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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008421
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】減衰バルブおよび緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/34 20060101AFI20240112BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20240112BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20240112BHJP
   F16K 17/06 20060101ALI20240112BHJP
   F16K 17/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F16F9/34
F16F9/46
F16F9/32 L
F16K17/06 C
F16K17/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110283
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】佐野 悠太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 義浩
【テーマコード(参考)】
3H059
3J069
【Fターム(参考)】
3H059AA02
3H059BB22
3H059CA12
3H059CB12
3H059CD11
3H059CE04
3H059EE01
3H059FF03
3H059FF11
3J069AA54
3J069CC15
3J069EE03
3J069EE28
3J069EE38
3J069EE44
(57)【要約】
【課題】減衰力の調整を可能としても大型化を招かず製造コストの増大を抑制できる減衰バルブおよび緩衝器を提供する。
【解決手段】減衰バルブVは、ポート5bの開口端の外周から立ち上がりポート5bを取り囲む弁座5dを有するピストン5と、環状であってピストン5に重ねられて弁座5eに離着座可能なリーフバルブ17と、リーフバルブ17の反弁座部材側に間隔を空けて配置されてリーフバルブ17に対向する対向部材12と、リーフバルブ17と対向部材12との間に介装されてリーフバルブ17を弁座5eへ向けて付勢する磁気粘性エラストマを有する付勢部材16と、付勢部材16に磁界を作用させるコイル10とを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートと、前記ポートの開口端の外周から立ち上がり前記ポートを取り囲む弁座とを有する弁座部材と、
環状であって前記弁座部材に重ねられて、前記弁座に離着座可能なリーフバルブと、
前記リーフバルブの反弁座部材側に間隔を空けて配置されて前記リーフバルブに対向する対向部材と、
前記リーフバルブと前記対向部材との間に介装されて前記リーフバルブを前記弁座へ向けて付勢する磁気粘性エラストマを有する付勢部材と、
前記付勢部材に磁界を作用させるコイルとを備えた
ことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項2】
前記弁座部材および前記対向部材が取り付けられる軸部材を備え、
前記リーフバルブは、環状であって内周側が前記軸部材の前記弁座部材と前記対向部材との間に固定されて外周側の撓みが許容され、
前記付勢部材は、前記リーフバルブの外周側と前記対向部材との間に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項3】
前記弁座部材および前記対向部材が取り付けられる軸部材と、
前記リーフバルブと前記対向部材との間に配置されて、前記軸部材に対して軸方向へ移動可能であって前記リーフバルブの反弁座部材側に当接するバルブ抑え部材とを備え、
前記付勢部材は、前記対向部材と前記バルブ抑え部材との間に介装されて、前記バルブ抑え部材を介して前記リーフバルブを付勢する
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項4】
前記弁座部材と前記対向部材とは、軟磁性体で形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項5】
アウターシェルと、前記アウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと、前記アウターシェルに対する前記ロッドの移動によって液体が行き来する少なくとも2つの作動室とを有する緩衝器本体と、
前記作動室間に設けられた請求項1から4のいずれか一項に記載の減衰バルブとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰バルブおよび緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
減衰バルブは、車両のサスペンション等に利用される緩衝器に用いられて、緩衝器が発生する減衰力を調整可能とするものがある。このような減衰バルブは、たとえば、ポートを有する弁座部材と、弁座部材に離着座してポートを開閉する弁体と、弁体を弁座部材へ向けて付勢するばねと、弁体に対してばねの付勢力に対向する推力を作用させるソレノイドとを備えており、ソレノイドに供給する電流量の調整によって弁体に作用させる推力を変更して、開弁圧や弁開口度合を変化させる。
【0003】
このような減衰バルブが利用される緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に挿入されてシリンダ内を作動油が充填する伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に挿入されてピストンに連結されるピストンロッドと、シリンダを覆う外筒と、シリンダと外筒との間に配置される中間筒と、中間筒と外筒との間の環状隙間で形成されるリザーバと、シリンダと中間筒との間の隙間で形成されて伸側室とリザーバとを連通する減衰通路と、ピストンに設けられて圧側室から伸側室へ向かう作動油の流れのみを許容する整流通路と、リザーバから圧側室へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路とを備えており、減衰バルブは、緩衝器の減衰通路の途中に設けられる。
【0004】
前述のように構成された緩衝器では、伸縮時にシリンダ内からリザーバへ作動油が押し出されて減衰バルブを通過するので、減衰バルブにおける開弁圧或いは弁開口度合を変化させることによって、緩衝器の伸縮時の減衰力の調整が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-55571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前述した緩衝器はソレノイドを備えた減衰バルブを備えているため、外筒の側方にソレノイドが張り出すようにして設置されており、緩衝器が大型化するとともに、部品点数も多くなって製造コストが嵩んでしまう。
【0007】
また、特開2021-027143号公報に開示されているように、ソレノイドを備えた減衰バルブをシリンダ内におけるピストン部分に設けた緩衝器もあるが、ピストン部分が径方向および軸方向に長大化してしまい、緩衝器のストローク長の確保が難しくなるとともに外径の大型化を招くとともに部品点数も多くなって製造コストが嵩んでしまう。
【0008】
そこで、本発明は、減衰力の調整を可能としても大型化を招かず製造コストの増大を抑制できる減衰バルブおよび緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の減衰バルブは、ポートとポートの開口端の外周から立ち上がりポートを取り囲む弁座とを有する弁座部材と、環状であって弁座部材に重ねられて弁座に離着座可能なリーフバルブと、リーフバルブの反弁座部材側に間隔を空けて配置されてリーフバルブに対向する対向部材と、リーフバルブと対向部材との間に介装されてリーフバルブを弁座へ向けて付勢する磁気粘性エラストマを有する付勢部材と、付勢部材に磁界を作用させるコイルとを備えている。
【0010】
このように構成された減衰バルブは、磁界の作用によって弾性を変化させ得る磁気粘性エラストマを有する付勢部材でリーフバルブを付勢する構造を採用して、減衰力を調整できる。そして、減衰力の調整に必要な部品は、付勢部材とコイルあるから、コイルの他に固定鉄心、可動鉄心およびばねを有する大型なソレノイドに比較して小型であるだけでなく、部品点数も少なくて済むから、減衰バルブを緩衝器のピストン部やベースバルブ部に設置できる。
【0011】
また、減衰バルブは、弁座部材および対向部材が取り付けられる軸部材を備え、リーフバルブは、環状であって内周側が軸部材の前記弁座部材と前記対向部材との間に固定されて外周側の撓みが許容され、付勢部材は、リーフバルブの外周側と前記対向部材との間に設けられてもよい。
【0012】
このように構成された減衰バルブによれば、リーフバルブとバルブストッパとを備えて減衰力調整ができない一般的な減衰バルブの構造に対して、コイルを設けてリーフバルブとバルブストッパとの間に付勢部材を介装するだけで減衰力調整が可能となるので、減衰力調整不能な減衰バルブに安価かつ簡単に減衰力調整機能を付与できる。また、軸部材の外周にリーフバルブを固定することでリーフバルブが撓む方向を制御できるので、付勢部材の付勢力をリーフバルブの撓む方向に一致させて作用させ易くなる。
【0013】
さらに、減衰バルブは、弁座部材および対向部材が取り付けられる軸部材と、リーフバルブと対向部材との間に配置されて軸部材に対して軸方向へ移動可能であってリーフバルブの反弁座部材側に当接するバルブ抑え部材とを備え、付勢部材は、対向部材とバルブ抑え部材との間に介装されてバルブ抑え部材を介してリーフバルブを付勢してもよい。また、軸部材の外周にバルブ抑え部材を移動可能に設けているので、バルブ抑え部材を介して付勢部材の付勢力をリーフバルブを軸方向へ作用させてリーフバルブの撓みを効率的に抑制できる。
【0014】
このように構成された減衰バルブによれば、リーフバルブと対向部材との間にスプリングを備えて減衰力調整ができない減衰バルブの構造に対して、コイルを設けてスプリングの代わりにリーフバルブと対向部材との間に付勢部材を介装するだけで減衰力調整が可能となるので、減衰力調整不能な減衰バルブに安価かつ簡単に減衰力調整機能を付与できる。
【0015】
また、減衰バルブにおける弁座部材と対向部材とが軟磁性体で形成されてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、弁座部材と対向部材とが磁気回路を構成して付勢部材にコイルが発生する磁界を効率的に作用させて得るので、少ない電力で減衰力調整が可能となる。
【0016】
さらに、本発明の緩衝器は、アウターシェルとアウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドとアウターシェルに対するロッドの移動によって液体が行き来する2つの作動室とを有する緩衝器本体と、作動室間に設けられた減衰バルブとを備えている。このように構成された緩衝器によれば、安価に製造可能な減衰バルブを備えているので、コストを低減できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバルブおよび緩衝器によれば、減衰力の調整を可能としても大型化を招かず製造コストの増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施の形態における減衰バルブが適用された緩衝器の断面図である。
図2】一実施の形態の減衰バルブが適用されたピストン部の拡大断面図である。
図3】一実施の形態の第1変形例の減衰バルブが適用されたピストン部の拡大断面図である。
図4】一実施の形態の第1変形例の減衰バルブが適用されたピストン部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のバルブおよび緩衝器を図に基づいて説明する。一実施の形態における減衰バルブVは、図1に示すように、緩衝器Dのピストン部の減衰バルブとして利用されている。
【0020】
以下、減衰バルブVおよび緩衝器Dの各部について詳細に説明する。緩衝器Dは、アウターシェル2とアウターシェル2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド3とを備えた緩衝器本体1と、緩衝器本体1内に形成された2つの作動室としての伸側室R1と圧側室R2との間に設けられた減衰バルブVとを備えている。
【0021】
緩衝器本体1は、シリンダ4と、シリンダ4内に移動自在に挿入されるとともにシリンダ4内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン5と、シリンダ4内に挿入されてピストン5に連結されるロッド3と、シリンダ4を覆ってシリンダ4との間にリザーバ室Rを形成するアウターシェル2とを備えている。
【0022】
シリンダ4は、筒状であって内部には、前述したようにピストン5が移動自在に挿入されており、ピストン5の図1中上方に伸側室R1が、図1中下方には圧側室R2がそれぞれ区画されている。伸側室R1と圧側室R2内には、液体として、具体的にはたとえば、作動油が充填されている。なお、液体としては、作動油の他にも、水、水溶液等を充填してもよい。
【0023】
また、シリンダ4は、外周側に配置される有底筒状のアウターシェル2内に収容されており、シリンダ4とアウターシェル2との間の環状隙間でリザーバ室Rが形成されている。このリザーバ室R内は、この場合、作動油と気体とが充填されており、液体を作動油とする場合、作動油の劣化を防止するため気体を窒素等といった不活性ガスとするとよい。
【0024】
そして、シリンダ4の図1中下端には、バルブケース6が嵌合されて設けられており、バルブケース6によって圧側室R2とリザーバ室Rとが仕切られており、また、シリンダ4の図1中上端には、ロッド3を摺動自在に軸支するロッドガイド8が嵌合されている。このロッドガイド8は、アウターシェル2の内周に嵌合され、アウターシェル2の上端を加締めることで、ロッドガイド8の図1中上方に積層されてアウターシェル2に固定される。このようにロッドガイド8をアウターシェル2に固定するとシリンダ4は、アウターシェル2の底部に載置されたバルブケース6とロッドガイド8とで挟持され、シリンダ4もバルブケース6とともにアウターシェル2内で固定される。なお、アウターシェル2の上端開口端を加締める代わりに、上端開口部にキャップを螺着して、このキャップとアウターシェル2の底部とで、ロッドガイド8、シリンダ4およびバルブケース6を挟持して、これら部材をアウターシェル2内で固定してもよい。
【0025】
ロッド3は、軟磁性体であって、図1中で下端に外径が上方よりも小径な小径部3aと、小径部3aの外周に周方向に沿って設けれた環状凹部3bと、小径部3aの最下端の外周に設けられた螺子部3cと、小径部3aと小径部3aよりも上方側の部位との間に形成される段部3dとを備えている。また、ロッド3は、筒状であって小径部3aの下端が閉塞されており、ロッド3内を環状凹部3bに連通させる孔3eを備えている。
【0026】
ロッド3の小径部3aに形成された環状凹部3b内には、コイル10が収容されており、ロッド3内に挿通されるコード11を通じて緩衝器Dの外部に設けた図外の電源からコイル10に電流を供給可能となっている。
【0027】
ロッド3の小径部3aの外周には、軟磁性体で形成された環状のバルブストッパ12と、非磁性体の筒状のカラー13と、非磁性体で形成された環状の間座14と、リーフバルブとしての圧側リーフバルブ15と、付勢部材としての圧側付勢部材16と、弁座部材としてのピストン5と、リーフバルブとしての伸側リーフバルブ17と、付勢部材としての伸側付勢部材18と、非磁性体で形成された環状の間座19と、軟磁性体で形成された環状のバルブストッパ20とが順に嵌合される。そして、バルブストッパ12、カラー13と、間座14、圧側リーフバルブ15、ピストン5、伸側リーフバルブ17、間座19およびバルブストッパ20は、小径部3aの螺子部3cに螺着されたピストンナット21とロッド3における段部3dとで挟持されて小径部3aに固定される。また、圧側付勢部材16は、圧側リーフバルブ15とバルブストッパ12との間に介装され、伸側付勢部材18は、伸側リーフバルブ17とバルブストッパ20との間に介装される。
【0028】
ピストン5よりも伸側室側に配置されるバルブストッパ12は、軟磁性体で形成されており、環状であって外周部より内周側の肉厚が厚く内周側がピストン側となる図1中下方側に向けて突出する凸部12aを備えている。また、ピストン5よりも圧側室側に配置されるバルブストッパ20は、軟磁性体で形成されており環状であって外周部より内周側の肉厚が厚く内周側がピストン側となる図1中上方側に向けて突出する凸部20aを備えている。バルブストッパ20は、ピストンナット21に一体に設けられてもよい。
【0029】
カラー13は、非磁性体の筒で形成されており、バルブストッパ12,20間に介装されており、ロッド3の段部3dとピストンナット21とで挟持されてバルブストッパ12,20とともにロッド3の外周に不動に固定されている。
【0030】
間座14は、環状であって非磁性体で形成されており、カラー13の外周に嵌合されるとともにバルブストッパ12の図1中下方に重ねられている。間座19は、環状であって非磁性体で形成されており、カラー13の外周に嵌合されるとともにバルブストッパ20の図1中上方に重ねられている。間座14,19は、一枚の環状板で構成されているが、複数枚の環状板で構成されてもよい。
【0031】
ピストン5は、軟磁性体で形成されており、環状であって、図2に示すように、減衰バルブVにおける弁座部材とされていて軸部材としてのロッド3の小径部3aの外周に装着されたカラー13の外周に嵌合されている。ピストン5の内周にカラー13が嵌合された小径部3aが挿入されており、ロッド3の小径部3aは、ピストン5の下端から図1中下方へ向けて突出して軸部材として機能している。
【0032】
弁座部材としてのピストン5は、本実施の形態では、環状のピストン本体5aと、ピストン本体5aの同一円周上に交互に並べて設けられてピストン本体5aを軸方向に貫く複数の伸側ポート5bと圧側ポート5cと、ピストン本体5aの図1中下端から軸方向へ突出して伸側ポート5bのみを取り囲む花弁型の伸側弁座5dと、ピストン本体5aの図1中上端から軸方向へ突出して圧側ポート5cのみを取り囲む花弁型の圧側弁座5eとを備えている。また、ピストン5の外周には、シリンダ4の内周に摺接する樹脂製のピストンリング22が装着されており、ピストン5は、シリンダ4内を図1中上下方向へ移動可能であって、シリンダ4内を伸側室R1と圧側室R2とに区画している。
【0033】
伸側ポート5bと圧側ポート5cは、前述したように、ピストン5に複数ずつ設けられており、それぞれピストン5に対してピストン5の中心を中心とする同一円周上に配置されている。なお、伸側ポート5bと圧側ポート5cの設置数は任意であり単数であってもよい。
【0034】
また、伸側弁座5dは、圧側ポート5cの出口端を避けて各伸側ポート5bの出口端のみを互いを連通させずに取り囲む花弁型の弁座とされており、圧側弁座5eは、伸側ポート5bの出口端を避けて各圧側ポート5cの出口端のみを互いを連通させずに取り囲む花弁型の弁座とされている。なお、伸側ポート5bと圧側ポート5cとがピストン本体5aの軸方向に対して傾斜させて設けられており、ピストン本体5aの伸側室R1側では伸側ポート5bよりも圧側ポート5cの方が外周側に開口し、ピストン本体5aの圧側室R2側では圧側ポート5cよりも伸側ポート5bの方が外周側に開口する場合、伸側弁座5dおよび圧側弁座5eはともに円環状の弁座とされてもよい。
【0035】
圧側リーフバルブ15は、非磁性体で形成された環状板であって、カラー13の外周に嵌合されて弁座部材としてのピストン5の伸側室側に圧側弁座5eに着座するように重ねられており、内周がピストン5と間座14とで挟持されて固定されるとともに外周側の撓みが許容されている。また、圧側リーフバルブ15は、外周がピストン5の圧側弁座5eに着座する状態では、圧側ポート5cの出口端である図1中上端を閉塞し、外周を図2中上方へ撓ませて圧側弁座5eから離間させると圧側ポート5cを開放する。なお、圧側リーフバルブ15は、図示したところでは、一枚の環状板で構成されているが、複数の環状板で構成されてもよく、その場合、環状板の外径が異なっていてもよい。
【0036】
以上のように、圧側リーフバルブ15の反弁座部材側となる図2中上方側には、間座14が配置されているので、圧側リーフバルブ15に対向する対向部材としてのバルブストッパ12が間座14の高さ分だけ圧側リーフバルブ15の反弁座部材側に間隔を空けて配置されている。そして、バルブストッパ12は、圧側リーフバルブ15が撓んで圧側リーフバルブ15の外周に当接すると、圧側リーフバルブ15のそれ以上の撓みを規制して圧側リーフバルブ15の塑性変形を抑制する。
【0037】
伸側リーフバルブ17は、非磁性体で形成された環状板であって、カラー13の外周に嵌合されて弁座部材としてのピストン5の圧側室側に伸側弁座5dに着座するように重ねられており、内周がピストン5と間座19とで挟持されて固定されるとともに外周側の撓みが許容されている。また、伸側リーフバルブ17は、外周がピストン5の伸側弁座5dに着座する状態では、伸側ポート5bの出口端である図1中下端を閉塞し、外周を図2中下方へ撓ませて伸側弁座5dから離間させると伸側ポート5bを開放する。なお、伸側リーフバルブ17は、図示したところでは、一枚の環状板で構成されているが、複数の環状板で構成されてもよく、その場合、環状板の外径が異なっていてもよい。
【0038】
以上のように、伸側リーフバルブ17の反弁座部材側となる図2中下方側には、間座19が配置されているので、伸側リーフバルブ17に対向する対向部材としてのバルブストッパ20が間座19の高さ分だけ伸側リーフバルブ17の反弁座部材側に間隔を空けて配置されている。そして、バルブストッパ20は、伸側リーフバルブ17が撓んで伸側リーフバルブ17の外周に当接すると、伸側リーフバルブ17のそれ以上の撓みを規制して伸側リーフバルブ17の塑性変形を抑制する。
【0039】
圧側付勢部材16は、環状であって磁気粘性エラストマで形成されており、弾性を備えるとともに磁界が作用すると弾性率が作用する磁界の大きさに応じて変化する。圧側付勢部材16は、バルブストッパ12の凸部12aの外周に嵌合されて径方向に位置決められており、軸方向長さが間座14の軸方向長さ以上に設定されており、バルブストッパ12と圧側リーフバルブ15との間で圧縮された状態で介装されている。よって、圧側付勢部材16は、自身が発生する弾発力で常時、圧側リーフバルブ15をピストン5へ向けて付勢している。
【0040】
伸側付勢部材18は、環状であって磁気粘性エラストマで形成されており、弾性を備えるとともに磁界が作用すると弾性率が作用する磁界の大きさに応じて変化する。伸側付勢部材18は、バルブストッパ20の凸部20aの外周に嵌合されて径方向に位置決められており、軸方向長さが間座19の軸方向長さ以上に設定されており、バルブストッパ20と伸側リーフバルブ17との間で圧縮された状態で介装されている。よって、伸側付勢部材18は、自身が発生する弾発力で常時、伸側リーフバルブ17をピストン5へ向けて付勢している。
【0041】
なお、付勢部材としての圧側付勢部材16および伸側付勢部材18は、磁気粘性エラストマによってそれぞれ対応する圧側リーフバルブ15および伸側リーフバルブ17を付勢できればよいので、圧側付勢部材16および伸側付勢部材18の全体が磁気粘性エラストマで形成されてもよいし、圧側付勢部材16および伸側付勢部材18が一部に圧側リーフバルブ15および伸側リーフバルブ17を付勢できる磁気粘性エラストマを有するものであってもよい。
【0042】
そして、ロッド3の小径部3aの外周に装着されたコイル10に通電すると、小径部3a、バルブストッパ12、ピストン5およびバルブストッパ20が軟磁性体で、間座14,19およびカラー13が非磁性体であるので、コイル10から出た磁力線は、バルブストッパ12、圧側付勢部材16、ピストン5、伸側付勢部材18およびバルブストッパ20を通ってコイル10へ戻る。バルブストッパ12、ピストン5およびバルブストッパ20が磁気回路を構成しており、コイル10へ通電すると圧側付勢部材16および伸側付勢部材18に磁界を効率よく作用させ得る。また、コイル10への通電量の調整によって圧側付勢部材16および伸側付勢部材18に作用させる磁界の強度を調整できるので、コイル10への通電量の調整によって、圧側付勢部材16および伸側付勢部材18の弾性率を大小させ得る。圧側付勢部材16および伸側付勢部材18の弾性率が変化すると圧側付勢部材16が圧側リーフバルブ15に与える付勢力と、伸側付勢部材18が伸側リーフバルブ17に与える付勢力とが変化する。よって、コイル10へ与える電流量の調節によって、圧側リーフバルブ15および伸側リーフバルブ17の見掛け上の撓み剛性を調整し得る。
【0043】
そして、減衰バルブVは、伸側ポート5bと圧側ポート5cと伸側ポート5bを取り囲む伸側弁座5dと圧側ポート5cを取り囲む圧側弁座5eとを備えた弁座部材としてのピストン5と、ピストン5に重ねられて伸側弁座5dに離着座可能な伸側リーフバルブ17と、ピストン5に重ねられて圧側弁座5eに離着座可能な圧側リーフバルブ15と、伸側リーフバルブ17の反弁座部材側に間隔を空けて配置されて伸側リーフバルブ17に対向する対向部材としてのバルブストッパ20と、圧側リーフバルブ15の反弁座部材側に間隔を空けて配置されて圧側リーフバルブ15に対向する対向部材としてのバルブストッパ12と、伸側リーフバルブ17とバルブストッパ20との間に介装されて伸側リーフバルブ17を伸側弁座5dへ向けて付勢する磁気粘性エラストマを有する付勢部材18と、圧側リーフバルブ15とバルブストッパ12との間に介装されて圧側リーフバルブ15を圧側弁座5eへ向けて付勢する磁気粘性エラストマを有する付勢部材16と、伸側付勢部材18および圧側付勢部材16に磁界を作用させるコイル10と、ピストン5の軸心から立ち上がるロッド3における軸部材としての小径部3aとで構成されている。
【0044】
つづいて、バルブケース6は、シリンダ4の下端に嵌合されてシリンダ4内の圧側室R2と、シリンダ4とアウターシェル2との間に形成されたリザーバ室Rとを区画している。バルブケース6は、圧側室R2とリザーバ室Rとを連通する圧側減衰通路6aおよび吸込通路6bを備えている。また、バルブケース6の図1中下端となるリザーバ室側端には、圧側減衰通路6aを開閉するとともに圧側減衰通路6aを通過する作動油の流れに抵抗を与える圧側バルブ23が設けられており、バルブケース6の図1中上端となる圧側室側端には、吸込通路6bを開閉して吸込通路6bをリザーバ室Rから圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容するチェックバルブ24が設けられている。
【0045】
緩衝器Dは、以上のように構成され、以下、緩衝器Dの作動について説明する。まず、シリンダ4に対してロッド3が図1中上方へ移動して緩衝器Dが伸長作動する場合、ピストン5もロッド3とともにシリンダ4に対して上方へ移動して、伸側室R1が圧縮されるとともに圧側室R2が拡大される。伸側室R1の圧縮に伴って伸側室R1内の圧力が上昇して、減衰バルブVにおける伸側リーフバルブ17は、伸側ポート5bを通じて作用する伸側室R1の圧力によって押圧される。伸側リーフバルブ17は、伸側室R1の圧力によって図2中下方へ押圧される力が伸側付勢部材18の付勢力を上回ると撓んで伸側ポート5bを開放して、伸側ポート5bを通過する作動油の流れに抵抗を与える。このように緩衝器Dの伸長作動時には、作動油の流れに対して伸側リーフバルブ17が抵抗を与えるため、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力よりも高くなり、緩衝器Dは伸長作動を抑制する減衰力を発生する。なお、緩衝器Dの伸長作動時では、圧側リーフバルブ15が伸側室R1の圧力と圧側付勢部材16の付勢力で圧側弁座5eに着座する状態に維持されるため、圧側ポート5cが遮断されて作動油が圧側ポート5cを通過することはない。
【0046】
そして、本実施の形態の減衰バルブVでは、コイル10へ供給する電流量の調整によって伸側リーフバルブ17の見掛け上の撓み剛性を変更できるので、緩衝器Dが伸長作動時に発生する減衰力を高低調整し得る。
【0047】
また、緩衝器Dの伸長時には、ロッド3がシリンダ4内から退出するため、シリンダ4内でロッド3が退出する体積分の作動油が不足するが、この不足分の作動油は、バルブケース6に設けたチェックバルブ24が開弁してリザーバ室Rからシリンダ4内に供給される。チェックバルブ24の開弁圧はごく低く設定してあり、シリンダ4内の圧力が大気圧以下になることがないように配慮されている。
【0048】
つづいて、シリンダ4に対してロッド3が図1中下方へ移動して緩衝器Dが収縮作動する場合、ピストン5もロッド3とともにシリンダ4に対して下方へ移動して、圧側室R2が圧縮されるとともに伸側室R1が拡大される。圧側室R2の圧縮に伴って圧側室R2内の圧力が上昇して、減衰バルブVにおける圧側リーフバルブ15は、圧側ポート5cを通じて作用する圧側室R2の圧力によって押圧される。圧側リーフバルブ15は、圧側室R2の圧力によって図2中上方へ押圧される力が圧側付勢部材16の付勢力を上回ると撓んで圧側ポート5cを開放して、圧側ポート5cを通過する作動油の流れに抵抗を与える。また、緩衝器Dの収縮作動時では、ロッド3がシリンダ4内に侵入する体積分の作動油がシリンダ4内で過剰となるため、過剰分の作動油は、圧側減衰通路6aおよび圧側バルブ23を介してリザーバ室Rへ移動する。このように緩衝器Dの収縮作動時には、作動油の流れに対して圧側リーフバルブ15および圧側バルブ23が抵抗を与えるため、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力よりも高くなり、緩衝器Dは伸長作動を抑制する減衰力を発生する。なお、緩衝器Dの収縮作動時では、伸側リーフバルブ17が圧側室R2の圧力と伸側付勢部材18の付勢力で伸側弁座5dに着座する状態に維持されるため、伸側ポート5bが遮断されて作動油が伸側ポート5bを通過することはない。
【0049】
そして、本実施の形態の減衰バルブVでは、コイル10へ供給する電流量の調整によって圧側リーフバルブ15の見掛け上の撓み剛性を変更できるので、緩衝器Dが収縮作動時に発生する減衰力を高低調整し得る。
【0050】
以上、減衰バルブVは、伸側ポート5bおよび圧側ポート5cと、伸側ポート5bおよび圧側ポート5cの開口端の外周から立ち上がり伸側ポート5bおよび圧側ポート5cを取り囲む伸側弁座5dおよび圧側弁座5eとを有するピストン(弁座部材)5と、環状であってピストン(弁座部材)5に重ねられて伸側弁座5dおよび圧側弁座5eに離着座可能な伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15と、伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15の反弁座部材側に間隔を空けて配置されて伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15に対向するバルブストッパ(対向部材)12,20と、伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15とバルブストッパ(対向部材)12,20との間に介装されて伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15を伸側弁座5dおよび圧側弁座5eへ向けて付勢する磁気粘性エラストマを有する伸側付勢部材18および圧側付勢部材16と、伸側付勢部材18および圧側付勢部材16に磁界を作用させるコイル10とを備えている。
【0051】
このように構成された減衰バルブVは、磁界の作用によって弾性を変化させ得る磁気粘性エラストマを有する伸側付勢部材18および圧側付勢部材16で伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15を付勢する構造を採用して、減衰力を調整できる。そして、減衰力の調整に必要な部品は、伸側付勢部材18および圧側付勢部材16とコイル10であるから、コイルの他に固定鉄心、可動鉄心およびばねを有する大型なソレノイドに比較して小型であるだけでなく、部品点数も少なくて済むから、減衰バルブVを緩衝器Dのピストン部に設置することができる。よって、本実施の形態の減衰バルブVによれば、減衰力の調整を可能としても大型化を招かず製造コストの増大を抑制できる。
【0052】
伸側付勢部材18と圧側付勢部材16は、ともに環状とされる他、バルブストッパ12,20とリーフバルブ15,17との間に周方向に並べて設けられた複数の柱状或いは軸方向視で円弧状の磁気粘性エラストマで構成されてもよい。その場合、伸側付勢部材18を構成する各磁気粘性エラストマは、伸側リーフバルブ17に対して伸側ポート5bの開口端に軸方向で対向する位置に設けられると伸側リーフバルブ17の見掛け上の撓み剛性を効率的に調節でき、圧側付勢部材16を構成する各磁気粘性エラストマは、圧側リーフバルブ15に対して圧側ポート5cの開口端に軸方向で対向する位置に設けられると圧側リーフバルブ15の見掛け上の撓み剛性を効率的に調節できる。なお、伸側付勢部材18と圧側付勢部材16が備える磁気粘性エラストマの形状は、磁気粘性エラストマがリーフバルブ15,17を付勢できるとともにコイル10に供給される電流量によって付勢力の調節が可能であれば、任意に設計変更できる。また、対向部材としてのバルブストッパ20で伸側付勢部材18を保持する場合、対向部材としてのバルブストッパ12で圧側付勢部材16を保持する場合、バルブストッパ12,20の形状は、対応する伸側付勢部材18および圧側付勢部材16の形状に応じて適宜設計変更できる。よって、たとえば、バルブストッパ12,20に孔を設けておき、圧側付勢部材16および伸側付勢部材18を当該孔に嵌合することでバルブストッパ12,20に圧側付勢部材16および伸側付勢部材18を保持させてもよい。
【0053】
なお、本実施の形態の減衰バルブVでは、緩衝器Dの伸長作動時の減衰力と収縮作動時の減衰力の両方の調節を可能とするために、伸側リーフバルブ17と、バルブストッパ20と、伸側リーフバルブ17とバルブストッパ20との間に介装される伸側付勢部材18とを備えるとともに、圧側リーフバルブ15と、バルブストッパ12と、圧側リーフバルブ15とバルブストッパ12との間に介装される圧側付勢部材16とを備えている。緩衝器Dの伸長作動時にのみ減衰力の調節を可能とする場合、圧側付勢部材16を廃止してもよく、緩衝器Dの収縮作動時にのみ減衰力の調節を可能とする場合、伸側付勢部材18を廃止してもよい。
【0054】
また、減衰バルブVは、バルブケース6を弁座部材として、バルブケース6の圧側減衰通路6aを取り囲む弁座にリーフバルブを重ねて、リーフバルブに間隔を空けて対向部材を対向させるとともに、リーフバルブと対向部材との間に磁気粘性エラストマを有する付勢部材を介装して、付勢部材に磁界を作用させるコイルを設置して構成されてもよい。
【0055】
また、緩衝器Dは、アウターシェル2とアウターシェル2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド3とアウターシェル2に対するロッド3の移動によって作動油(液体)が行き来する伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2とを有する緩衝器本体1と、伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2との間に設けられた減衰バルブVとを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、安価かつ小型な減衰バルブVを備えているので、減衰力の調整が可能であっても大型化を招かず製造コストの増大を抑制できる。
【0056】
なお、本実施の形態では、弁座部材をピストン5として、緩衝器Dのピストン部に減衰バルブVを設置しているが、緩衝器Dのバルブケース6を弁座部材として、2つの作動室として圧側室R2とリザーバ室Rとの間に減衰バルブVを設置してもよい。つまり、緩衝器Dのベースバルブ部に減衰バルブVを設置してもよい。このように、減衰バルブVは、緩衝器D内に形成される2つの作動室間に設けられることで緩衝器Dにおける減衰力発生源として機能でき、減衰力の調整を行い得る。
【0057】
なお、緩衝器Dは、アウターシェル2の内方にシリンダ4を備えて、シリンダ4内をピストン5によって伸側室R1と圧側室R2とに区画するとともに、シリンダ4とアウターシェル2との間にリザーバ室Rを備えた複筒型の緩衝器とされているが、シリンダ4を廃止してアウターシェル2の内周にロッド3が連結されたピストンが摺動自在に挿入される単筒型の緩衝器であってもよい。このように単筒型に設定される緩衝器Dは、作動室が伸側室と圧側室の2つとなるので、減衰バルブVを緩衝器Dのピストン部に設ければよい。また、緩衝器Dの構成によって減衰バルブの設置箇所は変化するが、減衰バルブVは緩衝器Dの構成に応じて最適な箇所に設置されればよい。
【0058】
さらに、本実施の形態の減衰バルブVでは、付勢部材16,18を軸方向で挟む位置関係になるピストン(弁座部材)5とバルブストッパ(対向部材)12,20とが軟磁性体で形成されているので、ピストン(弁座部材)5とバルブストッパ(対向部材)12,20とが磁気回路を構成して付勢部材16,18にコイル10が発生する磁界を効率的に作用させて得るので、少ない電力で減衰力調整が可能となる。
【0059】
また、本実施の形態の減衰バルブVでは、弁座部材としてのピストン5とコイル10を保持する小径部3aとの間に非磁性体のカラー13を配置しているので、コイル10の磁力線をバルブストッパ12,20とピストン5とにより効率的に通過させる磁気回路を形成できる。このようにカラー13を設けることで、伸側付勢部材18と圧側付勢部材16とにより効率的に磁界を作用させ得るが、カラー13を廃止して小径部3aの外周に直接ピストン5を嵌合させることもできる。また、バルブストッパ12,20をカラー13の外周に嵌合してピストンナット21も磁気回路を構成するようにしてもよい。カラー13を廃止する場合、ピストン5を内周側の部分と外周側の部分とを別々の部品で構成して、内周側の部分を非磁性体で形成し、外周側の部分を軟磁性体で形成してもよい。軟磁性体としては、たとえば、鉄や鉄粉を焼結により成型したものなどが使用される。このようにすれば、コイル10の磁力線がピストン5の外周を通るようになるので、伸側付勢部材18と圧側付勢部材16とに効率的に磁界を作用させ得る。また、ピストン5の外周側の部分と伸側付勢部材18と圧側付勢部材16とがロッド3の軸方向で重なる位置に配置してもよい。このようにすれば、コイル10で発生して伸側付勢部材18と圧側付勢部材16とにおける磁気粘性エラストマを通る磁界の向きと、伸側付勢部材18と圧側付勢部材16とがリーフバルブ15,17から受ける荷重の作用線の向きとのずれを小さくでき、伸側付勢部材18と圧側付勢部材16とがリーフバルブ15,17に与える付勢力の調整幅を広げ得る。
なお、コイル10の設置箇所は、軸部材としての小径部3aの外周とされているので、コイル10への通電がロッド3内に配置した配線によって行えるとともに、コイル10の設置が容易となるが、コイル10の設置箇所は、小径部3aの外周以外であってもよく、たとえば、弁座部材に保持させてもよい。
【0060】
また、本実施の形態の減衰バルブVでは、ピストン(弁座部材)5とバルブストッパ(対向部材)12,20とが取り付けられる小径部(軸部材)3aを備え、伸側リーフバルブ(リーフバルブ)17および圧側リーフバルブ(リーフバルブ)15は、環状であって内周側が小径部(軸部材)3aのピストン(弁座部材)5とバルブストッパ(対向部材)12,20との間に固定されて外周側の撓みが許容され、付勢部材16,18が伸側リーフバルブ(リーフバルブ)17および圧側リーフバルブ(リーフバルブ)15の外周側とバルブストッパ(対向部材)12,20との間に設けられている。このように構成された減衰バルブVによれば、リーフバルブとバルブストッパとを備えて減衰力調整ができない一般的な減衰バルブの構造に対して、コイル10を設けてリーフバルブ15(17)とバルブストッパ12(20)との間に付勢部材16(18)を介装するだけで減衰力調整が可能となるので、減衰力調整不能な減衰バルブに安価かつ簡単に減衰力調整機能を付与できる。また、小径部(軸部材)3aの外周にリーフバルブ15(17)を固定することでリーフバルブ15(17)が撓む方向を制御できるので、付勢部材16(18)の付勢力をリーフバルブ15(18)の撓む方向に一致させて作用させ易くなる。
【0061】
また、図3に示した一実施の形態の第1変形例の減衰バルブV1のように構成されてもよい。以下、第1変形例における減衰バルブV1の構成を説明するが、一実施の形態の減衰バルブVと同一の部材については説明が重複するので、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。第1変形例の減衰バルブV1は、緩衝器Dのピストン部に設けられており、緩衝器Dの他の構成は前述した構成と同じである。
【0062】
一実施の形態の第1変形例の減衰バルブV1は、弁座部材としてのピストン5と、ピストン5に伸側弁座5dおよび圧側弁座5eに離着座可能な伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15と、伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15の反弁座部材側に間隔を空けて配置されて伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15に対向する対向部材30,31と、コイル10と、ピストン5から立ち上がるロッド3における軸部材としての小径部3aと、伸側リーフバルブ17と対向部材30との間に配置されて小径部3aに外周に軸方向へ移動可能であって伸側リーフバルブ17の反弁座部材側に当接するバルブ抑え部材32と、圧側リーフバルブ15と対向部材31との間に配置されて小径部3aに外周に軸方向へ移動可能であって圧側リーフバルブ15の反弁座部材側に当接するバルブ抑え部材33と、対向部材30とバルブ抑え部材32との間に介装される伸側付勢部材34と、対向部材31とバルブ抑え部材33との間に介装される伸側付勢部材34とを備えて構成されている。
【0063】
減衰バルブV1は、減衰バルブVと同様に緩衝器Dのピストン部に設けられており、ロッド3における軸部材として小径部3aに組み付けられている。ロッド3の小径部3aの外周には、軟磁性体で形成された環状の対向部材31と、非磁性体の筒状のカラー36と、非磁性体で形成された筒状の間座37と、リーフバルブとしての圧側リーフバルブ15と、付勢部材としての圧側付勢部材35と、バルブ抑え部材32と、弁座部材としてのピストン5と、リーフバルブとしての伸側リーフバルブ17と、バルブ抑え部材33と、付勢部材としての伸側付勢部材34と、非磁性体で形成された筒状の間座38とが順に嵌合される。そして、対向部材31、カラー36、間座37、圧側リーフバルブ15、圧側付勢部材35、バルブ抑え部材32、ピストン5、伸側リーフバルブ17、バルブ抑え部材33、伸側付勢部材34、間座38は、軟磁性体で形成されて小径部3aの螺子部3cに螺着される対向部材30とロッド3における段部3dとで挟持されて小径部3aに固定される。このように、伸側付勢部材34は、対向部材30とバルブ抑え部材32との間に介装され、伸側リーフバルブ17を付勢し、圧側付勢部材35は、対向部材31とバルブ抑え部材33との間に介装されている。
【0064】
ピストン5よりも伸側室側に配置される対向部材31は、軟磁性体で形成されており、環状であって外周部より内周側の肉厚が厚く内周側がピストン側となる図3中下方側に向けて突出する凸部31aを備えている。また、ピストン5よりも圧側室側に配置される対向部材30は、軟磁性体で形成されており、環状であってピストンナットとして機能できるように内周に螺子溝を備えており、外周にフランジ30aを備えるとともに、図3中上方側に向けて突出する凸部30bを備えている。対向部材30は、ピストンナットとは別体とされて小径部3aに不動に固定されてもよい。
【0065】
カラー36は、非磁性体の筒で形成されており、対向部材30,31間に介装されており、ロッド3の段部3dと対向部材30とで挟持されて対向部材30,31とともにロッド3の外周に不動に固定されている。
【0066】
間座37は、筒状であって非磁性体で形成されており、カラー36の外周に嵌合されるとともに対向部材31の図3中下方に重ねられている。間座38は、環状であって非磁性体で形成されており、カラー36の外周に嵌合されるとともに対向部材30の図3中上方に重ねられている。
【0067】
圧側リーフバルブ15、ピストン5および伸側リーフバルブ17は、順に重ねられてカラー36の外周に嵌合されており、内周が間座37,38によって挟持されて固定されている。圧側リーフバルブ15は、内周側が固定されて外周側の撓みが許容されており、圧側弁座5eに離着座して圧側ポート5cを開閉する。伸側リーフバルブ17は、内周側が固定されて外周側の撓みが許容されており、伸側弁座5dに離着座して伸側ポート5bを開閉する。
【0068】
圧側リーフバルブ15の反弁座部材側となる図3中上方には、筒状であって外周に圧側リーフバルブ15の反弁座側面に当接するフランジを備えたバルブ抑え部材33がカラー36の外周に上下動可能に嵌合されている。バルブ抑え部材33は、カラー36の外周に摺接しているので、カラー36が嵌合している軸部材としての小径部3aに対して軸方向へ軸ぶれせずに移動できる。
【0069】
伸側リーフバルブ17の反弁座部材側となる図3中下方には、筒状であって外周に伸側リーフバルブ17の反弁座側面に当接するフランジを備えたバルブ抑え部材32がカラー36の外周に上下動可能に嵌合されている。バルブ抑え部材32は、カラー36の外周に摺接しているので、カラー36が嵌合している軸部材としての小径部3aに対して軸方向へ軸ぶれせずに移動できる。
【0070】
圧側付勢部材35は、環状であって磁気粘性エラストマで形成されており、弾性を備えるとともに磁界が作用すると弾性率が作用する磁界の大きさに応じて変化する。圧側付勢部材35は、対向部材31の凸部31aの外周に嵌合されて径方向に位置決められており、軸方向長さが間座37の軸方向長さ以上に設定されており、対向部材31とバルブ抑え部材33との間で圧縮された状態で介装されている。よって、圧側付勢部材35は、自身が発生する弾発力で常時、バルブ抑え部材33を介して圧側リーフバルブ15をピストン5へ向けて付勢している。
【0071】
伸側付勢部材34は、環状であって磁気粘性エラストマで形成されており、弾性を備えるとともに磁界が作用すると弾性率が作用する磁界の大きさに応じて変化する。伸側付勢部材34は、対向部材30の凸部30bの外周に嵌合されて径方向に位置決められており、軸方向長さが間座38の軸方向長さ以上に設定されており、対向部材30とバルブ抑え部材32との間で圧縮された状態で介装されている。よって、伸側付勢部材34は、自身が発生する弾発力で常時、バルブ抑え部材32を介して伸側リーフバルブ17をピストン5へ向けて付勢している。
【0072】
なお、付勢部材としての圧側付勢部材35および伸側付勢部材34は、磁気粘性エラストマによってそれぞれ対応する圧側リーフバルブ15および伸側リーフバルブ17を付勢できればよいので、全体が磁気粘性エラストマで形成されてもよいし、一部に圧側リーフバルブ15および伸側リーフバルブ17を付勢できる磁気粘性エラストマを有するものであってもよい。
【0073】
そして、ロッド3の小径部3aの外周に装着されたコイル10に通電すると、小径部3a、対向部材31、ピストン5および対向部材30が軟磁性体で、間座37,38およびカラー36が非磁性体であるので、コイル10から出た磁力線は、対向部材31、圧側付勢部材35、ピストン5、伸側付勢部材34および対向部材30を通ってコイル10へ戻る。対向部材31、ピストン5および対向部材30が磁気回路を構成しており、コイル10へ通電すると圧側付勢部材35および伸側付勢部材34に磁界を効率よく作用させ得る。また、コイル10への通電量の調整によって圧側付勢部材35および伸側付勢部材34に作用させる磁界の強度を調整できるので、コイル10への通電量の調整によって、圧側付勢部材35および伸側付勢部材34の弾性率を大小させ得る。圧側付勢部材35および伸側付勢部材34の弾性率が変化すると圧側付勢部材35が圧側リーフバルブ15に与える付勢力と、伸側付勢部材34が伸側リーフバルブ17に与える付勢力とが変化する。よって、コイル10へ与える電流量の調節によって、圧側リーフバルブ15および伸側リーフバルブ17の開弁圧を調整し得る。
【0074】
つづいて、第1変形例の減衰バルブV1を備えた緩衝器Dの作動について説明する。まず、シリンダ4に対してロッド3が図3中上方へ移動して緩衝器Dが伸長作動する場合、ピストン5もロッド3とともにシリンダ4に対して上方へ移動して、伸側室R1が圧縮されるとともに圧側室R2が拡大される。伸側室R1の圧縮に伴って伸側室R1内の圧力が上昇して、減衰バルブV1における伸側リーフバルブ17は、伸側ポート5bを通じて作用する伸側室R1の圧力によって押圧される。伸側リーフバルブ17は、伸側室R1の圧力によって図3中下方へ押圧される力が伸側付勢部材34の付勢力を上回ると撓んで伸側ポート5bを開放して、伸側ポート5bを通過する作動油の流れに抵抗を与える。このように緩衝器Dの伸長作動時には、作動油の流れに対して伸側リーフバルブ17が抵抗を与えるため、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力よりも高くなり、緩衝器Dは伸長作動を抑制する減衰力を発生する。なお、緩衝器Dの伸長作動時では、圧側リーフバルブ15が伸側室R1の圧力と圧側付勢部材35の付勢力で圧側弁座5eに着座する状態に維持されるため、圧側ポート5cが遮断されて作動油が圧側ポート5cを通過することはない。
【0075】
そして、本実施の形態の減衰バルブV1では、コイル10へ供給する電流量の調整によって伸側リーフバルブ17の開弁圧を変更できるので、緩衝器Dが伸長作動時に発生する減衰力を高低調整し得る。
【0076】
また、緩衝器Dの伸長時には、ロッド3がシリンダ4内から退出するため、シリンダ4内でロッド3が退出する体積分の作動油が不足するが、この不足分の作動油は、バルブケース6に設けたチェックバルブ24が開弁してリザーバ室Rからシリンダ4内に供給される。チェックバルブ24の開弁圧はごく低く設定してあり、シリンダ4内の圧力が大気圧以下になることがないように配慮されている。
【0077】
つづいて、シリンダ4に対してロッド3が図3中下方へ移動して緩衝器Dが収縮作動する場合、ピストン5もロッド3とともにシリンダ4に対して下方へ移動して、圧側室R2が圧縮されるとともに伸側室R1が拡大される。圧側室R2の圧縮に伴って圧側室R2内の圧力が上昇して、減衰バルブV1における圧側リーフバルブ15は、圧側ポート5cを通じて作用する圧側室R2の圧力によって押圧される。圧側リーフバルブ15は、圧側室R2の圧力によって図3中上方へ押圧される力が圧側付勢部材35の付勢力を上回ると撓んで圧側ポート5cを開放して、圧側ポート5cを通過する作動油の流れに抵抗を与える。また、緩衝器Dの収縮作動時では、ロッド3がシリンダ4内に侵入する体積分の作動油がシリンダ4内で過剰となるため、過剰分の作動油は、圧側減衰通路6aおよび圧側バルブ23を介してリザーバ室Rへ移動する。このように緩衝器Dの収縮作動時には、作動油の流れに対して圧側リーフバルブ15および圧側バルブ23が抵抗を与えるため、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力よりも高くなり、緩衝器Dは伸長作動を抑制する減衰力を発生する。なお、緩衝器Dの収縮作動時では、伸側リーフバルブ17が圧側室R2の圧力と伸側付勢部材34の付勢力で伸側弁座5dに着座する状態に維持されるため、伸側ポート5bが遮断されて作動油が伸側ポート5bを通過することはない。
【0078】
そして、本実施の形態の減衰バルブV1では、コイル10へ供給する電流量の調整によって圧側リーフバルブ15の開弁圧を変更できるので、緩衝器Dが収縮作動時に発生する減衰力を高低調整し得る。
【0079】
以上、減衰バルブV1は、伸側ポート5bおよび圧側ポート5cと、伸側ポート5bおよび圧側ポート5cの開口端の外周から立ち上がり伸側ポート5bおよび圧側ポート5cを取り囲む伸側弁座5dおよび圧側弁座5eとを有するピストン(弁座部材)5と、環状であってピストン(弁座部材)5に重ねられて伸側弁座5dおよび圧側弁座5eに離着座可能な伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15と、伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15の反弁座部材側に間隔を空けて配置されて伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15に対向する対向部材30,31と、コイル10と、ピストン5およびバルブ抑え部材32,33が取り付けられる小径部(軸部材)3aと、伸側リーフバルブ17と対向部材30との間に配置されて小径部3aに外周に軸方向へ移動可能であって伸側リーフバルブ17の反弁座部材側に当接するバルブ抑え部材32と、圧側リーフバルブ15と対向部材31との間に配置されて小径部3aに外周に軸方向へ移動可能であって圧側リーフバルブ15の反弁座部材側に当接するバルブ抑え部材33と、対向部材30とバルブ抑え部材32との間に介装されて伸側リーフバルブ17を付勢する伸側付勢部材34と、対向部材31とバルブ抑え部材33との間に介装されて圧側リーフバルブ15を付勢する伸側付勢部材34とを備えている。
【0080】
このように構成された減衰バルブV1は、磁界の作用によって弾性を変化させ得る磁気粘性エラストマを有する伸側付勢部材34および圧側付勢部材35で伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15を付勢する構造を採用して、減衰力を調整できる。そして、減衰力の調整に必要な部品は、伸側付勢部材34および圧側付勢部材35とコイル10であるから、コイルの他に固定鉄心、可動鉄心およびばねを有する大型なソレノイドに比較して小型であるだけでなく、部品点数も少なくて済むから、減衰バルブV1を緩衝器Dのピストン部に設置することができる。よって、本実施の形態の減衰バルブV1によれば、減衰力の調整を可能としても大型化を招かず製造コストの増大を抑制できる。
【0081】
また、本実施の形態の減衰バルブV1によれば、リーフバルブと対向部材との間にスプリングを備えて減衰力調整ができない減衰バルブの構造に対して、コイル10を設けてスプリングの代わりにリーフバルブ15(17)と対向部材31(30)との間に付勢部材35(34)を介装するだけで減衰力調整が可能となるので、減衰力調整不能な減衰バルブに安価かつ簡単に減衰力調整機能を付与できる。さらに、小径部(軸部材)3aの外周にバルブ抑え部材32(33)を移動可能に設けているので、バルブ抑え部材32(33)を介して付勢部材35(34)の付勢力をリーフバルブ17(15)に対して軸方向へ作用させてリーフバルブ17(15)の撓みを効率的に抑制できる。
【0082】
また、図4に示した一実施の形態の第2変形例の減衰バルブV2のように構成されてもよい。以下、第2変形例における減衰バルブV2の構成を説明するが、前述した減衰バルブV,V2と同一の部材については説明が重複するので、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。第2変形例の減衰バルブV2は、緩衝器Dのピストン部に設けられており、緩衝器Dの他の構成は前述した構成と同じである。
【0083】
一実施の形態の第2変形例の減衰バルブV2は、弁座部材としてのピストン5と、ピストン5に伸側弁座5dおよび圧側弁座5eに離着座可能な伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15と、伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15の反弁座部材側に間隔を空けて配置されて伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15に対向する対向部材30,31と、コイル10と、ピストン5から立ち上がるロッド3における軸部材としての小径部3aと、伸側リーフバルブ17と対向部材30との間に配置されて小径部3aに外周に軸方向へ移動可能であって伸側リーフバルブ17の反弁座部材側に当接するバルブ抑え部材32と、圧側リーフバルブ15と対向部材31との間に配置されて小径部3aに外周に軸方向へ移動可能であって圧側リーフバルブ15の反弁座部材側に当接するバルブ抑え部材33と、対向部材30とバルブ抑え部材32との間に介装される伸側付勢部材34と、対向部材31とバルブ抑え部材33との間に介装される伸側付勢部材34とを備えて構成されている。
【0084】
減衰バルブV2は、減衰バルブV,V1と同様に緩衝器Dのピストン部に設けられており、ロッド3における軸部材として小径部3aに組み付けられている。ロッド3の小径部3aの外周には、軟磁性体で形成された環状の対向部材31と、非磁性体の筒状のカラー36と、非磁性体で形成された筒状のガイド筒40と、リーフバルブとしての圧側リーフバルブ15と、付勢部材としての圧側付勢部材35と、バルブ抑え部材32と、弁座部材としてのピストン5と、リーフバルブとしての伸側リーフバルブ17と、バルブ抑え部材33と、付勢部材としての伸側付勢部材34と、非磁性体で形成された筒状のガイド筒41とが順に嵌合される。そして、対向部材31、カラー36、ガイド筒40、圧側リーフバルブ15、圧側付勢部材35、バルブ抑え部材32、ピストン5、伸側リーフバルブ17、バルブ抑え部材33、伸側付勢部材34、ガイド筒41は、軟磁性体で形成されて小径部3aの螺子部3cに螺着される対向部材30とロッド3における段部3dとで挟持されて小径部3aに固定される。このように、伸側付勢部材34は、対向部材30とバルブ抑え部材32との間に介装され、伸側リーフバルブ17を付勢し、圧側付勢部材35は、対向部材31とバルブ抑え部材33との間に介装されている。
【0085】
カラー36は、非磁性体の筒で形成されており、対向部材30,31間に介装されており、ロッド3の段部3dと対向部材30とで挟持されて対向部材30,31とともにロッド3の外周に不動に固定されている。
【0086】
ガイド筒40は、筒状であって非磁性体で形成されており、カラー36の外周に嵌合されるとともに対向部材31の図3中下方に重ねられている。ガイド筒41は、環状であって非磁性体で形成されており、カラー36の外周に嵌合されるとともに対向部材30の図3中上方に重ねられている。
【0087】
ピストン5は、カラー36の外周に嵌合されており、内周がガイド筒40,41で挟持されて固定されている。圧側リーフバルブ15は、ガイド筒40の外周に軸方向移動可能に嵌合されて、ピストン5に対して全体を遠近させることが可能であって、圧側弁座5eに離着座して圧側ポート5cを開閉する。伸側リーフバルブ17は、ガイド筒41の外周に軸方向移動可能に嵌合されて、ピストン5に対して全体を遠近させることが可能であって、伸側弁座5dに離着座して伸側ポート5bを開閉する。
【0088】
圧側リーフバルブ15の反弁座部材側となる図3中上方には、筒状であって外周に圧側リーフバルブ15の反弁座側面に当接するフランジを備えたバルブ抑え部材33がカラー36の外周に上下動可能に嵌合されている。バルブ抑え部材33は、カラー36の外周に摺接しているので、カラー36が嵌合している軸部材としての小径部3aに対して軸方向へ軸ぶれせずに移動できる。
【0089】
伸側リーフバルブ17の反弁座部材側となる図3中下方には、筒状であって外周に伸側リーフバルブ17の反弁座側面に当接するフランジを備えたバルブ抑え部材32がカラー36の外周に上下動可能に嵌合されている。バルブ抑え部材32は、カラー36の外周に摺接しているので、カラー36が嵌合している軸部材としての小径部3aに対して軸方向へ軸ぶれせずに移動できる。
【0090】
圧側付勢部材35は、環状であって磁気粘性エラストマで形成されており、弾性を備えるとともに磁界が作用すると弾性率が作用する磁界の大きさに応じて変化する。圧側付勢部材35は、対向部材31の凸部31aの外周に嵌合されて径方向に位置決められており、軸方向長さがガイド筒40の軸方向長さ以上に設定されており、対向部材31とバルブ抑え部材33との間で圧縮された状態で介装されている。よって、圧側付勢部材35は、自身が発生する弾発力で常時、バルブ抑え部材33を介して圧側リーフバルブ15をピストン5へ向けて付勢している。そして、圧側リーフバルブ15は、圧側室R2の圧力によるピストン5から離間させる方向の力が圧側付勢部材35の付勢力を上回ると、図4中上方へ移動してピストン5から全体を離間させて圧側ポート5cを開放する。
【0091】
伸側付勢部材34は、環状であって磁気粘性エラストマで形成されており、弾性を備えるとともに磁界が作用すると弾性率が作用する磁界の大きさに応じて変化する。伸側付勢部材34は、対向部材30の凸部30bの外周に嵌合されて径方向に位置決められており、軸方向長さがガイド筒41の軸方向長さ以上に設定されており、対向部材30とバルブ抑え部材32との間で圧縮された状態で介装されている。よって、伸側付勢部材34は、自身が発生する弾発力で常時、バルブ抑え部材32を介して伸側リーフバルブ17をピストン5へ向けて付勢している。そして、伸側リーフバルブ17は、伸側室R1の圧力によるピストン5から離間させる方向の力が伸側付勢部材34の付勢力を上回ると、図4中下方へ移動してピストン5から全体を離間させて伸側ポート5bを開放する。
【0092】
なお、付勢部材としての圧側付勢部材35および伸側付勢部材34は、磁気粘性エラストマによってそれぞれ対応する圧側リーフバルブ15および伸側リーフバルブ17を付勢できればよいので、圧側付勢部材35および伸側付勢部材34の全体が磁気粘性エラストマで形成されてもよいし、圧側付勢部材35および伸側付勢部材34が一部に圧側リーフバルブ15および伸側リーフバルブ17を付勢できる磁気粘性エラストマを有するものであってもよい。
【0093】
そして、ロッド3の小径部3aの外周に装着されたコイル10に通電すると、小径部3a、対向部材31、ピストン5および対向部材30が軟磁性体で、ガイド筒40,41およびカラー36が非磁性体であるので、コイル10から出た磁力線は、対向部材31、圧側付勢部材35、ピストン5、伸側付勢部材34および対向部材30を通ってコイル10へ戻る。対向部材31、ピストン5および対向部材30が磁気回路を構成しており、コイル10へ通電すると圧側付勢部材35および伸側付勢部材34に磁界を効率よく作用させ得る。また、コイル10への通電量の調整によって圧側付勢部材35および伸側付勢部材34に作用させる磁界の強度を調整できるので、コイル10への通電量の調整によって、圧側付勢部材35および伸側付勢部材34の弾性率を大小させ得る。圧側付勢部材35および伸側付勢部材34の弾性率が変化すると圧側付勢部材35が圧側リーフバルブ15に与える付勢力と、伸側付勢部材34が伸側リーフバルブ17に与える付勢力とが変化する。よって、コイル10へ与える電流量の調節によって、圧側リーフバルブ15および伸側リーフバルブ17の開弁圧を調整し得る。
【0094】
つづいて、第2変形例の減衰バルブV2を備えた緩衝器Dの作動について説明する。まず、シリンダ4に対してロッド3が図3中上方へ移動して緩衝器Dが伸長作動する場合、ピストン5もロッド3とともにシリンダ4に対して上方へ移動して、伸側室R1が圧縮されるとともに圧側室R2が拡大される。伸側室R1の圧縮に伴って伸側室R1内の圧力が上昇して、減衰バルブV2における伸側リーフバルブ17は、伸側ポート5bを通じて作用する伸側室R1の圧力によって押圧される。伸側リーフバルブ17は、伸側室R1の圧力によって図3中下方へ押圧される力が伸側付勢部材34の付勢力を上回ると撓んで伸側ポート5bを開放して、伸側ポート5bを通過する作動油の流れに抵抗を与える。このように緩衝器Dの伸長作動時には、作動油の流れに対して伸側リーフバルブ17が抵抗を与えるため、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力よりも高くなり、緩衝器Dは伸長作動を抑制する減衰力を発生する。なお、緩衝器Dの伸長作動時では、圧側リーフバルブ15が伸側室R1の圧力と圧側付勢部材35の付勢力で圧側弁座5eに着座する状態に維持されるため、圧側ポート5cが遮断されて作動油が圧側ポート5cを通過することはない。
【0095】
そして、本実施の形態の減衰バルブV2では、コイル10へ供給する電流量の調整によって伸側リーフバルブ17の開弁圧を変更できるので、緩衝器Dが伸長作動時に発生する減衰力を高低調整し得る。
【0096】
また、緩衝器Dの伸長時には、ロッド3がシリンダ4内から退出するため、シリンダ4内でロッド3が退出する体積分の作動油が不足するが、この不足分の作動油は、バルブケース6に設けたチェックバルブ24が開弁してリザーバ室Rからシリンダ4内に供給される。チェックバルブ24の開弁圧はごく低く設定してあり、シリンダ4内の圧力が大気圧以下になることがないように配慮されている。
【0097】
つづいて、シリンダ4に対してロッド3が図4中下方へ移動して緩衝器Dが収縮作動する場合、ピストン5もロッド3とともにシリンダ4に対して下方へ移動して、圧側室R2が圧縮されるとともに伸側室R1が拡大される。圧側室R2の圧縮に伴って圧側室R2内の圧力が上昇して、減衰バルブV1における圧側リーフバルブ15は、圧側ポート5cを通じて作用する圧側室R2の圧力によって押圧される。圧側リーフバルブ15は、圧側室R2の圧力によって図4中上方へ押圧される力が圧側付勢部材35の付勢力を上回ると撓んで圧側ポート5cを開放して、圧側ポート5cを通過する作動油の流れに抵抗を与える。また、緩衝器Dの収縮作動時では、ロッド3がシリンダ4内に侵入する体積分の作動油がシリンダ4内で過剰となるため、過剰分の作動油は、圧側減衰通路6aおよび圧側バルブ23を介してリザーバ室Rへ移動する。このように緩衝器Dの収縮作動時には、作動油の流れに対して圧側リーフバルブ15および圧側バルブ23が抵抗を与えるため、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力よりも高くなり、緩衝器Dは伸長作動を抑制する減衰力を発生する。なお、緩衝器Dの収縮作動時では、伸側リーフバルブ17が圧側室R2の圧力と伸側付勢部材34の付勢力で伸側弁座5dに着座する状態に維持されるため、伸側ポート5bが遮断されて作動油が伸側ポート5bを通過することはない。
【0098】
そして、本実施の形態の減衰バルブV2では、コイル10へ供給する電流量の調整によって圧側リーフバルブ15の開弁圧を変更できるので、緩衝器Dが収縮作動時に発生する減衰力を高低調整し得る。
【0099】
以上、減衰バルブV2は、伸側ポート5bおよび圧側ポート5cと、伸側ポート5bおよび圧側ポート5cの開口端の外周から立ち上がり伸側ポート5bおよび圧側ポート5cを取り囲む伸側弁座5dおよび圧側弁座5eとを有するピストン(弁座部材)5と、環状であってピストン(弁座部材)5に軸方向へ移動可能に重ねられて伸側弁座5dおよび圧側弁座5eに離着座可能な伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15と、伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15の反弁座部材側に間隔を空けて配置されて伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15に対向する対向部材30,31と、コイル10と、ピストン5と対向部材30,31とが取り付けられる小径部(軸部材)3aと、伸側リーフバルブ17と対向部材30との間に配置されて小径部3aに外周に軸方向へ移動可能であって伸側リーフバルブ17の反弁座部材側に当接するバルブ抑え部材32と、圧側リーフバルブ15と対向部材31との間に配置されて小径部3aに外周に軸方向へ移動可能であって圧側リーフバルブ15の反弁座部材側に当接するバルブ抑え部材33と、対向部材30とバルブ抑え部材32との間に介装されて伸側リーフバルブ17を付勢する伸側付勢部材34と、対向部材31とバルブ抑え部材33との間に介装されて圧側リーフバルブ15を付勢する伸側付勢部材34とを備えている。
【0100】
このように構成された減衰バルブV2は、磁界の作用によって弾性を変化させ得る磁気粘性エラストマを有する伸側付勢部材34および圧側付勢部材35で伸側リーフバルブ17および圧側リーフバルブ15を付勢する構造を採用して、減衰力を調整できる。そして、減衰力の調整に必要な部品は、伸側付勢部材34および圧側付勢部材35とコイル10であるから、コイルの他に固定鉄心、可動鉄心およびばねを有する大型なソレノイドに比較して小型であるだけでなく、部品点数も少なくて済むから、減衰バルブV2を緩衝器Dのピストン部に設置することができる。よって、本実施の形態の減衰バルブV2によれば、減衰力の調整を可能としても大型化を招かず製造コストの増大を抑制できる。
【0101】
また、本実施の形態の減衰バルブV2によれば、リーフバルブと対向部材との間にスプリングを備えて減衰力調整ができない減衰バルブの構造に対して、コイル10を設けてスプリングの代わりにリーフバルブ15(17)と対向部材31(30)との間に付勢部材35(34)を介装するだけで減衰力調整が可能となるので、減衰力調整不能な減衰バルブに安価かつ簡単に減衰力調整機能を付与できる。
【0102】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0103】
1・・・緩衝器本体、2・・・アウターシェル、3・・・ロッド、3a・・・小径部(軸部材)、5・・・ピストン(弁座部材)、5b・・・伸側ポート(ポート)、5c・・・圧側ポート(ポート)、5d・・・伸側弁座(弁座)、5e・・・圧側弁座(弁座)、10・・・コイル、12,20・・・バルブストッパ(対向部材)、15・・・圧側リーフバルブ(リーフバルブ)、16,35・・・圧側付勢部材(付勢部材)、17・・・伸側リーフバルブ(リーフバルブ)、18,34・・・伸側付勢部材(付勢部材)、30,31・・・対向部材、32,33・・・バルブ抑え部材、D・・・緩衝器、R・・・リザーバ室(作動室)、R1・・・伸側室(作動室)、R2・・・圧側室(作動室)、V,V1,V2・・・減衰バルブ
図1
図2
図3
図4