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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084278
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】防霜システムおよび防霜装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/06 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
A01G13/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198456
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】521407474
【氏名又は名称】田頭 雅史
(71)【出願人】
【識別番号】521407463
【氏名又は名称】日笠 克己
(71)【出願人】
【識別番号】522371787
【氏名又は名称】株式会社ゆまな
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田頭 雅史
(72)【発明者】
【氏名】日笠 克己
(57)【要約】
【課題】防霜装置の個数が限定されていても防霜能力の向上を図りうるシステム等を提供する。
【解決手段】複数の防霜装置1のそれぞれが第1指定領域R1において移動しながら地表温度調整を伴う防霜処理を実行する。このため、防霜装置が指定箇所に固定されている場合と比較して、防霜処理が実行される領域の拡張が図られる。この際、複数の防霜装置1が相互に連携することにより、相互に連携しない場合と比較して、防霜効率の向上が図られる。よって、防霜装置1の個数が限定されていても防霜能力の向上が図られる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動機能を有する複数の防霜装置を備え、
第1指定領域において降霜可能性がある場合、前記複数の防霜装置のそれぞれが相互に連携して、前記第1指定領域において移動しながら地表温度調整を伴う防霜処理を実行する
防霜システム。
【請求項2】
請求項1に記載の防霜システムにおいて、
前記複数の防霜装置のうち一の防霜装置が前記第1指定領域を構成する一の担当領域において降霜可能性があることを認識した場合、他の防霜装置に対して第1指定通知を送信し、かつ、前記防霜処理を実行し、
前記他の防霜装置が前記第1指定通知を受信した場合、前記第1指定領域を構成する他の担当領域において前記防霜処理を実行する
防霜システム。
【請求項3】
請求項2に記載の防霜システムにおいて、
前記一の防霜装置が移動しながら前記一の担当領域において降霜可能性が高い第2指定領域を認識し、当該第2指定領域を表わす第2指定通知を送信し、
前記他の防霜装置が前記第2指定通知を受信したことを要件として、当該第2指定通知により表わされる前記第2指定領域に移動したうえで前記防霜処理を実行する
防霜システム。
【請求項4】
請求項3に記載の防霜システムにおいて、
前記他の防霜装置が、前記第2指定領域における前記防霜処理の実行可否の判定結果が肯定的であることをさらなる要件として、前記第2指定通知により表わされる前記第2指定領域に移動したうえで前記防霜処理を実行する
防霜システム。
【請求項5】
移動機能を有する防霜装置であって、
指定領域における降霜可能性の有無または高低の判定結果を認識する機能と、
他の防霜装置と連携する機能と、
移動しながら地表温度調整を伴う防霜処理を実行する機能と、を備えている
防霜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防霜技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場に設けられたファンおよび/またはヒータの動作を制御することにより、当該圃場における降霜を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6341752号公報
【特許文献2】特許第6842133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術においては、防霜用のファンおよびヒータが圃場に固定されているので、圃場が広大になるほどファンおよび/またはヒータの個数および設置スペースの増加が必要になる。
【0005】
そこで、本発明は、防霜装置の個数が限定されていても防霜能力の向上を図りうるシステム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の防霜システムは、
移動機能を有する複数の防霜装置を備え、
第1指定領域において降霜可能性がある場合、前記複数の防霜装置のそれぞれが相互に連携して、前記第1指定領域において移動しながら地表温度調整を伴う防霜処理を実行する。
【0007】
当該構成の防霜システムによれば、複数の防霜装置のそれぞれが第1指定領域において移動しながら地表温度調整を伴う防霜処理を実行する。「防霜」は、「除霜」を概念的に包含する用語として用いられている。このため、防霜装置が指定箇所に固定されている場合と比較して、防霜処理が実行される領域の拡張が図られる。この際、複数の防霜装置が相互に連携することにより、相互に連携しない場合と比較して、防霜効率の向上が図られる。よって、防霜装置の個数が限定されていても防霜能力の向上が図られる。
【0008】
本発明の防霜システムにおいて、
前記複数の防霜装置のうち一の防霜装置が前記第1指定領域を構成する一の担当領域において降霜可能性があることを認識した場合、他の防霜装置に対して第1指定通知を送信し、かつ、前記防霜処理を実行し、
前記他の防霜装置が前記第1指定通知を受信した場合、前記第1指定領域を構成する他の担当領域において前記防霜処理を実行する
ことが好ましい。
【0009】
当該構成の防霜システムによれば、一の防霜装置により降霜可能性があることが判定された場合、当該一の防霜装置のみならず他の防霜装置により第1指定領域を構成する各担当領域において防霜処理が実行される。これにより、当該他の防霜装置により降霜可能性があると判定されていない場合でも、防霜処理を実行する主体としての防霜装置の幅の迅速な拡張、ひいては防霜処理効率の向上が図られる。
【0010】
本発明の防霜システムにおいて、
前記一の防霜装置が移動しながら前記一の担当領域において降霜可能性が高い第2指定領域を認識し、当該第2指定領域を表わす第2指定通知を送信し、
前記他の防霜装置が前記第2指定通知を受信したことを要件として、当該第2指定通知により表わされる前記第2指定領域に移動したうえで前記防霜処理を実行する
ことが好ましい。
【0011】
当該構成の防霜システムによれば、第1指定領域または一の防霜装置1の担当領域において降霜可能性が高いと判定された領域である第2指定領域において、複数の防霜装置による防霜処理が実行されうる。これにより、第2指定領域における降霜可能性を迅速に低下させ、ひいては当該第2指定領域を含む第1指定領域における防霜処理効率が図られる。
【0012】
本発明の防霜システムにおいて、
前記他の防霜装置が、前記第2指定領域における前記防霜処理の実行可否の判定結果が肯定的であることをさらなる要件として、前記第2指定通知により表わされる前記第2指定領域に移動したうえで前記防霜処理を実行する
ことが好ましい。
【0013】
当該構成の防霜システムによれば、他の防霜装置に第2指定領域よりもその担当領域における防霜処理の実行を優先させることができ、このような優先順位が好ましい場合において第1指定領域の防霜処理効率の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態としての防霜装置の構成説明図。
図2】本発明の第1実施形態としての防霜システムの機能説明図。
図3】本発明の第1実施形態としての防霜システムの機能説明図。
図4】本発明の第2実施形態としての防霜装置の構成説明図。
図5】本発明の第2実施形態としての防霜システムの機能説明図。
図6】本発明の第2実施形態としての防霜システムの機能説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態(構成))
図1に示されている本発明の第1実施形態としての防霜装置1は、基体10と、陸上移動機構12と、第1制御装置120と、第1状態センサ121と、第1駆動機構122と、第1防霜機構124と、を備えている。
【0016】
基体10は、第1指定領域R1(圃場)においてあらかじめ定められている通路にしたがって、農作物との不要な干渉を回避しながら地表面に沿って移動できるようにその形状およびサイズが設計されている。陸上移動機構12は、第1駆動機構122により駆動され、地面に対して力を作用させることで地面から受ける反力を推進力として基体10を並進させる機能を有している。陸上移動機構12は、例えば、複数(例えば4つ)のタイヤ、ボールまたはロールなどの転動体、複数(例えば一対)のクローラおよび複数(例えば4つ)の脚体(一または複数の関節機構を有する)のうち少なくとも一部により構成されている。
【0017】
第1制御装置120は、演算処理装置(CPU、プロセッサまたはプロセッサコア)、記憶装置(ROM、RAMなど)および入出力回路などにより構成されているコンピュータにより構成されている。第1制御装置120は、演算処理装置が記憶装置から必要なソフトウェア(プログラム)およびデータを読み取り、当該ソフトウェアにしたがって当該データを対象に演算処理を実行することにより、第1駆動機構122および第1防霜機構124のそれぞれの動作制御など、指定されたタスクを実行するように構成されている。第1制御装置120は、無線通信機器(図示略)を通じて、自機と他の防霜装置1(他機)とが連携または協働するために必要な信号を送受信するように構成されている。
【0018】
第1状態センサ121には、農作物などの物体の空間占有態様および必要に応じて進行方向における地表面形状など、防霜装置1がその担当領域を当該物体との干渉を回避しながら移動するために必要な状態変数を測定するためのセンサ(撮像センサ(撮像装置)、測距装置および/または測位センサ)が含まれている。第1状態センサ121には、防霜装置1の周囲において降霜または霜発生に影響する構想状態変数を測定するためのセンサが含まれている。降霜状態変数には、例えば、地表面温度(地表面付近の気温を含む。)、外気温および/またはこれらの変化速度が含まれている。降霜状態変数には、湿度、風速および/またはこれらの変化速度が含まれていてもよい。すなわち、第1状態センサ121には、地表面温度センサおよび/または外気温センサのほか、湿度センサおよび/または風速センサが含まれていてもよい。
【0019】
第1駆動機構122は、例えば、基体10に搭載されているバッテリ(図示略)から電力供給されることで動作するモータと、当該モータの動力を陸上移動機構12に伝達する動力伝達機構と、により構成されている。
【0020】
第1防霜機構124は、基体に搭載されているバッテリから電力供給されることで動作する送風機および加熱器により構成されている。送風機は、送風ファンと、送風ファンを回転駆動するモータと、を備えている。加熱器は、電熱コイルまたはセラミックヒータを備えている。送風機が動作することにより、基体10に設けられている入口部を通じて、空気が基体10の内部空間に取り込まれ、この空気が加熱器により加熱されることで温風Xとなり、基体10に設けられている出口部を通じて基体10の外部空間に供給される。入口部および/または出口部は、開口部および当該開口部に設けられた防塵フィルタにより構成されていてもよく、防塵フィルタが多孔質部材により構成されていてもよい。送風機が、温風Xの方向を変化させる可動のフィンを備えていてもよい。入口部が地表からある程度以上の高さ位置にあり、当該入口部から地表面温度よりも高温の外気が通気路に導入可能である場合、加熱器は省略されてもよい。
【0021】
第1防霜機構124は、地表面およびその付近の昇温を測るため、当該地表面に向かって収束超音波を照射する超音波照射装置を備えていてもよい。第1防霜機構124は、農作物に影響を与えないまたは影響が少ない防霜資材を散布する防霜資材散布装置を備えていてもよい。
【0022】
第1駆動機構122および第1防霜機構124のそれぞれに対して、共通のバッテリから電力が供給されてもよく、別個のバッテリのそれぞれから電力が供給されてもよい。
【0023】
(第1実施形態(機能))
前記構成の防霜装置1の機能、および、無線通信により相互に連携または協働する複数の防霜装置1により構成されている本発明の第1実施形態としての防霜システムの機能について説明する。
【0024】
まず、第1指定領域R1に配置されている複数の防霜装置1のうち、一の防霜装置1(第1防霜装置)において第1制御装置120により、降霜可能性があるか否かが判定される(図2/STEP111)。具体的には、第1制御装置120により第1状態センサ121を通じて測定された、降霜状態変数の組み合わせがあらかじめ定められている降霜条件を満たすか否かが判定される。
【0025】
降霜可能性があると判定された場合(図2/STEP111‥YES)、一の防霜装置1から、その第1制御装置120により通信機器を通じて、他の防霜装置1(第2防霜装置)に対して第1指定通知が送信される(図2/STEP112)。「第1指定通知」は、降霜可能性があることを表わす通知である。第1指定通知には、一の防霜装置1の位置および/または識別子のほか、その担当領域の延在態様(例えば、担当領域またはその輪郭を構成する点集合の実空間座標値(緯度、経度)により定義される。)および/または識別子が含まれていてもよい。
【0026】
さらに、第1制御装置120により、第1駆動機構122、ひいては陸上移動機構12の動作が制御され、当該一の防霜装置1がその担当領域を移動する。複数の防霜装置1のそれぞれの移動経路が記憶装置に記憶され、測位機能により測定される自機位置軌道(自機位置の時系列)が当該移動経路にしたがうように陸上移動機構12の動作が制御されてもよい。防霜装置1の移動が断続的(例えば、一定の移動距離ごとに)または周期的に停止され、当該停止箇所において降霜条件の充足性が判定され、当該降霜条件が満たされなくなった(または満たされていない)ことが確認されてから防霜装置1の移動が再開されてもよい。一または複数の降霜状態変数に基づいて降霜可能性(確率)が評価され、降霜の可能性が高くなるほど、防霜装置1の移動速度が低くなるように制御されてもよい。
【0027】
そして、一の防霜装置1において第1制御装置120により第1防霜機構124の動作が制御されることにより、当該一の防霜装置1の周囲に温風Xが供給される防霜処理が実行される(図2/STEP114)。防霜装置1の温風Xの供給方向が偏向的または限定的である場合、温風Xが全方位に供給されるように、基体10が鉛直軸線(ヨー軸)まわりに自転または旋回するように駆動されてもよい。
【0028】
複数の防霜装置1の第1制御装置120のそれぞれにより担当領域の防霜処理が十分に実行されたと判定された場合、当該防霜装置1は当該担当領域における防霜処理の実行を停止する。この場合、防霜処理の実行を完全に停止してもよいが、元の担当領域とは異なる別の領域における防霜処理の実行を継続してもよい。防霜処理が十分に実行されたか否かの判定処理は、降霜状態変数の測定結果が、降霜条件を満たさなくなったか否かが判定されることにより実行される。
【0029】
他の防霜装置1において、第1制御装置120により通信機器を通じて第1指定通知が受信される(図2/STEP121、STEP131)。これに応じて、当該他の防霜装置1がその担当領域を移動しながら、防霜処理を実行する(図2/STEP122、STEP132)。複数の防霜装置1のそれぞれの担当領域は相互に重複していてもよく、重複していなくてもよい。第1指定通知が、短距離の通信方式にしたがって送受信される場合、一の防霜装置1→他の防霜装置1→さらに他の防霜装置1→‥のようにリレー方式で伝搬されてもよい。
【0030】
さらに、一の防霜装置1の第1制御装置120により、降霜可能性が比較的高い領域が第2指定領域R2として認識される(図3/STEP115)。例えば、当該一の防霜装置1が移動する過程で降霜状態変数が測定され、当該測定結果に基づいて降霜可能性が比較的高い箇所を覆う領域が第2指定領域R2として定義される。当該一の防霜装置1に搭載されているバッテリの残量が低く、加熱器により温風Xの生成が困難であり、周囲に外気温程度の気流しか供給できなくなった場合、その時点以降に予定されている担当領域の一部が第2指定領域R2として定義されてもよい。この際、当該一の防霜装置1の自機位置測定機能(測位機能)が利用され、当該箇所の緯度および経度が累積的に記憶保持される。
【0031】
続いて、一の防霜装置1から、その第1制御装置120により通信機器を通じて、他の防霜装置1に対して第2指定通知が送信される(図3/STEP116)。「第2指定通知」は、第2指定領域R2、より具体的にはその延在態様(例えば、第2指定領域R2またはその輪郭を構成する点集合の実空間位置(緯度、経度)により定義される。)を表わす通知である。第2指定通知には、一の防霜装置1の位置および/または識別子のほか、当該第2指定領域R2での降霜可能性の高低を表わす指標値が含まれていてもよい。
【0032】
他の防霜装置1の第1制御装置120により通信機器を通じて第2指定通知が受信される(図3/STEP123、STEP133)。これに応じて、当該他の防霜装置1において第1制御装置120により防霜支援処理の実行可否が判定される(図3/STEP124、STEP134)。「防霜支援処理」は、他の防霜装置1が第2指定通知により表わされる第2指定領域R2に移動し、そこで移動しながら実行する防霜処理を意味する。例えば、第2指定領域R2での降霜可能性の高低を表わす指標値が、当該他の防霜装置1の担当領域における指標値よりも閾値以上大きいか否かが判定される。当該閾値は、他の防霜装置1が第2指定領域R2に移動するための所要コスト(移動距離および/または移動のための消費エネルギー)が高いほど大きく設定されてもよい。
【0033】
当該判定結果が肯定的である場合(図3/STEP124‥YES)、該当する他の防霜装置1が第2指定領域R2に移動したうえで、当該第2指定領域R2において移動しながら温風Xの供給を伴う防霜処理を実行する(図3/STEP125)。この場合、一の防霜装置1も第2指定領域R2において移動しながら防霜処理を実行する(図3/STEP114参照)。
【0034】
その一方、当該判定結果が否定的である場合(図3/STEP134‥NO)、該当する他の防霜装置1がその担当領域における防霜処理を継続的に実行する。他の防霜装置1において防霜支援処理の実行可否の判定処理が省略され、第2指定通知に応じてただちに防霜支援処理が実行されてもよい。第2指定通知が、短距離の通信方式にしたがって送受信される場合、一の防霜装置1→他の防霜装置1→さらに他の防霜装置1→‥のようにリレー方式で伝搬されてもよい。
【0035】
一または他の防霜装置1の第1制御装置120により第2指定領域R2の防霜処理が十分に実行されたと判定された場合、当該他の防霜装置1は元の担当領域に戻って防霜処理を再開する。防霜処理が十分に実行されたか否かの判定処理は、降霜状態変数の測定結果が、降霜条件を満たさなくなったか否かが判定されることにより実行される。当該判定処理が、第2指定領域R2での降霜可能性の高低を表わす指標値が、当該他の防霜装置1の担当領域における指標値よりも閾値以上の値以下になったか否かに応じて判定されることにより実行されてもよい。
【0036】
(第1実施形態(作用効果))
当該構成の防霜システムによれば、複数の防霜装置1のそれぞれが第1指定領域R1において移動しながら地表温度調整を伴う防霜処理を実行する。このため、防霜装置が指定箇所に固定されている場合と比較して、防霜処理が実行される領域の拡張が図られる。この際、複数の防霜装置1が相互に連携することにより、相互に連携しない場合と比較して、防霜効率の向上が図られる。よって、防霜装置1の個数が限定されていても防霜能力の向上が図られる。
【0037】
(第2実施形態(構成))
本発明の第2実施形態としての防霜システムが、防霜装置1に加えて補助防霜装置2により構成されていてもよい。図4に示されているように、補助防霜装置2は、基体20と、空中移動機構22と、第2制御装置220と、第2状態センサ221と、第2駆動機構222と、第2防霜機構224と、を備えている。
【0038】
補助防霜装置2の基体20は、防霜装置1の基体10と異なり、空中を飛行しうることが保証されていれば、農作物との不要な干渉回避などを考慮せずにその形状およびサイズが設計されていてもよい。空中移動機構22は、第2駆動機構222により駆動され、基体20に飛行または空中浮揚(ホバリング)させる機能を有している。空中移動機構22は、例えば、複数(例えば4つ)のプロペラおよび複数(例えば一対)の翼のうち少なくとも一部により構成されている。
【0039】
第2制御装置220は、演算処理装置(CPU、プロセッサまたはプロセッサコア)、記憶装置(ROM、RAMなど)および入出力回路などにより構成されているコンピュータにより構成されている。第2制御装置220は、演算処理装置が記憶装置から必要なソフトウェア(プログラム)およびデータを読み取り、当該ソフトウェアにしたがって当該データを対象に演算処理を実行することにより、第2駆動機構222および第2防霜機構224のそれぞれの動作制御など、指定されたタスクを実行するように構成されている。第2制御装置220は、無線通信機器(図示略)を通じて、自機と防霜装置1(および他の補助防霜装置2)(他機)とが連携または協働するために必要な信号を送受信するように構成されている。
【0040】
第2状態センサ221には、農作物およびその周囲にある建造物などの物体の空間占有態様など、補助防霜装置2が当該物体との干渉を回避しながら飛行するために必要な状態変数を測定するためのセンサ(撮像センサ(撮像装置)、測距装置および/または測位センサ)が含まれている。第2状態センサ221には、少なくとも1つの降霜状態変数(例えば、外気温)を測定するためのセンサが含まれていてもよい。第2状態センサ221には、降霜状態変数を測定するためのセンサは含まれていなくてもよい。
【0041】
第2駆動機構222は、例えば、基体20に搭載されているバッテリ(図示略)から電力供給されることで動作するモータと、当該モータの動力を空中移動機構22に伝達する動力伝達機構と、により構成されている。
【0042】
第2防霜機構224は、基体に搭載されているバッテリから電力供給されることで動作する送風機および加熱器により構成されている。送風機は、送風ファンと、送風ファンを回転駆動するモータと、を備えている。加熱器は、電熱コイルまたはセラミックヒータを備えている。送風機が動作することにより、基体20に設けられている入口部を通じて、空気が基体20の内部空間に取り込まれ、この空気が加熱器により加熱されることで温風Xとなり、基体20に設けられている出口部を通じて基体10の外部空間(特に下方)に供給される。入口部および/または出口部は、開口部および当該開口部に設けられた防塵フィルタにより構成されていてもよく、防塵フィルタが多孔質部材により構成されていてもよい。送風機が、温風Xの方向を変化させる可動のフィンを備えていてもよい。加熱器は省略されてもよい。第2防霜機構224は、地表面およびその付近の昇温を測るため、当該地表面に向かって収束超音波を照射する超音波照射装置により構成されていてもよい。
【0043】
第2駆動機構222および第2防霜機構224のそれぞれに対して、共通のバッテリから電力が供給されてもよく、別個のバッテリのそれぞれから電力が供給されてもよい。
【0044】
(第2実施形態(機能))
前記構成の補助防霜装置2の機能、および、無線通信により相互に連携または協働する複数の防霜装置1および補助防霜装置2により構成されている本発明の第2実施形態としての防霜システムの機能について説明する。
【0045】
一の防霜装置1から、その第1制御装置120により通信機器を通じて、他の防霜装置1のみならず補助防霜装置2に対して第1指定通知が送信される(図5/STEP112)。第1実施形態と同様に、他の防霜装置1において、第1制御装置120により通信機器を通じて第1指定通知が受信され(図5/STEP121、STEP131)、これに応じて、当該一の防霜装置1がその担当領域を移動しながら、防霜処理を実行する(図5/STEP122、STEP132)。
【0046】
第2実施形態では、これに加えて、補助防霜装置2において、第2制御装置220により通信機器を通じて第1指定通知が受信され(図5/STEP211)、これに応じて、当該補助防霜装置2がその担当領域に移動したうえで、空中で移動しながら周囲、特に下方に温風Xを送風するなどの防霜処理を実行する(図5/STEP212)。補助防霜装置2の担当領域は、一または複数の防霜装置1の担当領域と重複していてもよい。複数の補助防霜装置2のそれぞれの担当領域は相互に重複していてもよく、重複していなくてもよい。
【0047】
さらに、一の防霜装置1から、その第1制御装置120により通信機器を通じて、他の防霜装置1のみならず補助防霜装置2に対して第2指定通知が送信される(図6/STEP116)。
【0048】
補助防霜装置2の第2制御装置220により通信機器を通じて第2指定通知が受信される(図6/STEP223)。これに応じて、補助防霜装置2が第2指定領域R2に移動したうえで、当該第2指定領域R2において移動しながら温風Xの供給を伴う防霜支援処理を実行する(図6/STEP225)。防霜装置1とは異なり、補助防霜装置2において防霜支援処理の実行可否の判定処理は実行されない(図3/STEP124、STEP134参照)。補助防霜装置2において当該判定処理が実行され、当該判定結果が肯定的である場合にのみ防霜支援処理が実行されてもよい。
【0049】
(第2実施形態(作用効果))
当該構成の防霜システムによれば、複数の防霜装置1および補助防霜装置2のそれぞれが第1指定領域R1において移動しながら地表温度調整を伴う防霜処理を実行する。このため、防霜装置が指定箇所に固定されている場合と比較して、防霜処理が実行される領域のさらなる拡張が図られる。この際、複数の防霜装置1および補助防霜装置2が相互に連携することにより、相互に連携しない場合と比較して、防霜効率の向上が図られる。よって、防霜装置1および補助防霜装置2の個数が限定されていても防霜能力の向上が図られる。
【0050】
(本発明の他の実施形態)
本発明の他の実施形態としての防霜システムを構成する他の防霜装置1および/または補助防霜装置2において、降霜状態変数の測定機能および降霜条件の充足性の判定機能が省略されていてもよい。この場合、一の防霜装置1(マスター防霜装置)の当該判定結果に応じて、他の防霜装置1および/または補助防霜装置2(スレーブ防霜装置)の防霜処理の実行要否が定められる。
【0051】
防霜システムが、防霜管理サーバと、複数の防霜装置1または防霜装置1および補助防霜装置2と、により構成されていてもよい。この場合、防霜管理サーバが、マスター防霜装置(一の防霜装置1)の機能を担う。
【0052】
具体的には、降霜状態変数の測定結果が、防霜装置1から防霜管理サーバに送信される。この際、防霜装置1の識別子および位置も併せて防霜管理サーバに対して送信されてもよい。防霜管理サーバにおいて、降霜状態変数の当該測定結果に基づき、降霜条件の充足性が判定される(図2/STEP111参照)。当該判定結果が肯定的である場合、すべての防霜装置1(および補助防霜装置2)に対して第1指定通知が送信される(図2図5/STEP112参照)。これに応じて、複数の防霜装置1(および補助防霜装置2)のそれぞれにより個々の担当領域において防霜処理が実行される(図2/STEP124、STEP134、図5/STEP224参照)。
【0053】
さらに、防霜管理サーバにおいて、降霜状態変数の当該測定結果に基づき、第2指定領域R2が認識または定められる(図3/STEP115参照)。すべての防霜装置1に対して第2指定通知が送信される(図3図6/STEP116参照)。これに応じて、複数の防霜装置1(および補助防霜装置2)のそれぞれにより第2指定領域R2において防霜支援処理が実行される(図3/STEP125および図6/STEP225参照)。
【0054】
第1制御装置120により、第1状態センサ121を用いて、基体10に搭載されているバッテリの残量が測定され、当該バッテリの残量が基準値以下になった場合、防霜装置1を充電ステーションに移動させて当該バッテリの充電処理を実行させてもよい。この場合、防霜装置1から充電要請通知(自機位置または識別子が含まれている。)が送信され、当該充電要請通知を受信した補助防霜装置2が当該防霜装置1のそばまで飛行して着陸したうえで、自機に搭載されているバッテリを用いて、当該防霜装置1(他機)に搭載されているバッテリの充電処理を実行してもよい。同様に、一の防霜装置1から充電要請通知を受信した他の防霜装置1が当該一の防霜装置1のそばまで移動したうえで、自機に搭載されているバッテリを用いて、当該一の防霜装置1(他機)に搭載されているバッテリの充電処理を実行してもよい。
【0055】
第2制御装置220により、第2状態センサ221を用いて、基体20に搭載されているバッテリの残量が測定され、当該バッテリの残量が基準値以下になった場合、補助防霜装置2を充電ステーションに移動させて当該バッテリの充電処理を実行させてもよい。この場合、補助防霜装置2から充電要請通知(自機位置または識別子が含まれている。)が送信され、当該充電要請通知を受信した複数の防霜装置1のうち自機に搭載されているバッテリの残量が所定値以上であることが確認された場合、当該補助防霜装置2に対して、充電要請受諾通知(自機位置または識別子が含まれている。)が送信されてもよい。当該充電要請受諾通知を受信した補助防霜装置2が当該防霜装置1のそばまで飛行して着陸したうえで、当該防霜装置1(他機)に搭載されているバッテリを用いて、自機に搭載されているバッテリの充電処理を実行してもよい。
【0056】
防霜装置1および/または補助防霜装置2が、農薬および/または水などの液体を貯蔵する貯蔵器と、散布する液体散布装置と、を備えていてもよい。防霜装置1が台車を牽引し、当該台車に搭載されている貯蔵器の液体を散布するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1‥防霜装置
10‥基体
12‥陸上移動機構
120‥第1制御装置
121‥第1状態センサ
122‥第1駆動機構
124‥第1防霜機構
2‥補助防霜装置
20‥基体
22‥空中移動機構
220‥第2制御装置
221‥第2状態センサ
222‥第2駆動機構
224‥第2防霜機構
R1‥第1指定領域
R2‥第2指定領域
X‥温風。
図1
図2
図3
図4
図5
図6