(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008417
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】検査装置、工作機械システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/00 20060101AFI20240112BHJP
B23Q 3/12 20060101ALI20240112BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
B23Q3/12 Z
B23Q3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110276
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 篤
(72)【発明者】
【氏名】杉山 康之
【テーマコード(参考)】
3C002
3C016
3C029
【Fターム(参考)】
3C002FF03
3C002KK00
3C016FA36
3C029EE01
(57)【要約】
【課題】工作機械のオートツールチェンジャによって主軸に装着可能で、長期間に渡って検査可能な検査装置を提供する。
【解決手段】着脱部2と、計測部110と、発電部300と、蓄電部301と、を有して工作機械400のATC407に着脱可能に設置されて工作機械400の状態を検査する検査装置1aであって、着脱部2は、工作機械400の主軸406に保持され、計測部110は、着脱部2に連結固定され、着脱部2が主軸406に保持された状態で主軸406の状態情報を生成して状態情報を無線にて送信し、発電部300は、付与される回転、振動の少なくとも1つにより発電し、蓄電部301は、発電部300で得られた電力を蓄電して計測部に電力を供給する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱部と、計測部と、発電部と、蓄電部と、を有して工作機械の自動工具交換装置に着脱可能に設置されて前記工作機械の状態を検査する検査装置であって、
前記着脱部は、前記工作機械の主軸に保持され、
前記計測部は、前記着脱部に連結固定され、前記着脱部が前記主軸に保持された状態で前記主軸の状態情報を生成して前記状態情報を無線にて送信し、
前記発電部は、付与される回転、振動の少なくとも1つにより発電し、
前記蓄電部は、前記発電部で得られた電力を蓄電して前記計測部に電力を供給する検査装置。
【請求項2】
前記発電部は、前記着脱部と直接的若しくは間接的に連結固定されて発電コイルを含む第1部分と、前記発電コイルの鉄心に所定の隙間を有して前記第1部分に対して相対的に回転可能な永久磁石を含む第2部分と、を有し、
前記着脱部が前記主軸に装着され、前記第2部分が前記工作機械に設けられた係止部材に係止された状態で前記主軸が回転し、前記発電部は発電を行う請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記発電部は、前記着脱部が前記主軸に保持されて前記主軸を回転させることで生じる振動、及び前記自動工具交換装置によって移動される時に生じる振動、の少なくとも1つを受けて圧電素子により発電を行う請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
請求項2に記載の検査装置と、前記工作機械とを含む工作機械システムであって、
前記工作機械システムの制御部は、
前記検査装置を前記工作機械の前記主軸に装着させる装着指令手段と、
前記検査装置から前記主軸の前記状態情報を受信できたかどうかを判断する判断手段と、
前記検査装置から前記主軸の前記状態情報を受信できない場合に、前記検査装置の前記第2部分を前記係止部材に係止させ、前記主軸を回転させて前記検査装置の前記発電部を発電させる発電手段と、
を有する工作機械システム。
【請求項5】
請求項2に記載の検査装置と、前記工作機械とを含む工作機械システムの制御部が実行するプログラムであって、
前記制御部に、
前記検査装置を前記工作機械の前記主軸に装着させる装着指令ステップと、
前記検査装置から前記主軸の前記状態情報を受信できたかどうかを判断する判断ステップと、
前記検査装置から前記主軸の前記状態情報を受信できない場合に、前記検査装置の前記第2部分を前記係止部材に係止させ、前記主軸を回転させて前記検査装置の前記発電部を発電させる発電ステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マシニングセンタなどの工作機械の主軸の状態を検査する工作機械の検査装置とこれを用いた工作機械システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、マシニングセンタのような工作機械では、主軸の内周面に保持する部材を介して加工用工具を保持する機構を有すると共に、この加工用工具を着脱可能にする機構を設け、所望の加工をするための複数の工具が整列されたマガジンから必要な工具を自動搬送装置で選択して、主軸に装着して加工を行うことができるように構成されている。
【0003】
マシニングセンタではこのようなオートツールチェンジャ(ACT)等の自動機器の導入が進み、機械加工の自動化が飛躍的に進展し、主軸部への加工用工具の交換頻度の増加が顕著となった。そこで主軸部の状態を点検する検査装置を用いて定期的に検査する必要性が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の検査装置は電池を内蔵して、検査したデータや良品判定データを無線にて検査専用端末装置若しくは工作機械の制御部へ送信している。そこで検査装置をACTに装着して定期的に自動で検査する要望がある。特許文献1では非接触給電方式で内蔵の二次電池に充電を行う技術が開示されている。しかしながら充電用のスタンドには人間が定期的に手動で載置する必要があり、ACTに装着して連続使用すると次第に電池残量が減少し、検査時にデータが送信できなくなるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記の欠点を補って、工作機械のオートツールチェンジャによって主軸に装着可能で、長期間に渡って検査可能な検査装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の検査装置は、上記の目的を達成するために、
着脱部と、計測部と、発電部と、蓄電部と、を有して工作機械の自動工具交換装置に着脱可能に設置されて工作機械の状態を検査する検査装置であって、
着脱部は、工作機械の主軸に保持され、
計測部は、着脱部に連結固定され、着脱部が主軸に保持された状態で主軸の状態情報を生成して状態情報を無線にて送信し、
発電部は、付与される回転、振動の少なくとも1つにより発電し、
蓄電部は、発電部で得られた電力を蓄電して計測部に電力を供給する。
【0008】
また、 発電部は、着脱部と直接的若しくは間接的に連結固定されて発電コイルを含む第1部分と、発電コイルの鉄心に所定の隙間を有して第1部分に対して相対的に回転可能な永久磁石を含む第2部分と、を有し、
着脱部が主軸に装着され、第2部分が工作機械に設けられた係止部材に係止された状態で主軸が回転し、発電部は発電を行う。
【0009】
また、発電部は、着脱部が主軸に保持されて主軸を回転させることで生じる振動、及び自動工具交換装置によって移動される時に生じる振動、の少なくとも1つを受けて圧電素子により発電を行う。
【0010】
本発明の工作機械システムは、上記の目的を達成するために、検査装置と、工作機械とを含む工作機械システムであって、
工作機械システムの制御部は、
検査装置を工作機械の主軸に装着させる装着指令手段と、
検査装置から主軸の状態情報を受信できたかどうかを判断する判断手段と、
検査装置から主軸の状態情報を受信できない場合に、検査装置の第2部分を係止部材に係止させ、主軸を回転させて検査装置の発電部を発電させる発電手段と、を有する。
【0011】
本発明の工作機械システムの制御部が実行するプログラムは、上記の目的を達成するために、検査装置と、工作機械とを含む工作機械システムの制御部が実行するプログラムであって、
制御部に、
検査装置を工作機械の主軸に装着させる装着指令ステップと、
検査装置から主軸の状態情報を受信できたかどうかを判断する判断ステップと、
検査装置から主軸の状態情報を受信できない場合に、検査装置の第2部分を係止部材に係止させ、主軸を回転させて検査装置の発電部を発電させる発電ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の検査装置及び工作機械システムによれば、工作機械のオートツールチェンジャに装着し、定期的に自動で検査可能であって、電池の交換や専用の充電器などを不要として長期間に渡って使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る検査装置(把持力)の斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る検査装置(把持力)の断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る検査装置(圧力エア)の斜視図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る検査装置(圧力エア)の断面図である。
【
図5】本発明の検査装置を含む第1の実施形態に係る工作機械システムの模式図である。
【
図6】本発明の検査装置を含む第1の実施形態に係る工作機械システムの模式図である。
【
図7】本発明の検査装置を含む第1の実施形態に係る工作機械システムの模式図である。
【
図8】本発明の検査装置を含む第1の実施形態に係る工作機械システムの模式図である。
【
図9】本発明の検査装置を含む第1の実施形態に係る工作機械システムの模式図である。
【
図10】本発明の検査装置を含む第1の実施形態に係る工作機械システムの模式図である。
【
図11】本発明の検査装置を含む第1の実施形態に係る工作機械システムの模式図である。
【
図12】本発明の検査装置を含む第2の実施形態に係る工作機械システムの模式図である。
【
図13】本発明の検査装置を含む第2の実施形態に係る工作機械システムの模式図である。
【
図14】本発明の検査装置を含む第2の実施形態に係る工作機械システムの模式図である。
【
図15】本発明の工作機械の検査パレットに設けられた係止部の平面図である。
【
図16】本発明の工作機械システムの制御部が実施するソフトウェアプログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による実施形態について、図面を基に詳細な説明を行う。
【0015】
図1は本発明の第1の実施形態に係る検査装置で、工作機械で加工工具を装着して加工を行う主軸406(
図5以降参照)の加工工具の把持力を検査する検査装置(把持力)1aの斜視図である。検査装置(把持力)1aは、着脱部2と、計測部と、発電部300と、蓄電部301と、を有する。
図2は本発明の第1の実施形態に係る検査装置(把持力)1aの断面図である。
【0016】
着脱部2のテーパ部は、主軸406の内部に引き込まれ、主軸406に2面拘束で拘束される。
【0017】
チェンジャ用被把持部3は、着脱部2に固定されており、マシニングセンタのオートツールチェンジャ(ACT)にて選択、交換するために溝形状を有している。ACTのチェンジャーアーム408はこのチェンジャ用被把持部3を保持して、検査装置(把持力)1aを主軸406に装着する。
【0018】
カバー101は、着脱部2の非テーパ部を、外部環境から遮断するためのOリングを介して覆うように配置されている。着脱部2と把持軸109とは、着脱部2の非テーパ部の内径の雌ネジと把持軸109の一端部の雄ネジとの螺合によって、連結されている。カバー101は、把持軸109の他端部の雄ネジ部分に配置された2連のナット107により、着脱部2とで挟まれて固定されている。
【0019】
計測部110は、把持軸109、歪みゲージ105、電子回路基板108を含んでいる。把持軸109は、ステンレス等の金属の円柱形状の部材であって、軸方向の中央部には半径方向の寸法が比較的小さい起歪部104が設けられている。そして起歪部104には歪みゲージ105が添着されている。
【0020】
主軸406が着脱部2を把持すると、把持軸109の起歪部104が弾性変形し、起歪部104に生じる歪みにより歪みゲージ105の抵抗値が変化する。歪みゲージ105は、ホイートストンブリッジ回路を形成して、配線ケーブル106により電子回路基板108に接続されている。そしてホイートストンブリッジ回路からの出力信号は、電子回路基板108に実装された増幅回路及び演算回路により、主軸406の把持力を表すデジタル信号に変換される。そしてこの把持力のデジタル信号は、電子回路基板108に実装された送信機から無線によって通信用窓103を透過して外部に送信される。外部への情報送信は2.4GHz帯、5GHz帯、920MHz帯などの周波数帯の無線送信であっても良いし、赤外線などの光線によるものでも良い。歪みゲージ105は、湿度や外部の環境から保護されるように、外周をカバー101によって覆われている。
【0021】
カバー102は、カバー101にボルトBにて接続されている円筒状の部材である。電子回路基板108はカバー102に固定されている。
【0022】
発電部300は、発電コイルを含む第1部分と、永久磁石を含む第2部分を含んでいる。発電部300の第1部分は、計測部に繋がっている。一方発電部300の第2部分は、第1部分に対して相対的に回転可能に設けられている。
【0023】
発電部300の第1部分は、コイル307と、コイル鉄心308と、配線基板317、ホルダ305と、軸受306と、軸受312とを含んでいる。コイル307はコイル鉄心308に巻回され、その端子部は配線基板317に接続されている。ホルダ305には、コイル鉄心308と配線基板317とが固定されている。そしてホルダ305はカバー102に嵌め込まれて固定されている。配線基板317は、ケーブル318により電子回路基板108に電気的に接続されている。軸受306の外輪は、ホルダ305に嵌め込まれている。軸受312の外輪は、カバー313に嵌め込まれている。カバー313は、カバー102にOリングを介して嵌め込まれ、図に現われないネジ等でカバー102に固着されている。
【0024】
発電部300の第2部分は、回転軸314と、永久磁石310と、ホルダ311と、被係止部材315とを含んでいる。回転軸314は、軸受306の内輪と軸受312の内輪とで発電部300の第1部分と相対的に回転可能に支持されている。ホルダ311は、回転軸314に嵌め込まれてナット309にて軸方向に固定されている。ホルダ311は、中空の円柱状の部材で、円柱の内面側には円環状に並べられた永久磁石310が接着されている。永久磁石310とコイル鉄心308は相対的に回転した際に、所定の一定の隙間を保つように配置されている。被係止部材315は、略円柱形状であって、直径Dの部分と、対向する幅Wの平面部を有するようにカットされた部分を有している。被係止部材315は、中心の貫通穴が回転軸314に例えば締りばめで嵌め込まれて、軸方向にナット316で固定されている。そして被係止部材315は、カバー313より突出していて、着脱部2からカバー102までの部分と被係止部材315とは相対的に回転可能な構成となっている。
【0025】
発電部300の第1部分及び発電部300の第2部分はそれぞれ、一連の極を有している。発電部300の第1部分と発電部300の第2部分とが相対的に回転すると、磁界が発生し、発電部300の第1部分のコイル307に誘導電流が流れ、発電が行われる。発生した電流はケーブル318を経由して、電子回路基板108に設けられた整流回路によって整流されて、さらに充電回路により蓄電部301に蓄電される。
【0026】
蓄電部301は、例えば二次電池、キャパシタ、電気二重層キャパシタであって、電子回路基板108に接続されている。蓄電部301は円筒状である場合、主軸406及び回転軸314の軸線とほぼ同芯で配置され、ホルダ302によって半径方向、軸方向の位置が規制されていることが好ましい。というのは、発電部300が発電する時、第2部分を固定しておき、第1部分を主軸406によって回転させることから、第1部分は回転時の重量バランスが良く、芯振れが少ないことが好ましいためである。
【0027】
さらに発電部300は、圧電素子303を含んでいる。また圧電素子303は、ケーブル304により電子回路基板108に電気的に接続されている。圧電素子303は、ホルダ302によって半径方向、ホルダ305によって軸方向が規制されている。圧電素子303は、圧電素子303に加わる振動により発電して、充電回路により蓄電部301に蓄電される。また発電部300は、不図示の太陽電池を含んでも良い。太陽電池はカバー102の外周やその他に配置されて、同様に充電回路により蓄電部301に蓄電される。
【0028】
図3(a)、
図3(b)は本発明の第2の実施形態に係る検査装置で、主軸406(
図5以降参照)から吹き出す圧力エアの状態を検査する検査装置(圧力エア)1bの斜視図である。検査装置(圧力エア)1bは、着脱部2と、計測部212と、発電部300と、蓄電部301と、を有する。
図4は本発明の第2の実施形態に係る検査装置(圧力エア)1bの断面図である。なお検査装置(把持力)1aと共通の箇所の説明は省略する。
【0029】
着脱部2から延伸してチェンジャ用被把持部3が設けられた着脱部201には、圧力エアが流れる圧力エア流路205が形成されている。この圧力エア流路205は、主軸406が工具を交換する際に工具に付着している切り粉などの異物を除去するために設けられた主軸406の圧力エアの吹き出し口に連通するように設けられている。そして、主軸406と着脱部201の密着性を確保するためにパッキン206が配置されている。なお圧力エア流路205の数は、主軸406側の圧力エアの吹き出し口の数と同数存在する。
【0030】
カバー202は着脱部201とは、パッキン204を挟んでボルトBで接続されている。したがってパッキン204及びパッキン206のいずれも、圧力エアの流路を有している。カバー202は有底の中空円柱形状であって、中空部に計測部212の部品が配置されている。カバー202には圧力エア流路205と繋がった圧力エア流路211が外部に貫通して設けられている。そしてこの各圧力エア流路211の途中に分岐した測定空間210がそれぞれ設けられている。測定空間210に面して、圧力センサ207がそれぞれ配置されている。圧力センサ207は、圧力エア流路211に流れる圧力エアの圧力若しくは流量の少なくとも1つを測定空間210にて検出する。圧力センサ207は配線208によって電子回路基板209に接続されている。配線208は、リジッドなベース材上に貼られたフレキシブル配線板であっても良く、また電子回路基板209の延長部として構成されていても良い。検査装置(圧力エア)1bにおいての計測部212は、圧力センサ207、配線208及び電子回路基板209を含んでいる。
【0031】
電子回路基板209は、圧力センサ207へ電源を供給し、圧力センサ207から検出した信号を受信して演算を行い、主軸406から吹き出される圧力エアの状態情報を、通信用窓203を介して外部へ無線で送信する。圧力エアの状態情報とは、圧力エアの圧力及び流量の少なくとも1つの測定値をデジタル信号に変換したものである。
【0032】
発電部300と蓄電部301とは、第1の実施形態の検査装置(把持力)1aと同様の構成であるので省略する。
【0033】
図5は、本発明の検査装置を含む第1の実施形態に係る工作機械システムの模式図である。なお工作機械システムは、この工作機械400と、検査装置(把持力)1a及び検査装置(圧力エア)1bの少なくとも1つを含んでいる。ここでは、検査装置(把持力)1aを用いた工作機械システムについて説明する。
【0034】
工作機械400は、縦型のマシニングセンタであって、自動工具交換装置、自動パレット交換装置を有している。工作機械400は、ベッド414上に支持部417が設けられ、主軸406が支持部417に支持されている。主軸406は、z方向上下及び主軸水平レール415に沿ってx方向に移動可能に設けられている。そして主軸406は先端部に、工具416の着脱部2(テーパーシャンク部)を係止する係止部材を有している。
【0035】
主軸406の近傍には、ACT(自動工具交換装置)407がz方向上下に移動可能で、支持部417に配置されている。ATC(自動工具交換装置)407の先端部にはチェンジャーアーム408が、z軸方向周りに旋回可能に設けられている。チェンジャーアーム408は、交換対象の2つの工具のチェンジャ用被把持部3それぞれに当接して主軸406及び工具ポット409からマイナスz方向に引き抜き、次いで180度旋回した後、プラスz方向に移動して、主軸406及び工具ポット409に工具を保持させて、交換が完了となる。もちろん検査装置(把持力)1aは、このACT(自動工具交換装置)407によって工具と同様に工具マガジン410から主軸406へ、またその逆に移載することができる。
【0036】
工具マガジン410は、例えばx方向視で長円型のチェーン式である。工具マガジン410は、工具ポット409を介して工具416を保持しつつ、閉じた周回軌道に沿って不図示の電動モータで複数の工具416を周回させる。そしてスイングアーム411は、工具ポット409を工具マガジン410に対して着脱させる機構で不図示の電動モータで駆動される。
図5から
図11は工作機械400を模式的に表した図であって、工具マガジン410は、実際にはより多くの工具416を搭載している。
【0037】
一方、パレットテーブル405は、ワーク404を載せ置くワークパレット403が着脱可能である。本実施形態の工作機械400は、不図示のAPC(自動パレット交換装置)を搭載していて、複数のワークパレット403を自動的に交換できる。そして待機の検査パレット401がパレットテーブル405の近傍に配置されている。
【0038】
検査パレット401は、検査装置(把持力)1a、検査装置(圧力エア)1bを用いて検査を行う際に用いる専用のものである。検査パレット401の天面部には、
図15に示されるようなy方向に伸びた溝部が配置されている。なお本実施形態では、検査用の検査パレット401を用いているが、ワークパレット403がその一部に検査パレット401と同様の溝部を設けることが可能であれば、ワークパレット403を用いて検査を行っても良い。このパレットテーブル405の係止部402は、ここに検査装置の第2部分である被係止部材315を係止させつつ、主軸406を回転させて、発電部300に発電をさせて蓄電部301に蓄電させる目的で設けられている。したがって係止部402の形状及び構成はこれに限らず、被係止部材315の形状に応じて種々の変形が可能である。
【0039】
そして工作機械400には、加工データの管理やプログラミング、及び各部のモータ、アクチュエータなどを制御する制御部503が設けられている。制御部503は、画面部、入出力部、記憶部、プロセッサ部、駆動部などを含んでいる。
【0040】
次に
図5から
図11、及び
図16を用いて、本発明の検査装置(把持力)1aを含む第1の実施形態に係る工作機械システムでの主軸の検査方法について説明する。
図16は工作機械システムの制御部503のプロセッサ部が実行するソフトウェアプログラムのフローチャートである。
【0041】
図16において、工作機械システムの制御部503は、ワークパレット403に載置されたワーク404を加工するステップを実行する。
【0042】
制御部503は、ステップS101にて、APC(自動パレット交換装置)を用いてワーク404が置かれたワークパレット403をパレットテーブル405に載せ置いてステップS102へ進む。
【0043】
制御部503は、ステップS102にて、工具マガジン410によりワーク404の加工に対応した工具416を脱着ポジションに移動させた後、ACT(自動工具交換装置)407にて当該工具416を主軸406に装着させてステップS103へ進む。
【0044】
制御部503は、ステップS103にて、当該工具416を用いてワーク404の加工を行い(
図5)、加工データに基づいて工具416をACT(自動工具交換装置)407にて適宜交換して加工を完了させてステップS104へ進む。
【0045】
制御部503は、ステップS104にて、APC(自動パレット交換装置)を用いて加工済みのワーク404を載せ置いたワークパレット403をパレットテーブル405から取り外し、所定の場所に移動させ、ステップS105へ進む。
【0046】
制御部503は、ステップS105にて、予め設定されたプログラミングで検査を実施するタイミングであるかどうかを判断して、検査を実施するタイミングでないと判断したら(No)ステップS101へ進んで、ワークの加工を継続する。制御部503は、ステップS105にて、検査を実施するタイミングであると判断したら(Yes)ステップS106へ進む。
【0047】
制御部503は、ステップS106にて、APC(自動パレット交換装置)を用いて検査パレット401をパレットテーブル405に載せ置いてステップS107へ進む(
図6)。
【0048】
制御部503は、ステップS107にて、工具マガジン410により検査内容に対応した検査装置(把持力)1aを脱着ポジションに移動させる(
図6)。そしてスイングアーム411にて検査装置(把持力)1aを90度回転させてチェンジャーアーム408が受け取れる位置へ移動させる(
図7)。さらにACT(自動工具交換装置)407は、チェンジャーアーム408をz軸周りに90度旋回させて、検査装置(把持力)1aと工具416とのチェンジャ用被把持部3を把持する(
図7)。そしてACT(自動工具交換装置)407は、検査装置(把持力)1aを工具ポット409から、工具416を主軸406からそれぞれ同時にマイナスz方向に抜き取る(
図8)。そしてチェンジャーアーム408はz軸周りに180度旋回させる(
図9)。その後、ACT(自動工具交換装置)407は、検査装置(把持力)1aを主軸406へ、工具416を工具ポット409へそれぞれ同時にプラスz方向から挿入して装着する(
図10)。制御部503は、主軸406に検査装置(把持力)1aを装着して保持する(装着指令手段、装着指令ステップ)。さらに制御部503は、ステップS107にて、発電回数カウンタnを0(ゼロ)にセットする。発電回数カウンタnの詳細については後述する。
【0049】
なおステップS106及びステップS107の順は、この順に限らず、逆でも同時でも良い。制御部503は、ステップS107を完了すると、ステップS108へ進む。
【0050】
制御部503は、ステップS108にて、検査を実施する。検査が検査装置(把持力)1aを使用する場合は、主軸406が検査装置(把持力)1aを装着しているので、制御部503は検査装置(把持力)1aから送信される検査データの受信を行う。一方検査が検査装置(圧力エア)1bを使用する場合は、制御部503は主軸406の吹き出し口から圧力エアを吹き出させ、検査装置(圧力エア)1bから送信される検査データの受信を行う。
【0051】
制御部503は、ステップS109にて、検査データが所定の時間内に受信できたかどうかを判断して(判断手段、判断ステップ)、検査データが所定の時間内に受信できたならば(Yes)ステップS113へ進む。一方、制御部503は、ステップS109にて、検査データが所定の時間内に受信できなかったならば(No)ステップS110へ進む。
【0052】
制御部503は、ステップS110にて、主軸406及びパレットテーブル405をxy平面で駆動して検査装置(把持力)1aを検査パレット401のポジションP1へ移動させる(
図15)。さらに制御部503は、主軸406をマイナスz方向に移動させて、検査装置(把持力)1aの被係止部材315が幅W1の溝部に位置する高さまで降下させる。さらに制御部503は、主軸406若しくはパレットテーブル405をプラスy方向に移動させて、検査装置(把持力)1aの被係止部材315が幅W2の溝部である係止部402のポジションP2まで移動させる(
図11)。検査装置(把持力)1aの被係止部材315のカットされた幅Dの位相はポジションP1においては定まるものでないが、被係止部材315は着脱部2に対して無限回転できるため、検査装置(把持力)1aを方向Y1に移動させることで、幅Dの部分はy方向に整列される。ここで検査パレット401の溝寸法W1は被係止部材315の直径Dより若干大きく、また溝寸法W2は被係止部材315の寸法Dより若干大きく設けられている。
【0053】
制御部503は、ステップS111にて、発電カウンタが所定の数Nに達した場合(Yes)、ステップS114へ進む。制御部503は、ステップS111にて、発電カウンタが所定の数Nに達した場合は、検査装置(把持力)1aに発電を(N-1)回行っても検査データが取得できなかったため、検査装置(把持力)1aの故障などが想定される。制御部503は、ステップS111にて、発電カウンタが所定の数Nに達していない場合(No)は、ステップS112へ進む。
【0054】
制御部503は、ステップS112にて、主軸406を所定の時間回転を付与させて(発電手段、発電ステップ)、発電カウンタをインクリメントし、ステップS108へ進む。したがって検査装置(把持力)1aの発電部300はステップS112にて発電を行う。そして制御部503は、ステップS108で検査を再実施して、検査データが取得できるかどうかをステップS109にて再度判断する。
【0055】
制御部503は、ステップS109にて、検査装置(把持力)1aから検査データを受信した場合、ステップS113にて検査データが正常値の範囲内にあるかどうかを判断して、検査データが正常値の範囲内にある場合(Yes)、ステップS105へ進む。
【0056】
制御部503は、ステップS113にて、検査データが正常値の範囲内にない場合(No)、ステップS114へ進む。
【0057】
制御部503は、ステップS114にて、警報を画面表示させ、機械を停止させる。すなわち、制御部503は検査装置(把持力)1aの発電部300に発電を実施させたにもかかわらず、検査データが受信できないことから、検査装置や制御部503の受信部の故障の可能性があるため、機械を停止させることになる。なお工作機械システムは、検査装置の専用受信機と制御部503とで構成し、制御部503の入出力に当該検査装置の専用受信機を接続して構成しても良い。この場合、使用者が既存の工作機械に検査装置を追加して工作機械システムを構成できる。
【0058】
また、検査装置(把持力)1aが工具マガジン410に装着されて、工具の交換の度の移動による振動により、検査装置(把持力)1a内の圧電素子303により発電が少しずつ行われ、蓄電部301に蓄電される。永久磁石310とコイル307による発電よりも得られる蓄電量は少ないが、工具マガジン410での移動量が比較的大きい場合は有用である。こちらは条件が揃えばその都度発電が行われるので、制御部503は圧電素子303に発電させるための動作を特に行うものではない。
【0059】
次に
図12から
図15、及び
図16を用いて、本発明の検査装置(圧力エア)1bを含む第2の実施形態に係る工作機械システムでの主軸の検査方法について説明する。
【0060】
工作機械500は、タレット型のATCを有するマシニングセンタであって、自動パレット交換装置を有している。工作機械500は、ベッド414上に支持部502が設けられ、主軸406が支持部502に支持されている。そして主軸406は先端部に、工具416の着脱部2(テーパーシャンク部)を保持する機構を有している。
【0061】
タレット501は、円盤状で工具416を半径方向に保持している。タレット501はy軸方向を中心として回転して、最下点に来た工具416を主軸406に渡す機構を有している。
図12から
図14の工作機械500は模式的に表わされた図であって、実際にはタレット501はより多くの工具416を搭載している。
【0062】
図16において、工作機械システムの制御部503は、ワークパレット403に載置されたワーク404を加工するステップS101からステップS104を完了し、ステップS105にて、予め設定されたプログラミングで検査を実施するタイミングであるかどうかを判断する。
【0063】
制御部503は、ステップS105にて、プログラミングで検査を実施するタイミングであるかどうかを判断して、検査を実施するタイミングであれば(Yes)ステップS106へ進む。
【0064】
制御部503は、ステップS106にて、APC(自動パレット交換装置)を用いて検査パレット401をパレットテーブル405に載せ置いてステップS107へ進む(
図12)。
【0065】
制御部503は、ステップS107にて、タレット501を回転させて検査内容に対応した検査装置(圧力エア)1bを脱着ポジションに移動させる(
図13)。そして検査装置(圧力エア)1bはタレット501に設けられた機構によって主軸406へ装着される(
図13)。さらに制御部503は、ステップS107にて、発電回数カウンタnを0(ゼロ)にセットする。制御部503は、ステップS107を完了後、ステップS108へ進む。
【0066】
制御部503は、ステップS108にて、検査を実施する。検査が検査装置(圧力エア)1bを使用する場合であるから、主軸406の吹き出し口から圧力エアを吹き出しつつ、検査装置(圧力エア)1bからの検査データの受信を行う。これ以降の第2の実施形態の工作機械システムの制御部503が行うステップは、第1の実施形態の工作機械システムの制御部503と同様である。
図14は
図11に相当するものであり、
図14は制御部503が、ステップS109で検査データを受信できず、検査装置(圧力エア)1bに発電させた場合を示している。
【0067】
また、検査装置(圧力エア)1bがタレット501に装着されて、工具の交換の度の移動による振動により、検査装置(圧力エア)1b内の圧電素子303により発電が少しずつ行われ、蓄電部301に蓄電される。永久磁石310とコイル307による発電よりも得られる蓄電量は少ないが、タレット501の回転量が比較的多い場合は有用である。これも条件が揃えばその都度発電が行われるので、制御部503は圧電素子303に発電させるための動作を特に行うものではない。
【0068】
また検査装置(把持力)1a及び検査装置(圧力エア)1bは電源が蓄電部301から供給されている限り、常時検査データを送信しているが、これに限るものではない。例えば、カバー313等に外部から押せるスイッチを設けて、主軸406によって検査パレット401に押し当てることでスイッチをONさせて検査装置を起動させて検査データの送信を開始して、所定の時間経過後に自動的にシャットダウンさせるようにしても良い。
【0069】
ゆえに本発明によれば、工作機械のオートツールチェンジャによって主軸に装着可能で、電池の交換や充電に特別の配慮をすることなしに長期間に渡って随時検査可能な検査装置を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の活用例として、マシニングセンタなどの工作機械への適用が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1a :検査装置(把持力)
1b :検査装置(圧力エア)
2 :着脱部
3 :チェンジャ用被把持部
101 :カバー
102 :カバー
103 :通信用窓
104 :起歪部
105 :歪みゲージ
106 :配線ケーブル
107 :ナット
108 :電子回路基板
109 :把持軸
110 :計測部
201 :着脱部
202 :カバー
203 :通信用窓
204 :パッキン
205 :圧力エア流路
206 :パッキン
207 :圧力センサ
208 :配線
209 :電子回路基板
210 :測定空間
211 :圧力エア流路
212 :計測部
300 :発電部
301 :蓄電部
302 :ホルダ
303 :圧電素子
304 :ケーブル
305 :ホルダ
306 :軸受
307 :コイル
308 :コイル鉄心
309 :ナット
310 :永久磁石
311 :ホルダ
312 :軸受
313 :カバー
314 :回転軸
315 :被係止部材(発電部の第2部分)
316 :ナット
317 :配線基板
318 :ケーブル
400 :工作機械
401 :検査パレット
402 :係止部
403 :ワークパレット
404 :ワーク
405 :パレットテーブル
406 :主軸
407 :ATC(自動工具交換装置)
408 :チェンジャーアーム
409 :工具ポット
410 :工具マガジン
411 :スイングアーム
414 :ベッド
415 :主軸水平レール
416 :工具
417 :支持部
500 :工作機械
501 :タレット
502 :支持部
503 :制御部