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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084305
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】鉗子および使い捨て医療用品セット
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/28 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
A61B17/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198498
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅也
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG05
4C160GG08
(57)【要約】
【課題】鉗子の構造を簡素化しつつ鉗子の意図しない変形を抑制する。
【解決手段】鉗子1の第1柄部31は、第1柄前部311と、第1柄後部312とを備える。第1柄前部311は、平面視において軸部5から前後方向に平行に延びる中心線10を中心として、軸部5から後方に向かって直線的に延びる。第1柄後部312は、第1柄前部311の後端から、第2アーム4から離れる方向へと延びて第1指孔部32へと至る。第2柄部41は、第2柄前部411と、第2柄後部412とを備える。第2柄前部411は、第1柄前部311の上側にて第1柄前部311と上下方向に重複するとともに中心線10を中心として軸部5から後方に向かって直線的に延びる。第2柄後部412は、第2柄前部411の後端から、第1アーム3から離れる方向へと延びて第2指孔部42へと至る。これにより、鉗子1の構造を簡素化しつつ鉗子1の意図しない変形を抑制することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉗子であって、
第1アームと、
前記第1アームと交差する第2アームと、
前記第1アームと前記第2アームとの交差位置にて前記第1アームと前記第2アームとを回転自在に連結する軸部と、
を備え、
前記第1アームは、
前記軸部から後方に延びる第1柄部と、
前記第1柄部の後端に接続される第1指孔部と、
前記軸部から前方に延びる第1挟持部と、
を備え、
前記第2アームは、
前記軸部から後方に延びる第2柄部と、
前記第2柄部の後端に接続される第2指孔部と、
前記軸部から前方に延びる第2挟持部と、
を備え、
前記第1柄部は、
平面視において前記軸部から前後方向に平行に延びる中心線を中心として前記軸部から後方に向かって直線的に延びる第1柄前部と、
前記第1柄前部の後端から前記第2アームから離れる方向へと延びて前記第1指孔部へと至る第1柄後部と、
を備え、
前記第2柄部は、
前記第1柄前部の上側にて前記第1柄前部と上下方向に重複するとともに前記中心線を中心として前記軸部から後方に向かって直線的に延びる第2柄前部と、
前記第2柄前部の後端から前記第1アームから離れる方向へと延びて前記第2指孔部へと至る第2柄後部と、
を備えることを特徴とする鉗子。
【請求項2】
請求項1に記載の鉗子であって、
前記第1アームと前記第2アームとが閉じられた状態において、前記第1柄前部および前記第2柄前部の平面視における左右方向の幅の最大値は、前記第1アームと前記第2アームとの交差位置での前記第1アームおよび前記第2アームの平面視における左右方向の幅の最大値以下であることを特徴とする鉗子。
【請求項3】
請求項1に記載の鉗子であって、
前記第1アームは、前記第1柄後部から前記第2アームに向かって左右方向に突出する第1係止部をさらに備え、
前記第2アームは、前記第2柄後部から前記第1アームに向かって左右方向に突出する第2係止部をさらに備え、
前記第1係止部と前記第2係止部とが互いの端部のみで係合し、前記第1挟持部の前端に接続される第1先端部と前記第2挟持部の前端に接続される第2先端部とが左右方向に離間している状態において、前記第1柄前部および前記第2柄前部の平面視における左右方向の幅の最大値は、前記第1アームと前記第2アームとの交差位置での前記第1アームおよび前記第2アームの平面視における左右方向の幅の最大値以下であることを特徴とする鉗子。
【請求項4】
請求項1に記載の鉗子であって、
前記第1柄前部の上面および前記第2柄前部の下面のうち少なくとも一方の面は、左右方向の前記第1柄後部側のエッジが前記第2柄後部側のエッジよりも上側に位置する傾斜面であることを特徴とする鉗子。
【請求項5】
請求項1に記載の鉗子であって、
前記第1アームは、前記第1柄後部から前記第2アームに向かって左右方向に突出する第1係止部をさらに備え、
前記第2アームは、前記第2柄後部から前記第1アームに向かって左右方向に突出する第2係止部をさらに備え、
前記第2係止部は、前記第1係止部の下側にて前記第1係止部と上下方向に重なり、左右方向に関して前記第1係止部に係止されることを特徴とする鉗子。
【請求項6】
請求項1に記載の鉗子であって、
前記第1アームは、前記第1柄後部から前記第2アームに向かって左右方向に突出する第1係止部をさらに備え、
前記第2アームは、前記第2柄後部から前記第1アームに向かって左右方向に突出する第2係止部をさらに備え、
前記第2係止部は、前記第1係止部と前後方向に重なり、左右方向に関して前記第1係止部に係止されることを特徴とする鉗子。
【請求項7】
請求項1に記載の鉗子であって、
前記第1アームと前記第2アームとが閉じられた状態において、前記第1柄部と前記第2柄部との重複部の前後方向の長さは、前記第1柄部の前後方向の長さの20%以上であることを特徴とする鉗子。
【請求項8】
鉗子であって、
第1アームと、
前記第1アームと交差する第2アームと、
前記第1アームと前記第2アームとの交差位置にて前記第1アームと前記第2アームとを回転自在に連結する軸部と、
を備え、
前記第1アームは、
前記軸部から後方に延びる第1柄部と、
前記第1柄部の後端に接続される第1指孔部と、
前記軸部から前方に延びる第1挟持部と、
を備え、
前記第2アームは、
前記軸部から後方に延びる第2柄部と、
前記第2柄部の後端に接続される第2指孔部と、
前記軸部から前方に延びる第2挟持部と、
前記第2柄部から前記第1アームに向かって左右方向に突出するとともに前記第1柄部と上下方向に重複する突出部と、
を備えることを特徴とする鉗子。
【請求項9】
請求項8に記載の鉗子であって、
前記突出部は、前記第1柄部の上側に位置し、
前記第1アームは、前記第1柄部から前記第2アームに向かって左右方向に突出する第1係止部をさらに備え、
前記第2アームは、前記突出部から後方に離間した位置にて前記第2柄部から前記第1アームに向かって左右方向に突出する第2係止部をさらに備え、
前記第2係止部は、前記第1係止部の下側にて前記第1係止部と上下方向に重なり、左右方向に関して前記第1係止部に係止されることを特徴とする鉗子。
【請求項10】
請求項8に記載の鉗子であって、
前記第1アームは、前記第1柄部から前記第2アームに向かって左右方向に突出する第1係止部をさらに備え、
前記第2アームは、前記突出部から後方に離間した位置にて前記第2柄部から前記第1アームに向かって左右方向に突出する第2係止部をさらに備え、
前記第2係止部は、前記第1係止部と前後方向に重なり、左右方向に関して前記第1係止部に係止されることを特徴とする鉗子。
【請求項11】
請求項8に記載の鉗子であって、
前記軸部の外周を囲む部位における前記第1アームおよび前記第2アームの上下方向の厚さは、前記突出部が設けられる前後方向の位置における前記第1柄部および前記第2柄部のそれぞれの上下方向の厚さよりも厚いことを特徴とする鉗子。
【請求項12】
使い捨て医療用品セットであって、
請求項1ないし11のいずれか1つに記載の鉗子を含むことを特徴とする使い捨て医療用品セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉗子および使い捨て医療用品セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外科手術等の際に、組織の止血や組織把持、切開部およびその周囲の消毒等に、様々な種類の鉗子が使用されている。例えば、特許文献1に記載された鉗子は、枢軸を介して互いに連結され、その枢軸回りに揺動自在な第1のアームと第2のアームとを有する。当該鉗子の各アームには、枢軸から一方側に延びる圧坐部と、枢軸から他方側に延びる柄部とが設けられる。当該柄部の後端には、圧坐部を開閉操作するための指環部が設けられている。
【0003】
上記鉗子は、各アームが枢軸の軸方向(すなわち、上下方向)に捻れることを防止するために、第1のアームおよび第2のアームの柄部側面から突出する一対の第1摺接部および一対の第2摺接部を備えている。一対の第1摺接部は、柄部の長手方向中央部に配置され、柄部が閉じられる際に上下に重なる。一対の第2摺接部は、柄部と指環部との接続部に配置され、柄部が閉じられる際に、一対の第1摺接部とは上下逆向きに上下に重なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-200838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の鉗子では、2本のアームの柄部からそれぞれ複数の摺接部が突出しており、鉗子の構造が複雑であるため、鉗子の製造も複雑化し、鉗子の製造コストも増大する。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、鉗子の構造を簡素化しつつ鉗子の意図しない変形を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様1は、鉗子であって、第1アームと、前記第1アームと交差する第2アームと、前記第1アームと前記第2アームとの交差位置にて前記第1アームと前記第2アームとを回転自在に連結する軸部と、を備える。前記第1アームは、前記軸部から後方に延びる第1柄部と、前記第1柄部の後端に接続される第1指孔部と、前記軸部から前方に延びる第1挟持部と、を備える。前記第2アームは、前記軸部から後方に延びる第2柄部と、前記第2柄部の後端に接続される第2指孔部と、前記軸部から前方に延びる第2挟持部と、を備える。前記第1柄部は、平面視において前記軸部から前後方向に平行に延びる中心線を中心として前記軸部から後方に向かって直線的に延びる第1柄前部と、前記第1柄前部の後端から前記第2アームから離れる方向へと延びて前記第1指孔部へと至る第1柄後部と、を備える。前記第2柄部は、前記第1柄前部の上側にて前記第1柄前部と上下方向に重複するとともに前記中心線を中心として前記軸部から後方に向かって直線的に延びる第2柄前部と、前記第2柄前部の後端から前記第1アームから離れる方向へと延びて前記第2指孔部へと至る第2柄後部と、を備える。
【0008】
本発明の態様2は、態様1の鉗子であって、前記第1アームと前記第2アームとが閉じられた状態において、前記第1柄前部および前記第2柄前部の平面視における左右方向の幅の最大値は、前記第1アームと前記第2アームとの交差位置での前記第1アームおよび前記第2アームの平面視における左右方向の幅の最大値以下である。
【0009】
本発明の態様3は、態様1(態様1または2、であってもよい。)の鉗子であって、前記第1アームは、前記第1柄後部から前記第2アームに向かって左右方向に突出する第1係止部をさらに備える。前記第2アームは、前記第2柄後部から前記第1アームに向かって左右方向に突出する第2係止部をさらに備える。前記第1係止部と前記第2係止部とが互いの端部のみで係合し、前記第1挟持部の前端に接続される第1先端部と前記第2挟持部の前端に接続される第2先端部とが左右方向に離間している状態において、前記第1柄前部および前記第2柄前部の平面視における左右方向の幅の最大値は、前記第1アームと前記第2アームとの交差位置での前記第1アームおよび前記第2アームの平面視における左右方向の幅の最大値以下である。
【0010】
本発明の態様4は、態様1(態様1ないし3のいずれか1つ、であってもよい。)の鉗子であって、前記第1柄前部の上面および前記第2柄前部の下面のうち少なくとも一方の面は、左右方向の前記第1柄後部側のエッジが前記第2柄後部側のエッジよりも上側に位置する傾斜面である。
【0011】
本発明の態様5は、態様1(態様1ないし4のいずれか1つ、であってもよい。)の鉗子であって、前記第1アームは、前記第1柄後部から前記第2アームに向かって左右方向に突出する第1係止部をさらに備える。前記第2アームは、前記第2柄後部から前記第1アームに向かって左右方向に突出する第2係止部をさらに備える。前記第2係止部は、前記第1係止部の下側にて前記第1係止部と上下方向に重なり、左右方向に関して前記第1係止部に係止される。
【0012】
本発明の態様6は、態様1(態様1ないし4のいずれか1つ、であってもよい。)の鉗子であって、前記第1アームは、前記第1柄後部から前記第2アームに向かって左右方向に突出する第1係止部をさらに備える。前記第2アームは、前記第2柄後部から前記第1アームに向かって左右方向に突出する第2係止部をさらに備える。前記第2係止部は、前記第1係止部と前後方向に重なり、左右方向に関して前記第1係止部に係止される。
【0013】
本発明の態様7は、態様1(態様1ないし6のいずれか1つ、であってもよい。)の鉗子であって、前記第1アームと前記第2アームとが閉じられた状態において、前記第1柄部と前記第2柄部との重複部の前後方向の長さは、前記第1柄部の前後方向の長さの20%以上である。
【0014】
本発明の態様8は、鉗子であって、第1アームと、前記第1アームと交差する第2アームと、前記第1アームと前記第2アームとの交差位置にて前記第1アームと前記第2アームとを回転自在に連結する軸部と、を備える。前記第1アームは、前記軸部から後方に延びる第1柄部と、前記第1柄部の後端に接続される第1指孔部と、前記軸部から前方に延びる第1挟持部と、を備える。前記第2アームは、前記軸部から後方に延びる第2柄部と、前記第2柄部の後端に接続される第2指孔部と、前記軸部から前方に延びる第2挟持部と、前記第2柄部から前記第1アームに向かって左右方向に突出するとともに前記第1柄部と上下方向に重複する突出部と、を備える。
【0015】
本発明の態様9は、態様8の鉗子であって、前記突出部は、前記第1柄部の上側に位置する。前記第1アームは、前記第1柄部から前記第2アームに向かって左右方向に突出する第1係止部をさらに備える。前記第2アームは、前記突出部から後方に離間した位置にて前記第2柄部から前記第1アームに向かって左右方向に突出する第2係止部をさらに備える。前記第2係止部は、前記第1係止部の下側にて前記第1係止部と上下方向に重なり、左右方向に関して前記第1係止部に係止される。
【0016】
本発明の態様10は、態様8の鉗子であって、前記第1アームは、前記第1柄部から前記第2アームに向かって左右方向に突出する第1係止部をさらに備える。前記第2アームは、前記突出部から後方に離間した位置にて前記第2柄部から前記第1アームに向かって左右方向に突出する第2係止部をさらに備える。前記第2係止部は、前記第1係止部と前後方向に重なり、左右方向に関して前記第1係止部に係止される。
【0017】
本発明の態様11は、態様8(態様8ないし10のいずれか1つ、であってもよい。)の鉗子であって、前記軸部の外周を囲む部位における前記第1アームおよび前記第2アームの上下方向の厚さは、前記突出部が設けられる前後方向の位置における前記第1柄部および前記第2柄部のそれぞれの上下方向の厚さよりも厚い。
【0018】
本発明の態様12は、使い捨て医療用品セットであって、態様1ないし11のいずれか1つの鉗子を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、鉗子の構造を簡素化しつつ鉗子の意図しない変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施の形態に係る鉗子の平面図である。
図2】鉗子の側面図である。
図3】鉗子の断面図である。
図4】鉗子の平面図である。
図5】使い捨て医療用品セットの平面図である。
図6】鉗子の平面図である。
図7】鉗子の平面図である。
図8】第2の実施の形態に係る鉗子の平面図である。
図9】鉗子の側面図である。
図10】鉗子の断面図である。
図11】鉗子の平面図である。
図12】使い捨て医療用品セットの平面図である。
図13】鉗子の平面図である。
図14】鉗子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る医療用の鉗子1を示す平面図である。図2は、鉗子1の左側面図である。図3は、鉗子1を図1中のIII-IIIの位置にて切断した断面を拡大して示す断面図である。図4は、消毒用の綿球9を挟持した状態の鉗子1を示す平面図である。図5は、使い捨て医療用品セット6を示す平面図である。
【0022】
鉗子1は、例えば、外科手術等の際に術野の消毒等に使用される消毒用鉗子である。鉗子1は、主に樹脂により形成された使い捨て鉗子である。図5に示すように、鉗子1は、医療処置の内容に合わせて用意された複数の使い捨ての医療用品のセットである使い捨て医療用品セット6に含まれている。使い捨て医療用品セット6では、鉗子1および他の医療用品(例えば、ドレープ等)が、平面視において略矩形状のトレイ61に収容された状態で、図示省略の包装部材により梱包されている。
【0023】
以下の説明では、鉗子1の長手方向(すなわち、図1中の上下方向)を「前後方向」とも呼ぶ。また、鉗子1のうち医療者の手元側(すなわち、図1中の下側)を「後側」とも呼び、医療者の手元から離れている側(すなわち、図1中の上側)を「前側」とも呼ぶ。さらに、図1中の左右方向を、単に「左右方向」とも呼ぶ。また、図1中の紙面に垂直な方向を「上下方向」とも呼ぶ。
【0024】
鉗子1は、第1アーム3と、第2アーム4と、軸部5とを備える。第1アーム3および第2アーム4は、鉗子1の長手方向に延びる略棒状の樹脂製の部材である。第1アーム3および第2アーム4は、例えば、射出成形により形成される。第2アーム4は、第1アーム3と交差する。軸部5は、第1アーム3と第2アーム4との交差位置にて、第1アーム3と第2アーム4とを回転自在に連結する。軸部5は、例えば、金属製のリベットである。軸部5が延びる方向である軸方向は、上述の上下方向と略同じである。図1に示す例では、鉗子1の平面視における形状は、軸部5の中心から前後方向に平行に延びる仮想的な直線である中心線10に対して略左右対称である。
【0025】
第1アーム3は、第1柄部31と、第1指孔部32と、第1挟持部33と、第1先端部34と、第1係止部35とを備える。第1柄部31、第1指孔部32、第1挟持部33、第1先端部34および第1係止部35は、好ましくは一繋がりの樹脂製の部材である。鉗子1の長手方向の全長(すなわち、図1における第1指孔部32の後端から、第1先端部34の前端に至る前後方向の長さ)は、例えば15cm~26cmであり、好ましくは17cm~24cmであり、より好ましくは18cm~23cmである。
【0026】
第1柄部31は、軸部5から後方(すなわち、鉗子1を使用する医療者の手元側)に延びる略棒状の部位である。第1指孔部32は、第1柄部31の後端に接続される環状の部位である。第1指孔部32には、医療者の指が上側から挿入される挿入孔321が設けられる。第1挟持部33は、軸部5から前方(すなわち、医療者の手元から離れる方向)に延びる略棒状の部位である。第1先端部34は、第1挟持部33の前端に接続される部位である。図2に示す例では、第1先端部34は、左右方向に延びる中心軸を中心とする略楕円環状の部位である。第1先端部34は、第2アーム4の後述する第2先端部44と共に、消毒用の綿球9等に直接的に接触して挟持する。
【0027】
図1では、第1アーム3と第2アーム4とが閉じられた状態(以下、「通常閉状態」とも呼ぶ。)の鉗子1を示す。図1に示す状態では、第1アーム3の第1指孔部32が、第2アーム4の後述する第2指孔部42と左右方向において近づいており、第1アーム3の第1先端部34が、第2アーム4の第2先端部44と近づいている。このとき、第1先端部34と第2先端部44とは、互いに接触していてもよく、僅かな隙間を挟んで互いに離間していてもよい。いずれの場合であっても、通常閉状態では、第1先端部34と第2先端部44との間には、互いを左右方向に押圧する力は実質的に作用していない。
【0028】
第1柄部31は、第1柄前部311と、第1柄後部312とを備える。第1柄前部311は、軸部5から後方に向かって略直線的に延びる略棒状の部位である。図1に示す状態では、第1柄前部311は、平面視において上述の中心線10を略中心として、前後方向に略平行に延びる。図3に示す例では、第1柄前部311の前後方向に垂直な断面の形状は略長方形である。すなわち、図3に例示する第1柄前部311は、前後方向に略平行に延びる略四角柱状の部位である。図1に示す例では、第1柄前部311の前後方向に垂直な断面の形状は、軸部5近傍を除き、第1柄前部311の長手方向(すなわち、前後方向)の各位置において略同じである。図3に示す例では、第1柄前部311の上面315は略平面状であり、右側のエッジ(すなわち、第1柄後部312側のエッジ)が左側のエッジ(すなわち、第2柄後部412側のエッジ)よりも上側に位置する傾斜面である。なお、第1柄前部311の前後方向に垂直な断面の形状は、必ずしも長手方向の各位置において略同じである必要はなく、長手方向に沿って変化してもよい。
【0029】
第1柄後部312は、第1柄前部311の後端(すなわち、軸部5とは反対側の端部)にて第1柄前部311に連続し、当該後端から、第2アーム4から左右方向に離れる方向へと延びて第1指孔部32へと至る。すなわち、第1指孔部32は、第1柄後部312の後端に接続される。図1に示す例では、第1柄後部312は、第1柄前部311の後端から右斜め後方へと延び、第1柄前部311の後端から離れた位置にて屈曲し、前後方向に略平行に後方へと延びて第1指孔部32へと至る。
【0030】
第1係止部35は、第1柄後部312の左側面(すなわち、第2アーム4と左右方向にて対向する側面)から第2アーム4の後述する第2柄後部412に向かって左方に突出する。第1係止部35は、第1柄後部312と第1指孔部32との接続部近傍に設けられる。図1に示す例では、第1係止部35は、左右方向に略平行な略直線状に延びる帯板状の部位である。第1係止部35の下面には、左右方向に交互に配列された凹部および凸部が設けられている。例えば、第1係止部35の下面は、互いに対応する相補的な凹凸形状を有する。本実施の形態では、第1係止部35の下面は鋸歯状である。
【0031】
第2アーム4は、第2柄部41と、第2指孔部42と、第2挟持部43と、第2先端部44と、第2係止部45とを備える。第2柄部41、第2指孔部42、第2挟持部43、第2先端部44および第2係止部45は、好ましくは一繋がりの樹脂製の部材である。
【0032】
第2柄部41は、軸部5から後方(すなわち、鉗子1を使用する医療者の手元側)に延びる略棒状の部位である。第2柄部41の前後方向の長さは、第1柄部31の前後方向の長さと略同じである。第2指孔部42は、第2柄部41の後端に接続される環状の部位である。第2指孔部42には、医療者の指が上側から挿入される挿入孔421が設けられる。第2指孔部42は、第1指孔部32と略同形状である。第2指孔部42の前後方向および上下方向の位置はそれぞれ、第1指孔部32の前後方向および上下方向の位置と略同じである。
【0033】
第2挟持部43は、軸部5から前方(すなわち、医療者の手元から離れる方向)に延びる略棒状の部位である。第2先端部44は、第2挟持部43の前端に接続される部位である。第2先端部44は、左右方向に延びる中心軸を中心とする略楕円環状の部位であり、第1先端部34と略同形状である。第2先端部44の前後方向および上下方向の位置はそれぞれ、第1先端部34の前後方向および上下方向の位置と略同じである。
【0034】
第2柄部41は、第2柄前部411と、第2柄後部412とを備える。第2柄前部411は、軸部5から後方に向かって略直線的に延びる略棒状の部位である。図1に示す状態では、第2柄前部411は、平面視において上述の中心線10を略中心として、前後方向に略平行に延びる。第2柄前部411は、第1柄前部311の上側にて第1柄前部311と上下方向に重複する。第2柄前部411の平面視における形状は、第1柄前部311の平面視における形状と略同じである。
【0035】
図1に示すように、第1アーム3と第2アーム4とが閉じられた状態では、平面視において第2柄前部411と第1柄前部311とは全体的に重なっており、第1柄前部311の全体が第2柄前部411により覆われている。また、図1に示す状態では、第1柄後部312の前端部と第2柄後部412の前端部とが部分的に重なっている。図1に示す状態において、第1柄部31と第2柄部41との平面視における重複部の前後方向の長さL1は、第1柄部31の前後方向の長さL2(第2柄部41の前後方向の長さでもある。)の20%以上であることが好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。長さL1は、例えば、長さL2の70%以下である。なお、図1に示すように、長さL1は、軸部5の中心から上記重複部の後端までの前後方向の長さである。また、長さL2は、軸部5の中心から第1柄部31の後端(すなわち、第1指孔部32の前端)までの前後方向の長さである。
【0036】
図4に示すように、左右方向に離間した第1先端部34と第2先端部44との間に綿球9を挟持した状態の鉗子1では、平面視において、第1柄前部311と第2柄前部411とが部分的に重なっており、第1柄後部312の前端部と第2柄後部412の前端部とが部分的に重なっている。図4に示す例では、第1柄前部311と第2柄前部411とは、互いの略全長に亘って重なっている。綿球9を挟持した状態において、第1柄部31と第2柄部41との平面視における重複部の前後方向の長さL3は、上述の長さL1よりも短くなる。長さL3は、上述の長さL2の10%以上であることが好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。長さL3は、例えば、長さL2の60%以下である。
【0037】
以下の説明では、図1に示すように、第1アーム3と第2アーム4とが閉じられた状態において、第1柄前部311および第2柄前部411の平面視における左右方向の幅の最大値を、「最大幅B1」とも呼ぶ。第1柄前部311および第2柄前部411の平面視における左右方向の幅とは、前後方向の一の位置において、第1柄前部311および第2柄前部411のうち最も左側に位置する左縁と最も右側に位置する右縁との間の左右方向の距離である。上述のように、図1に示す状態では、第2柄前部411と第1柄前部311とは全体的に重なっており、第2柄前部411の左右方向の幅は長さ方向の各位置において同じであるため、最大幅B1は、第2柄前部411の長手方向の任意の位置における左右方向の幅である。最大幅B1は、第1アーム3と第2アーム4との交差位置での第1アーム3および第2アーム4の平面視における左右方向の幅の最大値(以下、「最大幅B2」とも呼ぶ。)以下である。最大幅B2は、例えば、前後方向における軸部5の中心位置での第1アーム3および第2アーム4の平面視における左右方向の幅の最大値である。図1に示す例では、最大幅B1は、最大幅B2よりも小さい。
【0038】
図4に示すように、綿球9を挟持した状態において、第1柄前部311および第2柄前部411の平面視における左右方向の幅の最大値(以下、「最大幅B3」とも呼ぶ。)も、上述の最大幅B2以下であり、最大幅B2未満であることが好ましい。これにより、患者の比較的小さい切開創(例えば、腹腔鏡手術時の開口等)であっても、鉗子1を深くまで(すなわち、第1柄前部311および第2柄前部411まで)挿入することができる。
【0039】
図3に示す例では、第2柄前部411の前後方向に垂直な断面の形状は略長方形である。すなわち、図3に例示する第2柄前部411は、前後方向に略平行に延びる略四角柱状の部位である。図1に示す例では、第2柄前部411の前後方向に垂直な断面の形状は、軸部5近傍を除き、第2柄前部411の長手方向(すなわち、前後方向)の各位置において略同じである。なお、第2柄前部411の当該断面の形状は、必ずしも長手方向の各位置において略同じである必要はなく、長手方向に沿って変化してもよい。
【0040】
図3に示す例では、第2柄前部411の下面416は略平面状であり、右側のエッジ(すなわち、第1柄後部312側のエッジ)が左側のエッジ(すなわち、第2柄後部412側のエッジ)よりも上側に位置する傾斜面である。第2柄前部411の下面416は、第1柄前部311の上面315と略平行であり、第1柄前部311の上面315に面接触している。
【0041】
第1アーム3と第2アーム4とが左右方向に開かれて第1柄前部311と第2柄前部411とが左右方向に離間している状態では、例えば、第2柄前部411の下面416の左側のエッジは、第1柄前部311の上面315の左側のエッジよりも下側に位置する。また、第2柄前部411の下面416の右側のエッジは、第1柄前部311の上面315の右側のエッジよりも下側に位置する。このため、第1アーム3と第2アーム4とが閉じられて第1柄前部311と第2柄前部411とが上下方向に重なる際には、第1柄前部311の上面315と第2柄前部411の下面416とが擦れ合いながら接触し(すなわち、摺接し)、互いに上下方向に押し合う。その結果、第1アーム3および第2アーム4が左右に開く方向(すなわち、第1柄前部311と第2柄前部411との重複部分が小さくなる方向)に移動することが抑制される。
【0042】
なお、鉗子1では、第1柄前部311の上面315および第2柄前部411の下面416のうち、いずれか一方のみが上述の傾斜面とされ、他方は上下方向に略垂直な水平面とされてもよい。この場合も、第1柄前部311の上面315と第2柄前部411の下面416とが摺接することにより、第1アーム3および第2アーム4が左右に開く方向に移動することが抑制される。
【0043】
軸部5の外周を囲む部位における第1アーム3および第2アーム4の上下方向の厚さD3は、第1柄前部311および第2柄前部411の上下方向のそれぞれの厚さD1,D2よりも厚い。これにより、第1アーム3および第2アーム4の剛性が、軸部5の近傍において他の部位よりも大きくなる。なお、第1アーム3および第2アーム4の上下方向の厚さとは、第1アーム3および第2アーム4のうち最も上側に位置する上縁と最も下側に位置する下縁との間の上下方向の距離である。
【0044】
第2柄後部412は、第2柄前部411の後端(すなわち、軸部5とは反対側の端部)にて第2柄前部411に連続し、当該後端から、第1アーム3から左右方向に離れる方向へと延びて第2指孔部42へと至る。すなわち、第2指孔部42は、第2柄後部412の後端に接続される。図1に示す例では、第2柄後部412は、第2柄前部411の後端から左斜め後方へと延び、第2柄前部411の後端から離れた位置にて屈曲し、前後方向に略平行に後方へと延びて第2指孔部42へと至る。なお、第2柄後部412は、図1に示す状態において、前端部を除いて第1柄後部312とは重複しない。
【0045】
第2係止部45は、第2柄後部412の右側面(すなわち、第1アーム3と左右方向にて対向する側面)から第1アーム3の第1柄後部312に向かって右方に突出する。第2係止部45は、第2柄後部412と第2指孔部42との接続部近傍に設けられる。図1に示す例では、第2係止部45は、左右方向に略平行な略直線状に延びる帯板状の部位である。第2係止部45の上面には、左右方向に交互に配列された凹部および凸部が設けられている。例えば、第2係止部45の上面は、互いに対応する相補的な凹凸形状を有する。本実施の形態では、第2係止部45の上面は鋸歯状である。第2係止部45の前後方向の位置は、第1係止部35の前後方向の位置と略同じである。第2係止部45の上下方向の位置は、第1係止部35の上下方向の位置よりも下側である。
【0046】
図1に示すように、第1アーム3と第2アーム4とが閉じられた状態では、第2係止部45は、第1係止部35の下側にて第1係止部35と上下方向に重なり、左右方向に関して第1係止部35に係止される。また、図4に示すように、綿球9を挟持した状態においても、第2係止部45は、第1係止部35の下側にて第1係止部35と上下方向に重なり、左右方向に関して第1係止部35に係止される。具体的には、第1係止部35の下面に設けられた鋸歯状の凹凸部と、第2係止部45の上面に設けられた鋸歯状の凹凸部とが係合することにより、第1アーム3および第2アーム4が左右に開く方向(すなわち、第1柄後部312と第2柄後部412とが左右方向に互いに離間する方向)に移動することが制限される。
【0047】
図1に示す状態では、第1係止部35および第2係止部45により、第1アーム3と第2アーム4とを互いに係止して第1柄後部312と第2柄後部412との間の左右方向の距離を固定するラチェット構造が構成される。図4に示す状態でも、第1係止部35および第2係止部45により同様のラチェット構造が構成される。図4に示す例では、第1係止部35の最も先端側(すなわち、第2柄後部412側の端)に位置する1組の凹凸部と、第2係止部45の最も先端側(すなわち、第1柄後部312側の端)に位置する1組の凹凸部とが係合しており、第1係止部35および第2係止部45の他の凹凸部は係合していない。換言すれば、第1係止部35と第2係止部45とは、互いの端部のみで係合している。したがって、図4に例示する状態よりも鉗子1を開いた状態(すなわち、第1先端部34と第2先端部44とが図4よりも左右方向に離れた状態)では、第1係止部35と第2係止部45とは係合しない。なお、図1および図4に示す例では、第1柄前部311および第2柄前部411には、側方に突出する突出部は設けられない。
【0048】
医療者が鉗子1を使用する際には、医療者の右手の中指および親指が、第1指孔部32の挿入孔321および第2指孔部42の挿入孔421に、それぞれ上側から挿入される。このとき、鉗子1は、第1アーム3と第2アーム4とが開かれた状態であり、第1係止部35と第2係止部45とは左右方向に離間している。第1指孔部32および第2指孔部42に挿入された指は、手の平側へと曲げられて第1指孔部32および第2指孔部42を把持する。
【0049】
医療者は、第1指孔部32および第2指孔部42を把持すると、第1アーム3と第2アーム4とを閉じるように、第1指孔部32と第2指孔部42とを左右方向に互いに近づける。これにより、第1挟持部33および第2挟持部43が左右方向において近づき、図4に示すように、第1先端部34と第2先端部44とにより、消毒用の綿球9等が挟持される。また、第1指孔部32と第2指孔部42とが互いに近づけられると、第1係止部35と第2係止部45とが左右方向において近づいて上下方向に重なり、左右方向に関して互いに係止される。さらに、第1柄前部311と第2柄前部411とも左右方向において近づいて上下方向に重なる。上述のように、第1係止部35は第2係止部45の上側に位置し、第1柄前部311は第2柄前部411の下側に位置する。
【0050】
医療者が鉗子1を利用して術野の消毒を行う際には、例えば、医療者の右手の人差し指が、第2柄前部411の上面上に置かれ、第1先端部34および第2先端部44の間に挟持された綿球9等を術野に当接させ、術野に消毒液が塗布される。医療者は、第2柄前部411上に人差し指を置くことにより、第1先端部34および第2先端部44に力を加え易い。また、第2柄前部411が第1柄前部311と上下方向に重なっているため、第1柄前部311および第2柄前部411の重複部において鉗子1の剛性が増大し、鉗子1の第1柄部31および第2柄部41が意図に反して撓んだり捻れたりする(すなわち、変形する)ことを抑制することができる。したがって、医療者は、鉗子1を使った作業(すなわち、術野の消毒等)を容易に行うことができる。また、第1柄部31および第2柄部41の上記変形に起因して第1係止部35および第2係止部45の係止が意図に反して解除されることを抑制することもできる。
【0051】
医療者が鉗子1の第1アーム3および第2アーム4を開く際には、中指および親指が挿入されている第1指孔部32および第2指孔部42を、互いに対して上下方向に相対的に移動させる。例えば、親指が挿入されている第2指孔部42を下方へと押し下げ、中指が挿入されている第1指孔部32を上方へと持ち上げる。これにより、第1柄部31および第2柄部41(特に、第1柄後部312および第2柄後部412)が撓み、第1係止部35が第2係止部45から上方へと離間して第1柄部31と第2柄部41との係止が解除される。その後、第1指孔部32および第2指孔部42が左右方向に離されることにより、第1先端部34と第2先端部44とが左右方向に離れ、消毒用の綿球9等の挟持が解除される。
【0052】
鉗子1によって図4に示す綿球9よりも小さい対象物を挟持する際には、第1アーム3および第2アーム4は、図4に示す状態よりも閉じられる。例えば、薄い対象物を挟持する際には、鉗子1は図1に示す通常閉状態まで閉じられる。また、薄い対象物を強固に挟持する際には、図1に示す通常閉状態から、さらに第1指孔部32と第2指孔部42とが左右方向に近づけられ、鉗子1は図6に示す過閉状態となる。
【0053】
図6に示す例では、第1係止部35の最も根元側(すなわち、第1柄後部312側の端)の1組の凹凸部が第2係止部45と係合し、第2係止部45の最も根元側(すなわち、第2柄後部412側の端)の1組の凹凸部が第1係止部35と係合する。これにより、第1先端部34と第2先端部44との間に、互いを左右方向に押圧する比較的大きい力が作用し、薄い対象物であっても強固に挟持することができる。後述する鉗子1a,1b,1cにおいても略同様に、過閉状態にて薄い対象物を強固に挟持することが可能である。
【0054】
図6に示す過閉状態の鉗子1では、第1柄前部311が通常閉状態よりも左側(すなわち、第2柄後部412に近づく方向)に撓み、第2柄前部411が通常閉状態よりも右側(すなわち、第1柄後部312に近づく方向)に撓む。第1柄前部311の左縁は、第1柄前部311の長手方向の一部または全部において、第2柄前部411の左縁よりも左側に位置する。第2柄前部411の右縁は、第2柄前部411の長手方向の一部または全部において、第1柄前部311の右縁よりも右側に位置する。図6に示す例では、平面視において、第1柄前部311と第2柄前部411とが互いの略全長に亘って部分的に重なっており、第1柄後部312の前端部と第2柄後部412の前端部とが部分的に重なっている。
【0055】
図6に示す過閉状態では、第1柄前部311および第2柄前部411の平面視における左右方向の幅の最大値(以下、「最大幅B4」とも呼ぶ。)は、上述の最大幅B2以下であり、最大幅B2未満であることが好ましい。これにより、患者の比較的小さい切開創(例えば、腹腔鏡手術時の開口等)であっても、鉗子1を深くまで(すなわち、第1柄前部311および第2柄前部411まで)挿入することができる。このとき、第1柄前部311および第2柄前部411は、略直線的に延びる略棒状の部位であるので、少ない可動範囲で薄い対象物を強固に挟持しながら重複部において剛性を増大させることが可能である。後述する鉗子1aにおいても同様である。
【0056】
上述の第1係止部35および第2係止部45の構造は様々に変更されてよい。例えば、図7に示す鉗子1aでは、第1柄後部312の左側面から第2柄後部412に向かって突出する第1係止部35aと、第2柄後部412の右側面から第1柄後部312に向かって突出する第2係止部45aとが、前後方向に重なる。第1係止部35aは、第1柄後部312と第1指孔部32との接続部近傍に設けられる。第2係止部45aは、第2柄後部412と第2指孔部42との接続部近傍に設けられる。第1係止部35aおよび第2係止部45aは、左右方向に略平行な略直線状に延びる帯板状の部位である。第1係止部35aの後面、および、第2係止部45aの前面には、左右方向に交互に配列された凹部および凸部が設けられている。例えば、第1係止部35aの後面は、互いに対応する相補的な凹凸形状を有し、第2係止部45aの前面も、互いに対応する相補的な凹凸形状を有する。本実施の形態では、第1係止部35aの後面および第2係止部45aの前面はそれぞれ鋸歯状である。第1係止部35aおよび第2係止部45aの上下方向の位置は略同じである。第1係止部35aは、第2係止部45aよりも前側に位置する。なお、鉗子1aでは、第1係止部35aおよび第2係止部45a以外の構造は鉗子1と略同様である。
【0057】
図7に示すように、第1アーム3と第2アーム4とが閉じられた状態(すなわち、通常閉状態)では、第2係止部45aは、第1係止部35aの後側にて第1係止部35aと前後方向に重なり、左右方向に関して第1係止部35aに係止される。また、綿球9を挟持した状態(図示省略)においても、第2係止部45aは、第1係止部35aの後側にて第1係止部35aと前後方向に重なり、左右方向に関して第1係止部35aに係止される。具体的には、第1係止部35aの後面に設けられた鋸歯状の凹凸部と、第2係止部45aの前面に設けられた鋸歯状の凹凸部とが係合することにより、第1アーム3および第2アーム4が左右に開く方向(すなわち、第1柄後部312と第2柄後部412とが左右方向に互いに離間する方向)に移動することが制限される。図7に例示する鉗子1aでは、第1係止部35aおよび第2係止部45aにより、第1アーム3と第2アーム4とを互いに係止して第1柄後部312と第2柄後部412との間の左右方向の距離を固定するラチェット構造が構成される。
【0058】
なお、図7に示す例では、第1係止部35aが第2係止部45aよりも前側に位置するが、第2係止部45aが第1係止部35aよりも前側に位置していてもよい。この場合、上述の凹凸部は、第2係止部45aの後面、および、第1係止部35aの前面に設けられる。
【0059】
医療者が鉗子1aの第1アーム3および第2アーム4を開く際には、中指および親指が挿入されている第1指孔部32および第2指孔部42を、上記と略同様に、互いに対して上下方向に相対的に移動させる。例えば、親指が挿入されている第2指孔部42を下方へと押し下げ、中指が挿入されている第1指孔部32を上方へと持ち上げる。これにより、第1柄部31および第2柄部41(特に、第1柄後部312および第2柄後部412)が撓み、第1係止部35aが第2係止部45aから上方へと離間して第1柄部31と第2柄部41との係止が解除される。その後、第1指孔部32および第2指孔部42が左右方向に離されることにより、第1先端部34と第2先端部44とが左右方向に離れ、消毒用の綿球等の挟持が解除される。なお、第1係止部35aは、第2係止部45aから下方へと離間させてもよい。
【0060】
以上に説明したように、鉗子1は、第1アーム3と、第2アーム4と、軸部5とを備える。第2アーム4は、第1アーム3と交差する。軸部5は、第1アーム3と第2アーム4との交差位置にて第1アーム3と第2アーム4とを回転自在に連結する。第1アーム3は、第1柄部31と、第1指孔部32と、第1挟持部33とを備える。第1柄部31は、軸部5から後方に延びる。第1指孔部32は、第1柄部31の後端に接続される。第1挟持部33は、軸部5から前方に延びる。第2アーム4は、第2柄部41と、第2指孔部42と、第2挟持部43とを備える。第2柄部41は、軸部5から後方に延びる。第2指孔部42は、第2柄部41の後端に接続される。第2挟持部43は、軸部5から前方に延びる。
【0061】
第1柄部31は、第1柄前部311と、第1柄後部312とを備える。第1柄前部311は、平面視において軸部5から前後方向に平行に延びる中心線10を中心として、軸部5から後方に向かって直線的に延びる。第1柄後部312は、第1柄前部311の後端から、第2アーム4から離れる方向へと延びて第1指孔部32へと至る。第2柄部41は、第2柄前部411と、第2柄後部412とを備える。第2柄前部411は、第1柄前部311の上側にて第1柄前部311と上下方向に重複するとともに中心線10を中心として軸部5から後方に向かって直線的に延びる。第2柄後部412は、第2柄前部411の後端から、第1アーム3から離れる方向へと延びて第2指孔部42へと至る。
【0062】
このように、第2柄前部411を第1柄前部311と上下方向に重ねることにより、第1柄前部311および第2柄前部411の重複部において鉗子1の剛性を増大させることができる。その結果、鉗子1の第1柄部31および第2柄部41が、使用する医療者の意図に反して変形すること(例えば、第1柄部31および第2柄部41の上下方向の撓みや、第1柄部31と第2柄部41とが上下方向に離れるような捻れ)を抑制することができる。また、鉗子1では、第1係止部35および第2係止部45以外に第1柄部31および第2柄部41から側方に突出する構造を設けていないため、鉗子1の構造が複雑化することを防止することもできる。すなわち、鉗子1の構造を簡素化しつつ鉗子1の意図しない変形を抑制することができる。その結果、比較的長く変形しやすい鉗子1であっても、好適に使用することができる。
【0063】
上述のように、第1アーム3と第2アーム4とが閉じられた状態(すなわち、通常閉状態)において、第1柄前部311および第2柄前部411の平面視における左右方向の幅の最大値B1は、第1アーム3と第2アーム4との交差位置での第1アーム3および第2アーム4の平面視における左右方向の幅の最大値B2以下であることが好ましい。これにより、患者の比較的小さい切開創であっても、鉗子1を深くまで挿入することができる。
【0064】
上述のように、第1アーム3は、第1柄後部312から第2アーム4に向かって左右方向に突出する第1係止部35をさらに備え、第2アーム4は、第2柄後部412から第1アーム3に向かって左右方向に突出する第2係止部45をさらに備えることが好ましい。また、第1係止部35と第2係止部45とが互いの端部のみで係合し、第1挟持部33の前端に接続される第1先端部34と第2挟持部43の前端に接続される第2先端部44とが左右方向に離間している状態において、第1柄前部311および第2柄前部411の平面視における左右方向の幅の最大値B3は、第1アーム3と第2アーム4との交差位置での第1アーム3および第2アーム4の平面視における左右方向の幅の最大値B2以下であることが好ましい。これにより、患者の比較的小さい切開創であっても、綿球9等を挟持した状態の鉗子1を深くまで挿入することができる。
【0065】
上述のように、第1柄前部311の上面315および第2柄前部411の下面416のうち少なくとも一方の面は、左右方向の第1柄後部312側のエッジが第2柄後部412側のエッジよりも上側に位置する傾斜面であることが好ましい。これにより、鉗子1の第1アーム3および第2アーム4を閉じるに従って、第1柄前部311と第2柄前部411との間に働く上下方向の押圧力が大きくなる。このため、第1アーム3および第2アーム4が開く際の第1柄前部311と第2柄前部411との摺動による摩擦力が大きくなり、第1アーム3および第2アーム4が意図に反して開くことを抑制することができる。また、製造誤差等により第1柄前部311と第2柄前部411との間に隙間ができた場合であっても、当該隙間によるがたつき等を抑制することができる。
【0066】
上述のように、第1アーム3は、第1柄後部312から第2アーム4に向かって左右方向に突出する第1係止部35をさらに備え、第2アーム4は、第2柄後部412から第1アーム3に向かって左右方向に突出する第2係止部45をさらに備えることが好ましい。第2係止部45は、第1係止部35の下側にて第1係止部35と上下方向に重なり、左右方向に関して第1係止部35に係止される。これにより、第1アーム3および第2アーム4が意図に反して開くことを抑制することができる。また、第2係止部45は第1係止部35の下側に位置し、第2柄前部411は第1柄前部311の上側に位置するため、第2係止部45が第1係止部35から意図に反して上下方向に離間することを抑制することができる。その結果、第1係止部35と第2係止部45との係止が意図に反して解除されることを抑制することができる。
【0067】
上述の鉗子1aのように、第1アーム3は、第1柄後部312から第2アーム4に向かって左右方向に突出する第1係止部35aをさらに備え、第2アーム4は、第2柄後部412から第1アーム3に向かって左右方向に突出する第2係止部45aをさらに備えていてもよい。第2係止部45aは、第1係止部35aと前後方向に重なり、左右方向に関して第1係止部35aに係止されることが好ましい。これにより、第1アーム3および第2アーム4が意図に反して開くことを抑制することができる。また、第1係止部35aと第2係止部45aとの間に作用する摩擦力により、第2係止部45aが第1係止部35aから意図に反して上下方向にずれることを抑制することもできる。さらに、第1係止部35aと第2係止部45aとの係止を解除する際に、第1係止部35aを第2係止部45aに対して上側に相対移動させてもよく、下側に相対移動させてもよいため、医療者が右手で鉗子1aを使用する場合であっても、左手で鉗子1aを使用する場合であっても、鉗子1aの係止解除を容易に行うことができる。
【0068】
上述のように、第1アーム3と第2アーム4とが閉じられた状態(すなわち、通常閉状態)において、第1柄部31と第2柄部41との重複部の前後方向の長さL1は、第1柄部31の前後方向の長さL2の20%以上であることが好ましい。これにより、第1柄部31よび第2柄部41の意図しない変形を好適に抑制することができる。
【0069】
上述の鉗子1,1aでは、様々な変更が可能である。
【0070】
例えば、図1に示す例では、平面視において、第2柄後部412は第1柄後部312の左側に位置し、第2挟持部43は第1挟持部33の右側に位置しているが、第2柄後部412が第1柄後部312の右側に位置し、第2挟持部43が第1挟持部33の左側に位置していてもよい。
【0071】
例えば、第2柄前部411の上面に、医療者の人差し指の位置ずれを防止する滑り止め構造が設けられてもよい。当該滑り止め構造は、例えば、前後方向に配列されるとともに、それぞれが略左右方向に延びる略直線状の複数の溝を備える。滑り止め構造の形状、大きさおよび構造等は、様々に変更されてよい。
【0072】
鉗子1では、第1柄前部311の上面315および第2柄前部411の下面416は、必ずしも上述の傾斜面である必要はなく、両面共に上下方向に略垂直な水平面であってもよい。
【0073】
鉗子1では、第1アーム3と第2アーム4とが閉じられた状態(すなわち、通常閉状態)において、第1柄前部311および第2柄前部411の平面視における左右方向の幅の最大値B1は、第1アーム3と第2アーム4との交差位置での第1アーム3および第2アーム4の平面視における左右方向の幅の最大値B2よりも大きくてもよい。
【0074】
鉗子1では、第1アーム3と第2アーム4とが閉じられた状態(すなわち、通常閉状態)において、第1柄部31と第2柄部41との重複部の前後方向の長さL1は、第1柄部31の前後方向の長さL2の20%未満であってもよい。
【0075】
鉗子1では、第1係止部35は、第2係止部45よりも下側に配置されてもよい。また、第1係止部35,35aおよび第2係止部45,45aは必ずしも設けられる必要はなく、省略されてもよい。
【0076】
鉗子1,1aでは、第1先端部34および第2先端部44の形状は、第1先端部34と第2先端部44とにより挟持される挟持対象物の大きさ、形状、種類等に合わせて様々に変更されてよい。
【0077】
鉗子1,1aの構造は、消毒以外の目的で使用される鉗子(例えば、組織の止血や組織把持に使用される鉗子)に適用されてもよい。鉗子1,1aの各部の形状や大きさは、鉗子1,1aの用途に合わせて適宜変更されてよい。また、第1アーム3および第2アーム4は、樹脂以外の材料により形成されてもよい。
【0078】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る鉗子1bについて説明する。図8は、鉗子1bを示す平面図である。図9は、鉗子1bの左側面図である。図10は、鉗子1bを図8中のIX-IXの位置にて切断した断面を拡大して示す断面図である。図11は、消毒用の綿球9を挟持した状態の鉗子1bを示す平面図である。図12は、使い捨て医療用品セット6bを示す平面図である。
【0079】
鉗子1bは、例えば、外科手術等の際に術野の消毒等に使用される消毒用鉗子である。鉗子1bは、主に樹脂により形成された使い捨て鉗子である。図12に示すように、鉗子1bは、医療処置の内容に合わせて用意された複数の使い捨ての医療用品のセットである使い捨て医療用品セット6bに含まれている。使い捨て医療用品セット6bでは、鉗子1bおよび他の医療用品(例えば、ドレープ等)が、平面視において略矩形状のトレイ61bに収容された状態で、図示省略の包装部材により梱包されている。
【0080】
以下の説明では、鉗子1bの長手方向(すなわち、図8中の上下方向)を「前後方向」とも呼ぶ。また、鉗子1bのうち医療者の手元側(すなわち、図8中の下側)を「後側」とも呼び、医療者の手元から離れている側(すなわち、図8中の上側)を「前側」とも呼ぶ。さらに、図8中の左右方向を、単に「左右方向」とも呼ぶ。また、図8中の紙面に垂直な方向を「上下方向」とも呼ぶ。
【0081】
鉗子1bは、第1アーム3bと、第2アーム4bと、軸部5bとを備える。第1アーム3bおよび第2アーム4bは、鉗子1bの長手方向に延びる略棒状の樹脂製の部材である。第1アーム3bおよび第2アーム4bは、例えば、射出成形により形成される。第2アーム4bは、第1アーム3bと交差する。軸部5bは、第1アーム3bと第2アーム4bとの交差位置にて、第1アーム3bと第2アーム4bとを回転自在に連結する。軸部5bは、例えば、金属製のリベットである。軸部5bが延びる方向である軸方向は、上述の上下方向と略同じである。図8に示す例では、鉗子1bの平面視における形状は、軸部5bの中心から前後方向に平行に延びる仮想的な直線である中心線10bに対して略左右対称である。
【0082】
第1アーム3bは、第1柄部31bと、第1指孔部32bと、第1挟持部33bと、第1先端部34bと、第1係止部35bとを備える。第1柄部31b、第1指孔部32b、第1挟持部33b、第1先端部34bおよび第1係止部35bは、好ましくは一繋がりの樹脂製の部材である。鉗子1bの長手方向の全長(すなわち、図8における第1指孔部32bの後端から、第1先端部34bの前端に至る前後方向の長さ)は、例えば15cm~26cmであり、好ましくは17cm~24cmであり、より好ましくは18cm~23cmである。
【0083】
第1柄部31bは、軸部5bから後方(すなわち、鉗子1bを使用する医療者の手元側)に延びる略棒状の部位である。図10に示す例では、第1柄部31bの前後方向に垂直な断面の形状は略長方形である。すなわち、図10に例示する第1柄部31bは、前後方向に沿って延びる略四角柱状の部位である。第1柄部31bは、軸部5bから、第2アーム4bから左右方向に離れる方向へと延びて第1指孔部32へと至る。図8に示す例では、第1柄部31bは、軸部5bから右斜め後方へと略直線状に延びる。
【0084】
第1指孔部32bは、第1柄部31bの後端に接続される環状の部位である。第1指孔部32bには、医療者の指が上側から挿入される挿入孔321bが設けられる。第1挟持部33bは、軸部5bから前方(すなわち、医療者の手元から離れる方向)に延びる略棒状の部位である。第1先端部34bは、第1挟持部33bの前端に接続される部位である。図9に示す例では、第1先端部34bは、左右方向に延びる中心軸を中心とする略楕円環状の部位である。第1先端部34bは、第2アーム4bの後述する第2先端部44bと共に、消毒用の綿球9等に直接的に接触して挟持する。
【0085】
図8では、第1アーム3bと第2アーム4bとが閉じられた状態(以下、「通常閉状態」とも呼ぶ。)の鉗子1bを示す。図8に示す第1アーム3bと第2アーム4bとが閉じられた状態では、第1アーム3bの第1指孔部32bが、第2アーム4bの後述する第2指孔部42bと左右方向において近づいており、第1アーム3bの第1先端部34bが、第2アーム4bの第2先端部44bと近づいている。このとき、第1先端部34bと第2先端部44bとは、互いに接触していてもよく、僅かな隙間を挟んで互いに離間していてもよい。いずれの場合であっても、通常閉状態では、第1先端部34bと第2先端部44bとの間には、互いを左右方向に押圧する力は実質的に作用していない。
【0086】
第1係止部35bは、第1柄部31bの左側面(すなわち、第2アーム4bと左右方向にて対向する側面)から第2アーム4bの後述する第2柄部41bに向かって左方に突出する。図8に示す例では、第1係止部35bは、左右方向に略平行な略直線状に延びる帯板状の部位である。第1係止部35bの下面には、左右方向に交互に配列された凹部および凸部が設けられている。例えば、第1係止部35bの下面は、互いに対応する相補的な凹凸形状を有する。本実施の形態では、第1係止部35bの下面は鋸歯状である。
【0087】
第2アーム4bは、第2柄部41bと、第2指孔部42bと、第2挟持部43bと、第2先端部44bと、第2係止部45bと、突出部46bとを備える。第2柄部41b、第2指孔部42b、第2挟持部43b、第2先端部44b、第2係止部45bおよび突出部46bは、好ましくは一繋がりの樹脂製の部材である。
【0088】
第2柄部41bは、軸部5bから後方(すなわち、鉗子1bを使用する医療者の手元側)に延びる略棒状の部位である。第2柄部41bの前後方向の長さは、第1柄部31bの前後方向の長さと略同じである。図10に示す例では、第2柄部41bの前後方向に垂直な断面の形状は略長方形である。すなわち、図10に例示する第2柄部41bは、前後方向に沿って延びる略四角柱状の部位である。第2柄部41bは、軸部5bから、第1アーム3bから左右方向に離れる方向へと延びて第2指孔部42bへと至る。図8に示す例では、第2柄部41bは、軸部5bから左斜め後方へと略直線状に延びる。
【0089】
第2指孔部42bは、第2柄部41bの後端に接続される環状の部位である。第2指孔部42bには、医療者の指が上側から挿入される挿入孔421bが設けられる。第2指孔部42bは、第1指孔部32bと略同形状である。第2指孔部42bの前後方向および上下方向の位置はそれぞれ、第1指孔部32bの前後方向および上下方向の位置と略同じである。
【0090】
第2挟持部43bは、軸部5bから前方(すなわち、医療者の手元から離れる方向)に延びる略棒状の部位である。第2先端部44bは、第2挟持部43bの前端に接続される部位である。第2先端部44bは、左右方向に延びる中心軸を中心とする略楕円環状の部位であり、第1先端部34bと略同形状である。第2先端部44bの前後方向および上下方向の位置はそれぞれ、第1先端部34bの前後方向および上下方向の位置と略同じである。
【0091】
軸部5bの外周を囲む部位における第1アーム3bおよび第2アーム4bの上下方向の厚さD6は、突出部46bが設けられる前後方向の位置における第1柄部31bおよび第2柄部41bの上下方向のそれぞれの厚さD4,D5よりも厚い。これにより、第1アーム3bおよび第2アーム4bの剛性が、軸部5bの近傍において他の部位よりも大きくなる。なお、第1アーム3bおよび第2アーム4bの上下方向の厚さとは、第1アーム3bおよび第2アーム4bのうち最も上側に位置する上縁と最も下側に位置する下縁との間の上下方向の距離である。
【0092】
突出部46bは、軸部5bから後方に離間した位置にて第2柄部41bから第1アーム3bの第1柄部31bに向かって左右方向に(図8に示す例では、右方に)突出する。突出部46bは、好ましくは、第2柄部41bの長手方向における中央よりも前側に位置する。突出部46bは、例えば、上下方向に略垂直な略平板状の部位である。図8に示す例では、突出部46bの外縁の形状は、平面視において略円弧状である。突出部46bの形状は様々に変更されてよい。図10に示す例では、突出部46bは、第2柄部41bの右側面から右方へと突出し、第1柄部31bの上方まで広がる。
【0093】
図8に示すように、第1アーム3bと第2アーム4bとが閉じられた状態では、突出部46bは第1柄部31bと上下方向に部分的に重複し、突出部46bの下面は、第1柄部31bの上面と面接触する。このとき、突出部46bの右端部は、第1柄部31bの右方へと突出していてもよく、突出していなくてもよい。また、図11に示すように、左右方向に離間した第1先端部34bと第2先端部44bとの間に綿球9を挟持した状態においても、.突出部46bは第1柄部31bと上下方向に部分的に重複し、突出部46bの下面は、第1柄部31bの上面と面接触する。なお、図8に示す例では、第1柄部31bには、第1係止部35以外に側方に突出する突出部は設けられない。
【0094】
第2係止部45bは、突出部46bと第2指孔部42bとの間において、第2柄部41bの右側面(すなわち、第1アーム3bと左右方向にて対向する側面)から第1アーム3bの第1柄部31bに向かって右方に突出する。第2係止部45bは、好ましくは、第2柄部41bの長手方向における中央よりも後側に位置する。図8に示す例では、第2係止部45bは、左右方向に略平行な略直線状に延びる帯板状の部位である。第2係止部45bの上面には、左右方向に交互に配列された凹部および凸部が設けられている。例えば、第2係止部45bの上面は、互いに対応する相補的な凹凸形状を有する。本実施の形態では、第2係止部45bの上面は鋸歯状である。第2係止部45bの前後方向の位置は、第1係止部35bの前後方向の位置と略同じである。第2係止部45bの上下方向の位置は、第1係止部35bの上下方向の位置よりも下側である。
【0095】
図8に示すように、第1アーム3bと第2アーム4bとが閉じられた状態では、第2係止部45bは、第1係止部35bの下側にて第1係止部35bと上下方向に重なり、左右方向に関して第1係止部35bに係止される。また、図11に示すように、綿球9を挟持した状態においても、第2係止部45bは、第1係止部35bの下側にて第1係止部35bと上下方向に重なり、左右方向に関して第1係止部35bに係止される。具体的には、第1係止部35bの下面に設けられた鋸歯状の凹凸部と、第2係止部45bの上面に設けられた鋸歯状の凹凸部とが係合することにより、第1アーム3bおよび第2アーム4bが左右に開く方向(すなわち、第1柄部31bと第2柄部41bとが左右方向に互いに離間する方向)に移動することが制限される。
【0096】
図8にに示す状態では、第1係止部35bおよび第2係止部45bにより、第1アーム3bと第2アーム4bとを互いに係止して第1柄部31bと第2柄部41bとの間の左右方向の距離を固定するラチェット構造が構成される。図11に示す状態でも、第1係止部35bおよび第2係止部45bにより同様のラチェット構造が構成される。図11に示す例では、第1係止部35bの最も先端側(すなわち、第2柄後部412b側の端)に位置する1組の凹凸部と、第2係止部45bの最も先端側(すなわち、第1柄後部312b側の端)に位置する1組の凹凸部とが係合しており、第1係止部35bおよび第2係止部45bの他の凹凸部は係合していない。換言すれば、第1係止部35bと第2係止部45bとは、互いの端部のみで係合している。したがって、図11に例示する状態よりも鉗子1bを開いた状態(すなわち、第1先端部34bと第2先端部44bとが図11よりも左右方向に離れた状態)では、第1係止部35bと第2係止部45bとは係合しない。
【0097】
医療者が鉗子1bを使用する際には、医療者の右手の中指および親指が、第1指孔部32bの挿入孔321bおよび第2指孔部42bの挿入孔421bに、それぞれ上側から挿入される。このとき、鉗子1bは、第1アーム3bと第2アーム4bとが開かれた状態であり、第1係止部35bと第2係止部45bとは左右方向に離間している。第1指孔部32bおよび第2指孔部42bに挿入された指は、手の平側へと曲げられて第1指孔部32bおよび第2指孔部42bを把持する。
【0098】
医療者は、第1指孔部32bおよび第2指孔部42bを把持すると、第1アーム3bと第2アーム4bとを閉じるように、第1指孔部32bと第2指孔部42bとを左右方向に互いに近づける。これにより、第1挟持部33bおよび第2挟持部43bが左右方向において近づき、図11に示すように、第1先端部34bと第2先端部44bとにより、消毒用の綿球9等が挟持される。また、第1指孔部32bと第2指孔部42bとが互いに近づけられると、第1係止部35bと第2係止部45bとが左右方向において近づいて上下方向に重なり、左右方向に関して互いに係止される。さらに、第1柄部31bと第2柄部41bとも左右方向において近づき、第2アーム4bの突出部46bが第1柄部31bと上下方向に重なる。上述のように、第1係止部35bは第2係止部45bの上側に位置し、第1柄部31bは突出部46bの下側に位置する。
【0099】
医療者が鉗子1bを利用して術野の消毒を行う際には、例えば、医療者の右手の人差し指が、突出部46bの上面上に置かれ、第1先端部34bおよび第2先端部44bの間に挟持された綿球9等を術野に当接させ、術野に消毒液が塗布される。医療者は、突出部46b上に人差し指を置くことにより、第1先端部34bおよび第2先端部44bに力を加え易い。また、突出部46bが第1柄部31bと上下方向に重なっているため、突出部46bおよび第1柄部31bの重複部において鉗子1bの剛性が増大し、鉗子1bの第1柄部31bおよび第2柄部41bが意図に反して撓んだり捻れたりする(すなわち、変形する)ことを抑制することができる。したがって、医療者は、鉗子1bを使った作業(すなわち、術野の消毒等)を容易に行うことができる。また、第1柄部31bおよび第2柄部41bの上記変形に起因して第1係止部35bおよび第2係止部45bの係止が意図に反して解除されることを抑制することもできる。
【0100】
医療者が鉗子1bの第1アーム3bおよび第2アーム4bを開く際には、中指および親指が挿入されている第1指孔部32bおよび第2指孔部42bを、互いに対して上下方向に相対的に移動させる。例えば、親指が挿入されている第2指孔部42bを下方へと押し下げ、中指が挿入されている第1指孔部32bを上方へと持ち上げる。これにより、第1柄部31bおよび第2柄部41b(特に、第1柄部31bおよび第2柄部41bのうち、突出部46bよりも後側の部位)が撓み、第1係止部35bが第2係止部45bから上方へと離間して第1柄部31bと第2柄部41bとの係止が解除される。その後、第1指孔部32bおよび第2指孔部42bが左右方向に離されることにより、第1先端部34bと第2先端部44bとが左右方向に離れ、消毒用の綿球9等の挟持が解除される。
【0101】
上述の第1係止部35bおよび第2係止部45bの構造は様々に変更されてよい。例えば、図13に示す鉗子1cでは、第1柄部31bの左側面から第2柄部41bに向かって突出する第1係止部35cと、第2柄部41bの右側面から第1柄部31bに向かって突出する第2係止部45cとが、前後方向に重なる。第1係止部35cおよび第2係止部45cは、左右方向に略平行な略直線状に延びる帯板状の部位である。第1係止部35cの後面、および、第2係止部45cの前面には、左右方向に交互に配列された凹部および凸部が設けられている。例えば、第1係止部35cの後面は、互いに対応する相補的な凹凸形状を有し、第2係止部45cの前面も、互いに対応する相補的な凹凸形状を有する。本実施の形態では、第1係止部35cの後面および第2係止部45cの前面はそれぞれ鋸歯状である。第1係止部35cおよび第2係止部45cの上下方向の位置は略同じである。第1係止部35cは、第2係止部45cよりも前側に位置する。なお、鉗子1cでは、第1係止部35cおよび第2係止部45c以外の構造は鉗子1bと略同様である。
【0102】
図13に示すように、第1アーム3bと第2アーム4bとが閉じられた状態(すなわち、通常閉状態)では、第2係止部45cは、第1係止部35cの後側にて第1係止部35cと前後方向に重なり、左右方向に関して第1係止部35cに係止される。また、綿球9を挟持した状態(図示省略)においても、第2係止部45cは、第1係止部35cの後側にて第1係止部35cと前後方向に重なり、左右方向に関して第1係止部35cに係止される。具体的には、第1係止部35cの後面に設けられた鋸歯状の凹凸部と、第2係止部45cの前面に設けられた鋸歯状の凹凸部とが係合することにより、第1アーム3bおよび第2アーム4bが左右に開く方向(すなわち、第1柄部31bと第2柄部41bとが左右方向に互いに離間する方向)に移動することが制限される。図13に例示する鉗子1cでは、第1係止部35cおよび第2係止部45cにより、第1アーム3bと第2アーム4bとを互いに係止して第1柄部31bと第2柄部41bとの間の左右方向の距離を固定するラチェット構造が構成される。
【0103】
なお、図13に示す例では、第1係止部35cが第2係止部45cよりも前側に位置するが、第2係止部45cが第1係止部35cよりも前側に位置していてもよい。この場合、上述の凹凸部は、第2係止部45cの後面、および、第1係止部35cの前面に設けられる。
【0104】
医療者が鉗子1cの第1アーム3bおよび第2アーム4bを開く際には、中指および親指が挿入されている第1指孔部32bおよび第2指孔部42bを、上記と略同様に、互いに対して上下方向に相対的に移動させる。例えば、親指が挿入されている第2指孔部42bを下方へと押し下げ、中指が挿入されている第1指孔部32bを上方へと持ち上げる。これにより、第1柄部31bおよび第2柄部41b(特に、第1柄部31bおよび第2柄部41bのうち、突出部46bよりも後側の部位)が撓み、第1係止部35cが第2係止部45cから上方へと離間して第1柄部31bと第2柄部41bとの係止が解除される。その後、第1指孔部32bおよび第2指孔部42bが左右方向に離されることにより、第1先端部34bと第2先端部44bとが左右方向に離れ、消毒用の綿球等の挟持が解除される。なお、第1係止部35cは、第2係止部45cから下方へと離間させてもよい。
【0105】
図8に示す突出部46bの形状および配置は様々に変更されてよい。例えば、突出部46bの平面視における形状は、略矩形状であってもよい。また、突出部46bは、第2柄部41bの上面から第1柄部31bの上方へと突出していてもよい。あるいは、突出部46bは第1柄部31bの下側にて第1柄部31bと上下方向に重なっていてもよい。
【0106】
図14は、突出部46bとは形状および配置が異なる突出部46dが設けられた鉗子1dを、図10と略同様に突出部46dの前後方向の略中央にて切断して示す断面図である。図14に示す例では、突出部46dは、第2柄部41bの右側面(すなわち、第1柄部31bと左右方向に対向する側面)から右方へと突出し、第1柄部31bに設けられた穴部317dに挿入される。これにより、第1アーム3bと第2アーム4bとが閉じられた状態、および、綿球を挟持した状態において、突出部46dは第1柄部31bと上下方向に部分的に重複し、突出部46dの上面および下面は、第1柄部31bと面接触可能となる。なお、鉗子1dでは、突出部46dおよび穴部317d以外の構造は鉗子1bと同様である。
【0107】
穴部317dは、例えば、第1柄部31bを左右方向に貫通する貫通孔である。突出部46dの右端部は、第1柄部31bの右側面(すなわち、第2柄部41b側とは反対側の側面)から右方に突出している。なお、突出部46dは、第1柄部31bの右側面から右方に突出する必要はない。また、穴部317dは、必ずしも第1柄部31bを貫通する貫通孔である必要はなく、第1柄部31bの左側面(すなわち、第2柄部41bと左右方向に対向する側面)に設けられた凹部であってもよい。
【0108】
図14に示す突出部46dに係る構造は、図13に示す第1係止部35cおよび第2係止部45cに係る構造と組み合わされてもよい。この場合、穴部317dに突出部46dが挿入されることにより、第2係止部45cが第1係止部35cから意図に反して下方へと離間すること、および、意図に反して上方へと離間することを抑制することができる。その結果、第1係止部35cと第2係止部45cとの係止が意図に反して解除されることを抑制することができる。
【0109】
以上に説明したように、鉗子1bは、第1アーム3bと、第2アーム4bと、軸部5bとを備える。第2アーム4bは、第1アーム3bと交差する。軸部5bは、第1アーム3bと第2アーム4bとの交差位置にて第1アーム3bと第2アーム4bとを回転自在に連結する。第1アーム3bは、第1柄部31bと、第1指孔部32bと、第1挟持部33bとを備える。第1柄部31bは、軸部5bから後方に延びる。第1指孔部32bは、第1柄部31bの後端に接続される。第1挟持部33bは、軸部5bから前方に延びる。第2アーム4bは、第2柄部41bと、第2指孔部42bと、第2挟持部43bと、突出部46bとを備える。第2柄部41bは、軸部5bから後方に延びる。第2指孔部42bは、第2柄部41bの後端に接続される。第2挟持部43bは、軸部5bから前方に延びる。突出部46bは、第2柄部41bから第1アーム3bに向かって左右方向に突出するとともに第1柄部31bと上下方向に重複する。
【0110】
このように、突出部46bを第1柄部31bと上下方向に重ねることにより、突出部46bと第1柄部31bとの重複部において鉗子1bの剛性を増大させることができる。その結果、鉗子1bの第1柄部31bおよび第2柄部41bが、使用する医療者の意図に反して変形すること(例えば、第1柄部31bおよび第2柄部41bの上下方向の撓みや、第1柄部31bと第2柄部41bとが上下方向に離れるような捻れ)を抑制することができる。また、鉗子1bでは、第1係止部35b以外に第1柄部31bから側方に突出する構造を設けていないため、鉗子1bの構造が複雑化することを防止することもできる。すなわち、鉗子1bの構造を簡素化しつつ鉗子1bの意図しない変形を抑制することができる。その結果、比較的長く変形しやすい鉗子1bであっても、好適に使用することができる。
【0111】
上述のように、軸部5bの外周を囲む部位における第1アーム3bおよび第2アーム4bの上下方向の厚さD6は、突出部46bが設けられる前後方向の位置における第1柄部31bおよび第2柄部41bのそれぞれの上下方向の厚さD4,D5よりも厚いことが好ましい。このように、軸部5b近傍に肉厚部を設けることにより、軸部5b近傍における第1柄部31bおよび第2柄部41bの変形を好適に抑制することができる。
【0112】
上述のように、突出部46bは、第1柄部31bの上側に位置することが好ましい。また、第1アーム3bは、第1柄部31bから第2アーム4bに向かって左右方向に突出する第1係止部35bをさらに備え、第2アーム4bは、突出部46bから後方に離間した位置にて第2柄部41bから第2アーム4bに向かって左右方向に突出する第2係止部45bをさらに備えることが好ましい。第2係止部45bは、第1係止部35bの下側にて第1係止部35bと上下方向に重なり、左右方向に関して第1係止部35bに係止される。これにより、第1アーム3bおよび第2アーム4bが意図に反して開くことを抑制することができる。また、第2係止部45bは第1係止部35bの下側に位置し、第2柄部41bに接続された突出部46bは第1柄部31bの上側に位置するため、第2係止部45bが第1係止部35bから意図に反して上下方向に離間することを抑制することができる。その結果、第1係止部35bと第2係止部45bとの係止が意図に反して解除されることを抑制することができる。
【0113】
上述の鉗子1cのように、第1アーム3bは、第1柄部31bから第2アーム4bに向かって左右方向に突出する第1係止部35cをさらに備え、第2アーム4bは、突出部46bから後方に離間した位置にて第2柄部41bから第1アーム3bに向かって左右方向に突出する第2係止部45cをさらに備えていてもよい。第2係止部45cは、第1係止部35cと前後方向に重なり、左右方向に関して第1係止部35cに係止されることが好ましい。これにより、第1アーム3bおよび第2アーム4bが意図に反して開くことを抑制することができる。また、第1係止部35cと第2係止部45cとの間に作用する摩擦力により、第2係止部45cが第1係止部35cから意図に反して上下方向にずれることを抑制することもできる。さらに、第1係止部35cと第2係止部45cとの係止を解除する際に、第1係止部35cを第2係止部45cに対して上側に相対移動させてもよく、下側に相対移動させてもよいため、医療者が右手で鉗子1cを使用する場合であっても、左手で鉗子1cを使用する場合であっても、鉗子1cの係止解除を容易に行うことができる。
【0114】
上述の鉗子1b,1c,1dでは、様々な変更が可能である。
【0115】
例えば、図8に示す例では、平面視において、第2柄部41bは第1柄部31bの左側に位置し、第2挟持部43bは第1挟持部33bの右側に位置しているが、第2柄部41bが第1柄部31bの右側に位置し、第2挟持部43bが第1挟持部33bの左側に位置していてもよい。
【0116】
例えば、突出部46b,46dの上面に、医療者の人差し指の位置ずれを防止する滑り止め構造が設けられてもよい。当該滑り止め構造は、例えば、前後方向に配列されるとともに、それぞれが略左右方向に延びる略直線状の複数の溝を備える。滑り止め構造の形状、大きさおよび構造等は、様々に変更されてよい。例えば、滑り止め構造は、上記溝とは異なる模様であってもよく、梨地状の微小な凹凸構造であってもよく、突出部46b,46dの上面に貼付された粘着シート等であってもよい。
【0117】
鉗子1bでは、第1係止部35bは、第2係止部45bよりも下側に配置されてもよい。また、第1係止部35b,35cおよび第2係止部45b,45cは必ずしも設けられる必要はなく、省略されてもよい。
【0118】
鉗子1bでは、突出部46bの下面は、右側のエッジ(すなわち、第1柄部31側のエッジ)が左側のエッジ(すなわち、第2柄部41側のエッジ)よりも上側に位置する傾斜面であってもよい。また、第1柄部31bのうち突出部46bと重なる部位では、第1柄部31bの上面は、右側のエッジが左側のエッジよりも上側に位置する傾斜面であってもよい。これにより、突出部46bの下面と第1柄部31bの上面とが摺接し、第1アーム3bおよび第2アーム4bが左右に開く方向に移動することが抑制される。
【0119】
鉗子1bでは、軸部5bの外周を囲む部位における第1アーム3bおよび第2アーム4bの上下方向の厚さD6は、突出部46bが設けられる前後方向の位置における第1柄部31bおよび第2柄部41bのそれぞれの上下方向の厚さD4,D5以下であってもよい。
【0120】
鉗子1b,1c,1dでは、第1先端部34bおよび第2先端部44bの形状は、第1先端部34bと第2先端部44bとにより挟持される挟持対象物の大きさ、形状、種類等に合わせて様々に変更されてよい。
【0121】
鉗子1b,1c,1dの構造は、消毒以外の目的で使用される鉗子(例えば、組織の止血や組織把持に使用される鉗子)に適用されてもよい。鉗子1b,1c,1dの各部の形状や大きさは、鉗子1b,1c,1dの用途に合わせて適宜変更されてよい。また、第1アーム3bおよび第2アーム4bは、樹脂以外の材料により形成されてもよい。
【0122】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0123】
1,1a,1b,1c,1d 鉗子
3,3b 第1アーム
4,4b 第2アーム
5,5b 軸部
6,6b 医療用品セット
10,10b 中心線
31,31b 第1柄部
32,32b 第1指孔部
33,33b 第1挟持部
34,34b 第1先端部
35,35a,35b,35c 第1係止部
41,41b 第2柄部
42,42b 第2指孔部
43,43b 第2挟持部
44,44b 第2先端部
45,45a,45b,45c 第2係止部
46b,46d 突出部
311 第1柄前部
312 第1柄後部
315 (第1柄前部の)上面
411 第2柄前部
412 第2柄後部
416 (第2柄前部の)下面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14