(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084226
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】エネルギー予測装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20240618BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240618BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240618BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240618BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240618BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240618BHJP
【FI】
G01C21/26 C
G08G1/00 D
B60L3/00 S
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198385
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100142918
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 貴志
(72)【発明者】
【氏名】南條 弘行
(72)【発明者】
【氏名】池本 宣昭
【テーマコード(参考)】
2F129
5H125
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB20
2F129DD46
2F129FF20
2F129FF32
2F129FF65
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC08
5H125CA05
5H125EE27
5H125EE51
5H125EE52
5H125EE55
5H125EE61
5H181AA01
5H181FF10
5H181FF13
(57)【要約】
【課題】エネルギー消費の傾向が変動した場合であっても、精度の高いエネルギー消費予測が可能なエネルギー予測装置を提供する。
【解決手段】エネルギー予測装置10は、走行経路上を車両が走行する際に必要とする基準エネルギーを特定する基準エネルギー情報を保持する保持部103と、対象車両が走行経路を走行している際に実際に使用する実エネルギーを特定する実エネルギー情報を生成する生成部101と、実エネルギーと基準エネルギーとの乖離状態を特定する乖離指標に基づいて基準エネルギーを補正するものであって、補正後の基準エネルギーの予測精度が向上する相関性の高いタイミングを補正タイミングとして特定し、特定した補正タイミングで基準エネルギー情報を補正し、走行経路を走行完了するまでに対象車両が使用する予測エネルギーを特定する予測エネルギー情報を生成する補正部102と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路上を車両が走行する際に必要とする基準エネルギーを特定する基準エネルギー情報を保持する保持部(103)と、
消費エネルギーを予測する対象となる対象車両が走行経路を走行している際に実際に使用する実エネルギーを特定する実エネルギー情報を生成する生成部(101)と、
実エネルギーと基準エネルギーとの乖離状態を特定する乖離指標に基づいて基準エネルギーを補正するものであって、補正後の基準エネルギーの予測精度が向上する相関性の高いタイミングを補正タイミングとして特定し、特定した補正タイミングで基準エネルギー情報を補正し、走行経路を走行完了するまでに前記対象車両が使用する予測エネルギーを特定する予測エネルギー情報を生成する補正部(102)と、を備えるエネルギー予測装置。
【請求項2】
前記保持部は、基準エネルギー情報として、走行経路上の第1地点までに車両が走行する際に必要とする基準エネルギーを特定する情報を保持し、
前記補正部は、走行経路上の前記第1地点よりも手前の第2地点までに車両が必要とする基準エネルギーと、前記第2地点までに前記対象車両が実際に使用した実エネルギーと、の差異を前記乖離指標とし、前記乖離指標が所定値以上の場合に、基準エネルギー情報を補正し予測エネルギー情報を生成する、請求項1に記載のエネルギー予測装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記第2地点までに車両が使用した実績値としての実エネルギーに対応する情報として、前記第1地点までに車両が使用した実績値としての実エネルギーを示す相関情報を保持し、
前記補正部は、前記相関情報に基づいて前記相関性を判断する、請求項2に記載のエネルギー予測装置。
【請求項4】
前記補正部は、前記第2地点における交通状態の変動量が他の地点よりも大きいと判断した場合に、前記第2地点を補正位置として特定する、請求項2又は3に記載のエネルギー予測装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記第2地点における車速パターンの変動量が他の地点よりも大きいと判断した場合に、前記第2地点を補正位置として特定する、請求項2又は3に記載のエネルギー予測装置。
【請求項6】
前記補正部は、前記第2地点までの基準エネルギーに対する実エネルギーの乖離が所定より大きいと判断した場合に、前記第2地点を補正位置として特定する、請求項2又は3に記載のエネルギー予測装置。
【請求項7】
前記保持部は、基準エネルギーを算定する際に用いる情報であって、走行経路上の第1地点までに車両が走行する基準車速パターンを特定する情報を保持し、
前記補正部は、走行経路上の前記第1地点よりも手前の第2地点までにおける基準車速パターンと、前記第2地点までに前記対象車両が実際に走行した実車速パターンとの差異を前記乖離指標とし、前記乖離指標が所定値以上の場合に、基準エネルギー情報を補正し予測走行エネルギー情報を生成する、請求項1に記載のエネルギー予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エネルギー予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の消費エネルギーを推定する装置として、下記特許文献1に記載のものが知られている。下記特許文献1に記載されているエネルギー消費量計算装置は、車両の走行行程を複数の区間に分割し、区間ごとに予測値に対する実績値に基づいてエネルギー消費量を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、区間ごとに予測値に対する実績値に基づいてエネルギー消費量を補正しているが、ある区間のエネルギー消費の傾向が次の区間のエネルギー消費の傾向とは異なることが多々あり、このような補正を行っても制度の高い補正値が得られるとは限らない。
【0005】
本開示は、エネルギー消費の傾向が変動した場合であっても、精度の高いエネルギー消費予測が可能なエネルギー予測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、エネルギー予測装置であって、走行経路上を車両が走行する際に必要とする基準エネルギーを特定する基準エネルギー情報を保持する保持部(103)と、消費エネルギーを予測する対象となる対象車両が走行経路を走行している際に実際に使用する実エネルギーを特定する実エネルギー情報を生成する生成部(101)と、実エネルギーと基準エネルギーとの乖離状態を特定する乖離指標に基づいて基準エネルギーを補正するものであって、補正後の基準エネルギーの予測精度が向上する相関性の高いタイミングを補正タイミングとして特定し、特定した補正タイミングで基準エネルギー情報を補正し、走行経路を走行完了するまでに対象車両が使用する予測エネルギーを特定する予測エネルギー情報を生成する補正部(102)と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、エネルギー消費の傾向が変動した場合であっても、精度の高いエネルギー消費予測が可能なエネルギー予測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るエネルギー予測装置を説明するためのブロック構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されるエネルギー予測装置による情報処理フローを説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3は、走行中の車両から取得した位置情報と電池残量との対応データの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、車速推定データの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、電気自動車におけるエネルギー推定について説明するための図である。
【
図6】
図6は、エネルギー推定における電気系効率の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、エンジン自動車におけるエネルギー推定について説明するための図である。
【
図8】
図8は、エネルギー推定におけるエンジン効率の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、推定した基準エネルギーの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、消費エネルギーについての相関関係の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、
図1に示されるエネルギー予測装置を用いた情報処理フローを説明するためのフローチャートである。
【
図12】
図12は、消費エネルギーの予測について説明するための図である。
【
図13】
図13は、補正位置を決定する一例を説明するための図である。
【
図14】
図14は、補正位置を決定する一例を説明するための図である。
【
図15】
図15は、消費エネルギーの予測について説明するための図である。
【
図16】
図16は、補正位置を決定する一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
図1を参照しながら、本実施形態に係るエネルギー予測装置10について説明する。エネルギー予測装置10は、ハードウエア的な構成要素として、CPU(Central Processing Unit)といった演算部、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)といった記憶部、データの授受を行うためのインターフェイス部を備えるコンピュータとして構成されている。
【0011】
続いて、エネルギー予測装置10の機能的な構成要素について説明する。エネルギー予測装置10は、機能的な構成要素として、生成部101と、補正部102と、保持部103と、通知部104と、を備えている。
【0012】
生成部101は、消費エネルギーを予測する対象となる対象車両が走行経路を走行している際に実際に使用する実エネルギーを特定する実エネルギー情報を生成する部分である。
【0013】
保持部103は、走行経路上を車両が走行する際に必要とする基準エネルギーを特定する基準エネルギー情報を保持する部分である。保持部103は、基準エネルギー情報として、走行経路上の第1地点までに車両が走行する際に必要とする基準エネルギーを特定する情報を保持することができる。保持部103は、第2地点までに車両が使用した実績値としての実エネルギーに対応する情報として、第1地点までに車両が使用した実績値としての実エネルギーを示す相関情報を保持することができる。保持部103は、基準エネルギーを算定する際に用いる情報であって、走行経路上の第1地点までに車両が走行する基準車速パターンを特定する情報を保持することができる。
【0014】
補正部102は、実エネルギーと基準エネルギーとの乖離状態を特定する乖離指標に基づいて基準エネルギーを補正する部分である。補正部102は、補正後の基準エネルギーの予測精度が向上する相関性の高いタイミングを補正タイミングとして特定する。補正部102は、特定した補正タイミングで基準エネルギー情報を補正し、走行経路を走行完了するまでに前記対象車両が使用する予測エネルギーを特定する予測エネルギー情報を生成する。
【0015】
補正部102は、走行経路上の第1地点よりも手前の第2地点までに車両が必要とする基準エネルギーと、第2地点までに対象車両が実際に使用した実エネルギーと、の差異を乖離指標とすることができる。補正部102は、乖離指標が所定値以上の場合に、基準エネルギー情報を補正し予測エネルギー情報を生成することができる。補正部102は、相関情報に基づいて相関性を判断することができる。
【0016】
補正部102は、第2地点における交通状態の変動量が他の地点よりも大きいと判断した場合に、第2地点を補正タイミングとして特定することができる。補正部102は、第2地点における車速パターンの変動量が他の地点よりも大きいと判断した場合に、第2地点を補正タイミングとして特定することができる。補正部102は、第2地点までの基準エネルギーに対する実エネルギーの乖離が所定より大きいと判断した場合に、第2地点を補正タイミングとして特定することができる。
【0017】
補正部102は、走行経路上の第1地点よりも手前の第2地点までにおける基準車速パターンと、第2地点までに前記対象車両が実際に走行した車速パターンとの差異を乖離指標とすることができる。補正部102は、乖離指標が所定値以上の場合に、基準エネルギー情報を補正し予測走行エネルギー情報を生成することができる。
【0018】
通知部104は、補正部102が生成した予測エネルギー情報を通知する部分である。通知部104が予測エネルギー情報を通知する対象は、車両30としてもよく、他の通知先としてもよい。
【0019】
車両特性格納部201は、車両特性情報を格納する部分である。車両特性情報については後に詳述する。走行経路格納部202は、走行経路情報を格納する部分である。走行経路情報については後に詳述する。
【0020】
エネルギー予測装置10が予測対象とする車両30は、ネットワークNWと繋がっており、車両30の走行データはネットワークNWを介してエネルギー予測装置10に送信され、保持部103に格納される。
【0021】
車両30は、状態検出部301と、車速検出部302と、通信部303と、電池ECU304と、を備えている。状態検出部301は、電池ECUから車両30の走行に用いられる電池の充電状態SOCを取得する。充電状態SOCは、通信部303が走行データ格納部204に送信する。状態検出部301は、車両30の位置情報も検出する。位置情報は、通信部303が走行データ格納部204に送信する。車速検出部302は、車両30の車速を検出する。車速は、通信部303が走行データ格納部204に送信する。
【0022】
続いて、
図2を参照しながら、エネルギー予測装置10による情報処理フローについて説明する。ステップS001では、保持部103が、走行中の車両30から位置情報と電池残量E
bat(t)を取得し保持する。走行中の車両30からは、一定若しくは変動する時間間隔で継続的に位置情報と電池残量E
bat(t)とがエネルギー予測装置10に送信される。保持部103には、複数回取得された位置情報及び電池残量E
bat(t)が保持される。一例として、
図3に示されるように、位置情報と電池残量E
bat(t)とが関連付けられたマップとして保持されてもよい。ステップS001の処理が終了すると、プロセスはステップS002に進む。
【0023】
ステップS002では、生成部101が、走行経路上を車両が走行する際に必要とする基準エネルギーEtotal_prd_baseを特定する基準エネルギー情報を生成する。基準エネルギー情報は、ステップS001で保持した位置情報と電池残量Ebat(t)とが関連付けられたマップに基づいて、減少する電池残量Ebat(t)を走行する際に必要とするエネルギーとして、基準エネルギーEtotal_prd_baseを特定する基準エネルギー情報を生成してもよい。
【0024】
生成部101は、代表的な車速パターンv(t)を推定しておき、車速パターンv(t)に基づいて基準エネルギーE
total_prd_baseを特定する基準エネルギー情報を生成してもよい。
図4に車速パターンv(t)の一例を示す。
【0025】
走行抵抗Fdrv(t)は、次式(f01)を用いて算出される。
Fdrv(t)=Wa(t)+0.5*ρ*Cd*Av2(t)+μWg+Wgsinθ(t) ・・・(f01)
t:時刻
W:車両総重量
a(t):時刻tにおける加速度
ρ:空気密度
Cd:空気抵抗係数
A:前面投影面積
v(t):時刻tにおける速度
μ:転がり抵抗係数
g:重力加速度
θ(t):時刻tにいる地点と時刻t-1にいる地点間の勾配
【0026】
空気密度ρは、固定値1.293kg/m3としてもよい。空気密度ρは、気温から算出してもよい。重力加速度gは、固定値9.8m/s2としてもよい。勾配θ(t)は、走行経路の緯度経度情報及び標高情報から求めることができる。このような走行経路に関する情報は走行経路情報として、走行経路格納部202に格納されている。車両パラメータは、車両特性格納部201に格納されている情報を読み出す。例えば、次のような値が用いられる。
W:2,000kg
Cd:0.3
A:5m2
μ:0.1
【0027】
走行馬力Pdrv(t)は、次式(f02)を用いて算出される。
Pdrv(t)=Fdrv(t)*v(t) ・・・(f02)
【0028】
図5に、電気自動車の場合のシステム例を示す。
図5に例示されているシステムでは、電気系(MG-INV)のシステム効率をR
elecとし、機械系の効率をR
mechとしている。機械系の効率R
mechは、70%といった固定値を用いることができる。機械系の効率R
mechは、機械系に入力されるエネルギーが効率R
mechで駆動輪に伝達され、走行馬力P
drv(t)を発生することを示している。従って、機械系に入力されるエネルギーP´
drv(t)は、次式(f03)で算出することができる。
P´
drv(t)=P
drv(t)/R
mech ・・・(f03)
【0029】
電気系の効率R
elecは、電気系から機械系に入力されるエネルギーとの関数で、例えば
図6に例示するように定められる。電気系の効率R
elecは、機械系に入力されるエネルギーP´
drv(t)の関数であり、次式(f04)で算出することができる。
R
elec=f(P´
drv(t)) ・・・(f04)
【0030】
走行用の仕事率P´´drv(t)は、次式(f05)で算出することができる。
P´´drv(t)=P´drv(t)/Relec(P´drv(t)) ・・・(f05)
【0031】
式(f05)を時間tまで積算すると、走行エネルギーEdrv_prd_baseは、次式(f06)で算出することができる。尚、P´´drv(t)<0のときは、回生エネルギーとして電池に蓄電される。
Edrv_prd_base=Σ(P´´drv(t)*(t―(t-1))) ・・・(f06)
【0032】
エアコンや補機類駆動用の仕事率をPother(t)とする。Pother(t)は、5kWといった固定値としてもよい。Pother(t)を時間tまで積算すると、走行外エネルギーEother_prd_baseは、次式(f07)で算出することができる。
Eother_prd_base=Σ(Pother(t)*(t―(t-1))) ・・・(f07)
【0033】
式(f06)と式(f07)から時刻tまでの総エネルギー量は、次式(f08)で算出することができる。
Etotal_prd_base(t)=Edrv_prd_base(t)+Eother_prd_base(t)・・・(f08)
【0034】
本実施形態は、電気自動車だけではなくエンジン自動車でも対応することができる。
図7にエンジン自動車の場合のシステム例を示す。
図7に例示されているシステムでは、エンジン効率をR
engとし、機械系の効率をR
mechとしている。機械系の効率R
mechは、70%といった固定値を用いることができる。機械系の効率R
mechは、機械系に入力されるエネルギーが効率R
mechで駆動輪に伝達され、走行馬力P
drv(t)を発生することを示している。従って、機械系に入力されるエネルギーP´
drv(t)は、次式(f09)で算出することができる。
P´
drv(t)=P
drv(t)/R
mech ・・・(f09)
【0035】
エンジンからは走行用のエネルギーに加えて、エアコンや補機類を駆動するエネルギーも供給されている。エアコンや補機類の駆動に必要となるエネルギーをPother(t)とする。Pother(t)は、5kWといった固定値としてもよい。
【0036】
エンジン効率R
engは、エンジンから機械系に入力されるエネルギー及び補機駆動のエネルギーとの関数で、例えば
図8に例示するように定められる。エンジン効率R
engは、P´
drv(t)+P
other(t)の関数であり、次式(f10)で算出することができる。
R
eng=g(P´
drv(t)+P
other(t)) ・・・(f10)
【0037】
式(f09)と式(f10)とを足し合わせて、次式(f11)及び次式(f12)により総エネルギー量として予測する。
Psum(t)=P´drv(t)+Pother(t) ・・・(f11)
P´sum(t)=Psum(t)/Reng(Psum(t)) ・・・(f12)
【0038】
エンジン自動車では回生エネルギーの蓄電を行わないので、正の数値のみを対象とする。
P´´sum(t)=P´sum(t)(P´sum(t)>0) ・・・(f13)
【0039】
P´´sum(t)を時間積算し、必要エネルギー量Etotal_prd_baseを次式(f14)で算出する。
Etotal_prd_base(t)=Σ(P´´sum(t)*(t―(t-1))) ・・・(f14)
【0040】
尚、その内訳については、次のように予測することができる。走行エネルギーについては次式(f15)で、その他のエネルギーについては次式(f16)で示す。
Edrv_prd_base(t)=Etotal_prd_base(t)*(P´drv(t)/P´sum(t)) ・・・(f15)
Eother_prd_base(t)=Etotal_prd_base(t)-Edrv_prd_base(t)・・・(f16)
【0041】
図9に、生成部101が生成した基準エネルギーE
total_prd_baseと位置xとの関係の一例を示す。
図2におけるステップS002の処理が終了すると、プロセスはステップS003に進む。
【0042】
ステップS003では、補正部102が相関係数knを算出する。相関係数knは、ターゲット地点である第1地点までの消費エネルギーと、第1地点よりも前の第2地点(地点nとも称する)までの消費エネルギーとの相関関係を示す係数である。
【0043】
図10(A)は、地点aまでの消費エネルギーと、ターゲット地点までの消費エネルギーとの相関関係を例示するものである。
図10(A)に例示する相関関係では、地点aまでの消費エネルギーがほぼ同じであってもターゲット地点までの消費エネルギーが異なることもある一方、地点aまでの消費エネルギーが大きく異なってもターゲット地点までの消費エネルギーがほぼ同じ場合もあるので、相関係数kaは低くなる。
【0044】
図10(B)は、地点bまでの消費エネルギーと、ターゲット地点までの消費エネルギーとの相関関係を例示するものである。
図10(B)に例示する相関関係では、地点bまでの消費エネルギーとターゲット地点までの消費エネルギーとが一対一の対応関係にあり、地点bまでの消費エネルギーが増えるとターゲット地点までの消費エネルギーも増える関係にあるので、相関係数kbは高くなる。
【0045】
図2におけるステップS003の処理が終了すると、プロセスはステップS004に進む。ステップS004では、補正部102が補正位置を決定する。補正部102は、相関係数knが最大となる地点を補正位置とすることができる。補正部102は、相関係数knが所定値(例えば、0.6)以上となる複数の地点を補正位置とすることもできる。
【0046】
続いて、
図11を参照しながら、消費エネルギーを予測する対象となる対象車両が走行経路を走行している場合の補正処理について説明する。
【0047】
ステップS015では、生成部101が、走行経路上を車両が走行する際に必要とする基準エネルギーEtotal_prd_baseを特定する基準エネルギー情報を生成する。ステップS015の処理はステップS002の処理と同様であるので説明を省略する。ステップS015の処理が終了すると、プロセスはステップS016に進む。
【0048】
ステップS016では、補正部102が、対象車両が補正位置に到達したか否かを判断する。対象車両が補正位置に到達していない場合(ステップS016:NO)、ステップS016の判断を繰り返す。
【0049】
対象車両が補正位置に到達した場合(ステップS016:YES)、補正部102が補正用パラメータRirを算出する。到達した補正位置をxiとする。補正用パラメータRirは、次式(f17)で算出する。
Rir=Etotal_use(xi)/Etotal_prd_base(xi) ・・・(f17)
補正用パラメータRirは、Etotal_use(xi)とEtotal_prd_base(xi)との比によるパラメータである。
【0050】
補正部102は、次式(f18)によって、E
total_use(x
i)とE
total_prd_base(x
i)との差による補正用パラメータR
idを算出してもよい。
R
id=E
total_use(x
i)-E
total_prd_base(x
i) ・・・(f18)
図12に示されるように、E
total_prd_base(x
i)は、地点x
iまでの基準エネルギーである。E
total_use(x
i)は、地点x
iまでに実際に使用した消費エネルギーである実エネルギーである。補正用パラメータR
iを算出するステップS016の処理が終了すると、プロセスはステップS017に進む。
【0051】
ステップS017では、補正部102が基準エネルギー情報を補正する。補正部102は、補正用パラメータR
irを用い次式(f19)により基準エネルギーを補正した予測エネルギーE
total_prd_base_cor(x
end)を算出する。
E
total_prd_base_cor(x
end)=R
ir×E
total_prd_base(x
end) ・・・(f19)
図12に示されるように、E
total_prd_base(x
end)は、地点x
endまでの基準エネルギーである。
【0052】
補正部102は、補正用パラメータRidを用い次式(f20)により基準エネルギーを補正した予測エネルギーEtotal_prd_base_cor(xend)を算出してもよい。
Etotal_prd_base_cor(xend)=Rid+Etotal_prd_base(xend) ・・・(f20)
ステップS017の処理が終了すると、プロセスはステップS018に進む。
【0053】
ステップS018では、通知部104が予測エネルギーEtotal_prd_base_cor(xend)を通知する。通知部104の通知先は、指示されたユーザでもよく、指示されたシステムでもよい。
【0054】
補正位置の決定手法は
図2を参照しながら説明したものに限られない。補正位置の決定手法の別例について説明する。
【0055】
補正位置の決定手法の第1別例について説明する。
図2のステップS002に相当する処理において、保持部103に交通情報を保持する。交通情報は、交通流量を含む情報である。交通流量は、例えばある地点において通過する車両の数を所定時間積算した値である。位置xと交通流量の変動量をグラフにすると、一例として
図13に示されるようなグラフとなる。
図13に示される例では、例えば地点x
iでは、交通流量が10台/時間の時間帯もあれば、交通流量が300台/時間の時間帯もあり、交通流量の変動量が多くなっている。例えば、地点x
i及び地点x
j以外の地点では、交通流量が20台/時間の時間帯から交通流量が25台/時間の時間帯までで収まっており、交通流量の変動量が少なくなっている。
図13に示される例では、地点x
iと地点x
jにおいて交通流量の変動量が大きくなっているので、地点x
iと地点x
jを補正位置として決定する(
図2のステップS004)。
【0056】
補正位置の決定手法の第2別例について説明する。
図2のステップS002に相当する処理において、保持部103に車速パターンデータを保持する。車速パターンデータは、複数の車両から送信される車速パターンを集積したデータである。車速パターンの変動量をグラフにすると、一例として
図14に示されるようなグラフとなる。
【0057】
図14に例示される車速パターンデータは、説明を簡便にするため2パターンの車速パターンを例示している。上方の車速パターンでは、区間iで2回の加減速を行っており、区間jで3回の加減速を行っている。下方の車速パターンでは、区間iで1回の加減速を行っており、区間jで2回の加減速を行っている。区間ごとに車速パターンの加減速回数及び停車回数を積算すると、区間iでは3回となり、区間jでは5回となる。区間i及び区間jでの加減速回数及び停車回数は他の区間よりも多くなるので、区間i内の地点x
iと区間j内の地点x
jを補正位置として決定する。
【0058】
補正位置の決定手法の第3別例について説明する。
図11のステップS015に相当する処理において、生成部101が、E
total_prd_baseを特定する基準エネルギー情報を生成する。補正部102が、地点x
iまでに実際に使用した消費エネルギーである実エネルギーE
total_use(x
i)を取得する。補正部102は、地点x
iまでの基準エネルギーE
total_prd_base(x
i)と、実エネルギーE
total_use(x
i)とを比較し、乖離指標としての乖離量を算出する。乖離量は、基準エネルギーE
total_prd_base(x
i)と実エネルギーE
total_use(x
i)との比でもよく差でもよい。
図15に示されるように、補正部102は乖離量が所定量を超えた場合に、地点x
endまでの基準エネルギーE
total_prd_base(x
end)を補正し、予測エネルギーE
total_prd_base_cor(x
end)を算出する。
【0059】
補正位置の決定手法の第4別例について説明する。保持部103に保持されている想定車速パターンである基準車速パターンと、実際の車速パターンである実車速パターンとの乖離量を積算し、所定値を超えた地点を補正位置とする。
図16に示される例では、
図16(A)が車速パターンの一例で、
図16(B)が乖離量の一例である。
図16(A)では、破線が基準車速パターンであり、実線が実車速パターンである。破線の基準車速パターンと実線の実車速パターンとの乖離量を積算すると、
図16(B)の乖離量データを得ることができる。
【0060】
[付記]下記付記1から7は、技術的に矛盾しない限り任意に組合せ可能である。
【0061】
[付記1]走行経路上を車両が走行する際に必要とする基準エネルギーを特定する基準エネルギー情報を保持する保持部103と、
消費エネルギーを予測する対象となる対象車両が走行経路を走行している際に実際に使用する実エネルギーを特定する実エネルギー情報を生成する生成部101と、
実エネルギーと基準エネルギーとの乖離状態を特定する乖離指標に基づいて基準エネルギーを補正するものであって、補正後の基準エネルギーの予測精度が向上する相関性の高いタイミングを補正タイミングとして特定し、特定した補正タイミングで基準エネルギー情報を補正し、走行経路を走行完了するまでに前記対象車両が使用する予測エネルギーを特定する予測エネルギー情報を生成する補正部102と、を備えるエネルギー予測装置10。
【0062】
付記1によれば、補正後の基準エネルギーの予測精度が向上する相関性の高いタイミングを補正タイミングとして特定するので、エネルギー消費の傾向が変動した場合であっても、この補正タイミングで基準エネルギー情報を補正して予測エネルギー情報を生成することで精度の高いエネルギー消費予測が可能となる。
【0063】
[付記2]前記保持部103は、基準エネルギー情報として、走行経路上の第1地点までに車両が走行する際に必要とする基準エネルギーを特定する情報を保持し、
前記補正部102は、走行経路上の前記第1地点よりも手前の第2地点までに車両が必要とする基準エネルギーと、前記第2地点までに前記対象車両が実際に使用した実エネルギーと、の差異を前記乖離指標とし、前記乖離指標が所定値以上の場合に、基準エネルギー情報を補正し予測エネルギー情報を生成する、付記1に記載のエネルギー予測装置10。
【0064】
付記2によれば、基準エネルギーと実エネルギーとの差異を乖離指標とし、乖離指標が所定値以上の場合に、基準エネルギーを補正して予測エネルギー情報を生成するので、補正タイミングであっても乖離指標が所定以上とならない場合は補正を行わないことも可能であり、より精度の高いエネルギー消費予測が可能となる。
【0065】
[付記3]前記保持部103は、前記第2地点までに車両が使用した実績値としての実エネルギーに対応する情報として、前記第1地点までに車両が使用した実績値としての実エネルギーを示す相関情報を保持し、
前記補正部102は、前記相関情報に基づいて前記相関性を判断する、付記2に記載のエネルギー予測装置10。
【0066】
付記3によれば、実績値としての実エネルギーに基づいて第2地点を補正位置とすべきか否かの相関性を判断するので、より精度の高いエネルギー消費予測が可能となる。
【0067】
[付記4]前記補正部102は、前記第2地点における交通状態の変動量が他の地点よりも大きいと判断した場合に、前記第2地点を補正位置として特定する、付記2又は3に記載のエネルギー予測装置10。
【0068】
付記4によれば、交通状態の変動量が他の地点よりも大きい第2地点を補正位置として特定するので、交通状態の変動量を反映させた補正が可能となり、より精度の高いエネルギー消費予測が可能となる。
【0069】
[付記5]前記補正部102は、前記第2地点における車速パターンの変動量が他の地点よりも大きいと判断した場合に、前記第2地点を補正位置として特定する、付記2から付記4のいずれかに記載のエネルギー予測装置10。
【0070】
付記5によれば、車速パターンの変動量が他の地点よりも大きい第2地点を補正位置として特定するので、車速パターンの変動量を反映させた補正が可能となり、より精度の高いエネルギー消費予測が可能となる。
【0071】
[付記6]前記補正部102は、前記第2地点までの基準エネルギーに対する実エネルギーの乖離が所定より大きいと判断した場合に、前記第2地点を補正位置として特定する、付記2から付記5のいずれかに記載のエネルギー予測装置10。
【0072】
付記6によれば、基準エネルギーに対する実エネルギーの乖離が所定より大きい第2地点を補正位置として特定するので、予め補正位置を特定することを必要とせず、基準エネルギーに対して時々刻々得られる実エネルギーの乖離が大きくなった第2地点を補正位置として特定することが可能となる。
【0073】
[付記7]前記保持部103は、基準エネルギーを算定する際に用いる情報であって、走行経路上の第1地点までに車両が走行する基準車速パターンを特定する情報を保持し、
前記補正部102は、走行経路上の前記第1地点よりも手前の第2地点までにおける基準車速パターンと、前記第2地点までに前記対象車両が実際に走行した実車速パターンとの差異を前記乖離指標とし、前記乖離指標が所定値以上の場合に、基準エネルギー情報を補正し予測走行エネルギー情報を生成する、付記1から付記6のいずれかに記載のエネルギー予測装置10。
【0074】
付記7によれば、基準車速パターン対する実車速パターンの乖離が所定より大きい第2地点を補正位置として特定するので、予め補正位置を特定することを必要とせず、基準車速パターンに対して時々刻々得られる実車速パターンの乖離が大きくなった第2地点を補正位置として特定することが可能となる。
【0075】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、1つ乃至は複数の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することで提供される専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと1つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ乃至は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0076】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0077】
10:エネルギー予測装置
101:生成部
102:補正部
103:保持部