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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084191
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】車両用流体排出構造
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
B60H1/32 613K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198327
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】竹尾 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 弘之
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA26
(57)【要約】
【課題】配管同士を堅固に接続してより確実に流体を目的の場所まで案内することが可能な車両用流体排出構造を提供する。
【解決手段】車両のダッシュパネル102の車室側104に配置された空調装置106から所定の流体を車室外側108に排出する車両用流体排出構造100は、ドレインホース110と、接手配管120と、接手配管120が挿入された追加ホース130とを備え、追加ホース130の一端132は、その周上に隣接する高可撓性領域132Aよりも可撓性が低い低可撓性領域132Bを含み、低可撓性領域132Bは、追加ホース130の変形が径方向145に偏るように配置されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のダッシュパネルの車室側に配置された車載装置から所定の流体を車室外側に排出する車両用流体排出構造において、
第1配管と、
前記第1配管が挿入された第2配管とを備え、
前記第2配管の一端は、その周上に隣接する領域よりも可撓性が低い低可撓性領域を含み、
前記低可撓性領域は、前記第2配管の変形が所定の径方向に偏るように配置されていることを特徴とする車両用流体排出構造。
【請求項2】
前記低可撓性領域は、前記第2配管の内側または外側に膨出する1つ以上の膨出部を有し、該膨出部を有することによって、前記周上に隣接する領域よりも可撓性が低くなっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用流体排出構造。
【請求項3】
前記低可撓性領域が有する1つ以上の膨出部は、すべて、前記第2配管の外側に膨出していることを特徴とする請求項2に記載の車両用流体排出構造。
【請求項4】
前記1つ以上の膨出部の少なくとも1つは、前記第2配管の一端における延伸方向に沿って膨出量が変化することを特徴とする請求項2または3に記載の車両用流体排出構造。
【請求項5】
前記1つ以上の膨出部の少なくとも1つは、前記第1配管が前記第2配管に挿入される方向に向かうほど膨出量が減少することを特徴とする請求項4に記載の車両用流体排出構造。
【請求項6】
前記第1配管の周囲には環状の突起が設けられていて、
前記第1配管は、前記環状の突起が前記第2配管の前記1つ以上の膨出部よりも深い位置まで到達するよう、前記第2配管に挿入されていることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用流体排出構造。
【請求項7】
前記1つ以上の膨出部は、複数の膨出部を含むことを特徴とする請求項2または3に記載の車両用流体排出構造。
【請求項8】
前記低可撓性領域は、車体に連結された車体連結部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の車両用流体排出構造。
【請求項9】
前記車体連結部が車体と連結されている方向は、前記第2配管の一端における延伸方向に交差していて、
前記第2配管は、前記車体連結部が車体と連結されている方向に実質的に延伸して他端に向かう部位を有することを特徴とする請求項8に記載の車両用流体排出構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用流体排出構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置から生じる凝縮水は、かびや異臭の原因となることから、ドレインホースを介して速やかに排出される。一般的に空調装置は、ダッシュパネルの車室側に配置される。このため、例えば特許文献1では、ダッシュパネルに形成された孔からドレインホースをエンジンルーム側(車室外側)に引き出して凝縮水を排水している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-175437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ドレインホースのような可撓性のある配管は、製造時に、形状や寸法の制限を受けることがある。例えば、凝縮水が流れる流路空間を形成するための土台部材を入れた金型にドレインホースの材料(ゴム、エラストマー、樹脂)を流し込んでドレインホースを成形する場合、ドレインホースは、土台部材を抜き出し可能な形状および寸法に制限される。
【0005】
かかる制限により、ダッシュパネル周辺の部品を避けることのできる湾曲度合いの大きなまたは湾曲個所が多数あるドレインホースを製造することができず、ドレインホースだけでは凝縮水を目的の排水場所まで導くことができない場合がある。そこでホースを追加することが考えられるが、ドレインホースと追加ホースとの接続部位の接続が走行時の振動によって容易に解除されてしまうおそれがある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑み、配管同士を堅固に接続してより確実に流体を目的の場所まで案内することが可能な車両用流体排出構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、車両のダッシュパネルの車室側に配置された車載装置から所定の流体を車室外側に排出する車両用流体排出構造において、第1配管と、第1配管が挿入された第2配管とを備え、第2配管の一端は、その周上に隣接する領域よりも可撓性が低い低可撓性領域を含み、低可撓性領域は、第2配管の変形が所定の径方向に偏るように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、配管同士を堅固に接続してより確実に流体を目的の場所まで案内することが可能な車両用流体排出構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明による車両用流体排出構造の第1の実施例を示す斜視図である。
図2図1(b)の車両用流体排出構造を車両右側から見た側面図である。
図3図2の追加ホースを上方から見た図である。
図4図3の追加ホースの側面図である。
図5図4の追加ホースを上方から見た図である。
図6図4の追加ホースの側面図である。
図7図4の追加ホースを車両前後方向から見た図である。
図8】本発明による車両用流体排出構造の第2の実施例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態は、車両のダッシュパネルの車室側に配置された車載装置から所定の流体を車室外側に排出する車両用流体排出構造において、第1配管と、第1配管が挿入された第2配管とを備え、第2配管の一端は、その周上に隣接する領域よりも可撓性が低い低可撓性領域を含み、低可撓性領域は、第2配管の変形が所定の径方向に偏るように配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第2配管の一端が低可撓性領域を含むことで、それ以外の高可撓性領域の弾性変形量が大きくなり、第2配管の変形が所定の径方向に偏る。そのため高可撓性領域から第1配管に作用する反発力(締付力)が大きくなる。これにより、第1配管に対する第2配管の締付力を高めて両者を堅固に接続し、より確実に流体を車載装置から目的の場所まで案内することができる。
【0012】
上記の低可撓性領域は、第2配管の内側または外側に膨出する1つ以上の膨出部を有し、かかる膨出部を有することによって、周上に隣接する領域よりも可撓性が低くなっているとよい。
【0013】
かかる構成によれば、膨出部の膨出量を調整することで低可撓性領域の剛性を調節できる。すなわち、所望の締付力を得られるような調節ができる。
【0014】
上記の低可撓性領域が有する1つ以上の膨出部は、すべて、第2配管の外側に膨出していてもよい。かかる構成によれば、仮に第2配管の内側に膨出する膨出部を設けた場合に流路断面積が小さくなってしまうことを回避できる。また、仮に膨出部を第2配管の内側に膨出させると、第1配管との間に隙間ができ、別途隙間を塞ぐ等の措置が必要になるが、かかる措置も不要である。
【0015】
上記の1つ以上の膨出部の少なくとも1つは、第2配管の一端における延伸方向に沿って膨出量が変化するとよい。かかる構成によれば、第1配管を第2配管に挿入する際に作業者が受ける挿入抵抗が変化するので、挿入感覚を変化させることができる。
【0016】
上記の1つ以上の膨出部の少なくとも1つは、第1配管が第2配管に挿入される方向に向かうほど膨出量が減少するとよい。
【0017】
かかる構成によれば、第1配管を第2配管に挿入する際、最初は挿入しにくいが次第に挿入しやすくなり、また、第2配管から第1配管を抜こうとする(接続を解除する)際には抜ける直前に最も動かしにくくなり抜けにくい、という接続/解除作業上の挿入間隔が得られる効果がある。
【0018】
上記の第1配管の周囲には環状の突起が設けられていて、第1配管は、環状の突起が第2配管の1つ以上の膨出部よりも深い位置まで到達するよう、第2配管に挿入されているとよい。
【0019】
かかる構成によれば、第1配管の環状の突起により第2配管は外側に押されて変形する。そして第1配管を第2配管から抜こうとすると、その途中で、第2配管は、その膨出部に重なる位置で外側に押されることとなる。したがって第1配管が第2配管の高可撓性領域からの反発力を受けることとなり、第2配管から1配管が抜けにくいという効果が得られる。
【0020】
上記の1つ以上の膨出部は、複数の膨出部を含んでよい。かかる構成によれば、複数の膨出部の周上の位置によっても、第2配管の高可撓性領域の弾性変形量を調整できる。
【0021】
上記の低可撓性領域は、車体に連結された車体連結部をさらに有するとよい。かかる構成によれば、周辺よりも剛性が高い、すなわち低可撓性領域のなかでもとりわけ剛性が高い車体連結部によって、低可撓性領域がより一層撓みにくくなり、その分、高可撓性領域から第1配管が受ける反発力は大きくなる。よって、第1配管・第2配管をより堅固に接続することができる。
【0022】
上記の車体連結部が車体と連結されている方向は、第2配管の一端における延伸方向に交差していて、第2配管は、車体連結部が車体と連結されている方向に実質的に延伸して他端に向かう部位を有するとよい。
【0023】
このように、車体連結部が車体と連結されている方向が第2配管の一端における延伸方向に交差していることで、車体連結部と車体との接続面積を増加させることができる。また、第2配管が、車体連結部が車体と連結されている方向に実質的に延伸して他端に向かう部位を有することで、第2配管の長さを短くすることができる。
【実施例0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0025】
図1は、本発明による車両用流体排出構造の第1の実施例を示す斜視図である。図1(b)は図1(a)のうち符号Rで示す部分の拡大図である。図1その他のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で示す。
【0026】
(車両用流体排出構造)
図1(a)に示すように、車両用流体排出構造100は、車両のダッシュパネル102の車室側104に配置された車載装置である空調装置106から所定の流体を車室外側108に排出するものである。図1(b)に示すように、車両用流体排出構造100は、空調装置106に接続され空調装置106で生じた流体(凝縮水)を排出するドレインホース110を備える。車輪(図示省略)を収容するホイールハウス112の近傍でダッシュパネル102には孔114が設けられていて、ドレインホース110は、空調装置106から孔114を通ってダッシュパネル102の車室外側108まで延びている。ドレインホース110は、例えばゴム、エラストマ、樹脂等で成形された可撓性の高い配管としてよい。
【0027】
なお本実施例ではドレインホース110は車室側104と車室外側108とを仕切るダッシュパネル102に取り付けられているが、これに限らず、車室側104と車室外側108とを仕切る他の種類の仕切部材に取りつけてもよい。例えば車両のセンタトンネルやフロアパネルなどに取り付けてもよい。
【0028】
図2図1(b)の車両用流体排出構造100を分解して車両右側から見た分解側面図である。車両用流体排出構造100はさらに、ドレインホース110に接続された接手配管120(第1配管)と、接手配管120が挿入された追加ホース130(第2配管)とを備える。接手配管120は、ドレインホース110のようなゴム、エラストマ、樹脂で成形された配管だけでなく、それらよりも可撓性の低い、金属やプラスチック成型された配管としてもよい。追加ホース130は、凝縮水を目的の排水場所まで導くために追加した配管である。
【0029】
(追加ホースの低可撓性領域)
図3図2の追加ホース130を上方から見た図である。図3(a)は追加ホース130の平面図であり、図3(b)は図2の追加ホース130のA-A断面図である。図3(c)は本実施例の変形例を示す図であり、これについては後述する。
【0030】
図3(a)に示すように、追加ホース130のうち、接手配管120が挿入される一端132は、その周上に、互いに隣接する高可撓性領域132Aと低可撓性領域132Bとを含む。図3(a)においてハッチングによって高可撓性領域132Aと区別して図示している低可撓性領域132Bは、高可撓性領域132Aよりも可撓性(弾性)が低い領域である。
【0031】
本実施例では、高可撓性領域132Aと低可撓性領域132Bとは、境界線134、136によって区画されている。すなわち追加ホース130の一端132のおよそ半円部分が低可撓性領域132Bであり、その余の半円部分が高可撓性領域132Aである。
【0032】
(低可撓性領域の膨出部)
図4図3の追加ホース130の側面図である。図4(a)は車両右側から見た側面図であり、図4(b)は車両左側から見た側面図である。図3(a)および図4(a)に示すように、低可撓性領域132Bは、追加ホース130の外側に膨出する第1膨出部140、第2膨出部142および第3膨出部144を有する。低可撓性領域132Bは、これらの第1ないし第3膨出部140、142、144を有することによって、構造上、剛性が増し、周上に隣接する高可撓性領域132Aよりも可撓性が低くなっている。
【0033】
図5図4の追加ホース130を上方から見た図であり、図6図4の追加ホース130の側面図である。図5(a)は図4(b)の追加ホース130を上方から見た図であり、図6(a)は図4(b)の追加ホース130を図4(b)と同じ方向から見た側面図である。図5(b)は比較例としての別の追加ホース146を図5(a)と同じ方向から見た図であり、図6(b)は比較例としての別の追加ホース146を図6(a)と同じ方向から見た側面図である。
【0034】
図5(a)に示すように、本実施例によれば、追加ホース130の一端132が低可撓性領域132Bを含むことで、それ以外の高可撓性領域132Aの弾性変形量が大きくなる。すなわち接手配管120を追加ホース130の一端132内へ挿入すると、追加ホース130の一端132のうち可撓性の高い高可撓性領域132Aは、図3(a)の矢印147、149に示す方向に弾性変形する。このとき、低可撓性領域132Bも矢印147、149に示す方向と反対方向にわずかに弾性変形する。しかし高可撓性領域132Aは、低可撓性領域132Bよりも可撓性が高いため、低可撓性領域132Bよりも大きく変形する。かかる変形を図5(a)では二点鎖線143で示している。
【0035】
その結果、図5(a)に示すように、追加ホース130の変形は、径方向145に偏る。「偏る」とは、高可撓性領域132Aおよび低可撓性領域132Bの径方向145に沿ったそれぞれの変形量Δd3およびΔd4を比較すると前者が大きい(Δd3>Δd4)ことを意味する。径方向145は、追加ホース130の流路中心C2を通る直線であり、流路中心C2と、そこからズレている接手配管120の流路中心C1とを結ぶ直線である。
【0036】
なお、本実施例では接手配管120(第1配管)およびこれに挿入された追加ホース130(第2配管)は、ともに断面円形の配管であるが、配管の断面は多角形状等の他の形状としてもよい。その場合、「径方向」は、直線で示した流路中心C2(図6(a))に直交する、すなわち流路に交差する方向という意味で「交差方向」と言い換えてよい。
【0037】
図6(a)に、上記の流路中心のズレΔCを示した。接手配管120を追加ホース130の一端132内へ挿入すると、接手配管120の流路中心C1は、矢印139に示すように移動する。すなわち、最初に第1膨出部140等と同じ所まで接手配管120が挿入されたときは、低可撓性領域132Bのうち剛性の高い部位を通過するため、接手配管120の流路中心C1は、最も追加ホース130の流路中心C2から離れている。次に、接手配管120が第1膨出部140等を通過すると、追加ホース130の低可撓性領域132Bの剛性はやや低下するそのため接手配管120の流路中心C1はわずかに流路中心C2に接近し、最終的にはズレΔCだけ流路中心C2からズレることとなる。
【0038】
なお、本実施例では、接手配管120が、第1ないし第3膨出部140、142、144のいずれよりも深い位置まで到達するように追加ホース130に挿入されているが、接手配管120は複数の膨出部のいずれか1つよりも深い位置まで到達するように構成してもよい。
【0039】
図6(a)に示すように、接手配管120が追加ホース130に挿入されると、高可撓性領域132Aは接手配管120に対して反発力N2を及ぼす。また低可撓性領域132Bが接手配管120から応力を受けると、低可撓性領域132Bは接手配管120に対して反発力N1を及ぼす。
【0040】
ここで、図5(b)に示す比較例、すなわち本実施例の高可撓性領域132A、低可撓性領域132Bを有しない追加ホース146を本実施例と比較する。接手配管120を追加ホース146の一端132内へ挿入しても、接手配管120の流路中心C1は、追加ホース146の流路中心C3とズレを生じない。言い換えれば、追加ホース146は、矢印151、153、155、157に示すように、その流路中心C3の同心円159状に生じる。つまり図5(b)や図6(b)の領域137で示すように、流路中心C1、C3にはズレが生じない。よって、2箇所で計測した変形量Δd1、Δd2は実質的に等しくなる(Δd1≒Δd2)。周方向の任意の場所で計測しても、変形量は実質的に等しい。
【0041】
そのため、本実施例を示す図6(a)に図示した、高可撓性領域132Aが接手配管120に及ぼす反発力N2、低可撓性領域132Bが接手配管120に及ぼすN1は、いずれも、比較例を示す図6(b)に図示した反発力Nより大きい。
【0042】
このように本実施例によれば、上記の反発力N1、N2が大きくなり、すなわち接手配管120に対する追加ホース130の締付力が高まる。よって、接手配管120・追加ホース130の両者を堅固に接続し、より確実に流体を空調装置106から目的の排水場所まで案内することができる。
【0043】
また、第1ないし第3膨出部140、142、144の膨出量を調整することで、低可撓性領域132Bの剛性を調節できる。すなわち、所望の締付力を得られるよう調節ができるという効果もある。
【0044】
図2に示すように、本実施例の接手配管120・追加ホース130は、上下方向に延伸している途中で接続されている。これは凝縮水の排出を重力によって促すために必要な構成であるところ、かかる上下で接続されている配管同士は、車両の振動を受けて外れやすい。そこで本実施例のような構造が有効な対策となる。
【0045】
本実施例では、図3(a)に示すように、第2・第3膨出部142、144の間に隙間170が設けられている。これにより雨水を下方に逃がし、第2・第3膨出部142、144に雨水が滞留することを防止している。隙間170の下方には追加ホース130が配置されているため、下方に逃がした雨水をさらに流体排出場所まで案内することができる。
【0046】
本実施例では、車両用流体排出構造100を車両に組み付ける際、接手配管120に接続した追加ホース130を、ダッシュパネル102の車室側104から、ダッシュパネル102の孔114を介して、車室外側108へ通す必要がある。図3(a)がまさに孔114に追加ホース130を通している最中の様子を示している。このとき、図3(a)に示すように、追加ホース130は、当然ながら、第1ないし第3膨出部140、142、144が設けられていようとも、孔114を通過できなければならない。そのため、例えば第1膨出部140には、切り欠かれた切欠部190を設けて、膨出する形状を抑制している。第2ないし第3膨出部142、144も同様に、追加ホース130の一端132と第1ないし第3膨出部140、142、144とが孔114を同時に通過できるよう、膨出する形状を抑制している。
【0047】
本実施例では、図3(a)に示すように、第1ないし第3膨出部140、142、144を互いに接近して配置しているため、低可撓性領域132Bは1つだけである。ただしこれら第1ないし第3膨出部140、142、144を離間して配置することにより、低可撓性領域を複数設けてもよい。追加ホース130の一端132の周上における第1ないし第3膨出部140、142、144の位置によっても、追加ホース130の高可撓性領域132Aの弾性変形量を調整できる。
【0048】
図2に示すように、本実施例では接手配管120(第1配管)と追加ホース130(第2配管)との接続において、下流の追加ホース130のほうに、低可撓性領域132Bすなわち第1ないし第3膨出部140、142、144を設けている。しかし、逆に、上流の接手配管120に本実施例のような低可撓性領域を設けてもよい。また、接手配管120は必ずしも必要ではなく、ドレインホース110と追加ホース130とを直接接続し、これらの間に本発明を適用してもよい。
【0049】
なお、図3(c)に本実施例の変形例を示す通り、追加ホースの内側に膨出する膨出部150を設け、これによって高可撓性領域132C・低可撓性領域132Dを実現してもよい。ただしその場合、追加ホースの流路152の断面積が小さくなってしまうし、接手配管120との間に隙間ができて別途隙間を塞ぐ等の措置が必要になってしまう。そのため、図3(a)の本実施例のようにすべての膨出部(第1ないし第3膨出部140、142、144)が追加ホース130の外側に膨出しているほうが、望ましい。
【0050】
図7図4の追加ホース130を車両前後方向から見た図である。図7(a)は車両後方から見た背面図であり、図7(b)は車両前方から見た正面図である。まず図4(a)に示すように、第1膨出部140は、下方へゆくほど膨出量が減少するように傾斜する傾斜部140Aを有する。そして図7(b)に示すように、第2膨出部142も、下方へゆくほど膨出量が減少するように傾斜する傾斜部142Aを有する。さらに図7(a)に示すように、第3膨出部144も、下方へゆくほど膨出量が減少するように傾斜する連続した傾斜部144A、144Bを有する。なお第3膨出部144は、追加ホース130の一端132から間隔αをおいた所から膨出している。
【0051】
このように、本実施例の第1ないし第3膨出部140、142、144は、いずれも、追加ホース130の一端132における延伸方向(配管の長手方向または流路に沿った方向。本実施例では上下方向)に沿って膨出量が変化している。かかる構成によれば、接手配管120を追加ホース130に挿入する際に作業者が受ける挿入抵抗が変化するので、挿入感覚を変化させることができる。
【0052】
本実施例の場合、接手配管120が追加ホース130に挿入される方向(下方)に向かうほど膨出量が減少しているため、接手配管120を追加ホース130に挿入する際、最初は挿入しにくいが次第に挿入しやすくなる。さらに追加ホース130から接手配管120を抜こうとする(接続を解除する)際には、抜ける直前に最も動かしにくくなり抜けにくい。本実施例によれば、このような接続/解除作業上の挿入間隔が得られる効果がある。
【0053】
(接手配管)
図2に示すように、接手配管120の周囲には環状の突起120Aが設けられている。図4図7には、追加ホース130に挿入された接手配管120のうち、環状の突起120Aだけを一点鎖線で図示している。図4図7に示すように、接手配管120は、環状の突起120Aが追加ホース130の第1ないし第3膨出部140、142、144よりも深い位置まで到達するよう、追加ホース130に挿入されている。
【0054】
かかる構成によれば、接手配管120の環状の突起120Aにより追加ホース130は外側に押されて変形する。そして接手配管120を追加ホース130から抜こうとすると、その途中で、追加ホース130は、その第1ないし第3膨出部140、142、144に重なる位置で外側に押されることとなる。したがって接手配管120が追加ホース130の高可撓性領域132Aからの反発力N2を受けることとなり、追加ホース130から接手配管120が抜けにくいという効果が得られる。
【0055】
なお、仮に接手配管120(第1配管)の外径寸法が追加ホース130(第2配管)の内径寸法よりも大きい場合には、環状の突起120Aを設けなくてもよい。環状の突起120Aが無くても追加ホース130は外側に押されるからである。
【0056】
また、本実施例では、上流の接手配管120を第1配管(環状の突起あり)とし、下流の追加ホース130を第2配管(膨出部・低可撓性領域・高可撓性領域あり)としているが、これは逆にしてもよい。すなわち下流の追加ホース130を第1配管(環状の突起あり)とし、上流の接手配管120を第2配管(膨出部・低可撓性領域・高可撓性領域あり)としてもよい。
【0057】
また同様に、上流のドレインホース110・下流の接手配管120の間に本発明を適用して、一方を第1配管(環状の突起あり)、他方を第2配管(膨出部・低可撓性領域・高可撓性領域あり)としてもよい。
【0058】
また同様に、上流のドレインホース110と下流の追加ホース130とを直接接続する場合には、一方を第1配管(環状の突起あり)とし、他方を第2配管(膨出部・低可撓性領域・高可撓性領域あり)としてもよい。
【0059】
(車体連結部)
図3(b)に示す通り、低可撓性領域132Bはさらに、車体に連結された車体連結部160を有する。車体連結部160とは、具体的には、第1膨出部140に設けられたボルト孔162およびその周辺のことである。車体連結部160の剛性は、車体の一部であり剛性の高いボルト164がボルト孔162に嵌まることによって高まっている。ボルト164のネジ山によってボルト孔162は凹むように弾性変形し、これによってボルト164はボルト孔162に嵌まった状態を保つ。ボルト164はホイールハウス112に溶接固定されていて、これにより、車体連結部160は、車体(ホイールハウス112)に連結されている。なお第2・第3膨出部142、144もホイールハウス112に当接する当接部142B、144Cを有する。
【0060】
かかる構成によれば、周辺よりも剛性が高い、すなわち低可撓性領域132Bのなかでもとりわけ剛性が高い車体連結部160によって、低可撓性領域132Bがより一層撓みにくくなり、その分、高可撓性領域132Aから接手配管120が受ける反発力N2は大きくなる。よって、接手配管120・追加ホース130をより堅固に接続することができる。
【0061】
図3(b)に示すように、車体連結部160が車体(ホイールハウス112)と連結されている方向D1は、車両右側を向いていて、追加ホース130の一端132における延伸方向(上下方向)に交差している。そして追加ホース130は、車体連結部160が車体(ホイールハウス112)と連結されている方向D1と実質的に同じ方向D2に延伸して他端(図示省略)に向かっている。
【0062】
このように、車体連結部160が車体と連結されている方向D1が追加ホース130の一端132における延伸方向(上下方向)に交差していることで、車体連結部160と車体との接続面積を増加させることができる。また、追加ホース130の一端132(上流)における延伸方向(上下方向)に対する振動・荷重を車体(ホイールハウス112)・車体連結部160の間で伝達して、これらの振動・荷重を第1ないし第2膨出部140、142で吸収したり、追加ホース130側から車体側に逃がすことができる。
【0063】
また追加ホース130が、車体連結部160が車体と連結されている方向D1と実質的に同じ方向D2に延伸して他端に向かう部位を有することで、追加ホース130の長さを短くすることができる。さらに、図7(b)に示すように、追加ホース130の矢印180に示すような変位を抑制できるので、流体を目的の場所まで安定して排出することができる。
【0064】
図8は本発明による車両用流体排出構造の第2の実施例を模式的に示す断面図である。図8(a)は本実施例における追加ホース(第2配管)200の一端を示す断面図であり、図8(b)は図8(a)の追加ホースと比較される比較例における追加ホース300の一端を示す断面図である。
【0065】
図8(a)に示すように、本実施例では、4つの膨出部202、204、206、208を、追加ホース200の一端の周上に等間隔で配置(十文字に配置)している。そのため4つの低可撓性領域210、212、214、216が追加ホース200の周方向に離間して形成されている。ただし膨出部202だけが他の膨出部204、206、208よりも膨出量が少ない。
【0066】
したがって、この追加ホース200に第1配管(図示省略)が挿入されると、二点鎖線220で示すように、追加ホース200の変形は、径方向222に偏る。すなわち、断面の下半分よりも上半分のほうが大きく変形する。これは膨出部202の膨出量が少ないために、低可撓性領域210だけ、他の低可撓性領域212、214、216よりも剛性が低いためである。
【0067】
一方、図8(b)に示す比較例の追加ホース300の4つの膨出部302、304、306、308は、本実施例の追加ホース200と同様に等間隔で十文字に配置されているものの、膨出量がすべて等しい。したがって比較例の追加ホース300の変形は、その断面の同心円320状に生じる。
【0068】
なお、本実施例の追加ホース200は、周方向に離間して形成された複数の低可撓性領域202、204、206、208を有しているが、膨出部を配管の延伸方向に離間して設けることで延伸方向に離間した低可撓性領域を形成することも可能である。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0070】
また本発明は、特許請求の範囲の従属関係に関わらず、請求項および実施例に記載の発明同士を自由に組み合わせて実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、車両用流体排出構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
100 …車両用流体排出構造、102 …ダッシュパネル、106 …空調装置、110 …ドレインホース、112 …ホイールハウス、114 …孔、120 …接手配管(第1配管)、120A …環状の突起、130、200 …追加ホース(第2配管)、132 …追加ホースの一端、132A …高可撓性領域、132B …低可撓性領域、140 …第1膨出部、140A …傾斜部、142 …第2膨出部、142A …傾斜部、144 …第3膨出部、144A、144B …傾斜部、145、222 …径方向、160 …車体連結部、162 …ボルト孔、164 …ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8