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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084223
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】口腔用組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/42 20060101AFI20240618BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20240618BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240618BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240618BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240618BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240618BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A61K8/42
A61K8/365
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/46
A61Q11/00
A61P1/02
A61K9/08
A61K47/20
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/14
A61K8/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198380
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】清崎 若菜
(72)【発明者】
【氏名】西村 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】犬伏 順也
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB22
4C076DD05
4C076DD08
4C076DD09
4C076DD26
4C076DD38
4C076DD46
4C076DD51
4C076EE23
4C076FF16
4C076GG45
4C076GG46
4C083AB281
4C083AB282
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC781
4C083AC782
4C083AC862
4C083AD532
4C083BB01
4C083CC41
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE31
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】クエン酸類及びリン酸類のうち少なくとも一種とココイルアルギニンエチルPCAとを含有する口腔用組成物の製造方法に関して、製造の過程で析出物が発生することを抑制する。
【解決手段】口腔用組成物の製造方法は、(A)成分:クエン酸類及びリン酸類からなる群より選択される少なくとも一種と、(B)成分:(B1)低級ジオール及び(B2)界面活性剤からなる群より選択される少なくとも一種と、(C)成分:ココイルアルギニンエチルPCAと、を含有する口腔用組成物の製造方法である。口腔用組成物の製造方法は、各成分を容器内において混合するものである。口腔用組成物の製造方法は、(A)成分と水とを配合するA工程と、(B)成分を配合するB工程と、(C)成分を配合するC工程と、を含む。口腔用組成物の製造方法は、A工程とC工程とを独立して行い、B工程を行った後にC工程を行う。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:クエン酸類及びリン酸類からなる群より選択される少なくとも一種と、
(B)成分:(B1)低級ジオール及び(B2)界面活性剤からなる群より選択される少なくとも一種と、
(C)成分:ココイルアルギニンエチルPCAと、を含有する口腔用組成物の製造方法であって、
各成分を容器内において混合するものであり、
前記(A)成分と水とを配合するA工程と、
前記(B)成分を配合するB工程と、
前記(C)成分を配合するC工程と、を含み、
前記A工程と前記C工程とを独立して行い、前記B工程を行った後に前記C工程を行う
口腔用組成物の製造方法。
【請求項2】
前記(C)ココイルアルギニンエチルPCAの水溶液を調製する工程を別途行い、
前記C工程では、前記水溶液を配合する
請求項1に記載の口腔用組成物の製造方法。
【請求項3】
前記口腔用組成物は、前記(B)成分のうち、前記(B1)成分及び前記(B2)成分の両方を含有するものであり、
前記B工程は、前記(B1)成分を配合するB1工程と、該B1工程とは独立した工程として前記(B2)成分を配合するB2工程と、を含み、
前記B1工程及び前記B2工程のうち少なくとも一方の工程を行った後に前記C工程を行う
請求項1又は2に記載の口腔用組成物の製造方法。
【請求項4】
(A)成分:クエン酸類及びリン酸類からなる群より選択される少なくとも一種と、
(B)成分:(B1)低級ジオール及び(B2)界面活性剤からなる群より選択される少なくとも一種と、
(C)成分:ココイルアルギニンエチルPCAと、を含有する口腔用組成物の製造方法であって、
各成分を容器内において混合するものであり、
前記(A)成分と水とを配合するA工程と、
前記(B)成分を配合するB工程と、
前記(C)成分を配合するC工程と、を含み、
前記A工程と前記C工程とを独立して行い、前記B工程と前記C工程とを同時にD工程として行う
口腔用組成物の製造方法。
【請求項5】
前記口腔用組成物は、前記(B)成分として少なくとも前記(B1)成分を含有するものであり、
前記(C)成分を前記(B1)成分に溶解させることで溶液を調製する工程を別途行い、
前記D工程では、前記溶液を配合する
請求項4に記載の口腔用組成物の製造方法。
【請求項6】
前記(C)成分の水溶液を調製する工程を別途行い、
前記D工程では、前記水溶液と前記(B)成分とを同時に配合する
請求項4に記載の口腔用組成物の製造方法。
【請求項7】
前記口腔用組成物は、前記(B)成分として(B1)成分及び(B2)成分の両方を含有するものであり、
前記B工程は、前記(B1)成分を配合するB1工程と、該B1工程とは独立した工程として前記(B2)成分を配合するB2工程と、を含み、
前記B1工程及び前記B2工程のうち一方の工程と前記C工程とを同時に前記D工程として行う
請求項4又は5に記載の口腔用組成物の製造方法。
【請求項8】
前記(B1)成分は、プロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールのうち少なくとも一方である
請求項1又は4に記載の口腔用組成物の製造方法。
【請求項9】
前記(B2)成分は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ポリソルベート、及びラウリル硫酸ナトリウムから選択される少なくとも一種である
請求項1又は4に記載の口腔用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩を含有する口腔用組成物が開示されている。N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩は、ココイルアルギニンエチルPCAとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-1387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本件発明者は、クエン酸類とココイルアルギニンエチルPCAとを含有する組成物を製造する際に、難溶性の析出物が発生することを確認した。また同様に本件発明者は、リン酸類とココイルアルギニンエチルPCAとを含有する組成物を製造する際にも難溶性の析出物が発生することを確認した。発生した析出物は、撹拌時間を長くすることによって溶解させることができた。ここで、発生した析出物を十分に溶解させるために撹拌時間を長くするほど口腔用組成物の生産効率が低下するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための口腔用組成物の製造方法は、(A)成分:クエン酸類及びリン酸類からなる群より選択される少なくとも一種と、(B)成分:(B1)低級ジオール及び(B2)界面活性剤からなる群より選択される少なくとも一種と、(C)成分:ココイルアルギニンエチルPCAと、を含有する口腔用組成物の製造方法であって、各成分を容器内において混合するものであり、前記(A)成分と水とを配合するA工程と、前記(B)成分を配合するB工程と、前記(C)成分を配合するC工程と、を含み、前記A工程と前記C工程とを独立して行い、前記B工程を行った後に前記C工程を行うことを要旨とする。
【0006】
上記口腔用組成物の製造方法は、前記(C)ココイルアルギニンエチルPCAの水溶液を調製する工程を別途行い、前記C工程では、前記水溶液を配合するようにしてもよい。
上記口腔用組成物の製造方法では、前記口腔用組成物は、前記(B)成分のうち、前記(B1)成分及び前記(B2)成分の両方を含有するものであり、前記B工程は、前記(B1)成分を配合するB1工程と、該B1工程とは独立した工程として前記(B2)成分を配合するB2工程と、を含み、前記B1工程及び前記B2工程のうち少なくとも一方の工程を行った後に前記C工程を行うようにしてもよい。
【0007】
上記課題を解決するための口腔用組成物の製造方法は、(A)成分:クエン酸類及びリン酸類からなる群より選択される少なくとも一種と、(B)成分:(B1)低級ジオール及び(B2)界面活性剤からなる群より選択される少なくとも一種と、(C)成分:ココイルアルギニンエチルPCAと、を含有する口腔用組成物の製造方法であって、各成分を容器内において混合するものであり、前記(A)成分と水とを配合するA工程と、前記(B)成分を配合するB工程と、前記(C)成分を配合するC工程と、を含み、前記A工程と前記C工程とを独立して行い、前記B工程と前記C工程とを同時にD工程として行うことを要旨とする。
【0008】
上記口腔用組成物の製造方法では、前記口腔用組成物は、前記(B)成分として少なくとも前記(B1)成分を含有するものであり、前記(C)成分を前記(B1)成分に溶解させることで溶液を調製する工程を別途行い、前記D工程では、前記溶液を配合するようにしてもよい。
【0009】
上記口腔用組成物の製造方法は、前記(C)成分の水溶液を調製する工程を別途行い、前記D工程では、前記水溶液と前記(B)成分とを同時に配合するようにしてもよい。
上記口腔用組成物の製造方法では、前記口腔用組成物は、前記(B)成分として(B1)成分及び(B2)成分の両方を含有するものであり、前記B工程は、前記(B1)成分を配合するB1工程と、該B1工程とは独立した工程として前記(B2)成分を配合するB2工程と、を含み、前記B1工程及び前記B2工程のうち一方の工程と前記C工程とを同時に前記D工程として行うようにしてもよい。
【0010】
上記口腔用組成物の製造方法では、前記(B1)成分は、プロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールのうち少なくとも一方であることが好ましい。
上記口腔用組成物の製造方法では、前記(B2)成分は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ポリソルベート、及びラウリル硫酸ナトリウムから選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の口腔用組成物の製造方法によれば、析出物の発生を抑制することができるため、生産効率を低下させることなくクエン酸類又はリン酸類とココイルアルギニンエチルPCAとを含有する口腔用組成物を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、口腔用組成物及び口腔用組成物の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の口腔用組成物は、(A)成分:クエン酸類及びリン酸類からなる群より選択される少なくとも一種を含有している。口腔用組成物は、(B)成分:(B1)低級ジオール及び(B2)界面活性剤からなる群より選択される少なくとも一種を含有している。口腔用組成物は、(C)成分:ココイルアルギニンエチルPCAを含有している。
【0013】
口腔用組成物の製造方法は、各成分を容器内において混合するものである。
口腔用組成物の製造方法は、(A)成分と水とを配合するA工程と、(B)成分を配合するB工程と、(C)成分を配合するC工程と、を含む。
【0014】
口腔用組成物の製造方法では、(B)成分を配合していない段階で(C)成分を(A)成分に混ぜ合わせないようにする。具体的には、口腔用組成物の製造方法では、A工程とC工程とを独立して行い、B工程を行った後にC工程を行う。あるいは、口腔用組成物の製造方法では、A工程とC工程とを独立して行い、B工程とC工程とを同時にD工程として行う。
【0015】
<(A)成分:クエン酸類及びリン酸類>
クエン酸類及びリン酸類は、pH調整剤として用いることができる。
クエン酸類としては、クエン酸及びクエン酸塩から選択される少なくとも一種が挙げられる。クエン酸としては、クエン酸無水物及びクエン酸水和物のいずれを用いてもよい。クエン酸塩としては、薬学的に許容される塩であればよく、たとえばクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム等が挙げられる。
【0016】
リン酸類としては、リン酸及びリン酸塩から選択される少なくとも一種が挙げられる。リン酸塩としては、薬学的に許容される塩であればよく、たとえばリン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等が挙げられる。
【0017】
口腔用組成物は、クエン酸類及びリン酸類のうち一種を含有していてもよいし、クエン酸類及びリン酸類のうち二種以上を組み合わせて含有していてもよい。
口腔用組成物におけるクエン酸類及びリン酸類の含有量は、特に制限されないが、たとえば、0.005質量%以上2質量%以下である。以下では、口腔用組成物における各成分の含有量について「質量%」を「%」に省略して表記する。クエン酸類及びリン酸類の含有量の上限値は、1%であることが好ましく、より好ましくは0.7%である。クエン酸類及びリン酸類の含有量の下限値は、0.01%であることが好ましく、より好ましくは0.05%である。当該範囲の上限値又は下限値は、たとえば0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9又は2%であってもよい。
【0018】
口腔用組成物は、口腔用組成物の効果を損なわない範囲であれば、クエン酸類及びリン酸類以外のpH調整剤をさらに含有していてもよい。pH調整剤の具体例としては、たとえば、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、又はこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0019】
<(B)成分>
口腔用組成物は、(B)成分として、(B1)低級ジオール及び(B2)界面活性剤のうちいずれか一方を含有していてもよいし、(B1)低級ジオール及び(B2)界面活性剤の両方を含有していてもよい。
【0020】
<(B1)成分:低級ジオール>
低級ジオールとしては、特に制限されないが、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。低級ジオールは、好ましくは、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールである。
【0021】
口腔用組成物は、低級ジオールのうち一種を含有していてもよいし、低級ジオールのうち二種以上を組み合わせて含有していてもよい。
口腔用組成物における低級ジオールの含有量は、特に制限されないが、たとえば、0.5%以上15%以下である。低級ジオールの含有量の上限値は、12%であることが好ましく、より好ましくは10%である。低級ジオールの含有量の下限値は、1%であることが好ましく、より好ましくは2%である。当該範囲の上限値又は下限値は、たとえば0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15%であってもよい。
【0022】
<(B2)成分:界面活性剤>
界面活性剤としては、特に制限されないが、たとえば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0023】
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、たとえば、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;グリセリン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレン付加係数が8~10、アルキル基の炭素数が13~15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン付加係数が10~18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。
【0024】
ノニオン系界面活性剤は、好ましくは、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル及びポリソルベートである。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油がより好ましい。ポリソルベートとしては、ポリソルベート20がより好ましい。
【0025】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
【0026】
アニオン系界面活性剤は、好ましくは、ラウリル硫酸ナトリウムである。
口腔用組成物は、界面活性剤のうち一種を含有していてもよいし、界面活性剤のうち二種以上を組み合わせて含有していてもよい。
【0027】
口腔用組成物における界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、たとえば、0.05%以上2.0%以下である。界面活性剤の含有量の上限値は、1.0%であることが好ましく、より好ましくは0.5%である。界面活性剤の含有量の下限値は、0.1%であることが好ましく、より好ましくは0.2%である。当該範囲の上限値又は下限値は、たとえば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0又は1.5%であってもよい。
【0028】
<(C)成分:ココイルアルギニンエチルPCA>
ココイルアルギニンエチルPCAは、カチオン系界面活性剤の一種であり、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩、CAE(登録商標)とも呼ばれる。ココイルアルギニンエチルPCAとしては特に制限されず、公知のココイルアルギニンエチルPCAを用いることができる。
【0029】
口腔用組成物におけるココイルアルギニンエチルPCAの含有量は、特に制限されないが、たとえば、0.005%以上0.2%以下である。ココイルアルギニンエチルPCAの含有量の上限値は、0.1%であることが好ましく、より好ましくは0.05%である。ココイルアルギニンエチルPCAの含有量の下限値は、0.01%であることが好ましく、より好ましくは0.02%である。当該範囲の上限値又は下限値は、たとえば0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09又は0.1%であってもよい。
【0030】
<その他成分>
口腔用組成物は、適用目的、形態、用途等に応じて、前述した成分以外のその他成分を含有してもよい。その他成分としては、たとえば、香料、甘味剤、湿潤剤、粘結剤、防腐剤、着色剤、キレート剤、薬効成分、基剤、研磨剤、安定化剤、が挙げられる。その他成分は、口腔用組成物に配合される公知のものを使用することができる。口腔用組成物は、上記のその他成分のそれぞれについて、一種のみを単独で含有するものであってもよいし、二種以上を組み合わせて含有するものであってもよい。
【0031】
香料の具体例としては、たとえば、メントール、カルボン酸、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、メチルアセタート、シトロネリルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、アニス油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等が挙げられる。
【0032】
甘味剤の具体例としては、たとえば、エリスリトール、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等が挙げられる。
【0033】
湿潤剤の具体例としては、たとえば、ソルビット、グリセリン、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等が挙げられる。
【0034】
粘結剤の具体例としては、たとえば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム等のセルロース誘導体、キサンタンガム等の微生物産生高分子、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、グアーガム、カラギーナン、デキストリン、寒天、ペクチン、プルラン、ジェランガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム等の天然高分子又は天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子、増粘性シリカ、ビーガム等の無機粘結剤、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン性粘結剤等が挙げられる。
【0035】
防腐剤の具体例としては、たとえば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。
【0036】
着色剤の具体例としては、たとえば、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等が挙げられる。
キレート剤の具体例としては、たとえば、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩、エデト酸カリウム塩、フィチン酸等が挙げられる。
【0037】
薬効成分の具体例としては、たとえば、酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、又はニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、又はリン酸アスコルビルマグネシウム等のビタミンC類、ピリドキシン塩酸塩等のビタミンB6類、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等の非イオン性殺菌剤、ソルビン酸等のアニオン系殺菌剤、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン系殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、アラントイン、カルバゾクロム、硝酸カリウム、パラチニット等が挙げられる。
【0038】
基剤の具体例としては、たとえば、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等が挙げられる。
【0039】
研磨剤の具体例としては、たとえば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ベンガラ、硫酸カルシウム、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0040】
安定化剤の具体例としては、たとえば、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
<適用形態、用途、及び剤形>
口腔用組成物の適用形態は、特に限定されず、たとえば、医薬品、医薬部外品、化粧品として使用することができる。口腔用組成物の用途としては、公知の用途を適宜採用することができる。たとえば、咀嚼剤、口腔内溶解剤、口腔内崩壊剤、舌ケア剤、口中清涼剤、練歯磨剤、洗口剤、含漱剤、液体歯磨剤、バイオフィルム分散剤、口臭予防剤、歯茎マッサージ剤、口腔用湿潤付与剤、舌苔除去剤、口腔内塗布剤、口腔殺菌剤、咽喉殺菌剤、口腔咽喉剤、歯周病治療剤、義歯装着剤、義歯コーティング剤、義歯安定化剤、義歯保存剤、義歯洗浄剤、インプラントケア剤等が用途として挙げられる。
【0041】
口腔用組成物の剤形は、特に限定されず、たとえば、水等の溶媒を含有することにより、軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、スプレー剤、ジェル剤、液剤、懸濁剤、ガム剤、タブレット、ドロップ等の形態(剤形)等に適用することができる。
【0042】
溶媒として用いられる水の種類は特に限定されず、たとえば蒸留水、純水、超純水、精製水、水道水等を用いることができる。
口腔用組成物が液状に構成されている場合において、水等の溶媒の含有量は、特に制限されないが、70質量%以上99.8質量%以下であることが好ましく、80質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
【0043】
口腔用組成物は、エタノール等の低級アルコールを実質的に含有していないことが好ましい。なお、「低級アルコール」は、炭素数が5以下のアルコールを意味するものとする。「実質的に含有していない」とは、不純物レベルで含有する態様を許容するものとする。
【0044】
<口腔用組成物の製造方法>
口腔用組成物は、容器に投入した各成分を、たとえば撹拌装置によって混合することで製造できる。上記容器の種類は特に制限されない。たとえば撹拌装置が備え付けられている容器でもよいし、容器と撹拌装置とが分かれていてもよい。
【0045】
本実施形態における口腔用組成物の製造方法は、以下のA工程、B工程及びC工程を備えている。なお、撹拌時間は特に制限されないが、たとえば各工程において成分を配合してから3~30分であることが好ましい。
【0046】
[A工程](A)成分と水とを配合する工程。事前に適量の水を用いて(A)成分の水溶液を調製しておくことが好ましい。
[B工程](B)成分を配合する工程。
【0047】
[C工程](C)成分を配合する工程。
本実施形態における口腔用組成物の製造方法では、混合物が入った容器に新たに成分を投入することを配合という。また、空の容器に成分を投入することも配合という。
【0048】
口腔用組成物の製造方法の一例は、A工程とC工程とを独立して行い、B工程を行った後にC工程を行う。なお、本実施形態における口腔用組成物の製造方法において、「後に」とは次のことを意味する。たとえば「B工程を行った後にC工程を行う」場合を例に説明すると、「B工程を行った後にC工程を行う」とは、C工程を行うタイミングは、B工程を行った後であれば製造開始から製造終了に至るまでのいずれのタイミングであってもよいことを意味する。すなわち、B工程を行った直後に続いてC工程を行ってもよいし、B工程とC工程との間に他の工程を行ってもよい。また、本実施形態における口腔用組成物の製造方法において、「独立」とは次のことを意味する。たとえば「A工程とC工程とを独立して」行う場合を例に説明すると、「A工程とC工程とを独立して」行うとは、A工程を行うタイミングとC工程を行うタイミングとが同時ではないことを意味する。より具体的にいえば、(A)成分を配合するタイミングと(C)成分を投入するタイミングとを異ならせることを意味する。
【0049】
具体例を挙げて説明すると、たとえば、口腔用組成物の製造方法では、まずA工程を行う。次に、B工程を行う。すなわち、(A)成分及び水が入った容器に(B)成分を投入することで(A)成分と(B)成分とを混合する。続いて、C工程を行う。これによって、(A)成分と(B)成分との混合物にさらに(C)成分を混合する。
【0050】
他の例としては、口腔用組成物の製造方法では、まずB工程を行う。次に、C工程を行う。すなわち、(B)成分が入った容器に(C)成分を投入することで(B)成分と(C)成分とを混合する。続いて、A工程を行う。これによって、(B)成分と(C)成分との混合物にさらに(A)成分を含有する水を混合する。
【0051】
C工程では、(C)ココイルアルギニンエチルPCAの水溶液を配合することが好ましい。この場合には、(C)ココイルアルギニンエチルPCAの水溶液を調製する工程を別途行う。(C)ココイルアルギニンエチルPCAの水溶液を調製する工程は、たとえば40℃程度の温水に(C)ココイルアルギニンエチルPCAの粉を溶解させることで行う。(C)ココイルアルギニンエチルPCAの水溶液を調製する工程を行うタイミングは、C工程を開始するよりも前であれば特に制限されない。
【0052】
口腔用組成物の製造方法としては、A工程とC工程とを独立して行い、B工程とC工程とを同時にD工程として行ってもよい。なお、本実施形態における口腔用組成物の製造方法において、「同時」とは次のことを意味する。たとえば「B工程とC工程とを同時に」行う場合を例に説明すると、「B工程とC工程とを同時に」行うとは、(B)成分及び(C)成分を同じタイミングで投入することを意味する。この場合の「同じタイミング」は数秒程度のずれがあることを許容してもよい。また、「B工程とC工程とを同時に」行うとは、(B)成分及び(C)成分を事前に混合した混合物を投入することを含む。
【0053】
具体例を挙げて説明すると、口腔用組成物の製造方法では、まずA工程を行う。次に、D工程を行う。これによって、(A)成分及び水が入った容器に(B)成分と(C)成分とを同時に投入する。
【0054】
(B)成分としてたとえば(B1)低級ジオールを配合する場合には、(C)成分を(B1)低級ジオールに溶解させた溶液を投入することで、(B)成分と(C)成分とを同時に投入することもできる。この場合には、(C)ココイルアルギニンエチルPCAを(B1)低級ジオールに溶解させた溶液を調製する工程を別途行う。(C)ココイルアルギニンエチルPCAを(B1)低級ジオールに溶解させた溶液を調製する工程を行うタイミングは、D工程を開始するよりも前であれば特に制限されない。
【0055】
なお、A工程では、(A)成分と他の水性成分とを同時に配合してもよい。たとえば、甘味剤及び湿潤剤等を(A)成分と同時に配合してもよい。A工程において(A)成分と同時に配合できる水性成分の具体例としては、サッカリンナトリウム、グリセリン等が挙げられる。A工程は、水性成分を配合する工程ということもできる。
【0056】
B工程では、(B)成分と他の油性成分を同時に配合してもよい。たとえば、油性の薬用成分及び香料等を同時に配合してもよい。B工程において(B)成分と同時に配合できる油性成分の具体例としては、イソプロピルメチルフェノール、チモール、メントール等が挙げられる。B工程は、油性成分を配合する工程ということもできる。
【0057】
口腔用組成物の製造方法では、口腔用組成物に配合する全ての成分を混合した後に、得られた混合物を水で希釈する工程を行ってもよい。この場合には、最終的な口腔用組成物と比較して水の含有量が少ない状態で各成分を混合する工程が行われることになる。
【0058】
<作用及び効果>
本実施形態の作用について説明する。
(A)クエン酸類及びリン酸類からなる群より選択される少なくとも一種と、(C)ココイルアルギニンエチルPCAと、を含有する口腔用組成物を製造する際に、析出物が発生することがある。たとえば、(A)成分と(C)成分とを直接混合すると、白色の析出物が発生することを確認した。製造の過程で発生した当該析出物は、難溶性を示した。
【0059】
本実施形態の口腔用組成物の製造方法は、(B)成分を配合していない段階で(C)成分を(A)成分に混ぜ合わせないようにしている。各成分を配合する工程を特定の順序で行う口腔用組成物の製造方法によれば、上記析出物を発生させることなく、(A)成分と(C)成分とを含有する口腔用組成物を製造できる。
【0060】
本実施形態の効果について説明する。
(1)口腔用組成物を製造する過程で析出物が発生すると、析出物を溶解させるために、たとえば撹拌時間を長く確保する必要がある。発生した析出物を十分に溶解させるために撹拌時間を長くするほど口腔用組成物の生産効率が低下するという問題がある。この点、本実施形態の口腔用組成物の製造方法によれば、析出物の発生を抑制できるため、生産効率が低下することがない。
【0061】
(2)(C)ココイルアルギニンエチルPCAを(B1)低級ジオールに溶解させた溶液を混合することによって(C)成分を混合する口腔用組成物の製造方法によれば、析出物の発生を好適に抑制できる。
【0062】
(3)口腔用組成物が(B1)低級ジオールとしてプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールのうち少なくとも一方を含有する場合には、本実施形態の口腔用組成物の製造方法によって析出物の発生を好適に抑制できる。
【0063】
(4)口腔用組成物が(B2)界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ポリソルベート、及びラウリル硫酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を含有する場合には、析出物の発生を好適に抑制できる。
【0064】
(5)仮に、口腔用組成物がエタノール等の低級アルコールを含有している場合には、低級アルコールが口腔用組成物の使用者に刺激感を与える要因になりやすい。本実施形態の口腔用組成物の製造方法によれば、低級アルコールを含有していない口腔用組成物を製造できる。口腔用組成物が低級アルコールを含有していないことによって、口腔用組成物の使用者に刺激を与えにくい。
【0065】
(6)本実施形態の口腔用組成物の製造方法によれば、(C)ココイルアルギニンエチルPCAが発揮する抗菌作用を奏する口腔用組成物を製造できる。
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0066】
・上記実施形態では、エタノール等の低級アルコールを含有していない口腔用組成物について例示した。口腔用組成物としては、溶媒として低級アルコールを用いてもよい。溶媒として水及び低級アルコールの両方を用いることもできる。この場合における口腔用組成物の製造方法では、低級アルコールは、たとえばA工程において(A)成分と同時に配合することができる。
【0067】
(C)成分は、たとえばエタノールに溶解しやすい。エタノールを配合することによって、析出物の発生を好適に抑制することができる。一例として、(B)成分として(B2)界面活性剤のみを含有する口腔用組成物に低級アルコールを配合することができる。
【0068】
・口腔用組成物の製造方法は、B工程として、(B1)成分を配合するB1工程と、該B1工程とは独立した工程として(B2)成分を配合するB2工程と、を含んでいてもよい。この場合の口腔用組成物は、(B)成分として(B1)低級ジオールより選択される少なくとも一種及び(B2)界面活性剤より選択される少なくとも一種の両方を含有するものである。
【0069】
上記製造方法の一例は、B1工程及びB2工程のうち少なくとも一方の工程を行った後にC工程を行う。たとえば、次のような製造方法を採用できる。まずA工程を行う。次に、B1工程を行う。続いて、C工程を行う。その後に、B2工程を行う。
【0070】
上記製造方法の他の例としては、B1工程及びB2工程のうち一方の工程とC工程とを同時に行うこともできる。たとえば、次のような製造方法を採用できる。まずA工程を行う。次に、D工程としてB1工程とC工程とを同時に行う。続いて、B2工程を行う。
【実施例0071】
口腔用組成物及び口腔用組成物の製造方法について、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、口腔用組成物及び口腔用組成物の製造方法は、実施例欄に記載の構成に限定されるものではない。
【0072】
表1及び表2は、口腔用組成物の処方例を示す。表中の数値は、最終的な口腔用組成物に占める各成分の含有量(質量%)を示す。口腔用組成物は、残部の水と合計して100質量%となるようにしている。表中の「-」は、該当成分を含有していないことを示す。なお、表2に示すように処方13は、クエン酸類及びリン酸類のいずれも含有していない。すなわち、処方13は、(A)成分を含有していない。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
表3に実施例1~24、比較例1~12及び参考例1~3を示す。表中の処方1~13は、表1及び表2に示す各処方に対応する。
【0076】
【表3】
【0077】
表中の製法1~3について説明する。
製法1は、まずA工程を行う。製法1は、次に、B工程を行う。製法1は、続いて、C工程を行う。製法2は、まずA工程を行う。製法2は、次に、C工程を行う。製法2は、続いて、B工程を行う。製法3は、まずB工程を行う。製法3は、次に、C工程を行う。製法3は、続いて、A工程を行う。
【0078】
表3に示すように、実施例1~24は、製法1又は製法3によって処方1~12の口腔用組成物を製造した例である。比較例1~12は、製法2によって処方1~12の口腔用組成物を製造した例である。参考例1~3は、製法1、製法2及び製法3によって処方13の口腔用組成物を製造した例である。なお、(A)成分を含有していない処方13を採用する参考例1~3におけるA工程は、「水性成分を配合する工程」に置き換えることとする。
【0079】
<評価>
実施例1~24、比較例1~12及び参考例1~3を以下のように評価した。A工程、B工程及びC工程の全てを行った直後において混合物を観察して析出物の有無を確認した。評価は、三名の評価者によって行った。評価基準は以下の通りである。評価結果は、全ての評価者で一致した。結果を表3に示す。
【0080】
・評価基準
○(良好):析出物が発生していない。
×(不可):析出物が発生している。
【0081】
<結果>
製法1又は製法3によって製造した実施例1~24では、全ての例で析出物が発生しなかった。
【0082】
製法2によって製造した比較例1~12は、全ての例で析出物が発生した。
参考として、クエン酸類及びリン酸類のいずれも混合していない参考例1~3では、析出物が発生しなかった。特に、参考例2は、製法2によって製造した例であるが、析出物が発生しなかった。
【0083】
この結果から、クエン酸類及びリン酸類のうち少なくとも一種と(C)成分とを含有する口腔用組成物を製造する際に、析出物が発生するおそれがあると考えられる。析出物が発生するおそれのある処方であっても、製法1又は製法3を採用することによって析出物の発生を抑制できることがわかる。
【0084】
以上のことから、(B)成分を配合していない段階で(C)成分を(A)成分に混ぜ合わせないようにした口腔用組成物の製造方法によれば、析出物を発生させることなく、(A)成分と(C)成分とを含有する口腔用組成物を製造できることがわかる。