(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084247
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2334 20110101AFI20240618BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20240618BHJP
B60R 21/232 20110101ALI20240618BHJP
【FI】
B60R21/2334
B60R21/205
B60R21/232
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198410
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】益子 功一
(72)【発明者】
【氏名】栗原 武大
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA14
3D054AA18
3D054BB08
3D054BB21
3D054CC04
3D054CC08
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】複数のバッグの干渉を抑制して乗員保護性能を向上した乗員保護装置を提供する。
【解決手段】乗員の前方で展開する第1バッグ30と、第1バッグに隣接して展開する第2バッグ40と、衝突態様に応じて第1バッグが展開しかつ第2バッグが展開しない第1展開態様と第1バッグ及び前記第2バッグが展開する第2展開態様とを選択する展開制御部110とを備える乗員保護装置を、第1バッグは、第1気室31と、第1気室から第2バッグ側へ張り出した第2気室33と、第1気室から第2気室へ展開用ガスGを供給する連通流路34とを有し、連通流路は、第2気室と第2バッグとの干渉に応じて第1気室から第2気室への展開用ガスの供給を制限する供給制限部35,36を有する構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の前方で展開する第1バッグと、
前記第1バッグに隣接して展開する第2バッグと、
衝突態様に応じて前記第1バッグが展開しかつ前記第2バッグが展開しない第1展開態様と前記第1バッグ及び前記第2バッグが展開する第2展開態様とを選択する展開制御部と
を備える乗員保護装置であって、
前記第1バッグは、
第1気室と、
前記第1気室から前記第2バッグ側へ張り出した第2気室と、
前記第1気室から前記第2気室へ展開用ガスを供給する連通流路とを有し、
前記連通流路は、前記第2気室と前記第2バッグとの干渉に応じて前記第1気室から前記第2気室への前記展開用ガスの供給を制限する供給制限部を有すること
を特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記第2バッグは、前記第1バッグの側方において車室側面部に隣接した領域で展開するカーテンバッグであり、
前記第1バッグの前記第2気室は、前記乗員の頭部又は上体の側部を保持するサイドサポート部であること
を特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記連通流路は、
前記第1気室と前記第2気室との間に設けられた第3気室と、
前記第1気室と前記第3気室との間に設けられた第1隔壁と、
前記第2気室と前記第3気室との間に設けられた第2隔壁と、
前記第1隔壁に設けられた第1開口と、
前記第2隔壁に設けられた第2開口とを有し、
前記第2気室と前記第2バッグとの干渉に応じて、前記第1隔壁と前記第2隔壁とが当接し、前記第1開口と前記第2開口との少なくとも一部が前記第1隔壁又は前記第2隔壁によって閉塞されること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記第1隔壁と前記第2隔壁とは、前記第2気室に対する前記第2バッグからの荷重入力方向に間隔を隔てて対向して配置されていること
を特徴とする請求項3に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記第1隔壁の周縁部の一部と、前記第2隔壁の周縁部の一部とが接続されていること
を特徴とする請求項3に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられる乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に設けられ、衝突時に乗員を拘束するエアバッグ装置に関する技術として、例えば特許文献1には、乗員の体格や着座姿勢に応じて適切に展開可能とするため、エアバッグ内を仕切り壁によって上部気室と下部気室に区画し、下部気室側にインフレータを設けるとともに、仕切り壁に薄膜部を有する調圧弁を設けて、薄膜部を下部気室内の圧力が設定値に達した際に破裂させて、下部気室と上部気室とが連通するように構成したものが記載されている。
特許文献2には、エアバッグの膨張展開中における圧力損失を低減し、乗員の体格に合わせて衝撃吸収力を効率よく発揮させるため、エアバッグは、エアバッグの一部に外部に突出した部分を形成する凸部と、凸部に形成されたベントホールと、一端が凸部に接続され他端がエアバッグの内部に接続されたストラップと、ストラップの他端をエアバッグ2の内部に案内するための挿通孔とを備え、ベントホールが、ストラップで凸部を引っ張った時に、凸部とエアバッグとが重なり合う領域に配置されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007- 1362号公報
【特許文献2】特開2008-308139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばオフセット衝突や斜め前面衝突(オブリーク衝突)などの、車体に横方向の挙動が発生する衝突態様の場合には、乗員の前方側で展開するエアバッグから乗員がずれて衝突する可能性があるため、例えば助手席エアバッグ等においては、乗員がずれないよう、乗員の頭部又は上体を左右から挟み込む突起部(サイドサポート部)を設けることが提案されている。
一方、車体に横方向の挙動が発生する衝突形態では、車室側面部に隣接した領域でカーテンエアバッグを展開させることで、乗員の頭部を効果的に保護することができる。
しかし、前面衝突エアバッグと、その周囲で展開するカーテンエアバッグ等とが展開時に干渉した場合、各エアバッグの変形、位置ずれが発生し、乗員保護性能が低下することが懸念される。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、複数のバッグの干渉を抑制して乗員保護性能を向上した乗員保護装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る乗員保護装置は、乗員の前方で展開する第1バッグと、前記第1バッグに隣接して展開する第2バッグと、衝突態様に応じて前記第1バッグが展開しかつ前記第2バッグが展開しない第1展開態様と前記第1バッグ及び前記第2バッグが展開する第2展開態様とを選択する展開制御部とを備える乗員保護装置であって、前記第1バッグは、第1気室と、前記第1気室から前記第2バッグ側へ張り出した第2気室と、前記第1気室から前記第2気室へ展開用ガスを供給する連通流路とを有し、前記連通流路は、前記第2気室と前記第2バッグとの干渉に応じて前記第1気室から前記第2気室への前記展開用ガスの供給を制限する供給制限部を有することを特徴とする。
これによれば、第1バッグと第2バッグとがともに展開する衝突態様の場合に、第1バッグから第2バッグ側へ張り出した第2気室への展開用ガスの供給が遮断され、第2気室の第1気室からの張出量を規制することにより、第1バッグと第2バッグとが干渉することによる第1バッグの変形、位置ずれを抑制し、乗員を適切に拘束して乗員保護性能を向上することができる。
【0006】
本発明において、前記第2バッグは、前記第1バッグの側方において車室側面部に隣接した領域で展開するカーテンバッグであり、前記第1バッグの前記第2気室は、前記乗員の頭部又は上体の側部を保持するサイドサポート部である構成とすることができる。
これによれば、カーテンバッグである第2バッグの展開時に第1バッグとの干渉を抑制することにより、第1バッグがカーテンバッグに押されて車幅方向内側へ変位することを抑制できる。
【0007】
本発明において、前記連通流路は、前記第1気室と前記第2気室との間に設けられた第3気室と、前記第1気室と前記第3気室との間に設けられた第1隔壁と、前記第2気室と前記第3気室との間に設けられた第2隔壁と、前記第1隔壁に設けられた第1開口と、前記第2隔壁に設けられた第2開口とを有し、前記第2気室と前記第2バッグとの干渉に応じて、前記第1隔壁と前記第2隔壁とが当接し、前記第1開口と前記第2開口との少なくとも一部が前記第1隔壁又は前記第2隔壁によって閉塞される構成とすることができる。
これによれば、例えばアクティブベントホール等のデバイスや電子制御等を用いることなく、簡単な構成により上述した効果を得ることができる。
【0008】
本発明において、前記第1隔壁と前記第2隔壁とは、前記第2気室に対する前記第2バッグからの荷重入力方向に間隔を隔てて対向して配置されている構成とすることができる。
これによれば、第1バッグの第2気室と第2バッグとの干渉に応じて、適切に第1開口、第2開口を閉塞することができる。
【0009】
本発明において、前記第1隔壁の周縁部の一部と、前記第2隔壁の周縁部の一部とが接続されている構成とすることができる。
これによれば、第1隔壁と第2隔壁とが接続部回りに相対揺動することにより、第1開口、第2開口を閉塞する際の挙動の安定性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、複数のバッグの干渉を抑制して乗員保護性能を向上した乗員保護装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を適用した乗員保護装置の実施形態を有する車両の車室内の模式的側面視図である。
【
図2】実施形態の乗員保護装置における助手席エアバッグの外観斜視図である。
【
図3】実施形態における助手席エアバッグの第1隔壁及び第2隔壁の構成を示す模式的斜視図である。
【
図4】実施形態の乗員保護装置を制御するシステム構成を示す図である。
【
図5】実施形態の乗員保護装置において助手席エアバッグが展開しかつカーテンエアバッグが展開しない場合の状態を模式的に示す図である。
【
図6】実施形態の乗員保護装置において助手席エアバッグ及びカーテンエアバッグがともに展開した場合の状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した乗員保護装置の実施形態について説明する。
実施形態の乗員保護装置は、例えば乗用車等の自動車の車室に設けられるエアバッグ装置である。
なお、各バッグは実際には空気ではなく化薬式(火薬式)のインフレータ(ガス発生装置)が発生する展開用ガスによって展開するが、以下一般的な名称である「エアバッグ」と称して説明する。
図1は、実施形態の乗員保護装置を有する車両の車室内の模式的側面視図である。
車室10は、フロアパネル11、トーボード12、インストルメントパネル13、フロントウインドウガラス14、ルーフ15等を有する。
【0013】
フロアパネル11は、車室10の床面部であって、ほぼ水平に配置された平板状の部分である。
トーボード12は、フロアパネル11の前端部から上方へ立ち上げて形成された部分である。
トーボード12は、乗員Pの足部の前方側に配置される。
【0014】
インストルメントパネル13は、トーボード12の上部から車両後方側(車室内側)へ張り出して形成された内装部材である。
インストルメントパネル13には、図示しない計器類、空調換気装置、インフォテイメント装置などが収容される。
また、インストルメントパネル13は、後述する助手席エアバッグ30が取り付けられる基部となる。
【0015】
フロントウインドウガラス14は、乗員Pが自車両前方側を視認するフロントウインドウに設けられたガラスである。
フロントウインドウガラス14は、インストルメントパネル13の上端部(前端部)から、上方側かつ斜め後方側へ張り出している。
【0016】
ルーフ15は、車室10の上面部(天井部分)を構成するパネル状の部材である。
ルーフ15は、フロントウインドウガラス14の上端部から車両後方側へ張り出している。
フロアパネル11、トーボード12、ルーフ15は、例えば鋼板等の金属製のパネルをプレス成型し、車両のホワイトボディ(未艤装車体)の一部として構成されている。
【0017】
車室10の内部には、乗員Pが着座するシート20が設けられる。
シート20は、一例として、車室10内の最前列であって、非運転席(助手席)に設けられる助手席シートである。
シート20は、シートクッション21、バックレスト22、ヘッドレスト23等を有する。
【0018】
シートクッション21は、乗員Pの臀部及び大腿部が載せられる部分(座面部)である。
シートクッション21は、図示しないシートレール等を介して、フロアパネル11の上部に取り付けられる。
バックレスト22は、乗員Pの背部、腰部、肩部等を後方側から支持する部分である。
バックレスト22は、シートクッション21の後端部近傍から上方へ突出している。
ヘッドレスト23は、乗員Pの頭部を後方側から支持する部分である。
ヘッドレスト23は、バックレスト22の上端部近傍から上方へ突出している。
【0019】
車両の衝突時において、車室10内には、乗員Pを拘束して傷害を抑制するため、助手席エアバッグ30、カーテンエアバッグ40の一方あるいは両方が展開される。
助手席エアバッグ30は、シート20に着座した乗員Pの前方で展開し、乗員Pを主に前方側から拘束する第1バッグである。
カーテンエアバッグ40は、シート20に着座した乗員Pの車幅方向外側における側方で展開し、乗員Pの頭部がフロントサイドウインドウやピラーに直接衝突することを防止する第2バッグである。
【0020】
助手席エアバッグ30、カーテンエアバッグ40は、例えば、ナイロン系繊維などの織物からなる複数枚の基布パネルを、縫合、溶合などによって袋体状に形成したものである。
展開後における助手席エアバッグ30の後部と、カーテンエアバッグ40の前部とは、
図1に示すように、車幅方向から見たときに、重畳するように配置されている。
【0021】
助手席エアバッグ30は、未展開状態(非衝突状態)においては、折り畳まれた状態で、インストルメントパネル13に設けられた図示しないリテーナに収納されている。
カーテンエアバッグ40は、未展開状態においては、折り畳まれ、あるいは、丸められた状態で、ルーフ15の側部で、内装部材(トリム)の内側に収容されている。
【0022】
図2は、実施形態の乗員保護装置における助手席エアバッグの外観斜視図である。
図2は、助手席エアバッグ30の車幅方向外側かつ斜め前方側から見た状態を示している。
助手席エアバッグ30は、メインバッグ31、インナサポートバッグ32、アウタサポートバッグ33、中間室34等を有する。
【0023】
メインバッグ31は、助手席エアバッグ30を乗員P側から見たときに中央部で展開する第1気室部分である。
メインバッグ31の基端部は、インストルメントパネル13に設けられたリテーナに接続され、ガス発生装置であるインフレータから開口Oを介して展開用ガスが供給される。
【0024】
インナサポートバッグ32、アウタサポートバッグ33は、メインバッグ31の側部から車両後方側(乗員側)かつ斜め外側へ張り出して展開する第2気室部分である。
インナサポートバッグ32、アウタサポートバッグ33は、乗員Pの頭部、上体などを車幅方向に挟持、拘束し、姿勢を安定させる機能を有するサイドサポート部である。
インナサポートバッグ32、アウタサポートバッグ33は、メインバッグ31と連通しており、メインバッグ31内を介して展開用ガスが供給される。
アウタサポートバッグ33は、中間室34を介してメインバッグ31と連通している。
【0025】
インナサポートバッグ32は、メインバッグ31に対して、車幅方向内側(
図2に示す左ハンドル車の場合には左側)に設けられている。
アウタサポートバッグ33は、メインバッグ31に対して、車幅方向外側(
図2に示す左ハンドル車の場合には右側)に設けられている。
【0026】
中間室34は、メインバッグ31とアウタサポートバッグ33との間に配置された気室である。
中間室34は、メインバッグ31からアウタサポートバッグ33に展開用ガスを供給する連通流路(第3気室)として機能する。
中間室34は、第1隔壁35、第2隔壁36、外面部37を有して構成されている。
第1隔壁35は、メインバッグ31と中間室34とを仕切る基布パネルである。
第2隔壁36は、中間室34とアウタサポートバッグ33とを仕切る基布パネルである。
第1隔壁35、第2隔壁36は、アウタサポートバッグ33とカーテンエアバッグ40との干渉に応じてメインバッグ31からアウタサポートバッグ33への展開用ガスの供給を制限する供給制限部として機能する。この点、以下詳しく説明する。
【0027】
図3は、実施形態における助手席エアバッグの第1隔壁及び第2隔壁の構成を示す模式的斜視図である。
図3(a)は、メインバッグ31とアウタサポートバッグ33とが中間室34を介して連通した状態を示している。
図3(b)は、メインバッグ31とアウタサポートバッグ33との連通が遮断された状態を示している。
【0028】
第1隔壁35、第2隔壁36は、例えば、半円形などのように、周縁部の一部に直線状の辺部Sを有する平面形とすることができる。
第1隔壁35と第2隔壁36とは、辺部Sにおいて、例えば縫合等により相互に接続されている。
また、第1隔壁35、第2隔壁36の辺部S以外の周縁部は、外面部37(
図3では図示しない。
図2等を参照。)によって接続されている。
外面部37は、助手席エアバッグ30の外表面の一部を構成する基布パネルである。
第1隔壁35と第2隔壁36との接合部(辺部S)は、車幅方向において、助手席エアバッグ30の中心側(メインバッグ31側)に配置されている。
外面部37は、中間室34の車幅方向外側の外表面部を構成する。
外面部37は、可撓性を有し、第1隔壁35と第2隔壁36とが辺部S回りに相対揺動して離接することを許容する。
【0029】
第1隔壁35には、開口38が設けられている。
開口38は、メインバッグ31から中間室34に展開用ガスを導入するベントホールである。
開口38は、例えば、辺部Sと平行な方向に沿って、複数配列された丸穴である。
第2隔壁36には、開口39が設けられている。
開口39は、中間室34からアウタサポートバッグ33に展開用ガスを導入するベントホールである。
開口39は、例えば、辺部Sと平行な方向に沿って、複数配列された丸穴である。
【0030】
図3(a)に示すように、第1隔壁35と第2隔壁36とが開いた状態(離間した状態)においては、開口38,39は、それぞれメインバッグ31と中間室34、中間室34とアウタサポートバッグ33を連通させる状態となっている。
このとき、第1隔壁35と第2隔壁36は、カーテンエアバッグ40が干渉した場合におけるアウタサポートバッグ33への荷重入力方向に間隔を隔てて対向して配置されている。
この状態においては、展開用ガスG(
図2参照)は、メインバッグ31から中間室34の内部を経由して、アウタサポートバッグ33に流入可能な状態となっている。
【0031】
図3(b)に示すように、第1隔壁35と第2隔壁36とが実質的に密着した状態となると、開口38,39は、第1隔壁35、第2隔壁36の法線方向から見たときに、相互にオフセットして(重畳しないように)配置されている。
これにより、開口38は第2隔壁36により閉塞された状態となり、開口39は第1隔壁により閉塞された状態となる。
このとき、メインバッグ31から中間室34を経由したアウタサポートバッグ33への展開用ガスの供給は遮断される。
本実施形態においては、上記構成によりカーテンエアバッグ40が展開する際のアウタサポートバッグ33の展開を規制している。この点、後に詳しく説明する。
【0032】
図4は、実施形態の乗員保護装置を制御するシステム構成を示す図である。
乗員保護装置の制御システム100は、エアバッグ制御ユニット110、加速度センサ120、助手席エアバッグインフレータ130、カーテンエアバッグインフレータ140等を有する。
【0033】
エアバッグ制御ユニット110は、助手席エアバッグ30、カーテンエアバッグ40の展開を制御する制御装置(展開制御部)である。
エアバッグ制御ユニット110は、例えば、CPU等の情報処理部、RAMやROM等の記憶部、入出力インターフェイス、及び、これらを接続するバス等を有するマイクロコンピュータとして構成することができる。
エアバッグ制御ユニット110は、例えば、車室10内において、フロアパネル11の上面等に取り付けられている。
【0034】
加速度センサ120は、車体に作用する前後方向及び車幅方向の加速度を検出するものである。
加速度センサ120は、例えば、エアバッグ制御ユニット110の筐体内に、エアバッグ制御ユニット110と一体に設けることができる。
エアバッグ制御ユニット110は、加速度センサ120の出力に基づいて、衝突の発生を検知するとともに、衝突形態を判別する。
【0035】
助手席エアバッグインフレータ130、カーテンエアバッグインフレータ140は、助手席エアバッグ30、カーテンエアバッグ40にそれぞれ展開用ガスを供給する化薬式(火薬式)のガス発生装置である。
エアバッグ制御ユニット110は、加速度センサ120が所定以上の前後方向加速度を検出した場合に、前面衝突の発生を認識し、助手席エアバッグインフレータ130を作動させ、助手席エアバッグ30を展開させる。
また、エアバッグ制御ユニット110は、加速度センサ120が所定以上の横方向加速度を検出した場合に、カーテンエアバッグインフレータ140を作動させ、カーテンエアバッグ40を展開させる。
【0036】
ここで、例えば自車両に対して斜め前方側から他車両等が衝突するオブリーク前面衝突等の場合には、助手席エアバッグ30、カーテンエアバッグ40がともに展開する場合がある。
実施形態においては、このような場合に、助手席エアバッグ30のアウタサポートバッグ33がカーテンエアバッグ40と干渉し、助手席エアバッグ30が車幅方向内側へ変位することを防止するため、以下説明するように、中間室34を用いたアウタサポートバッグ33の展開規制を行っている。
【0037】
図5は、実施形態の乗員保護装置において助手席エアバッグが展開しかつカーテンエアバッグが展開しない場合の状態を模式的に示す図である。
図5は、例えば、車体に車幅方向の挙動がほとんど発生しない通常の前面衝突時の状態を示している。
図5に示す状態では、カーテンエアバッグ40は展開しないことから、カーテンエアバッグ40とアウタサポートバッグ33との干渉は発生しない。
この場合、中間室34が押し潰されて第1隔壁35と第2隔壁36とが接することはなく、展開用ガスGはメインバッグ31から中間室34を経由してアウタサポートバッグ33に供給される。
これにより、アウタサポートバッグ33は規制を受けることなく展開する。
【0038】
図6は、実施形態の乗員保護装置において助手席エアバッグ及びカーテンエアバッグがともに展開した場合の状態を模式的に示す図である。
図6に示すように、助手席エアバッグ30、カーテンエアバッグ40がともに展開した場合、展開初期のアウタサポートバッグ33は、カーテンエアバッグ40と干渉し、車幅方向内側へ押圧される。
【0039】
アウタサポートバッグ33がカーテンエアバッグ40から受ける荷重により、中間室34は、第1隔壁35と第2隔壁36とが接する方向に圧縮され、押し潰される。
第1隔壁35と第2隔壁36とが当接すると、開口38,39が閉塞されることにより、メインバッグ31からアウタサポートバッグ33への展開用ガスGの供給が停止され、アウタサポートバッグ33の展開が規制(さらなる展開が停止)される。
これにより、カーテンエアバッグ40とアウタサポートバッグ33との干渉が抑制され、助手席エアバッグ30がカーテンエアバッグ40に押されて車幅方向内側へ変位することが抑制される。
【0040】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)助手席エアバッグ30とカーテンエアバッグ40とがともに展開する衝突態様の場合に、助手席エアバッグ30からカーテンエアバッグ40側へ張り出したアウタサポートバッグ33への展開用ガスGの供給が遮断され、アウタサポートバッグ33のメインバッグ31からの張出量を規制することにより、助手席エアバッグ30とカーテンエアバッグ40とが干渉することによるカーテンエアバッグ40の変形、位置ずれを抑制し、乗員Pを適切に拘束して乗員保護性能を向上することができる。
(2)カーテンエアバッグ40展開時のアウタサポートバッグ33への展開用ガスGの供給制限を、第1隔壁35、第2隔壁36に形成した開口38,39の閉塞によって行うことにより、例えばアクティブベントホール等のデバイスや電子制御等を用いることなく、簡単な構成により上述した効果を得ることができる。
(3)第1隔壁35と第2隔壁36とは、アウタサポートバッグ33に対するカーテンエアバッグ40からの荷重入力方向に間隔を隔てて対向して配置されていることにより、助手席エアバッグ30のアウタサポートバッグ33とカーテンエアバッグ40との干渉に応じて、適切に開口38,39を閉塞することができる。
(4)第1隔壁35と第2隔壁36とがその周縁部に設けられた辺部Sにおいて接続されていることにより、第1隔壁35と第2隔壁36とが接続部回りに相対揺動することで開口38,39を閉塞する際の挙動の安定性を高めることができる。
【0041】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
例えば、乗員保護装置の構成は、上述した実施形態の構成に限らず、適宜変更することができる。
例えば、第1バッグの第1気室と第2気室とを連通させる連通流路や、展開用ガスの供給を制限する供給制限部の構成は、実施形態の構成に限らず、適宜変更することができる。
また、第2バッグもカーテンエアバッグに限らず、例えばサイドエアバッグや、乗員の車幅方向内側で展開するファーサイドエアバッグなど、特に限定されない。
【符号の説明】
【0042】
P 乗員 10 車室
11 フロアパネル 12 トーボード
13 インストルメントパネル 14 フロントウインドウガラス
15 ルーフ
20 シート 21 シートクッション
22 バックレスト 23 ヘッドレスト
30 助手席エアバッグ 31 メインバッグ
32 インナサポートバッグ 33 アウタサポートバッグ
34 中間室 35 第1隔壁
36 第2隔壁 37 外面部
38 開口 39 開口
S 辺部 40 カーテンエアバッグ
100 制御システム 110 エアバッグ制御ユニット
120 加速度センサ 130 助手席エアバッグインフレータ
140 カーテンエアバッグインフレータ
G 展開用ガス