(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084245
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】射出装置の保守方法、射出装置、および射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240618BHJP
B29C 45/84 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198408
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中山 清貴
(72)【発明者】
【氏名】森崎 基裕
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM04
4F206AM08
4F206AP06
4F206AP19
4F206JA07
4F206JC08
4F206JD01
4F206JL03
4F206JL08
4F206JQ88
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】安全に実施することができる射出装置の保守方法を提供する。
【解決手段】加熱シリンダ(18)が水平になっており、保守時に旋回させる射出装置(3)を対象とする。射出装置(3)に旋回手段(47)を設ける。射出装置(3)の旋回範囲(53)内に射出装置(3)の旋回を妨げる旋回妨害部材が存在する間は旋回手段(47)の駆動を規制する。射出装置(3)を旋回させるとき、旋回妨害部材の取り外しや旋回の妨げの解消もしくは射出装置(3)の移動を旋回前処理として実施し、旋回前処理の完了を検出したら旋回手段(47)の駆動の規制を解除して旋回させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に設けられている加熱シリンダと、
該加熱シリンダ内で水平方向に駆動されるスクリュと、を備え、保守時において水平に旋回するようになっている射出装置において、前記加熱シリンダと前記スクリュとを保守する保守方法であって、
前記射出装置に旋回手段を設け、前記射出装置の旋回範囲内に前記射出装置と接触したり旋回を妨げたりする外部部材の旋回妨害部材が存在する間は前記旋回手段の駆動を規制して前記射出装置の旋回を禁止するようにし、
前記射出装置を旋回させるとき、前記旋回妨害部材の取り外しや旋回の妨げの解消もしくは前記射出装置の移動を旋回前処理として実施し、前記旋回前処理の完了を検出したら前記旋回手段の駆動の規制を解除して旋回させる、射出装置の保守方法。
【請求項2】
前記旋回妨害部材は型締装置の部材であり、前記旋回前処理は前記射出装置を前記型締装置からの離間方向への移動である射出装置後退処理であり、前記旋回前処理の完了の検出は、前記射出装置後退処理の完了の検出によって実施する、請求項1に記載の射出装置の保守方法。
【請求項3】
前記旋回前処理は前記スクリュを前記加熱シリンダ内で前進させるスクリュ前進処理を含む、請求項2に記載の射出装置の保守方法。
【請求項4】
前記型締装置は、型盤が鉛直方向に駆動されて型開閉される竪型型締装置からなり、前記旋回妨害部材はタイバーである、請求項2または3に記載の射出装置の保守方法。
【請求項5】
前記射出装置は前記射出装置を昇降させる昇降装置を備えており、前記旋回前処理は前記昇降装置を駆動して前記射出装置の高さを低くする射出装置降下処理を含む、請求項2または3に記載の射出装置の保守方法。
【請求項6】
前記旋回手段は、電動または油圧により駆動されるようになっている、請求項2または3に記載の射出装置の保守方法。
【請求項7】
水平に設けられている加熱シリンダと、
該加熱シリンダ内で水平方向に駆動されるスクリュと、
ベッドに対して旋回可能に設けられて前記加熱シリンダを支持すると共に前記スクリュを駆動するスクリュ駆動装置と、
制御装置と、を備え、
前記スクリュ駆動装置には旋回手段が設けられ、前記制御装置は前記スクリュ駆動装置を旋回するとき前記加熱シリンダと前記加熱シリンダに設けられている射出ノズルの旋回範囲内において接触したり旋回を妨げたりする可能性がある外部部材の旋回妨害部材が存在する間、前記旋回手段の駆動が規制されて前記スクリュ駆動装置の旋回が禁止されており、
前記旋回妨害部材の取り外しや旋回の妨げの解消もしくは前記スクリュ駆動装置の移動が旋回前処理として実施され、前記旋回前処理の完了が前記制御装置により検出されたら、前記旋回手段の駆動の規制が解除されて旋回が許可される、射出装置。
【請求項8】
前記射出装置は前記ベッドに対して前後進可能に設けられていると共に後退完了位置を検出する後退検出センサを備え、
前記旋回前処理は前記射出装置を後退させる射出装置後退処理であり、
前記旋回前処理の完了は、前記後退検出センサによって検出される、請求項7に記載の射出装置。
【請求項9】
前記旋回前処理は前記スクリュを前記加熱シリンダ内で前進させるスクリュ前進処理を含み、前記スクリュ前進処理は前記制御装置によって実施される、請求項8に記載の射出装置。
【請求項10】
前記射出装置は前記射出装置を昇降させる昇降装置を備えており、前記旋回前処理は前記昇降装置を駆動して前記射出装置の高さを低くする射出装置降下処理を含み、前記射出装置降下処理は前記制御装置によって実施される、請求項8または9に記載の射出装置。
【請求項11】
前記射出装置の旋回は、前記制御装置の指令により、電動または油圧により駆動される、請求項8または9に記載の射出装置。
【請求項12】
型締装置と、
射出装置と、
制御装置と、から構成され、
前記射出装置は、水平に設けられている加熱シリンダと、
該加熱シリンダ内で水平方向に駆動されるスクリュと、
ベッドに対して旋回可能に設けられて前記加熱シリンダを支持すると共に前記スクリュを駆動するスクリュ駆動装置と、を備え、
前記射出装置には旋回手段が設けられ、前記制御装置は前記射出装置の旋回範囲内において接触したり旋回を妨げたりする可能性がある外部部材の旋回妨害部材が存在する間、前記旋回手段の駆動が規制されて前記射出装置の旋回が禁止されており、
前記旋回妨害部材の取り外しや旋回の妨げの解消もしくは前記射出装置の移動が旋回前処理として実施され、前記旋回前処理の完了が前記制御装置により検出されたら、前記旋回手段の駆動の規制が解除されて前記射出装置の旋回が許可される、射出成形機。
【請求項13】
前記射出装置は前記ベッドに対して前後進可能に設けられていると共に後退完了位置を検出する後退検出センサを備え、
前記旋回前処理は前記射出装置を後退させる射出装置後退処理であり、
前記旋回前処理の完了は、前記後退検出センサによって検出される、請求項12に記載の射出成形機。
【請求項14】
前記旋回前処理は前記スクリュを前記加熱シリンダ内で前進させるスクリュ前進処理を含み、前記スクリュ前進処理は前記制御装置によって実施される、請求項13に記載の射出成形機。
【請求項15】
前記型締装置は、型盤が鉛直方向に駆動されて型開閉される竪型型締装置からなり、前記旋回妨害部材はタイバーである、請求項13または14に記載の射出成形機。
【請求項16】
前記射出装置は前記射出装置を昇降させる昇降装置を備えており、前記旋回前処理は前記昇降装置を駆動して前記射出装置の高さを低くする射出装置降下処理を含み、前記射出装置降下処理は前記制御装置によって実施される、請求項13または14に記載の射出成形機。
【請求項17】
前記射出装置の旋回は、前記制御装置の指令により、電動または油圧により駆動される、請求項13または14に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱シリンダが水平に設けられメンテナンス時に旋回されるようになっている射出装置の保守方法、射出装置、および射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は型締装置と射出装置とから構成されている。射出装置は加熱シリンダと、この加熱シリンダ内に入れられているスクリュと、加熱シリンダを支持すると共にスクリュを駆動するスクリュ駆動装置と、を備えている。多くの射出成形機において射出装置は横置き型になっている。すなわち射出装置はベッド上に移動可能に設けられ加熱シリンダは水平に配置されている。加熱シリンダの先端には射出ノズルが設けられており、射出装置を前進させると型締装置において型締めされている金型に射出ノズルがタッチして射出できるようになっている。射出装置は、例えば特許文献1に記載されているように水平に旋回可能になっている。加熱シリンダやスクリュの交換等のメンテナンスは、射出装置を旋回して実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出装置のメンテナンスは前述したように射出装置を旋回して実施している。このような射出装置において加熱シリンダの交換等のメンテナンスをするにあたって、安全性を高める余地があるように見受けられる。例えば、射出装置は旋回させる前に旋回が可能か否かかについて確認する必要があるが、これを怠ると加熱シリンダや射出ノズルが部材にぶつかってしまう。また、射出装置の機種によってはその高さを上下させて射出ノズルの高さを調整できるようになっているものがある。このような射出装置において、高さが高い状態のままで加熱シリンダの交換等を実施してしまうと、作業者は高い位置でボルトを緩めたり締め付けたりする必要があり困難が伴い安全性の点で問題がある。つまり安全性を高める余地があるように見受けられる。
【0005】
本開示において、射出装置のメンテナンスを安全に実施することができる射出装置の保守方法、射出装置、および射出成形機を提供する。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、水平に設けられている加熱シリンダと、この加熱シリンダ内で水平方向に駆動されるスクリュとを備え、保守時において水平に旋回するようになっている射出装置に対する保守方法になっている。射出装置に旋回手段を設ける。本開示に係る保守方法は、射出装置の旋回範囲内に射出装置と接触したり旋回を妨げたりする外部部材の旋回妨害部材が存在する間は旋回手段の駆動を規制して射出装置の旋回を禁止する。そして射出装置を旋回させるとき、旋回妨害部材の取り外しや旋回の妨げの解消もしくは射出装置の移動を旋回前処理として実施し、旋回前処理の完了を検出したら旋回手段の駆動の規制を解除して旋回させるように構成する。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、射出装置のメンテナンスを安全に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る射出成形機の正面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る射出成形機の上面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る射出成形機において実施される第1の実施形態に係る射出装置の保守方法を示すフローチャートである。
【
図4A】第1の実施形態に係る射出装置の保守方法を実施している、第1の実施形態に係る射出成形機の正面図である。
【
図4B】第1の実施形態に係る射出装置の保守方法を実施している、第1の実施形態に係る射出成形機の正面図である。
【
図4C】第1の実施形態に係る射出装置の保守方法を実施している、第1の実施形態に係る射出成形機の正面図である。
【
図4D】第1の実施形態に係る射出装置の保守方法を実施している、第1の実施形態に係る射出成形機の上面図である。
【
図5】比較例に係る射出装置の保守方法を実施している、第1の実施形態に係る射出成形機の正面図である。
【
図6A】第2の実施形態の変形例に係る射出成形機の正面図である。
【
図6B】第2の実施形態の変形例に係る射出成形機の上面図である。
【
図7】第2の実施形態に係る射出成形機において実施される第2の実施形態に係る射出装置の保守方法を示すフローチャートである。
【
図8A】第2の実施形態に係る射出装置の保守方法を実施している、第2の実施形態に係る射出成形機の正面図である。
【
図8B】第2の実施形態に係る射出装置の保守方法を実施している、第2の実施形態に係る射出成形機の正面図である。
【
図8C】第2の実施形態に係る射出装置の保守方法を実施している、第2の実施形態に係る射出成形機の正面図である。
【
図8D】第2の実施形態に係る射出装置の保守方法を実施している、第2の実施形態に係る射出成形機の上面図である。
【
図9A】第1の実施形態の変形例1に係る射出成形機の正面図である。
【
図9B】第1の実施形態の変形例2に係る射出成形機の上面図である。
【
図10】第1の実施形態の変形例1に係る射出成形機において実施される射出装置の保守方法を示すフローチャートである。
【
図11】第1の実施形態の変形例2に係る射出成形機において実施される射出装置の保守方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0011】
[第1の実施形態]
<射出成形機>
第1の実施形態に係る射出成形機1は、
図1、
図2に示されているように、型締装置2、射出装置3、等を備えている。型締装置2は次に詳しく説明するように、型盤が上下に駆動されて型開閉する竪型になっている。これに対して射出装置3は後で説明するように横置き型になっている。射出成形機1には、これら装置を制御する制御装置4が設けられている。
【0012】
<型締装置>
第1の実施形態において型締装置2は、ベッド7に固定されている固定盤9と、この固定盤9の上方に設けられている上可動盤10と、ベッド7内に設けられている下可動盤11とを備えている。上可動盤10と下可動盤11はこの実施形態では
図2に示されているように、4本のタイバー12、12、…で連結されている。
図1に示されているように、下可動盤11と固定盤9の間にはトグル機構14が設けられている。上可動盤10には上側金型15が、そして下可動盤11には下側金型16が設けられている。トグル機構14を駆動すると上側金型15と下側金型16とが型開閉されるようになっている。
【0013】
<射出装置>
射出装置3は、横置き型からなり、ベッド7に対して設けられている。射出装置3は、水平に設けられている加熱シリンダ18と、この加熱シリンダ18に入れられているスクリュ19と、加熱シリンダ18を支持すると共にスクリュ19を駆動するスクリュ駆動装置21と、を備えている。加熱シリンダ18の先端には射出ノズル23が設けられ、金型15、16にタッチして射出材料を射出するようになっている。
【0014】
第1の実施形態に係る射出装置3は、射出装置3を移動させるノズルタッチ装置25と、射出装置3の高さを調整する昇降装置26とを備えている。ノズルタッチ装置25は、射出装置3を型締装置2に近接させる方向つまり前進方向に移動したり、型締装置2から離間させる方向つまり後退方向に移動させたりするようになっている。ノズルタッチ装置25はベッド7上にリニアガイド28を介して移動自在に設けられている台車29と、台車駆動機構31とを備えている。台車駆動機構31は、ベッド7内において回転可能に設けられているボールねじ33と、このボールねじ33に設けられているボールナット34と、ボールねじ33を回転する移動用サーボモータ35とを備えている。ボールナット34は台車29に接続されている。したがって移動用サーボモータ35を駆動してボールねじ33を回転すると台車29が、つまり射出装置3が前後進することになる。
【0015】
昇降装置26は射出装置3の高さ、つまり射出ノズル23の高さを調整するようになっており、台車29に対して昇降される昇降台37と、台車29と昇降台37とを連結しているボールねじ機構39、39、…と、昇降用サーボモータ40とを備えている。ボールねじ機構39、39、…のボールナット42、42、…は、タイミングベルト43を介して昇降用サーボモータ40と連結されている。したがって、昇降用サーボモータ40を駆動してボールナット42、42、…を回転すると昇降台37は台車29に対して昇降することになる。
【0016】
スクリュ駆動装置21は、このような昇降台37に対して回転軸45を介して水平に旋回可能に設けられている。そしてスクリュ駆動装置21は、
図2に示されているように、旋回手段47を介して昇降台37と接続されている。旋回手段47は、その一端がスクリュ駆動装置21に回転可能に支持されているボールねじ49と、昇降台37に対して設けられていると共にボールねじ49に螺合しているボールナット50と、ボールねじ49を回転する旋回用サーボモータ51とから構成されている。したがって旋回用サーボモータ51を駆動してボールねじ49を回転すると、スクリュ駆動装置21が旋回する。すなわち射出装置3が旋回する。
【0017】
<後退検出センサ>
第1の実施形態に係る射出成形機1には、後退検出センサ52が設けられている。射出装置3がノズルタッチ装置25によって後退し、後退位置になったら後退検出センサ52によって検出されるようになっている。
【0018】
<射出装置の保守方法>
第1の実施形態に係る射出成形機1は、射出装置3において加熱シリンダ18、スクリュ19等を保守するとき、射出装置3を旋回して実施する。しかしながら、射出装置3の状態によっては、
図2において示されているように射出装置3の旋回範囲53に外部部材が存在する場合がある。
図2に示されている例では、1本のタイバー12がその外部部材に相当しており、このような外部部材を本明細書では旋回妨害部材と呼ぶ。旋回妨害部材が旋回範囲53内にあるときに旋回すると射出ノズル23や加熱シリンダ18がぶつかって破損する等の安全上望ましくない事態を招くおそれがある。第1の実施形態に係る射出成形機1の制御装置4は、第1の実施形態に係る射出装置の保守方法を実施する。この方法には、旋回を安全に実施するために予め実施するいくつかの処理、つまり旋回前処理が含まれている。旋回間処理を実施して、その後、射出装置3を旋回するようにして安全を確保している。以下説明する。なお、以下の射出装置の保守方法の説明では
図1、
図2についても適宜参照する。
【0019】
オペレータは、制御装置4において所定の操作により操作画面を表示させ、射出装置の保守開始を要求する。制御装置4は要求を受けて処理を開始する。制御装置4は
図3に示されているようにステップS01を実行する。ステップS01では射出装置3の高さをチェックする。射出装置3の高さが低くなっている場合(YES)、ステップS03に移行する。一方、射出装置3の高さが高ければ(NO)、ステップS02に移行する。なお、射出装置3の高さは、昇降装置26(
図1参照)の昇降用サーボモータ40に関連して設けられているエンコーダによって検出することができる。
【0020】
制御装置4は、ステップS02において射出装置3を降下させる。つまり昇降装置26において昇降用サーボモータ40を駆動して昇降台37を下降させる。
図4Aには昇降台37を降下させて、射出装置3の高さが低くなった状態の射出成形機1が示されている。ステップS02の処理が完了したらステップS03に移行する。
【0021】
制御装置4はステップS03を実行して、射出装置3の前後進位置を調べる。射出装置3が後退位置になっているとき後退検出センサ52によって検出される。ステップS03において射出装置3が後退位置になっていない場合(NO)、ステップS04に移行する。一方、後退位置になっている場合(YES)ステップS05に移行する。なお前後進位置は、移動用サーボモータ35(
図1参照)のエンコーダによっても検出することができる。第1の実施形態では確実に後退位置に達しているか否かを判断するために、後退検出センサ52によって検出している。
【0022】
制御装置4はステップS04において射出装置3を後退させる。つまりノズルタッチ装置25(
図1参照)の移動用サーボモータ35を駆動して射出装置3を後退させる。この状態が
図4Bに示されている。射出装置3が後退したら後退検出センサ52によって検出される。射出装置3が後退位置になっていれば、
図2に示されているような旋回妨害部材、つまりタイバー12は旋回範囲53内から退避している。つまり旋回は可能になっている。しかしながら、射出装置3の保守をさらに安全に実施できるように、制御装置4はステップS05に移行して処理を実行する。
【0023】
制御装置4は、ステップS05においてスクリュ19の位置を調べる。スクリュ19が最前進位置になっていれば(YES)、ステップS07に移行する。一方、スクリュ19が最前進位置になっていなければ(NO)、ステップS06に移行する。ステップS06において制御装置4はスクリュ駆動装置21(
図1参照)を駆動してスクリュ19を最前進させる。この状態が
図4Cに示されている。ステップS07に移行する。
【0024】
制御装置4は、ステップS07において、旋回手段47(
図2参照)を駆動する。すなわち旋回用サーボモータ51を駆動する。そうすると、
図4Dに示されているように、射出装置3が旋回する。制御装置4は処理を終了する。射出装置3の高さは低くなっており、そしてスクリュ19は加熱シリンダ18内に収納された状態になっている。したがって、オペレータはスクリュ19が収納された加熱シリンダ18をスクリュ駆動装置21から容易に取り外すことができ、保守を安全に実施することができる。
【0025】
[射出成形機における射出装置が昇降装置を備える構成である場合の比較例]
第1の実施形態に係る射出成形機は、射出装置が昇降装置を備える構成である場合を例として説明した。第1の実施形態に係る射出装置の保守方法は、上で説明したように制御装置4が一連の旋回前処理を実施した後に射出装置3を旋回している。これに対して、手動で旋回前処理に類似した処理を実施して、その後に射出装置3を旋回させる場合もある。手動で処理を実施する場合、必要な処理が抜けてしまうことがあり、射出装置3を旋回させても保守を行うにあたって安全上改善の余地を残す場合がある。以下では、射出装置が昇降装置を備える構成である場合の比較例に係る射出装置の保守方法として説明する。
【0026】
比較例に係る射出装置の保守方法は、第1の実施形態に係る射出成形機1(
図1、
図2参照)において実施する。射出成形機1が
図1に示されている状態になっているとき、オペレータは制御装置4において操作して、ノズルタッチ装置25を駆動する。つまり移動用サーボモータ35を駆動して射出装置3を後退させる。この状態が
図5に示されている。このとき、スクリュ19は前進位置になっていないし、射出装置3の高さHは高い。しかしながら、射出装置3は後退位置になっているので、射出装置3の旋回において加熱シリンダ18や射出ノズル23がタイバー12等の旋回妨害部材にぶつかる可能性はない。つまり射出装置3の旋回は可能になっている。比較例に係る射出装置の保守方法では、この状態で射出装置3を旋回することとする。旋回後、加熱シリンダ18やスクリュ19の交換等を実施する。
【0027】
ところで前記したように射出装置3の高さHは高い。加熱シリンダ18はその端部がボルト等によってスクリュ駆動装置21に締め付けられており、加熱シリンダ18を取り外すためにオペレータはボルトの取り外し等を実施する必要がある。しかしながら射出装置3の高さHが高いと、必然的に加熱シリンダ18の高さも高いので、高い位置でボルトの取り外しを行わねばならない。作業が困難であると共に安全性に問題がある。また、加熱シリンダ18を取り外しても、スクリュ19は最前進位置になっていない。そうすると加熱シリンダ18を取り外すときにスクリュ19が加熱シリンダ18から抜け落ちてしまう可能性があるなど安全上改善の余地があると言える。
【0028】
[第2の実施形態]
<射出成形機>
第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る射出成形機60は、
図6A、
図6Bに示されているように、型締装置61、射出装置62等、を備えている。型締装置61は、型盤が水平方向に駆動されて型開閉する横置き型になっており、第1の実施形態と相違している。一方、射出装置62は第1の実施形態と同様に横置き型になっている。第2の実施形態に係る射出成形機60において、第1の実施形態と同様の部材については同じ参照番号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なっている部材について説明する。
【0029】
<型締装置>
第2の実施形態において型締装置61は、ベッド7に固定されている固定盤64と、ベッド7上をスライド自在に設けられている可動盤65と、同様にベッド7上をスライド自在に設けられている型締ハウジング66と、を備えている。固定盤64と型締ハウジング66は4本のタイバー68、68、…によって連結されており、可動盤65は、固定盤64と型締ハウジング66の間でスライドされるようになっている。型締ハウジング66と可動盤65の間にはトグル機構70が設けられている。固定盤64には固定側金型72が、そして可動盤65には可動側金型73がそれぞれ設けられている。したがって、トグル機構70を駆動すると固定側金型72と可動側金型73とが型開閉される。
【0030】
<射出装置>
第2の実施形態に係る射出装置62は、第1の実施形態に係る射出装置3(
図1、
図2参照)に対して、2点において相違している。第1の相違点は、射出装置62を移動させるノズルタッチ装置75である。ノズルタッチ装置75は、第1の実施形態と同様に、ベッド7上にリニアガイド28を介して移動自在に設けられている台車29を備えているが、台車29を駆動する台車駆動機構77が相違している。台車駆動機構77は、ボールねじ機構78と、このボールねじ機構78を駆動する移動用サーボモータ80とから構成されている。ボールねじ機構78の一端は固定盤64に固定されており、移動用サーボモータ80はスクリュ駆動装置21に設けられている。
【0031】
第2の実施形態に係る射出装置62において、第2の相違点は、射出装置62を昇降させる昇降装置が設けられていない点である。したがって射出装置62は高さを上下させるようになっていない。第2の実施形態に係る射出装置62は、他の点については第1の実施形態に係る射出装置3と同様に構成されている。同様に構成されている点については説明を省略する。
【0032】
<射出装置の保守方法>
第2の実施形態に係る射出成形機60(
図6A、
図6B参照)において実施する、第2の実施形態に係る射出装置の保守方法を説明する。オペレータは、制御装置4において所定の操作により操作画面を表示させ、射出装置の保守開始を要求する。制御装置4は要求を受けて処理を開始する。制御装置4は
図7に示されているようにステップS11を実行する。ステップS11ではスクリュ19の位置を調べる。スクリュ19が最前進位置になっていれば(YES)、ステップS13に移行する。一方、スクリュ19が最前進位置になっていなければ(NO)、ステップS12に移行する。ステップS12において制御装置4はスクリュ駆動装置21(
図6A参照)を駆動してスクリュ19を最前進させる。この状態が
図8Aに示されている。ステップS13に移行する。
【0033】
制御装置4はステップS13を実行して、射出装置62(
図6A参照)の前後進位置を調べる。射出装置62の前後進位置は、移動用サーボモータ80のエンコーダによって検出する。移動用サーボモータ80によって後退可能な最大の後退位置になっていれば(YES)、ステップS15に移行する。一方、その後退位置に達していなければ(NO)、ステップS14に移行する。ステップS14では、制御装置4は移動用サーボモータ80を駆動して、射出装置62を後退可能な最大の後退位置に移動させる。この状態が
図8Bに示されている。ステップS15に移行する。
【0034】
ステップS15では、制御装置4は処理を一時的に停止する。ステップS15はオペレータが手動で実施するようになっている。具体的には、オペレータはノズルタッチ装置75(
図6A参照)を固定盤64から切り離す。つまりボールねじ機構78を固定盤64から切り離す。切り離したらステップS16に移行する。ステップS16もオペレータが手動で実施する。オペレータは射出装置62を後退方向に押して移動させる。射出装置62が最後退位置に達したら、後退検出センサ52により検出される。制御装置4は射出装置62が最後退位置に達したことを検出する。この状態が
図8Cに示されている。
【0035】
第2の実施形態に係る射出成形機60の場合、射出装置62の旋回を妨げているのはボールねじ機構78と連結されている固定盤64になる。連結されている限り旋回できないからである。つまり固定盤64が旋回妨害部材になっている。ステップS15、S16によって連結が解除されたことにより、射出装置62の旋回が可能になる。
【0036】
オペレータは制御装置4において所定の操作を実施して、処理を再開させる。そうすると制御装置4はステップS17を実行する。すなわち、
図8Dに示されているように、旋回手段47を駆動して射出装置62を旋回させる。制御装置4は処理を完了する。オペレータは加熱シリンダ18、スクリュ19等のメンテナンスを実施する。
【0037】
[第1の実施形態の変形例1]
第1の実施形態に係る射出成形機1(
図1、
図2参照)は変形することができる。
図9Aには第1の実施形態の変形例1に係る射出成形機1Aが示されている。変形例1に係る射出成形機1Aにおいて、第1の実施形態に係る射出成形機1と同様の部材には同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0038】
変形例1に係る射出成形機1Aの射出装置3Aは、ノズルタッチ装置85が第1の実施形態と相違している。変形例1に係る射出装置3Aのノズルタッチ装置85は、スクリュ駆動装置21に設けられているピストンシリンダユニット86と、型締装置2の近傍においてベッド7に設けられている固定部材88と、から構成されている。ピストンシリンダユニット86は、ロッド87の先端が固定部材88に対して連結されており、シリンダ89がスクリュ駆動装置21に設けられている。したがって、ピストンシリンダユニット86を駆動すると射出装置3Aが前後進する。なお、ロッド87の先端は固定部材88に対して上下方向のスライドが許容された状態で連結されている。したがって、昇降装置26を駆動して射出装置3Aを昇降させるとき、ロッド87も固定部材88に対してスライドして上下することになる。
【0039】
この第1の実施形態の変形例1に係る射出装置3Aにおいても、
図3によって説明した第1の実施形態に係る射出装置3において実施する射出装置の保守方法と同様に射出装置の保守方法を実施することができる。ただし、変形例1に係る射出装置3Aにおいて旋回を妨げているのは、ピストンシリンダユニット86と連結されている固定部材88になっている。したがって旋回前処理では、ピストンシリンダユニット86を固定部材88から切り離す処理が必要になっている。第1の実施形態の変形例1に係る射出装置3Aにおいて実施する射出装置の保守方法は、
図10に示されているように実施することになる。
図10のフローチャートは、
図3のフローチャートに対して破線で示された範囲が相違している。この相違している範囲についてのみ説明する。
【0040】
制御装置4はステップS01、S02によって射出装置3Aの高さを低くしたら、ステップS21を実施する。ステップS21では、射出装置3Aの前後進位置を調べる。ピストンシリンダユニット86には、
図9Aには示されていないがロッド87の位置を検出するリミットスイッチが設けられている。射出装置3Aの前後進位置は、このリミットスイッチによって検出する。射出装置3Aが後退位置になっている場合(YES)、ステップS23に移行する。一方、後退位置に達していなければ(NO)、ステップS22に移行する。ステップS22では、制御装置4はピストンシリンダユニット86を駆動して、射出装置3Aを後退可能な最大の後退位置に移動させる。ステップS23に移行する。
【0041】
ステップS23では、制御装置4は処理を一時的に停止する。ステップS23はオペレータが手動で実施するようになっている。オペレータはピストンシリンダユニット86のロッド87を固定部材88から切り離す。切り離したらステップS24に移行する。ステップS24もオペレータが手動で実施する。オペレータは射出装置3Aを後退方向に押して移動させる。射出装置3Aが最後退位置に達したら、後退検出センサ52により検出される。制御装置4は射出装置3Aが最後退位置に達したことを検出する。オペレータは制御装置4において所定の操作を実施して、処理を再開させる。そうすると制御装置4はステップS05を実行する。ステップS05はすでに説明しているので、説明を省略する。
【0042】
[第1の実施形態の変形例2]
図9Bによって第1の実施形態の変形例2に係る射出成形機1Bを説明する。変形例2に係る射出成形機1Bにおいて、第1の実施形態に係る射出成形機1と同様の部材には同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0043】
第1の実施形態の変形例2に係る射出装置3Bは、旋回手段91が第1の実施形態と相違している。変形例2に係る射出装置3Bの旋回手段91は、スクリュ駆動装置21に回転可能に接続されている送りねじ92と、この送りねじ92に螺合しているナット部93とから構成されている。ナット部93は昇降台37に設けられている。この旋回手段91は手動で駆動するようになっている。つまり送りねじ92を手動で回転すると、射出装置3Bが旋回する。変形例2に係る射出装置3Bには、旋回を規制するロック機構95も設けられている。ロック機構95によりロックされている場合、旋回手段91を駆動しても射出装置3Bは旋回しない。一方、ロック機構95が解除されていれば、旋回手段91により射出装置3Bを旋回させることができる。
【0044】
この第1の実施形態の変形例2に係る射出装置3Bにおいても、
図3によって説明した第1の実施形態に係る射出装置3において実施する射出装置の保守方法と同様に射出装置の保守方法を実施することができる。第1の実施形態の変形例2に係る射出装置3Bにおいて実施する射出装置の保守方法は、
図11に示されているように実施することになる。
図11のフローチャートは、
図3のフローチャートに対して破線で示された範囲が相違している。この相違している範囲についてのみ説明する。
【0045】
制御装置4はステップS05、S06によって射出装置3Bにおいてスクリュ19を最前進位置に移動したら、ステップS31を実施する。制御装置4はステップS31においてロック機構95を解除する。つまり射出装置3Bの旋回を許可する。なお、このとき制御装置4は画面において射出装置3Bの旋回が可能になった旨、メッセージを表示してもよい。制御装置4は処理を停止する。オペレータはステップS32により手動で旋回手段91を駆動する。つまり送りねじ92を回転させる。射出装置3Bは旋回する。
【0046】
<他の変形例>
第1、第2の実施形態はさらに色々な変形が可能である。例えば、旋回前処理において射出装置3、62、3A、3Bにおいて、射出材料を排出するパージを実施するようにしてもよい。あるいは、旋回前処理において加熱シリンダ18に設けられているヒータを停止して加熱シリンダ18の温度を所定の温度に低下するまで一時的に待機するようにしてもよい。このようにすると、射出装置3、62、3A、3Bの保守をさらに安全に実施することができる。
【0047】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 制御装置
7 ベッド 9 固定盤
10 上可動盤 11 下可動盤
12 タイバー 14 トグル機構
15 上側金型 16 下側金型
18 加熱シリンダ 19 スクリュ
21 スクリュ駆動装置 23 射出ノズル
25 ノズルタッチ装置 26 昇降装置
28 リニアガイド 29 台車
31 台車駆動機構 33 ボールねじ
34 ボールナット 35 移動用サーボモータ
37 昇降台 39 ボールねじ機構
40 昇降用サーボモータ 42 ボールナット
43 タイミングベルト 45 回転軸
47 旋回手段 49 ボールねじ
50 ボールナット 51 旋回用サーボモータ
52 後退検出センサ 53 旋回範囲
60 射出成形機 61 型締装置
62 射出装置 64 固定盤
65 可動盤 66 型締ハウジング
68 タイバー 70 トグル機構
72 固定側金型 73 可動側金型
75 ノズルタッチ装置 77 台車駆動機構
78 ボールねじ機構 80 移動用サーボモータ
85 ノズルタッチ装置 86 ピストンシリンダユニット
87 ロッド 88 固定部材
89 シリンダ 91 旋回手段
92 送りねじ 93 ナット部
95 ロック機構