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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084186
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】保護カバーおよび作業機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
H05K13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198320
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 直樹
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353AA02
5E353CC01
5E353GG02
5E353GG03
5E353GG05
5E353GG14
5E353GG24
5E353GG29
5E353GG50
5E353JJ21
5E353KK01
5E353LL02
5E353QQ06
(57)【要約】
【課題】搬送コンベアを備える作業機において、搬送コンベアを稼動させたまま、作業者が作業機内にアクセスするものとしても、十分な安全性を確保する。
【解決手段】保護カバーは、基板を搬送する搬送コンベアを備える作業機に用いられる。この保護カバーは、搬送コンベアを基板が通過可能な状態で当該搬送コンベアに搭載可能であり、搬送コンベアに搭載されることにより当該搬送コンベアを基板が通過する空間と他の空間とを仕切る。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送する搬送コンベアを備える作業機に用いられる保護カバーであって、
前記搬送コンベアを基板が通過可能な状態で当該搬送コンベアに搭載可能であり、前記搬送コンベアに搭載されることにより当該搬送コンベアを基板が通過する空間と他の空間とを仕切る、
保護カバー。
【請求項2】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、基板を搬送する搬送コンベアと、
前記筐体内に設けられ、基板に対して所定の作業を実行可能な作業ユニットと、
前記搬送コンベアを基板が通過するパス搬送が可能な状態で当該搬送コンベアに搭載可能であり、前記搬送コンベアに搭載されることにより当該搬送コンベアを基板が通過する空間と他の空間とを仕切る保護カバーと、
前記パス搬送に用いる前記搬送コンベアに前記保護カバーが搭載されているか否かを検知する検知部と、
前記検知部の検知結果に基づいて前記パス搬送に用いる前記搬送コンベアの稼働の是非を判定する判定部と、
を備える作業機。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機であって、
前記筐体は、開口部と、前記開口部を開閉可能な開閉体と、を有し、
前記判定部は、前記開閉体が開状態にあり、且つ、前記パス搬送に用いる前記搬送コンベアに前記保護カバーが搭載されていることが前記検知部により検知されていない場合には、当該搬送コンベアを稼動しない判定を行なう、
作業機。
【請求項4】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、それぞれ基板を搬送する2つの搬送コンベアと、
前記筐体内に設けられ、前記2つの搬送コンベアのうち一方の搬送コンベアにより搬入された基板に対して所定の作業を実行可能な作業ユニットと、
前記作動ユニットの稼動が停止している状態で且つ前記2つの搬送コンベアのうち他方の搬送コンベアを基板が通過するパス搬送が可能な状態で当該他方の搬送コンベアに搭載可能であり、前記他方の搬送コンベアに搭載されることにより前記他方の搬送コンベアを基板が通過する空間と他の空間とを仕切る保護カバーと、
前記筐体外に設けられ、前記保護カバーが置かれるカバー置き部と、
前記カバー置き部に前記保護カバーがあるか否かを検知する第1検知部と、
を備える作業機。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機であって、
前記作業ユニットの稼動が要求された場合に、前記第1検知部による検知結果に基づいて、前記作業ユニットの稼動の是非を判定する判定部を備える、
作業機。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機であって、
前記判定部は、前記カバー置き部に前記保護カバーが置かれていることが前記第1検知部により検知されていない場合には、前記作業ユニットを稼動しない判定を行なう、
作業機。
【請求項7】
請求項4ないし6いずれか1項に記載の作業機であって、
前記パス搬送に用いる前記他方の搬送コンベアに前記保護カバーが搭載されているか否かを検知する第2検知部と、
前記第2検知部の検知結果に基づいて前記パス搬送に用いる前記他方の搬送コンベアの稼働の是非を判定する判定部と、
を備える作業機。
【請求項8】
請求項7に記載の作業機であって、
前記筐体は、開口部と、前記開口部を開閉可能な開閉体と、を有し、
前記判定部は、前記開閉体が開状態にあり、且つ、前記パス搬送に用いる前記他方の搬送コンベアに前記保護カバーが搭載されていることが前記第2検知部により検知されていない場合には、当該他方の搬送コンベアを稼動しない判定を行なう、
作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、保護カバーおよび作業機について開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1レーンを構成する第1搬送コンベアと、第2レーンを構成する第2搬送コンベアと、カメラユニットおよびスキージユニットを含む作業ユニットと、を有する装置本体と、装置本体に基板を搬入する搬入用シャトルコンベアと、装置本体から基板を搬出する搬出用シャトルコンベアと、を備え、第1レーン上ではんだ印刷を行ない、第2レーン上でははんだ印刷を行なわないスクリーン印刷装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このスクリーン印刷装置は、第1搬送コンベアが配置されると共に作業ユニットにより基板に対してはんだ印刷が行なわれる空間(所定空間K)を有している。所定空間Kは、搬入側隔壁部によって搬入用シャトルコンベアが配置される筐体内と隔てられると共に、搬出側隔壁部によって搬出用シャトルコンベアが配置される筐体内と隔てられている。また、基板をパス搬送で搬送するパスモード中は、カメラユニットを待機位置で停止させることにより、所定空間Kは、第2搬送コンベアが配置される空間と隔てられる。これにより、パスモード中に、作業者が所定空間K内での段取り替えなどの手作業を安全に行なうことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/68234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パスモードで搬送コンベアを稼動させたまま、作業者が作業機内で作業を行なう場合に、十分な安全を確保できない場合が生じる。例えば、基板を搬送する2つのレーンを備える作業機において、作業機で作業する作業者から見て手前側のレーンで基板をパス搬送させたまま、奥側のレーンで段取り替え等の作業を手作業により行なう場合、作業者が誤って手前側のレーンに手を触れてしまう可能性がある。こうした問題は、上述した態様に限られず、パス搬送中に作業者が作業機内で作業を行なう状況において、同様に生じ得る。
【0005】
本開示は、搬送コンベアを備える作業機において、搬送コンベアを稼動させたまま、作業者が作業機内にアクセスするものとしても、十分な安全性を確保することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の保護カバーは、
基板を搬送する搬送コンベアを備える作業機に用いられる保護カバーであって、
前記搬送コンベアを基板が通過可能な状態で当該搬送コンベアに搭載可能であり、前記搬送コンベアに搭載されることにより当該搬送コンベアを基板が通過する空間と他の空間とを仕切る、
ことを要旨とする。
【0008】
この本開示の保護カバーは、搬送コンベアに搭載されることで、作業機内の当該搬送コンベアを基板が通過する空間と他の空間とを仕切る。このため、例えば段取り替え等で作業者が作業機内に手を入れて作業を行なう際に、稼動中の搬送コンベアを基板が通過する空間に作業者の手が触れないようにすることができる。この結果、搬送コンベアを稼動させたまま、作業者が作業機内にアクセスするものとしても、十分な安全性を確保することができる。
【0009】
本開示の第1の作業機は、
筐体と、
前記筐体内に設けられ、基板を搬送する搬送コンベアと、
前記筐体内に設けられ、基板に対して所定の作業を実行可能な作業ユニットと、
前記搬送コンベアを基板が通過するパス搬送が可能な状態で当該搬送コンベアに搭載可能であり、前記搬送コンベアに搭載されることにより当該搬送コンベアを基板が通過する空間と他の空間とを仕切る保護カバーと、
前記パス搬送に用いる前記搬送コンベアに前記保護カバーが搭載されているか否かを検知する検知部と、
前記検知部の検知結果に基づいて前記パス搬送に用いる前記搬送コンベアの稼働の是非を判定する判定部と、
を備えることを要旨とする。
【0010】
この本開示の第1の作業機では、パス搬送時において保護カバーが搬送コンベアに搭載されることで、作業機内の当該搬送コンベアを基板が通過する空間と他の空間とを仕切る。このため、例えば段取り替え等で作業者が作業機内に手を入れて作業を行なう際に、稼動中の搬送コンベアを基板が通過する空間に作業者の手が触れないようにすることができる。この結果、搬送コンベアを稼動させたまま、作業者内にアクセスするものとしても、十分な安全性を確保することができる。さらに、検知部によって搬送コンベアに保護カバーが搭載されているか否かを検知し、その検知結果に基づいて搬送コンベアの稼働の是非を判定するから、保護カバーの搭載し忘れを防止することが可能である。
【0011】
本開示の第2の作業機は、
筐体と、
前記筐体内に設けられ、それぞれ基板を搬送する2つの搬送コンベアと、
前記筐体内に設けられ、前記2つの搬送コンベアのうち一方の搬送コンベアにより搬入された基板に対して所定の作業を実行可能な作業ユニットと、
前記作動ユニットの稼動が停止している状態で且つ前記2つの搬送コンベアのうち他方の搬送コンベアを基板が通過するパス搬送が可能な状態で当該他方の搬送コンベアに搭載可能であり、前記他方の搬送コンベアに搭載されることにより前記他方の搬送コンベアを基板が通過する空間と他の空間とを仕切る保護カバーと、
前記筐体外に設けられ、前記保護カバーが置かれるカバー置き部と、
前記カバー置き部に前記保護カバーがあるか否かを検知する第1検知部と、
を備えることを要旨とする。
【0012】
この本開示の第2の作業機では、パス搬送時において保護カバーが搬送コンベアに搭載されることで、作業機内の当該搬送コンベアを基板が通過する空間と他の空間とを仕切る。このため、例えば段取り替え等で作業者が作業機の筐体内に手を入れて作業を行なう際に、稼動中の搬送コンベアを基板が通過する空間に作業者の手が触れないようにすることができる。この結果、搬送コンベアを稼動させたまま、作業者が筐体内にアクセスするものとしても、十分な安全性を確保することができる。さらに、筐体外にカバー置き部を設け、第1検知部により筐体外のカバー置き部に保護カバーがあるか否かを検知するため、保護カバーの紛失を防止したり、保護カバーが筐体内に置かれたままとなるのを防止したりすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】部品実装システムの概略構成図である。
図2】印刷機の概略構成図である。
図3】搬送コンベアの概略構成図である。
図4】2台の印刷機を連結して生産する様子を示す説明図である。
図5】保護カバーの装着前の様子を示す説明図である。
図6】保護カバーの装着後の様子を示す説明図である。
図7】部品実装システムの電気的な接続関係を示すブロック図である。
図8】パス搬送時処理の一例を示すフローチャートである。
図9】他の実施形態に係る保護カバーの装着後の様子を示す説明図である。
図10】カバー置き場を説明する説明図である。
図11】印刷時処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本開示を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、部品実装システム1の概略構成図である。図2は、印刷機10の概略構成図である。図3は、搬送コンベアの概略構成図である。図4は、2台の印刷機を連結して生産する様子を示す説明図である。図5は、保護カバー40の装着前の様子を示す説明図である。図6は、保護カバー40の装着後の様子を示す説明図である。図7は、部品実装システム1の電気的な接続関係を示すブロック図である。
【0016】
部品実装システム1は、基板Sにはんだを印刷して部品を実装するものであり、図1に示すように、複数の印刷機(第1印刷機10A,第2印刷機10B)と、印刷検査機2と、複数の部品実装機3,4と、実装検査機(図示せず)と、システム全体を管理する管理装置100と、を備える。印刷機10A,10Bと印刷検査機2と部品実装機3,4と実装検査機とは、基板搬送方向に沿ってこの順に配列されることで、部品実装ラインを構成する。印刷機10は、上流側から搬入される基板Sの表面にはんだを印刷して下流側に搬出する。印刷検査機2は、印刷機10から搬入される基板Sにはんだが正しく印刷されているか否かを検査する。部品実装機3,4は、印刷検査機2から中間コンベアを介して搬入される基板に対して上流側から順に部品を実装する。実装検査機は、基板Sに部品が正しく実装されているか否かを検査する。
【0017】
第1および第2印刷機10A,10Bは、スクリーンマスクMに形成されたパターン孔にスキージ22を用いてはんだを押し込むことによりスクリーンマスクMの下方の基板Sにはんだを印刷する。第1および第2印刷機10A,10Bは、筐体11と、印刷ユニット20と、第1搬送コンベア30Aと、第2搬送コンベア30Bと、カメラユニット50と、印刷機全体を制御する制御装置60と、を備える。
【0018】
筐体11は、印刷ユニット20や第1および第2搬送コンベア30A,30B、カメラユニット50といった印刷機10A,10Bの構成部材が収容される箱体である。筐体11の前面には、跳ね上げ式の前面扉12(開閉体)や表示パネル14が設けられている。なお、前面扉12は、開き扉やスライド扉により構成されてもよい。作業者は、前面扉12を開くことで、開口部13から内部に手を伸ばして必要な作業を行なうことができる。必要な作業としては、例えば、生産する基板Sの種類に合わせてスクリーンマスクMを交換したり後述する基板支持部材37を交換したり印刷用のはんだを補充したりする段取り替え作業や、印刷機10A,10Bに異常が発生した際の確認やメンテナンスなどの作業を挙げることができる。なお、印刷機10A,10Bには、前面扉12が開いたことを検知する前面扉開放検知センサ15が設けられている。
【0019】
印刷ユニット20は、スキージ22を前後(印刷方向)に往復動させてはんだを基板Sに印刷するものであり、筐体11の上段部に設けられている。印刷ユニット20は、前後に並ぶ一対のスキージ22を有するヘッド21と、一対のスキージ22をそれぞれ昇降させるスキージ昇降装置23と、ヘッド21を前後に往復動させるヘッド移動装置24と、を備える。スキージ昇降装置23は、エアシリンダ等により構成される。ヘッド移動装置24は、前後に延在するガイド25と、ヘッド21を保持すると共にガイド25に沿って移動するスライダ26と、スライダ26を駆動するモータ27と、を有する。
【0020】
第1および第2搬送コンベア30A,30Bは、印刷対象の基板Sを搬送するものであり、筐体11の下段部に設けられている。この第1および第2搬送コンベア30A,30Bは、互いに平行に延在する第1レーンおよび第2レーンを有するデュアルレーン式の搬送コンベアとして構成される。第1および第2搬送コンベア30A,30Bは、図3に示すように、左右に延在する前後一対のコンベアフレーム31と、一対のコンベアフレーム31の向かい合う側面の左右両端部に設けられた一対のローラ32と、一対のローラ32に架け渡されたコンベアベルト33と、コンベアベルト33を周回駆動するコンベア駆動装置34(図7参照)と、一対のコンベアフレーム31を昇降させるコンベア昇降装置35と、を備える。本実施形態では、第1搬送コンベア30Aの一対のコンベアフレーム31のうち一方のコンベアフレーム31(図3中、手前側)は、移動不能な固定フレームとして構成され、他方のコンベアフレーム31は、前後に移動可能な可動フレームとして構成される。また、第2搬送コンベア30Bの一対のコンベアフレーム31は、いずれも前後に移動可能な可動フレームとして構成される。これにより、生産する基板Sのサイズ(前後幅)に合わせて可動フレームを移動させて一対のコンベアフレーム31の間隔を調整することにより、サイズの異なる複数種の基板Sを搬送することができる。
【0021】
スクリーンマスクMは、印刷ユニット20と第1および第2搬送コンベア30A,30Bとの間に前後に延在するように設置された左右一対の支持レール(図示せず)に水平姿勢で支持される。第1および第2搬送コンベア30A,30Bの一対のコンベアフレーム31の上端部31uには、スクリーンマスクMを負圧により吸着保持するための吸着プレート36が着脱可能に取り付けられている。
【0022】
また、第1および第2搬送コンベア30A,30Bの一対のコンベアフレーム31の間には、第1および第2搬送コンベア30A,30Bにより搬入された基板Sを裏側から支持する基板支持部材37や、基板支持部材37を昇降させる支持部材昇降装置38などが設けられている。制御装置60は、コンベアベルト33により基板Sを搬入し、コンベア昇降装置35により一対のコンベアフレーム31を上昇させることで吸着プレート36にスクリーンマスクMを保持する。そして、制御装置60は、支持部材昇降装置38により基板支持部材37を上昇させることで基板Sを上側から支持してスクリーンマスクMの下に保持する。これにより、印刷ユニット20でスキージ22を移動させてスクリーンマスクM上のはんだをパターン孔に押し付けることで、基板Sにはんだを印刷することができる。
【0023】
本実施形態では、図4に示すように、一方の印刷機(第1印刷機10A)では、第1レーン(第1搬送コンベア30A)で基板Sを搬入してはんだの印刷を行ない、第2レーン(第2搬送コンベア30B)では基板Sを通過させるだけのパス搬送を行ないはんだ印刷は行なわない。他方の印刷機(第2印刷機10B)では、第1レーン(第1搬送コンベア30A)ではパス搬送を行ないはんだの印刷を行なわず、第2レーン(第2搬送コンベア30B)で基板Sを搬入してはんだの印刷を行なう。これにより、単位時間あたりの印刷枚数を増やすことができ、生産時間を短縮することが可能となる。そして、はんだの印刷を行なわない方のレーンであって印刷機で作業する作業者から見て手前側のレーン(本実施形態では、第2印刷機10Bの第1搬送コンベア30A)には、図5および図6に示すように、パス搬送される基板Sに作業者が手を触れることのないように基板Sが通過する空間と他の空間とを仕切る保護カバー40が装着される。
【0024】
保護カバー40は、図5図6に示すように、矩形状の平板部材であり、第1搬送コンベア30Aの一対のコンベアフレーム31上に架け渡されるように装着される。これにより、パス搬送時において、保護カバー40によって基板Sが通過する区間に作業者がアクセスするのを防止することができる。このため、パス搬送中に、作業者が前面の開口部13から印刷機(第2印刷機10B)の内部に手を伸ばして第1搬送コンベア30Aよりも奥で段取り替え等の作業を行なう場合でも、第1搬送コンベア30Aを通過する基板Sに手を触れさせないようにすることができ、十分な安全を確保することができる。
【0025】
また、図5に示すように、一対のコンベアフレーム31のうち一方のコンベアフレーム31(図5中、手前側の固定フレーム)の上端部31uには、吸着プレート36に代えて取付プレート46が取り付けられ、他方のコンベアフレーム31(可動フレーム)の上端部31uには、吸着プレート36に代えて受けプレート47がネジ43により取り付けられる。そして、図6に示すように、矩形状の保護カバー40の左右方向に延びる二辺のうちの一辺側は、一方のコンベアフレーム31(固定フレーム)の上端部31uに取付プレート46と共にネジ42により固定され、保護カバー40の他辺側は、他方のコンベアフレーム31(可動フレーム)に取り付けられた受けプレート47上に載置(支持)される。すなわち、保護カバー40は、一辺側のみが一方のコンベアフレーム31(固定フレーム)に固定されて、一対のコンベアフレーム31上に架け渡されている。また、保護カバー40には、前後に延びる複数のスリット41が形成されている。複数のスリット41には、他方のコンベアフレーム31(可動フレーム)の上端部31uに受けプレート47を取り付けたネジ43の頭部が挿通される。このため、保護カバー40と他方のコンベアフレーム31(可動フレーム)とは相対移動が可能であり、一方のコンベアフレーム31(固定フレーム)に保護カバー40の一辺側が固定された状態で、他方のコンベアフレーム31(可動フレーム)を前後に移動させることができる。すなわち、一方のコンベアフレーム31(固定フレーム)に保護カバー40の一辺側が固定された状態で、一方のコンベアフレーム31(固定フレーム)と他方のコンベアフレーム31(可動フレーム)との間隔を調整することができ、パス搬送させる基板Sの種類(サイズ)を切り替えることができる。
【0026】
本実施形態の保護カバー40は、薄板の平板部材で構成され、第1搬送コンベア30Aの一対のコンベアフレーム31に架け渡された状態で、保護カバー40が装着されない第2搬送コンベア30Bの一対のコンベアフレームに取り付けられるスクリーンマスク保持用の吸着プレート36を超えない高さとなっている。このため、第1搬送コンベア30Aに保護カバー40を装着したまま、第2搬送コンベア30Bに基板Sを搬入して印刷ユニット20により当該基板Sに対してはんだを印刷することができる。
【0027】
一方のコンベアフレーム31(固定フレーム)の上端部31uの左右方向における端部(図5中、左端)には、保護カバー40が装着されているか否かを検知するための保護カバー装着検知センサ48(例えば、近接センサ)が設けられている。
【0028】
カメラユニット50は、カメラ本体51と、カメラ本体51を前後左右に移動させるカメラ移動装置52と、を備える。カメラユニット50は、他方のコンベアフレーム31(可動フレーム)の受けプレート47に設けられた識別マークI(図5参照)を撮像し、他方のコンベアフレーム31の前後位置、すなわち一対のコンベアフレーム31の間隔を認識する。識別マークIは、保護カバー40の他辺側が他方のコンベアフレーム31(可動コンベア)に載置(支持)された状態で、保護カバー40のスリット41が重なる位置(図6参照)に設けられている。このため、保護カバー40が装着された状態でも、カメラユニット50により識別マークIを認識することが可能である。
【0029】
制御装置60は、CPU61を中心としたマイクロプロセッサとして構成され、CPU61の他に、処理プログラムを記憶したROM62や、データを一時的に記憶するRAM63、入出力ポート(図示せず)、通信ポート(図示せず)等を備える。制御装置60には、前面扉開放検知センサ15からの検知信号や保護カバー装着検知センサ48からの検知信号、カメラユニット50からの画像信号などが入力ポートを介して入力されている。一方、制御装置60からは、表示パネル14への表示信号や印刷ユニット20(スキージ昇降装置23,ヘッド移動装置24)への制御信号、第1および第2搬送コンベア30A,30B(コンベア駆動装置34,コンベア昇降装置35,支持部材昇降装置38)への制御信号、カメラユニット50(カメラ本体51,カメラ移動装置52)への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、制御装置60は、管理装置100と通信ポートを介して通信しており、互いに制御信号やデータのやり取りを行なう。
【0030】
次に、第2印刷機10Bの動作について説明する。図8は、制御装置60のCPU61により実行されるパス搬送時処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0031】
パス搬送時処理では、CPU61は、まず、第1レーン(第1搬送コンベア30A)がパス搬送中であるか否かを判定する(S100)。CPU61は、パス搬送中でないと判定すると、パス搬送時処理を終了する。一方、CPU61は、パス搬送中であると判定すると、前面扉12が開放しているか否か(S110)、保護カバー40が第1搬送コンベア30Aに装着されているか否か(S120)、をそれぞれ判定する。なお、S110の判定は、前面扉開放検知センサ15からの検知信号に基づいて行なうことができる。また、S120の判定は、保護カバー装着検知センサ48からの検知信号に基づいて行なうことができる。
【0032】
CPU61は、前面扉12が開放していないと判定したり、前面扉12が開放していても保護カバー40が第1レーン(第1搬送コンベア30A)に装着されていると判定すると、パス搬送を継続して実行して(S130)、パス搬送時処理を終了する。一方、CPU61は、前面扉12が開放しており、且つ、保護カバー40が第1レーンに装着されていないと判定すると、パス搬送を停止して(S140)、パス搬送時処理を終了する。このように、保護カバー40が装着されていない状態で前面扉12が開放されると、パス搬送に用いる第1レーンは稼動されない。このため、作業者から見て第1レーンよりも奥に配置される第2レーンで段取り替え等の作業を行なう際に、作業者が稼働中の第1レーンに手を触れるおそれを回避することができる。なお、保護カバー40が装着されていなくても、前面扉12が開放されていなければ、作業者が第1レーンに手を触れるおそれはないため、パス搬送は継続される。
【0033】
ここで、実施形態の主要な要素と請求の範囲に記載した本開示の主要な要素との対応関係について説明する。即ち、本実施形態の筐体11が本開示の筐体の一例であり、印刷ユニット20が作業ユニットの一例であり、保護カバー40が保護カバーの一例であり、保護カバー装着検知センサ48が検知部の一例であり、パス搬送時処理を実行する制御装置60のCPU61が判定部の一例である。
【0034】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、保護カバー40は、平板部材により構成されるものとした。しかし、図9に示すように、部品Pが実装済みの基板Sをパス搬送する場合に、レーンを基板Sが通過する際に当該基板Sに実装された部品Pが干渉しないように、基板搬送方向(左右方向)に延びる突条が形成された保護カバー140を用いてもよい。この場合、図10に示すように、筐体11の外面(図10中、前側面)には、保護カバー140を置くためのカバー置き場Lが設けられてもよい。保護カバー140の装着面には永久磁石が設けられている。カバー置き場Lは、保護カバー140を磁気吸引力により保持する保持面と、当該保持面に設けられ保護カバー140が置かれていることを検知するための保護カバー載置検知センサ148(例えば、磁気センサ)と、を有する。
【0036】
次に、筐体11にカバー置き場Lを備える他の実施形態に係る印刷機(第2印刷機10B)の動作について説明する。図11は、制御装置60のCPU61により実行される印刷時処理の一例を示すフローチャートである。印刷時処理では、CPU61は、まず、オペレータから印刷要求があったか否かを判定する(S200)。CPU61は、印刷要求がないと判定すると、印刷時処理を終了する。一方、CPU61は、印刷要求があったと判定すると、前面扉12が閉鎖しているか否か(S210)、保護カバー140がカバー置き場Lに置かれているか否か(S220)、をそれぞれ判定する。S220の判定は、保護カバー載置検知センサ148からの検知信号に基づいて行われる。CPU61は、前面扉12が閉鎖しており、且つ、保護カバー140がカバー置き場Lに置かれていると判定すると、印刷ユニット20を稼動し、印刷を開始して(S230)、印刷時処理を終了する。一方、CPU61は、前面扉12が開放していると判定したり、保護カバー140がカバー置き場Lに置かれていないと判定すると、印刷を開始することなく、エラーを出力して(S240)、印刷時処理を終了する。なお、エラーの出力は、例えば「保護カバーをカバー置き場にセットして下さい」等のメッセージを表示パネル14に表示することにより行なうことができる。
【0037】
保護カバー140には第2レーン(第2搬送コンベア30B)の吸着プレート36よりも高い突条が形成され、保護カバー140を第1レーン(第1搬送コンベア30A)に装着したままでは、第2レーンで印刷を開始することができない。このため、保護カバー140がカバー置き場Lに置かれていない状態では、保護カバー140が第1レーンに装着されたままのおそれがあると判断し、印刷を開始することなく、エラーを出力するのである。
【0038】
なお、上述した他の実施形態では、CPU61は、保護カバー載置検知センサ148からの検知信号に基づいて印刷ユニット20の稼動の是非を判定するものとした。しかし、CPU61は、印刷の開始が要求された際に、保護カバー載置検知センサ148によりカバー置き場Lに保護カバー140が置かれていないことが検知されると、印刷ユニット20の稼動の是非を判定することなく、保護カバー140が印刷機内に置かれたままとなっていないか注意を促す表示を行なってもよい。
【0039】
勿論、保護カバー140においても、保護カバー40と同様に、CPU61は、保護カバー装着検知センサ48を用いたパス搬送時処理を実行するようにしてもよい。
【0040】
また、上述した実施形態では、印刷機(第1および第2印刷機10A,10B)は、デュアルレーン式の搬送コンベア(第1および第2搬送コンベア30A,30B)を備えるものとした。しかし、印刷機(第1および第2印刷機10A,10B)は、1つの搬送コンベアを備えるものとしてもよい。
【0041】
また、上述した実施形態では、部品実装ラインは、複数の印刷機(第1および第2印刷機10A,10B)を備えるものとしたが、1つの印刷機を備えてもよい。
【0042】
また、上述した実施形態では、本開示の作業機を、印刷機(第2印刷機10B)に適用して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、印刷検査機や部品実装機、実装検査機など、基板Sを搬送する搬送コンベアを備えるものであれば、如何なる作業機に適用してもよい。
【0043】
以上説明したように、本開示の作業機では、パス搬送時において保護カバーが搬送コンベアに搭載されることで、作業機内の当該搬送コンベアを基板が通過する空間と他の空間とを仕切る。このため、例えば段取り替え等で作業者が作業機内に手を入れて作業を行なう際に、稼動中の搬送コンベアを基板が通過する空間に作業者の手が触れないようにすることができる。この結果、搬送コンベアを稼動させたまま、作業者内にアクセスするものとしても、十分な安全性を確保することができる。さらに、検知部によって搬送コンベアに保護カバーが搭載されているか否かを検知し、その検知結果に基づいて搬送コンベアの稼働の是非を判定するから、保護カバーの搭載し忘れを防止することが可能である。
【0044】
こうした本開示の作業機において、前記筐体は、開口部と、前記開口部を開閉可能な開閉体と、を有し、前記判定部は、前記開閉体が開状態にあり、且つ、前記パス搬送に用いる前記搬送コンベアに前記保護カバーが搭載されていることが前記検知部により検知されていない場合には、当該搬送コンベアを稼動しない判定を行なってもよい。こうすれば、開閉体が開状態で、作業者が開口部から作業機の内部にアクセスする危険性がある場合に、搬送コンベアを稼動しないようにすることができ、十分な安全性を確保することができる。
【0045】
また、本開示の第2の作業機では、筐体外にカバー置き部を設け、第1検知部により筐体外のカバー置き部に保護カバーがあるか否かを検知するため、保護カバーの紛失を防止したり、保護カバーが筐体内に置かれたままとなるのを防止したりすることが可能である。
【0046】
こうした本開示の第2の作業機において、前記作業ユニットの稼動が要求された場合に、前記第1検知部による検知結果に基づいて、前記作業ユニットの稼動の是非を判定する判定部を備えてもよい。この場合、前記判定部は、前記カバー置き部に前記保護カバーが置かれていることが前記第1検知部により検知されていない場合には、前記作業ユニットを稼動しない判定を行なってもよい。こうすれば、保護カバーが筐体内に置かれたまま作業ユニットが稼動するのを防止することができる。
【0047】
また、第2の作業機において、前記パス搬送に用いる前記他方の搬送コンベアに前記保護カバーが搭載されているか否かを検知する第2検知部と、前記第2検知部の検知結果に基づいて前記パス搬送に用いる前記他方の搬送コンベアの稼働の是非を判定する判定部と、を備えてもよい。この場合、前記筐体は、開口部と、前記開口部を開閉可能な開閉体と、を有し、前記判定部は、前記開閉体が開状態にあり、且つ、前記パス搬送に用いる前記他方の搬送コンベアに前記保護カバーが搭載されていることが前記第2検知部により検知されていない場合には、当該他方の搬送コンベアを稼動しない判定を行なってもよい。こうすれば、開閉体が開状態で、作業者が開口部から作業機の内部にアクセスする危険性がある場合に、搬送コンベアを稼動しないようにすることができ、十分な安全性を確保することができる。
【0048】
本開示では、作業機の形態として説明したが、保護カバーの形態としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示は、作業機や保護カバーの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 部品実装システム、2 印刷検査機、3,4 部品実装機、10 印刷機、10A 第1印刷機、10B 第2印刷機、11 筐体、12 前面扉、13 開口部、14 表示パネル、15 前面扉開放検知センサ、20 印刷ユニット、21 ヘッド、22 スキージ、23 スキージ昇降装置、24 ヘッド移動装置、25 ガイド、26 スライダ、27 モータ、30A 第1搬送コンベア、30B 第2搬送コンベア、31 コンベアフレーム、31u 上端部、32 ローラ、33 コンベアベルト、34 コンベア駆動装置、35 コンベア昇降装置、36 吸着プレート、37 基板支持部材、38 支持部材昇降装置、40 保護カバー、41 スリット、42,43 ネジ、46 取付プレート、47 受けプレート、48 保護カバー装着検知センサ、50 カメラユニット、51 カメラ本体、52 カメラ移動装置、60 制御装置、61 CPU、62 ROM、63 RAM 、100 管理装置、140 保護カバー、148 保護カバー載置検知センサ、L カバー置き場、M スクリーンマスク、P 部品、S 基板、I 識別マーク。
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
図11