IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-刺しゅう枠取付装置 図1
  • 特開-刺しゅう枠取付装置 図2
  • 特開-刺しゅう枠取付装置 図3
  • 特開-刺しゅう枠取付装置 図4
  • 特開-刺しゅう枠取付装置 図5
  • 特開-刺しゅう枠取付装置 図6
  • 特開-刺しゅう枠取付装置 図7
  • 特開-刺しゅう枠取付装置 図8
  • 特開-刺しゅう枠取付装置 図9
  • 特開-刺しゅう枠取付装置 図10
  • 特開-刺しゅう枠取付装置 図11
  • 特開-刺しゅう枠取付装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008427
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】刺しゅう枠取付装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 39/00 20060101AFI20240112BHJP
   D05C 9/04 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
D05B39/00
D05C9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110298
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】南雲 周
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA15
3B150CB04
3B150CE02
3B150CE23
3B150CE27
3B150EB03
3B150EB09
3B150EB13
(57)【要約】
【課題】刺しゅう枠が複雑な構成を備えなくとも、容易に刺しゅう枠をキャリッジに着脱可能に取り付けることができる。
【解決手段】刺しゅう枠取付装置は、変位部材が開放位置に位置する場合に、変位部材が開放位置に保持されるように、付勢力を変位部材に作用させ、変位部材が閉鎖位置に位置する場合に、変位部材が閉鎖位置に保持されるように、付勢力を変位部材に作用させ、刺しゅう枠をキャリッジに取り付ける際に、変位部材が開放位置から閉鎖位置に変位する。

【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンのベッド面に沿って移動可能なキャリッジに対し、刺しゅう枠または刺しゅう枠に固定される取付部材を着脱可能に取り付ける刺しゅう枠取付装置であって、
前記キャリッジに配置されるベース部材と、
前記ベース部材に配置され、前記ベッド面に平行に変位可能な変位部材と、
前記ベース部材に対し、前記変位部材の変位を規制する規制機構と、
弾性付勢部材と、
前記弾性付勢部材の付勢力を前記変位部材に作用させるために、前記弾性付勢部材から付勢力が付与される作用部材と、を備え、
前記ベース部材は、前記刺しゅう枠または前記取付部材から突出する連結ピンが嵌る開口部を有し、
前記変位部材は、前記開口部の開口入口を閉鎖する閉鎖位置と、前記開口入口を開放する開放位置とのうち、何れかの位置に変位するための変位方向において、前記規制機構により規制され、
前記変位部材は、前記連結ピンが前記開口部の開口入口から前記開口部の内部に嵌入する場合に、前記連結ピンと当接する当接部を有し、
前記作用部材は、前記変位部材が前記開放位置に位置する場合に、前記変位部材が前記開放位置に保持されるように、前記弾性付勢部材の付勢力を前記変位部材に作用させ、前記変位部材が前記閉鎖位置に位置する場合に、前記変位部材が前記閉鎖位置に保持されるように、前記弾性付勢部材の付勢力を前記変位部材に作用させ、
前記刺しゅう枠を前記キャリッジに取り付けるために前記連結ピンが前記開口部の開口入口から嵌入する際に、前記連結ピンが、前記当接部に当接して前記当接部を前記開口部の開口入口と反対側に向かって押し込む場合に、前記変位部材が前記開放位置から前記閉鎖位置に変位する
ことを特徴とする刺しゅう枠取付装置。
【請求項2】
前記規制機構は、
前記ベース部材及び前記変位部材のどちらか一方の部材に固定され、前記ベッド面に垂直な方向に突出する規制ピンと、
前記ベース部材及び前記変位部材のどちらか他方の部材に配置され、前記規制ピンが嵌る規制溝と、を有し、
前記規制溝は、
前記変位部材が前記開放位置に位置する場合に、前記規制ピンが嵌る第一溝部と、
前記変位部材が前記閉鎖位置に位置する場合に、前記規制ピンが嵌る第二溝部であって、前記第一溝部と異なる方向に延び、かつ前記第一溝部に連続して形成される前記第二溝部と、を有し、
前記規制ピンが前記第一溝部に嵌る場合に、前記付勢力が前記変位部材に作用する作用方向は、前記第一溝部が延びる方向に略垂直な第一作用方向になり、前記変位部材は前記第一作用方向の前記付勢力により前記開放位置に保持され、
前記規制ピンが前記第二溝部に嵌る場合に、前記付勢力が前記変位部材に作用する作用方向は、前記第二溝部が延びる方向に略平行な第二作用方向になり、前記変位部材は前記第二作用方向の前記付勢力により前記閉鎖位置に保持され、
前記変位部材が前記開放位置から前記閉鎖位置に変位する場合に、前記規制ピンは前記規制溝の形状に倣って、前記第一溝部から前記第二溝部に移動して嵌る
ことを特徴とする請求項1に記載の刺しゅう枠取付装置。
【請求項3】
前記規制ピンは、前記変位方向において間隔をあけて複数備えられ、
前記規制溝は、複数の前記規制ピンがそれぞれ嵌るように、複数備えられる
ことを特徴とする請求項2に記載の刺しゅう枠取付装置。
【請求項4】
前記ベース部材に配置される作用ピンを備え、
前記作用部材は、前記作用ピンを支点に回動可能に前記ベース部材に配置され、前記付勢力を前記変位部材に作用させるために前記変位部材に係合する
ことを特徴とする請求項1に記載の刺しゅう枠取付装置。
【請求項5】
前記変位部材は、前記閉鎖位置から前記開放位置に前記変位部材を変位させるためにユーザにより操作される操作部を有し、
前記操作部の操作により、前記変位部材が前記閉鎖位置から前記開放位置に変位する場合に、前記当接部は、前記連結ピンを前記開口部の内部から前記開口部の開口入口へと押し出す
ことを特徴とする請求項1に記載の刺しゅう枠取付装置。
【請求項6】
前記第一溝部は、前記第一溝部の端部において前記第一作用方向と反対方向に窪んだ状態で配置される窪み部を有し、
前記第二溝部は、前記第一溝部と前記第二溝部とが連続して連結される部分より、前記第二作用方向と反対方向に位置する係合部を有し、
前記規制ピンが、前記第一溝部の前記窪み部に嵌る場合に、前記変位部材は前記開放位置に保持され、前記第二溝部の前記係合部に係合する場合に、前記閉鎖位置に保持される
ことを特徴とする請求項2に記載の刺しゅう枠取付装置。
【請求項7】
前記べース部材に配置される弾性押圧部材を備え、
前記べース部材は、前記連結ピンが前記開口部の開口入口から前記開口部の内部に嵌入する場合に、前記連結ピンの一部が載置されて前記刺しゅう枠または前記取付部材を支える支持部を有し、
前記連結ピンが前記開口部の開口入口から前記開口部の内部に嵌入する場合に、前記弾性押圧部材は、前記連結ピンの一部が載置される前記支持部の支持面に向かって前記連結ピンを押圧する
ことを特徴とする請求項1に記載の刺しゅう枠取付装置。
【請求項8】
前記規制ピンは、
ピン軸部と、
前記ピン軸部の突出端部から放射方向に延びる鍔状部と、を有し、
前記ピン軸部が前記規制溝に嵌り、かつ前記一方の部材と前記鍔状部とにより前記規制溝周辺の前記他方の部材を挟む状態において、前記変位部材は、前記規制溝の形状に倣って変位する
ことを特徴とする請求項2に記載の刺しゅう枠取付装置。
【請求項9】
前記連結ピンの嵌入方向において、前記刺しゅう枠または前記取付部材を、前記開口部の開口入口に向かって案内するために、前記開口部の下方において前記ベース部材に配置されるガイド部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の刺しゅう枠取付装置。
【請求項10】
ミシンのベッド面に沿って移動可能なキャリッジに対し、刺しゅう枠または刺しゅう枠に固定される取付部材を着脱可能に取り付ける刺しゅう枠取付装置であって、
前記キャリッジに配置されるベース部材と、
前記ベース部材に配置され、前記ベッド面に平行に変位可能な変位部材と、
前記ベース部材及び前記変位部材のどちらか一方の部材に固定され、前記ベッド面に垂直な方向に突出する規制ピンと、
前記ベース部材及び前記変位部材のどちらか他方の部材に配置され、前記ベース部材に対し前記変位部材の変位を規制するために、前記規制ピンが嵌る規制溝と、
弾性付勢部材と、
前記弾性付勢部材の付勢力を前記変位部材に作用させるために、前記弾性付勢部材から付勢力が付与される作用部材と、を備え、
前記ベース部材は、前記刺しゅう枠または前記取付部材から突出する連結ピンが嵌る開口部を有し、
前記変位部材は、前記開口部の開口入口を閉鎖する閉鎖位置と、前記開口入口を開放する開放位置とのうち何れかの位置に変位するための変位方向において、前記規制溝の形状に倣って変位するように、前記規制ピン及び前記規制溝により規制され、
前記変位部材は、前記連結ピンが前記開口部の開口入口から前記開口部の内部に嵌入する場合に、前記連結ピンと当接する当接部を有し、
前記作用部材は、前記変位部材が前記開放位置に位置する場合に、前記変位部材が前記開放位置に保持されるように、前記弾性付勢部材の付勢力を前記変位部材に作用させ、前記変位部材が前記閉鎖位置に位置する場合に、前記変位部材が前記閉鎖位置に保持されるように、前記弾性付勢部材の付勢力を前記変位部材に作用させ、
前記刺しゅう枠を前記キャリッジに取り付けるために前記連結ピンが前記開口部の開口入口から嵌入する際に、前記連結ピンが、前記当接部に当接して前記当接部を前記開口部の開口入口と反対側に向かって押し込む場合に、前記変位部材が前記開放位置から前記閉鎖位置に変位する
ことを特徴とする刺しゅう枠取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺しゅうミシンに備えられるキャリッジに対し、刺しゅう枠を着脱可能に取り付けるための刺しゅう枠取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
刺しゅう機能を備えるミシンは、ミシンのキャリッジに刺しゅう枠を装着することにより刺しゅう縫製が可能となる。特許文献1に開示される刺しゅう枠移送装置は、刺しゅう枠が着脱可能なキャリッジのホルダと、ホルダに配置されるロック解除レバーとを備える。ロック解除レバーは、刺しゅう枠をホルダにロックするためのロック位置と、ロックを解除するための解除位置との範囲で、回動可能に構成される。ロック解除レバーは、ロック位置に向かって回動するように第一付勢部材により常時付勢される。傾斜部、平坦部、および当接部を有する凸部が、刺しゅう枠に形成される。ユーザが刺しゅう枠をホルダに装着する場合に、ユーザは、凸部をロック解除レバーのレバー部に接触させながら刺しゅう枠を移動させることにより、第一付勢部材の付勢力に抗して、ロック位置から解除位置に向かう方向に所定の回動角度だけロック解除レバーを回動させる。刺しゅう枠がホルダにおける所定の装着位置まで移動されると、ロック解除レバーのレバー部が凸部の傾斜部および平坦部との接触から解放され、ロック解除レバーは第一付勢部材の付勢力によりロック位置に向かって回動される。ロック解除レバーがロック位置まで回動されると、ロック解除レバーのレバー部が凸部の当接部に係合することにより、ロック解除レバーはロック位置に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017―164212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の刺しゅう枠移送装置においては、ユーザが刺しゅう枠をホルダに装着する場合に、ロック位置から解除位置に向かう方向に所定の回動角度だけロック解除レバーを回動させるために、刺しゅう枠は、傾斜部、平坦部、および当接部を有する複雑な形状の凸部、すなわち、装着のための複雑な構成を備える必要があった。つまり、ユーザが、刺しゅう枠を装着する方向に移動させる操作のみで、刺しゅう枠を容易にホルダに装着するためには、複雑な構成を備える刺しゅう枠が必要であった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、刺しゅう枠が複雑な構成を備えなくとも、容易に刺しゅう枠をキャリッジに着脱可能に取り付けることができる刺しゅう枠取付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために請求項1に記載の刺しゅう枠取付装置は、ミシンのベッド面に沿って移動可能なキャリッジに対し、刺しゅう枠または刺しゅう枠に固定される取付部材を着脱可能に取り付ける刺しゅう枠取付装置であって、前記キャリッジに配置されるベース部材と、前記ベース部材に配置され、前記ベッド面に平行に変位可能な変位部材と、前記ベース部材に対し、前記変位部材の変位を規制する規制機構と、弾性付勢部材と、前記弾性付勢部材の付勢力を前記変位部材に作用させるために、前記弾性付勢部材から付勢力が付与される作用部材と、を備え、前記ベース部材は、前記刺しゅう枠または前記取付部材から突出する連結ピンが嵌る開口部を有し、前記変位部材は、前記開口部の開口入口を閉鎖する閉鎖位置と、前記開口入口を開放する開放位置とのうち、何れかの位置に変位するための変位方向において、前記規制機構により規制され、前記変位部材は、前記連結ピンが前記開口部の開口入口から前記開口部の内部に嵌入する場合に、前記連結ピンと当接する当接部を有し、前記作用部材は、前記変位部材が前記開放位置に位置する場合に、前記変位部材が前記開放位置に保持されるように、前記弾性付勢部材の付勢力を前記変位部材に作用させ、前記変位部材が前記閉鎖位置に位置する場合に、前記変位部材が前記閉鎖位置に保持されるように、前記弾性付勢部材の付勢力を前記変位部材に作用させ、前記刺しゅう枠を前記キャリッジに取り付けるために前記連結ピンが前記開口部の開口入口から嵌入する際に、前記連結ピンが、前記当接部に当接して前記当接部を前記開口部の開口入口と反対側に向かって押し込む場合に、前記変位部材が前記開放位置から前記閉鎖位置に変位する。
【0007】
この目的を達成するために請求項2に記載の刺しゅう枠取付装置において、前記規制機構は、前記ベース部材及び前記変位部材のどちらか一方の部材に固定され、前記ベッド面に垂直な方向に突出する規制ピンと、前記ベース部材及び前記変位部材のどちらか他方の部材に配置され、前記規制ピンが嵌る規制溝と、を有し、前記規制溝は、前記変位部材が前記開放位置に位置する場合に、前記規制ピンが嵌る第一溝部と、前記変位部材が前記閉鎖位置に位置する場合に、前記規制ピンが嵌る第二溝部であって、前記第一溝部と異なる方向に延び、かつ前記第一溝部に連続して形成される前記第二溝部と、を有し、前記規制ピンが前記第一溝部に嵌る場合に、前記付勢力が前記変位部材に作用する作用方向は、前記第一溝部が延びる方向に略垂直な第一作用方向になり、前記変位部材は前記第一作用方向の前記付勢力により前記開放位置に保持され、前記規制ピンが前記第二溝部に嵌る場合に、前記付勢力が前記変位部材に作用する作用方向は、前記第二溝部が延びる方向に略平行な第二作用方向になり、前記変位部材は前記第二作用方向の前記付勢力により前記閉鎖位置に保持され、前記変位部材が前記開放位置から前記閉鎖位置に変位する場合に、前記規制ピンは前記規制溝の形状に倣って、前記第一溝部から前記第二溝部に移動して嵌る。
【0008】
この目的を達成するために請求項3に記載の刺しゅう枠取付装置において、前記規制ピンは、前記変位方向において間隔をあけて複数備えられ、前記規制溝は、複数の前記規制ピンがそれぞれ嵌るように、複数備えられる。
【0009】
この目的を達成するために請求項4に記載の刺しゅう枠取付装置は、前記ベース部材に配置される作用ピンを備え、前記作用部材は、前記作用ピンを支点に回動可能に前記ベース部材に配置され、前記付勢力を前記変位部材に作用させるために前記変位部材に係合する。
【0010】
この目的を達成するために請求項5に記載の刺しゅう枠取付装置において、前記変位部材は、前記閉鎖位置から前記開放位置に前記変位部材を変位させるためにユーザにより操作される操作部を有し、前記操作部の操作により、前記変位部材が前記閉鎖位置から前記開放位置に変位する場合に、前記当接部は、前記連結ピンを前記開口部の内部から前記開口部の開口入口へと押し出す。
【0011】
この目的を達成するために請求項6に記載の刺しゅう枠取付装置において、前記第一溝部は、前記第一溝部の端部において前記第一作用方向と反対方向に窪んだ状態で配置される窪み部を有し、前記第二溝部は、前記第一溝部と前記第二溝部とが連続して連結される部分より、前記第二作用方向と反対方向に位置する係合部を有し、前記規制ピンが、前記第一溝部の前記窪み部に嵌る場合に、前記変位部材は前記開放位置に保持され、前記第二溝部の前記係合部に係合する場合に、前記閉鎖位置に保持される。
【0012】
この目的を達成するために請求項7に記載の刺しゅう枠取付装置は、前記べース部材に配置される弾性押圧部材を備え、前記べース部材は、前記連結ピンが前記開口部の開口入口から前記開口部の内部に嵌入する場合に、前記連結ピンの一部が載置されて前記刺しゅう枠または前記取付部材を支える支持部を有し、前記連結ピンが前記開口部の開口入口から前記開口部の内部に嵌入する場合に、前記弾性押圧部材は、前記連結ピンの一部が載置される前記支持部の支持面に向かって前記連結ピンを押圧する。
【0013】
この目的を達成するために請求項8に記載の刺しゅう枠取付装置において、前記規制ピンは、ピン軸部と、前記ピン軸部の突出端部から放射方向に延びる鍔状部と、を有し、前記ピン軸部が前記規制溝に嵌り、かつ前記一方の部材と前記鍔状部とにより前記規制溝周辺の前記他方の部材を挟む状態において、前記変位部材は、前記規制溝の形状に倣って変位する。
【0014】
この目的を達成するために請求項9に記載の刺しゅう枠取付装置は、記連結ピンの嵌入方向において、前記刺しゅう枠または前記取付部材を、前記開口部の開口入口に向かって案内するために、前記開口部の下方において前記ベース部材に配置されるガイド部を備える。
【0015】
この目的を達成するために請求項10に記載の刺しゅう枠取付装置は、ミシンのベッド面に沿って移動可能なキャリッジに対し、刺しゅう枠または刺しゅう枠に固定される取付部材を着脱可能に取り付ける刺しゅう枠取付装置であって、前記キャリッジに配置されるベース部材と、前記ベース部材に配置され、前記ベッド面に平行に変位可能な変位部材と、前記ベース部材及び前記変位部材のどちらか一方の部材に固定され、前記ベッド面に垂直な方向に突出する規制ピンと、前記ベース部材及び前記変位部材のどちらか他方の部材に配置され、前記ベース部材に対し前記変位部材の変位を規制するために、前記規制ピンが嵌る規制溝と、弾性付勢部材と、前記弾性付勢部材の付勢力を前記変位部材に作用させるために、前記弾性付勢部材から付勢力が付与される作用部材と、を備え、前記ベース部材は、前記刺しゅう枠または前記取付部材から突出する連結ピンが嵌る開口部を有し、前記変位部材は、前記開口部の開口入口を閉鎖する閉鎖位置と、前記開口入口を開放する開放位置とのうち何れかの位置に変位するための変位方向において、前記規制溝の形状に倣って変位するように、前記規制ピン及び前記規制溝により規制され、前記変位部材は、前記連結ピンが前記開口部の開口入口から前記開口部の内部に嵌入する場合に、前記連結ピンと当接する当接部を有し、前記作用部材は、前記変位部材が前記開放位置に位置する場合に、前記変位部材が前記開放位置に保持されるように、前記弾性付勢部材の付勢力を前記変位部材に作用させ、前記変位部材が前記閉鎖位置に位置する場合に、前記変位部材が前記閉鎖位置に保持されるように、前記弾性付勢部材の付勢力を前記変位部材に作用させ、前記刺しゅう枠を前記キャリッジに取り付けるために前記連結ピンが前記開口部の開口入口から嵌入する際に、前記連結ピンが、前記当接部に当接して前記当接部を前記開口部の開口入口と反対側に向かって押し込む場合に、前記変位部材が前記開放位置から前記閉鎖位置に変位する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の刺しゅう枠取付装置によれば、規制機構により変位部材の変位が規制され、作用部材が弾性付勢部材の付勢力を作用させる方向が変えられることにより、変位部材が開放位置にある状態、つまり開口部の開口入口が開いた状態が保持される。ユーザは、刺しゅう枠または取付部材をキャリッジに取り付ける場合に、開いた状態の開口部に刺しゅう枠の連結ピンを嵌入させて当接部を押し込む。したがって、刺しゅう枠は複雑な構成を備えずとも、連結ピンを備えるだけの構成で、ユーザは連結ピンを嵌入させる操作のみにより、刺しゅう枠を容易に取り付けることができる。
【0017】
請求項2に記載の刺しゅう枠取付装置によれば、規制ピンが規制溝に嵌る位置により、付勢力の作用方向が変わる。規制溝の延出方向と作用方向とが略垂直になる場合に、変位部材は開放位置に保持される。したがって、規制ピンと規制溝とによる簡易な構成により、変位部材を開放位置に保持でき、ユーザは刺しゅう枠を容易に取り付けることができる。
【0018】
請求項3に記載の刺しゅう枠取付装置によれば、規制ピン及び規制溝が間隔をあけて複数備えられる。したがって、変位部材が規制溝に沿って変位する際の姿勢を安定させることができる。
【0019】
請求項4に記載の刺しゅう枠取付装置によれば、作用部材が作用ピンを支点に回動可能である。したがって、簡易な構成で、付勢力の作用方向を変えることができ、ユーザは刺しゅう枠を容易に取り付けることができる。
【0020】
請求項5に記載の刺しゅう枠取付装置によれば、操作部の操作により、変位部材は閉鎖位置から開放位置に変位され、当接部は連結ピンを開口部内部から押し出す。したがって、ユーザは、刺しゅう枠または取付部材をキャリッジから取り外す場合に、操作部による1つの操作で、変位部材の開放位置への変位と刺しゅう枠の押し出しとを実行でき、刺しゅう枠を容易に取り外すことができる。
【0021】
請求項6に記載の刺しゅう枠取付装置によれば、第一溝部は、第一溝部の端部に窪み部を有する。変位部材が開放位置にある場合に、規制ピンは窪み部に嵌り保持される。したがって、変位部材は安定して開放位置に保持される。
【0022】
請求項7に記載の刺しゅう枠取付装置によれば、刺しゅう枠が取り付けられた状態で、弾性押圧部材と支持部とにより、連結ピンを上下方向に狭圧する。したがって、刺しゅう枠をガタつくことなく安定して保持することができる。
【0023】
請求項8に記載の刺しゅう枠取付装置によれば、規制ピンの鍔状部と一方の部材とにより規制溝周辺の他方の部材が挟まれる。したがって、変位する変位部材の姿勢を安定させることができる。
【0024】
請求項9に記載の刺しゅう枠取付装置によれば、刺しゅう枠または取付部材を取り付けるためのガイド部が備えられる。したがって、ユーザは刺しゅう枠または取付部材を開口部に正確に案内することができる。
【0025】
請求項10に記載の刺しゅう枠取付装置によれば、規制ピン及び規制溝により変位部材の変位が規制され、作用部材が弾性付勢部材の付勢力を作用させる方向が変えられることにより、変位部材が開放位置にある状態、つまり開口部の開口入口が開いた状態で保持される。ユーザは、刺しゅう枠または取付部材をキャリッジに取り付ける場合に、開いた状態の開口部に連結ピンを嵌入させて当接部を押し込む。したがって、刺しゅう枠は複雑な構成を備えずとも、連結ピンを備えるだけの構成で、ユーザは、連結ピンを嵌入させる操作のみにより、刺しゅう枠を容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】キャリッジ2に固定される刺しゅう枠取付装置3を示す全体斜視図である。
図2】刺しゅう枠取付装置3に取り付けられる取付部材6及び刺しゅう枠5を示す斜視図である。
図3】取付部材6の連結ピン12A、12Bを示す斜視図である。
図4】刺しゅう枠取付装置3を示す分解斜視図である。
図5】変位部材30、及び規制溝33A、33Bを拡大した平面図である。
図6】連結ピン12A、12Bが開口部21A、21Bにそれぞれ嵌入され、変位部材30が閉鎖位置にある状態において、取付部材6が取り付けられる刺しゅう枠取付装置3の平面図である。
図7】連結ピン12A、12Bが開口部21A、21Bにそれぞれ嵌入され、変位部材30が閉鎖位置にある状態における作用部材41及び規制溝33B周辺を示す概略図である。
図8】変位部材30が開放位置にある状態における刺しゅう枠取付装置3の斜視図である。
図9】変位部材30が開放位置にある状態における刺しゅう枠取付装置3の平面図である。
図10】変位部材30が開放位置にある状態における作用部材41及び規制溝33B周辺を示す概略図である。
図11】変位部材30が開放位置にある状態であって、連結ピン12A、12Bが当接部32A、32Bにそれぞれ当接した状態における刺しゅう枠取付装置3の平面図である。
図12】変位部材30が閉鎖位置にある状態であって、連結ピン12A、12Bが当接部32A、32Bにそれぞれ当接した状態における刺しゅう枠取付装置3の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。尚、これらの図面は本発明の技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成等は、単なる説明例である。以下、説明で使用する方向は、それぞれの図面に記載の方向に準ずるものとする。
【0028】
<ミシン1及びキャリッジ2>
図1及び図2を参照して、ミシン1及びキャリッジ2について説明する。ミシン1は、キャリッジ2及びベッド部4を備える刺しゅう機能付きミシンである。キャリッジ2は、第1移動部2Aと、第2移動部2Bとを備える。第1移動部2Aは、図示しない移動機構により、前後方向に移動可能にミシン1に配置される。第2移動部2Bは、左右方向に移動可能に第1移動部2Aに配置される。第1移動部2Aは、ガイド軸7と、ガイドレールと、駆動機構とを備える。ガイド軸7は、左右方向に延びる状態で第1移動部2Aのフレームに支持される。ガイドレールは、ガイド軸7の上方において、左右方向に延びる状態で第1移動部2Aのフレームに支持される。駆動機構は、一対のダイミングプーリと、両プーリの間に張設されるタイミングベルトと、一方のタイミングプーリを駆動する駆動モータとを含み、第1移動部2Aのフレーム内に配置される。第2移動部2Bは、上記駆動機構のタイミングベルトと連結するための連結部材9を含む。連結部材9の下方部分は、タイミングベルトを挟む状態でタイミングベルトに固定され、連結部材9の上方部分は、上記ガイドレールにより案内される。キャリッジ2の第2移動部2Bには、刺しゅう枠取付装置3、及び取付部材6を介して、刺しゅう枠5が取り付けられる。ミシン1は、キャリッジ2に取り付けられた刺しゅう枠5を前後左右に移動しながら、縫い針(図示略)及び針棒(図示略)を上下動させることにより、刺しゅう縫製を実行する。本実施形態で例示するミシン1及びキャリッジ2は、例えば特開2017―164212号公報に開示されるミシン及びキャリッジと同様の構成でもよく、基本的な構成は、周知であるため詳細な説明は省略する。
【0029】
<刺しゅう枠5及び取付部材6>
図2及び図3を参照して、刺しゅう枠5及び取付部材6について説明する。刺しゅう枠5は、上枠と下枠とにより、被縫製物(図示略)を挟持する。取付部材6は、2つのネジ11A、11Bにより刺しゅう枠5に固定される。取付部材6は、略U字形状の部材である。2つの連結ピン12A、12Bは、取付部材6にそれぞれ固定される。連結ピン12A、12Bは、連結軸部13A、13Bと、円形鍔部14A、14Bとをそれぞれ備える。連結軸部13A、13Bは、取付部材6から上方にそれぞれ突出する。円形鍔部14A、14Bは、連結軸部13A、13Bの上端部にそれぞれ形成され、連結軸部13A、13Bの軸線から放射方向に延びる。
【0030】
<刺しゅう枠取付装置3>
図4及び図5を参照して、刺しゅう枠取付装置3について説明する。刺しゅう枠取付装置3は、ベース部材20、変位部材30、作用部材41、コイルバネ44、及び板バネ15を備える。
【0031】
ベース部材20は、移動枠8、開口部21A、21B、操作支持部22、ガイド部23、規制ピン36A、36B、及びバネ支持部43を備える。移動枠8は、ベース部材20の上方に起立する部分に配置され、ガイド軸7に嵌る一対の軸受け部8A、8Bと、作用支持部24とを含む。移動枠8は、ネジ10によりキャリッジ2の第2移動部2Bの連結部材9に固定される。作用支持部24は、ベース部材20の上方に起立する部分の下方部分から右方向に延びる。作用支持部24は、後述する作用部材41の上方への移動を抑えるために作用部材41を上方から支持する。開口部21A、21Bは、ベース部材20の平板状の部分に形成され、左右方向に間隔をあけて2カ所にそれぞれ配置される。開口部21A、21Bには、連結ピン12A、12Bの連結軸部13A、13Bがそれぞれ嵌るが、円形鍔部14A、14Bは、開口部21A、21Bに嵌らない大きさの直径を有する。操作支持部22は、ベース部材20の平板状の部分の右端に固定され、上方に延出する壁状の部分である。ガイド部23は、開口部21A、21Bの下方の位置において、ベース部材20の平板状の部分から下方に屈曲して形成される板状部分である。規制ピン36A、36Bは、ベース部材20の平板状の部分において、左右方向に間隔をあけて2カ所にそれぞれ固定される。規制ピン36A、36Bは、鍔状部37A、37B及びピン軸部38A、38Bからそれぞれ構成される。鍔状部37A、37Bは、規制ピン36A、36Bの上端にそれぞれ位置し、ピン軸部38A、38Bの軸線から放射方向に延びる部分である。本実施形態では、鍔状部37A、37Bは、ピン軸部38A、38Bの上端に圧入されるEリングである。バネ支持部43は、ベース部材20の起立する部分の後方部分に固定される
【0032】
変位部材30は、閉鎖部31A、31B、当接部32A、32B、規制溝33A、33B、被作用部39、及び操作部40を備える。閉鎖部31A、31Bは、左右方向に間隔をあけて2カ所にそれぞれ配置され、変位部材30の前方部において左方向に延びる部分である。閉鎖部31A、31Bの左方向に延びる部分の長さは、開口部21A、21Bの開口入口の幅よりもそれぞれ長い。当接部32A、32Bは、閉鎖部31A、31Bの後方にそれぞれ位置するとともに、左方に延びる端縁部分である。規制溝33A、33Bは、変位部材30において、左右方向に間隔をあけて2カ所にそれぞれ配置される。規制溝33A、33Bの配置される間隔は、規制ピン36A、36Bが配置される間隔に対応付けて決定される。規制溝33A、33Bは、変位部材30の平坦な部分を上下方向に貫通して形成される。規制ピン36A、36Bのピン軸部38A、38Bが規制溝33A、33Bにそれぞれ嵌合し、かつ規制溝33A、33Bの縁部周辺の変位部材30の上面と鍔状部37A、37Bの下面とが係合される。この係合により、変位部材30は、規制溝33A、33Bの形状に倣って変位可能な状態で、ベース部材20に配置される。規制溝33A、33Bは、第一溝部34A、34Bと、第二溝部35A、35Bとを含む。第一溝部34A、34Bは、図5において、左右方向に対して左後方にそれぞれ延びて形成され、第二溝部35A、35Bは、左右方向に延びて形成される。第一溝部34A、34Bと、第二溝部35A、35Bとは、湾曲する部分により連続するように形成される。第一溝部34A、34Bは、変位部材30が後述する開放位置に位置する場合に、規制ピン36A、36Bのピン軸部38A、38Bがそれぞれ位置する部分である。図5に示されるように、第一溝部34A、34Bは窪み部341A、341Bをそれぞれ備える。窪み部341A、341Bは、第一溝部34A、34Bを画定する側縁部及び端部のうちで後方にそれぞれ位置する端部における右後方向に窪む部分である。変位部材30が開放位置に位置する場合に、規制ピン36A、36Bのピン軸部38A、38Bが窪み部341A、341Bにそれぞれ嵌る。第二溝部35A、35Bは、変位部材30が後述する閉鎖位置に位置する場合に、規制ピン36A、16Bのピン軸部38A、38Bがそれぞれ位置する部分である。図5に示されるように、第二溝部35A、35Bは係合部351A1、351A2、及び係合部351B1、351B2をそれぞれ備える。係合部351A1、351B1は、第二溝部35A、35Bを画定する側縁部及び端部のうちで最も右方向に位置する端部である。係合部351A2、351B2の各係合部は、第二溝部35A、35Bの各第二溝部を画定する側縁部及び縁部のうち、最も右方向の端部より僅かに左側の位置において、前後方向に対向する2つの側縁部である。連結ピン12A、12Bが開口部21A、21Bにそれぞれ嵌入されていない状態において、変位部材30が閉鎖位置に位置する場合に、規制ピン36A、36Bのピン軸部38A、38Bが係合部351A1、351B1にそれぞれ係合する。図12に示されるように、連結ピン12A、12Bが開口部21A、21Bにそれぞれ嵌入され、連結ピン12A、12Bの円形鍔部14A、14Bが変位部材30の当接部32A、32Bにそれぞれ当接している状態において、変位部材30が閉鎖位置に位置する場合に、規制ピン36A、36Bのピン軸部38A、38Bが係合部351A2、351B2にそれぞれ係合する。被作用部39は、変位部材30の平坦な部分から上方に突出する円柱形状の部分である。操作部44は、変位部材30の右端に起立して形成され、上方に延出する壁状の部分である。
【0033】
作用部材41は、作用ピン42を支点として回動可能に、ベース部材20の後方に延びる部分に配置される。作用ピン42の軸線は上下方向に延びることから、作用部材41は、ベース部材20の平板状の部分の上面に沿って、前後左右に延びる平面において回動可能である。作用部材41は、変位部材30の被作用部39に当接する。作用部材41は、作用ピン42により支持される支点部分と、被作用部39と当接する自由端部と、支点部分と自由端部との間の中間部分とを含む。コイルバネ44は、作用部材41の中間部分と、ベース部材20の左方後端において固定されるバネ支持部43との間に配置される。コイルバネ44の付勢力が常時作用される作用部材41は、被作用部39に対し付勢力を与える。作用部材41は、被作用部39を左方または左前方に向かって押圧するように、被作用部39に対し付勢力を作用させる。作用部材41が回動する角度に応じて、被作用部39に対してコイルバネ44の付勢力が作用される作用方向が、左前方の方向と略左方の方向との間の範囲で変化する。
【0034】
板バネ15は、2つの押圧片部16A、16Bを含む。2つの押圧片部16A、16Bが変位部材30の上面に向かう方向に押圧力を作用させることができるように、板バネ15は、ベース部材20の起立する部分にネジなどにより固定される。押圧片部16A、16Bは、ベース部材20の開口部21A、21Bの上方に配置されるように、左右方向に間隔をあけて配置される。
【0035】
<変位部材30の閉鎖位置>
図2図6及び図7を参照して、変位部材30の閉鎖位置について説明する。図6及び図7はいずれも、連結ピン12A、12Bが開口部21A、21Bにそれぞれ嵌入されている状態である。図7は、図6に示される作用部材41及び規制溝33B周辺を拡大し、説明のために鍔状部37B及び作用支持部24を省略した概略図である。閉鎖位置は、変位部材30の閉鎖部31A、31Bが開口部21A、21Bの開口入口をそれぞれ閉鎖する場合における、変位部材30の位置である。閉鎖位置は、連結ピン12A、12Bが開口部21A、21Bにそれぞれ嵌入されていない状態における第一閉鎖位置PAと、連結ピン12A、12Bが開口部21A、21Bにそれぞれ嵌入されている状態における第二閉鎖位置PBとの2つの異なる状態での位置が存在し、それらを総称して閉鎖位置とする。図7に示される第二閉鎖位置PBのように、変位部材30が閉鎖位置にある場合、作用部材41は、被作用部39に対し、第二溝部35A、35Bの延出方向と平行な方向、つまり左方向に向けて、コイルバネ44の付勢力を作用させる。変位部材30に対し、常に左方向へ変位する力が加えられる。つまり、作用部材41による付勢力の作用方向と、第二溝部35A、35Bの延出方向とが平行である。第一閉鎖位置PAにおいて、規制ピン36A、36Bは、規制溝33A、33Bにおける第二溝部35A、35Bの係合部351A1、351B1にそれぞれ係合する。したがって、規制ピン36A、36Bが規制溝33A、33Bの係合部351A1、351B1より右方向に動くことができず、変位部材30の変位が規制され、変位部材30は第一閉鎖位置PAに保持される。図7に示される第二閉鎖位置PBにおいて、規制ピン36A、36Bは、規制溝33A、33Bにおける第二溝部35A、35Bの係合部351A2、351B2にそれぞれ係合する。この時、連結ピン12A、12Bの円形鍔部14A、14Bは、円形鍔部14A、14Bが係合する変位部材30の円弧状の凹部により左方向へ押圧される。しかし、連結軸部13A、13Bは、ベース部材20の開口部21A、21Bに嵌入し、ベース部材20と共に左方向への移動が制限されている。この移動が制限されている状態において、図2及び図6に示されるように、連結ピン12A、12Bが、左右方向において変位部材30とベース部材20とにより狭圧され、開口部21A、21Bの内部に保持される。したがって、変位部材30の左方向への変位は、連結ピン12A、12Bにより制限され、規制溝33A、33Bが規制ピン36A、36Bと係合する部分が、係合部351A2、351B2より右側に位置する部分、すなわち係合部351A1、351B1まで達することができず、変位部材30は第二閉鎖位置PBに保持される。連結ピン12A、12Bは、連結軸部13A、13Bが開口部21A、21Bの内部へそれぞれ嵌るとともに、円形鍔部14A、14Bの下面が開口部21A、21B周辺のベース部材20に当接するように、嵌入される。板バネ15の押圧片部16A、16Bが連結ピン12A、12Bの円形鍔部14A、14Bの上面を下方へそれぞれ押圧する。連結ピン12A、12Bの円形鍔部14A、14Bは、押圧片部16A、16Bとベース部材20とにより狭圧される状態となる。つまり、変位部材30が第二閉鎖位置PBにある場合、取付部材6及び刺しゅう枠5は、刺しゅう枠取付装置3より、がたつくことない安定した状態でキャリッジ2に取り付けられる。
【0036】
<変位部材30の開放位置>
図8から図10を参照して、変位部材30の開放位置について説明する。図10は、図9に示される作用部材41及び規制溝33B周辺を拡大し、説明のために鍔状部37B及び作用支持部24を省略した概略図である。図8及び図9において、板バネ15は、図示の便宜上、省略されている。開放位置は、変位部材30の閉鎖部31A、31Bが開口部21A、21Bの開口入口から右方に退避することにより、開口部21A、21Bの開口入口が開放される場合における、変位部材30の位置である。図10に示されるように、変位部材30が開放位置にある場合、作用部材41は、被作用部39に対し、第一溝部34A、34Bの延出方向と垂直な方向、つまり左前方向に向けて、コイルバネ44の付勢力を作用させる。変位部材30に対し、常に左前方向へ変位する力が加えられる。つまり、作用部材41による付勢力の作用方向と、第一溝部34A、34Bの延出方向とが垂直である。規制ピン36A、36Bは、規制溝33A、33Bにおける第一溝部34A、34Bの窪み部341A、341Bにそれぞれ嵌る。したがって、規制ピン36A、36B及び規制溝33A、33Bにより、変位部材30の変位が規制され、図9に示されるように変位部材30は開放位置に保持される。
【0037】
<開放位置から閉鎖位置への変位動作>
図11及び図12を参照して、変位部材30が開放位置から閉鎖位置へ変位する場合の動作について説明する。図12に示される変位部材30は、第二閉鎖位置PBに位置する。図11及び図12において、板バネ15は、図示の便宜上、省略されている。図11に示される変位部材30は開放位置に位置する。刺しゅう縫製を行うために、ユーザは、取付部材6が固定される刺しゅう枠5を手で持った状態で、ガイド部23に沿って取付部材6を案内し、取付部材6の連結ピン12A、12Bを開口部21A、21Bへそれぞれ嵌入する。ユーザは連結ピン12A、12Bが開口部21A、21Bに嵌入した後、連結ピン12A、12Bの円形鍔部14A、14Bの円周側面を変位部材30の当接部32A、32Bにそれぞれ当接させ、後方向へ連結ピン12A、12Bを押し込む。連結ピン12A、12Bに押し込まれて変位部材30が後方向へ変位することにより、規制ピン36A、36Bは、窪み部341A、341Bの嵌合から外れる。その後、第一溝部34A、34Bと第二溝部35A、35Bとが連結される湾曲した境界部分が、規制ピン36A、36Bと嵌る位置関係になるまで、変位部材30が後方向及び左方向に変位する。変位部材30に備えられる被作用部39も後方向及び左方向へ変位することにより、作用部材41から被作用部39に作用するコイルバネ44の付勢力の作用方向が変化する。作用部材41から被作用部39に左方向の付勢力が作用することにより、規制ピン36A、36Bが嵌る位置は第二溝部35A、35Bに沿って変化する。図5及び図7に示されるように、係合部351A2、351B2が規制ピン36A、36Bと係合する位置関係になるまで、変位部材30が左方向に変位する。係合部351A2、351B2が規制ピン36A、36Bと係合し、左右方向において変位部材30とベース部材20とにより連結ピン12A、12Bが狭圧されるときに、変位部材30は変位を停止する。変位部材30が左方向に変位することにより、閉鎖部31A、31Bは開口部21A、21Bの開口入口を閉鎖し、図12に示されるように変位部材30は閉鎖位置に保持される。変位部材30が閉鎖位置に保持される状態で、ミシン1を動作させることにより、刺しゅう縫製が実行される。
【0038】
<閉鎖位置から開放位置への変位動作>
図11及び図12を参照して、変位部材30が閉鎖位置から開放位置へ変位する場合の動作について説明する。図12に示される変位部材30は、第二閉鎖位置PBに位置する。刺しゅう縫製が完了した際に刺しゅう枠5及び取付部材6を取り外すために、ユーザは操作支持部22と操作部40とを併せて、一方の手の指で摘み、操作支持部22を固定点として操作部40を右方向へ移動させるように操作する。通常、ユーザが操作部40を操作する時点では、刺しゅう枠5が上下方向に傾くことを防ぐために、ユーザは、他方の手で、刺しゅう枠5を保持する。変位部材30は、右方向へ変位し、規制ピン36A、36Bは係合部351A2、351B2との係合から解除される。規制ピン36A、36Bが嵌る溝部分は第二溝部35A、35Bから第一溝部34A、34Bへ変化する。変位部材30は、第一溝部34A、34Bに沿って、右前方向に変位する。変位部材30に備えられる被作用部39も右前方向へ変位することにより、作用部材41から被作用部39に作用するコイルバネ44の付勢力の作用方向が変化する。変位部材30の閉鎖部31A、31Bが右方向へ変位し、開口部21A、21Bの開口入口が開放される。変位部材30の当接部32A、32Bが前方向に変位し、連結ピン12A、12Bの円形鍔部14A、14Bを前方向に押し出す。図9及び図10に示されるように、ユーザは、規制ピン36A、36Bが窪み部341A、341Bに嵌合した場合に、操作部40から指を離す。ユーザが操作部40から指を離した状態でも、変位部材30は、規制ピン36A、36Bと窪み部341A、341Bとの嵌合により、開放位置に保持される。変位部材30が開放位置に保持される状態で、ユーザは、少なくとも他方の手、すなわち片手により、取付部材6の連結ピン12A、12Bを開口部21A、21Bから引き出す操作のみで、刺しゅう枠5及び取付部材6を取り外すことができる。
【0039】
<本実施形態の効果>
本実施形態の刺しゅう枠取付装置3では、刺しゅう縫製の完了後などにユーザが操作部40の操作により変位部材30を閉鎖位置から開放位置へ変位させれば、変位部材30が開放位置に保持されることにより、開口部21A、21Bの開口入口が開いた状態で保持される。したがって、ユーザは刺しゅう枠5をキャリッジ2に取り付ける場合に、連結ピン12A、12Bを、開いた状態の開口部21A、21Bに嵌入する1つの操作だけでよく、容易に刺しゅう枠5の取り付けを実行できる。また、本実施形態の刺しゅう枠取付装置3によれば、刺しゅう枠5及び取付部材6は、連結ピン12A、12Bを備える簡易な構成で済むことから、刺しゅう模様の大きさ及び形状に応じて多種類の刺しゅう枠が必要となる場合でも、多種類の刺しゅう枠の構造の変更が不要となる。
【0040】
本実施形態の刺しゅう枠取付装置3では、刺しゅう枠5をキャリッジ2に取り付ける場合、ユーザは、連結ピン12A、12Bを、開口部21A、21Bの内部に位置する当接部32A、32Bに当接させて押し込む。図10及び図11に示されるように、連結ピン12A、12Bを押し込む方向である後方向は、作用部材41がコイルバネ44の付勢力を変位部材30に作用させる作用方向である左前方向とは平行ではないため、押し込む際に必要な力は付勢力に比べ小さくて済む。したがって、ユーザは小さな押し込み操作力で刺しゅう枠5をキャリッジ2に容易に取り付けることができる。
【0041】
本実施形態の刺しゅう枠取付装置3では、刺しゅう枠5に固定される取付部材6が2つの連結ピン12A、12Bを備え、ベース部材20が2つの開口部21A、21Bを備える構成である。また、図4に示されるように、左右方向における2つの開口部21A、21Bの間隔は、前後方向における各開口部の奥行、すなわち、各連結ピンが各開口部に嵌入する距離より十分に大きく設定される。したがって、刺しゅう枠5を取り付ける場合に、2つの連結ピン12A、12Bと2つの開口部21A、21Bとが、十分に大きな間隔があけられた2カ所の支持点で嵌合するので、支持点が1カ所の場合に比べ、刺しゅう枠5の取付姿勢を安定させることができる。
【0042】
本実施形態の刺しゅう枠取付装置3では、操作部40及び操作支持部22は、互いに対向して延びる壁状の部分から形成される。ユーザは、操作部40と操作支持部22とを指で引き寄せる操作により、変位部材30を閉鎖位置から開放位置に変位させる。したがって、ユーザは片手で変位部材30を開放位置に変位でき、もう片方の手で容易に刺しゅう枠5を取り外すことができる。また、図1及び図12に示されるように、本実施形態の刺しゅう枠取付装置3では、刺しゅう縫製の際にユーザがキャリッジ2及び刺しゅう枠5を同時に見ることができるミシン1の正面側、すなわち図1におけるミシン1の右方側に、操作部40及び操作支持部22は配置されることから、ユーザが操作部40及び操作支持部22を容易に操作することができる。
【0043】
本実施形態の第二閉鎖位置PBにおいて、連結ピン12A、12Bが、変位部材30とベース部材20とにより狭圧され、開口部21A、21Bの内部において保持される。この時、規制ピン36A、36Bは、第二溝部35A、35Bの右端の端部よりも僅かに左側に位置する係合部351A2、351B2にそれぞれ係合する。したがって、連結ピン12A、12Bが、変位部材30とベース部材20とにより狭圧されれば、第二溝部35A、35Bが規制ピン36A、36Bと係合する部分が右方向に動く余地が残されている状態でも、変位部材30は変位を止めるため、連結ピン12A、12Bを確実に狭圧して保持することができる。
【0044】
<本発明と本実施形態との構成の対応関係>
図1に示されるミシン1は、本発明のミシンの一例である。図1に示されるキャリッジ2は、本発明のキャリッジの一例である。図1に示される刺しゅう枠5は、本発明の刺しゅう枠の一例である。図1に示される取付部材6は、本発明の取付部材の一例である。図1に示される刺しゅう枠取付装置3は、本発明の刺しゅう枠取付装置の一例である。図4に示されるベース部材20は、本発明のベース部材の一例である。図4に示される変位部材30は、本発明の変位部材の一例である。図4に示される規制ピン36A、36B、及び規制溝33A、33Bの組み合わせは、本発明の規制機構の一例である。図4に示される規制ピン36A、36Bは、本発明の規制ピンの一例である。図4に示される規制溝33A、33Bは、本発明の規制溝の一例である。図4に示されるコイルバネ44は、本発明の弾性付勢部材の一例である。図4に示される作用部材41は、本発明の作用部材の一例である。図3に示される連結ピン12A、12Bは、本発明の連結ピンの一例である。図4に示される開口部21A、21Bは、本発明の開口部の一例である。図6及び図12に示される変位部材30の位置は、本発明の閉鎖位置の一例である。図9及び図11に示される変位部材30の位置は、本発明の開放位置の一例である。図4に示される当接部32A、32Bは、本発明の当接部の一例である。図5に示される第一溝部34A、34Bは、本発明の第一溝部の一例である。図5に示される第二溝部35A、35Bは、本発明の第二溝部の一例である。図10における作用部材41から被作用部39に対する付勢力の作用方向、すなわち左前方向は、本発明の第一作用方向の一例である。図7における作用部材41から被作用部39に対する付勢力の作用方向、すなわち略左方向は、本発明の第二作用方向の一例である。図4に示される作用ピン42は、本発明の作用ピンの一例である。図4に示される操作部40は、本発明の操作部の一例である。図5に示される窪み部341A、341Bは、本発明の窪み部の一例である。図5に示される係合部351A1、351A2、及び係合部351B1、351B2は、本発明の係合部の一例である。本発明の図4に示される板バネ15は、本発明の弾性押圧部材の一例である。図4に示される開口部21A、21Bの周辺のベース部材20は、本発明の支持部の一例である。図4に示されるピン軸部38A、38Bは、本発明のピン軸部の一例である。図4に示される鍔状部37A、37Bは、本発明の鍔状部の一例である。図4に示されるガイド部23は、本発明のガイド部の一例である。
【0045】
<変形例>
本発明の実施形態について以上説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当業者であれば種々の変形を加えることができる。
【0046】
(1)本実施形態では、変位部材30を開放位置に保持するために、ベース部材20に規制ピン36A、36Bが備えられ、変位部材30に規制溝33A、33Bが備えられる構成であるが、この構成に限定されない。例えば、変位部材30の変位を規制できる構成であればよく、トグル機構を採用する構成でもよい。トグル機構を採用する変形例は、固定支点の周りに回動可能な第一リンクと、第一リンクの自由端に回転自在に連結される第二リンクと、第二リンクの自由端を案内する案内溝と、第一リンクの固定支点と第二リンクの自由端との間に張設されるコイルバネとを備える。ベッド部に平行に前後左右に変位可能に配置される変位部材は、第一リンクと第二リンクとの連結部分に連結される。第一リンクの回動位置に応じて、変位部材に作用するコイルバネの付勢力の作用方向が変化し、変位部材は2つの異なる位置、すなわち開放位置及び閉鎖位置のいずれかの位置に保持される。変形例では、第一リンクが作用部材の一例であり、少なくとも第二リンク及び案内溝を含む構成が規制機構の一例であり、コイルバネが弾性付勢部材の一例である。
【0047】
(2)本実施形態では、変位部材30を開放位置に保持するために、コイルバネ44の付勢力の作用方向を規制溝33A、33Bの第一溝部34A、34Bの延出方向に略垂直にする構成であるが、この構成に限定されない。例えば、作用方向と第一溝部34A、34Bの延出方向とは、変位部材30が開放位置に保持されれば、直角に交わる関係に限定されず、直角以外の角度で交わる関係でもよい。例えば、図10において、第一溝部34A、34Bの延出方向が、時計周り方向に付勢力の作用方向と鋭角をなす場合には、規制ピン36A、36Bは第一溝部34A、34Bの左後端の終端部に嵌る状態となる構成であってもよい。また、図10において、第一溝部34A、34Bの延出方向が、時計周り方向に付勢力の作用方向と鈍角をなす場合には、規制ピン36A、36Bは、ベース部材20と変位部材30との接触摩擦抵抗等に起因して、第一溝部34A、34Bの左後端の終端部より右前方の位置で、第一溝部34A、34Bに嵌る状態に保持される構成であってもよい。
【0048】
(3)本実施形態では、変位部材30が変位するために、作用部材41が回動してコイルバネ44の付勢力の作用方向を変える構成であるが、この構成に限定されない。例えば、被作用部39と接触する作用部材41の側縁形状を特殊な形状にすることにより、作用部材41が直線的または曲線的に移動して作用方向を変える構成でもよい。
【0049】
(4)本実施形態では、ベース部材20が規制ピン36A、36Bを備え、変位部材30が規制溝33A、33Bを備える構成であるが、この構成に限定されない。例えば、ベース部材20が規制溝33A、33Bを備え、変位部材30が規制ピン36A、36Bを備える構成でもよい。
【0050】
(5)本実施形態では、規制ピン36A、36Bの鍔状部37A、37Bは、ピン軸部38A、38Bの上端に圧入される別体のEリングであるが、この構成に限定されない。例えば、規制ピン36A、36Bと鍔状部37A、37Bとは一体で構成されてもよい。また、規制ピン36A、36Bは鍔状部37A、37Bを備えておらず、ピン軸部38A、38Bのみでもよい。更に、ピン軸部38A、38Bの横断面形状は、円形状が好ましいが、規制溝33A、33Bの端縁部と円滑に接触できるのであれば、円形以外の曲面形状または多角形形状を有していてもよい。
【0051】
(6)本実施形態では、操作部40と操作支持部22とを備え、それらは対向する壁状の部分であるが、この構成に限定されない。例えば、操作部40と操作支持部22とがなく、刺しゅうが完了したタイミング等で、変位部材30を閉鎖位置から開放位置へ変位させるアクチュエータを備える構成でもよい。操作支持部22がなく、操作部40のみの構成でもよい。操作部40が変位部材30から突出するピン形状でもよい。操作部40がボタンであり、操作部40を押下すると、コイルバネ44とは別の弾性付勢部材またはアクチュエータにより、変位部材30が閉鎖位置から開放位置に変位される構成でもよい。
【0052】
(7)本実施形態では、ベース部材20に開口部21A、21Bが2つ備えられ、対応する2つの連結ピン12A、12Bが嵌入される構成であるが、この構成に限定されない。例えば、開口部21A、21B及び連結ピン12A、12Bは、互いに1つずつでもよいし、3つ以上あってもよい。
【0053】
(8)本実施形態では、規制ピン36A、36B及び規制溝33A、33Bは、互いに2つずつ備えられる構成であるが、この構成に限定されない。例えば、規制ピン36A、36B及び規制溝33A、33Bは、互いに1つずつでよいし、3つ以上あってもよい。
【0054】
(9)本実施形態では、規制溝33A、33Bは、変位部材30の平坦な部分を上下方向に貫通して形成されるが、この構成に限定されない。例えば、規制溝33A、33Bは、規制ピン36A、36Bとともに変位部材30の変位を規制可能な構成であればよく、変位部材30を貫通しなくてもよい。また、規制ピン36A、36Bが変位部材30の側縁部に接触しながら移動することにより、変位部材30の変位を規制するように、変位部材30の側縁部が特定の形状に形成されてもよい。
【0055】
(10)本実施形態では、ミシン1が、刺しゅう枠5を前後左右に移動させるキャリッジ2を装備する構成であるが、この構成に限定されない。例えば、キャリッジを備える刺しゅう機構がミシンのベッド部に着脱可能に取り付けられる構成であってもよい。
【0056】
(11)本実施形態では、閉鎖位置として第一閉鎖位置PA及び第二閉鎖位置PBの2つの異なる状態の位置が存在するが、この構成に限定されない。閉鎖位置は、変位部材30の閉鎖部31A、31Bが開口部21A、21Bの開口入口をそれぞれ閉鎖する場合における、変位部材30の位置であればよい。例えば、連結ピン12A、12Bが、変位部材30とベース部材20とにより狭圧され、開口部21A、21Bの内部において保持される。この時、規制ピン36A、36Bが、第二溝部35A、35Bの右端の係合部351A1、351B1にそれぞれ係合してもよく、第一閉鎖位置PAのみを閉鎖位置としてもよい。また、円形鍔部14A、14Bの直径に応じて、係合部351A2、351B2の位置は左右方向において変わる。
【符号の説明】
【0057】
1 ミシン
2 キャリッジ
3 刺しゅう枠取付装置
4 ベッド部
5 刺しゅう枠
6 取付部材
12A、12B 連結ピン
15 板バネ
20 ベース部材
21A、21B 開口部
30 変位部材
31A、31B 閉鎖部
32A、32B 当接部
33A、33B 規制溝
34A、34B 第一溝部
35A、35B 第二溝部
36A、36B 規制ピン
39 被作用部
40 操作部
41 作用部材
42 作用ピン
44 コイルバネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12