(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084310
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】反転機構、および、それを備える搬送機構
(51)【国際特許分類】
B21B 39/20 20060101AFI20240618BHJP
B65G 47/248 20060101ALI20240618BHJP
B21B 39/32 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B21B39/20 A
B65G47/248 D
B21B39/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198504
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167276
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】志賀 瑛
【テーマコード(参考)】
3F081
【Fターム(参考)】
3F081AA10
3F081BE03
3F081BE09
3F081BF00
3F081CA16
3F081CC12
(57)【要約】
【課題】金属部材の搬送に用いられる載置板の裏表を反転させる反転機構の劣化や損傷を抑制できる技術を提供する。
【解決手段】反転機構は、上側に配置される上側支持部と、下側に配置される下側支持部とを有し、載置板を、前記上側支持部との間に間隙がある状態で前記上側支持部と前記下側支持部とによって厚み方向に挟むことにより保持する保持部と、前記下側支持部に設けられ、前記保持部に保持されている前記載置板を押し上げて前記上側支持部に接触させる押上機構と、前記保持部に連結された回動軸を有し、前記押上機構が前記載置板を前記上側支持部に接触させている間に、前記上側支持部と前記下側支持部とをともに、前記回動軸部を支点として、前記載置板の厚み方向に回動させて、前記載置板の裏表を反転させる回動機構と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材を載置して搬送する載置板の裏表を反転させる反転機構であって、
上側に配置される上側支持部と、下側に配置される下側支持部とを有し、前記載置板を、前記上側支持部との間に間隙がある状態で前記上側支持部と前記下側支持部とによって厚み方向に挟むことにより保持する保持部と、
前記下側支持部に設けられ、前記保持部に保持されている前記載置板を押し上げて前記上側支持部に接触させる押上機構と、
前記保持部に連結された回動軸部を有し、前記押上機構が前記載置板を前記上側支持部に接触させている間に、前記上側支持部と前記下側支持部とをともに、前記回動軸部を支点として、前記載置板の厚み方向に回動させて、前記載置板の裏表を反転させる回動機構と、
を備える、反転機構。
【請求項2】
請求項1記載の反転機構であって、
前記上側支持部と前記下側支持部とはそれぞれ、前記回動軸部に連結された基端部と、前記基端部から、前記保持部に保持されている前記載置板の板面に沿って、前記板面の中心の位置を超えて延在している延在部と、を有する、反転機構。
【請求項3】
請求項2記載の反転機構であって、
前記押上機構は、前記保持部に保持されている前記載置板の前記板面の中心より前記延在部の先端に寄った位置に設けられている、反転機構。
【請求項4】
請求項1記載の反転機構であって、
前記上側支持部と前記下側支持部とはそれぞれ、互いに並列に延びる一対の柱状部位を有し、
前記一対の柱状部位は、前記保持部が前記載置板を保持する際に、前記載置板の板面上において、前記載置板の重心を挟んで、互いに並列に延びるように配置される、反転機構。
【請求項5】
請求項1記載の反転機構であって、
前記押上機構は、空気の圧力によって伸長して前記載置板を押し上げるエアシリンダを備える、反転機構。
【請求項6】
金属部材の搬送機構であって、
前記金属部材を載置する載置板と、
前記金属部材が載置された前記載置板を搬送する搬送部と、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の反転機構と、
を備え、
前記金属部材の搬送が完了し、次の前記金属部材が載置される前の前記載置板を前記反転機構によって反転させる、搬送機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材の加工工程において金属部材を載置して搬送する載置板の反転機構、および、それを備える搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材の加工工程では、加工対象である金属部材が、載置板に載置されて搬送される場合がある。例えば、下記の特許文献1には、コイル状に成形された金属部材を、載置板に相当するパレットに載置した状態で搬送する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような載置板は、例えば、金属部材の製造ラインなどで、金属部材の搬送に繰り返し使用されている間に、金属部材の重みにより厚み方向に撓み変形等を生じてしまう場合がある。載置板が、金属部材の熱処理のための高温に曝される環境で使用されている場合には、載置板の昇温により、そのような変形がより生じやすい。そのため、載置板は、そのような変形が低減されるように、繰り返される金属部材の搬送の合間に、反転機構を用いて裏表を反転させながら使用される場合があった。しかしながら、金属部材の搬送に用いられるような載置板は、ある程度の強度が求められるため、通常、重量が極めて大きく、そうした反転機構は、載置板の反転の際に大きな負荷を受けて劣化や損傷を生じやすいという問題があった。本発明は、反転機構の損傷や劣化の発生を抑制できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
[第1形態]本発明の第1形態は、金属部材を載置して搬送する載置板の裏表を反転させる反転機構として提供される。第1形態の反転機構は、上側に配置される上側支持部と、下側に配置される下側支持部とを有し、前記上側支持部と前記下側支持部とによって、前記載置板を、前記上側支持部との間に間隙がある状態で、厚み方向に挟んで保持する保持部と、前記下側支持部に設けられ、前記保持部に保持されている前記載置板を押し上げて前記上側支持部に接触させる押上機構と、前記保持部に連結された回動軸部を有し、前記押上機構が前記載置板を前記上側支持部に接触させている間に、前記上側支持部と前記下側支持部とをともに、前記回動軸部を支点として、前記載置板の厚み方向に回動させて、前記載置板の裏表を反転させる回動機構と、を備える。
第1形態の反転機構によれば、載置板の裏表を反転させるときに、押上機構により、載置板が上側支持部に接した状態が維持される。そのため、載置板を保持している保持部を回動させている間に、上側支持部と下側支持部との間で載置板ががたついて、保持部や回動機構に大きな負荷がかかることを抑制できる。よって、反転機構における損傷や劣化の発生を抑制することができる。
【0007】
[第2形態]上記第1形態の反転機構において、前記上側支持部と前記下側支持部とはそれぞれ、前記回動軸部に連結された基端部と、前記基端部から、前記保持部に保持されている前記載置板の板面に沿って、前記板面の中心位置を超えて延在している延在部と、を有してよい。
第2形態の反転機構によれば、回動軸の径方向において、延在部が載置板の板面の半分以上の範囲にわたって延びていることにより、載置板の支持性が高められている。そのため、載置板が反転するときの保持部での載置板の配置姿勢をより安定させることができる。よって、載置板の反転の際に、載置板のがたつきにより、反転機構に大きな負荷がかかることをさらに抑制することができる。
【0008】
[第3形態]上記第2形態の反転機構において、前記押上機構は、前記保持部に保持されている前記載置板の前記板面の中心より前記延在部の先端に寄った位置に設けられてよい。
第3形態の反転機構によれば、回動機構による保持部の回動の際に載置板のがたつきが生じやすい延在部の先端側において押上機構による載置板の支持性を高めることができる。よって、載置板の反転の際の載置板のがたつきをより一層、抑制することができる。また、押上機構を下側支持部の延在部全体に設けていなくてもよいため、押上機構の小型化や保持部の軽量化が可能である。
【0009】
[第4形態]上記第1形態、第2形態、および、第3形態のいずれか1つに記載の反転機構において、前記上側支持部と前記下側支持部とはそれぞれ、互いに並列に延びる一対の柱状部位を有し、前記一対の柱状部位は、前記保持部が前記載置板を保持する際に、前記載置板の板面上において、前記載置板の重心を挟んで、互いに並列に延びるように配置されてよい。
第4形態の反転機構によれば、上側支持部と下側支持部を小型化しつつ、保持部に保持されているときの載置板の姿勢の安定性を高めることができる。
【0010】
[第5形態]上記第1形態、第2形態、第3形態、および、第4形態のいずれか1つに記載の反転機構において、前記押上機構は、空気の圧力によって伸長して前記載置板を押し上げるエアシリンダを備えてよい。
第5形態の反転機構によれば、押上機構の駆動機構としてエアシリンダを採用していることにより、載置板を上側支持部に接触させる力を高めながら押上機構を小型化することができる。
【0011】
[第6形態]第6形態は、金属部材の搬送機構として提供される。第6形態の搬送機構は、前記金属部材を載置する載置板と、前記金属部材が載置された前記載置板を搬送する搬送部と、上記第1形態、第2形態、第3形態、第4形態、および、第5形態のいずれか1つに記載の反転機構と、を備え、前記金属部材の搬送が完了し、次の前記金属部材が載置される前の前記載置板を前記反転機構によって反転させる。
第6形態の搬送機構によれば、載置板の裏表を反転させながら金属部材の搬送を繰り返すことができるため、金属部材の搬送の繰り返しにより、金属部材の重みによって載置板が変形することを抑制できる。また、載置板の反転の際に反転機構に大きな負荷がかかることが抑制されるため、反転機構の劣化や損傷の発生を抑制できる。よって、搬送機構の故障率を低減でき、搬送機構の稼働率を高めることができる。
【0012】
本発明は、金属部材を載置して搬送する載置板の反転機構や、その反転機構を備える金属部材の搬送機構以外の種々の形態で実現することが可能である。例えば、反転機構を備える金属部材の加工装置や製造載置、載置板の反転方法、金属部材の搬送方法、金属部材の加工方法・製造方法等の形態で実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】反転機構による載置板の反転動作を示す模式図。
【
図5】参考例の反転機構による載置板の反転動作を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施形態:
図1は、本実施形態の反転機構30が用いられている金属部材10の製造装置100の構成を示す概略図である。
【0015】
図1には、互いに直交するX方向、Y方向、および、Z方向を示す矢印が図示されている。X方向およびY方向は、水平方向に沿った方向である。Y方向は、製造装置100において金属部材10が搬送される搬送方向に相当し、X方向は、製造装置100における金属部材10の搬送路の幅方向に相当する。Z方向は、重力方向に沿った方向であり、下から上に向かう方向、つまり、高さ方向に相当する。X方向、Y方向、および、Z方向を示す矢印は、以下に参照する各図においても
図1と対応するように図示されている。
【0016】
本実施形態では、金属部材10は、例えば、ステンレス鋼や高合金等の鋼材、あるいは、チタン等の非鉄金属等の金属を圧延により線状に成形し、コイル状に巻き取ったものである。なお、金属部材10は、前述の鋼や非鉄金属に限定されることはなく、例えば、鉄など、様々な金属で構成されていてもよい。また、金属部材10は、線状に圧延されてコイル状に巻かれたものでなくてもよい。金属部材10は、以下で説明する載置板20の板面21に載置可能な構成であればよく、例えば、板状や矩形状、円柱状、円筒状に成形されていてもよい。
【0017】
製造装置100は、金属部材10を載置板20に載置して搬送する搬送機構110と、材料受入部120と、加熱により金属部材10の性質を調整する熱処理を実行する熱処理炉121と、部材搬出部123と、を備える。製造装置100は、材料受入部120において受け入れた金属部材10を、搬送機構110によって搬送しながら、熱処理炉121で金属部材10に熱処理を施し、熱処理済みの金属部材10を部材搬出部123によって搬出する。
【0018】
製造装置100の搬送機構110は、金属部材10を載置する載置板20と、金属部材10が載置された載置板20を搬送する搬送部23と、載置板20の裏表を反転させる反転機構30と、を備える。
【0019】
載置板20は、例えば、鋼材によって構成された板状の部材であり、金属部材10を載置する板面21を有している。本実施形態では、載置板20の板面21は、略正方形形状または略長方形形状を有している。なお、後述するように、載置板20は、反転機構30により裏表が反転されるため、2つの板面のそれぞれが金属部材10の載置面として用いられる。載置板20は、例えば、10~50mm程度の厚みを有しており、100~500kgの重さを有している。なお、載置板20を構成する材料や、板面の形状、厚み、重さ等は特に限定されない。
【0020】
搬送部23は、複数の搬送ローラ25を備える。搬送部23では、搬送ローラ25が配列されることにより、載置板20の搬送路が構成されている。搬送部23は、金属部材10が載置された載置板20を水平方向に沿った姿勢で搬送する。
【0021】
搬送部23の搬送路の上流端には材料受入部120が設けられている。材料受入部120では、図示しない運搬機構により、熱処理前の金属部材10が、搬送路上に準備された載置板20の板面21の上に載置される。
【0022】
材料受入部120の下流には、熱処理炉121が設けられている。搬送部23は、金属部材10を、載置板20に載置された状態で搬送し、熱処理炉121を通過させる。熱処理炉121の下流には、部材搬出部123が設けられている。部材搬出部123では、図示しない運搬機構により、載置板20の板面21上から、熱処理後の金属部材10を取り除き、搬出する。
【0023】
反転機構30は、搬送部23の搬送路の下流端に設けられている。反転機構30は、熱処理後の金属部材10が取り除かれた後に搬送部23によって搬送されてきた載置板20を受け入れ、載置板20を回動させて裏表を反転させる。反転機構30により反転された載置板20は、図示しない回送手段により、搬送部23の材料受入部120へと戻され、再び、金属部材10の搬送に用いられる。
【0024】
このように、本実施形態の製造装置100の搬送機構110では、金属部材10の搬送が完了した載置板20が、反転機構30により、次の金属部材10が載置される前に裏表が反転される。そのため、金属部材10の搬送のたびに、載置板20の同じ板面21に金属部材10が載置されることが抑制されるため、載置板20が、金属部材10の重みにより、経年的に厚み方向に撓み変形することが抑制される。
【0025】
本実施形態の製造装置100の搬送機構110では、載置板20は、熱処理炉121での熱に曝されており、金属部材10の重みによる変形を生じやすい環境に置かれている。そのため、前述のように反転しながら繰り返し使用されることによる効果をより顕著に得ることができる。
【0026】
さらに、本実施形態の製造装置100では、以下に説明するように、搬送機構110が備える反転機構30は、載置板20を反転させる際に、載置板20から受ける負荷が低減されるように構成されている。
【0027】
図2および
図3を参照して、反転機構30の構成を説明する。
図2は、反転機構30をX方向に沿って側方から見たときの概略側面図である。
図3は、反転機構30をZ方向に沿って上方から見たときの概略平面図である。
図2および
図3では、反転機構30の保持部32に保持されているときの載置板20の位置を一点鎖線で例示している。また、
図2および
図3では、回動機構50により180°回動された後の保持部32を破線で図示してある。
【0028】
反転機構30は、反転させる載置板20を保持する保持部32と、保持部32を回動させる回動機構50と、を備える。
【0029】
保持部32は、載置板20を受け入れる際に上側に配置される上側支持部33と、下側に配置される下側支持部34と、を有する。上側支持部33と下側支持部34とはそれぞれ、Z方向に互いに対向するように配列されている。保持部32は、載置板20を、上側支持部33と下側支持部34とによって厚み方向に挟む状態で保持する。
【0030】
保持部32は、回動機構50により回動される前には、上側支持部33と載置板20との間に間隙が形成される状態で載置板20を保持する。この間隙は、例えば、5~50mm程度としてもよい。本実施形態では、載置板20は、搬送部23によって、搬送時の姿勢のまま上側支持部33と下側支持部34の間に挿入されることにより、保持部32に保持される。上記のように間隙が形成されていれば、上側支持部33と下側支持部34の間に、載置板20を円滑に挿入することが可能である。
【0031】
上側支持部33と下側支持部34とはそれぞれ、保持部32に保持されたときの載置板20の板面21に沿って延びるように、互いに並列に延びている延在部37を有している。本実施形態では、各延在部37は同じ形状を有しており、Z方向に重なり合う。
【0032】
各延在部37は、回動機構50の回動軸部52の径方向において、基端部36の位置まで差し込まれた載置板20の板面21の中心CPを超える位置まで延在している。なお、本実施形態では、載置板20の中心の位置は、載置板20の重心の位置とほぼ一致する。
【0033】
また、本実施形態では、各延在部37は、互いに並列に延びる一対の柱状部位38によって構成されている。本実施形態では、一対の柱状部位38は、例えば、平板な四角柱形状を有している。他の実施形態では、一対の柱状部位38は、他の形状を有していてもよく、例えば、円柱形状を有していてもよい。一対の柱状部位38は、保持部32が載置板20を保持する際には、載置板20の重心、つまり、中心CPを挟むように載置板20の板面21上において互いに並列に延びるように配置される。
【0034】
保持部32は、下側支持部34に設けられた押上機構40を備える。押上機構40は、保持部32に保持されている載置板20を、上側支持部33にほぼ接触するまで、上側支持部33の方へと押し上げる。押上機構40により載置板20を押し上げる理由については後述する。
【0035】
押上機構40は、一対の柱状部位38のそれぞれに設けられている。本実施形態では、押上機構40は、載置板20の板面21の中心より延在部37の先端に寄った位置に設けられている。押上機構40は、押上プレート41と、伸縮駆動部43と、複数の支持柱部44と、を備える。
【0036】
押上プレート41は、下側支持部34の延在部37の上面に配置されており、保持部32に保持された載置板20の板面21に面接触する。伸縮駆動部43と複数の支持柱部44とは、押上プレート41の下方から押上プレート41を支持している。
【0037】
伸縮駆動部43は、伸縮駆動させるピストンが下側支持部34をZ方向に貫通するように設置されている。本実施形態では、伸縮駆動部43は、エアシリンダによって構成されており、図示しない配管を介して外部の圧力源から供給されるガスの圧力によってピストンを伸縮させる。ピストンの上端は、押上プレート41の下面に連結されている。下側支持部34の上面から延び出る伸縮駆動部43のピストンの伸縮により、押上プレート41は、下側支持部34に対して昇降運動をする。押上機構40は、伸縮駆動部43が伸長して押上プレート41を押し上げることにより、載置板20を押し上げる。
【0038】
複数の支持柱部44は、伸縮駆動部43に隣り合う位置において、下側支持部34をZ方向に貫通するように設置されている。複数の支持柱部44の上端は、押上プレート41の下面に連結されており、伸縮駆動部43のピストンとともに下側支持部34の上面から延び出て押上プレート41を支持する。複数の支持柱部44の支持により、伸縮駆動部43により昇降している間の押上プレート41の姿勢が安定する。
【0039】
回動機構50は、保持部32に連結され、回動軸RXを中心として回動可能な回動軸部52と、回動軸部52に回転駆動力を伝達する駆動力源55と、を備える。回動機構50は、搬送機構110の図示しない制御部からの指令により、回動軸部52を支点として保持部32を回動させる。
【0040】
本実施形態では、回動軸部52は、上側支持部33と下側支持部34の各基端部36に連結されている。駆動力源55は、回転駆動力を発生させるモータと、モータの回転駆動力を回動軸部52に伝達する減速機と、を有する。駆動力源55が備えるモータおよび減速機についての図示および詳細な説明は省略する。
【0041】
図4(a)~(c)は、反転機構30が載置板20を反転させる工程を時系列で順に示す模式図である。
【0042】
図4(a)を参照する。第1工程では、載置板20が上側支持部33と下側支持部34の間に挿入される。第1工程では、載置板20は、上側支持部33と下側支持部34の基端部36の位置まで水平方向に沿って挿入され、下側支持部34の上に載置される。この段階では、上述したように、上側支持部33と載置板20との間には間隙が生じている。また、
図3に示されていように、上側支持部33および下側支持部34の一対の柱状部位38は、載置板20の重心を挟む地位に配置される。
【0043】
図4(b)を参照する。第2工程では、押上機構40により載置板20が上側支持部33にほぼ接するまで押し上げられる。上述したように、本実施形態では、押上機構40が、下側支持部34の先端側に寄った位置に設けられているため、押上機構40から付与される圧力により、載置板20を上側支持部33の先端側により確実に接触させることができる。
【0044】
図4(c)を参照する。第3工程では、押上機構40により載置板20を上側支持部33に接触させたままの状態で、回動機構50により、回動軸部52を支点として上側支持部33と下側支持部34とをともに回動させる。本実施形態では、回動機構50は、上側支持部33と下側支持部34とを180°回動させる。これにより、載置板20は裏表が反転される。
【0045】
第3工程で回動している間、載置板20は、押上機構40により、上側支持部33に接した状態が維持されているため、回動角度が90°を超えたときにも、上側支持部33および下側支持部34に対する配置姿勢が急激に崩れることが抑制される。そのため、保持部32が回動している間に、上側支持部33と下側支持部34との間で載置板20ががたつくなどして、保持部32や回動機構50の減速機等に負荷が加わることが抑制される。よって、反転機構30による載置板20の反転が円滑化され、反転機構30の劣化や損傷の発生が抑制される。
【0046】
図5は、参考例としての反転機構30aを示す概略図である。
図5では、参考例の反転機構30aが載置板20を反転させている途中の様子が模式的に図示されている。参考例の反転機構30aは、保持部30aが、押上機構40が設けられていない下側支持部34aを備えている点以外は、本実施形態の反転機構30の構成とほぼ同じである。
【0047】
参考例の反転機構30aでは、回動機構50による保持部32aの回動角度が90°を超えたときに、載置板20が下側支持部34aから上側支持部33の方へと傾いて上側支持部33に衝突するように接触する場合がある。このような保持部32での載置板20のがたつきは、保持部32の上側支持部33や回動機構50の減速機に大きな負荷を与えることになり、反転機構30aの損傷・劣化の原因となる。これに対して、本実施形態の反転機構30によれば、上述したように、載置板20を反転させる際のこのような不具合の発生が抑制されている。
【0048】
以上のように、本実施形態の反転機構30によれば、保持部32が回動している間の載置板20の支持性が、押上機構40によって高められているため、載置板20のがたつきなどに起因して、保持部32や回動機構50に大きな負荷がかかることが抑制される。よって、反転機構30における劣化や損傷の発生を抑制することができる。
【0049】
本実施形態の反転機構30によれば、上側支持部33と下側支持部34の延在部37はそれぞれ、回動軸部52の径方向においいて載置板20の中心CPを超えた領域まで延在している。これにより、上側支持部33と下側支持部34による載置板20の支持範囲が大きくなり、保持部32が回動している間の載置板20の配置姿勢の安定性がさらに高められている。
【0050】
上述したように、本実施形態の反転機構30によれば、上側支持部33と下側支持部34の延在部37はそれぞれ、一対の柱状部位38によって構成されている。これにより、上側支持部33と下側支持部34は、載置板20の支持性を確保しながら小型化・軽量化されており、保持部32の回動の際に回動機構50にかかる負荷が低減されている。
【0051】
また、上述したように、本実施形態の反転機構30によれば、保持部32が載置板20を保持しているときに、一対の柱状部位38は、載置板20の重心を挟むように配置される。これにより、保持部32において載置板20の幅方向に重心の偏りが生じることが抑制されるため、保持部32が回動されている間の載置板20の配置姿勢の安定性がより一層、高められる。
【0052】
上述したように、本実施形態の反転機構30によれば、押上機構40は、下側支持部34の先端側に寄った位置に設けられており、保持部32が回動する際に、載置板20が最もがたつきやすい部位において載置板20の固定性が高められている。よって、保持部32の回動の際に、載置板20ががたつくことが、より効果的に抑制されている。また、本実施形態の反転機構30によれば、押上機構40は下側支持部34の延在部37の先端側に局所的な範囲に設けられていればよく、押上機構40の小型化が実現さていれる。
【0053】
本実施形態の反転機構30によれば、押上機構40の伸縮駆動部43はエアシリンダによって構成されている。そのため、伸縮駆動部43を油圧シリンダや、ソレノイド機構、モータ駆動により伸縮するアクチュエータ等によって構成した場合よりも押上機構40の小型化や構成の簡素化が可能である。
【0054】
本実施形態の搬送機構110によれば、上記のように、載置板20の裏表を入れ替えながら金属部材10の搬送が繰り返される。また、載置板20の反転の際に繰り返しかかる負荷に起因する、反転機構30の経年劣化や損傷の発生が抑制される。そのため、載置板20や反転機構30に起因する搬送機構110の故障の発生が抑制され、搬送機構110の稼働率が高められる。
【0055】
2.他の実施形態:
本発明は、上述の実施形態の構成に限定されることはなく、例えば、以下のような形態で実現することもできる。本明細書において、他の実施形態として説明されている構成はいずれも、上述の実施形態と同様に、本発明を実施するための形態の一例として位置づけられる。
【0056】
2-1.他の実施形態1:
上記実施形態において、上側支持部33と下側支持部34の延在部37は、一対の柱状部位38によって構成される代わりに、例えば、板状の部材や格子状のフレーム等によって構成されていてもよい。また、延在部37は、一対の柱状部位38に加えて、一対の柱状部位38に並列な柱状部位を有するように構成されていてもよい。延在部37は、載置板20を支持できるのであれば、載置板20の中心CPの手前までしか延在していない構成であってもよい。
【0057】
2-2.他の実施形態2:
上記実施形態において、回動機構50の回動軸部52が連結される場所は、上側支持部33と下側支持部34の基端部36には限定されない。回動機構50の回動軸部52は、例えば、下側支持部34の中央部に連結されていてもよく、その中央部を支点として、下側支持部34と、下側支持部34に連結されている上側支持部33とをともに回動させてもよい。
【0058】
2-3.他の実施形態3:
押上機構40は、下側支持部34の延在部37の上面全体にわたって設けられていてもよい。また、押上機構40は、下側支持部34の複数の箇所に分離して設けられていてもよい。押上機構40は、エアシリンダ以外の手段によって、載置板20を押し上げるように構成されていてもよい。押上機構40は、大型化が許容されるのであれば、例えば、油圧シリンダや、ソレノイド機構、モータ駆動により伸縮するアクチュエータによって構成されてもよい。
【0059】
2-4.他の実施形態4:
上記実施形態において、搬送機構110は、金属部材10を搬送するたびに反転機構30によって載置板20を反転さなくてもよい。搬送機構110は、例えば、載置板20を反転させることなく、金属部材10の搬送を所定の回数、繰り返した後に、反転機構30により、載置板20を反転させて、再び、金属部材10の搬送を所定の回数繰り返させるものとしてもよい。
【0060】
2-5.他の実施形態5:
上記実施形態において、製造装置100は、加熱処理に代えて、あるいは、加熱処理に加えて、他の加工処理を金属部材10に施すものとしてもよい。製造装置100は、金属部材10に酸洗処理を施すものとしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…金属部材、20…載置板、21…板面、23…搬送部、25…搬送ローラ、30…反転機構、30a…参考例の反転機構、32…保持部、33…上側支持部、34…下側支持部、34a…参考例の下側支持部、36…基端部、37…延在部、38…一対の柱状部位、40…押上機構、41…押上プレート、43…伸縮駆動部、44…複数の支持柱部、50…回動機構、52…回動軸部、55…駆動力源、100…製造装置、120…材料受入部、110…搬送機構、121…熱処理炉、123…部材搬出部、CP…中心、RX…回動軸