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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084282
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ガラスラン
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/76 20160101AFI20240618BHJP
   B60J 10/50 20160101ALI20240618BHJP
【FI】
B60J10/76
B60J10/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198463
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】石黒 輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 宜伸
(72)【発明者】
【氏名】野尻 昌利
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA21
3D201AA25
3D201BA01
3D201CA19
3D201DA06
3D201DA31
3D201DA34
(57)【要約】
【課題】 ドアガラスの摺動性に悪影響を及ぼすことなく、がたつきを防止可能にするガラスランを提供する。
【課題を解決するための手段】
底壁20と、車外側側壁30と、車内側側壁40を基本骨格とし、ドアフレーム3に形成されたドアフレーム溝部5に取付けられるガラスラン10であって、車内側側壁40の車外側であり、車内側シールリップ41と底壁20との間には、ドアガラス4の上昇時の押圧力によって車内側シールリップ41が車内側方向に撓み変形した時に、車内側シールリップ41の車内側に常時当接して支持するサブリップ50が形成され、サブリップ50は、車内側側壁40の車外側面から車内側シールリップ41の付根部方向に延設される第1サブリップ部51と、第1サブリップ部51に連結し、車内側シールリップ41の先端部分方向に延設される第2サブリップ部52とから構成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、前記車外側側壁の先端又はその近傍に形成される車外側シールリップと、前記車内側側壁の先端又はその近傍に形成される車内側シールリップを有し、ドアフレームに形成されたドアフレーム溝部に取付けられ、ドアガラスの昇降時に、前記ドアガラスの両側面を前記車外側シールリップ及び前記車内側シールリップが摺動案内するガラスランであって、
前記車内側側壁の車外側であり、前記車内側シールリップと前記底壁との間には、前記ドアガラスの上昇時の押圧力によって前記車内側シールリップが車内側方向に撓み変形した時に、前記車内側シールリップの車内側に常時当接して支持するサブリップが形成され、
前記サブリップは、前記車内側側壁の車外側面から前記車内側シールリップの付根部方向に傾斜して延設される第1サブリップ部と、
前記第1サブリップ部に連結し、前記車内側シールリップの先端部分方向に延設される第2サブリップ部とから構成されることを特徴とするガラスラン。
【請求項2】
前記サブリップは、前記第1サブリップ部と前記第2サブリップ部の連結部の前記底壁側に形成される屈曲部凹部、前記第1サブリップ部と前記車内側側壁の連結部分の前記第1サブリップ部の前記底壁側と反対側に形成される付根部凹部の少なくとも一方を有する請求項1に記載のガラスラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等車両のドアに形成されたドアフレームに取付けられるガラスランに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアには、ドア本体の上部にドアフレームを設け、ドアフレームの内周縁に形成されたドアフレーム溝部にチャンネル状をなすガラスランを嵌入係止し、ガラスランの車内外のガラスシール部によりドアガラスの昇降を案内するとともに、車室内外をシールするようになっている。
【0003】
上記のガラスランは、底壁と、その車外側に位置する車外側側壁と、車内側に位置する車内側側壁を基本骨格(本体部)に構成されている。そして、車外側及び車内側の側壁部の先端又はその近傍からそれぞれ本体部の内側に向けて延びる車外側シールリップ及び車内側シールリップを備えている。そして、ガラスランは、本体部がドアフレームの内周に沿って設けられたドアフレーム溝部に取付けられ、車外側シールリップ及び車内側シールリップによって、昇降するドアガラスの内外面の周縁部が挟まれるようにしてシールされる。又、ガラスランは、ドアガラスの周縁部を支持して、ドアガラスの昇降が円滑に行われると共に、ドアガラスの昇降時などにおいて、ドアガラスのがたつきを抑制したりする役割をも担っている。
【0004】
このドアガラスの昇降が円滑に行われると共に、ドアガラスの昇降時などにおいて、ドアガラスのがたつきを抑制するガラスランとして、特許文献1の技術が知られている。
【0005】
特許文献1は、図8に示すように、車両用ドアのサッシュ部の内周縁に沿って配設され、底壁200の両端縁から立ち上がった対向両側壁300、400と、両側壁300、400の車内外側の対向する内面にそれぞれ設けられて、底壁200方向へ延出したシールリップ310、410と、を備え、ドアガラス600の昇降時に、ドアガラス600の外周側の両側面を各シールリップ310、410が摺動案内する車両用グラスラン(ガラスラン)100であって、車内側の一側壁(車内側側壁400)の内面に、ドアガラス600の上昇時の押圧力によって車内側シールリップ410が一側壁(車内側側壁400)方向へ撓み変形した際に、車内側シールリップ410の背面を常時当接支持する支持リップ(サブリップ)500を設ける共に、サブリップ500は 、厚肉な基端部640が一側壁(車内側側壁400)の内面に結合されて、底壁200方向へ突出した基部650と、基部650の先端側から折曲部660を介してさらに底壁200方向へ折曲して延出した支持部670とから構成され、支持部670は、折曲部660から先端部680に渡ってほぼ均一な薄肉幅の直線状に形成されている車両用グラスランである。
【0006】
そして、例えば、ドアガラス600を閉じるために、上昇移動させて、図8の実線で示すように、車外側シールリップ310、車内側シールリップ410内面間に摺動位置させると、ドアガラス600の押圧力によって車外側シールリップ310のノッチA620、車内側シールリップ410のノッチB610を介して互いに車内外方向へ折曲変形する。すると、車内側シールリップ410は、その背面630がサブリップ500の支持部670の先端部680に当接してその状態を維持する。
【0007】
ここで、ドアガラス600は、上昇移動時などに移動量Xの範囲内において車内方向へ移動するが、この移動中は車内側シールリップ410の背面630には反力の小さなサブリップ500の支持部670が当接しているだけであるから、ドアガラス600の摺動抵抗が十分に小さく、したがって、ドアガラス600の円滑な上昇(下降も含む)作用が得られる。
【0008】
図9は、ドアガラス600が車外側シールリップ310、車内側シールリップ410間に位置している時の車内側シールリップ410とサブリップ500との合成反力特性(P)を示し、ドアガラス600の車内方向への通常移動量(X)の範囲では、車内側シールリップ410とサブリップ500の支持部670の合成反力Pがドアガラス600に作用する。この合成反力Pは、移動量Xが大きくなるにつれて漸次所定角度で大きくなるが、その立ち上がりは比較的なだらかであり、したがって、ドアガラス600の車内側シールリップ410、車外側シールリップ310との摺動摩擦抵抗が小さくなる。
【0009】
又、ドアガラス600の大きな振れによってドアガラス600が車内方向へ移動量X以上に移動すると、今度は車内側シールリップ410の背面630が支持部670を介して折曲部660に当接する。つまり、基部650の先端部に当接して基部650によって支持することになる。このため、ドアガラス600は、車内側シールリップ410を介してかかる支持剛性の比較的高い基部650の弾性反力を受けて押し戻される。したがって、ドアガラス600の振れを吸収して確実に支持することができる。なお、図9において、破線Zは支持リップ(サブリップ)500を形成しない場合を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4873992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記の特許文献1の技術では、サブリップ500の支持部670は、肉厚な基部650に連結されているので、図9に示すように、移動量X内において、ドアガラス600が車内側に変位するに伴い、基部650の影響を受けて反力が増大するので、合成反力Pは、移動量Xが大きくなるにつれて所定角度で大きくなっている。この通常移動量(X)の範囲内における合成反力Pの増加率が大き過ぎると、大きくなり過ぎた合成反力Pが、ガラス600の昇降動作を阻害する不具合を発生させる場合がある。したがって、基部650の影響を考慮した設計にならざるを得ず、特に移動量Xにおける基準位置に近い所では、ドアガラス600を強く保持できていない。
【0012】
そこで、例えば、車内側シールリップ410のノッチA610とサブリップ500の折曲部660を肉厚にすることにより移動量Xにおける基準位置に近いガラス位置において、合成反力Pを増大させることは可能であるが、この場合は、図9のグラフの傾きがさらに大きくなり、ドアガラス600が車内側に移動するにつれて、合成反力Pが大きくなり過ぎてドアガラス600の昇降に問題を生じることになる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのため、本発明は、ガラスランの車内側シールリップ及び車外側シールリップがドアガラスの両側面に摺動して車内側に移動する際の、特に車内側シールリップ側のリップ反力を大きくしつつ、且つ車内側への移動量に伴うリップ反力の増加を抑制し、ドアガラスの摺動性に悪影響を及ぼすことなく、がたつきを防止可能にするガラスランを提供するものである。
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、車外側側壁の先端又はその近傍に形成される車外側シールリップと、車内側側壁の先端又はその近傍に形成される車内側シールリップを有し、ドアフレームに形成されたドアフレーム溝部に取付けられ、ドアガラスの昇降時に、ドアガラスの両側面を車外側シールリップ及び車内側シールリップが摺動案内するガラスランであって、車内側側壁の車外側であり、車内側シールリップと底壁との間には、ドアガラスの上昇時の押圧力によって車内側シールリップが車内側方向に撓み変形した時に、車内側シールリップの車内側に常時当接して支持するサブリップが形成され、サブリップは、車内側側壁の車外側面から車内側シールリップの付根部方向に傾斜して延設される第1サブリップ部と、第1サブリップ部に連結し、車内側シールリップの先端部分方向に延設される第2サブリップ部とから構成されることを特徴とするガラスランである。
【0015】
請求項1の本発明では、車内側側壁の車外側であり、車内側シールリップと底壁との間には、ドアガラスの上昇時の押圧力によって車内側シールリップが車内側方向に撓み変形した時に、車内側シールリップの車内側に常時当接して支持するサブリップが形成され、サブリップは、車内側側壁の車外側面から車内側シールリップの付根部方向に傾斜して延設される第1サブリップ部と、第1サブリップ部に連結し、車内側シールリップの先端部分方向に延設される第2サブリップ部とから構成されるので、車内側シールリップが車内側方向に撓み変形した時に、サブリップも車内側に撓むが、第1に、サブリップは、第1サブリップ部と車内側側壁との連結部分と、第1サブリップ部と第2サブリップ部との連結部分を有し、その2箇所から車内側シールリップの車内側を車外側に押圧する反力が発生するので、サブリップの反力を増大させることができる。その結果、ドアガラスの車内側を車外側に押圧する車内側シールリップとサブリップとの合成反力を増大させることができるので、図9における基準位置(範囲Xの左端)において、ドアガラスを強く保持することができる。
【0016】
第2に、ドアガラスが上昇して車内側に移動する時には、第1サブリップ部と第2サブリップ部間の角度、第1サブリップ部と車内側側壁間の角度が小さくように変形するので、上記変形により、車内側シールリップの車内側を車外側に押圧するサブリップの反力の上昇の程度を緩やかにすることができる。その結果、車内側シールリップの車内側への移動量に伴うドアガラスの車内側を車外側に押圧する車内側シールリップとサブリップとの合成反力の増加の程度を抑制することができる。
【0017】
したがって、車内側側壁の車外側面から車内側シールリップの付根部方向に延設される第1サブリップ部と、第1サブリップ部に連結し、車内側シールリップの先端部分方向に延設される第2サブリップ部とから構成されるサブリップにより、基準位置におけるドアガラスの車内側を車外側に押圧する車内側シールリップとサブリップとの合成反力を大きくしつつ、車内側シールリップの車内側への移動量に伴う車内側シールリップとサブリップとの合成反力の増加の程度を抑制することができるので、ドアガラスの摺動性に悪影響を及ぼすことなく、がたつきを防止することができる。
【0018】
請求項2の本発明は、請求項1の発明において、サブリップは、第1サブリップ部と第2サブリップ部の連結部の底壁側に形成される屈曲部凹部、第1サブリップ部と車内側側壁の連結部分の第1サブリップ部の底壁側と反対側に形成される付根部凹部の少なくとも一方を有するガラスランである。
【0019】
請求項2の本発明では、第1サブリップ部と第2サブリップ部の連結部の底壁側に形成される屈曲部凹部、第1サブリップ部と車内側側壁の連結部分の第1サブリップ部の底壁側と反対側に形成される付根部凹部の少なくとも一方を有するので、凹部によって、車内側シールリップの車内側への移動量に伴うサブリップの反力を調整することができる。
【発明の効果】
【0020】
ガラスランは、底壁と、車外側側壁と、車内側側壁を基本骨格とし、車外側側壁の先端又はその近傍に形成される車外側シールリップと、車内側側壁の先端又はその近傍に形成される車内側シールリップを有し、車内側側壁の車外側であり、車内側シールリップと底壁との間には、ドアガラスの上昇時の押圧力によって車内側シールリップが車内側方向に撓み変形した時に、車内側シールリップの車内側を常時当接して支持するサブリップが形成され、サブリップは、車内側側壁の車外側面から車内側シールリップの付根部方向に傾斜して延設される第1サブリップ部と、第1サブリップ部の先端部分に連結し、車内側シールリップの先端部分側に屈曲して延設される第2サブリップ部とから構成されるので、車内側シールリップが車内側方向に撓み変形した時に、サブリップも車内側に撓むが、第1に、サブリップは、第1サブリップ部と車内側側壁との連結部分と、第1サブリップ部と第2サブリップ部との連結部分を有し、その2箇所から車内側シールリップの車内側を車外側に押圧する反力が発生するので、サブリップの反力を増大させることができる。その結果、ドアガラスの車内側を車外側に押圧する車内側シールリップとサブリップとの合成反力を増大させることができるので、図9における基準位置(範囲Xの左端)において、ドアガラスを強く保持することができる。
【0021】
第2に、ドアガラスが上昇して車内側に移動する時には、第1サブリップ部と第2サブリップ部間の角度、第1サブリップ部と車内側側壁間の角度が小さくように変形するので、上記変形により、車内側シールリップの車内側を車外側に押圧するサブリップの反力の上昇の程度を緩やかにすることができる。その結果、車内側シールリップの車内側への移動量に伴うドアガラスの車内側を車外側に押圧する車内側シールリップとサブリップとの合成反力の増加の程度を抑制することができる。
【0022】
したがって、車内側側壁の車外側面から車内側シールリップの付根部方向に延設される第1サブリップ部と、第1サブリップ部に連結し、車内側シールリップの先端部分方向に延設される第2サブリップ部とから構成されるサブリップにより、基準位置におけるドアガラスの車内側を車外側に押圧する車内側シールリップとサブリップとの合成反力を大きくしつつ、車内側シールリップの車内側への移動量に伴う車内側シールリップとサブリップとの合成反力の増加の程度を抑制することができるので、ドアガラスの摺動性に悪影響を及ぼすことなく、がたつきを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】自動車用ドアを車外側から見た正面図である。
図2図1のドアフレームに用いたガラスランを示す正面図である。
図3】本発明の実施形態のガラスランをドアフレームに装着した時の図1のA-A線断面図である。
図4図3におけるサブリップの拡大図である。
図5】本発明の実施形態を示すものであり、ドアガラスの変位と、車内側シールリップ及びサブリップの変形との関係を説明するためのガラスランの断面図である。
図6】本発明の実施形態を示すものであり、ドアガラスの変位と、車内側シールリップ及びサブリップの変形との関係を説明するためのガラスランの断面図である。
図7】本発明の実施形態のガラスランにおける車内側シールリップとサブリップとの合成反力を示す特性図である。
図8】従来のガラスランを示す図1のA-A線断面図である(特許文献1)。
図9】従来のガラスランにおける車内側シールリップとサブリップとの合成反力を示す特性図である(特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について図1から図7に基づいて説明する。図1は自動車の左側のフロントドア1を車外側からみた正面図を示す。このフロントドア1を構成するドア本体2の上部には、ドアフレーム3が装着されている。このドアフレーム3とドア本体2の上端縁とにより窓開口が形成されている。窓開口の内周縁及びドア本体2の内部にはガラスラン10が取付られ、ドアガラス4の昇降動作を案内するようになっている。なお、本発明は、左側のフロントドア1のみならず、右側のフロントドア、左右のリヤドアにも適用可能である。又、ドアガラスの昇降するスライドドアにも適用可能である。
【0025】
図2は、図1のガラスラン10のみを簡略化して車外側からみた正面図である。ガラスラン10はドアフレーム3の横枠部に対応する第1の押出成形部11と、フロントドア1の前側の縦枠部に対応する第2の押出成形部12(前側の縦辺部)と、後側の縦枠部と対応する第3の押出成形部13(後側の縦辺部)とにより構成されている。第1の押出成形部11の前端部は第2の押出成形部12の上端部に対し第1の型成形部14により接続されている。又、第1の押出成形部11の後端部は第3の押出成形部13の上端部に対し第2の型成形部15により接続されている。
【0026】
図3は、ガラスランをドアフレームに装着した時の図1のA-A線断面図である。ガラスラン10は、底壁20、車外側側壁30及び車内側側壁40を基本骨格とし、チャンネル状(断面が略コ字形)に形成されている。底壁20と車外側側壁30、車内側側壁40の連結部は、車外側及び車内側の溝部21、21により自由状態で展開可能に連結されている。又、車内側側壁40が車外側側壁30よりも大きく形成され、その形状は車内側が大きい非対称に形成され、車内側シールリップ41の位置と車外側シールリップ31において、ドアガラス4に対して当接点(面)の位置は、ずれている。
【0027】
底壁20は、略板状に形成され、底壁20の内面(ドアガラス4側)には、複数本の底壁凹部22が長手方向に連続して平行に形成されている。又、底壁20の外面には、底壁シールリップ23が形成され、底壁シールリップ23は、ドアフレーム3に形成されたチャンネル状(断面が略コ字形)のドアフレーム溝部5に当接して、底壁20とドアフレーム3のドアフレーム溝部5との間をシールしている。
【0028】
車外側側壁30の車外側には、底壁20との連結部近傍と車外側側壁30の先端部方向に、ドアフレーム溝部5に係止される第1車外側保持リップ33と第2車外側保持リップ34が形成され、第1車外側保持リップ33と第2車外側保持リップ34によって、屈曲して形成されているドアフレーム溝部5を保持している。
【0029】
車外側側壁30の車内側には、ドアガラス4に接触される車外側シールリップ31が底壁20側に向けて形成され、車外側側壁30の先端部分には、車外側シールリップ31とは反対側に向けて車外側カバーリップ36が形成されている。車外側カバーリップ36は車外側シールリップ31とともにドアガラス4の車外側面に当接し、雨水や埃、騒音の侵入を防止し、シール性を向上させることができる。
【0030】
車外側カバーリップ36の付け根部分には、車外側に向けて係止部35が形成され、ピラーガーニッシュ7の端部を固定するとともにピラーガーニッシュ7とドアガラス4の表面との間の隙間をシールしている。
【0031】
車内側側壁40の車内側には、底壁20との連結部近傍に、円弧状の湾曲部を有するドアフレーム溝部5の湾曲部に係止される車内側第1保持リップ43と、車内側第2保持リップ44が形成され、両保持リップ43、44の間には当接リップ45が形成されている。両保持リップ43、44と当接リップ45によって、車内側側壁40が湾曲したドアフレーム溝部5に保持されている。
【0032】
車内側側壁40の車外側には、車内側側壁40の先端部と底壁20との間から車外側且つ底壁20側に延設され、車外側の側面がドアガラス4に摺接する車内側シールリップ41が形成されている。車内側シールリップ41は、全体にほぼ均一な肉厚で、車外側に膨らむ弧形状である。又、車内側側壁40との連結部分は、少し肉薄に形成され、車内側シールリップ41がドアガラス4の動きに追随し易くしている。又、車内側シールリップ41の先端部分は、車内側側壁40側に肉厚になっている。
【0033】
車内側側壁40の先端の車内側シールリップ41の反対側(車内側)には、車内側カバーリップ46が形成されている。車内側カバーリップ46は、ドアフレーム溝部5の先端に当接し、雨水や埃、騒音の侵入を防止し、シール性を向上させることができる。
【0034】
車内側側壁40の車内側シールリップ41と底壁20との間には、車内側側壁40の車外側面から車内側シールリップ41の車内側面に向けてサブリップ50が形成されている。ガラスラン10をドアフレーム溝部5に装着した時、サブリップ50は、車内側シールリップ41の車内側面に当接していない。
【0035】
図4は、図3におけるサブリップの拡大図である。サブリップ50は、車内側側壁40の車外側面から車内側シールリップ41の付根部方向、すなわち、底壁20側とは反対方向に傾斜して延設される第1サブリップ部51と、第1サブリップ部51の先端部分に連結し、底壁20方向であり、車内側シールリップ41の先端部分方向に屈曲し、傾斜して延設される第2サブリップ部52とから構成されている。
【0036】
サブリップ50は、図3及び図4において、底壁20側に開いた横V字状に形成されている。第1サブリップ部51と第2サブリップ部52の連結部54には、底壁20側に肉薄の屈曲部凹部55が形成されている。又、第1サブリップ部51と車内側側壁40の連結部分の第1サブリップ部51の底壁20側と反対側には、肉薄の付根部凹部56が形成されている。この屈曲部凹部55と付根部凹部56は、後述する車内側シールリップ41の車内側への移動量に伴うサブリップ50の反力を調整する機能を有する。
【0037】
本実施形態では、屈曲部凹部55と付根部凹部56を共に形成したが、片方形成してもよく、共に形成しなくてもよい。
【0038】
第1サブリップ部51と第2サブリップ部52は、共に直線状であり、屈曲部凹部55と付根部凹部56を除き、ほぼ均一な厚さを有して形成されている。又、第1サブリップ部51と第2サブリップ部52の長さは、第1サブリップ部51の方が、第2サブリップ部52より長く形成した。なお、厚さは均一でなくてもよく、長さは、同じ、又は、第2サブリップ部52の方が第1サブリップ部51より長く形成してもよい。
【0039】
図5は、ドアガラスの変位と、車内側シールリップ及びサブリップの変形との関係を説明するためのガラスランの断面図である。又、図7は、ガラスラン10における車内側シールリップ41とサブリップ50との合成反力を示す特性図である。ガラスラン10の車内側シールリップ41と車外側シールリップ31の間にドアガラス4が挿入されると、車内側シールリップ41の車外側面と車外側シールリップ31の車内側面により、ドアガラス4との間がシールされる。
【0040】
同時に、車内側シールリップ41がドアガラス4に押圧されて車内側に変位し、サブリップ50の第2サブリップ部52の第2サブリップ部先端部53、又は、第2サブリップ部先端部53の車外側面が車内側シールリップ41の車内側面に当接する。したがって、サブリップ50は、ドアガラス4の上昇時の押圧力によって車内側シールリップ41が車内側方向に撓み変形した時に、車内側シールリップ41の車内側に常時当接する。又、サブリップ50は、屈曲部凹部55と付根部凹部56を起点に、全体に車内側側壁40側に変形する。この時、ドアガラス4の車内側面には、車内側シールリップ41の変形に伴う反力と、サブリップ50が変形する時に発生する反力とが、合成反力Pとして働く。
【0041】
本発明では、サブリップ50は、車内側側壁40の車外側面から車内側シールリップ41の付根部方向に傾斜して延設される第1サブリップ部51と、第1サブリップ部51の先端部分に連結し、底壁20方向であり、車内側シールリップ41の先端部分方向に屈曲し、傾斜して延設される第2サブリップ部52とから構成されているので、上記のサブリップ50の変形に伴い、第1サブリップ部51と第2サブリップ部52の連結部54における第1サブリップ部51と第2サブリップ部52の角度が狭くなることに抗する反力、車内側側壁40と第1サブリップ部51との角度が狭くなることに抗する反力が車内側シールリップ41の車内側面に働く。
【0042】
その結果、図7における左側の実線(範囲Xの左端)付近における合力Pから明らかなように、従来技術(特許文献1)に比較して、ドアガラス4の車内側面へのサブリップ50の反力と車内側シールリップ41の反力の合成反力Pを大きくすることができる。したがって、基準位置、すなわち、ドアガラス4が昇降する時に、ドアガラス4が最も車外側に位置している位置において、ドアガラス4を従来技術に比較して強く保持することができる。
【0043】
なお、本実施形態のサブリップ50を第2サブリップ部52のみとし、第2サブリップ部52を車内側側壁40の車外側面から形成した場合と比較したところ、サブリップ50からの反力が約15%増加することが確認された。
【0044】
図6は、ドアガラスの変位と、車内側シールリップ及びサブリップの変形との関係を説明するためのガラスランの断面図であり、図5の状態から、ドアガラス4がさらに車内側に変位し、最も車内側に変位した時(図7の右側の実線(範囲Xの右端))を示している。この場合、車内側シールリップ41とサブリップ50が追従して車内側に変位し、車内側シールリップ41は傾倒変位し、サブリップ50は、屈曲部凹部55と付根部凹部56を起点に、全体にさらに車内側側壁40側に変形する。又、サブリップ50の第2サブリップ部52の車外側面が車内側シールリップ41の車内側面に当接する面積が増加する。
【0045】
この変形、すなわち、第1サブリップ部51と第2サブリップ部52の連結部54における第1サブリップ部51と第2サブリップ部52の角度がさらに狭くなり、車内側側壁40と第1サブリップ部51との角度がさらに狭くなる変形では、サブリップ50への荷重が分散して力を逃がすことができるので、サブリップ50の反力の上昇は、緩やかなものになる。その結果、図7におけるドアガラス4の通常の昇降時における移動量である左側の実線から右側の実線の範囲Xにおいて、車内側シールリップ41の車内側への移動量に伴うドアガラス4の車内側を車外側に押圧する車内側シールリップとサブリップとの合成反力Pの増加の程度を抑制することができる。
【0046】
したがって、車内側側壁40の車外側面から車内側シールリップ41の付根部方向に傾斜して延設される第1サブリップ部51と、第1サブリップ部51の先端部分に連結し、車内側シールリップ41の先端部分側に屈曲し、傾斜して延設される第2サブリップ部52とから構成されるサブリップ50により、基準位置におけるドアガラス4の車内側を車外側に押圧する車内側シールリップ41とサブリップ50との合成反力Pを大きくしつつ、車内側シールリップ41の車内側への移動量Xに伴う車内側シールリップ41とサブリップ50との合成反力Pの増加の程度を抑制することができるので、ドアガラス4を強く保持することができ、さらに、ドアガラス4の摺動性に悪影響を及ぼすことなく、がたつきを防止することができる。
【0047】
又、本実施形態のサブリップ50において、屈曲部凹部55と付根部凹部56を共に形成しない場合、片方のみを形成した場合は、基準位置における合成反力Pの絶対値の増加は観測され、移動量X内における合成反力Pの増加の傾向は、本実施形態と同様であることが確認された。したがって、屈曲部凹部55と付根部凹部56によって、サブリップ50からの車内側シールリップ41の車内側面方向の反力を調整することができる。
【0048】
又、本実施形態では、従来技術のサブリップ(図8)における肉厚の基部650は存在しないので、ドアを強く締めた場合など、ドアガラス4が大きく車内側に移動した場合にもサブリップ50の第1サブリップ部51と第2サブリップ部52の連結部54における第1サブリップ部51と第2サブリップ部52の角度がさらに狭くなり、車内側側壁40と第1サブリップ部51との角度がさらに狭くなる変形により対応できるので、従来技術の点Y近傍で合成反力Pが急激に増加することもなく、ドアガラス4の振れを吸収して確実に支持することができる。
【0049】
本実施形態において、ガラスラン10は、IRHD(国際ゴム硬さ)が80±5のオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を使用し、押出成形によって作製した。
なお、本発明の実施形態において、ガラスラン10を構成する材料としては、ゴム、熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂等で形成することができる。ゴムの場合は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)が、熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)や動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)が耐候性、リサイクル、コスト等の観点から望ましい。
【0050】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、上記の実施形態では、ガラスラン10は、車内側側壁40が車外側側壁30よりも大きく形成され、その形状は車内側が大きい非対称のものを用いたが、従来技術のように、ほぼ対称形に近いガラスランにも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 フロントドア
3 ドアフレーム
5 溝部
10 ガラスラン
20 底壁
30 車外側側壁
32 車外側シールリップ
40 車内側側壁
41 車内側シールリップ
50 サブリップ
51 第1サブリップ部
52 第2サブリップ部
53 第2サブリップ部先端部
54 連結部
55 屈曲部凹部
56 付根部凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9