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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084173
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】微細気泡発生装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/231 20220101AFI20240618BHJP
   F04D 17/04 20060101ALI20240618BHJP
   F04D 31/00 20060101ALI20240618BHJP
   B01F 27/60 20220101ALI20240618BHJP
【FI】
B01F23/231
F04D17/04 Z
F04D31/00
B01F27/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198292
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】709003735
【氏名又は名称】田篭 雅
(72)【発明者】
【氏名】田篭 雅
【テーマコード(参考)】
3H130
4G035
4G078
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AA13
3H130AB22
3H130AB23
3H130AB54
3H130AC28
3H130BA50J
3H130BA69J
3H130BA95A
3H130CA05
3H130CA13
3H130CA21
3H130CA24
3H130CB19
3H130DA04X
3H130DD01Z
3H130DG02X
4G035AB07
4G078AA01
4G078AB20
4G078BA01
4G078CA12
4G078DA16
4G078DB02
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】貫流ポンプを中空回転軸モータで駆動することにより、羽根車内に挿入した散気孔パイプの回転機構部と加圧流体供給口部と、を一体化した構成の微細気泡発生装置を提供し、回転を伴う散気孔パイプからの噴流により、微細気泡を発生し、浄化槽や湖沼などの水質を改善する。
【解決手段】本発明の微細気泡発生装置は、中空回転軸モータ駆動による散気孔パイプを含む貫流ポンプの羽根車の回転機構部と、散気孔パイプへ加圧流体を供給する供給口部と、が一体化されて水面上に設置できる構成であり、散気孔パイプの回転を伴う噴出により、減圧・拡散と、羽根車内の旋回流れとも混流して微細気泡を発生し、ポンプの吐出流れとともに広範囲の水面下の領域に微細気泡流を供給し、水質を改善することを特徴とする。

【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質浄化に関して、微細気泡貫流ポンプと、
加圧気体、又は気液混合加圧液を供給するための加圧流体供給装置を、備え、
前記微細気泡貫流ポンプは、
吸込口と吐出口を有するポンプケーシング本体と、
当該ポンプケーシング本体内に回転体として取付けられ、複数の湾曲した羽根が外周部に配設された羽根車と、
当該羽根車を駆動する中空回転軸モータと、
当該中空回転軸モータと前記羽根車とを接続し、中空部を有する中空回転軸シャフトと、
当該中空回転軸シャフト内に挿入され、微細気泡を発生するための散気孔パイプと、を備え、
前記散気孔パイプは、噴出孔となる小孔、ノズル、又は多孔質部材を備える散気孔部を有し、
前記加圧流体供給装置から、供給パイプを介して供給される加圧気体、又は気液混合加圧液が、前記中空回転軸モータの後端部から前記中空回転軸シャフト内の前記散気孔パイプに供給されるように構成されていることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記微細気泡貫流ポンプは、前記中空回転軸モータの後端に接続された密閉ブラケットを備え、
前記中空回転軸シャフト内に挿入された散気孔パイプの後端部が、当該中空回転軸シャフト内に保持されて、前記羽根車と前記散気孔パイプが一体となって回転するように構成されており、
前記密閉ブラケットに接続した前記供給パイプを介して前記散気孔パイプ内に加圧気体、または気液混合加圧液が供給されることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生装置
【請求項3】
前記微細気泡貫流ポンプは、前記中空回転軸モータの後端に接続されたパイプ保持密閉ブラケットを備え、
前記中空回転軸シャフト内に挿入された散気孔パイプの後端部が、前記パイプ保持密閉ブラケット内に延伸して差込まれ保持固定され、前記散気孔パイプが回転しないように構成されており、
前記パイプ保持密閉ブラケットに接続した前記供給パイプを介して、前記散気孔パイプ内に加圧気体、または気液混合加圧液が供給されることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生装置
【請求項4】
前記微細気泡貫流ポンプは、前記中空回転軸モータの後端に接続して取付けられた中空回転軸を有するサブモータと、当該サブモータの後端に備えた密閉ブラケットと、を更に備え、
前記中空回転軸シャフト内に挿入された前記散気孔パイプの後端部が、前記サブモータの中空回転軸内まで延伸し差込まれて保持され、
前記散気孔パイプが、前記サブモータにより、前記羽根車の回転とは独立して回転可能に構成されており、
前記密閉ブラケットに接続した前記供給パイプを介して、前記散気孔パイプ内に加圧気体、または気液混合加圧液が供給されることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項5】
前記微細気泡貫流ポンプは、前記羽根車内に、前記散気孔パイプの振れを防止するための振れ止めリングを、更に有し、
前記振れ止めリングは、前記羽根車中心線上で当該羽根車の延伸方向に設けられており、
前記散気孔パイプが、前記振れ止めリング内を連通できるように構成されていることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【請求項6】
前記微細気泡貫流ポンプは、前記ポンプケーシング本体内に複数の羽根車を含み、
当該複数の羽根車は、当該複数の羽根車間を、中間軸受を介して接続し連結して一体化されており、
前記散気孔パイプが、前記複数の羽根車の中心線上に連通され、前記散気孔パイプの噴出孔を有する前記散気孔部が、前記複数の羽根車内に位置するようにセットされていることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の微細気泡発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下水処理場における曝気による水質浄化、魚介類全般の養殖用の水槽内流れの水質改善、湖沼の水質改善などに関係するエアレ-ション技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水質浄化に関する従来技術では、特許文献1に小孔を有する中空円筒を水中で、高速回転することにより微小な気泡を水中に発生する方法が開示されている。特許文献2には、水噴射ノズル外縁部に気体ノズルを配置した気液二相微細気泡発生装置により、微細気泡を水中に発生する方法が開示されている。いずれも、タンク内など狭い領域内限られた使用である。
特許文献3には、貫流ポンプの羽根車内に挿入した散気孔パイプより水中に微細気泡を発生し、水質を改善する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】平4―171036号広報
【特許文献2】特開2006-212562号広報
【特許文献3】特開2014-097449号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の特許文献3では、微細気泡を発生する貫流ポンプの駆動モータとして、充実回転軸モータを使用している。この場合、浄化槽や湖沼に微細気泡貫流ポンプを縦型(水面に対して垂直方向)にして据付ける際には、駆動モータは、水面の上側に位置するが、散気孔パイプへ気液混合加圧液を供給する供給口部は、反駆動側のポンプケーシング側面に位置するため、水面下に没する。このため、供給口部のメンテナンスなどが困難となる。これを改善するためには、気液混合加圧液の供給口部も駆動モータとともに水面上に設置できる構成が望まれる。
本発明は、駆動モータとして、中空回転軸モータを使用することにより、羽根車と散気孔パイプを含む回転機構部と散気孔パイプへの加圧流体供給口部を、一体化して水面上にセット出来る装置構成にして、主要な微細気泡発生機構部の組立て・メンテナンスを容易にした新規の微細気泡発生装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を解決するために、本発明に係わる微細気泡発生装置において、水質浄化に関して、微細気泡貫流ポンプと、加圧気体、又は気液混合加圧液を供給するための加圧流体供給装置を、備え、前記微細気泡貫流ポンプは、吸込口と吐出口を有するポンプケーシング本体と、当該ポンプケーシング本体内に回転体として取付けられ、複数の湾曲した羽根が外周部に配設された羽根車と、当該羽根車を駆動する中空回転軸モータと、当該中空回転軸モータと前記羽根車とを接続し、中空部を有する中空回転軸シャフトと、当該中空回転軸シャフト内に挿入され、微細気泡を発生するための散気孔パイプと、を備え、
前記散気孔パイプは、噴出孔となる小孔、ノズル、又は多孔質部材を備える散気孔部を有し、前記加圧流体供給装置から、供給パイプを介して供給される加圧気体、又は気液混合加圧液が、前記中空回転軸モータの後端部から前記中空回転軸シャフト内の前記散気孔パイプに供給されるように構成されていることを特徴としている。
【0006】
これにより、回転する羽根車内において、加圧した気体・気液混合液が供給される散気孔パイプからの噴出により羽根車内に微細気泡を発生し、ポンプ吐出口からの微細気泡流が水流を伴って広範囲の水中に供給される。
また、中空回転軸モータ駆動による散気孔パイプを含む回転機構部と、散気孔パイプへ供給される加圧流体供給口部と、が一体化され、その一体化した構成機構部が、微細気泡貫流ポンプを水面に対して縦置きに据付ける場合に、水面上にセットされるため、装置の組立て・メンテナンスなどの作業効率が向上する。
【0007】
また、本発明に係わる微細気泡発生装置において、前記微細気泡貫流ポンプは、前記中空回転軸モータの後端に接続された密閉ブラケットを備え、
前記中空回転軸シャフト内に挿入された散気孔パイプの後端部が、当該中空回転軸シャフト内に保持されて、前記羽根車と前記散気孔パイプが一体となって回転するように構成されており、前記密閉ブラケットに接続した前記供給パイプを介して前記散気孔パイプ内に加圧気体、または気液混合加圧液が供給されることを特徴としている。
これにより、散気孔パイプが羽根車と一体となって回転し、散気孔からの回転を伴う噴流と羽根車内の旋回流れとの混流により、気泡の微細化が促進される。
【0008】
また、本発明に係わる微細気泡発生装置において、前記微細気泡貫流ポンプは、前記中空回転軸モータの後端に接続されたパイプ保持密閉ブラケットを備え、
前記中空回転軸シャフト内に挿入された散気孔パイプの後端部が、前記パイプ保持密閉ブラケット内に延伸して差込まれ保持固定され、前記散気孔パイプが回転しないように構成されており、前記パイプ保持密閉ブラケットに接続した前記供給パイプを介して、前記散気孔パイプ内に加圧気体、または気液混合加圧液が供給されることを特徴としている。
これにより、回転する羽根車内に、散気孔パイプを回転しない状態で挿入することができる。
【0009】
また、本発明に係わる微細気泡発生装置において、前記微細気泡貫流ポンプは、前記中空回転軸モータの後端に接続して取付けられた中空回転軸を有するサブモータと、当該サブモータの後端に備えた密閉ブラケットと、を更に備え、
前記中空回転軸シャフト内に挿入された前記散気孔パイプの後端部が、前記サブモータの中空回転軸内まで延伸し差込まれて保持され、前記散気孔パイプが、前記サブモータにより、前記羽根車の回転とは独立して回転可能に構成されており、前記密閉ブラケットに接続した前記供給パイプを介して、前記散気孔パイプ内に加圧気体、または気液混合加圧液が供給されることを特徴としている。
これにより、散気孔パイプがサブモータにより、羽根車の回転に関係なく、独自に高速回転可能となり、散気孔パイプの小孔からの高速回転を伴う噴出により、気泡の微細化が促進される
【0010】
また、本発明に係わる微細気泡発生装置において、前記微細気泡貫流ポンプは、前記羽根車内に、前記散気孔パイプの振れを防止するための振れ止めリングを、更に有し、前記振れ止めリングは、前記羽根車中心線上で当該羽根車の延伸方向に設けられており、前記散気孔パイプが、前記振れ止めリング内を連通できるように構成されていることを特徴としている。
これにより、散気孔パイプが羽根車内の振れ止めリング内を連通されることにより、散気孔パイプの羽根車内での振れを抑制することができる。
【0011】
また、本発明に係わる微細気泡発生装置において、前記微細気泡貫流ポンプは、前記ポンプケーシング本体内に複数の羽根車を含み、当該複数の羽根車は、当該複数の羽根車間を、中間軸受を介して接続し連結して一体化されており、前記散気孔パイプが、前記複数の羽根車の中心線上に連通され、前記散気孔パイプの噴出孔を有する前記散気孔部が、前記複数の羽根車内に位置するようにセットされていることを特徴としている。
これにより、複数の羽根車がポンプケーシング内で一体化した構成となり、羽根車の羽根が適度の長さで調整されるため、羽根の強度や構造上の問題に対応することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の微細気泡発生装置は、中空回転軸モータ駆動による散気孔パイプを含む羽根車の回転機構部と、散気孔パイプへ加圧流体を供給する供給口部と、が一体化された構成であり、その一体化された構成機構部が、微細気泡貫流ポンプを水面に対して縦置きに設置する場合に、水面上に設置できるため、装置の組立て・芯出しやメンテナンスが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の微細気泡発生装置を、水面に対して縦置きにして、養殖槽に据付けた場合の基本的構成を示す水平断面と側面断面図である。
図2図2は、図1平面図の微細気泡貫流ポンプの羽根車回りの拡大水平断面図である。
図3図3は、微細気泡貫流ポンプの断面図と、散気孔パイプに供給する加圧流体供給装置との関係を示す全体構成図である。
図4図4は、微細気泡貫流ポンプの羽根車内に挿入する散気孔パイプの散気孔部の3種の形態例を説明するための図である。
図5図5は、図3とは別形態の散気孔パイプが回転しない構成にした断面図である。
図6図6は、中空回転軸モータの後端に接続して取付けた中空回転軸を有するサブモータによる散気孔パイプの独自回転機構を示す断面図である。
図7図7は、横置きの微細気泡貫流ポンプを廃水処理槽の流入口取流路に、水質改善のために据付けた場合の形態示す断面図である。
図8図8は、曝気槽の中に横置きの微細気泡貫流ポンプを据付けた形態を示す。微細気泡貫流ポンプの駆動には、中空回転軸水中モータを使用している。
図9図9は、羽根車内に取付けた散気孔パイプの振れ止め防止機構を説明するための図である。
図10図10は、2個の羽根車を中間軸受により連結して、ポンプケーシング内の羽根車を一体化した構成を示す断面図である。
図11図11は、従来技術の微細気泡貫流ポンプを水面に対して縦置きにして養殖槽に設置した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
いくつかの実施形態に係る微細気泡発生装置を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付する。
図1図3は、第1の実施形態で、養殖槽に、微細気泡貫流ポンプ(タイプA)30を据付けた際の装置構成を示す。
図1は、養殖槽50に微細気泡貫流ポンプ(タイプA)30を水面に対して、縦置きに据付けた場合の水平断面図と側面断面図の形態を示す。図2図1平面図の微細気泡貫流ポンプの羽根車周辺の拡大平面図、図3は微細気泡貫流ポンプ(タイプA)30の断面図と散気孔パイプ15に加圧気体と気液混合加圧液を供給する加圧流体供給装置6との全体構成を示す。
【0015】
図3の断面図において、中空回転軸シャフト18の中に散気孔パイプ15の後端部を差込んで保持することにより、散気孔パイプ15が、羽根車20と一体となって回転する構成にしている。散気孔パイプ15の先端部は、羽根車内下方向に延伸、又は羽根車側板28に取付けられた振れ止めリング22内まで延伸し差込まれる構成である。散気孔パイプ15の噴出孔のある散気孔部は羽根車内に位置するようにセットしている。
羽根車20内に挿入した散気孔パイプ15は、羽根車内の延伸部分が長くなると、羽根車の回転に伴う羽根車内の旋回流れなどにより振れやすくなる。その対策として、図3中には、散気孔パイプ15の先端部を振れ止めリング22内まで延伸して差し込んで、散気孔パイプ15を両端支持にし、振れを防止する構成を示す。振れ止めリング22は、軸受でもよい。
このケースでの散気孔パイプ15の振れの防止には、散気孔パイプ15の先端と羽根車回転軸とを、直接接続してもよい。
【0016】
散気孔パイプ15に供給される流体は、気体と気液混合液の2種に分けられる。一つは、図3の加圧流体供給装置6に示すように、加圧ファン3(エアポンプ、又はブロワ)により加圧された気体、二つ目は、気液混合チャンバ5で気体と液体を混合した気液混合液を、加圧ポンプ4に取り込んで加圧した気液混合加圧液である。加圧ポンプ4自体で空気を吸引できる場合は、気液混合チャンバ5は不要である。
状況に応じてこれら二つの流体を使い分けて、供給パイプ7を介して中空回転軸シャフト18内に挿入された散気孔パイプ15に供給する。
中空回転軸モータ10の後端に備えた密閉ブラケット8を通して供給された加圧流体は、散気孔パイプ15の噴出孔16より、噴流J(図4)となって回転を伴いながら羽根車20内に噴出、減圧・拡大され、羽根車内の旋回流れとも混流することにより、微細化した気泡流となって、ポンプ吐出口38から養殖槽50内に流出する。
散気孔パイプ15内へ供給する流体の圧力は高い程、気泡は微細化されやすい。加圧流体供給装置6の加圧ポンプ4により、流体に加える圧力も変えることが出来るため、粒子径の異なる多様な気泡を発生することが可能になる。
加圧ファン3(ファン,ブロワ)による気体のみの噴出では、噴出後気泡同士が結合しやすいことから、気泡が微細化し難い。従って、気体のみの噴出では、高圧にして、さらに散気孔パイプ15を高速回転させて噴出した方が気泡は微細化しやすい。
加圧ポンプとしては、ベーンポンプ、渦流ポンプ(ウェスコポンプ)、比速度の小さい小型の遠心ポンプなどが、それぞれの使用状況に応じて使用される。
【0017】
貫流ポンプ内の流れは、図2の羽根車部の断面図に示すようにポンプ吸込口37からポンプ吐出口38に向って2回羽根21を通過する。即ち流れは吸込み側では、羽根車20の外側から内側へ、吐出し側では内側から外側へ流出して羽根車20を横断する。羽根車20は幅方向に長くとれること、また、流れが羽根車に接線方向に吐出されることから、吐出し流れは幅広のシート状で乱れも少なく、拡散せずに遠くまで達することができるので、羽根車内に大量に発生した微細気泡は、吐出し流れと共に槽内などに幅広で一様に供給される。
【0018】
この実施の形態によれば、養殖槽50内で微細気泡貫流ポンプ(タイプA)30により発生した吐出し微細気泡流が、貫流ポンプ特有の流れ特性から、乱れも少なく、拡散することなく、遠くまで達することができる。従って、養殖槽内で河川と同様の水流で、また微細気泡を含む流れの中で魚類を育てられることから、従来の養殖魚より身の締まった魚が得られる。また、安定した一定方向の流れが得られることから、魚同士が衝突して傷つくこともない。
【0019】
図3に示すように、本装置では、ポンプケーシング本体24は、養殖槽50の水面下に設置されているが、ポンプを駆動する中空回転軸モータ10と、散気孔パイプ15への加圧流体を供給する密閉ブラケット8と供給パイプ7の供給口部も水面上にセットされた構成である。
このように散気孔パイプを含む羽根車の駆動部と加圧流体供給口部は一体化され、水面より上にセットできる構成である。このため、ポンプを据付けた状態で、散気孔パイプ15を含む羽根車の回転機構部のメンテナンスが水面上で行え、作業効率が向上する。また、一体化した構成にしたことにより、組立て・芯出しも容易となる。
【0020】
上記のように、中空回転軸モータによる散気孔パイプの駆動部が水面上にセットされるため、メンテナンスにおける作業・組立ては、ポンプを水面上に引上げることなく、据付けた状態で出来る。図3を参照して、中空回転軸モータ10の後端に備えた密閉ブラケット8を外せば、散気孔パイプ15は、そのまま、上方に引き抜くことができる。
羽根車20のメンテナンスには、軸受ユニット25を外せば、散気孔パイプ15を含む羽根車20を上方に引き抜くことができる。
このように、羽根車の駆動に中空回転軸モータを使用することと、貫流ポンプの形状が、二次元的な矩形構造であるため、ポンプを据付けた状態で羽根車も簡単に上方に引き抜くことが出来る。
【0021】
従来技術の縦置きの微細気泡貫流ポンプでは、羽根車の駆動には充実回転軸モータが使用されている。図11に示すように羽根車を駆動する充実回転軸モータ14は、水面上に設置されているが、供給パイプ7を介しての気液混合加圧液をパイプ状のノズル56へ供給する供給口部は、水面下のポンプケーシング下面に備えられている。このため、微細気泡発生機構部の組立て作業やメンテナンスの際には、ポンプを水面上に引上げる必要があり、作業効率が悪い。
従来使用の充実回転軸モータは、丸タイプモータとも呼ばれる。本発明に関して使用の中空回転軸モータは回転軸が中空になっているもので、中空回転軸を、ギアで連結して回転駆動すれば、高速回転が可能となる。
【0022】
散気孔パイプの散気孔部の形状は、パイプの先端部に噴出孔となる小孔,ノズル,又は多孔質部材で形成されたものである。図4に散気孔パイプ15の3種のタイプを示す。(a)のタイプAは、パイプの散気孔部となるパイプ周側面に複数の噴出孔16を備えた形状、(b)のタイプBは、 パイプの散気孔部となるパイプ周側面に複数のノズル(タイプB)40を備えた形状、(c)のタイプCは、散気孔部となるパイプ周側面に複数の噴出孔16を備え、パイプの先端にノズル(タイプA)39を取付けた構造例を示す。(c)のタイプCでは、散気孔パイプ15の先端を、図3の振れ止めリング22内に差込まない。
散気孔パイプ15の散気孔部となるパイプ周側面は、多孔質部材で形成してもよい。
散気孔パイプ15の噴出孔16や40の形状および数は状況に応じて選定する。噴出孔16や40の数は1個でも良い。
【0023】
図5は、本発明の第2の実施の形態で、養殖槽50に微細気泡貫流ポンプ(タイプB)31を縦置きに据付けた場合のポンプ周辺部の側面断面図の形態を示す。中空回転軸モータ10の後端に接続して備えたパイプ保持密閉ブラケット9内に、中空回転軸シャフト18内に挿入された散気孔パイプ15の後端部を延伸して差込み保持固定し、散気孔パイプ15が回転しない構成にしたものである。散気孔パイプ15の散気孔部は、羽根車内下方向に延伸、又は羽根車側板28に備えた振れ止め軸受23内まで延伸し差込まれる構成である。
この実施の形態によれば、回転する羽根車20内に静止の状態で挿入された散気孔パイプ15の噴出孔16から加圧流体が噴出され、前述のように微細気泡流が発生する。散気孔パイプ15が、回転せずに散気孔から噴出するため、気泡の微細化は、回転する場合に比較すると劣る。
【0024】
図6は、本発明の第3の実施の形態で、養殖槽50に微細気泡貫流ポンプ(タイプC)32を縦置きに据付けた場合のポンプ周辺部の側面断面図の形態で、中空回転軸を有するサブモータ12により散気孔パイプ15を独自に回転出来る構成にしたものである。
羽根車20を駆動する中空回転軸モータ10の後端に、散気孔パイプ15駆動用のサブモータ12を接続して取付け、中空回転軸シャフト18内に挿入された散気孔パイプ15の後端部を延伸して、サブモータ12の中空回転軸の中に差込み保持して、散気孔パイプ15が羽根車20の回転に関係なく独立して回転できる構成にしている。散気孔パイプ15の散気孔部は、羽根車内下方向に延伸、又は羽根車側板28に備えた振れ止め軸受23内まで延伸し差込まれる構成である。
この実施の形態によれば、羽根車20の回転に関係なく、散気孔パイプ15の回転数や回転方向も変えることができる。特に気泡の微細化には、高速回転が有効である。散気孔パイプ15の回転速度は大きいほど回転を伴う効果と羽根車内の流れとの混流により、散気孔パイプ15の噴出孔16から噴出する気泡は、微細化される。サブモータ12により、散気孔パイプ15を高速回転することにより、気泡の微細化が促進される。
上記第1~第3の実施の形態では、微細気泡貫流ポンプ(タイプA)30~(タイプC)32を養殖槽50に据付けた実施の形態を示したが、下水処理槽の水質浄化や湖沼の水質改善などにも同様に使用される。
【0025】
図7は、本発明の第4の実施の形態で、廃水処理槽51の流入口部の取水路52に、微細気泡貫流ポンプ(タイプA)30を横置きにして据付けた場合の形態を示す。羽根車を駆動する中空回転軸モータ10は取水路52の外側に設置し、羽根車部が取水路52内に位置するようにセットされている。
この実施の形態によれば、散気孔パイプ15が羽根車20と一体となって回転し、散気孔より微細気泡を発生し、吐出流れとともに廃水処理槽の中に微細気泡が供給される。幅広で安定した微細気泡流により、槽内全体を効率よく浄化することができる。
【0026】
図8は、本発明の第5の実施の形態で、曝気槽54の中に微細気泡貫流ポンプ(タイプA)30を横置きにして、底面に据付けた場合を示す。この場合は羽根車の駆動モータとして、中空回転軸水中モータ11を使用している。図(b)は側面断面図で曝気槽54内の微細気泡の流れの状況を示す。図(a)は図(b)の後壁側からみた断面図である。
この実施の形態によれば、微細気泡貫流ポンプ(タイプA)30によって供給される微細気泡の吐出流れは、幅広の水流で、遠くまで達することができるため、タンク内全体に渡って、吐出流れから吸込み側へ回り込む大きな循環流れが形成される。また、良好な微細気泡流を供給できることからエアレーションの効率が良い。
【0027】
図9は、本発明の第6の実施の形態で、羽根車20内に延伸した散気孔パイプ15が羽根車20の回転に伴う羽根車内の旋回流れにより、振れやすくなるのを防ぐ対策である。
散気孔パイプ15の振れ防止のための中間振れ止めリング42が、羽根車20内中心線上で、当該羽根車20の長手方向幅の中間に設けられ、散気孔パイプ15が中間振れ止めリング42内を連通できるように構成されている。振れ止めリング42は、羽根車固定環45との間をリブ43で支えられている。
この実施の形態によれば、散気孔パイプ15が、羽根車20の中間で、中間振れ止めリング42で支持されるため、振れが抑制される。
【0028】
図10は、本発明の第7の実施の形態で、微細気泡貫流ポンプの羽根車20の全体寸法が長くなり、強度や構造上、問題となる場合がある。その対策として、ポンプケーシング本体24内の羽根車を二つに分けて、羽根車間を中間軸受47で連結し取付けた一体構成にし、羽根車寸法を適度な長さに調整した例を示す。
散気孔パイプ15は、二つの羽根車20を羽根車中心線上に連通し、その噴出孔の部分が各羽根車内に位置するようにセットしている。中間軸受47は、ポンプケーシングとの間を支持板48で保持されている。
この実施の形態によれば、吐出微細気泡流の流れの幅を広くでき、広範囲に微細気泡流を供給できる。また、羽根車の強度も適正に保たれる。
貫流ポンプの形状は2次元的であるから、流量を増やすためには、単純に羽根車20の幅方向の長さを増やせばよい。あるいは微細気泡貫流ポンプのポンプケーシング本体内の羽根車を数個幅方向につないで一体化した構成にしてもよい。また、舌部17を含む吸込み口から吐出し口までの形状を使用用途に合わせて柔軟に変えることが出来るので、多用途の使用に適応できる。
【符号の説明】
【0029】
1 微細気泡発生装置
3 加圧ファン(エアポンプ,ブロワ)
4 加圧ポンプ
5 気液混合チャンバー
6 加圧流体供給装置
7 供給パイプ
8 密閉ブラケット
9 パイプ保持密閉ブラケット
10 中空回転軸モータ
11 中空回転軸水中モータ
12 サブモータ(中空回転軸)
13 水面
14 駆動用モータ(従来型充実軸モータ)
15 散気孔パイプ
16 噴出孔
17 舌部
18 中空回転軸シャフト
19 羽根車中空シャフト
20 羽根車
21 羽根
22 振れ止めリング
23 振れ止め軸受
24 ポンプケーシング本体
25 軸受ユニット
28 羽根車側板
30 微細気泡貫流ポンプ(タイプA)
31 微細気泡貫流ポンプ(タイプB)
32 微細気泡貫流ポンプ(タイプC)
33 羽根車軸受
35 ポンプケーシング側板
37 ポンプ吸込口
38 ポンプ吐出口
39 ノズル(タイプA)
40 ノズル(タイプB)
41 スクリーン
42 中間振れ止めリング
43 リブ
45 羽根固定環
47 中間軸受
48 支持板
49 羽根車ボス
50 養殖槽
51 廃水処理槽
52 取水路
54 曝気槽
56 パイプ状のノズル(従来型)
83 貫流ポンプ極微細気泡流供給装置(従来型)
J 噴流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11