(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084269
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】摺動抵抗調整方法及びロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20240618BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240618BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240618BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240618BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20240618BHJP
【FI】
B25J15/00 F
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B05C5/00 101
B05C11/10
B05B12/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198442
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】岡前 雄大
【テーマコード(参考)】
2C056
3C707
4F035
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB06
2C056EB37
2C056EC06
2C056EC28
2C056FA09
3C707AS13
3C707BS10
3C707HS29
3C707KS17
3C707KS29
3C707KV01
3C707KW06
3C707KX06
4F035AA03
4F035BC02
4F041AA01
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA23
4F042AA01
4F042AB00
4F042BA08
(57)【要約】
【課題】印刷品質に優れた摺動抵抗調整方法及びロボットシステムを提供する。
【解決手段】摺動抵抗調整方法は、ロボット200に取り付けられていて、アクチュエーター15で駆動し、摺動抵抗を調整する抵抗調整部14を有する移動ステージ11の摺動抵抗を調整する方法であって、アクチュエーター15を停止した状態で、ロボット200を動作させ、移動ステージ11の被駆動部としてのテーブル部13の移動量を検出する第1検出ステップS1と、ロボットの動作を停止した状態で、アクチュエーター15を駆動して、被駆動部としてのテーブル部13の移動量を検出する第2検出ステップS3と、第1検出ステップS1と第2検出ステップS3との結果に基づいて、摺動抵抗を調整する調整ステップS6と、を含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットに取り付けられていて、アクチュエーターで駆動し、摺動抵抗を調整する抵抗調整部を有する移動ステージの前記摺動抵抗を調整する方法であって、
前記アクチュエーターを停止した状態で、前記ロボットを動作させ、前記移動ステージの被駆動部の移動量を検出する第1検出ステップと、
前記ロボットの動作を停止した状態で、前記アクチュエーターを駆動して、前記被駆動部の移動量を検出する第2検出ステップと、
前記第1検出ステップと前記第2検出ステップとの結果に基づいて、前記摺動抵抗を調整する調整ステップと、を含む、
摺動抵抗調整方法。
【請求項2】
前記第1検出ステップで、検出した前記被駆動部の移動量があらかじめ定めた値より大きかった場合には、前記調整ステップに進んで前記摺動抵抗を大きくする、
請求項1に記載の摺動抵抗調整方法。
【請求項3】
前記第1検出ステップで、検出した前記被駆動部の移動量があらかじめ定めた値より小さかった場合には、前記第2検出ステップへ進む、
請求項1に記載の摺動抵抗調整方法。
【請求項4】
前記第2検出ステップで、検出した前記被駆動部の移動量があらかじめ定めた値より小さかった場合には、前記調整ステップへ進んで前記摺動抵抗を小さくする、
請求項1に記載の摺動抵抗調整方法。
【請求項5】
前記アクチュエーターは、圧電モーターである、
請求項1に記載の摺動抵抗調整方法。
【請求項6】
前記抵抗調整部は、ネジの締め付けにより前記摺動抵抗が変化する、
請求項1に記載の摺動抵抗調整方法。
【請求項7】
前記抵抗調整部は、前記ネジの回転を抑制するバネを有する、
請求項6に記載の摺動抵抗調整方法。
【請求項8】
前記移動ステージにインクジェットヘッドが備えられ、印刷を行う印刷ステップを含む、
請求項1に記載の摺動抵抗調整方法。
【請求項9】
ロボットと、
前記ロボットに取り付けられていて、アクチュエーターで駆動し、摺動抵抗を調整する抵抗調整部を有する移動ステージと、
前記移動ステージの前記ロボットとは反対側に取り付けられている工具と、を備える、
ロボットシステム。
【請求項10】
前記工具は、インクジェットヘッドである、
請求項9に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動抵抗調整方法及びロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1にロボットのアーム部にインクジェット印刷ヘッドを装着し、対象物に印刷するロボットシステムが記載されている。このロボットシステムは、印刷軌道と直交方向に移動できるピエゾステージと検出器を有し、1行印刷してその印刷点を測定し、ステージ移動をして2行目の印刷時に1行目との隙間や重なりがないように印刷している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のロボットシステムは、インクジェット印刷ヘッドをロボットにより印刷軌道に沿って移動させる際、印刷速度に応じた加減速で生じる慣性力や姿勢による重力によって印刷軌道と同じ方向に移動するノズルシフト軸にズレが生じ、高画質な印刷ができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
摺動抵抗調整方法は、ロボットに取り付けられていて、アクチュエーターで駆動し、摺動抵抗を調整する抵抗調整部を有する移動ステージの前記摺動抵抗を調整する方法であって、前記アクチュエーターを停止した状態で、前記ロボットを動作させ、前記移動ステージの被駆動部の移動量を検出する第1検出ステップと、前記ロボットの動作を停止した状態で、前記アクチュエーターを駆動して、前記被駆動部の移動量を検出する第2検出ステップと、前記第1検出ステップと前記第2検出ステップとの結果に基づいて、前記摺動抵抗を調整する調整ステップと、を含む。
【0006】
ロボットシステムは、ロボットと、前記ロボットに取り付けられていて、アクチュエーターで駆動し、摺動抵抗を調整する抵抗調整部を有する移動ステージと、前記移動ステージの前記ロボットとは反対側に取り付けられている工具と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係るロボットシステムの全体構成を示す斜視図。
【
図2】ロボットシステムが備えるエンドエフェクターの構成を示す斜視図。
【
図7】本実施形態に係る摺動抵抗調整方法を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.ロボットシステム
先ず、本実施形態に係るロボットシステム100について、工具としてのインクジェットヘッド40を備えた印刷用ロボット装置を一例として挙げ、
図1~
図6を参照して説明する。
尚、説明の便宜上、以降の
図2~
図6には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、及びZ軸を図示している。また、X軸に沿った方向を「X方向」、Y軸に沿った方向を「Y方向」、Z軸に沿った方向を「Z方向」と言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」、矢印と反対側を「マイナス側」とも言う。また、Z方向プラス側を「上」、Z方向マイナス側を「下」とも言う。
【0009】
本実施形態のロボットシステム100は、
図1に示すように、対象物に印刷を行うエンドエフェクター10と、エンドエフェクター10を保持し、エンドエフェクター10を印刷方向へ移動させるロボット200と、ロボット200の駆動を制御するロボット制御装置900と、を有する。
【0010】
ロボット200は、6つの駆動軸を有する6軸ロボットである。ロボット200は、床に固定された基台210と、基台210に接続されたロボットアーム220と、ロボットアーム220に接続されたエンドエフェクター10と、を有する。
【0011】
また、ロボットアーム220は、複数のアーム221,222,223,224,225,226が回動自在に連結されたロボティックアームであり、6つの関節J1~J6を備えている。このうち、関節J2,J3,J5は、曲げ関節であり、関節J1,J4,J6は、ねじり関節である。また、関節J1,J2,J3,J4,J5,J6には、それぞれ、駆動源であるモーターMと、モーターMの回転量又はアームの回動角を検出するエンコーダーEと、が設置されている。
【0012】
エンドエフェクター10は、ロボットアーム220に接続されており、より具体的には、ロボットアーム220の先端部のアーム226に接続されている。エンドエフェクター10は、
図2に示すように、アーム226に接続し、ノズルシフト軸となる矢印A方向に被駆動部としてのテーブル部13を移動する移動ステージ11と、手振れ補正軸となる矢印B方向にテーブル部33を移動する移動ステージ31と、移動ステージ31のテーブル部33に搭載され、対象物に印刷を行う工具としてのインクジェットヘッド40と、を有する。尚、インクジェットヘッド40は、移動ステージ11のロボット200とは反対側に取り付けられている。
【0013】
移動ステージ11は、
図3、
図4、及び
図5に示すように、ロボット200に取り付けられていて、ベース部12、テーブル部13、及び抵抗調整部14を有し、インクジェットヘッド40が搭載された移動ステージ31を印刷方向であるノズルシフト軸に沿う方向に移動させることができる。ベース部12は、アーム226に接続され、内部に配置されたアクチュエーター15によってテーブル部13を矢印A方向であるX方向に移動させる。移動ステージ11のベース部12は、アーム226に連結している台座18と固定ネジ19により連結されている。テーブル部13は、インクジェットヘッド40が搭載された移動ステージ31のベース部32と固定ネジ19により連結されている。
【0014】
ベース部12は、テーブル部13側である上面に、複数の固定部12bと、固定部12bを挟みY方向の両側にX方向に延在するガイドレール12aと、が設けられており、固定部12b上にアクチュエーター15が固定されている。尚、本実施形態では、アクチュエーター15が圧電モーターであり、突起部15aがテーブル部13の凹部13bの受圧面13cに押圧された状態で固定されている。また、ベース部12の上面の中央部には、テーブル部13の移動量を検出するエンコーダー16が配置されている。また、ベース部12のY方向両端部には、ベース部12をアーム226に連結している台座18と連結するための複数のネジ穴19aが設けられている。
【0015】
テーブル部13は、ベース部12側である下面に、ベース部12側に開口する凹部13bと、凹部13bを挟みY方向の両側にX方向に延在するガイドレール13aと、が設けられている。ガイドレール13aは、ベース部12に設けられたガイドレール12aと対向する位置に配置され、ガイドレール12aとガイドレール13aとの間にX方向に並んで複数のボール20を配置することで、テーブル部13を正確且つ滑らかにノズルシフト軸となるX方向へ移動させることができる。また、テーブル部13の凹部13bの中央部には、ベース部12に配置されたエンコーダー16と対向する位置にX方向に延在するエンコーダースケール17が配置されている。そのため、テーブル部13の移動量を正確に検出することができる。また、テーブル部13のX方向両端部には、移動ステージ31のテーブル部33と連結するための複数のネジ穴19bが設けられている。
【0016】
抵抗調整部14は、テーブル部13のノズルシフト軸となるX方向の摺動抵抗を調整するものであり、
図6に示すように、ネジ21、バネ22、及び摺動部材23で構成されている。尚、ベース部12の抵抗調整部14が配置される位置には、ネジ21が貫通する貫通部14aが設けられており、抵抗調整部14と連結したテーブル部13をノズルシフト軸となるX方向へ移動させることができる。抵抗調整部14は、ネジ21をテーブル部13に設けられたネジ山が切られたネジ穴14bに入れ摺動部材23を締め付けることで、テーブル部13の摺動抵抗を変化させることができる。また、バネ22は、摺動抵抗を調整しやすくすることができる。更に、バネ22は、ネジ21の回転を抑制する効果もある。つまり、ネジ21の締め付けが緩むのを抑制している。
【0017】
移動ステージ31は、基本構造が移動ステージ11と同様であり、移動ステージ11を90度回転した構成となっており、インクジェットヘッド40が搭載されたテーブル部33を印刷方向である矢印A方向と直交する矢印B方向に移動させ、手振れ補正を行うことができる。移動ステージ31は、ベース部32及びテーブル部33を有し、ベース部32のX方向両端部において固定ネジ19によって移動ステージ11のテーブル部13に連結している。
【0018】
テーブル部33は、Y方向を長手方向とする矩形であり、Y方向プラス側の上面にインクジェットヘッド40が配置されている。また、インクジェットヘッド40のノズルと対向する位置には、インクジェットヘッド40のノズルから吐出されたインクが対象物に印刷できるように開口部が設けられている。
【0019】
インクジェットヘッド40は、上面側にインクタンク41を備え、下面側にインクタンク41に対応した数のノズルを備えており、ノズルからインクを吐出しながら矢印A方向であるX方向に移動し、対象物に印刷を行う。
【0020】
尚、本実施形態のロボットシステム100では、工具としてインクジェットヘッド40を挙げ説明したが、これに限定する必要はなく、工具として対象物を挟持するハンドや対象物を吸着するハンド等でも構わない。
【0021】
以上で述べたように、本実施形態のロボットシステム100は、ロボット200と、アクチュエーター15で駆動し、摺動抵抗を調整する抵抗調整部14を有する移動ステージ11と、工具としてのインクジェットヘッド40と、を備えている。そのため、ロボット200により印刷方向にインクジェットヘッド40を移動させた際に生じる印刷速度に応じた加減速による慣性力や姿勢による重力によって印刷方向であるノズルシフト軸のズレを抵抗調整部14の摺動抵抗を調整することで抑制することができ、高画質な印刷が可能となる。
【0022】
次に、本実施形態に係るロボットシステム100の摺動抵抗調整方法について、
図7を参照して説明する。
【0023】
本実施形態のロボットシステム100における摺動抵抗調整方法は、
図7に示すように、先ず、ステップS1の第1検出ステップにおいて、アクチュエーター15を停止した状態で、ロボット200を動作させ、移動ステージ11の被駆動部としてのテーブル部13の移動量を検出する。
【0024】
次に、ステップS2において、ノズルシフト軸のエンコーダー値が変化したかを確認する。つまり、ステップS1で検出したテーブル部13の移動量があらかじめ定めた値より大きかった場合には、「YES」として、ステップS6の調整ステップに進み、抵抗調整部14のネジ21を締め上げて摺動抵抗を大きくする。その後、ステップS1へ進み、再び第1検出ステップを行う。
【0025】
また、ステップS2において、ステップS1で検出したテーブル部13の移動量があらかじめ定めた値より小さかった場合又は零であった場合には、「NO」として、ステップS3の第2検出ステップへ進む。
【0026】
次に、ステップS3の第2検出ステップにおいて、ロボット200の動作を停止した状態で、アクチュエーター15を駆動して、テーブル部13の移動量を検出する。
【0027】
次に、ステップS4において、ノズルシフト軸のエンコーダー値が目標値に到達したかを確認する。つまり、ステップS3で検出したテーブル部13の移動量があらかじめ定めた値より小さかった場合又は零であった場合には、「NO」として、ステップS6の調整ステップに進み、抵抗調整部14のネジ21を緩めて摺動抵抗を小さくする。その後、ステップS1へ進み、再び第1検出ステップを行う。
【0028】
また、ステップS4において、ステップS3で検出したテーブル部13の移動量があらかじめ定めた値より大きかった場合には、「YES」として、ステップS5の印刷ステップへ進む。
【0029】
次に、ステップS5の印刷ステップにおいて、インクジェットヘッド40のノズルからインクを吐出しながら矢印A方向であるX方向に移動し、対象物に印刷を行う。
【0030】
以上述べたように本実施形態のロボットシステム100による摺動抵抗調整方法は、第1検出ステップでアクチュエーター15を停止した状態で、ロボット200を動作させ、移動ステージ11のテーブル部13の移動量を検出し、第2検出ステップでロボット200の動作を停止した状態で、アクチュエーター15を駆動して、テーブル部13の移動量を検出し、調整ステップで第1検出ステップと第2検出ステップとの結果に基づいて、摺動抵抗を調整する。そのため、ロボット200により印刷方向にインクジェットヘッド40を移動させた際に生じる印刷速度に応じた加減速による慣性力や姿勢による重力によって印刷方向であるノズルシフト軸のズレを抑制することができ、高画質な印刷が可能となる。
【符号の説明】
【0031】
10…エンドエフェクター、11…移動ステージ、12…ベース部、12a…ガイドレール、12b…固定部、13…被駆動部としてのテーブル部、13a…ガイドレール、13b…凹部、13c…受圧面、14…抵抗調整部、14a…貫通部、14b…ネジ穴、15…アクチュエーター、15a…突起部、16…エンコーダー、17…エンコーダースケール、18…台座、19…固定ネジ、19a,19b…ネジ穴、20…ボール、21…ネジ、22…バネ、23…摺動部材、31…移動ステージ、32…ベース部、33…テーブル部、40…工具としてのインクジェットヘッド、41…インクタンク、100…ロボットシステム、200…ロボット、210…基台、220…ロボットアーム、221,222,223,224,225,226…アーム、900…ロボット制御装置、A,B…矢印、J1,J2,J3,J4,J5,J6…関節、M…モーター。