(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084260
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用負極およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20240618BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240618BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240618BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240618BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240618BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20240618BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/58
H01M4/36 E
H01M4/1393
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198432
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】続木 康平
(72)【発明者】
【氏名】佐野 秀樹
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050CA08
5H050CB01
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB29
5H050DA03
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050FA16
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】サイクル試験において容量維持率の低下が抑制される非水電解質二次電池用負極(以下、負極ともいう)及び非水電解質二次電池、並びに負極の製造方法を提供すること。
【解決手段】負極活物質層を備える非水電解質二次電池用負極であって、負極活物質層は、負極活物質と、カーボンナノチューブと、バインダとを含み、負極活物質は、合金系負極活物質及び炭素系負極活物質を含み、カーボンナノチューブは、湾曲構造を有する単層カーボンナノチューブを含み、湾曲構造を有する単層カーボンナノチューブは、平均長さが1μm以上であり、及び平均直径が0.05μm以下であり、湾曲構造を有する単層カーボンナノチューブは、粒子と、前記粒子とは別の粒子とに接触している、非水電解質二次電池用負極。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質層を備える非水電解質二次電池用負極であって、
前記負極活物質層は、負極活物質と、カーボンナノチューブと、バインダとを含み、
前記負極活物質は、合金系負極活物質及び炭素系負極活物質を含み、
前記カーボンナノチューブは、湾曲構造を有する単層カーボンナノチューブを含み、
前記湾曲構造を有する単層カーボンナノチューブは、平均長さが1μm以上であり、及び平均直径が0.05μm以下であり、
前記湾曲構造を有する単層カーボンナノチューブは、粒子と、前記粒子とは別の粒子とに接触している、非水電解質二次電池用負極。
【請求項2】
前記湾曲構造は、1以上の変曲点を有する、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブの含有量は、前記負極活物質層を基準に0.01質量%以上0.2質量%以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項4】
前記炭素系負極活物質の粒径D50に対する前記合金系負極活物質の粒径D50の比が0.40以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブは、前記湾曲構造を有する単層カーボンナノチューブ以外の他のカーボンナノチューブをさらに含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項6】
前記負極活物質は、厚み方向からみたときの表面において、15μm×8μmの範囲の領域において前記カーボンナノチューブの全本数に対する前記湾曲構造を有する単層カーボンナノチューブの本数の比が0.15より多く0.9以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項7】
前記負極活物質は、厚み方向からみたときの表面において、15μm×8μmの範囲の領域において前記カーボンナノチューブの全本数に対する長さが0.5μm以上である前記単層カーボンナノチューブの本数の比が0.5以上である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項8】
請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法であって、負極活物質層形成用ペーストを調製するペースト調製工程を含み、前記ペースト調製工程は、以下の工程:
(a1) 負極活物質とバインダと分散媒とを混練する工程、及び
(a2) 次いでカーボンナノチューブを添加し、混練する工程
を含む、非水電解質二次電池用負極の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法であって、負極活物質層形成用ペーストを調製するペースト調製工程を含み、前記ペースト調製工程は、以下の工程:
(b1) 負極活物質とバインダとカーボンナノチューブとを混練する工程、及び
(b2) 分散媒を吸油量70%より2%以上増加させて添加して混練する工程
を含む、非水電解質二次電池用負極の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法であって、負極活物質層形成用ペーストを調製するペースト調製工程を含み、前記ペースト調製工程は、以下の工程:
(c1) 負極活物質とバインダと分散媒とカーボンナノチューブとを混合し、周速230m/分以下で攪拌する工程
を含む、非水電解質二次電池用負極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池用負極、その製造方法及び非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
黒鉛及び繊維状炭素を含む非水電解質二次電池用負極が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の非水電解質二次電池用負極は、サイクル試験において容量維持率が低下する場合がある。本開示の目的は、サイクル試験において容量維持率の低下が抑制される非水電解質二次電池用負極(以下、負極ともいう)及び非水電解質二次電池、並びに負極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の負極、非水電解質二次電池及び負極の製造方法を提供する。
[1]負極活物質層を備える非水電解質二次電池用負極であって、前記負極活物質層は、負極活物質と、カーボンナノチューブ(以下、CNTともいう)と、バインダとを含み、前記負極活物質は、合金系負極活物質及び炭素系負極活物質を含み、前記CNTは、湾曲構造を有する単層カーボンナノチューブ(以下、湾曲SWCNTともいう)を含み、前記湾曲SWCNTは、平均長さが1μm以上であり、及び平均直径が0.05μm以下であり、前記湾曲SWCNTは、粒子と、前記粒子とは別の粒子とに接触している、非水電解質二次電池用負極。
[2]前記湾曲構造は、1以上の変曲点を有する、[1]に記載の非水電解質二次電池用負極。
[3]前記CNTの含有量は、前記負極活物質層を基準に0.01質量%以上0.2質量%以下である、[1]又は[2]に記載の非水電解質二次電池用負極。
[4]前記炭素系負極活物質の粒径D50に対する前記合金系負極活物質の粒径D50の比が0.40以下である、[1]から[3]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極。
[5]前記CNTは、前記湾曲SWCNT以外の他のCNTをさらに含む、[1]から[4]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極。
[6]前記負極活物質は、厚み方向からみたときの表面において、15μm×8μmの範囲の領域において前記CNTの全本数に対する前記湾曲構造を有するSWCNTの本数の比が0.15より多く0.9以下である、[1]から[5]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極。
[7]前記負極活物質は、厚み方向からみたときの表面において、15μm×8μmの範囲の領域において前記CNTの全本数に対する長さが0.5μm以上であるSWCNTの本数の比が0.5以上である、[1]から[6]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極。
[8][1]から[7]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法であって、負極活物質層形成用ペーストを調製するペースト調製工程を含み、前記ペースト調製工程は、以下の工程:(a1)負極活物質とバインダと分散媒とを混練する工程、及び(a2)次いでCNTを添加し、混練する工程を含む、非水電解質二次電池用負極の製造方法。
[9][1]から[8]のいずれか記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法であって、負極活物質層形成用ペーストを調製するペースト調製工程を含み、前記ペースト調製工程は、以下の工程:(b1)負極活物質とバインダとCNTとを混練する工程、及び(b2)分散媒を吸油量70%より2%以上増加させて添加して混練する工程を含む、非水電解質二次電池用負極の製造方法。
[10][1]から[9]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法であって、負極活物質層形成用ペーストを調製するペースト調製工程を含み、前記ペースト調製工程は、以下の工程:(c1)負極活物質とバインダと分散媒とCNTとを混合し、周速230m/分以下で攪拌する工程を含む、非水電解質二次電池用負極の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、サイクル試験において容量維持率の低下が抑制される負極及び非水電解質二次電池、並びに負極の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態における負極の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、湾曲SWCNTの湾曲の度合いを説明する概略図である。
【
図3】
図3は、負極の製造方法を示す概略フローチャートである。
【
図4】
図4は、本実施形態における電池の構成の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本開示の実施形態を説明するが、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0009】
本開示の負極について図面を参照しながら説明する。
図1に示す負極100は、集電体10及び負極活物質層20を備える。負極活物質層は集電体の片側のみ又は両側に設けられ得る。負極活物質層20は、負極活物質21とCNT22とバインダ(図示せず)とを含む。負極活物質21は、合金系負極活物質23及び炭素系負極活物質24を含む。集電体10は導電性のシートである。集電体10は、例えばアルミニウム(Al)箔、銅(Cu)箔等を含み得る。集電体10の厚みは、例えば5μmから50μmであり得る。例えば集電体10の表面に被覆層が形成され得る。被覆層は、例えば導電性の炭素材料等を含み得る。被覆層は、例えば負極活物質層20に比して小さい厚みを有し得る。
【0010】
負極活物質21は、合金系負極活物質23及び炭素系負極活物質24を粒子の形態で含むことができる。活物質粒子は任意の大きさを有し得る。合金系負極活物質23を含む粒子の粒径D50は、例えば1μmから10μmであってよく、好ましくは2μmから8μm、より好ましくは3μmから6μmである。炭素系負極活物質24を含む粒子の粒径D50は、例えば1μmから50μmであり、好ましくは5μmから40μm、より好ましくは8μmから30μmである。本明細書において活物質粒子の粒径D50は、体積基準の粒度分布において小粒径側からの累積粒子体積が全粒子体積の50%になる粒子径を表す。平均粒子径は、レーザ回折・散乱法により測定され得る。炭素系負極活物質24の粒径D50に対する合金系負極活物質23の粒径D50の比は、例えば0.40以下であり、好ましくは0.35以下である。
【0011】
合金系負極活物質23は、Si含有材料を含み得る。Si含有材料はSiを含む限り、追加の成分をさらに含み得る。Si含有材料は、例えばSi/C複合材料を含み得る。Si含有材料は、酸素含有率が例えば25wt%以下であり、好ましくは15wt%以下、より好ましくは7wt%以下である。酸素含有率が上記範囲であることにより容量が向上し易くなる。Si含有材料は、内部に空隙を有し得る。内部に空隙を有する場合、空隙率は例えば5体積%以上であり得る。Si含有材料は表面が非晶質炭素により被覆されていてよい。
【0012】
炭素系負極活物質24は、例えば黒鉛、ソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)及びハードカーボン(難黒鉛化性炭素)からなる群から選択される少なくとも1種を含み得る。黒鉛は人造黒鉛であり得る。炭素系負極活物質24は、BET多点法によるBET比表面積が、例えば3.5m2/g以下であり、Si含有材料との密着性の観点から好ましくは0.5m2/gから3.5m2/g、より好ましくは1m2/gから2.5m2/gである。
【0013】
CNT22は、負極活物質粒子の孤立を抑制し、導電材としての機能を有し得る。CNT22は、湾曲SWCNTを含む。湾曲SWCNTは、湾曲構造を有する1本の円筒形状が1層の炭素六角網面で構成された炭素ナノ構造体であり得る。湾曲SWCNTの平均長さは、粒子間の接続性の観点から1μm以上であり、好ましくは1μmから5μmである。湾曲SWCNTの1本の長さは例えば0.1μm以上であり、粒子間の接続性の観点から好ましくは0.5μmから5μmである。湾曲SWCNTの平均直径は0.05μm以下であり、0.015μm以下が好ましい。湾曲SWCNTの長さ、平均長さ及び平均直径は、実施例の欄において説明する方法により測定される。
【0014】
湾曲SWCNTは、負極活物質の粒子と、その粒子とは別の粒子とに接触している。湾曲SWCNTは、サイクル試験における負極活物質層の膨張収縮時に粒子の動きに追従し易くなるため、粒子間の接触が外れにくくなり、電子伝導パスが途切れにくくなる傾向にある。湾曲構造は、例えば1以上の変曲点を有する構造であってよく、2以上または3以上の変曲点を有し得る。湾曲構造における湾曲の度合いは、
図2に示すように、変曲点を挟む2つの極大点(又は極小点)を結ぶ線分から変曲点までの最短距離Wが例えば0.1μm以上であり、好ましくは0.2μm以上である。湾曲SWCNTの長さ、平均長さ、平均直径、変曲点及び湾曲の度合いは、ペースト調整工程における混練条件により調節することができる。湾曲SWCNTは市販品を用いることもできる。
【0015】
CNT22は、湾曲SWCNT以外の他のCNTをさらに含み得る。他のCNTとしては、例えば湾曲構造を有しない単層カーボンナノチューブ、多層CNT(以下、MWCNTともいう)等が挙げられる。負極活物質層は、厚み方向からみたときの表面において15μm×8μmの範囲の領域においてCNTの全本数に対する湾曲SWCNTの本数の比(以下、第1本数比ともいう)が例えば0.15より多く0.9以下であり、好ましくは0.2から0.8である。負極活物質層は、厚み方向からみたときの表面において、15μm×8μmの範囲の領域においてCNTの全本数に対する長さが0.5μm以上であるSWCNTの本数の比(第2本数比ともいう)が例えば0.5以上であり、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上、さらに好ましくは1である。第1本数比及び第2本数比は、後述の実施例の欄において説明する方法により測定される。
【0016】
バインダは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVdF-HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂、ポリアクリルニトリル、ポリイミド、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる群より選択される少なくとも1種を含む。バインダは、好ましくはSBR、CMC及びPAAを含む。バインダがSBRを含む場合、SBRの含有量は、負極活物質層を基準として好ましくは0.5から5質量%、より好ましくは1から3質量%である。バインダがCMCを含む場合、CMCの含有量は、負極活物質層を基準として好ましくは0.3から3質量%、より好ましくは0.5から1.5質量%である。バインダがPAAを含む場合、PAAの含有量は、負極活物質層を基準として好ましくは0.5から5質量%、より好ましくは1から3質量%である。
【0017】
負極活物質層20の厚みは、好ましくは100から260μm、より好ましくは120から200μmである。負極活物質層20の充填密度は、好ましくは1.2から1.7g/cc、より好ましくは1.45から1.65g/ccである。負極活物質層20は空隙を有していてよく、空隙を有する場合、空隙率は好ましくは20から35%である。
【0018】
負極100の製造方法は、
図3に示すように負極活物質層形成用ペースト(以下、ペーストともいう)調製工程(A1)、塗工工程(B1)、乾燥工程(C1)及び圧縮工程(D1)を含み得る。ペースト調製工程において、負極活物質とCNTとバインダと任意量の分散媒とを混合することができる。ペーストは、任意の固形分濃度(固形分の質量分率)を有し得る。ペーストは例えば40%から80%の固形分濃度を有していてもよい。混合は任意の攪拌装置、混合装置、分散装置が使用され得る。負極100は、電池の仕様に応じて、所定の平面サイズに切断され得る。
【0019】
ペースト調製工程は、(a1)負極活物質とバインダと分散媒とを混練する工程及び(a2)次いでCNTを添加し、混練する工程を含み得る。(a1)及び(a2)を含むことにより、活物質粒子同士を接続し易くすることができる。
【0020】
ペースト調製工程は、(b1)負極活物質とバインダとCNTとを混練する工程及び(b2)分散媒を吸油量70%より2%以上増加させて添加して混練する工程を含み得る。吸油量70%は、目的とする組成量の活物質に対して水を添加しながら混合を行ったときに測定されるトルクにおいて最大トルクの70%となるときの水の添加量(水分率)をいう。分散媒を吸油量70%より2%以上増加させて添加したときの水分率A0(%)及び固形分率B0(%)、並びに吸油量70%のときの活物質100gあたりの水分量A1(mL)は、式:B0=100-A0=[100/(100+A1)×100]-2(%)の関係を満たす。(b1)及び(b2)を含むことにより、混練時のシェアを低下させ、分散のエネルギーを低下させることが可能となり、CNTが切断して長さが短くなるのを抑制でき、湾曲したCNTを多くすることができる。
【0021】
ペースト調製工程は(c1)負極活物質とバインダと分散媒とCNTとを混合し、周速230m/分以下で攪拌する工程を含み得る。(c1)を含むことにより、攪拌の際に流体中においてCNTが負極活物質の大きな粒子1粒に配置されにくくなり、負極活物質同士を接続し易くすることができる。
【0022】
本実施形態における電池は好ましくは角形電池である。
図4に示す電池200は、外装体90を含む。外装体90は、電極体50及び電解質(不図示)を収納する。電極体50は、正極集電部材81によって正極端子91に接続されている。電極体50は、負極集電部材82によって負極端子92に接続されている。電極体50は巻回型及び積層型のいずれであってよい。電極体50は好ましくは扁平状である。電極体50は負極100を含む。電極体50と外装体90との間に樹脂シート(電極体ホルダー)が配置されてもよい。
【0023】
電極体
図5は、巻回電極体及び積層電極体のいずれであってよい。偏平状の電極体であることが好ましい。本実施形態における電極体の一例を示す概略図である。電極体50は巻回型である。電極体50は、正極20、セパレータ70及び負極100を含む。すなわち電池200は負極100を含む。正極60は、正極活物質層62と正極集電体61とを含む。負極100は、負極活物質層20と集電体(負極集電体)10とを含む。
【実施例0024】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記のない限り、質量%及び質量部である。
<実施離1>
[負極板の作製]:負極活物質[黒鉛粒子(D50=17μm、BET=2.2m2/g)、Si含有粒子(SiC)(D50=6.5μm)]と、導電材[繊維状炭素(単層カーボンナノチューブ、1層からなるCNT)]と、バインダ(CMC、PAA、SBR)と、溶媒として水とを攪拌造粒機を用いて混練し、負極活物質層形成用ペーストを作製した。負極活物質層形成用ペーストは黒鉛粒子/SiC/SWCNT/CMC/PAA/SBR=94/6/0.05/1/1/1(質量%)の質量比となるように作製した。ペースト作製工程において、以下の手順で混合及び混錬を実施した。(1)黒鉛、SiC、CMC、PAAをドライミックスして第1混合物を作製した。(2)第1混合物に水を添加し、回転数50rpmで90分間混練し、第2混合物(固形分率66.5%)を得た。(3)第2混合物にSWCNT(固形分率1%の水溶性ペースト)を添加し、回転数50rpmで15分間混練し、第3混合物を得た。(4)第3混合物に水を添加し、回転数30rpmで30分間混錬し、第4混合物を得た。(5)第4混合物にSBRと分散溶媒とを添加して希釈し、回転数30rpmで30分間混合し、負極活物質層形成用ペーストを作製した。攪拌機には、PRIMIX社製ハイビスミックス2P-1型を用いた。各手順において撹拌時の周速はいずれも230m/分以下であった。
【0025】
作製した負極活物質層形成用ペーストを10μmのCu箔上に塗布、乾燥し、所定の厚みまでプレスし、所定の寸法に加工した後、負極板を得た。両面の塗布目付は215m2/g、厚み135μmであり、充填密度は1.60g/ccであった。充填密度は下記式: Z=X÷Y[Z:充填密度(g/cc)、X:活物質層の塗布目付(m2/g)、Y:活物質層の厚み(μm)]に従い計算される。
【0026】
[正極板の作製]:正極活物質[リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)]と、導電材[アセチレンブラック(AB)]と、バインダ(PVDF)と、溶媒としてNMPとを混練し、正極活物質層形成用ペーストを作製した。正極活物質層形成用ペーストは正極活物質/導電材/バインダ=100/1/1の質量比となるように作製した。作製した正極活物質層形成用ペーストを15μmのAl箔上に塗布、乾燥し、所定の厚みまでプレスし、所定の寸法に加工した後、正極板を得た。
【0027】
[試験電池の作製]:作製した負極板及び正極板にそれぞれリードを取り付け、セパレータを介して各電極板を積層して電極体を作製した。作製した電極体をアルミニウムラミネートシートで構成される外装体に挿入して、非水電解質を注入し、外装体の開口部を封止して試験電池(ラミネートセル)を作製した。非水電解質は1M LiPF6をLi塩とし、EC/EMC/DMC=20/40/40(体積%)の溶媒を用いた。
【0028】
[CNTの存在状態の評価]:SEM(株式会社日立ハイテク製)を用いて加速電圧を1kVとして負極板の表面における15μm×8μmの領域を観察したときの画像から、CNTの本数、湾曲SWCNTの本数、及び長さが0.5μm以上であるSWCNTの本数をカウントし、第1及び第2本数比を求めた。また、湾曲SWCNTの平均直径及び平均長さを求めた。湾曲SWCNTの長さは一方の端部から他方の端部の距離を測定した。結果を表1に示す。
【0029】
[サイクル維持率]:25℃環境下、CC充電(0.05C_4.2V)を行った後、CC放電(0.05C_2.5Vカット)を行い、これを1サイクルとして、(1cycの放電容量)/(1cycの充電容量)を初期効率として求めた。25℃環境下、CCCV充電(0.2C_4.2V_0.1Cカット)を行った後、CC放電(0.33C_2.5Vカット)を1サイクルとして、100サイクルに到達するまでサイクル試験を実施した。(100cycの放電容量)/(1cycの放電容量)をサイクル維持率として求めた。結果を表1に示す。
【0030】
<実施例2>
実施例1においてペースト作製工程における手順を以下の手順に変えたこと以外は実施例1と同様にして試験電池を作製した。(1)黒鉛粒子、SiC、CMC、PAAをドライミックスして第1混合物を作製した。(2)第1混合物にSWCNT(固形分率1%の水溶性ペースト)と水とを添加し、回転数50rpmで90分間混練し、第2混合物(固形分率64.5%)を得た。(3)第2混合物に水を添加し、回転数30rpmで30分間混錬し、第3混合物を得た。(4)第3混合物にSBRと水とを添加して希釈し、回転数30rpmで30分間混合し、負極活物質層形成用ペーストを作製した。各手順において水分率が吸油量70%より2%多くなるように水を添加した。また、各手順において撹拌時の周速はいずれも230m/分以下であった。結果を表1に示す。
【0031】
<比較例1>
実施例2において、混練時の水分率が吸油量70%となるように水を添加したこと以外は実施例2と同様にして試験電池を作製した。結果を表1に示す。
<比較例2>
実施例2において、手順(4)においてSBR添加時にディスク型の回転羽を用いて、周速235m/分(30mmの直径のディスクを2500rpm)で30分間撹拌したこと以外は実施例2と同様にして試験電池を作製した。結果を表1に示す。
<比較例3>
実施例2においてCNTを表1に示すものに変えたこと以外は、実施例2と同様にして試験電池を作製した。結果を表1に示す。
<比較例4>
実施例2においてCNTを表1に示すものに変えたこと以外は、実施例2と同様にして試験電池を作製した。結果を表1に示す。
【0032】
10 集電体、20 負極活物質層、21 活物質粒子、22 CNT、23 合金系負極活物質、24 炭素系負極活物質、50 電極体、60 正極、61 正極集電体、62 正極活物質層、70 セパレータ、81 正極集電部材、82 負極集電部材、90 外装体、91 正極端子、92 負極端子、100 負極、200 電池。