(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084241
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】車両の水素補給システム及び車両の水素補給方法
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20240618BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20240618BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/00 301Z
G08B21/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198400
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】アマラシンフ スーウイン インヅューラ
【テーマコード(参考)】
3E172
5C086
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD03
3E172BD05
3E172DA47
3E172EA02
3E172EA14
3E172EA22
3E172EA23
3E172EA24
3E172EA35
3E172EA50
3E172JA01
3E172JA08
3E172KA22
3E172KA23
5C086AA05
5C086AA34
5C086AA43
5C086BA22
5C086CA15
5C086CA30
5C086CB01
5C086DA40
5C086FA06
5C086FA12
5C086FA13
5C086FA17
5C086FA18
(57)【要約】
【課題】水素ガスの補給時に、ドライバーが車両の状態を確実に確認できるようにして、安全に水素ガスの補給を実施できる車両の水素補給システムを提供する。
【解決手段】水素ガスを燃料とした車両1のボデー5に形成され、水素ガス充填用ノズル101と接続される水素ガス充填口43が内部に設けられ、リッド42により車両1の外部から覆われる水素ガス充填部4と、車両1の異常状態を含む車両1の状態を取得する統合制御部6と、水素ガス充填部4内に設けられ、統合制御部6によって取得された車両1の状態に基づいて、車両1が水素を充填可能であるか否かに関する情報を表示する表示部26、27と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを燃料とした車両のボデーに形成され、水素ガス供給源と接続される水素ガス充填口が内部に設けられる水素ガス充填部と、
前記車両の異常状態を含む前記車両の状態を取得する統合制御部と、
前記水素ガス充填部内に設けられ、前記統合制御部によって取得された前記車両の状態に基づいて、前記車両が水素を充填可能であるか否かに関する情報を表示する表示部と、
を備える、車両の水素補給システム。
【請求項2】
前記水素ガス充填部はその内部を外側から覆うリッドを有し、
前記統合制御部は、前記リッドが開いているときに、前記車両の状態を取得することを特徴とする、
請求項1記載の車両の水素補給システム。
【請求項3】
前記表示部は、前記統合制御部によって取得された前記車両の状態に基づいて、インジケータランプを点灯する第1表示部と、を備えていることを特徴とする、
請求項1記載の車両の水素補給システム。
【請求項4】
前記表示部は、前記統合制御部によって取得された前記車両の状態に基づいて、前記車両が水素を充填可能であるか否かに関するメッセージをディスプレイ上に表示する第2表示部と、を備えていることを特徴とする、
請求項1記載の車両の水素補給システム。
【請求項5】
前記統合制御部は、取得した前記車両の状態に基づき、水素ガスを補給できる状態であるか否かを判定する判定部を備え、
前記表示部は、前記判定部の判定結果に基づき、表示態様を変更することを特徴とする、
請求項1記載の車両の水素補給システム。
【請求項6】
前記判定部は、取得した前記車両の状態に基づき、前記車両に重度の異常が発生している第1状態と、前記車両に軽度の異常が発生している第2状態と、前記車両の状態が正常である第3状態と、のいずれかを判定し、
前記表示部は、前記判定部によって判定された各状態に基づき、表示態様を変更する、
請求項5記載の車両の水素補給システム。
【請求項7】
前記統合制御部は、
前記第1状態と判定されたときは、水素ガスの充填を禁止するメッセージを前記表示部に表示することを特徴とする、
請求項6記載の車両の水素補給システム。
【請求項8】
前記統合制御部は、
前記第2状態と判定されたときは、前記第3状態における充填よりも充填効率を抑制した充填であるメッセージを前記表示部に表示することを特徴とする、
請求項6記載の車両の水素補給システム。
【請求項9】
前記統合制御部は、
前記第3状態と判定されたときは、水素ガスの充填を許可するメッセージを前記表示部に表示することを特徴とする、
請求項6記載の車両の水素補給システム。
【請求項10】
前記第1状態は、前記車両が走行する支障がある異常が発生している状態であることを特徴とする、
請求項6記載の車両の水素補給システム。
【請求項11】
前記第2状態は、前記車両が走行しても支障がない異常が発生している状態であることを特徴とする、
請求項6記載の車両の水素補給システム。
【請求項12】
水素ガスを燃料とした車両のボデーに形成され、水素ガス供給源と接続される水素ガス充填口が内部に設けられる水素ガス充填部と、前記水素ガス充填部内に設けられる表示部と、を備える車両の水素補給方法であって、
前記車両の異常状態を含む前記車両の状態を取得する工程と、
取得された前記車両の状態に基づいて、前記車両が水素を充填可能であるか否かに関する情報を前記表示部に表示する工程と、
を含む車両の水素補給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の水素補給システム及び車両の水素補給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスを燃料とした燃料電池車両では、水素ガスを貯蔵する水素タンクが搭載されており、水素タンク内の水素ガスが不足した場合には、水素ガスステーションの水素供給源から水素タンクへ水素ガスが補給(充填)される。この水素ガスの補給は、水素ガスステーションの水素供給源から水素ガスを供給する充填用ノズルと、燃料電池車両側に設けられた水素ガス充填用の充填口とが接続されて行われる。このような燃料電池車両の従来技術として、例えば特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池車両では停車し車両の電源スイッチを電源オフしても、しばらく燃料電池システムに係る電気通信等が継続されて作動している場合がある。もし、燃料電池システムや各種コンポーネントに何らかの異常が生じた場合、キャブ内運転席の表示モニタ内に警告灯やメッセージを表示して異常状態をドライバーへ報知する。
【0005】
しかし、水素ガスの補給時、ドライバー(ユーザ)がすぐに車両から降車してしまった場合、車両の異常状態を知らせる警告灯やメッセージを見落としてしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、水素ガスの補給時に、ドライバーが車両の状態を確実に確認できるようにして、安全に水素ガスの補給を実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0008】
(1)本適用例に係る車両の水素補給システムは、
水素ガスを燃料とした車両のボデーに形成され、水素ガス供給源と接続される水素ガス充填口が内部に設けられる水素ガス充填部と、前記車両の異常状態を含む前記車両の状態を取得する統合制御部と、前記水素ガス充填部内に設けられ、前記統合制御部によって取得された前記車両の状態に基づいて、前記車両が水素を充填可能であるか否かに関する情報を表示する表示部と、を備える。
【0009】
上記適用例に係る車両の水素補給システムは、水素ガス充填部に設けられた表示部により、ユーザは運転席に戻ることなく車両の状態を確認できるとともに水素ガスの補給が可能であるか判断できる。
【0010】
(2)上記(1)の適用例に係る車両の水素補給システムにおいて、前記水素ガス充填部はその内部を外側から覆うリッドを有し、前記統合制御部は、前記リッドが開いているときに、前記車両の状態を取得してもよい。これにより、水素ガスの補給時のみに使用されるセンサ等を電源オフまたはスリープ状態として、省電力に寄与することができる。
【0011】
(3)上記(1)または(2)の適用例に係る車両の水素補給システムにおいて、前記表示部は、前記統合制御部によって取得された前記車両の状態に基づいて、インジケータランプを点灯する第1表示部と、を備えていてもよい。これにより、車両の状態に応じて、水素ガス充填部に設けられた第1表示部のインジケータランプが点灯し、ユーザは運転席に戻ることなく車両の状態を確認できるとともに水素ガスの補給が可能であるか判断できる。
【0012】
(4)上記(1)から(3)のいずれかの適用例に係る車両の水素補給システムにおいて、前記表示部は、前記統合制御部によって取得された前記車両の状態に基づいて、前記車両が水素を充填可能であるか否かに関するメッセージをディスプレイ上に表示する第2表示部と、を備えていてもよい。これにより、水素ガス充填部に設けられた第2表示部に車両の状態に応じたメッセージが表示されるため、ユーザは運転席に戻ることなく車両の具体的な状態を確認できるとともに水素ガスの補給が可能であるか判断できる。
【0013】
(5)上記(1)から(4)のいずれかの適用例に係る車両の水素補給システムにおいて、前記統合制御部は、取得した前記車両の状態に基づき、水素ガスを補給できる状態であるか否かを判定する判定部を備え、前記第1表示部及び前記第2表示部は、前記判定部の判定結果に基づき、表示態様を変更してもよい。これにより、ユーザは車両の状態と水素ガスの補給の可否をより把握しやすくなる。
【0014】
(6)上記(5)の適用例に係る車両の水素補給システムにおいて、前記判定部は、取得した前記車両の状態に基づき、前記車両に重度の異常が発生している第1状態と、前記車両に軽度の異常が発生している第2状態と、前記車両の状態が正常である第3状態と、のいずれかを判定し、前記第1表示部及び前記第2表示部は、前記判定部によって判定された各状態に基づき、表示態様を変更してもよい。これにより、ユーザは水素ガスの補給に関する車両の状態を把握し、車両の状態に応じて対応することができる。
【0015】
(7)上記(6)の適用例に係る車両の水素補給システムにおいて、前記統合制御部は、前記第1状態と判定されたときは、水素ガスの充填を禁止するメッセージを前記表示部に表示してもよい。これにより、ユーザは運転席の表示モニタを確認しに戻ることなく、その場で水素ガスの補給をしてはいけないことを把握できる。
【0016】
(8)上記(6)又は(7)の適用例に係る車両の水素補給システムにおいて、前記統合制御部は、前記第2状態と判定されたときは、前記第3状態における充填よりも充填効率を抑制した充填であるメッセージを前記表示部に表示してもよい。これにより、ユーザは車両に軽微な異常が発生しているものの、抑制された充填効率であれば補給が可能であること、その分時間がかかること、を把握できる。
【0017】
(9)上記(6)から(8)のいずれかの適用例に係る車両の水素補給システムにおいて、前記統合制御部は、前記第3状態と判定されたときは、水素ガスの充填を許可するメッセージを前記表示部に表示してもよい。これにより、ユーザは車両が正常かつ安全に水素ガスの充填ができることを把握できる。
【0018】
(10)上記(6)から(9)のいずれかの適用例に係る車両の水素補給システムにおいて、前記第1状態は、前記車両が走行する支障がある異常が発生している状態であってもよい。これにより、ユーザは、水素ガスの補給だけでなく走行にも支障がある異常があることを把握し、安全を確保する対応をとることができる。
【0019】
(11)上記(6)から(10)のいずれかの適用例に係る車両の水素補給システムにおいて、前記第2状態は、前記車両が走行しても支障がない異常が発生している状態であってもよい。これにより、ユーザは水素ガスの補給と車両の走行の安全性を把握できる。
【0020】
(12)本適用例に係る車両の水素補給方法は、水素ガスを燃料とした車両のボデーに形成され、水素ガス供給源と接続される水素ガス充填口が内部に設けられる水素ガス充填部と、前記水素ガス充填部内に設けられる表示部と、を備える車両の水素補給方法であって、前記車両の異常状態を含む前記車両の状態を取得する工程と、取得された前記車両の状態に基づいて、前記車両が水素を充填可能であるか否かに関する情報を前記表示部に表示する工程と、を含む
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両の水素補給システムを適用した車両の要部の概略図である。
【
図3】車両の水素補給システムのブロック図である。
【
図4】車両の水素補給システムの判定部が参照する状態表である。
【
図5】水素補給時の表示処理を示すフローチャートである。
【
図6】水素補給時の表示処理を示すフローチャートの続きである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両の水素補給システムを適用した車両の要部の概略図である。
【0024】
車両1は、水素ガスを燃料として駆動する燃料電池車両である。車両1は、例えばトラックやバスなどの大型車両である。車両1は、水素をもとに発電する燃料電池モジュール2と、水素ガスを貯蔵する2つの水素タンク3A、3Bと、車両1の外から水素ガスを補給するための水素ガス充填部4と、を備える。なお、本実施形態で示す水素タンクの数は例示であり、2つに限定するものではない。
【0025】
燃料電池モジュール2は、水素と酸素との化学反応により発電する燃料電池セルを積層した燃料電池スタックと、燃料電池スタックの駆動に必要な水素の供給や吸気を扱うサブモジュール、冷却回路、電流供給装置を組み合わせたモジュールである。
【0026】
水素タンク3A、3Bは、水素ガスを貯蔵する圧力容器である。水素タンク3Aは、2つのオンタンクバルブ11A、12Aを備える。水素タンク3Bは、2つのオンタンクバルブ11B、12Bを備える。これら各オンタンクバルブ11A、12A、11B、12Bは、その開閉状態により水素ガスの流入又は流出を制御する。なお、2つの水素タンク3A、3Bの構造や機能、及び、取り付けられるオンタンクバルブは基本的に同じであり、以下区別する必要がない場合にはそれぞれまとめて水素タンク3、オンタンクバルブ11、オンタンクバルブ12と呼ぶ。
【0027】
水素ガス充填部4は、車両1のボデー5の外側面に設けられる。水素ガス充填部4は、ボデー5の外面の一部に車室側に窪み空間Sを形成する凹部41と、凹部41を覆うリッド42を有する。本実施形態の水素ガス充填部4は、後述する運転席表示部7をその場所からユーザが直接視認できない位置に設けられる。
【0028】
図2は、水素ガス充填部4の概略図である。具体的には、水素ガス充填部4のリッド42を開いて水素ガス充填部4の内部を示す図である。
【0029】
水素ガス充填部4は、内部の空間Sに、水素ガス充填口43と、開閉センサ44と、赤外線通信装置45と、表示灯46(第1表示部)と、ディスプレイ47(第2表示部)と、を備える。
【0030】
水素ガス充填口43は、水素ガスの補給時に、
図1に示す水素ガスステーション100(水素ガス供給源)の水素ガス充填用ノズル101と接続する。
【0031】
表示灯46とディスプレイ47は、リッド42が開いた状態で、かつ、水素ガス充填口43に水素ガス充填用ノズル101が接続された状態で、ユーザが視認できる位置に配置される。
【0032】
開閉センサ44は、リッド42の開閉状態を検知し、開情報又は閉情報を出力する。開閉センサ44は、例えばリミットスイッチを用いることができる。
【0033】
赤外線通信装置45は、赤外線通信によって、水素ガスステーション100に、車両1の水素タンク3の温度や水素ガスの圧力を送信する。赤外線通信装置45は、リッド42が閉じているときは省電力状態(スリープ状態)又は電源オフであり、リッド42が開くと起動する。
【0034】
水素ガスステーション100は、赤外線通信装置45から受信した水素タンク3の温度や水素ガスの圧力に基づいて、水素ガスの供給速度を制御したり、赤外線通信装置45に充填に関する情報を送信したりする。水素ガスステーション100は、赤外線通信装置45と正常に通信し水素タンク3の温度が取得できる場合に、水素タンク3の温度を安全な温度レベルに維持できる最速の充填速度を計算し、充填時間がより短い高速充填を提供する。一方、赤外線通信装置45と正常に通信できない場合でも、車両1が物理的に水素ガスの補給が可能な場合、水素ガスステーション100は、充填時間が高速充填に比べて相対的に長くなる低速充填を提供する。
【0035】
表示灯46は、インジケータランプであり、例えばLEDランプを用いることができる。ディスプレイ47は、文字情報や画像を表示できる表示手段である。表示灯46及びディスプレイ47の表示態様は、後述する統合制御部6により制御される。
【0036】
図1に戻り、車両1は、水素の流路として、
図1において太い実線で示された配管系統で構成される充填ライン10と、通常の実線で示された配管系統で構成される供給ライン20と、点線で示された配管系統で構成されるリリーフライン30と、を備える。
【0037】
充填ライン10は、水素ガス充填部4の水素ガス充填口43から水素タンク3へ水素を送る配管系統である。充填ライン10は、水素ガス充填口43から水素タンク3のオンタンクバルブ11A、11Bに向かって順に、チェックバルブ13と、分岐継手14とを備える。チェックバルブ13は、水素ガスの逆流を防止する。分岐継手14は、水素ガス充填口43からの1本の配管を2本の配管に分岐する。分岐した配管は、それぞれ水素タンク3A、3Bに接続する。
【0038】
供給ライン20は、水素タンク3から燃料電池モジュール2へ水素ガスを供給する配管系統である。供給ライン20は、水素タンク3のオンタンクバルブ11A、11Bから燃料電池モジュール2へ向かって順に、分岐継手14と、フィルタ21と、第1減圧弁22と、第2減圧弁23と、分岐継手24と、フィルタ25と、分岐継手26と、遮断弁27と、を備える。
【0039】
リリーフライン30は、各バルブの制御や安全弁による圧力調整のために一部の水素ガスを排出するための配管系統である。リリーフライン30は、排気管(図示せず)を介して大気に排出する配管系統と、パージ管(図示せず)を介して大気に放出する配管系統がある。排気管を介して大気に排出する配管系統は、水素タンク3Aのオンタンクバルブ11A、12Aから分岐継手31Aを介して排気管に接続する配管系統と、水素タンク3Bのオンタンクバルブ12B、12Bから分岐継手31Bを介して排気管に接続する配管系統と、分岐継手24に接続する安全弁32から分岐継手31Aを介して排気管に接続する配管系統と、がある。パージ管を介して大気に放出される配管系統は、分岐継手26に接続する遮断弁33からパージ管に接続する配管系統がある。
【0040】
水素タンク3と、水素の流路である充填ライン10及び供給ライン20と、には、水素ガスの状態を監視するために、各種センサが設けられる。水素タンク3A、3Bは、それぞれ、タンク表面に、温度センサ53A、53Bが設けられる。温度センサ53A、53Bは、水素タンク3A、3Bそれぞれの表面の温度としてタンク温度を検出する。水素タンク3A、3Bの近傍には、水素検知センサ52が設けられる。水素検知センサ52は、水素ガスの漏洩検知や燃料電池モジュール2の制御に用いられ、水素ガス検知量(濃度)を検出する。水素検知センサ52は、例えば、接触燃焼式、気体熱伝導式、半導体式等を適用できる。充填ライン10及び供給ライン20に共通の分岐継手14には、高圧用圧力センサ51が設けられる。高圧用圧力センサ51は、充填ライン10の水素ガスの圧力を検出する。供給ライン20の分岐継手24には、低圧用圧力センサ54が設けられる。低圧用圧力センサ54は、供給ライン20の水素ガスの圧力を検出する。
【0041】
燃料電池モジュール2は、電路(
図1では細い実線で示す)及び高電圧コンタクタ55を介して車両駆動用のモータ8に電気的に接続し、燃料電池モジュール2で発生した電力をモータ8に供給する。高電圧コンタクタ55は、燃料電池モジュール2とモータ8とを電気的に接続する電路の断接を行う電磁接触器であり、当該スイッチの断接を行うことで、燃料電池モジュール2からモータ8への電力の供給や遮断を制御可能である。高電圧コンタクタ55は、後述する車両電源スイッチ57の電源オフ操作による燃料電池モジュール2のシャットダウン工程で最終的に開状態となる。
【0042】
車両1は、そのほかに、統合制御部6と、運転席表示部7と、低電圧バッテリ56と、車両電源スイッチ57と、を備える。
【0043】
統合制御部6は、電子演算装置から構成される制御ユニットで、例えばECU(Electronic Control Unit)であり、車両1の各コンポーネントや各種センサとCAN(Controller Area Network)等の通信ネットワークや直接配線、無線を介して通信可能である。本実施形態では、統合制御部6は、主に予めインストールされた所定のプログラムに従って動作し、後述する水素補給時表示処理を実行する機能を有する。
【0044】
運転席表示部7は、例えば運転席のインストルメントパネルに設けられる表示手段である。運転席表示部7は、液晶パネル等のモニタ画面及びスピーカーを備え、統合制御部6の指示により警告情報を表示したり、必要に応じて音声を出力したりする。
【0045】
低電圧バッテリ56は、システム電源やECU(コンピュータ)、車内の各種電装品等に電力を供給するための低電圧小容量の二次電池である。
【0046】
車両電源スイッチ57は、運転席付近に設けられる、例えば押しボタンである。車両電源スイッチ57は、ユーザの押下操作に伴い、燃料電池モジュール2及びモータ8を含む駆動システムの始動または停止、車両1の電装品の電源のオンまたはオフが可能である。なお、駆動システムを停止しつつ車両1の電装品の電源のみをオンにするアクセサリオン操作が含まれてもよい。本実施形態では説明を簡略化するため、少なくとも車両1の電装品の電源がオンしている状態を車両電源オン、電装品の電源がオフしている状態を車両電源オフとする。また、車両電源スイッチ57は、イグニッションキーのように回転による操作を伴うものであってもよい。
【0047】
以上のように構成された車両1は、水素ガスの補給時に車両1が水素ガスを補給できる状態であるか否かをユーザに提示する車両の水素補給システム9(以下、単に水素補給システム9という)を備える。
【0048】
図3は、車両の水素補給システム9のブロック図である。本図を参照して、水素補給システム9の構成と機能を以下に説明する。
【0049】
水素補給システム9は、統合制御部6と、統合制御部6に通信可能に接続された燃料電池関連のシステムコンポーネントと、を備える。燃料電池関連のシステムコンポーネント(以下、単にシステムコンポーネントという)は、上記した、燃料電池モジュール2、高圧用圧力センサ51、低圧用圧力センサ54、水素検知センサ52、オンタンクバルブ11、温度センサ53、高電圧コンタクタ55、低電圧バッテリ56、車両電源スイッチ57、開閉センサ44、赤外線通信装置45、表示灯46(第1表示部)、ディスプレイ47(第2表示部)、及び、運転席表示部7である。統合制御部6は、情報取得部61と、水素管理部62と、判定部63と、表示制御部64と、を含む。
【0050】
情報取得部61は、現在の車両の状態に関する情報を取得する。
【0051】
情報取得部61は、車両の状態に関する情報として、システムコンポーネントから各コンポーネントの作動状態や計測値、エラー情報等の各種情報を取得する。具体的には、情報取得部61は、燃料電池モジュール2から、作動状態を示すオン情報又はオフ情報と、エラー情報と、を取得する。情報取得部61は、高圧用圧力センサ51、低圧用圧力センサ54からそれぞれ水素ガスの圧力情報と、エラー情報とを取得する。情報取得部61は、水素検知センサ52から、水素検知量と、エラー情報とを取得する。情報取得部61は、オンタンクバルブ11A、11Bそれぞれから、バルブの開閉状態を示す開情報又は閉情報と、エラー情報とを取得する。情報取得部61は、温度センサ53A、53Bそれぞれから、水素タンク3A、3Bそれぞれのタンク温度と、エラー情報と、を取得する。情報取得部61は、高電圧コンタクタ55から、高電圧コンタクタ55の開閉状態を示す開情報又は閉情報と、エラー情報と、を取得する。情報取得部61は、低電圧バッテリ56から、低電圧バッテリ56の利用可不可状態を示すオン情報又はオフ情報と、エラー情報と、を取得する。情報取得部61は、車両電源スイッチ57から、車両電源オン情報又は車両電源オフ情報と、エラー情報と、を取得する。情報取得部61は、開閉センサ44から、リッド42の開閉状態を示す開情報又は閉情報と、エラー情報と、を取得する。情報取得部61は、赤外線通信装置45から、水素ガスステーション100との通信状態が正常か異常かを示す通信正常情報または通信異常情報と、正常な通信状態下で水素ガスステーション100から受信する充填中情報及び満量情報と、を取得する。
【0052】
水素管理部62は、情報取得部61がシステムコンポーネントから取得した情報に基づいて、システムコンポーネントそれぞれの作動状態、計測値、エラーの有無を監視し、監視情報を生成し記憶する。監視情報は、計測値が所定の警告条件を満たした場合や、エラーがある場合に、そのコンポーネントに関する警告情報を含めることができる。例えば、水素管理部62は、取得したタンク温度が所定の閾値を超過している場合、取得した水素の圧力が所定の圧力を超過している場合、取得した水素検出量が所定量を超過している場合、赤外線通信装置45から通信異常情報を受信している場合、にそれらに関する警告情報を生成し監視情報に含めて記憶する。警告には、重度な警告と軽度な警告がある。重度な警告としては、水素タンク3A、3Bが高温状態や高圧力状態となっている場合、水素ガスが漏洩している場合、主要コンポーネントに重大なシステムエラーが発生している場合などは重度の警告に分類される。それ以外の走行に支障がないシステムコンポーネントのエラーなどは軽度な警告に分類される。
【0053】
水素管理部62は、充填ライン10、供給ライン20、及びリリーフライン30の各バルブを制御し、開閉状態や作動状態を取得する。具体的には、水素管理部62は、水素ガスの補給時、オンタンクバルブ11A、11B、12A、12B、遮断弁27、及び遮断弁33の開閉状態を制御する。すなわち、リッド42の開状態が検知されると、水素管理部62は、燃料電池モジュール2がシャットダウンし、かつ、遮断弁27と遮断弁33が閉じていることを確認したうえで、オンタンクバルブ11A、12Aを開く。また、水素管理部62は、水素タンク3の満量を検知したり、水素ガスステーション100から満量情報を受信したりすると、オンタンクバルブ11A、12Aを閉じる。水素管理部62は、高圧用圧力センサ51から取得した圧力に基づいて、水素タンク3が満量となったことを検知する。
【0054】
判定部63は、情報取得部61が取得した車両1の状態に基づいて、車両1が水素ガスを補給可能であるか否かを判定する。具体的には、判定部63は、システムコンポーネントについて情報取得部61が取得した情報と、水素管理部62が生成する監視情報と、に基づいて、車両1が水素ガスを補給可能であるか否かを判定する。
【0055】
図4は、車両の水素補給システムの判定部が参照する状態表である。判定部63は、
図4に示す状態表を記憶している。判定部63は、統合制御部6が実行する後述の水素補給時表示処理において、情報取得部61が取得した車両の状態に関する情報と、水素管理部62が生成した監視情報と、状態表とに基づいて、水素ガスの補給が可能か否かを判定する。
【0056】
【0057】
図4の状態表は、水素ガスを補給する時の車両1の状態を類別する「状態識別コード」と、車両1の状態を示す「状態」、「表示灯」、及び「表示テキスト」の内容を示している。「状態識別コード」は、車両1の状態を示す「状態」に応じて付与されるコードであり、大きく分類すると、第1状態、第2状態、及び第3状態の3段階に分類されている(
図4の状態表では単に数字の1、2、3のみ表示)。
【0058】
第1状態は、車両1に重度の異常が発生している状態(重度異常状態)を示す。第1状態は、車両1が走行する支障がある異常が発生している状態である。第2状態は、車両1に軽度の異常が発生している状態(軽度異常状態)を示す。第2状態は、車両1が走行しても支障がない異常が発生している状態である。第3状態は、車両1の状態が正常である状態(正常状態)を示す。
【0059】
第1状態、第2状態、第3状態は、それぞれ、さらに細かく1A、1B、1C、1D、2A、2B、2C、3A、3B、3Cと分類されている。なお、「状態識別コード」の数は車両1の状態に応じて適宜設定することが可能である。以下、車両の「状態識別コード」が、例えば1Aに該当することを、単に「状態1A」と表現する。「表示灯」の項目は、車両1の判定状態ごとに表示灯46の表示態様が示されている。「表示テキスト」の項目には、車両1の判定状態ごとにディスプレイ47に表示されるメッセージが示されている。なお、「表示テキスト」のメッセージは例示であり、同等の意味であればほかの表現でも構わない。
【0060】
状態1Aの判定条件は、車両1の状態として水素タンク3のタンク温度について警告が出ている状態である。水素補給時表示処理において、温度センサ53から取得したタンク温度が所定の閾値を超過している場合に、判定部63は車両1が状態1Aと判定する。状態1Aの場合、表示灯46の表示態様は赤色で連続点灯、ディスプレイ47の表示態様は「警告:タンク高温」である。
【0061】
状態1Bの判定条件は、車両1の状態として、水素タンク3の圧力について警告が出ている状態である。水素補給時表示処理において、高圧用圧力センサ51から取得した水素タンク3の圧力が所定の閾値を超過している場合に、判定部63は車両1が状態1Bと判定する。状態1Bの場合、表示灯46の表示態様は赤色で連続点灯、ディスプレイ47の表示態様は「警告:タンク高圧」である。
【0062】
状態1Cの判定条件は、車両1の状態として、水素ガスの漏洩について警告が出ている状態である。水素補給時表示処理において、水素検知センサ52から取得した水素検知量が所定の閾値を超過している場合に、判定部63は車両1が状態1Cと判定する。状態1Cの場合、表示灯46の表示態様は赤色で連続点灯、ディスプレイ47の表示態様は「警告:水素ガス漏れ」である。
【0063】
状態1Dの判定条件は、車両1の状態として、その他の重大なシステムエラーについて警告が出ている状態である。水素補給時表示処理において、監視情報に重度な警告情報が含まれている場合に、判定部63は車両1が状態1Dと判定する。状態1Dの場合、表示灯46の表示態様は赤色で連続点灯、ディスプレイ47の表示態様は「警告:重大なシステムエラー」である。
【0064】
状態2Aの判定条件は、車両1の状態として、燃料電池モジュール2が作動中、高電圧コンタクタ55が閉状態、車両電源スイッチ57がオン状態、の少なくともいずれかに該当する状態である。水素補給時表示処理において、燃料電池モジュール2からオン情報、高電圧コンタクタ55から閉情報、車両電源スイッチ57から電源のオン情報、の少なくともいずれかを統合制御部6が受信している場合に、判定部63は車両1が状態2Aと判定する。状態2Aの場合、表示灯46の表示態様は黄色の速い点滅、ディスプレイ47の表示態様は「充填の前に電源をオフしてください」である。
【0065】
状態2Bの判定条件は、車両1の状態として、赤外線通信装置45のエラー、高圧用圧力センサ51又は低圧用圧力センサ54のエラー、温度センサ53のエラー、の少なくともいずれかに該当する状態である。水素補給時表示処理において、赤外線通信装置45のエラー情報、高圧用圧力センサ51又は低圧用圧力センサ54のエラー情報、温度センサ53のエラー情報、の少なくともいずれかを統合制御部6が受信している場合に、判定部63は車両1が状態2Bと判定する。状態2Bの場合、表示灯46の表示態様は黄色でゆっくり点滅、ディスプレイ47の表示態様は「高速充填が利用できません」である。「高速充填が利用できません」というメッセージは、第2状態における水素ガスの充填が、第3状態における充填よりも充填速度などの充填効率を抑制した充填であることをユーザに対して示している。
【0066】
状態2Cの判定条件は、車両1の状態として、その他の軽微なエラーに該当する状態である。水素補給時表示処理において、監視情報に軽度な警告情報が含まれている場合に、判定部63は車両1が状態2Cと判定する。状態2Cの場合、表示灯46の表示態様は黄色で連続点灯、ディスプレイ47の表示態様は「軽微なシステムエラー」である。
【0067】
状態3Aの判定条件は、車両1の状態として、燃料電池モジュール2がオフ、高電圧コンタクタ55が開状態、かつ、すべてのシステムコンポーネントが正常動作、に該当する状態である。水素補給時表示処理において、統合制御部6が燃料電池モジュール2からのオフ情報と高電圧コンタクタ55からの開情報とを受信し、監視情報に警告情報が含まれていない場合に、判定部63は車両1が状態3Aと判定する。状態3Aの場合、表示灯46の表示態様は緑色でゆっくり点滅、ディスプレイ47の表示態様は「充填可能です」である。「充填可能です」というメッセージは水素ガスの充填を許可することをユーザに対して示している。
【0068】
状態3Bの判定条件は、車両1の状態として、水素ガスの充填が進行中であることに該当する状態である。水素補給時表示処理において、赤外線通信装置45が水素ガスステーション100から充填中信号を受信している場合に、判定部63は車両1が状態3Bと判定する。状態3Bの場合、表示灯46の表示態様は緑色の速い点滅、ディスプレイ47の表示態様は「充填中」である。
【0069】
状態3Cの判定条件は、車両1の状態として、水素タンク3が満量であることに該当する状態である。水素補給時表示処理において、赤外線通信装置45が水素ガスステーション100から満量信号を受信した場合に、判定部63は車両1が状態3Cと判定する。状態3Cの場合、表示灯46の表示態様は緑色の連続点灯、ディスプレイ47の表示態様は「タンク満量到達」である。
【0070】
図3に示す表示制御部64は、判定部63の判定結果に基づいて、表示灯46、ディスプレイ47、運転席表示部7の表示を制御する。具体的には、表示制御部64は、判定部63が判定した車両1の状態に対応する状態表の「表示灯」及び「表示テキスト」の内容を参照し、表示灯46及びディスプレイ47の表示態様をそれぞれ変更する。また、表示制御部64は、判定部63の判定結果に関する情報を運転席表示部7に表示する。
【0071】
図5と
図6は、水素補給時の表示処理を示すフローチャートである。以下これらのフローチャートに沿って統合制御部6が実行する水素補給時表示処理を説明する。当該ルーチンはリッド42が閉じた状態でスタートする。
【0072】
図5のステップS101において、情報取得部61は、車両電源スイッチ57から車両電源オン情報を取得して、ステップS102に進む。
【0073】
ステップS102において、水素管理部62は、システムコンポーネントの状態を監視していることを確認しステップS103に進む。
【0074】
ステップS103において、水素管理部62は、開閉センサ44からのリッド42の開閉情報に基づいて、リッド42が開状態か否かを判定する。当該判定が真、すなわちリッド42が開状態である場合、ステップS104に進む。当該判定が偽、すなわちリッド42が閉状態である場合、ステップS102に戻る。
【0075】
ステップS104において、情報取得部61はシステムコンポーネントから情報を取得し、水素管理部62は情報取得部61が取得した情報に基づいて監視情報を生成し、判定部63は状態表を参照して、ステップS105に進む。
【0076】
ステップS105において、判定部63は、ステップS104で取得したシステムコンポーネントの状態情報と、生成された監視情報と、参照した状態表と、に基づいて、車両1が第1状態、すなわち状態1A、状態1B、状態1C、状態1Dのいずれかに該当するか否かを判定する。当該判定結果が真、すなわち車両1が第1状態に該当する場合、ステップS106に進む。一方、当該判定結果が偽、すなわち車両1が第1状態に該当しない場合、
図6のステップS109に進む。
【0077】
ステップS106において、すなわち車両1が第1状態に該当する場合、表示制御部64は、表示灯46及びディスプレイ47に該当する車両1の状態に対応する表示内容を表示させて、ステップS107に進む。
【0078】
ステップS107において、水素管理部62は、判定部63の車両1の状態についての判定結果をエラーとして記憶する。
【0079】
ステップS108において、水素管理部62は、運転席表示部7に判定部63の車両1の状態についての判定結果に関する警告を表示して、当該ルーチンをリターンする。
【0080】
図6に示すステップS109において、判定部63は、ステップS104で取得したシステムコンポーネントの状態情報と、生成された監視情報と、状態表と、に基づいて、車両1が第2状態、すなわち状態2A、状態2B、状態2Cの少なくともいずれかに該当するか否かを判定する。当該判定結果が真、すなわち車両1が第2状態に該当する場合、ステップS110に進む。一方、当該判定結果が偽、すなわち車両1が第2状態に該当しない場合、ステップS112に進む。
【0081】
ステップS110において、表示制御部64は、表示灯46及びディスプレイ47に該当する車両1の状態に対応する表示内容を表示させて、ステップS111に進む。状態2A、状態2B、状態2Cの複数に該当する場合は、表示灯46は2A、2B、2Cの順に表示態様が優先される。ディスプレイ47については、2A、2B、及び2Cの全ての表示態様を同時に表示してもよく、所定時間ごとに表示を切り替えてもよい。
【0082】
ステップS111において、水素管理部62は、開閉センサ44からリッド42の開閉情報を受信し、リッド42が閉状態か否かを判定する。当該判定が真、すなわちリッド42が閉状態である場合、
図5のステップS107に進む。当該判定が偽、すなわちリッド42が閉状態でない(開状態である)場合、ステップS110に戻る。
【0083】
図6のステップS112において、判定部63は、S104で取得したシステムコンポーネントの状態情報と、生成された監視情報と、状態表と、に基づいて、車両1が第3状態、すなわち状態3A、状態3B、状態3Cのいずれかに該当するか否かを判定する。当該判定結果が真、すなわち車両1が第3状態である場合、ステップS113に進む。一方、当該判定結果が偽、すなわち車両1が第3状態でない場合、ステップS104に戻る。
【0084】
ステップS113において、表示制御部64は表示灯46及びディスプレイ47に該当する車両1の状態に対応する表示内容を表示させて、当該ルーチンをリターンする。
【0085】
なお、当該ルーチンの途中で、統合制御部6がリッド42の閉情報を受信した場合は、統合制御部6は当該ルーチンを強制終了することができる。この際、すでにステップS107のエラーが記憶されている場合は、ステップS108の運転席表示部7での警告表示は実行される。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る上記構成の水素補給システム9は、車両1が正常状態(状態3A~3C)、軽度異常状態(状態2A~2C)、又は、重度異常状態(状態1A~1D)のどの状態にあるかを判定し、水素ガス充填部4に設けられた表示灯46及びディスプレイ47に、判定結果に応じた表示を行う。これにより、水素ガスの補給の作業のためにユーザが車外に出て運転席表示部7の警告を確認できない場合でも、水素ガスの補給をする時点で、又は、水素ガスの補給中に、その場で水素ガスの補給可否に関する判断を行うことができる。また、車両1が重度異常状態の場合は、ユーザに補給を禁止するメッセージを提示するため、安全を確保することができる。また、車両1が軽度異常状態の場合、ユーザは運転席表示部7を確認するために水素ガス充填部4から離れた運転席に戻ることなく、低速充填が利用可能であること、及びそのエラーの内容を把握できる。また、車両1が正常状態の場合は、水素ガスの充填の進行状況を把握できる。まとめると、水素ガス補給時に、車両1が水素ガスを補給できる状態であるか否かを確実に確認することができ、その確認結果によって、安全に水素ガスを補給することができる。
【0087】
以上で本発明に係る車両1の水素補給システム9の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0088】
例えば、上記実施形態において、車両1が重度異常状態と判定された場合に、水素管理部62は、リッド42が開状態であってもオンタンクバルブ11A、11Bを閉状態のままとする制御をしてもよい。これにより、水素ガス充填口43に水素ガス充填用ノズル101が物理的に接続された場合でも水素タンク3への水素ガスの流入を抑止できる。
【0089】
また、上記実施形態において、ディスプレイ47を省略してもよい。その際、表示灯46の近傍に、状態表の内容を簡略化して示したシール(ステッカー)等を貼り付けると良い。
【符号の説明】
【0090】
1 :車両
2 :燃料電池モジュール
3A、3B :水素タンク
4 :水素ガス充填部
5 :ボデー
6 :統合制御部
7 :運転席表示部
8 :モータ
9 :水素補給システム
10 :充填ライン
11A、11B、12A、12B :オンタンクバルブ
20 :供給ライン
30 :リリーフライン
42 :リッド
43 :水素ガス充填口
44 :開閉センサ
45 :赤外線通信装置
46 :表示灯(表示部)
47 :ディスプレイ(表示部)
51 :高圧用圧力センサ
52 :水素検知センサ
53A、53B :温度センサ
54 :低圧用圧力センサ
55 :高電圧コンタクタ
56 :低電圧バッテリ
57 :車両電源スイッチ
61 :情報取得部
62 :水素管理部
63 :判定部
64 :表示制御部
100 :水素ガスステーション
101 :水素ガス充填用ノズル