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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000842
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】高周波誘導加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/10 20060101AFI20231226BHJP
   B23K 1/002 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
H05B6/10 331
B23K1/002
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099788
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】518360139
【氏名又は名称】株式会社スフィンクス・テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 竜次
(72)【発明者】
【氏名】高柳 毅
【テーマコード(参考)】
3K059
【Fターム(参考)】
3K059AA08
3K059AB13
3K059CD47
3K059CD52
(57)【要約】
【課題】本発明は高周波誘導装置に関するもので、コア体の外周方向に漏洩する磁束による問題が発生するのを防止することを目的とする。
【解決手段】コア体4と、このコア体4に磁束を供給するコイル5とを備える。
コア体4は、サブコア体4a、4bの、それぞれの一方側を重ね合わせ、この一方側の重ね合わせ部を開閉軸8で軸支し、サブコア体4a、4bの他方側には、これらサブコアサブコア体4a、4bの他方間の隙間による磁気ギャップ9を形成した。
前記コア体4の表面側には、表面側磁気シールド体10を設け、前記コア体4の裏面側には、裏面側磁気シールド体11を設け、前記コア体4の外周側には、外周側磁気シールド体14を設けたので、コア体4の外周方向に漏洩する磁束による問題が発生するのを防止することができる。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア体と、このコア体に磁束を供給するコイルとを備え、
前記コア体は、第1のサブコア体と、第2のサブコア体の、それぞれの一方側を重ね合わせ、この一方側の重ね合わせ部を開閉軸で軸支し、前記第1、第2のサブコアの他方側には、これら第1、第2のサブコアの他方間の隙間による磁気ギャップを形成した構成とし、
前記コア体の表面側には、表面側磁気シールド体を設け、
前記コア体の裏面側には、裏面側磁気シールド体を設け、
前記コア体の外周側には、外周側磁気シールド体を設けたことを特徴とする高周波誘導加熱装置。
【請求項2】
前記外周側磁気シールド体の板厚を、表面側磁気シールド体の板厚、および、裏面側磁気シールド体の板厚よりも薄くしたことを特徴とする請求項1に記載の高周波誘導加熱装置。
【請求項3】
前記コア体の外周面と、前記外周側磁気シールド体の内周面との間に隙間を設けたことを特徴とする請求項2に記載の高周波誘導加熱装置。
【請求項4】
前記外周側磁気シールド体の前記第1、第2のサブコアの他方側は、前記コア体の磁気ギャップ部よりも、前記開閉軸とは反対側に延長したことを特徴とする請求項3に記載の高周波誘導加熱装置。
【請求項5】
前記コア体を構成する第1、第2のサブコア体の一方を略Cの字状とし、他方を略逆Cの字状とし、
前記略Cの字状の第1のサブコア体のC字開口部を前記第2のサブコア体側に向け、前記略逆Cの字状の第2のサブコア体の逆C字開口部を前記第1のサブコア体側に向けた状態で、これら第1、第2のサブコア体の一端側を重ね合わせ、この一端側の重ね合わせ部を開閉軸で軸支し、前記第1、第2のサブコアの他端側には、これら第1、第2のサブコア体間の隙間による磁気ギャップを形成した構成としたことを特徴とする請求項4に記載の高周波誘導加熱装置。
【請求項6】
前記第1、第2のサブコア体は、フェライト材により形成し、前記表面側磁気シールド体、裏面側磁気シールド体、外周側磁気シールド体を、銅材、またはアルミニウム材により形成したことを特徴とする請求項5に記載の高周波誘導加熱装置。
【請求項7】
前記表面側磁気シールド体と裏面側磁気シールド体の一方の外周部には、前記外周側磁気シールド体を設けて容器状体とし、この容器状体の開口部に、前記表面側磁気シールド体と裏面側磁気シールド体の他方を装着し、前記コア体の表面側、裏面側、外周側を、前記表面側磁気シールド体、裏面側磁気シールド体、外周側磁気シールド体で覆ったことを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の高周波誘導加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種、電子部品の端子等に、半田付けを行うための高周波誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種、高周波誘導加熱装置は、いわゆる半田ごてを用いた半田付け装置とは異なり、電子部品の端子自体を発熱させて半田付けを行うので、半田付け時間を短縮化出来る。
すなわち、半田ごてを用いた半田付け装置は、半田ごてを電子部品の端子に当接させ、この端子を、半田ごてからの熱伝導で加熱し、その後、半田付けを行うので、半田付け時間が長くなる。
これに対して、高周波誘導加熱装置では、電子部品の端子を磁気ギャップに配置し、端子自体を磁束にて自己発熱させるので、半田付け時間を短縮化出来る。
このような高周波誘導加熱装置の一例である特開2022-59164号公報(特許文献1)には、コア体と、このコア体に磁束を供給するコイルとを備え、前記コア体は、第1のサブコア体と、第2のサブコア体の、それぞれの一方側を重ね合わせ、この一方側の重ね合わせ部を開閉軸で軸支し、前記第1、第2のサブコアの他方側には、これら第1、第2のサブコアの他方間の隙間による磁気ギャップを形成した構成とし、前記コア体の表面側には、保護板(表面側磁気シールド体にもなる)を設け、前記コア体の裏面側には、熱伝導部材(裏面側磁気シールド体にもなる)を設けた高周波誘導加熱装置が開示されている。
すなわち、磁気ギャップに電子部品の端子などを配置し、端子を高周波誘導加熱により発熱させ、その部分に半田を供給することで、半田付けが短時間で行えるようにしている。
また、前記コア体の表面側には、保護板(表面側磁気シールド体にもなる)を設け、前記コア体の裏面側には、熱伝導部材(裏面側磁気シールド体にもなる)を設けることで、コア体の冷却、外部衝撃からのコア体保護、および、コア体表裏面方向への磁束漏洩抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022―59164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記先行の特許文献1では、前記コア体の表面側には、保護板(表面側磁気シールド体にもなる)を設け、前記コア体の裏面側には、熱伝導部材(裏面側磁気シールド体にもなる)を設け、コア体の冷却、外部衝撃からのコア体保護、コア体表裏面方向への磁束漏洩抑制を、図っている。
半田付けの効率化を図るためには、コイルに流す電流を大きくすることが求められているが、大きな電流を流して、コア体に磁束密度の高い状態の磁束を導入すると、コア体から漏洩する磁束が問題となることが有る。
すなわち、コイルからコア体に導入した磁束の大半は、磁気ギャップ部において、電子部品の端子の発熱に活用されるのであるが、一部の磁束がコア体から漏洩し、半田付け部近傍の他の物品に流入し、悪影響を与える場合がある。
そこで、上記先行文献では、コア体の表面側に、保護板(表面側磁気シールド体にもなる)を設け、前記コア体の裏面側に、熱伝導部材(裏面側磁気シールド体にもなる)を設け、コア体からの磁束漏洩による影響を抑制している。
発明者らの検討によれば、コア体からの磁束漏洩が、コア体の表裏面方向だけでなく、コア体の外周方向にも発生し、この外周方向への磁気漏洩が課題視される場合が有るという事が判明した。
例えば、配線基板に実装された電子部品の半田付けを、高周波誘導加熱装置で行う場合で、配線基板の半田付け部分の近傍に、コイル部品(フィルター等)が存在する場合には、このコイル部品が磁気コアを備えていることがあるので、その場合には、前記磁気コアに、前記コア体の外周方向に漏洩する磁束の一部が流入し、問題を発生させる場合もある。
そこで、本発明は、コア体の外周方向に漏洩する磁束による問題が発生するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そして、この目的を達成するために本発明の高周波誘導加熱装置は、コア体と、このコア体に磁束を供給するコイルとを備え、前記コア体は、第1のサブコア体と、第2のサブコア体の、それぞれの一方側を重ね合わせ、この一方側の重ね合わせ部を開閉軸で軸支し、前記第1、第2のサブコアの他方側には、これら第1、第2のサブコアの他方間の隙間による磁気ギャップを形成した構成とし、前記コア体の表面側には、表面側磁気シールド体を設け、前記コア体の裏面側には、裏面側磁気シールド体を設け、前記コア体の外周側には、外周側磁気シールド体を設けた構成とした。
また、本発明の高周波誘導加熱装置は、前記外周側磁気シールド体の板厚を、表面側磁気シールド体の板厚、および、裏面側磁気シールド体の板厚よりも薄くしてもよい。
さらに、本発明の高周波誘導加熱装置は、前記コア体の外周面と、前記外周側磁気シールド体の内周面との間に隙間を設けてもよい。
また、本発明の高周波誘導加熱装置は、前記外周側磁気シールド体の前記第1、第2のサブコアの他方側は、前記コア体の磁気ギャップ部よりも、前記開閉軸とは反対側に延長した構造でもよい。
さらに、本発明の高周波誘導加熱装置は、前記コア体を構成する第1、第2のサブコア体の一方を略Cの字状とし、他方を略逆Cの字状とし、前記略Cの字状の第1のサブコア体のC字開口部を前記第2のサブコア体側に向け、前記略逆Cの字状の第2のサブコア体の逆C字開口部を前記第1のサブコア体側に向けた状態で、これら第1、第2のサブコア体の一端側を重ね合わせ、この一端側の重ね合わせ部を開閉軸で軸支し、前記第1、第2のサブコアの他端側には、これら第1、第2のサブコア体間の隙間による磁気ギャップを形成した構成としてもよい。
また、本発明の高周波誘導加熱装置は、前記第1、第2のサブコア体は、フェライト材により形成し、前記表面側磁気シールド体、裏面側磁気シールド体、外周側磁気シールド体を、銅材、またはアルミニウム材により形成してもよい。
さらに、本発明の高周波誘導加熱装置は、前記表面側磁気シールド体と裏面側磁気シールド体の一方の外周部には、前記外周側磁気シールド体を設けて容器状体とし、この容器状体の開口部に、前記表面側磁気シールド体と裏面側磁気シールド体の他方を装着し、前記コア体の表面側、裏面側、外周側を、前記表面側磁気シールド体、裏面側磁気シールド体、外周側磁気シールド体で覆った構成にするのが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
以上のように本発明の高周波誘導加熱装置は、コア体と、このコア体に磁束を供給するコイルとを備え、前記コア体は、第1のサブコア体と、第2のサブコア体の、それぞれの一方側を重ね合わせ、この一方側の重ね合わせ部を開閉軸で軸支し、前記第1、第2のサブコアの他方側には、これら第1、第2のサブコアの他方間の隙間による磁気ギャップを形成した構成とし、前記コア体の表面側には、表面側磁気シールド体を設け、前記コア体の裏面側には、裏面側磁気シールド体を設け、前記コア体の外周側には、外周側磁気シールド体を設けた構成としたので、コア体の外周方向に漏洩する磁束による問題が発生するのを防止することができる。
また、本発明では、前記コア体の外周側に、外周側磁気シールド体を設けたので、コア体の磁気ギャップ部の側方から他の部品がぶつかるのを防止するガードとしても活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態にかかる高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッドの斜視図を示す。
図2】同正面図を示す。
図3】同左側側面図を示す。
図4】同右側側面図を示す。
図5】同背面図を示す。
図6】同平面図を示す。
図7】同下面図を示す。
図8】同主要部の斜視図を示す。
図9】同主要部の分解斜視図を示す。
図10】同主要部の分解斜視図を示す。
図11】同主要部の正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施の形態)
本実施形態の高周波誘導加熱装置の高周波誘導加熱ヘッド1は、図1図7に示すように、(特許文献1)と同じ様に、箱状の本体ケース2を備えている。
本体ケース2の上面2a、下面2b、4枚の外周面2cの、合計六面は、何れも樹脂で形成され、この本体ケース2の上面2aには、IH出力接続コネクター2Aと、2個の冷却水接続コネクター3が設けられている。
また、本体ケース2の下方には、コア体4と、このコア体4に磁束を供給するコイル5が配置されている。
本実施形態の高周波誘導加熱ヘッド1は、後述するように、コア体4部分に特徴があり、それ以外は、基本的には、(特許文献1)と同様の構成としている。
すなわち、IH出力接続コネクター2Aからの電源供給を行うと、コンデンサとコイルによる共振が発生し、この共振電流が、コイル5に供給され、このコイル5から磁束が発生する状態となる 。
また、このコイル5は、内部に水路が形成された銅パイプによってU字状に形成されたものである。
つまり、冷却装置(図示せず)で作られた、例えば、25℃の冷却水が、図6に示す、一方の冷却水接続コネクター3を介して、コイル5の一端側から、このコイル5内に流入させられ、その後、コイル5の他端、図6に示す、他方の冷却水接続コネクター3を介し、冷却装置へと循環する。
この冷却水の循環により、コイル5とコア体4は冷却されることになる。
本体ケース2に固定された熱伝導板6には、コイル5の熱伝導部5aが固定されており、また、この熱伝導板6には、図5に示すネジ7で、コア体4が固定されている。
これにより、コア体4も、熱伝導部5a、熱伝導板6を介して水冷されることになる。
コア体4の冷却は、風冷で行う事も出来るが、その場合には、熱伝導板6を風冷することになる。
コア体4の構成について、詳細に説明する。
コア体4は、図9図10から理解されるように、フェライト材よりなる略Cの字状のサブコア体4aと、略逆Cの字状のサブコア体4bを有する。
そして、前記略Cの字状のサブコア体4aのC字開口部を、サブコア体4b側に向け、前記略逆Cの字状のサブコア体4bの逆C字開口部をサブコア体4a側に向けた状態で、これらサブコア体4a、4bの上端側(一端側)を重ね合わせ、この一端側の重ね合わせ部を開閉軸8で軸支し、前記サブコア4a、4bの下端側(他端側)には、これらサブコア体4a、4b間の隙間による磁気ギャップ9を形成した構成とした。
つまり、開閉軸8で軸支されたサブコア4a、4bの下端側(他端側)を開閉操作すれば、サブコア体4a、4b間の隙間による磁気ギャップ9の幅を調整することができ、その後、開閉軸8を締め付ければ、調整済みの磁気ギャップ9の幅を保持できる。
前記コア体4の表面側には、図8図10に示す、表面側磁気シールド体10を設け、前記コア体4の裏面側には、裏面側磁気シールド体11を設けている。
裏面側磁気シールド体11は、図8図10から理解されるように、その上端は、上方の熱伝導板6側に延長された取付部12となっており、この取付部12のネジ孔13に、図5のごとくネジ7を貫通させ、熱伝導板6に固定する。これにより、裏面側磁気シールド体11は熱伝導板6を介して水冷されることになる。
裏面側磁気シールド体11の下方で、コア体4の外周部分には、図9図11に示すように、コア体4の外周を覆うように、外周側磁気シールド体14を設けて容器状体としている。
つまり、裏面側磁気シールド体11の下方で、コア体4の外周部分には、図9図11に示すように、コア体4の外周を覆うように、外周側磁気シールド体14を一体に設けて容器状体としている。
容器状体とは、表面側磁気シールド体10側に開口部を有し、この開口部からコア体4を外周側磁気シールド体14内に収容する構成を言う。
なお、図11図9において表面側磁気シールド体10を装着していない状態を示している。
図11のように、容器状体の外周側磁気シールド体14内に、コア体4を収容させた状態で、外周側磁気シールド体14の開口部を覆う様に、表面側磁気シールド体10が装着され、ネジ15で裏面側磁気シールド体11のネジ穴16部分へと固定される。
このネジ15をネジ穴16部分へと、ねじ締めする前には、磁気ギャップ9の距離調整を行い、その後、開閉軸8を裏面側磁気シールド体11のネジ穴17に固定する。
つまり、開閉軸8の裏面側磁気シールド体11側の端部にはネジ溝が形成され、これをネジ穴17にねじ込むことで、コア体4を、容器状体の外周側磁気シールド体14内に収納させた状態で、裏面側磁気シールド体11側に固定する。
そして、この開閉軸8のねじ締めで、サブコア体4a、4bの上端側(一端側)の重ね合わせ部が密接し、また、前記サブコア4a、4bの下端側(他端側)の磁気ギャップ9の間隔寸法が設定された状態となる。
その後、表面側磁気シールド体10をネジ15で裏面側磁気シールド体11に固定する。
表面側磁気シールド体10をネジ15で裏面側磁気シールド体11に固定した状態では、表面側磁気シールド体10は裏面側磁気シールド体11側に密接し、表面側磁気シールド体10も裏面側磁気シールド体11、熱伝導板6を介して水冷されることになる。
このような構成において、表面側磁気シールド体10、裏面側磁気シールド体11、外周側磁気シールド体14は、銅材、またはアルミニウム材によって形成している。
また、ネジ15による表面側磁気シールド体10の裏面側磁気シールド体11への固定時には、表面側磁気シールド体10の背面はコア体4の表面に接触し、裏面側磁気シールド体11の表面はコア体4の裏面に接触している。
このため、コア体4は、熱伝導板6を介して温度が下げられた表面側磁気シールド体10と裏面側磁気シールド体11によって冷却される。
また、表面側磁気シールド体10と裏面側磁気シールド体11は、前記コア体4よりも比透磁率が低く、かつ、前記コア体4よりも電気抵抗値が低い金属材によって構成した。
具体的には、コア体4はフェライト材により形成し、前記表面側磁気シールド体10と裏面側磁気シールド体11は銅材、あるいはアルミニウム材により形成した。
コア体4を構成するフェライト材の比透磁率が50~5000であるのに対して、表面側磁気シールド体10と裏面側磁気シールド体11を銅材やアルミニウム材で構成した場合は、その比透磁率は略1であるので、コイル5で発生し、コア体4を流れる磁束は、専らコア体4内を流れ、表面側磁気シールド体10と裏面側磁気シールド体11側、つまり、コア体4の表裏面側へと漏洩することは少ない。
しかしながら、例えば、コイル5に100A程度の大きな電流を流すと、漏れ磁束が磁気ギャップ9を流れる磁束量に比較して十分に少なくても、コア体4表裏面側近傍の構成体(例えば、基板に実装された部品)を十分に加熱、高温化させてしまう場合もある。
これに対して本実施形態では、コア体4から漏れ出した磁束が、前記コア体4よりも比
透磁率が低い表面側磁気シールド体10と裏面側磁気シールド体11を通過すると、前記磁束の通過により表面側磁気シールド体10と裏面側磁気シールド体11部分に、渦電流が流れ、この渦電流で、前記表面側磁気シールド体10と裏面側磁気シールド体11を通過する磁束とは反対方向の磁束を発生させ、その結果として、前記コア体4から表面側磁気シールド体10と裏面側磁気シールド体11を介して漏れ出す磁束量が減少し、これによって、コア体4の表裏面側近傍の他の構成体(例えば、基板に実装された部品)を不用意に加熱することが無くなる。
本実施形態の最も大きな特徴は、裏面側磁気シールド体11のコア体4外周部において、表面側に延びる外周側磁気シールド体14を一体形成したことである。
この外周側磁気シールド体14とコア体4の関係は、図11に詳細に表現されている。
つまり、外周側磁気シールド体14の内周部分と、コア体4の外周部分との間には隙間Sが形成されている。
これは、磁気ギャップ9の幅調整の為に、サブコア体4a、4bを左右に開閉させる必要が有るからである。また、コア体4の冷却は、コア体4の表裏面に、表面側磁気シールド体10と裏面側磁気シールド体11を密接させることで行っており、外周側磁気シールド体14で、コア体4の冷却を積極的に行う必要が無いからである。
本実施形態では、コア体4の外周側に、外周側磁気シールド体14を設けたことを特徴としており、この外周側磁気シールド体14により、コア体4の外周方向に漏洩する磁束による問題が発生を防止することができる。
つまり、コイル5への電流をさらに高めた場合(例えば150A)や、半田付け部近傍にコイル部品が存在す時には、前記(特許文献1)では問題とならなかった事象が発生する虞が有るという課題を見出し、本発明実施形態に至ったものである。
コイル体4の外周方向への漏れ磁束は微小で、今までは問題にはならなかったが、コイル5への電流を、例えば150Aと高めた場合には、当然のことながら外周方向への漏れ磁束も大きくなり、課題となる場合が有る。
一例として、半田付け近傍に、熱負荷に弱い他の電子部品が存在する場合や、コイル部品が存在する場合には、問題となることがある。
特に、コイル部品では、発熱だけでなく、コイル部品が保有するコイルに誘導電圧が発生し、それに接続された回路に不用意な電流が流れてしまう場合もある。
そこで、本実施形態では、コア体4の外周に外周側磁気シールド体14を設けた。
この外周側磁気シールド体14は、上述のごとく、裏面側磁気シールド体11と一体成形しており、前記コア体4よりも比透磁率が低く、かつ、前記コア体4よりも電気抵抗値が低い金属材によって構成した状態となっている。
具体的には、コア体4はフェライト材により形成し、前記外周側磁気シールド体14は銅材、あるいはアルミニウム材により形成した。
その結果、本実施形態では、コア体4の外周へと漏れ出した磁束が、前記コア体4よりも比透磁率が低い外周側磁気シールド体14を通過すると、前記磁束の通過により外周側磁気シールド体14部分に、渦電流が流れ、この渦電流で、前記外周側磁気シールド体14を通過する磁束とは反対方向の磁束を発生させ、その結果として、前記コア体4の外周方向に漏れ出す磁束量が減少し、これによって、コア体4の外周方向での漏れ磁束弊害を抑制することができる。
また、本実施形態では、表面側磁気シールド体10、裏面側磁気シールド体11の下端と、外周側磁気シールド体14の下端の関係には、大きな差異を設けている。
具体的には、表面側磁気シールド体10、裏面側磁気シールド体11の下端は、コア体4の磁気ギャップ9よりも上方までとしているが、外周側磁気シールド体14の下端は、図11のように、磁気ギャップ9よりも下方(開閉軸8とは反対側)まで延長している。
このため、磁気ギャップ9外周においては、より回路基板に近い位置まで、コア体4の外周方向への漏洩磁束による問題発生を防止することが出来る。
また、コア体4の外周方向への漏洩磁束を防止する状況では、外周側磁気シールド体14には渦電流による発熱が発生しているが、この外周側磁気シールド体14に発生する熱は磁気ギャップ9の両側において、磁気ギャップ9部分、および磁気ギャップ9部分近傍の回路基板の温度を上昇させることに活用され、その結果として、半田付けが効率的に行えることになる。
つまり、表面側磁気シールド体10、裏面側磁気シールド体11も磁気遮蔽時の渦電流で発熱するが、これらの表面側磁気シールド体10、裏面側磁気シールド体11の下端は磁気ギャップ9よりも上方に位置しているので、磁気ギャップ9部の温度を高めることに活用することが出来ない。
この点を、さらに説明すると、磁気ギャップ9には、半田付けのための端子などが進入してくる状態となるので、表面側磁気シールド体10、裏面側磁気シールド体11の下端が、磁気ギャップ9よりも下方に存在すると、端子を磁気ギャップ9に進入させることが出来なくなる。
そこで、表面側磁気シールド体10、裏面側磁気シールド体11の下端は磁気ギャップ9よりも上方に配置することになる。
このため、表面側磁気シールド体10、裏面側磁気シールド体11の発熱を、磁気ギャップ9部の温度を高めることに活用することが出来ない。
これに対して、磁気ギャップ9の外周に存在する外周側磁気シールド体14の下端は、図11のように磁気ギャップ9よりも下方(開閉軸8とは反対側)まで延長しても、半田付け時の端子の進入を阻害することは無い。
このため、外周側磁気シールド体14が磁気遮蔽時に発生する熱を、磁気ギャップ9の両側において、磁気ギャップ9部、およびその近傍部分の回路基板部分の温度を高めることに活用することが出来、その結果として、半田付けなどが効率的に行えることになるのである。
ここで、本実施形態のさらに重要な点について説明する。
本実施形態においては、外周側磁気シールド体14の板厚を、表面側磁気シールド体10の板厚、および、裏面側磁気シールド体11の板厚よりも薄くした。
つまり、表面側磁気シールド体10、および、裏面側磁気シールド体11は、上述のごとく、コア体4の表裏面に接し、コア体4の冷却を行う必要があるので、コア体4からの熱移動のためにも、十分な板厚を有する構成としている。
これに対して外周側磁気シールド体14は、磁気ギャップ9の幅調整の為に、サブコア体4a、4bを左右に開閉させる必要が有るので、コア体4の外周側磁気シールド体14の内周部分と、コア体4の外周部分との間には隙間Sが形成されている。
つまり、外周側磁気シールド体14は、コア体4とは非接触状態となっている。
また、外周側磁気シールド体14の板厚を、表面側磁気シールド体10の板厚、および、裏面側磁気シールド体11の板厚よりも薄くしたので、コア体4の外周方向に漏洩する磁束による渦電流で、この外周側磁気シールド体14は、表面側磁気シールド体10や裏面側磁気シールド体11よりも温度が高くなる。
そこで、この外周側磁気シールド体14の下方側(開閉軸8とは反対側)を、表面側磁気シールド体10と裏面側磁気シールド体11の下方側(開閉軸8とは反対側)よりも下方に(開閉軸8とは反対側)に延ばしておけば、半田付け部分の温度を高くする作用を奏することになる。
これは、半田付け作業において有益な効果となる。
本実施形態は、その効果をさらに高めるために、外周側磁気シールド体14のサブコア4a、4bの他方側を、前記コア体4の磁気ギャップ9部よりも、下方側(開閉軸8とは反対側)にまで延長したので、基板部分の温度を積極的に高めることになり、これは半田付け作業において有益な効果となる。
また、外周側磁気シールド体14の下方側(開閉軸8とは反対側)を、表面側磁気シールド体10と裏面側磁気シールド体11の下方側(開閉軸8とは反対側)よりも下方に(開閉軸8とは反対側)に延ばしておけば、コア体4の磁気ギャップ9部に、外周方向から、他の部品がぶつかるのを防止するガードとしても活用することができる。
また、外周側磁気シールド体14の下方側(開閉軸8とは反対側)を、表面側磁気シールド体10と裏面側磁気シールド体11の下方側(開閉軸8とは反対側)よりも下方に(開閉軸8とは反対側)に延ばしておけば、必要に応じ、敢えて、回路基板と、前記外周側磁気シールド体14の下端(ガード部)と、を当接させることで、基板と磁気ギャップ9との距離を一定に保つ位置決め部材としても活用することができる。
さらに、本実施形態では、裏面側磁気シールド体11のコア体4外周部において、表面側に延びる外周側磁気シールド体14を一体形成し、容器状体としたので、コア体4の装着時には、仮置き場としても活用でき、作業性の良いものとなる。
なお、本実施形態では、外周側磁気シールド体14を、裏面側磁気シールド体11に一体成形し、容器状体としたが、表面側磁気シールド体10のコア体4外周部に一体成形しても良い。
【符号の説明】
【0009】
1 高周波誘導加熱ヘッド
2 本体ケース
2a 上面
2b 下面
2c 外周面
2A IH出力接続コネクター
3 冷却水接続コネクター
4 コア体
4a サブコア体
4b サブコア体
5 コイル
5a 熱伝導部
6 熱伝導板
7 ネジ
8 開閉軸
9 磁気ギャップ
10 表面側磁気シールド体
11 裏面側磁気シールド体
12 取付部
13 ネジ孔
14 外周側磁気シールド体
15 ネジ
16 ネジ穴
17 ネジ穴
図1
図2
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