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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084248
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2342 20110101AFI20240618BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20240618BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20240618BHJP
【FI】
B60R21/2342
B60R21/205
B60R21/2338
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198411
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 智郁
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA14
3D054BB08
3D054CC08
3D054CC11
3D054CC34
3D054CC35
3D054CC42
3D054DD07
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】乗員の体格差に応じて適切なバッグ部の展開態様が得られる乗員保護装置を提供する。
【解決手段】衝突又は衝突の予測に応じて展開するバッグ部31を備える乗員保護装置を、バッグ部の表面における第1箇所P1と第2箇所P2とを引き寄せた状態で拘束するとともに、バッグ部により保護される乗員Pの体格が所定以上である場合に拘束を解除する拘束部40,50を備える構成とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝突又は衝突の予測に応じて展開するバッグ部を備える乗員保護装置であって、
前記バッグ部の表面における第1箇所と第2箇所とを引き寄せた状態で拘束するとともに、前記バッグ部により保護される乗員の体格が所定以上である場合に前記拘束を解除する拘束部を備えること
を特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記拘束部は、前記第1箇所に設けられた第1部材と前記第2箇所に設けられた第2部材とを縫合する縫合部材を有すること
を特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記縫合部材の一部は、前記バッグ部が前記乗員に対向する面部に沿って環状に配置された環状部を有し、
前記拘束部は、前記環状部への入力によって発生する前記縫合部材の張力によって縫合箇所が破壊され前記拘束が解除されること
を特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記乗員の体格を検出する体格検出部と、
前記体格検出部が検出した前記乗員の体格が所定以上である場合に前記縫合部材を無効化する縫合部材無効化部と
を備えることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記バッグ部は前記乗員の前方で展開し、
前記第1箇所と前記第2箇所は、前記バッグ部が前記乗員と対向する面部において車幅方向に配列されること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の乗員をバッグ部により保護する乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグを用いた乗員保護装置に関する技術として、例えば、特許文献1には、エアバッグ内圧制御に加え、エアバッグに発生する張力と張力ベクトルの増加分を低減するエアバッグ装置において、エアバッグの内部には、乗員側から見て、展開時における最外側部に沿って取り付けられる複数のジョイント部によって摺動自在に保持される環状の牽引部材と、一端が隣り合うジョイント部の間で牽引部材と連結され、他端がエアバッグの上部又は下部に固定されるテンション部材を備えるものが記載されている。
特許文献2には、同様の課題を解決するため、エアバッグの内部に、乗員側から見て、展開時における最外側部に沿って取り付けられる複数のジョイント部と、ジョイント部によって摺動自在に保持される環状の上部、下部牽引部材と、一端が隣り合うジョイント部の間で上部又は下部牽引部材と連結され、他端がエアバッグの上部又は下部に固定され、上部又は下部牽引部材との連結が交互になされる上部テンション部材及び下部テンション部材を備えることが記載されている。
特許文献3には、乗員の体格や衝突速度に拘わらずサイドエアバッグを適切に膨張展開させるため、ベントホールに設けられエアバッグの膨張に連動して変形する開閉部材を備え、開閉部材が伸縮性を有する材料からなり、ベントホールの外周領域を覆うように並設されてベントホールの周縁部に固定される複数枚の弁片と、一端側がエアバッグの頂上部に固定されると共に他端側が各弁片に連結される紐状部材とを備え、エアバッグの上下方向の膨張展開に伴い紐状部材が引っ張られることで、各弁片が変形してベントホールの開口面積が広がるようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009- 61881号公報
【特許文献2】特開2009- 61882号公報
【特許文献3】特開2017- 74882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗員の前方で展開するバッグ部を有する乗員保護装置においては、乗員の体格差への対応が問題となる。
例えば、バッグ部の左右から乗員側へ張り出したサイドサポート部を有するエアバッグの場合、肩幅や頭部サイズが小さい小柄な乗員の場合には、バッグ中央部のメイン気室を小さく展開し、サイドサポートの間隔を小さくすることが好ましい。
しかし、この場合、肩幅、頭部サイズや重量が大きい成人男性等の場合には、吸収可能なエネルギ量が不足してしまう。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、乗員の体格差に応じて適切なバッグ部の展開態様が得られる乗員保護装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る乗員保護装置は、衝突又は衝突の予測に応じて展開するバッグ部を備える乗員保護装置であって、前記バッグ部の表面における第1箇所と第2箇所とを引き寄せた状態で拘束するとともに、前記バッグ部により保護される乗員の体格が所定以上である場合に前記拘束を解除する拘束部を備えることを特徴とする。
これによれば、乗員の体格が比較的小さい場合には、拘束部によってバッグ部の第1箇所と第2箇所とが引き寄せられた状態でバッグ部を展開させることにより、乗員を適切に保護することができる。
また、乗員の体格が比較的大きい場合には、拘束部の拘束を解除して展開後のバッグ部の容量を増大させることにより、十分なエネルギ吸収量を確保することができる。
【0006】
本発明において、前記拘束部は、前記第1箇所に設けられた第1部材と前記第2箇所に設けられた第2部材とを縫合する縫合部材を有する構成とすることができる。
これによれば、簡単な構成により上述した効果を得ることができる。
【0007】
本発明において、前記縫合部材の一部は、前記バッグ部が前記乗員に対向する面部に沿って環状に配置された環状部を有し、前記拘束部は、前記環状部への入力によって発生する前記縫合部材の張力によって縫合箇所が破壊され前記拘束が解除される構成とすることができる。
これによれば、拘束部の拘束を解除するためにアクチュエータや電子制御を利用する必要がなく、装置構成をさらに簡素化することができる。
【0008】
本発明において、前記乗員の体格を検出する体格検出部と、前記体格検出部が検出した前記乗員の体格が所定以上である場合に前記縫合部材を無効化する縫合部材無効化部と
を備える構成とすることができる。
これによれば、乗員の体格に応じたきめ細かい展開態様の制御を行うことができる。
【0009】
本発明において、前記バッグ部は前記乗員の前方で展開し、前記第1箇所と前記第2箇所は、前記バッグ部が前記乗員と対向する面部において車幅方向に配列される構成とすることができる。
これによれば、乗員の体格に応じた肩幅など身体左右方向の寸法差に応じて、展開時のバッグ部の横幅を調節することにより、体格が異なる場合であっても良好な乗員保護性能を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、乗員の体格差に応じて適切なバッグ部の展開態様が得られる乗員保護装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用した乗員保護装置の第1実施形態を有する車両の車室内の模式的側面視図である。
図2】第1実施形態の乗員保護装置における助手席エアバッグの部分透視斜視図である。
図3】第1実施形態の助手席エアバッグにおけるバッグ締め上げ部の構成を示す模式図である。
図4】第1実施形態の乗員保護装置を制御するシステム構成を示す図である。
図5】第2実施形態の乗員保護装置を制御するシステム構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明を適用した乗員保護装置の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の乗員保護装置は、例えば乗用車等の自動車の車室に設けられるエアバッグ装置である。
なお、各バッグは実際には空気ではなく化薬式(火薬式)のインフレータ(ガス発生装置)が発生する展開用ガスによって展開するが、以下一般的な名称である「エアバッグ」と称して説明する。
図1は、第1実施形態の乗員保護装置を有する車両の車室内の模式的側面視図である。
車室10は、フロアパネル11、トーボード12、インストルメントパネル13、フロントウインドウガラス14、ルーフ15等を有する。
【0013】
フロアパネル11は、車室10の床面部であって、ほぼ水平に配置された平板状の部分である。
トーボード12は、フロアパネル11の前端部から上方へ立ち上げて形成された部分である。
トーボード12は、乗員Pの足部の前方側に配置される。
【0014】
インストルメントパネル13は、トーボード12の上部から車両後方側(車室内側)へ張り出して形成された内装部材である。
インストルメントパネル13には、図示しない計器類、空調換気装置、インフォテイメント装置などが収容される。
また、インストルメントパネル13は、後述する助手席エアバッグ30が取り付けられる基部となる。
【0015】
フロントウインドウガラス14は、乗員Pが自車両前方側を視認するフロントウインドウに設けられたガラスである。
フロントウインドウガラス14は、インストルメントパネル13の上端部(前端部)から、上方側かつ斜め後方側へ張り出している。
【0016】
ルーフ15は、車室10の上面部(天井部分)を構成するパネル状の部材である。
ルーフ15は、フロントウインドウガラス14の上端部から車両後方側へ張り出している。
フロアパネル11、トーボード12、ルーフ15は、例えば鋼板等の金属製のパネルをプレス成型し、車両のホワイトボディ(未艤装車体)の一部として構成されている。
【0017】
車室10の内部には、乗員Pが着座するシート20が設けられる。
シート20は、一例として、車室10内の最前列であって、非運転席(助手席)に設けられる助手席シートである。
シート20は、シートクッション21、バックレスト22、ヘッドレスト23等を有する。
【0018】
シートクッション21は、乗員Pの臀部及び大腿部が載せられる部分(座面部)である。
シートクッション21は、図示しないシートレール等を介して、フロアパネル11の上部に取り付けられる。
バックレスト22は、乗員Pの背部、腰部、肩部等を後方側から支持する部分である。
バックレスト22は、シートクッション21の後端部近傍から上方へ突出している。
ヘッドレスト23は、乗員Pの頭部を後方側から支持する部分である。
ヘッドレスト23は、バックレスト22の上端部近傍から上方へ突出している。
【0019】
車両の衝突時において、車室10内には、乗員Pを拘束して傷害を抑制するため、助手席エアバッグ30が展開される。
助手席エアバッグ30は、シート20に着座した乗員Pの前方で展開し、乗員Pを主に前方側から拘束するバッグ部である。
助手席エアバッグ30は、例えば、ナイロン系繊維などの織物からなる複数枚の基布パネルを、縫合、溶合などによって袋体状に形成したものである。
助手席エアバッグ30は、未展開状態(非衝突状態)においては、折り畳まれた状態で、インストルメントパネル13に設けられた図示しないリテーナに収納されている。
【0020】
図2は、実施形態の乗員保護装置における助手席エアバッグの外観斜視図である。
図2は、助手席エアバッグ30の車幅方向外側かつ斜め前方側から見た状態を示している。
助手席エアバッグ30は、メインバッグ31、インナサポートバッグ32、アウタサポートバッグ33等を有する。
【0021】
メインバッグ31は、助手席エアバッグ30を乗員P側から見たときに中央部で展開する気室である。
メインバッグ31の基端部は、インストルメントパネル13に設けられたリテーナに接続され、ガス発生装置であるインフレータから開口Oを介して展開用ガスが供給される。
【0022】
インナサポートバッグ32、アウタサポートバッグ33は、メインバッグ31の側部から車両後方側(乗員側)かつ斜め外側へ張り出して展開する気室である。
インナサポートバッグ32、アウタサポートバッグ33は、乗員Pの頭部、上体などを車幅方向に挟持、拘束し、姿勢を安定させる機能を有するサイドサポート部である。
インナサポートバッグ32、アウタサポートバッグ33は、メインバッグ31と連通しており、メインバッグ31内を介して展開用ガスが供給される。
【0023】
インナサポートバッグ32は、メインバッグ31に対して、車幅方向内側(図2に示す左ハンドル車の場合には左側)に設けられている。
アウタサポートバッグ33は、メインバッグ31に対して、車幅方向外側(図2に示す左ハンドル車の場合には右側)に設けられている。
【0024】
助手席エアバッグ30は、その内部に、締め上げ部40、テザー50を有する。
締め上げ部40は、メインバッグ31が乗員Pに対向する面部において、車幅方向に離間して配列された第1箇所P1、第2箇所P2(本発明の第1箇所、第2箇所)を、テザー50の張力を用いて引き寄せた状態で拘束するものである。
締め上げ部40、テザー50は、協働して本発明の拘束部として機能する。
締め上げ部40は、メインバッグ31において、乗員の頭部又は胸部が当接する上部に設けられている。
【0025】
図3は、第1実施形態の助手席エアバッグにおける締め上げ部の構成を模式的に示す図である。
締め上げ部40は、一対のフランジパネル41,42(本発明の第1部材、第2部材)を有する。
フランジパネル41,42は、助手席エアバッグ30の本体部を構成する基布パネルと同様の基布パネルにより構成されている。
フランジパネル41,42は、メインバッグ31の前面部(乗員Pと対向する面部)の内面から、メインバッグ31の内側へ張り出すようメインバッグ31に取り付けられている。
【0026】
フランジパネル41,42のメインバッグ31への取付は、例えば、フランジパネル41,42の一方の端縁部を、メインバッグ31を構成するパネルに縫合、溶合等によって接合することにより行われる。
メインバッグ31へのフランジパネル41,42の取付箇所P1、P2は、テザー50による縫合がなされていない場合においては、車幅方向(乗員Pの肩幅方向)に離間するよう配置されている。
【0027】
テザー50は、例えばナイロン系繊維を撚り合わせて形成されたストリップ(紐)状の部材(本発明の縫合部材)である。
テザー50は、フランジパネル41,42を例えば並縫い(Regular Stitch)によって縫合する。
フランジパネル41,42が縫合されることによって、取付箇所P1,P2は車幅方向に引き寄せられた状態となる。
【0028】
テザー50は、右半部51、左半部52を有する。
テザー50の右半部51、左半部52は、乗員Pから見たときに、締め上げ部40の中心に対して右側、左側にそれぞれ設けられている。
テザー50の右半部51、左半部52の上部は、締め上げ部40のフランジパネル41,42を縫合している。
テザー50の右半部51、左半部52の下部は、メインバッグ31の下部に設けられた固定部53において、メインバッグ31の表面に固定されている。
【0029】
テザー50の右半部51、左半部52の中間部は、右テザーガイド54、左テザーガイド55によりそれぞれ支持されている。
右テザーガイド54、左テザーガイド55は、テザー50が長手方向に沿って自由に移動可能な状態で支持する部材であって、メインバッグ31の前面部に固定されている。
右テザーガイド54、左テザーガイド55は、車幅方向に離間して配置されている。
【0030】
図4は、第1実施形態の乗員保護装置を制御するシステム構成を示す図である。
乗員保護装置の制御システム100は、エアバッグ制御ユニット110、加速度センサ120、助手席エアバッグインフレータ130等を有する。
【0031】
エアバッグ制御ユニット110は、助手席エアバッグ30の展開を制御する制御装置(展開制御部)である。
エアバッグ制御ユニット110は、例えば、CPU等の情報処理部、RAMやROM等の記憶部、入出力インターフェイス、及び、これらを接続するバス等を有するマイクロコンピュータとして構成することができる。
エアバッグ制御ユニット110は、例えば、車室10内において、フロアパネル11の上面等に取り付けられている。
【0032】
加速度センサ120は、車体に作用する前後方向及び車幅方向の加速度を検出するものである。
加速度センサ120は、例えば、エアバッグ制御ユニット110の筐体内に、エアバッグ制御ユニット110と一体に設けることができる。
エアバッグ制御ユニット110は、加速度センサ120の出力に基づいて、衝突の発生を検知するとともに、衝突形態を判別する。
【0033】
助手席エアバッグインフレータ130は、助手席エアバッグ30に展開用ガスを供給する化薬式(火薬式)のガス発生装置である。
エアバッグ制御ユニット110は、加速度センサ120が所定以上の前後方向加速度を検出した場合に、前面衝突の発生を認識し、助手席エアバッグインフレータ130を作動させ、助手席エアバッグ30を展開させる。
【0034】
上述した構成により、テザー50は、締め上げ部40の下側において、乗員Pから見たときに環状に配置された環状部Cを形成する。
車両の衝突時に、乗員Pの頭部又は胸部は、環状部Cの中央部に衝突するよう配置されている。
環状部Cの中央部に乗員Pの身体の一部が衝突すると、環状部Cに沿った領域のメインバッグ31の前面パネルが変形し、右テザーガイド54、左テザーガイド55が左右方向に広がるよう相対変位する。
この相対変位により、テザー50には、張力が発生する。
【0035】
衝突時にテザー50に作用する張力は、乗員Pの体格が大きくなる(重量が増加する)のに応じて増大する。
ここで、テザー50に発生する張力が所定以上(乗員の体格が所定以上)となったときに、締め上げ部40は、テザー50が破断し、あるいは、テザー50がフランジパネル41,42を切断することによって、破壊される。
これにより、取付箇所P1、P2が引き寄せられるよう拘束された状態が解除され、取付箇所P1,P2は車幅方向(図2に白矢印で図示する方向)に離間し、展開後のメインバッグ31の上部の幅方向におけるサイズが拡大する。
【0036】
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)乗員Pの体格が比較的小さい場合には、締め上げ部40によってメインバッグ31の取付箇所P1,P2が引き寄せられた状態で助手席エアバッグ30を展開させることにより、乗P員を適切に保護することができる。
例えば、乗員Pの体格が小さい場合に、体格が大きい場合に対してインナサポートバッグ32とアウタサポートバッグ33との間隔が狭くなり、横方向の加速度やヨー方向の車体挙動を伴う衝突形態の場合に、各サポートバッグによるサポート性能を確保し、初期拘束を良好とすることができる。
また、乗員Pの体格が比較的大きい場合には、締め上げ部40の拘束を解除して展開後の助手席エアバッグ30の容量を増大させることにより、十分なエネルギ吸収量を確保することができる。
(2)フランジパネル41,42をテザー50で縫合して締め上げ部40を構成することにより、簡単な構成で上述した効果を得ることができる。
(3)テザー50の下部は、メインバッグ31が乗員Pに対向する面部に沿って環状に配置された環状部Cを有し、締め上げ部40は、環状部Cへの入力によって発生するテザー50の張力によって縫合箇所が破壊され拘束が解除されることにより、締め上げ部40の拘束を解除するためにアクチュエータや電子制御を利用する必要がなく、装置構成をさらに簡素化することができる。
【0037】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した乗員保護装置の第2実施形態について説明する。
以下説明する第2実施形態において、上述した第1実施形態と同様の箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
第2実施形態においては、環状部Cに代えて、テザー50の端部に、テザー50を切断するテザーカッタ140(本発明の縫合部材無効化部)を設けている。
【0038】
図5は、第2実施形態の乗員保護装置を制御するシステム構成を示す図である。
第2実施形態においては、エアバッグ制御ユニット110は、ドライバモニタリングシステム200と通信可能となっている。
ドライバモニタリングシステム200は、例えば、シート20に着座した乗員Pを撮像するカメラと、撮像画像を画像処理する画像処理部とを有する。
ドライバモニタリングシステム20は、乗員Pの体格の大きさを判別可能となっている。
【0039】
エアバッグ制御ユニット110は、助手席エアバッグ30を展開する際に、ドライバモニタリングシステム200が判別した乗員Pの体格が所定以上である場合(体重が所定値以上であると推定される場合など)には、助手席エアバッグインフレータ130を作動させるとともに、テザーカッタ140によってテザー50を切断する。
これにより、締め上げ部40の拘束が解除されて取付箇所P1,P2が左右方向に離間する。
以上説明した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果((3)項に記載のものを除く)に加えて、乗員の体格に応じたきめ細かい展開態様の制御を行うことができる。
【0040】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)乗員保護装置の構成は、上述した各実施形態の構成に限らず、適宜変更することができる。
乗員保護装置を構成する各部材の形状、構造、材質、製法、配置、数量等は、適宜変更することができる。
(2)各実施形態において、バッグ部は一例として助手席エアバッグであったが、本発明はこれに限らず、運転席エアバッグや、2列目以降の後席シートの前部に設けられる各種の前面衝突用エアバッグや、その他のエアバッグの展開時の容量制御にも適用することができる。
(3)第2実施形態では、乗員の体格を、乗員を撮像した画像に基づいて判別しているが、その他の手法によって乗員の体格を判別してもよい。例えば、シートに乗員の重量を検出するセンサを設けるようにしてもよい。
(4)各実施形態では、拘束部を一か所のみ設けているが、本発明はこれに限らず、拘束部を複数設けてもよい。この場合、乗員の体格が大きくなることに応じて、拘束を解除する拘束部の個数を増やしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
P 乗員 10 車室
11 フロアパネル 12 トーボード
13 インストルメントパネル 14 フロントウインドウガラス
15 ルーフ
20 シート 21 シートクッション
22 バックレスト 23 ヘッドレスト
30 助手席エアバッグ 31 メインバッグ
32 インナサポートバッグ 33 アウタサポートバッグ
40 締め上げ部 41,42 フランジパネル
P1,P2 取付箇所 C 環状部
50 テザー 51 右半部
52 左半部 53 固定部
54 右テザーガイド 55 左テザーガイド
100 制御システム 110 エアバッグ制御ユニット
120 加速度センサ 130 助手席エアバッグインフレータ
140 テザーカッタ 200 ドライバモニタリングシステム
図1
図2
図3
図4
図5