(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084290
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ネジ締結方法
(51)【国際特許分類】
F16B 5/02 20060101AFI20240618BHJP
F16B 25/10 20060101ALI20240618BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
F16B5/02 R
F16B25/10 A
F16B5/02 V
E04F13/08 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198474
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 泰文
【テーマコード(参考)】
2E110
3J001
【Fターム(参考)】
2E110AA42
2E110AA43
2E110AB01
2E110AB22
2E110CA03
2E110CC04
2E110DC12
3J001FA02
3J001GA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001JA01
3J001KA13
3J001KA19
(57)【要約】
【課題】削孔によって発生した切り屑を締結対象部材間に残存させることがなく、しかも締結対象部材同士を仮固定する作業を必要とすることのないネジ締結方法を提供する。
【解決手段】第1のドリルネジ3を外装材1及び下地材2の複数箇所にねじ込むことにより外装材1及び下地材2同士を仮締めした後、外装材1及び下地材2から第1のドリルネジ3を抜き取り、外装材1及び下地材2の間の切り屑を除去した後、第1のドリルネジ3によって外装材1及び下地材2に形成された下孔5に、第1のドリルネジ3のネジ外径以下の切り刃外径を有し且つ第1のドリルネジ3のネジ外径よりも大きいネジ外径の第2のドリルネジ4をねじ込むことにより外装材1及び下地材2同士を本締めするようにしたので、削孔によって発生した金属の切り屑が外装材1と下地材2との間に残存することがなく、外装材1と下地材2とを仮固定する作業を必要とすることもない。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結対象部材同士を締結するネジ締結方法において、
先端部に切り刃を有する第1のドリルネジを各締結対象部材の複数箇所にねじ込むことにより締結対象部材同士を仮締めした後、
各締結対象部材から第1のドリルネジを抜き取り、
各締結対象部材間の切り屑を除去した後、
第1のドリルネジによって各締結対象部材に形成された下孔に、第1のドリルネジのネジ外径以下の切り刃外径を有し且つ第1のドリルネジのネジ外径よりも大きいネジ外径の第2のドリルネジをねじ込むことにより締結対象部材同士を本締めする
ことを特徴とするネジ締結方法。
【請求項2】
前記第1のドリルネジとしてネジ外径が第2のドリルネジの切り刃外径と等しいドリルネジを用いる
ことを特徴とする請求項1記載のネジ締結方法。
【請求項3】
前記第1のドリルネジとしてネジ外径が5mmのものを用い、第2のドリルネジとしての切り刃外径が5mmのものを用いる
ことを特徴とする請求項2記載のネジ締結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築材等の締結対象部材をネジで締結するためのネジ締結方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば建築材等の部材を他の部材に締結する際、先端部に切り刃を有するドリルネジが用いられる(例えば、特許文献1参照。)。ドリルネジは、先端の切り刃を締結対象部材に押し当てながら回すことにより、切り刃で締結対象部材を削孔しながら締結対象部材にねじ込まれるようになっているため、予め部材に下孔を穿設しておく必要がなく、締結作業を効率よく行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば建築物の外装材を下地材に取り付ける際に前記ドリルネジを用いる場合、ドリルネジの削孔によって発生した金属の切り屑が外装材と下地材との間に残存し、錆の発生の原因になるという問題点があった。また、外装材及び下地材に予めドリルで下孔を穿設し、ドリルの削孔によって発生した切り屑を除去した後、タップネジでねじ止めする方法もあるが、この場合は複数箇所の下孔(共孔)の位置ずれが生じないように外装材と下地材とを仮固定した状態で各箇所にドリルによる削孔を行う必要があり、仮固定に要する作業が煩雑になるという問題点があった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、削孔によって発生した切り屑を締結対象部材間に残存させることがなく、しかも締結対象部材同士を仮固定する作業を必要とすることのないネジ締結方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、締結対象部材同士を締結するネジ締結方法において、先端部に切り刃を有する第1のドリルネジを各締結対象部材の複数箇所にねじ込むことにより締結対象部材同士を仮締めした後、各締結対象部材から第1のドリルネジを抜き取り、各締結対象部材間の切り屑を除去した後、第1のドリルネジによって各締結対象部材に形成された下孔に、第1のドリルネジのネジ外径以下の切り刃外径を有し且つ第1のドリルネジのネジ外径よりも大きいネジ外径の第2のドリルネジをねじ込むことにより締結対象部材同士を本締めするようにしている。
【0007】
これにより、各締結対象部材から第1のドリルネジを抜き取った後、各締結対象部材間の切り屑が除去されることから、削孔によって発生した金属の切り屑が締結対象部材間に残存することがない。また、締結対象部材の複数箇所が複数の第1のドリルネジによって仮締めされることから、締結対象部材の下孔の位置ずれが生ずることがなく、締結対象部材同士を仮固定する作業を必要としない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、削孔によって発生した金属の切り屑が締結対象部材間に残存することがなく、切り屑の残存による錆の発生を確実に防止することができる。また、締結対象部材同士の位置ずれを生ずることもないので、締結対象部材同士を仮固定する作業を必要とすることがなく、作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る外装材及び下地材の一部正面図
【
図4】外装材及び下地材の締結工程を示す正面断面図
【
図5】外装材及び下地材の締結工程を示す正面断面図
【
図6】外装材及び下地材の締結工程を示す正面断面図
【
図7】外装材及び下地材の締結工程を示す正面断面図
【
図8】外装材及び下地材の締結工程を示す正面断面図
【
図9】外装材及び下地材の締結工程を示す正面断面図
【
図10】外装材及び下地材の締結工程を示す正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至
図10は本発明の一実施形態を示すもので、例えば建築物の外装材を下地材にネジで締結するネジ締結方法を示すものである。
【0011】
同図に示す外装材1は凹凸状に形成された金属板からなり、溝形鋼の鋼材からなる下地材2に第1及び第2のドリルネジ3,4を用いて複数箇所を締結されるようになっている。尚、外装材1及び下地材2は締結対象部材をなす。
【0012】
各ドリルネジ3,4は、外周面にネジ山を有するネジ部3a,3aと、ネジ部3a,4aの一端側に形成された六角形状の頭部3b,4bと、ネジ部3a,3aの他端側に形成された切り刃3c,4cとを有する周知の構成からなり、切り刃3c,4cを締結対象部材に押し当てながら回すことにより、切り刃3c,4cで部材を削孔しながらネジ部3a,3aが締結対象部材にねじ込まれるようになっている。
【0013】
この場合、第1のドリルネジ3には、
図2に示すように、ネジ外径D1 及び切り刃外径d1 がそれぞれ第2のドリルネジ4のネジ外径D2 及び切り刃外径d2 よりも小さく、且つネジ外径D1 が第2のドリルネジ4の切り刃外径d2 と等しいものが用いられる。例えば、
図3に示す一般的なサイズのドリルネジのうち、第1のドリルネジ3として、ネジ部3aのネジ外径D1 が5mm(呼び径5mm)、首下長さLが19mm(呼び長さ19mm)、切り刃3cの切り刃外径d1 が4.2mmのものが用いられ、第2のドリルネジ4として、ネジ部4aのネジ外径D2 が5.9mm(呼び径6mm)、首下長さLが19mm(呼び長さ19mm)、切り刃4cの切り刃外径d2 が5mmのものが用いられる。このようなドリルネジの組み合わせ(
図3の太字枠)により、第1及び第2のドリルネジ3,4がD1 =d2 =5mmの関係になる。
【0014】
次に、本実施形態のネジ締結方法について説明する。まず、
図4に示すように下地材2の上側のフランジ部2aに外装材1を載置し、第1のドリルネジ3を外装材1及び下地材2のフランジ部2aにねじ込むことにより、
図5に示すように外装材1と下地材2とを仮締めする。その際、第1のドリルネジ3は、切り刃3cによって外装材1及び下地材2を削孔しながらネジ部3aが外装材1及び下地材2にねじ込まれる。これにより、外装材1及び下地材2の複数箇所が複数の第1のドリルネジ3によって仮締めされることから、外装材1と下地材2の下孔5の位置ずれが生ずることがなく、外装材1と下地材2とを仮固定しておく必要がない。
【0015】
第1のドリルネジ3によって外装材1及び下地材2の複数箇所を仮締めした後、
図6に示すように外装材1及び下地材2から第1のドリルネジ3を全て抜き取るとともに、
図7に示すように外装材1を下地材2から分離し、外装材1と下地材2との間から第1のドリルネジ3の削孔により発生した金属の切り屑を除去する。
【0016】
次に、
図8に示すように外装材1を再び下地材2に載置し、第1のドリルネジ3によって外装材1及び下地材2に形成された下孔5に、
図9及び
図10に示すように第2のドリルネジ4をねじ込むことにより外装材1と下地材2とを本締めする。その際、下孔5の内径は第1のドリルネジ3のネジ外径D1 とほぼ等しくなるとともに、第2のドリルネジ4の切り刃外径d2 とほぼ等しくなることから、第2のドリルネジ4の切り刃4cの削孔による切り屑が発生することはなく、第2のドリルネジ4のネジ部4aによるネジ溝の僅かな切削のみとなり、その切り屑も外装材1と下地材2との間に残ることなく下孔5の下方に落下する。
【0017】
このように、本実施形態によれば、先端部に切り刃3cを有する第1のドリルネジ3を外装材1及び下地材2の複数箇所にねじ込むことにより外装材1及び下地材2同士を仮締めした後、外装材1及び下地材2から第1のドリルネジ3を抜き取り、外装材1及び下地材2の間の切り屑を除去した後、第1のドリルネジ3によって外装材1及び下地材2に形成された下孔5に、第1のドリルネジ3のネジ外径以下の切り刃外径を有し且つ第1のドリルネジ3のネジ外径よりも大きいネジ外径の第2のドリルネジ4をねじ込むことにより外装材1及び下地材2同士を本締めするようにしたので、削孔によって発生した金属の切り屑が外装材1と下地材2との間に残存することがなく、切り屑の残存による錆の発生を確実に防止することができる。また、外装材1と下地材2の下孔5の位置ずれを生ずることもないので、外装材1と下地材2とを仮固定する作業を必要とすることがなく、作業の効率化を図ることができる。
【0018】
また、第1のドリルネジ3としてネジ外径が第2のドリルネジ4の切り刃外径と等しいドリルネジを用いるようにしたので、第1のドリルネジ3と第2のドリルネジ4とのネジ外径差を最大限にすることができ、下孔5にねじ込まれる第2のドリルネジ4の締結強度を十分に確保することができる。
【0019】
この場合、第1のドリルネジ3としてネジ外径が5mmのものを用い、第2のドリルネジ4としての切り刃外径が5mmのものを用いるようにしたので、一般的な仕様のドリルネジを用いることができ、建築材の締結に極めて効果的である。
【0020】
尚、前記実施形態では、第1のドリルネジ3のネジ外径が第2のドリルネジ4の切り刃外径と等しいドリルネジを用いる場合を示したが、第1のドリルネジのネジ外径よりも第2のドリルネジのネジ外径が大きければ、第1のドリルネジのネジ外径が第2のドリルネジの切り刃外径よりも小さいものを用いることも可能である。
【0021】
また、前記実施形態では、建築材としての外装材1及び下地材2を締結するようにしたものを示したが、本発明は前記実施形態に記載されたものに限定されるものではなく、各種の締結対象部材を締結する場合に用いることができる。
【符号の説明】
【0022】
1…外装材、2…下地材、3…第1のドリルネジ、3a…ネジ部、3b…頭部、3c…切り刃、4…第2のドリルネジ、4a…ネジ部、4b…頭部、4c…切り刃、5…下孔。