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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084292
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】接合体
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/00 20060101AFI20240618BHJP
   C04B 35/581 20060101ALI20240618BHJP
   C04B 35/577 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C04B37/00 A
C04B37/00 C
C04B35/581
C04B35/577
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198476
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】井口 真仁
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇喜
【テーマコード(参考)】
4G026
【Fターム(参考)】
4G026BA16
4G026BB14
4G026BC01
4G026BD12
4G026BE04
4G026BF09
4G026BF12
4G026BF15
4G026BF52
4G026BG02
(57)【要約】
【課題】製造時や使用時のクラックや剥離等の不具合を低減した接合体を提供する。
【解決手段】平板状のAlNセラミックス部材20と、平板状のSiCセラミックス部材30とが、接合層40を介し接合され、または直接接合された接合体10であって、前記SiCセラミックス部材30は、周期律表第4族、第5族、または第6族の金属の炭化物、窒化物、またはホウ化物を含み、前記AlNセラミックス部材20と前記SiCセラミックス部材30との20℃から接合状態に対応した温度の平均線膨張係数差の絶対値が0.8ppm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のAlNセラミックス部材と、平板状のSiCセラミックス部材とが、接合層を介し接合され、または直接接合された接合体であって、
前記SiCセラミックス部材は、周期律表第4族、第5族、または第6族の金属の炭化物、窒化物、またはホウ化物を含み、
前記AlNセラミックス部材と前記SiCセラミックス部材との20℃から接合状態に対応した温度の平均線膨張係数差の絶対値が0.8ppm以下であることを特徴とする接合体。
【請求項2】
前記SiCセラミックス部材は、TiCを10wt%以上45wt%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記SiCセラミックス部材は、TiNを5wt%以上35wt%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項4】
前記SiCセラミックス部材は、TaBを10wt%以上50wt%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項5】
前記SiCセラミックス部材は、NbBを10wt%以上50wt%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項6】
前記SiCセラミックス部材は、TiBを10wt%以上55wt%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項7】
前記SiCセラミックス部材は、ZrCを10wt%以上65wt%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項8】
前記SiCセラミックス部材は、MoCを30wt%以上55wt%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項9】
前記接合層は軟ロウで形成され、
前記SiCセラミックス部材と前記AlNセラミックス部材の20℃から前記軟ロウの融点またはガラス転移点までの平均線膨張係数差の絶対値は、0.4ppm以下であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の接合体。
【請求項10】
前記接合層は硬ロウで形成され、
前記SiCセラミックス部材と前記AlNセラミックス部材の20℃から前記硬ロウの融点またはガラス転移点までの平均線膨張係数差の絶対値は、0.4ppm以下であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の接合体。
【請求項11】
前記AlNセラミックス部材と前記SiCセラミックス部材とは直接接合され、
前記SiCセラミックス部材と前記AlNセラミックス部材の20℃から1500℃までの平均線膨張係数差の絶対値は、0.4ppm以下であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の接合体。
【請求項12】
前記接合層は樹脂で形成され、
前記SiCセラミックス部材と前記AlNセラミックス部材の20℃から前記樹脂のガラス転移点までの平均線膨張係数差の絶対値は、0.4ppm以下であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の接合体。
【請求項13】
前記接合体の一方の主面の最大長さは20cm以上であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の接合体。
【請求項14】
前記AlNセラミックス部材に電極が埋設されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の接合体。
【請求項15】
前記SiCセラミックス部材に媒体流路を備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の接合体。
【請求項16】
前記SiCセラミックス部材に媒体流路を備えることを特徴とする請求項9に記載の接合体。
【請求項17】
前記SiCセラミックス部材に媒体流路を備えることを特徴とする請求項10に記載の接合体。
【請求項18】
前記SiCセラミックス部材に媒体流路を備えることを特徴とする請求項11に記載の接合体。
【請求項19】
前記SiCセラミックス部材に媒体流路を備えることを特徴とする請求項12に記載の接合体。
【請求項20】
前記SiCセラミックス部材に媒体流路を備えることを特徴とする請求項13に記載の接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AlNセラミックス部材とSiCセラミックス部材の接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置用部材は、基板を加熱や保持する機能を有するセラミックス部材が多用されている。特に、AlNを主成分とするAlNセラミックス部材は、基板保持部材やヒーター等に用いられている。このようなAlNセラミックス部材を用いた半導体製造装置用部材に、例えば、ヒートシンク等の様々な機能を付加するため、AlNセラミックス部材と他のセラミックス部材との接合体が望まれている。
【0003】
特許文献1には、窒化アルミニウムとの線熱膨張係数差がきわめて小さく、熱伝導率、緻密性及び強度が十分高い複合材料を提供することを目的として、含有量の多いものの上位3つが炭化珪素、チタンシリコンカーバイド、炭化チタンであり、この並び順が含有量の多いものから少ないものの順序を示しており、炭化珪素を51~68質量%含有し、珪化チタンを含有せず、開気孔率が1%以下である緻密質複合材料が開示されている。また、窒化アルミニウムと緻密質複合材料の接合方法について、緻密質複合材料の焼結体とアルミニウム製の金属箔と窒化アルミニウムの焼結体を積層し、HP焼成する方法、および緻密質複合材料の原料の調合粉末の成形体と窒化アルミニウムの焼結体を積層し、HP焼成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-208567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般にAlNセラミックス部材とSiCセラミックス部材は線膨張係数が異なるため、その接合体は、製造時(接合時)や製品使用時に破損やクラックが入る場合があった。
【0006】
しかしながら、特許文献1の緻密質複合材料は、SiまたはSi化合物を原料に混合し、焼結時に反応させて製造するため、製造条件の変動(バラツキ)によるSi化合物の生成にバラツキが生じやすく、同一の原料を使用しても得られる緻密質複合材料の物性、特に線膨張係数にバラツキが生じる虞があった。また、緻密質複合材料の原料の調合粉末の成形体と窒化アルミニウムの焼結体を積層し、HP焼成する接合方法では、緻密質複合材料内に媒体流路を形成することが難しかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、添加物の量によってSiCセラミックス部材のCTEの調節が容易でAlNセラミックス部材とSiCセラミックス部材のCTE差のバラツキが少なく、製造時や使用時のクラックや剥離等の不具合を低減した接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の接合体は、以下の手段を講じた。すなわち、本発明の適用例の接合体は、平板状のAlNセラミックス部材と、平板状のSiCセラミックス部材とが、接合層を介し接合され、または直接接合された接合体であって、前記SiCセラミックス部材は、周期律表第4族、第5族、または第6族の金属の炭化物、窒化物、またはホウ化物を含み、前記AlNセラミックス部材と前記SiCセラミックス部材との20℃から接合状態に対応した温度の平均線膨張係数差の絶対値が0.8ppm以下であることを特徴としている。
【0009】
これにより、製造時や使用時のクラックや剥離等の不具合を低減したAlNセラミックス部材とSiCセラミックス部材との接合体を構成することができる。また、周期律表第4族、第5族、または第6族の金属の炭化物、窒化物、またはホウ化物(添加物)は、SiCセラミックス部材の焼結体の中で添加された物質の相を維持し、Siとの化合物を生成していないため、添加物の量によってSiCセラミックス部材のCTEの調節を容易にすることができ、CTE差のバラツキの少ない接合体を構成することができる。
【0010】
(2)また、上記(1)の適用例の接合体において、前記SiCセラミックス部材は、TiCを10wt%以上45wt%以下含むことを特徴としている。
【0011】
SiCセラミックス部材のTiCの添加量が上記の量であればAlNセラミックス部材とのCTE差がさらに近接し、さらに良好な接合体を作製することができるようになる。また、上記添加量であれば、SiCセラミックス部材の密度、熱伝導率を一定以上に維持することができる。
【0012】
(3)また、上記(1)の適用例の接合体において、前記SiCセラミックス部材は、TiNを5wt%以上35wt%以下含むことを特徴としている。
【0013】
SiCセラミックス部材のTiNの添加量が上記の量であればAlNセラミックス部材とのCTE差がさらに近接し、さらに良好な接合体を作製することができるようになる。また、上記添加量であれば。SiCセラミックス部材の密度、熱伝導率を一定以上に維持することができる。
【0014】
(4)また、上記(1)の適用例の接合体において、前記SiCセラミックス部材は、TaBを10wt%以上50wt%以下含むことを特徴としている。
【0015】
SiCセラミックス部材のTaBの添加量が上記の量であればAlNセラミックス部材とのCTE差がさらに近接し、さらに良好な接合体を作製することができるようになる。また、上記添加量であれば、SiCセラミックス部材の密度、熱伝導率を一定以上に維持することができる。
【0016】
(5)また、上記(1)の適用例の接合体において、前記SiCセラミックス部材は、NbBを10wt%以上50wt%以下含むことを特徴としている。
【0017】
SiCセラミックス部材のNbBの添加量が上記の量であればAlNセラミックス部材とのCTE差がさらに近接し、さらに良好な接合体を作製することができるようになる。また、上記添加量であれば、SiCセラミックス部材の密度、熱伝導率を一定以上に維持することができる。
【0018】
(6)また、上記(1)の適用例の接合体において、前記SiCセラミックス部材は、TiBを10wt%以上55wt%以下含むことを特徴としている。
【0019】
SiCセラミックス部材のTiBの添加量が上記の量であればAlNセラミックス部材とのCTE差がさらに近接し、さらに良好な接合体を作製することができるようになる。また、上記添加量であれば、SiCセラミックス部材の密度、熱伝導率を一定以上に維持することができる。
【0020】
(7)また、上記(1)の適用例の接合体において、前記SiCセラミックス部材は、ZrCを10wt%以上65wt%以下含むことを特徴としている。
【0021】
SiCセラミックス部材のZrCの添加量が上記の量であればAlNセラミックス部材とのCTE差がさらに近接し、さらに良好な接合体を作製することができるようになる。また、上記添加量であれば、SiCセラミックス部材の密度、熱伝導率を一定以上に維持することができる。
【0022】
(8)また、上記(1)の適用例の接合体において、前記SiCセラミックス部材は、MoCを30wt%以上55wt%以下含むことを特徴としている。
【0023】
SiCセラミックス部材のMoCの添加量が上記の量であればAlNセラミックス部材とのCTE差がさらに近接し、さらに良好な接合体を作製することができるようになる。また、上記添加量であれば、SiCセラミックス部材の密度、熱伝導率を一定以上に維持することができる。
【0024】
(9)また、上記(1)から(8)のいずれかの適用例の接合体において、前記接合層は軟ロウで形成され、前記SiCセラミックス部材と前記AlNセラミックス部材の20℃から前記軟ロウの融点またはガラス転移点までの平均線膨張係数差の絶対値は、0.4ppm以下であることを特徴としている。
【0025】
接合層が軟ロウで形成される場合、SiCセラミックス部材とAlNセラミックス部材の20℃から軟ロウの融点またはガラス転移点までの平均線膨張係数差の絶対値を0.4ppm以下に制御することで、製造時や使用時のクラックや剥離等の不具合を十分に低減した接合体とすることができる。このような接合体は、半導体製造装置用部材として、例えば、200℃以下の温度帯で好適に使用することのできる部材となる。
【0026】
(10)また、上記(1)から(8)のいずれかの適用例の接合体において、前記接合層は硬ロウで形成され、前記SiCセラミックス部材と前記AlNセラミックス部材の20℃から前記硬ロウの融点またはガラス転移点までの平均線膨張係数差の絶対値は、0.4ppm以下であることを特徴としている。
【0027】
接合層が硬ロウで形成される場合、SiCセラミックス部材とAlNセラミックス部材の20℃から硬ロウの融点またはガラス転移点までの平均線膨張係数差の絶対値を0.4ppm以下に制御することで、製造時や使用時のクラックや剥離等の不具合を十分に低減した接合体とすることができる。このような接合体は、半導体製造装置用部材として、例えば、600℃以下の温度帯で好適に使用することのできる部材となる。
【0028】
(11)また、上記(1)から(8)のいずれかの適用例の接合体において、前記AlNセラミックス部材と前記SiCセラミックス部材とは直接接合され、前記SiCセラミックス部材と前記AlNセラミックス部材の20℃から1500℃までの平均線膨張係数差の絶対値は、0.4ppm以下であることを特徴としている。
【0029】
AlNセラミックス部材とSiCセラミックス部材とが直接接合される場合、SiCセラミックス部材とAlNセラミックス部材の20℃から1500℃までの平均線膨張係数差の絶対値を0.4ppm以下に制御することで、製造時や使用時のクラックや剥離等の不具合を十分に低減した接合体とすることができる。このような接合体は、半導体製造装置用部材として、例えば、1000℃以下の温度帯で好適に使用することのできる部材となる。
【0030】
(12)また、上記(1)から(8)のいずれかの適用例の接合体において、前記接合層は樹脂で形成され、前記SiCセラミックス部材と前記AlNセラミックス部材の20℃から前記樹脂のガラス転移点までの平均線膨張係数差の絶対値は、0.4ppm以下であることを特徴としている。
【0031】
接合層が樹脂で形成される場合、SiCセラミックス部材とAlNセラミックス部材の20℃から樹脂のガラス転移点までの平均線膨張係数差の絶対値を0.4ppm以下に制御することで、製造時や使用時のクラックや剥離等の不具合を十分に低減でき、でき、また接合体の平面度の維持を一定程度確保することができる。このような接合体は、SiCセラミックス部材やAlNセラミックス部材の厚みや最大寸法によらず、半導体製造装置用部材として、例えば、200℃以下の温度帯で好適に使用することのできる部材となる。
【0032】
(13)また、上記(1)から(12)のいずれかの適用例の接合体において、前記接合体の一方の主面の最大長さは20cm以上であることを特徴としている。
【0033】
接合体の接合寸法が大きくなるほど接合後にクラックや剥離が生じやすいが、本発明の構成のようにCTE差を小さくしたことにより、比較的大きな寸法であっても不具合の低減された接合体を得ることができる。その結果、半導体に用いられる基板寸法と同等以上の寸法の接合体が得られ半導体製造装置用部材として利用することができる。
【0034】
(14)また、上記(1)から(13)のいずれかの適用例の接合体において、前記AlNセラミックス部材に電極が埋設されていることを特徴としている。
【0035】
これにより、接合体に電極を必要とする機能を付与することができ、接合体の機能を拡充することができる。
【0036】
(15)また、上記(1)から(14)のいずれかの適用例の接合体において、前記SiCセラミックス部材に媒体流路を備えることを特徴としている。
【0037】
これにより、接合体に媒体による加熱、冷却の機能を付与することができ、接合体の機能を拡充することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の接合体によれば、添加物の量によってSiCセラミックス部材のCTEの調節が容易でAlNセラミックス部材とSiCセラミックス部材のCTE差のバラツキが少なくできるので、製造時や使用時のクラックや剥離等の不具合を低減した接合体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施形態に係る接合体の一例を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る接合体の変形例を示す模式的な断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る接合体の変形例を示す模式的な断面図である。
図4】(a)~(c)は、それぞれ本発明の実施形態に係るSiCセラミックス部材の製造工程の一段階の例を示す模式図である。
図5】実施例および比較例の接合体のSiCセラミックス部材の添加物の種類および量、各範囲の平均線膨張係数差、接合状態を示す表である。
図6】実施例の接合体のSiCセラミックス部材の添加物の種類および量、各範囲の平均線膨張係数差、接合状態を示す表である。
図7】実施例の接合体のSiCセラミックス部材の添加物の種類および量、各範囲の平均線膨張係数差、接合状態を示す表である。
図8】実施例の接合体のSiCセラミックス部材の添加物の種類および量、各範囲の平均線膨張係数差、接合状態を示す表である。
図9】実施例8のSiCセラミックス部材を構成する結晶相を示すXRDチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、構成図において、各構成要素の大きさは概念的に表したものであり、必ずしも実際の寸法比率を表すものではない。
【0041】
[実施形態]
[接合体の構成]
まず、本発明の実施形態に係る接合体を説明する。図1(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施形態に係る接合体の一例を示す模式的な断面図である。本発明の実施形態に係る接合体10は、平板状のAlNセラミックス部材20と、平板状のSiCセラミックス部材30とが、接合層40を介し接合され、または直接接合された接合体であって、SiCセラミックス部材30は、周期律表第4族、第5族、または第6族の金属の炭化物、窒化物、またはホウ化物を含み、AlNセラミックス部材20とSiCセラミックス部材30との20℃から接合状態に対応した温度の平均線膨張係数差の絶対値が0.8ppm以下である。
【0042】
これにより、製造時や使用時のクラックや剥離等の不具合を低減したAlNセラミックス部材20とSiCセラミックス部材30との接合体を構成することができる。また、周期律表第4族、第5族、または第6族の金属の炭化物、窒化物、またはホウ化物(添加物)は、SiCセラミックス部材30の焼結体の中で添加された物質の相を維持し、Siとの化合物を生成していないため、添加物の量によってSiCセラミックス部材30のCTEの調節を容易にすることができ、CTE差のバラツキの少ない接合体10を構成することができる。AlNセラミックス部材20とSiCセラミックス部材30との20℃から接合状態に対応した温度の平均線膨張係数差の絶対値は、0.4ppm以下であることが好ましく、0.3ppm以下であることがより好ましい。添加物の融点は、2200℃以上であることが好ましい。これにより、添加物が焼成時に液相とならず、SiCセラミックス部材30の焼結体の中で添加された物質の相を維持しやすくなる。
【0043】
AlNセラミックス部材20は、AlNを主成分とする。AlNを主成分とするとは、AlNを90wt%以上含むことをいう。AlNセラミックス部材20は焼結助剤を含んでいてもよい。例えば、Yが焼結助剤として添加される場合、AlNに対して内割で0.1wt%以上7wt%以下添加されてもよい。また、AlNセラミックス部材20は、AlNのみから構成されてもよい。このような濃度で焼結助剤が添加され、または添加されないことで、AlNセラミックス部材20とSiCセラミックス部材30とのCTE差を十分に低減できる。
【0044】
AlNセラミックス部材20は周期律表第4族、第5族、または第6族の金属の酸化物、炭化物、窒化物、炭化物、またはホウ化物をAlNセラミックス部材20の全体の10wt%以下含んでもよい。これにより、SiCセラミックス部材30とのCTE差をさらに低減できる。また、AlNセラミックス部材20とSiCセラミックス部材30とのCTE差を低減しつつ、AlNセラミックス部材20の電気的特性(体積抵抗率など)等の物性を変更することができ、接合体10の用途が広くなる。
【0045】
SiCセラミックス部材30は、SiCを30wt%以上含むもののことをいう。SiCセラミックス部材30は焼結助剤を含んでいてもよい。例えば、BCが焼結助剤として添加される場合、SiCに対して内割で0.1wt%以上1wt%以下添加されてもよい。また、カーボンが焼結助剤として添加される場合、SiCに対して内割で1wt%以上5wt%以下添加されてもよい。BCとカーボンの両方が添加されてもよい。SiCセラミックス部材30の密度、熱伝導率を単体のSiCセラミックスにより近づける必要がある場合、添加物の添加量を50wt%以下とすることが好ましい。
【0046】
周期律表第4族の金属は、Ti、Zr、Hfから選択された1種類以上であることが好ましい。周期律表第5族の金属は、Nb、Taから選択された1種類以上であることが好ましい。周期律表第6族の金属は、Cr、Mo、Wから選択された1種類以上であることが好ましい。
【0047】
AlNセラミックス部材20およびSiCセラミックス部材30の平均線膨張係数(平均線膨張率)、線膨張係数(線膨張率)は、熱機械分析装置を用いて、JIS R1618(ファインセラミックスの熱機械分析による熱膨張の測定方法)に準拠した方法で求めることができる。
【0048】
接合していないAlNセラミックス部材20およびSiCセラミックス部材30のそれぞれについて、熱機械分析装置で所定の温度における長さを求め、膨張曲線を求める。L0を定義温度(20℃)での長さとし、L1、L2をそれぞれ温度T1、T2(T1<T2)での長さとする。また、ΔL=L2-L1とし、ΔT=T2-T1とする。温度T1からT2の平均線膨張係数αは、以下の数式(1)で求めることができる。すなわち、温度T1からT2の平均線膨張係数αは、膨張曲線のT1からT2の平均の勾配である。また、温度T1の線膨張係数は、膨張曲線のT1の接線の勾配である。なお、長さの単位はmm、温度の単位は℃とする。
【0049】
【数1】
【0050】
このようにして求めたAlNセラミックス部材20の温度T1からT2の平均線膨張係数αと、SiCセラミックス部材30の温度T1からT2の平均線膨張係数αとの差を、温度T1からT2のAlNセラミックス部材20とSiCセラミックス部材30の平均線膨張係数差(CTE差)とする。
【0051】
接合状態に対応した温度とは、接合材を使用した接合の場合、接合材の融点(共晶点温度、液相線温度含む)またはガラス転移点とする。また、接合材を使用しない接合(直接接合)の場合、1500℃とする。1500℃とする理由は、AlNセラミックス部材20またはSiCセラミックス部材30の融点または昇華温度の50%~70%に相当する温度で、直接接合する際の指標となり得る温度であり、直接接合する場合に最低限必要な温度であるからである。また、機器の制約上測定可能な上限の温度でもある。
【0052】
SiCセラミックス部材30は、TiC(融点3067℃)を10wt%以上45wt%以下含むことが好ましい。TiCを含むSiCセラミックス部材30のCTEは、何も添加しないSiCセラミックス部材30と比較して大きくなる。SiCセラミックス部材30のTiCの添加量が上記の量であればAlNセラミックス部材20とのCTE差がさらに近接し、さらに良好な接合体10を作製することができるようになる。また、上記添加量であれば、SiCセラミックス部材30の密度、熱伝導率を一定以上に維持することができる。
【0053】
SiCセラミックス部材30は、TiN(融点2950℃)を5wt%以上35wt%以下含むことが好ましい。TiNを含むSiCセラミックス部材30のCTEは、何も添加しないSiCセラミックス部材30と比較して大きくなる。SiCセラミックス部材30のTiNの添加量が上記の量であればAlNセラミックス部材20とのCTE差がさらに近接し、さらに良好な接合体10を作製することができるようになる。また、上記添加量であれば、SiCセラミックス部材30の密度、熱伝導率を一定以上に維持することができる。
【0054】
SiCセラミックス部材30は、TaB(融点3037℃)を10wt%以上50wt%以下含むことが好ましい。TaBを含むSiCセラミックス部材30のCTEは、何も添加しないSiCセラミックス部材30と比較して大きくなる。SiCセラミックス部材30のTaBの添加量が上記の量であればAlNセラミックス部材20とのCTE差がさらに近接し、さらに良好な接合体10を作製することができるようになる。また、上記添加量であれば、SiCセラミックス部材30の密度、熱伝導率を一定以上に維持することができる。
【0055】
SiCセラミックス部材30は、NbB(融点3036℃)を10wt%以上50wt%以下含むことが好ましい。NbBを含むSiCセラミックス部材30のCTEは、何も添加しないSiCセラミックス部材30と比較して大きくなる。SiCセラミックス部材30のNbBの添加量が上記の量であればAlNセラミックス部材20とのCTE差がさらに近接し、さらに良好な接合体10を作製することができるようになる。また、上記添加量であれば、SiCセラミックス部材30の密度、熱伝導率を一定以上に維持することができる。
【0056】
SiCセラミックス部材30は、TiB(融点2790℃)を10wt%以上55wt%以下含むことが好ましい。TiBを含むSiCセラミックス部材30のCTEは、何も添加しないSiCセラミックス部材30と比較して大きくなる。SiCセラミックス部材30のTiBの添加量が上記の量であればAlNセラミックス部材20とのCTE差がさらに近接し、さらに良好な接合体10を作製することができるようになる。また、上記添加量であれば、SiCセラミックス部材30の密度、熱伝導率を一定以上に維持することができる。
【0057】
SiCセラミックス部材30は、ZrC(融点3532℃)を10wt%以上65wt%以下含むことが好ましい。ZrCを含むSiCセラミックス部材30のCTEは、何も添加しないSiCセラミックス部材30と比較して大きくなる。SiCセラミックス部材30のZrCの添加量が上記の量であればAlNセラミックス部材20とのCTE差がさらに近接し、さらに良好な接合体10を作製することができるようになる。また、上記添加量であれば、SiCセラミックス部材30の密度、熱伝導率を一定以上に維持することができる。
【0058】
SiCセラミックス部材30は、MoCを(融点2687℃)を30wt%以上55wt%以下含むことが好ましい。MoCを含むSiCセラミックス部材30のCTEは、何も添加しないSiCセラミックス部材30と比較して大きくなる。SiCセラミックス部材30のZrCの添加量が上記の量であればAlNセラミックス部材20とのCTE差がさらに近接し、さらに良好な接合体10を作製することができるようになる。また、上記添加量であれば、SiCセラミックス部材30の密度、熱伝導率を一定以上に維持することができる。
【0059】
接合体10は、接合層40が軟ロウで形成され、SiCセラミックス部材30とAlNセラミックス部材20の20℃から軟ロウの融点またはガラス転移点までの平均線膨張係数(CTE)差の絶対値が、0.4ppm以下であることが好ましい。これにより、製造時や使用時のクラックや剥離等の不具合を十分に低減した接合体10とすることができる。このような接合体10は、半導体製造装置用部材として、例えば、200℃以下の温度帯で好適に使用することのできる部材となる。
【0060】
軟ロウとは、融点またはガラス転移点が450℃未満のロウ材であり、例えば、In、Sn、ハンダ等である。軟ロウの融点またはガラス転移点は、使用される軟ロウに応じて決定されることが好ましいが、軟ロウの多くが融解またはガラス転移する400℃としてもよい。例えば、Inは融点が157℃であり、H95A(Sn95Pb5)ハンダの液相線温度は224℃、H1Ag1.5A(Pb07.5Ag15Sn1)ハンダの液相線温度は309℃である。
【0061】
接合体10は、接合層40が硬ロウで形成され、SiCセラミックス部材30とAlNセラミックス部材20の20℃から硬ロウの融点またはガラス転移点までの平均線膨張係数差の絶対値が、0.4ppm以下であることが好ましい。これにより、製造時や使用時のクラックや剥離等の不具合を十分に低減した接合体10とすることができる。このような接合体10は、半導体製造装置用部材として、例えば、600℃以下の温度帯で好適に使用することのできる部材となる。
【0062】
硬ロウとは、融点またはガラス転移点が450℃以上のロウ材であり、例えば、Auロウ、Agロウ、Tiロウ、Alロウ等である。硬ロウには、TiやHf、Zrなどの活性金属が含まれてもよい。硬ロウの融点またはガラス転移点は、使用される硬ロウに応じて決定されることが好ましいが、硬ロウの多くが融解またはガラス転移する1000℃としてもよい。
【0063】
接合体10は、AlNセラミックス部材20とSiCセラミックス部材30とが直接接合され、SiCセラミックス部材30とAlNセラミックス部材20の20℃から1500℃までの平均線膨張係数差の絶対値が、0.4ppm以下であることが好ましい。これにより、製造時や使用時のクラックや剥離等の不具合を十分に低減した接合体10とすることができる。このような接合体10は、半導体製造装置用部材として、例えば、1000℃以下の温度帯で好適に使用することのできる部材となる。
【0064】
直接接合とは、AlNセラミックス部材20とSiCセラミックス部材30との間隙に他の部材を介さず、直接接合する方法をいう。AlNセラミックス部材20とSiCセラミックス部材30は、接合面に垂直に圧力を加えつつ、1500℃以上の温度にすることで直接接合することができる。直接接合をした場合、接合体10の接合面に垂直な断面において、光学顕微鏡で500倍程度の倍率で観察をしても、接合層が確認されない。
【0065】
接合体10は、接合層40が樹脂で形成され、SiCセラミックス部材30とAlNセラミックス部材20の20℃から樹脂のガラス転移点までの平均線膨張係数差の絶対値が、0.4ppm以下であることが好ましい。これにより、製造時や使用時のクラックや剥離等の不具合を十分に低減でき、でき、また接合体10の平面度の維持を一定程度確保することができる。このような接合体10は、SiCセラミックス部材30やAlNセラミックス部材20の厚みや最大寸法によらず、半導体製造装置用部材として、例えば、200℃以下の温度帯で好適に使用することのできる部材となる。
【0066】
樹脂は、融点未満で分子が運動しやすい状態になるガラス転移点が存在する。樹脂とは、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等である。樹脂のガラス転移点は、使用される樹脂に応じて決定されることが好ましい。
【0067】
接合体10の一方の主面の最大長さは20cm以上であることが好ましい。接合体10の接合寸法が大きくなるほど接合後にクラックや剥離が生じやすいが、本発明の構成のようにCTE差を小さくしたことにより、比較的大きな寸法であっても不具合の低減された接合体10を得ることができる。その結果、半導体に用いられる基板寸法と同等以上の寸法の接合体10が得られ半導体製造装置用部材として利用することができる。接合体10の一方の主面の最大長さは50cm以下であることが好ましい。
【0068】
接合体10の一方の主面の最大長さとは、一方の主面の任意の2点間を結ぶ長さの最大値である。例えば、接合体10が円盤状の場合、一方の主面の最大長さは円の直径である。一方の主面は、接合面としてもよい。AlNセラミックス部材20およびSiCセラミックス部材30の一方の主面に垂直な方向の厚さは、2mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0069】
図2は、本発明の実施形態に係る接合体の変形例を示す模式的な断面図である。図2に示されるように、接合体10は、AlNセラミックス部材20に電極50が埋設されていることが好ましい。これにより、接合体10に電極を必要とする機能を付与することができ、接合体10の機能を拡充することができる。このような接合体10は、例えば、セラミックスヒーター等に適用することができる。なお、図2は、電極50に電源を供給する端子や端子穴は省略している。
【0070】
図3は、本発明の実施形態に係る接合体の変形例を示す模式的な断面図である。接合体10は、SiCセラミックス部材30に媒体流路60を備えることが好ましい。これにより、接合体10に媒体による加熱、冷却の機能を付与することができ、接合体10の機能を拡充することができる。このような接合体10は、例えば、温度調節用基材(クーリングプレートやホットプレート)に適用することができる。接合体10は、電極50と媒体流路60の両方を備えていてもよい。
【0071】
[接合体の製造方法]
次に、上記のように構成された接合体の製造方法を説明する。接合体の製造方法をAlNセラミックス部材の作製工程、SiCセラミックス部材の作製工程、接合工程に分けて説明する。AlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材は、例えば、以下に説明する成形体ホットプレス法によって作製される。なお、製法は本方法に限られず、例えば、粉末ホットプレス法や従前のグリーンシート積層法等であってもよい。粉末ホットプレス法は、セラミックス原料粉末の造粒粉を1軸ホットプレス焼成する方法である。造粒粉と所定の電極を交互に重ねることにより電極をセラミックスの内部に埋設することもできる。
【0072】
(AlNセラミックス部材の作製工程)
AlNセラミックス部材の作製工程は、まず、AlN原料粉末またはAlN原料粉末に焼結助剤を添加した粉末を造粒した造粒粉を準備する。AlN原料粉末は、高純度であることが好ましく、その純度は、好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上である。また、AlN原料粉末の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上1.0μm以下、より好ましくは0.3μm以上0.8μm以下である。AlN原料粉末に必要に応じて所定量の焼結助剤を添加し、PVA系等のバインダ、分散剤、溶剤を添加してスラリーを調製し、スプレードライヤー等により造粒粉を造粒する。混合方法は、湿式、乾式の何れであってもよく、例えばボールミル、振動ミルなどの混合器を用いることができる。
【0073】
AlN原料粉末は、焼結助剤として、例えば、Yを用いることができる。また、例えば、AlNセラミックス部材とSiCセラミックス部材とのCTE差を低減するため、またはAlNセラミックス部材の電気的特性等の物性を調整するため、周期律表第4族、第5族、または第6族の金属の酸化物、炭化物、窒化物、またはホウ化物を添加することができる。この場合、セラミックス原料粉に内比で0.1wt%~7wt%のY、所定量の周期律表第4族、第5族、または第6族の金属の酸化物、炭化物、窒化物、またはホウ化物を添加し、PVA系等のバインダ、分散剤、溶剤を添加してスラリーを調製し、スプレードライヤー等により造粒粉を造粒する。
【0074】
次に、造粒粉からセラミックス成形体を作製する。成形方法としては、例えば、一軸加圧成形や冷間静水等方圧加圧(CIP:Cold Isostatic Pressing)法などの公知の方法を用いればよい。なお、セラミックス成形体を形成する方法は、加圧成形に限らず、例えば、グリーンシート積層、または鋳込み成形であっても適用が可能であり、これらを適宜脱脂、またはさらに仮焼する工程により、セラミックス成形体(脱脂体または仮焼体)を製造することができる。
【0075】
セラミックス成形体は、成形後、機械加工により成形体の形状が整えられてもよい。AlNセラミックス部材に電極を埋設する場合、セラミックス成形体の片面(他のセラミックス成形体との接合面)に、電極の形状に合わせた形状の溝が形成されてもよい。機械加工は、脱脂後に行なってもよい。
【0076】
次に、セラミックス脱脂体を作製する。1または複数のセラミックス成形体を所定の温度以上、所定の時間以上脱脂処理して複数のセラミックス脱脂体を作製する。セラミックス成形体は、例えば、500℃以上900℃以下の温度で熱処理され、セラミックス脱脂体となる。脱脂時間は、1時間以上120時間以下であることが好ましい。脱脂には、大気炉または窒素雰囲気炉を用いることができるが、バインダの有機成分を除去することが重要なので大気炉の方が好ましい。
【0077】
電極を埋設する場合、電極は接合体の設計や用途に応じた形状に加工されたものを準備する。電極の形状は、メッシュ状や箔状など、様々な形状とすることができる。また、材質も、モリブデン、タングステンなど、様々な材質とすることができる。電極、および複数のセラミックス脱脂体を組み合わせて、平板状に形成され、電極が埋設された前駆体を形成する。
【0078】
次に、セラミックス脱脂体を常圧焼成または一軸加圧焼成して、AlNセラミックス部材を作製する。一軸加圧焼成する場合、セラミックス脱脂体または前駆体を、主面に垂直方向に一軸加圧焼成する。この場合の焼成条件は、加圧する力は、1MPa以上であることが好ましい。また、焼成温度は、1700℃以上2000℃以下であることが好ましい。焼成時間は、1時間以上12時間以下であることが好ましく、1時間以上5時間以下であることがより好ましい。焼成雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。これにより、1または複数のセラミックス脱脂体が焼結してAlNセラミックス焼結体となる。
【0079】
(SiCセラミックス部材の作製工程)
SiCセラミックス部材の作製工程は、まず、SiC原料粉末またはSiC原料粉末に焼結助剤を添加した粉末に添加物を添加し、添加後の粉末を造粒した造粒粉を準備する。SiC原料粉末は、高純度であることが好ましく、その純度は、好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上である。また、SiC原料粉末の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上1.0μm以下、より好ましくは0.3μm以上0.8μm以下である。SiC原料粉末に必要に応じて所定量の焼結助剤を添加する。そして、SiC原料粉末または焼結助剤が添加されたSiC原料粉末と添加物の原料粉末をそれぞれ秤量する。これらを混合して、PVA系等のバインダ、分散剤、溶剤を添加してスラリーを調製し、スプレードライヤー等により造粒粉を造粒する。混合方法は、湿式、乾式の何れであってもよく、例えばボールミル、振動ミルなどの混合器を用いることができる。
【0080】
SiC原料粉末は、焼結助剤として、例えば、BCまたはCを用いることができる。また、AlNセラミックス部材とSiCセラミックス部材とのCTE差を低減するため、周期律表第4族、第5族、または第6族の金属の炭化物、窒化物、またはホウ化物を添加する。SiCセラミックス部材の性質を調整するために、添加物を添加してもよい。この場合、SiCセラミックス原料粉に内比で0.1wt%~1wt%のBC、0.1wt%~5wt%のCを添加してもよい。そして、所定量の周期律表第4族、第5族、または第6族の金属の炭化物、窒化物、またはホウ化物を添加し、PVB系等のバインダ、分散剤、溶剤を添加してスラリーを調製し、スプレードライヤー等により造粒粉を造粒する。
【0081】
次に、造粒粉からセラミックス成形体を作製する。SiCセラミックス部材のセラミックス成形体の作製方法は、AlNセラミックス部材と同様である。セラミックス成形体は、成形後、機械加工により成形体の形状が整えられてもよい。SiCセラミックス部材に媒体流路を形成する場合、セラミックス成形体の片面(他のセラミックス成形体との接合面)に、媒体流路の形状の溝が形成されてもよい。溝は、組み合わされる2つのセラミックス成形体に形成してもよい。機械加工は、脱脂後に行なってもよく、仮焼後に行なってもよい。
【0082】
次に、セラミックス脱脂体を作製する。SiCセラミックス部材のセラミックス脱脂体の作製方法は、AlNセラミックス部材と同様である。次に、セラミックス脱脂体を常圧焼成または一軸加圧焼成して、SiCセラミックス部材を作製する。一軸加圧焼成する場合、1つのセラミックス脱脂体または2つ以上の組み合わせたセラミックス脱脂体を、主面に垂直方向に一軸加圧焼成する。このときの焼成条件は、加圧する力は、1MPa以上であることが好ましい。また、焼成温度は、1700℃以上2200℃以下であることが好ましい。焼成時間は、1時間以上12時間以下であることが好ましく、1時間以上5時間以下であることがより好ましい。焼成雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。これにより、1または複数のセラミックス脱脂体が焼結してSiCセラミックス焼結体となる。
【0083】
図4(a)~(c)は、それぞれ本発明の実施形態に係るSiCセラミックス部材の製造工程の一段階の例を示す模式図である。SiCセラミックス部材に媒体流路を形成する場合、少なくともAlNセラミックス部材20と接合される側のセラミックス成形体、脱脂体、仮焼体、または焼結体(接合面側部材32)とそれと対向する側のセラミックス成形体、脱脂体、仮焼体、または焼結体(対向側部材34)とを組み合わせて一軸加圧焼成することが好ましい。仮焼体または焼結体を接合してSiCセラミックス部材を形成することで、媒体流路の空間の変形を抑制することができる。図4では、対向側部材34に焼成後媒体流路60となる溝62が形成されている。
【0084】
このとき、接合面側部材32は、AlNセラミックス部材とのCTE差が調整されている必要があるが、対向側部材34は、AlNセラミックス部材とのCTE差は調整されてもされなくてもよい。すなわち、接合面側部材32と対向側部材34は、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。また、3以上の部材でSiCセラミックス部材が構成される場合、CTE差に傾斜がつくように調整されてもよい。
【0085】
(接合工程)
接合工程は、作製したAlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材に応じて適切な接合方法を選択して、接合する。接合方法は、軟ロウによる接合、硬ロウによる接合、直接接合、および樹脂による接合である。
【0086】
軟ロウによる接合および硬ロウによる接合をする場合、AlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材の接合面は、表面粗さRaを1.6μm以下にすることが好ましい。そして、AlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材の接合面の間に軟ロウまたは硬ロウを配置し、軟ロウまたは硬ロウの融点またはガラス転移点まで加熱することで接合する。
【0087】
直接接合をする場合、AlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材の接合面は、表面粗さRaを0.2μm以下にすることが好ましく、0.1μm以下にすることがより好ましい。そして、AlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材の接合面を合わせて、接合面に垂直な方向に1MPa以上の力を加えつつ、1500℃以上に加熱することで接合する。
【0088】
樹脂による接合をする場合、AlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材の接合面は、表面粗さRaを1.6μm以下にすることが好ましい。そして、AlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材の接合面の間に樹脂系接着剤を配置し、樹脂系接着剤のガラス転移点まで加熱することで接合する。
【0089】
このような方法により、添加物の量によってSiCセラミックス部材のCTEの調節が容易でAlNセラミックス部材とSiCセラミックス部材のCTE差のバラツキが少なく、製造時や使用時のクラックや剥離等の不具合を低減した接合体を製造することができる。
【0090】
[実施例、比較例]
(実施例1)
(AlNセラミックス部材の作製)
AlN原料粉(純度99.9%)に焼結助剤として内比で5wt%のYを添加し、バインダ(PVA)、分散剤、溶剤を添加してスラリーを調製し、スプレードライヤーにより造粒粉を造粒した。次に、造粒粉を有底のカーボン型に充填し、カーボンパンチでプレス成形し、径φ60mm、厚さ20mmの成形体を作製した。そして、カーボンパンチをカーボン型に挿入した状態で、温度1800℃、圧力4MPa、N雰囲気で2時間一軸ホットプレス焼成を行った。焼成後加工して、径φ60mm、厚さ10mmのAlNセラミックス部材を4個作製した。また、同一造粒粉および同一条件で作製した10mm×5mm×5mmのAlNセラミックス部材の平均線膨張係数測定用の試験片を複数準備した。
【0091】
(SiCセラミックス部材の作製)
SiC原料粉(純度99.9%)に焼結助剤として外比で1wt%のBC、4wt%のカーボンを添加した。次に、焼結助剤が添加されたSiC原料粉に内比で10wt%のTiC、バインダ(PVA)、分散剤、溶剤を添加してスラリーを調製し、スプレードライヤーにより造粒粉を造粒した。次に、造粒粉を有底のカーボン型に充填し、カーボンパンチでプレス成形し、径φ60mm、厚さ20mmの成形体を作製した。そして、カーボンパンチをカーボン型に挿入した状態で、温度1800℃、圧力4MPa、N雰囲気で2時間一軸ホットプレス焼成を行った。焼成後加工して、径φ60mm、厚さ10mmのSiCセラミックス部材を4個作製した。また、同一造粒粉および同一条件で作製した10mm×5mm×5mmのSiCセラミックス部材の平均線膨張係数測定用の試験片を複数準備した。
【0092】
(接合)
4個のAlNセラミックス部材および4個のSiCセラミックス部材を用いて、それぞれに対し(1)樹脂接合、(2)軟ロウ接合、(3)硬ロウ接合、および(4)直接接合の4通りの接合を行い、接合方法の異なる4個の接合体を作製した。
【0093】
(1)樹脂接合は、AlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材の接合面の表面粗さRa(中心線平均粗さ)を1.6μm以下にした。そして、AlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材の接合面(両面)に樹脂を塗布してAlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材の間に介在させ、大気中250℃で接合を行った。接合状態に対応した温度は、エポキシ樹脂のガラス転移点として、120℃に設定した。
【0094】
(2)軟ロウ接合は、AlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材の接合面の表面粗さRa(中心線平均粗さ)を1.6μm以下にした。そして、AlNセラミックス部材およびSiCセラミック部材の接合面と同形状のInシート(厚さ1mm)をAlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材の間に介在させ、大気中250℃で接合を行った。接合状態に対応した温度は、Inの融点として157℃に設定した。
【0095】
(3)硬ロウ接合は、AlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材の接合面の表面粗さRaを1.6μm以下にした。そして、BAu-4ロウ材にTiを1wt%添加したロウ材をAlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材の間に介在させ、真空中1000℃で接合を行った。接合状態に対応した温度は、BAu-4ロウ材の液相線温度として950℃に設定した。
【0096】
(4)直接接合は、AlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材の接合面の表面粗さRaを0.2μm以下にした。そして、接合材を使用しないで、窒素雰囲気、温度1800℃、圧力4MPaの一軸ホットプレスで接合を行った。接合状態に対応した温度は、1500℃に設定した。
【0097】
(実施例2~8)
実施例1のSiCセラミックス部材の造粒粉を、焼結助剤が添加されたSiC原料粉に内比で15wt%~45wt%のTiCを添加したものに変更した以外、同じ工程、条件で実施例2~8の接合体およびSiCセラミックス部材の試験片を作製した。
【0098】
(実施例9~15)
実施例1のSiCセラミックス部材の造粒粉を、焼結助剤が添加されたSiC原料粉に内比で5wt%~35wt%のTiNを添加したものに変更した以外、同じ工程、条件で実施例9~15の接合体およびSiCセラミックス部材の試験片を作製した。
【0099】
(実施例16~24)
実施例1のSiCセラミックス部材の造粒粉を、焼結助剤が添加されたSiC原料粉に内比で10wt%~50wt%のTaBを添加したものに変更した以外、同じ工程、条件で実施例16~24の接合体およびSiCセラミックス部材の試験片を作製した。
【0100】
(実施例25~33)
実施例1のSiCセラミックス部材の造粒粉を、焼結助剤が添加されたSiC原料粉に内比で10wt%~50wt%のNbBを添加したものに変更した以外、同じ工程、条件で実施例25~33の接合体およびSiCセラミックス部材の試験片を作製した。
【0101】
(実施例34~43)
実施例1のSiCセラミックス部材の造粒粉を、焼結助剤が添加されたSiC原料粉に内比で10wt%~55wt%のTiBを添加したものに変更した以外、同じ工程、条件で実施例34~43の接合体およびSiCセラミックス部材の試験片を作製した。
【0102】
(実施例44~55)
実施例1のSiCセラミックス部材の造粒粉を、焼結助剤が添加されたSiC原料粉に内比で10wt%~65wt%のZrCを添加したものに変更した以外、同じ工程、条件で実施例44~55の接合体およびSiCセラミックス部材の試験片を作製した。
【0103】
(実施例56~61)
実施例1のSiCセラミックス部材の造粒粉を、焼結助剤が添加されたSiC原料粉に内比で30wt%~55wt%のMoCを添加したものに変更した以外、同じ工程、条件で実施例56~61の接合体およびSiCセラミックス部材の試験片を作製した。
【0104】
(比較例1)
実施例1のSiCセラミックス部材の造粒粉を、焼結助剤が添加されたSiC原料粉のみに変更した以外、同じ工程、条件で比較例1の接合体およびSiCセラミックス部材の試験片を作製した。
【0105】
(比較例2)
実施例1のSiCセラミックス部材の造粒粉を、焼結助剤が添加されたSiC原料粉に内比で5wt%のTiCを添加したものに変更した以外、同じ工程、条件で比較例2の接合体およびSiCセラミックス部材の試験片を作製した。
【0106】
(比較例3)
実施例1のSiCセラミックス部材の造粒粉を、焼結助剤が添加されたSiC原料粉に内比で25wt%のMoCを添加したものに変更した以外、同じ工程、条件で比較例3の接合体およびSiCセラミックス部材の試験片を作製した。
【0107】
(平均線膨張係数差の算出)
実施例および比較例の接合体のAlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材に対応する平均線膨張係数測定用の試験片を用いて、熱機械分析装置(Rigaku製 Thermo plus TMA8310)で所定の温度における長さおよび膨張曲線を求めた。これを用いて、各試験片の各温度の線膨張係数、各温度範囲の平均線膨張係数、および平均線膨張係数差を算出した。
【0108】
(破損の有無の確認)
実施例および比較例の樹脂接合の接合体は、-20℃から80℃に上昇させ、-20℃に下降させるサイクルを10回繰り返した。また、実施例および比較例の軟ロウ接合の接合体は、30℃から120℃に上昇させ、30℃に下降させるサイクルを10回繰り返した。実施例および比較例の硬ロウ接合の接合体は、150℃から600℃に上昇させ、150℃に下降させるサイクルを10回繰り返した。実施例および比較例の直接接合の接合体は、150℃から800℃に上昇させ、150℃に下降させるサイクルを10回繰り返した。熱サイクル試験後、各接合体に破損が見られるかを目視で確認した。
【0109】
(測定結果)
図5図8は、実施例および比較例の接合体のSiCセラミックス部材の添加物の種類および量、各範囲の平均線膨張係数差、接合状態を示す表である。接合状態の欄の×は、クラックや剥離が生じたものである。クラックや剥離が生じていないものについてはさらにAlNセラミックス部材の上面の反りを測定し、反りが0.05mm以下のものを◎、反りが0.05mmより大きいものを○とした。実施例1~61では、TiC、TiN、TaB、NbB、TiB、ZrC、MoCを添加物として用いることにより、接合方法を適宜選択することによりクラックや剥離のない接合体が得られた。
【0110】
実施例3~8、11~15、18~23、27~32、36~42、47~53、56~61は、20℃~120℃までのCTE差の絶対値が0.8ppm以下であり、樹脂による接合材を用いることによりクラックや剥離のない接合体が得られた。また、これらのうちCTE差の絶対値が0.4ppm以下の実施例は、反りの評価においても50μm以下であり反りが小さいことが確かめられた。
【0111】
実施例3~8、10~15、18~23、26~32、36~42、46~53、56~61は、20℃~157℃までのCTE差の絶対値が0.8ppm以下であり、軟ロウによる接合を用いることによりクラックや剥離のない接合体が得られた。また、CTE差の絶対値が0.4ppm以下の実施例は反りの評価においても50μm以下であり反りが小さいことが確かめられた。
【0112】
実施例2~8、10~15、17~24、26~33、35~43、46~61は、20℃~950℃までのCTE差の絶対値が0.8ppm以下であり、硬ロウによる接合を用いることによりクラックや剥離のない接合体が得られた。また、CTE差の絶対値が0.4ppm以下の実施例は反りの評価においても50μm以下であり反りが小さいことが確かめられた。
【0113】
実施例1~61は、20℃~1500℃までのCTE差の絶対値が0.8ppm以下であり、接合材を用いない直接接合(拡散接合)であってもクラックや剥離のない接合体が得られた。また、CTE差の絶対値が0.4ppm以下の実施例は反りの評価においても50μm以下であり反りが小さいことが確かめられた。特に、実施例3~7、11~14、18~22、27~32、37~41、47~53、59~61は、20℃~1500℃までのCTE差が0.3ppm以下であり、直接接合による接合が好適な接合体であることが確かめられた。
【0114】
図9は、実施例7のSiCセラミックス部材を構成する結晶相を示すXRDチャートである。△はSiCのピークを、○はTiCのピークを示す。この結果、原料に添加したTiCは焼結後もTiCとして存在し、Siとの化合物(例えば、チタンシリコンカーバイド等)を作っていないことが確認された。これは、SiCの焼結温度では、SiCおよびTiCがそれぞれ安定しているためと推定される。このように、添加物がSiと反応物を形成することなくSiC焼結体中に添加物の相がそのまま存在するため、添加物の種類および量を調節することで容易に線膨張係数を調節することができ、SiC焼結体の線膨張係数等の物性が狙いどおりになる。TiC以外の添加物でも、安定した化合物として添加することで、同様の効果が見込まれる。
【0115】
(実施例62)
(主面の長さの大きい接合体の作製)
実施例3の組成のAlNセラミックス部材およびSiCセラミックス部材を準備した。それぞれの寸法は、AlNセラミックス部材は直径φ300mm、厚さ10mm、SiCセラミックス部材は直径φ300mm、厚さ25mmとした。これらを直接接合(拡散接合)して、実施例62の接合体を作製した。作製した接合体に150℃→800℃→150℃の熱サイクルを10回負荷する熱サイクル試験を行い、クラックや剥離の有無を確認した。その結果、主面の長さの大きい場合でもクラックや剥離のない接合体が得られた。
【0116】
(実施例63)
(電極を埋設した接合体の作製)
実施例1と同様のAlNセラミックス部材の造粒粉を準備し、第1の成形体:直径φ300mm、厚さ15mmおよび第2の成形体:直径φ300mm、厚さ20mmの成形体を作製した。次に、カーボンパンチに第1の成形体を載置し、電極を第1の成形体上に載置した。電極はMoメッシュ(線径0.1mm、メッシュサイズ#50、平織)を所定のパターンに裁断したものとした。次に、電極の上に第2の成形体を載置して積層体を作製した。そして、カーボンパンチをカーボン型に挿入した状態で、温度1800℃、圧力4MPa、N雰囲気で4時間一軸ホットプレス焼成を行った。焼成後、外形加工を行い、電極が埋設されたAlNセラミックス部材を作製した。
【0117】
これとは別に、実施例5の組成のSiCセラミックス部材を準備した。SiCセラミックス部材の寸法は、直径φ300mm、厚さ30mmとした。次に、電極が埋設されたAlNセラミックス部材とSiCセラミックス部材を拡散接合した。そして、電極と外部電源とを接続するための端子穴の穿設、端子の接続、および必要な絶縁構造の作製を行った。このようにして、実施例63の接合体を作製した。
【0118】
作製された電極が埋設された接合体は、700℃の環境で使用することができ、電極に外部電源より通電することにより基板載置面を600℃に加熱することができた。
【0119】
(実施例64)
(媒体流路を有する接合体の作製)
実施例1の組成のAlNセラミックス部材を準備した。寸法は、直径φ300mm、厚さ10mmとした。これとは別に、SiCセラミックス部材の前駆体として、実施例5の組成の焼結体を準備した。焼結体の寸法は、直径φ300mm、厚さ10mmおよび直径φ300mm、厚さ15mmとした。次に、直径φ300mm、厚さ15mmの焼結体の上面に深さ10mmの媒体流路を形成した。次に、媒体流路を形成した前駆体の上面にもう一方の前駆体を配置して、2つの前駆体を拡散接合して、媒体流路を有するSiCセラミックス部材を作製した。これらを拡散接合して、実施例64の接合体を作製した。
【0120】
作製された媒体流路を有する接合体は、媒体流路に連通する継手から0.5MPaの水圧を負荷した。その結果、接合面からの水漏れのないことが確認できた。
【0121】
以上により、本発明の接合体は、添加物の量によってSiCセラミックス部材のCTEの調節が容易でAlNセラミックス部材とSiCセラミックス部材のCTE差のバラツキが少なく、製造時や使用時のクラックや剥離等の不具合を低減した接合体であることが確かめられた。
【0122】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形および均等物に及ぶことはいうまでもない。また、各図面に示された構成要素の構造、形状、数、位置、大きさ等は説明の便宜上のものであり、適宜変更しうる。
【符号の説明】
【0123】
10 接合体
20 AlNセラミックス部材
30 SiCセラミックス部材
32 接合面側部材
34 対向側部材
40 接合層
50 電極
60 媒体流路
62 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9