれぞれの信号エコーは、少なくとも1つの信号パラメータによって特徴付けられており、第2の信号処理部により、少なくとも1つの信号パラメータに変動を付与するステップと、
第2の動作信号を第2の信号に変換して、送信装置によって第2の信号を送信するステップと、を有する。
【0006】
独立請求項の特徴的構成を備えた、周囲センサシステム用のシミュレーション装置、もしくはこのような周囲センサシステム用のシミュレーション装置を作動させる方法は、これにより、レーダセンサ、または択一的な周囲センサ、例えばライダーセンサ等についての適切な妥当性検査および分類を伴って、正確なシミュレーションが可能となるという利点を有する。本願の根底にある認識は、現実において、信号エコーが、ある程度の曖昧さを有するということである。これは、フレッカーとも称される。これは、例えば、対象体の移動、または対象体とセンサとの間に位置する空気層の移動によって引き起こされる。ここでは、別の影響因子も関与することがある。信号エコーの妥当性を判断し、これを特定の対象体タイプ、すなわち例えば乗用車、オートバイまたは自転車または歩行者に分類するために、このような周囲センサ用の評価コンポーネントによって、例えばフリッカー等の、このような作用を利用することができる。したがって、このようなセンサについてのシミュレーション装置が、リアルな対象体と共にリアルな周囲をシミュレートできると、有利である。これにより、リアルさに加えて、これらのような作用の評価に関するセンサの能力もテスト可能である。
【0007】
信号エコー、例えばレーダエコーまたはライダーエコーは、周囲センサシステムによって送信された信号の、それぞれの対象体における反射である。対象体がシミュレートされる際、このような信号エコーは、シミュレーション装置によってシミュレート、すなわち模倣される。
【0008】
本願によると、シミュレーション装置とは、様々な状況において、機能性および性能について周囲センサシステムをテストするために、周囲センサシステムが組み込まれているかまたは導入されている装置のことであると理解される。この場合、これにより、周囲センサシステムを例えば車両に組み込んでこれらの状況をリアルに経ることなく、大いに異なる状況を一通りテストすることができる。周囲センサシステムは、いわゆるテスト対象デバイス(Device Under Test)であり、シミュレーション装置によってコストに有利に一通りテスト可能である。
【0009】
周囲センサシステムは、本発明では、レーダセンサシステムまたはライダーセンサシステム、またはこれらの2つの組み合わせであってよいが、信号エコーによって動作する別の周囲センサシステムも、本発明では、本願に従ってテスト可能である。レーダセンサシステムにより、例えばマイクロ波が送出され、送出されたこのようなマイクロ波の結果として対象体において反射された信号エコーが受信される。伝搬時間を測定すること、または放射されて受信された信号を巧みに評価することから、対象体との距離情報を取得することができる。ここでは、車両における用途において、ドップラー効果に基づく周波数シフトが利用されることが多く、この周波数シフトから、距離情報の他に、例えば相対速度についての情報も取得することができる。エコーの信号強度の評価を介して、反射が行われた対象体についての特性を得ることができる。ライダーセンサは、マイクロ波の代わりに、レーザ光、好ましくは赤外線領域におけるレーザ光を使用する。
【0010】
周囲センサシステムは、それぞれの信号エコーに基づいて、それぞれの対象体を検出するように構成されている。対象体は、例えば、別の車両、歩行者、オートバイまたは自転車である。このような周囲センサシステムは特に、支援運転または自動運転にも、また既に使用されている緊急ブレーキ機能または運転支援にも使用可能である。
【0011】
したがって、信号エコーとは、周囲センサシステムによって送信された信号の反射であって、対象体の位置および移動ベクトルが、例えば識別されることにより、この対象体が検出される反射を意味する。
【0012】
本シミュレーション装置は、周囲センサシステムによって送信された第1の信号を受信して、第1の動作信号に変換するように構成された受信装置を有する。例えばレーダによって送信される信号は、例えばマイクロ波領域において、例えば77GHzで送信されており、したがって受信装置はこの場合、このようなマイクロ波信号を受信して処理することができる、対応する受信器を有する。この際、受信装置により、受信した第1の信号が第1の動作信号に変換される。この際、第1の動作信号は、これを電子的により容易に処理できるようにするために、第1の信号の周波数よりも低い周波数に変換される。したがって、第1の動作信号は次いで、第1の動作信号を取り込むために受信装置に接続されている信号路に渡される。
【0013】
信号路は、信号処理チェーンを意味し、加えてそれぞれの信号エコーと、第1の動作信号とから導出された第2の動作信号を形成する第1の信号処理部を有する。ここでは、所望の信号エコーにより、対応する対象体と、この対象体における第1の信号の反射とがシミュレートされるべきである。これは、例えば、第1の動作信号の少なくとも1つの信号パラメータを変調することによって行うことができる。このような信号パラメータにより、信号エコーが特徴付けられ、この信号パラメータは、従属請求項に従ってより詳細に定義される。
【0014】
信号エコーに関する情報、および信号エコーの信号パラメータについての値は、特にインタフェースを介して信号路に供給可能である。信号エコーに関する情報は、例えば、テストプログラムから生成可能であるか、または手動で入力可能である。
【0015】
第2の動作信号の生成は、信号エコーの少なくとも1つの信号パラメータを使用して、第1の動作信号の変調によって行うことができる。同様に、第1の動作信号および信号エコーからの情報を考慮して、第2の動作信号を新たに生成することも可能である。
【0016】
信号路にはさらに、第2の信号処理部が設けられている。第2の信号処理部は、少なくとも1つの信号パラメータに変動を付与するように構成されている。すなわち、信号エコーの少なくとも1つの信号パラメータに時間変化が付与されることにより、第2の信号処理部によって第2の動作信号に変動が付与される。
【0017】
したがって、2段階の信号処理部が存在し、まず所望の信号エコーの信号パラメータが、第1の動作信号に組み込まれ、第2の動作信号が生成される。ここでは、この挿入は、例えば変調によって行うことができる。第2ステップでは次いで、第2の動作信号において、信号エコーの少なくとも1つの信号パラメータに変動が付与される。これにより、次いでシミュレーション装置において、第2の動作信号に所望のジッターを組み込むことができる。
【0018】
第1の信号処理部および第2の信号処理部は、プロセッサに実装されていてよいが、専用のハードウェアが使用されてもよい。特に、第1の信号処理部および第2の信号処理部は、ソフトウェアとして実施可能である。有利な実施形態では、第1の信号処理部および第2の信号処理部は、同じハードウェアに実装され、例えば、さらに同じプロセッサに実装される。この場合、第1の信号処理および第2の信号処理は、相前後して実行可能である。
【0019】
ここでは、第2の動作信号、すなわち信号エコーの少なくとも1つの信号パラメータの変動を有する第2の動作信号を第2の信号に変換するように構成されている送信装置が構成されている。この第2の信号は次いで、送信装置によって周囲センサシステムに送信される。これにより、対象体における反射は、本願によるシミュレーション装置、もしくはこのようなシミュレーション装置を作動させる本願による方法によって生成され、これにより、周囲センサシステムは、任意の所望の対象体をシミュレート可能である。これによると、送信装置により、例えば、第1の信号が受信された周波数範囲に第2の動作信号が変換される。このために、レーダセンサ用の送信装置は、例えば、対応するマイクロ波電子回路を有することができる。ライダーセンサについては、送信装置は光学式送信装置として実施されていてよい。
【0020】
従属請求項に記載されている手段および発展形態により、特許請求の範囲の独立請求項に示したシミュレーション装置、もしくはこのようなシミュレーション装置を作動させる、対応する方法の有利な改善が可能である。
【0021】
1つの実施形態では、第2の信号処理部は、入力信号を受信するためのインタフェースを有し、第2の信号処理部は、入力信号に依存して変動を生成するように構成されている。すなわち、信号エコーの少なくとも1つの信号パラメータに時間変化を付与することにより、第2の信号処理部によって第2の動作信号に変動を付与する。その際、例えば、テストプログラムから生成されるかまたは手動で入力される入力信号に依存してこの時間変化を生成する。これにより、包括的なテストコンセプトにシミュレーション装置を統合することが可能となり、このテストコンセプトでは、信号エコーにジッターが所期のように組み込まれる。
【0022】
本発明において提案されるのは、第1の信号処理部が、少なくとも1つの信号パラメータとして、遅延および/または信号強度および/または信号周波数を生成するようにシミュレーション装置が構成されることである。これらのパラメータにより、個別にまたは組み合わせで、第1の動作信号を変更することができる。このことは、例えば、シミュレートされる対象体とセンサとの所定の距離をシミュレートするために、第1の動作信号に遅延が挿入されることを意味する。択一的または付加的には、対象体の特定の性質、例えば、表面品質および/またはシミュレーションされる対象体の大きさをシミュレーションするために、第1の動作信号の信号強度、すなわち振幅に所期のように影響を及ぼすことができる。すなわち、対象体の所望のレーダ横断面に対応して振幅、ひいては信号強度が変調される。択一的または付加的に、信号エコーは、例えば、第1の動作信号とは異なる周波数を有することができ、すなわち、シミュレートされる対象体の、センサに対する相対移動をシミュレートするために、第1の動作信号の周波数が変更され、すなわち変調される。したがって、周囲センサシステムへ向かう、それぞれのシミュレートされる対象体の移動は、ドップラー効果に対応し、周波数を上げることによってシミュレート可能である。
【0023】
1つの実施形態では、第2の信号処理部は、周期的に、かつ/またはランダムに、かつ/または所定の持続時間の間、変動を生成するように構成されている。同時に適用可能でもあるこれらの択一的な形態により、変動の様々な作用を模擬することができる。ここで周期的とは、あらかじめ設定したタイムグリッドで変動が繰り返されることを意味する。ランダムとは、少なくとも近似的に、ランダムパターンに従って変動が生じることを意味する。これは、例えば、疑似ランダム発生器によって決定可能である。あらかじめ設定された持続時間の間だけ、変動が設けられていてもよい。
【0024】
さらに、提案されるのは、変動に対する絶対値、すなわち変動の偏差、またはどのくらい揺らいだかを確定するように第2の信号処理部が構成されることである。特に、変動の絶対値の確定は、入力信号に依存して行うことができる。択一的または付加的には、変動の繰返し周波数が確定可能である。特に、変動の繰返し周波数の確定は、入力信号に依存して行うことができる。これにより、例えば、様々な対象体による信号エコーまたは他の作用を考慮することができる。
【0025】
第1の信号処理部はデジタル式に、かつ/またはアナログ式に形成可能である。したがって、特に、第1の動作信号に組み込まれる、信号エコーの周波数および/または信号強度は、デジタル式に、かつ/またはアナログ式に生成可能である。時間遅延を生成するために、第1の信号処理部は、アナログ式の形成において、スイッチング可能な遅延素子を有することができる。この際、遅延素子は、第2の動作信号が送られる線路を有していてよい。この場合、遅延素子を通過することにより、第2の動作信号が時間遅延される。
【0026】
第2の信号処理部はデジタル式に、かつ/またはアナログ式に形成可能である。したがって、特に、信号エコーの周波数および/または信号強度についての、ジッターとも称される変動は、デジタル式に、かつ/またはアナログ式に生成可能である。時間遅延の、ジッターとも称される変動を生成するために、第2の信号処理部は、アナログ式の形成において、フレキシブルにスイッチング可能な遅延素子を有することができる。この際、遅延素子は、第2の動作信号が送られる線路を有していてよい。この場合、遅延素子を通過することにより、第2の動作信号が時間遅延される。このように遅延素子をフレキシブルに付加的に接続および遮断することにより、所望の変動を生成することができる。
【0027】
複数の実施形態では、信号エコーの信号パラメータおよびそれぞれ所望の変動を一緒に生成可能である。このことは、例えば、第1の信号処理部と第2の信号処理部とが一緒に実現され、比較的長い遅延素子と比較的短い遅延素子とが択一的に付加的に接続され、また遮断される場合に可能である。これにより、変動を伴う時間遅延が生成可能である。
【0028】
対応することは、方法についての請求項にも当てはまる。
【0029】
図に実施例を示し、以下の説明においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】シミュレーション装置の概略構造を示す図である。
図2】信号エコーの概略図を伴うグラフである。
図3】信号処理チェーンのブロック図である。
図4】遅延素子の使用を概略的に示す図である。
図5】シミュレーション装置を作動させる方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面において、同じまたは類似の要素には同じ参照符号が使用される。図面における表現は、正確な縮尺でないことがある。
【0032】
図1には、シミュレーション装置の構造が略示されている。テスト対象デバイスとしての周囲センサシステムUSにより、受信装置RXに第1の信号SG1が送信され、この受信装置RXにより、第1の信号SG1が第1の動作信号A1に変換されて、後で説明する信号処理部SV1,SV2を有する信号路SPに渡される。第1の信号SG1は、電磁波であり、(周囲センサシステムUSの種類に応じて)例えば、マイクロ波領域または光学的な赤外線領域における周波数を有する。受信装置RXは、より容易な後続処理のために、第1の動作信号A1として、ベースバンド信号に第1の信号SG1を変換するように形成されている。
【0033】
第1の信号処理部SV1では、第1の動作信号A1および所望の信号エコーSEを使用して、第2の動作信号A2が生成される。ここで、所望の信号エコーSEは、例えば、間隔、相対速度、ならびに/または例えば大きさおよび/もしくは表面品質等の別の特性に関する、シミュレート対象の対象体の表現である。ここでは、信号エコーSEは特に、1つまたは複数の信号パラメータ、例えば信号強度AMP、周波数fおよび/または時間遅延Δt等によって特徴付けられる。
【0034】
第2の動作信号A2の生成は、例えば、第1の信号処理部SV1において、第1の動作信号A1に信号エコーSEの1つまたは複数の所望のパラメータを付与することによって行うことが可能である。ここでは、信号強度AMPおよび/または周波数fおよび/または遅延Δtに関して、信号エコーSEに依存する信号パラメータが第1の動作信号A1に書き込まれる。したがって変調が行われる。この場合にここから、すなわちこの変調から、第2の動作信号A2が生じる。
【0035】
択一的または付加的には、新たな信号として第2の動作信号A2を生成することも可能である。この場合、このために第1の動作信号A1および所望の信号エコーSEの対応する情報が使用され、ここから、対応する第2の動作信号A2が生成される。
【0036】
信号路SPはさらに、第2の信号処理部SV2を有し、上述のジッターをシミュレートするために、この第2の信号処理部SV2により、第1の動作信号A1に、またはこの第1の動作信号A1において特に、信号エコーSEの1つまたは複数の含まれる信号パラメータに変動SWが付け加えられる。この変動SWは、入力信号Eを介して決定され、この入力信号Eは、インタフェースIFを介し、第2の信号処理部SV2によって取り込まれる。このようにして変更された第2の動作信号A2は、次いで送信装置TXに伝送され、この送信装置TXは、このようにしてさらに処理された第2の動作信号A2を第2の信号SG2に変換し、この第2の信号SG2は次いで、図示しないアンテナまたはビーム源を介して周囲センサシステムUSに送信され、この周囲センサシステムUSによって受信可能である。このために送信装置TXは、特に高周波、特にマイクロ波または赤外領域における高周波を生成するための高周波・構成部材を有する。したがって、信号路SPを介して、周囲センサシステムUS用の対応する信号エコーSEが生成され、この信号エコーSEは、第2の信号SG2の構成部分として周囲センサシステムUSによって受信可能であり、このようにして信号エコーSEの信号パラメータを介して対象体をシミュレートする。
【0037】
図2には、遅延Δtまたは周波数fに関して、対象体の信号エコーSEの一例が概略的にプロットされている。同様に、遅延Δtおよび/または周波数fに付与可能な変動SWが示されている。図2の水平方向のこの変動SWは、遅延Δtおよび/または周波数fの変化に対応する。同様に、信号強度AMP、すなわち振幅に付与可能な変動SWも同様に図示されている。図2の垂直方向のこの変動SWは、信号強度AMPの変化に対応する。
【0038】
図3には、シミュレーション装置を作動させる方法の一部が、信号処理チェーンの一部のブロック回路図として、ブロック図で示されている。第1の動作信号A1は、第1の信号処理部SV1内でブロックB-AMPにおいて、振幅、すなわち信号強度AMPが変更される。ブロックB-fでは、第1の動作信号A1は、周波数fが変更され、またブロックB-Δtでは、信号に時間遅延Δtが付加される。第1の動作信号A1には、これらのパラメータの3つの全てを挿入するか、またはこれらのパラメータの1つもしくは2つだけを挿入することも可能である。これらのパラメータにより、信号エコーSEが組み込まれる。この場合にここから第2の動作信号A2が生じる。択一的には、第2の動作信号A2を新たに生成し、このために第1の動作信号A1および信号エコーSEの情報を使用することも可能である。
【0039】
この第2の動作信号A2は、第2の信号処理部SV2において変動SWの影響を受け、しかもブロックSW-AMPにおいて信号強度AMPが、ブロックSW-fにおいてその信号周波数fが、またブロックSW-Δtにおいてその遅延が、変動SWの影響を受ける。第1の信号処理部SV1においても適用されたパラメータだけに変動SWを付与することが可能である。第1の信号処理部SV1においても第2の信号処理部SV2においても、それぞれの動作信号A1および動作信号A2における変更は、例えばシミュレーションプログラムからのあらかじめ設定されたパラメータに基づいて行われる。第1の信号処理部SV1および第2の信号処理部SV2における処理ブロックがそれぞれ互いに並列に実行されることが可能である。第1の信号処理部SV1および第2の信号処理部SV2が一緒に1つの信号処理部として実施され、上述したステップが互いに並列にまたは順次に相前後して実行されることも可能である。
【0040】
図4には、遅延素子VZ1,VZ2またはVZ3による遅延Δtのアナログ式の付加が略示されている。第2の動作信号A2は、入力信号Eに依存して、遅延素子VZ1,VZ2もしくはVZ3の1つだけに供給されるか、または遅延素子VZ1,VZ2およびVZ3の全てに供給されるか、またはどれにも供給されないか、これらの2つだけに供給される。遅延素子VZ1,VZ2またはVZ3により、異なる遅延Δtが挿入されるように構成されているため、遅延Δtの変動SWが生成可能である。
【0041】
図5には、本方法がフローチャートで示されている。方法ステップ500では、受信装置RXによって第1の信号SG1を受信する。方法ステップ501では、受信装置RXによって第1の信号SG1から導出した第1の動作信号A1を変換する。方法ステップ502では信号路SPによってこの第1の動作信号A1を取り込む。方法ステップ503では、例えば、信号パラメータの信号強度AMP、周波数f、および/または時間遅延Δtを変更することにより、第1の動作信号A1に信号エコーSEの信号パラメータを組み込む。これにより、この場合に第2の動作信号A2が生じる。これに続いて、第2の信号処理部SV2により、方法ステップ504で変更した信号パラメータAMP,f,Δtに変動SWが付与される。方法ステップ505では次いで、このように変更した第2の動作信号A2を第2の信号SG2に変換し、次いで周囲センサシステムUSにこの第2の信号SG2を送信する。
【符号の説明】
【0042】
US 周囲センサシステム
SP 信号路
SE 信号エコー
SG1 第1の信号
SG2 第2の信号
RX 受信装置
A1 第1の動作信号
A2 第2の動作信号
SV1 第1の信号処理部
SV2 第2の信号処理部
E 入力信号
IF インタフェース
TX 送信装置
SW 変動
Δt 遅延
f 信号周波数
AMP 信号強度
B-Δt 信号処理部のブロック
B-f 信号処理部のブロック
B-AMP 信号処理部のブロック
B-SW-Δt 信号処理部のブロック
B-SW-f 信号処理部のブロック
B-SW-AMP 信号処理部のブロック
VZ1,VZ2,VZ3 遅延素子
500~504 方法ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】