(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084265
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】複数の電線を所定の溝に収納する方法、自動布線装置
(51)【国際特許分類】
H02G 1/14 20060101AFI20240618BHJP
H02B 3/00 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
H02G1/14
H02B3/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198438
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003742
【氏名又は名称】弁理士法人海田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 純一
【テーマコード(参考)】
5G355
【Fターム(参考)】
5G355AA03
5G355AA05
5G355BA08
5G355CA03
5G355CA07
5G355CA09
(57)【要約】
【課題】複数の電線を所定の溝に収納する布線作業について、人手を掛けることなく効率よく実行できる方法と、この方法を実行する自動布線装置を実現する。
【解決手段】自動布線装置30は、複数の電線11を掴まずに移動させるための2つのガイド32a,32bからなるチャック32と、2つのガイド32a,32bの間で一列に並んだ状態の複数の電線11を押し出すプッシャ33と、を備えており、2つのガイド32a,32bのうち、少なくとも1つのガイドにおける複数の電線11を押し出す側の先端には、複数の電線11を押し出す方向に対して斜めに遮るように突出する弾性力を有する弾性邪魔板35a,35bが配置されており、また、2つのガイド32a,32bの間で一列に並んだ状態の複数の電線11を、プッシャ33で1本ずつ押し出す押出機構33,34を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線径の異なる複数の電線を掴まずに移動させるための2つのガイドからなるチャックと、前記2つのガイドの間に配置された前記複数の電線を前記チャックから押し出すプッシャを備えた自動布線装置を用いて、前記複数の電線を所定の溝に収納する方法であって、
前記自動布線装置は、前記2つのガイドからなる前記チャックの隙間が、前記複数の電線のうちで最も太い電線径よりも広く、かつ、前記複数の電線のうちで最も細い電線径の2倍よりも狭い幅に保たれているとともに、前記チャックにおける前記複数の電線を押し出す側の隙間が、弾性力を有する弾性邪魔板によって前記複数の電線のうちで最も細い電線径よりも狭くなるように閉鎖されているものであり、
前記チャックの隙間に前記複数の電線が一列に並んだ状態とする第1工程と、
前記チャックを前記所定の溝上に移動したのち、前記2つのガイドの間に配置された前記プッシャにより一列に並んだ前記複数の電線を押すことで、前記チャックにおける前記複数の電線を押し出す側の隙間を閉鎖する前記弾性邪魔板を押しのけて1本の電線を押し出し、当該1本の電線を前記所定の溝に収納する第2工程と、
を実行するとともに、前記第2工程の動作が繰り返されることを特徴とする複数の電線を所定の溝に収納する方法。
【請求項2】
複数の電線を掴まずに移動させるための2つのガイドからなるチャックと、
前記2つのガイドの間で一列に並んだ状態の前記複数の電線を押し出すプッシャと、
を備えた自動布線装置であって、
前記2つのガイドのうち、少なくとも1つのガイドにおける前記複数の電線を押し出す側の先端には、前記複数の電線を押し出す方向に対して斜めに遮るように突出する弾性力を有する弾性邪魔板が配置されており、また、
前記2つのガイドの間で一列に並んだ状態の前記複数の電線を、前記プッシャで1本ずつ押し出す押出機構を備えることを特徴とする自動布線装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動布線装置であって、
前記複数の電線を掴まずに移動させるための前記2つのガイドそれぞれの先端には、前記弾性邪魔板が配置されており、
前記2つのガイドおよび2つの前記弾性邪魔板を組み合わせた配置形状が、前記プッシャの移動する軌道を対称軸とする線対称形状であることを特徴とする自動布線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線を所定の溝に収納する方法と、この方法を実行する自動布線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電線をコネクタ端子ピッチと同じピッチの溝に仮置きする布線作業は、人の手作業で行うことが一般的である。電線の布線作業の具体的内容は、1本のケーブルに含まれる直径の異なる複数の電線を、作業者の手で1本ずつ掴み、外観の目視によって電線の種類を判別して、所定の溝に収納するというものである。そのため、従来の電線の布線作業には、人手と時間が掛かるという課題が存在していた。
【0003】
ところで、電線を取り扱う従来技術としては、下記特許文献1~3等が存在していた。例えば、特許文献1、2には、止水材を塗布するための工程において、電線を1本ずつ送り出す機構が開示されている(
図15、
図16参照)。また例えば、特許文献3には、異なる径の電線を一列に配置する機構が開示されている(
図17参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-172361号公報
【特許文献2】特開平10-172359号公報
【特許文献3】特開2000-114746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上掲した特許文献1~3に代表される従来技術には、電線の布線作業を自動化する構成は存在していなかった。そのため、電線の布線作業の技術分野では、当該布線作業を自動化することで、人手を掛けることなく効率よく布線作業を実行できる方法や自動化装置の実現が求められていた。
【0006】
よって本発明は、複数の電線を所定の溝に収納する布線作業について、人手を掛けることなく効率よく実行できる方法と、この方法を実行する自動布線装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る複数の電線を所定の溝に収納する方法は、電線径の異なる複数の電線を掴まずに移動させるための2つのガイドからなるチャックと、前記2つのガイドの間に配置された前記複数の電線を前記チャックから押し出すプッシャを備えた自動布線装置を用いて、前記複数の電線を所定の溝に収納する方法であって、前記自動布線装置は、前記2つのガイドからなる前記チャックの隙間が、前記複数の電線のうちで最も太い電線径よりも広く、かつ、前記複数の電線のうちで最も細い電線径の2倍よりも狭い幅に保たれているとともに、前記チャックにおける前記複数の電線を押し出す側の隙間が、弾性力を有する弾性邪魔板によって前記複数の電線のうちで最も細い電線径よりも狭くなるように閉鎖されているものであり、前記チャックの隙間に前記複数の電線が一列に並んだ状態とする第1工程と、前記チャックを前記所定の溝上に移動したのち、前記2つのガイドの間に配置された前記プッシャにより一列に並んだ前記複数の電線を押すことで、前記チャックにおける前記複数の電線を押し出す側の隙間を閉鎖する前記弾性邪魔板を押しのけて1本の電線を押し出し、当該1本の電線を前記所定の溝に収納する第2工程と、を実行するとともに、前記第2工程の動作が繰り返されることを特徴とするものである。
【0008】
すなわち、直径の異なる複数の布線対象電線を含む電線束の場合、2つのガイドからなるチャックでは掴むことができない。しかし、本発明方法では、2つのガイドからなるチャックの隙間が、複数の電線のうちで最も太い電線径よりも広く、かつ、複数の電線のうちで最も細い電線径の2倍よりも狭い幅に保たれているので、2つのガイドからなるチャックで複数の電線を掴まなくても、電線の整列順序が入れ替わることがない。
【0009】
また、本発明方法では、チャックにおける複数の電線を押し出す側の隙間は弾性邪魔板によって閉鎖されており、この閉鎖状態は、複数の電線のうちで最も細い電線径よりも狭くなるように閉鎖されたものとなっている。したがって、2つのガイドの間で一列に並んだ状態で配置された複数の電線は、通常時では電線が脱落することはなく、また、プッシャによって押されたときには弾性邪魔板が変形して1本ずつ電線が押し出すことができるようになっている。
【0010】
本発明に係る自動布線装置は、複数の電線を掴まずに移動させるための2つのガイドからなるチャックと、前記2つのガイドの間で一列に並んだ状態の前記複数の電線を押し出すプッシャと、を備えた自動布線装置であって、前記2つのガイドのうち、少なくとも1つのガイドにおける前記複数の電線を押し出す側の先端には、前記複数の電線を押し出す方向に対して斜めに遮るように突出する弾性力を有する弾性邪魔板が配置されており、また、前記2つのガイドの間で一列に並んだ状態の前記複数の電線を、前記プッシャで1本ずつ押し出す押出機構を備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る自動布線装置において、前記複数の電線を掴まずに移動させるための前記2つのガイドそれぞれの先端には、前記弾性邪魔板が配置されており、前記2つのガイドおよび2つの前記弾性邪魔板を組み合わせた配置形状が、前記プッシャの移動する軌道を対称軸とする線対称形状であることとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の電線を所定の溝に収納する布線作業について、人手を掛けることなく効率よく実行できる方法と、この方法を実行する自動布線装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】複数の電線を所定の溝に収納する方法を実行するための機構の全体構成を示す外観斜視図である。
【
図2】本発明方法に用いられる布線治具を示す図であって、図中の分図(a)は前方右上から見た場合の外観斜視図であり、分図(b)は正面図である。
【
図3】本実施形態に係る自動布線装置を前方右上から見た場合の外観斜視図であって、チャックの隙間に複数の電線が一列に並んだ状態とした上で、チャックを所定の溝上に移動した状態が示されている。
【
図4】本実施形態に係る自動布線装置を後方右上から見た場合の外観斜視図であって、チャックの隙間に複数の電線が一列に並んだ状態とした上で、チャックを所定の溝上に移動した状態が示されている。
【
図5】
図3におけるV-V線断面を示す縦断面図である。
【
図6】
図5におけるVI-VI線断面を示す縦断面図である。
【
図7】本実施形態に係る自動布線装置を前方右上から見た場合の外観斜視図であって、2つのガイドの間に配置されたプッシャにより一列に並んだ複数の電線を押すことで、チャックにおける複数の電線を押し出す側の隙間を閉鎖する弾性邪魔板を押しのけて1本の電線を押し出し、当該1本の電線を所定の溝に収納した状態が示されている。
【
図8】本実施形態に係る自動布線装置を後方右上から見た場合の外観斜視図であって、2つのガイドの間に配置されたプッシャにより一列に並んだ複数の電線を押すことで、チャックにおける複数の電線を押し出す側の隙間を閉鎖する弾性邪魔板を押しのけて1本の電線を押し出し、当該1本の電線を所定の溝に収納した状態が示されている。
【
図9】
図7におけるIX-IX線断面を示す縦断面図である。
【
図10】
図9におけるX-X線断面を示す縦断面図である。
【
図11】本実施形態に係る自動布線装置を前方右上から見た場合の外観斜視図であって、全ての電線を所定の溝に収納した状態が示されている。
【
図12】本実施形態に係る自動布線装置を後方右上から見た場合の外観斜視図であって、全ての電線を所定の溝に収納した状態が示されている。
【
図13】複数の電線を所定の溝に収納する方法の手順を示すフローチャート図である。
【
図14】本発明の自動布線装置が取り得る本実施形態とは別の構成例を示す縦断面図である。
【
図15】電線を取り扱う従来技術を示す図であって、止水材を塗布するための工程において、電線を1本ずつ送り出す機構を開示した図である。
【
図16】電線を取り扱う従来技術を示す図であって、止水材を塗布するための工程において、電線を1本ずつ送り出す機構を開示した図である。
【
図17】電線を取り扱う従来技術を示す図であって、異なる径の電線を一列に配置する機構を開示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図では、説明の便宜のために第1方向、第2方向、第3方向を定義した。本明細書において、第1方向は、前後方向である。図において、前後方向はX方向として示される。特に、前方を+X方向、後方を-X方向とする。また、本明細書において、第2方向は、左右方向である。図において、左右方向はY方向として示される。特に、右方を+Y方向、左方を-Y方向とする。さらに、本明細書において、第3方向は、上下方向である。図において、上下方向はZ方向として示される。特に、上方を+Z方向、下方を-Z方向とする。ただし、本明細書で定義された第1方向であるX方向、第2方向であるY方向、第3方向であるZ方向は、本実施形態に係る自動布線装置30の使用時の方向を限定するものではない。本実施形態に係る自動布線装置30は、あらゆる方向で使用することができる。
【0015】
また、以下の各実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1~
図12を参照して、複数の電線11を所定の溝21に収納する本発明方法を実行するための機構を説明する。
図1に示されるように、本機構には、複数の電線11を束ねたケーブル10と、複数の電線11を仮置きするための布線治具20と、布線治具20に対して複数の電線11を仮置きして布線作業を行う自動布線装置30と、が含まれる。
【0017】
本実施形態において、ケーブル10は、複数の電線11を束ねた状態で外周を被覆材で覆うことで形成されている。ケーブル10を構成する複数の電線11には、電線径の異なる複数種類の電線11が含まれる。
【0018】
布線治具20は、
図2に示されるように、立方体形状をした部材であり、その上面には複数の溝21が形成されている。複数の溝21それぞれには、ケーブル10を構成する複数の電線11が1本ずつ収納できるようになっている。また、複数の溝21は、布線作業を行った後に電線11を接続する不図示のコネクタの端子ピッチと同じピッチ間隔で形成されている。したがって、布線治具20が有する複数の溝21に対して所定の順番で複数の電線11を1本ずつ配置することで、布線作業が完了するようになっている。
【0019】
自動布線装置30は、上述した布線作業を自動的に実行する装置として機能する。本実施形態に係る自動布線装置30は、チャックユニット31と、2つのガイド32a,32bからなるチャック32と、プッシャ33と、プッシャ33の駆動源となるシリンダ34と、を備える。
【0020】
チャックユニット31は、2つのガイド32a,32bからなるチャック32や、プッシャ33、シリンダ34が取り付けられた自動布線装置30のメインユニットである。チャックユニット31には、不図示の外部電源や制御装置、駆動装置が接続している。つまり、チャックユニット31は、不図示の外部電源から電源供給を受けたり、不図示の制御装置から動作指令信号を受けたりすることで、2つのガイド32a,32bからなるチャック32や、プッシャ33、シリンダ34を動作制御する。また、チャックユニット31は、不図示の駆動装置によって位置移動可能となっており、布線治具20に対する相対位置を変化させることができる。
【0021】
チャック32は、第1ガイド32aと第2ガイド32bという2つのガイド32a,32bを備えている。チャックユニット31を正面から見たときに、第1ガイド32aは左側に、第2ガイド32bは右側に配置されている。そして、2つのガイド32a,32bは、互いに左右逆方向に移動することができるように構成されているので、2つのガイド32a,32bからなるチャック32の隙間を広げる場合には、左側の第1ガイド32aが左側(つまり、-Y方向)に移動し、右側の第2ガイド32bが右側(つまり、+Y方向)に移動することで、
図1、
図11および
図12で示す状態となる。一方、2つのガイド32a,32bからなるチャック32の隙間を狭める場合には、左側の第1ガイド32aが右側(つまり、+Y方向)に移動し、右側の第2ガイド32bが左側(つまり、-Y方向)に移動することで、
図3~
図10で示す状態となる。
【0022】
また、チャック32は、
図3~
図6で示すように、複数の電線11をチャック32の隙間に挟んだ状態で2つのガイド32a,32bが閉じた場合であっても、複数の電線11を掴むことが無いので、2つのガイド32a,32bの間で縦一列に並んだ状態の複数の電線11は、上下方向で移動できる状態となっている。
【0023】
プッシャ33は、平板プレート状の部材であり、2つのガイド32a,32bが閉じた状態でチャック32の隙間を上下方向に移動できる部材である。プッシャ33の上方位置には、プッシャ33の駆動源となるシリンダ34が配置されている。シリンダ34は不図示のエアポンプから圧縮空気の供給を受けることで稼働し、プッシャ33を上下動させることができる。
図6と
図10を対比参照すれば明らかなように、上下動するプッシャ33の下方側の端部によって、チャック32の隙間に挟まれて縦一列に並んだ複数の電線11を下方に向けて押し出すことができるようになっている。なお、本発明の押出機構が、プッシャ33とシリンダ34によって構成されている。
【0024】
図6で示されるように、2つのガイド32a,32bにおける複数の電線11を押し出す側(つまり、下方側)のそれぞれの先端には、複数の電線11を押し出す方向に対して斜めに遮るように突出する弾性力を有する弾性邪魔板35a,35bが配置されている。弾性邪魔板35a,35bは、平板プレート状の部材であり、2枚の弾性邪魔板35a,35bのそれぞれが、2つのガイド32a,32bそれぞれに対してボルト36によって強固に締結固定されている。また、本実施形態に係る自動布線装置30において、2つのガイド32a,32bおよび2つの弾性邪魔板35a,35bを組み合わせた配置形状については、プッシャ33の移動する軌道を対称軸(
図6において一点鎖線で示す仮想線αとして示す)とする線対称形状となるように構成されている。
【0025】
さらに、本実施形態に係る自動布線装置30では、2つのガイド32a,32bからなるチャック32の隙間が、複数の電線11のうちで最も太い電線径よりも広く、かつ、複数の電線11のうちで最も細い電線径の2倍よりも狭い幅に保たれているとともに、チャック32における複数の電線11を押し出す側の隙間が、弾性力を有する弾性邪魔板35a,35bによって複数の電線11のうちで最も細い電線径よりも狭くなるように閉鎖されている。
【0026】
以上の構成を有することで、本実施形態に係る自動布線装置30は、
図6で示すように、チャック32の隙間に複数の電線11を一列に並べたときには、チャック32の隙間で複数の電線11は掴まれた状態とはならずに上下方向で移動自在の状態を保ちつつ、複数の電線11の最下方に位置する電線11は2枚の弾性邪魔板35a,35bによって下方を閉鎖されている。また、この状態の複数の電線11は、2つのガイド32a,32bからなるチャック32で複数の電線11を掴まれていなくても、電線11の整列順序が入れ替わることがない。そのため、複数の電線11は2つのガイド32a,32bの間で一列に並んだ状態を安定して維持することができる。
【0027】
図6で示す状態から、シリンダ34を稼働させてプッシャ33を下方に向けて移動させると、
図10で示すように、2つのガイド32a,32bの間で一列に並んだ状態の複数の電線11は、プッシャ33で1本ずつ押し出されることになる。このとき、プッシャ33で下方に向けて押された複数の電線11は、複数の電線11の全てが下方に向けて押されるが、布線治具20の上面に形成された溝21の溝深さは、複数の電線11の最下方に位置する電線11の電線径に対応させた深さ寸法となっているので、最下方に位置する電線11の1本だけが弾性邪魔板35a,35bを押しのけて押し出され、当該1本の電線11が所定の溝21に収納されることとなる。またこのとき、溝21内に押し出されて収納された1本の電線11以外の電線11については、弾性邪魔板35a,35bによって下方に押し出されることを阻害されるので、2つのガイド32a,32bの間で一列に並んだ状態が維持されることとなる。このような
図10で示す状態からシリンダ34を稼働させてプッシャ33を元の上方位置に復帰させると、本実施形態に係る自動布線装置30は、
図6の状態に復帰する。この状態から不図示の駆動装置によってチャックユニット31を位置移動させ、プッシャ33を次の溝21の位置に移動させ、再びシリンダ34を稼働させてプッシャ33を下方に向けて移動させることで、次の溝21に対する1本の電線11の収納が行われる。そして、前述した動作を繰り返すことで、
図11および
図12に示すように、全ての電線11を布線治具20が有する複数の溝21に収納し、本実施形態の自動布線装置30による布線作業を完了することができる。
【0028】
以上、
図1~
図12を用いて、複数の電線11を所定の溝21に収納する本発明方法を実行するための機構を説明した。次に、
図13を参照図面に加えて、本発明方法である複数の電線11を所定の溝21に収納する方法の具体的な手順を説明する。
【0029】
本発明方法である複数の電線11を所定の溝21に収納する方法では、まず、ケーブル10の被覆を剥いで複数の電線11を解し、複数の電線11が縦一列に並ぶようにする(ステップS10)。このとき、複数の電線11の並び順は、最下方から上に向けて順に溝21への収納順となるように並べられる。
【0030】
次に、縦一列に並んだ複数の電線11をチャック32の隙間に差し込み、チャック32の隙間で複数の電線11が一列に並んだ状態とする(ステップS11;
図1の状態)。この状態からチャックを閉じる(ステップS12)。このとき、2つのガイド32a,32bの間で縦一列に並んだ状態の複数の電線11は、チャック32には掴まれておらず、上下方向で移動できる状態となっている(
図6と同じ状態)。この状態の複数の電線11については、2つのガイド32a,32bからなるチャック32の隙間が、複数の電線11のうちで最も太い電線径よりも広く、かつ、複数の電線11のうちで最も細い電線径の2倍よりも狭い幅に保たれているので、2つのガイド32a,32bからなるチャック32で複数の電線11を掴まれていなくても、電線11の整列順序が入れ替わることがない。また、チャック32における複数の電線11を押し出す側の隙間が、弾性力を有する弾性邪魔板35a,35bによって複数の電線11のうちで最も細い電線径よりも狭くなるように閉鎖されているので、この状態の複数の電線11については、チャック32の隙間で複数の電線11は掴まれた状態とはならずに上下方向で移動自在の状態を保ちつつ、複数の電線11の最下方に位置する電線11は2枚の弾性邪魔板35a,35bによって下方を閉鎖された状態となっている。
【0031】
なお、ステップS11~ステップS12の処理が、本発明方法に係る第1工程に相当する。また、ステップS10~ステップS11の処理については、作業者が手作業で行うようにしてもよいし、不図示のロボットハンド等の作業手段を用いることで行うようにしてもよい。さらに、ステップS12の処理以降の処理は、本実施形態の自動布線装置30によって実行されるものである。
【0032】
ステップS12の処理によって2つのガイド32a,32bが閉じた状態のチャック32を、布線治具20の上面に形成された複数の溝21のうち、所定の溝21の位置に移動させる(ステップS13;
図3~
図6の状態)。チャック32を所定の溝21の位置に移動させる動作は、チャックユニット31と接続した不図示の駆動装置によって行われる。
【0033】
続いて、2つのガイド32a,32bの間に配置されたプッシャ33により縦一列に並んだ複数の電線11を下方に押す(ステップS14;
図7~
図10の状態)。ステップS14で行われるプッシャ33の下方への移動は、プッシャ33の上方位置に配置されたシリンダ34が不図示のエアポンプから圧縮空気の供給を受けることで稼働し、実行される。
【0034】
プッシャ33が下方へ移動して縦一列に並んだ複数の電線11を下方に押すと、チャック32における複数の電線11を押し出す側の隙間を閉鎖する弾性邪魔板35a,35bを押しのけて弾性邪魔板35a,35bが変形し、最下方の1本の電線11が押し出される。かかる動作によって、当該1本の電線11が所定の溝21に収納されることになる(ステップS15;特に
図10参照)。
図10の実施形態では、2つのガイド32a,32bおよび2つの弾性邪魔板35a,35bを組み合わせた配置形状が、プッシャ33の移動する軌道を対称軸とする線対称形状となるように構成されているので、複数の電線11の直径が異なっていてもプッシャ33は電線11の中心を溝21の中央に押し出すことができるので、良好に動作する。
【0035】
このとき、プッシャ33で下方に向けて押された複数の電線11は、複数の電線11の全てが下方に向けて押されるが、布線治具20の上面に形成された溝21の溝深さは、複数の電線11の最下方に位置する1本の電線11の電線径に対応させた深さ寸法となっているので、最下方に位置する電線11の1本だけが弾性邪魔板35a,35bを押しのけて押し出され、当該1本の電線11が所定の溝21内に収納されることとなる(ステップS15)。またこのとき、溝21内に押し出されて収納された1本の電線11以外の電線11については、弾性邪魔板35a,35bの変形が解除されることによって下方に押し出されることを阻害されるので、2つのガイド32a,32bの間で一列に並んだ状態が維持されることとなる。
【0036】
ステップS15の処理が実行された後、シリンダ34を稼働させてプッシャ33を元の上方位置に復帰させる(ステップS16)。ステップS16の処理が実行されることで、本実施形態に係る自動布線装置30は、
図6と同様の状態に復帰する。なお、ステップS13~ステップS16までの処理が、本発明方法に係る第2工程に相当する。
【0037】
ステップS16の処理が完了すると、チャックユニット31に接続する不図示の制御装置によって、電線11の押し出し回数が既定の回数に到達したか否かが判定される(ステップS17)。電線11の押し出し回数が既定の回数に到達していない場合(ステップS17のN)には、チャックユニット31が不図示の駆動装置によって位置移動され、チャック32が次の溝21の位置に移動する(ステップS13;
図3~
図6の状態)。つまり、ステップS13~ステップS16までの処理がもう一度繰り返されることとなる。この第2工程(ステップS13~ステップS16)の繰り返し動作は、電線11の押し出し回数が既定の回数に到達するまで実行される。
【0038】
そして、電線11の押し出し回数が既定の回数に到達した場合(ステップS17のY)には、チャック32が開放されてチャックユニット31が初期位置に退避する(ステップS18;
図11および
図12の状態)。このようにして、本発明方法である複数の電線11を所定の溝21に収納する方法についての一連の動作が完了する。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、
図6および
図10で示すように、2つのガイド32a,32bにおける複数の電線11を押し出す側(つまり、下方側)のそれぞれの先端には、複数の電線11を押し出す方向に対して斜めに遮るように突出する弾性力を有する弾性邪魔板35a,35bが配置されていた。つまり、2つのガイド32a,32bそれぞれに対して1枚ずつ、合計2枚の弾性邪魔板35a,35bが設置されていた。しかしながら、本発明に係る自動布線装置については、2つのガイドのうち、少なくとも1つのガイドに対して1枚の弾性邪魔板が配置されていればよい。そのような変形形態例を
図14に示す。
図14では、第1ガイド32aのみに対して1枚の弾性邪魔板35aが設置された具体例が示されている。
図14で示す構成の自動布線装置であっても、上述した自動布線装置30と同様の作用効果を発揮することができる。
【0041】
また例えば、上述した実施形態では、プッシャ33を上下動させる駆動源はシリンダ34であり、このシリンダ34は不図示のエアポンプから圧縮空気の供給を受けることで稼働するものであった。しかし、本発明のプッシャの駆動源については、プッシャを上下動できるものであればどのようなものであってもよい。例えば、プッシャ33の駆動源には、サーボモータを用いることができる。駆動源をサーボモータとすることで、プッシャ33の移動範囲を制御できるので、溝21に向けて押し出す電線11の移動量を制御することが可能となり、溝21内に配置される電線11への押し出し力に基づく負荷を軽減することができる。
【0042】
また例えば、上述した実施形態では、布線治具20は固定されており、自動布線装置30が移動することで布線治具20の溝21に対する位置決めを行うことを想定していた。しかしながら、布線治具20と自動布線装置30との位置決めについては、どちらが移動してもよい。つまり、固定された自動布線装置30に対して布線治具20が移動して位置決めを行ってもよいし、布線治具20と自動布線装置30の両方が移動して位置決めを行うようにしてもよい。
【0043】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0044】
10 ケーブル
11 電線
20 布線治具
21 溝
30 自動布線装置
31 チャックユニット
32 チャック
32a 第1ガイド(2つのガイドのうちの1つ)
32b 第2ガイド(2つのガイドのうちの1つ)
33 プッシャ(押出機構)
34 シリンダ(プッシャの駆動源、押出機構)
35a 弾性邪魔板(第1ガイドに固定されたもの)
35b 弾性邪魔板(第2ガイドに固定されたもの)
36 ボルト
α 仮想線(プッシャの移動する軌道を示す対称軸線)