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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084316
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】車両用電源装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/10 20190101AFI20240618BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240618BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20240618BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240618BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B60L58/10
B60L50/60
B60L53/14
H02J1/00 304H
H02J1/00 309R
H02H7/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198518
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昂大
(72)【発明者】
【氏名】下田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】柳田 泰次
【テーマコード(参考)】
5G165
5H125
【Fターム(参考)】
5G165BB05
5G165CA02
5G165EA02
5G165GA09
5G165NA01
5G165NA02
5G165NA10
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC01
5H125BC21
5H125BC24
5H125CD04
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】バッテリから電力供給対象への電力供給を途絶えにくくする。
【解決手段】車両用電源装置10は、第1正極側リレー51と、第2正極側リレー52と、正極側スイッチ部53と、を備える。第1正極側リレー51は、バッテリ20と第1電力供給対象21の間において、第1正極側分岐路31に設けられる。第2正極側リレー52は、バッテリ20と第2電力供給対象22の間において、第2正極側分岐路32に設けられる。正極側スイッチ部53は、第1正極側分岐路31のうち第1正極側リレー51よりも第1電力供給対象21側の経路である第1正極側導電路33と、第2正極側分岐路32のうち第2正極側リレー52よりも第2電力供給対象22側の経路である第2正極側導電路34と、の間に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、前記バッテリの正極側の端子に接続される正極側共通経路と、前記正極側共通経路から分岐する第1正極側分岐路と、前記第1正極側分岐路に接続される第1電力供給対象と、前記正極側共通経路から分岐する第2正極側分岐路と、前記第2正極側分岐路に接続される第2電力供給対象と、を備える車載用電源システムに用いられる車両用電源装置であって、
前記バッテリと前記第1電力供給対象の間において、前記第1正極側分岐路に設けられる第1正極側リレーと、
前記バッテリと前記第2電力供給対象の間において、前記第2正極側分岐路に設けられる第2正極側リレーと、
前記第1正極側分岐路のうち前記第1正極側リレーよりも前記第1電力供給対象側の経路である第1正極側導電路と、前記第2正極側分岐路のうち前記第2正極側リレーよりも前記第2電力供給対象側の経路である第2正極側導電路と、の間に設けられる正極側スイッチ部と、を備える
車両用電源装置。
【請求項2】
前記車載用電源システムは、前記第1正極側導電路に接続される第1コンデンサと、前記第2正極側導電路に接続される第2コンデンサと、を備え、
更に、前記第1正極側リレー及び前記第2正極側リレーのオフ状態において、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの少なくとも一方に電力を供給するプリチャージ動作を行う回路部を備える
請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記車載用電源システムは、前記バッテリの負極側の端子に接続される負極側共通経路と、前記負極側共通経路から分岐して前記第1電力供給対象に接続される第1負極側分岐路と、前記負極側共通経路から分岐して前記第2電力供給対象に接続される第2負極側分岐路と、を備え、
更に、前記第1負極側分岐路と前記第2負極側分岐路との間に設けられる負極側スイッチ部と、
前記バッテリと前記負極側スイッチ部の間において、前記第1負極側分岐路に設けられる第1負極側リレーと、
前記バッテリと前記負極側スイッチ部の間において、前記第2負極側分岐路に設けられる第2負極側リレーと、
抵抗部と並列リレーを直列に接続した構成をなす並列回路と、を備え、
前記並列回路は、前記第1負極側リレー及び前記第2負極側リレーの各々に対して並列に設けられる
請求項2に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記回路部は、前記第1正極側リレー及び前記第2正極側リレーの各々に対して並列に設けられる前記並列回路を有し、
更に、前記第1正極側リレー、前記第2正極側リレー、前記第1負極側リレー、前記第2負極側リレー、及び前記並列リレーを制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記バッテリの充放電を開始させる開始条件が成立した場合に、前記第1正極側リレー、前記第2正極側リレー、前記第1負極側リレー、及び前記第2負極側リレーのうち切替対象のリレーに対して並列に設けられる前記並列回路の前記並列リレーをオン状態に制御する第1制御を実行し、
前記第1制御の実行中に切替条件が成立した場合に、前記切替対象の前記リレーをオン状態に切り替える第2制御を実行する
請求項3に記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1正極側リレー、前記第2正極側リレー、前記第1負極側リレー、及び前記第2負極側リレーの劣化度を比較し、比較結果に基づいて前記切替対象の前記リレーを選択する
請求項4に記載の車両用電源装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記劣化度の最も小さい前記リレーを、前記切替対象の前記リレーとして選択する
請求項5に記載の車両用電源装置。
【請求項7】
前記第1負極側リレーに対して並列に設けられる前記並列回路は、前記抵抗部としての負極側抵抗部と、前記並列リレーとしての第1負極側並列リレーと、を直列に接続した構成をなし、
前記第2負極側リレーに対して並列に設けられる前記並列回路は、前記負極側抵抗部と、前記並列リレーとしての第2負極側並列リレーと、を直列に接続した構成をなす
請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の車両用電源装置。
【請求項8】
前記車載用電源システムは、前記バッテリの負極側の端子に接続される負極側共通経路と、前記負極側共通経路から分岐して前記第1電力供給対象に接続される第1負極側分岐路と、前記負極側共通経路から分岐して前記第2電力供給対象に接続される第2負極側分岐路と、を備え、
更に、前記第1負極側分岐路と前記第2負極側分岐路との間に設けられる負極側スイッチ部を備える
請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項9】
溶断温度を超えると溶断される温度ヒューズを備え、
前記温度ヒューズは、前記第1正極側分岐路における前記正極側スイッチ部よりも前記バッテリ側の経路、前記第2正極側分岐路における前記正極側スイッチ部よりも前記バッテリ側の経路、前記第1負極側分岐路における前記負極側スイッチ部よりも前記バッテリ側の経路、前記第2負極側分岐路における前記負極側スイッチ部よりも前記バッテリ側の経路、の少なくともいずれかの経路に設けられる
請求項8に記載の車両用電源装置。
【請求項10】
前記第1正極側リレー、前記第2正極側リレー、及び前記回路部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記バッテリの充放電を開始させる開始条件が成立した場合に、前記回路部に前記プリチャージ動作を行わせた後、前記第1正極側リレー、及び前記第2正極側リレーのうち切替対象のリレーをオン状態に切り替える制御を実行し、
更に、前記制御部は、前記第1正極側リレー、及び前記第2正極側リレーの劣化度を比較し、比較結果に基づいて前記切替対象の前記リレーを選択する
請求項2に記載の車両用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動車両を用いた電力供給装置が開示されている。この電力供給装置は、駆動用バッテリを備える。駆動用バッテリは、高電圧ラインを介してMCUインバータに接続されており、急速充電用高電圧ラインを介してV2X機器に接続されている。つまり、特許文献1の駆動用バッテリは、第1ラインを介して第1電力供給対象に接続されており、第2ラインを介して第2電力供給対象に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/103707号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の技術では、第1ラインが切断された場合に第1電力供給対象へ電力を供給できなくなり、第2ラインが切断された場合に第2電力供給対象へ電力を供給できなくなる。
【0005】
本開示は、バッテリから電力供給対象への電力供給が途絶えにくい技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両用電源装置は、
バッテリと、前記バッテリの正極側の端子に接続される正極側共通経路と、前記正極側共通経路から分岐する第1正極側分岐路と、前記第1正極側分岐路に接続される第1電力供給対象と、前記正極側共通経路から分岐する第2正極側分岐路と、前記第2正極側分岐路に接続される第2電力供給対象と、を備える車載用電源システムに用いられる車両用電源装置であって、
前記バッテリと前記第1電力供給対象の間において、前記第1正極側分岐路に設けられる第1正極側リレーと、
前記バッテリと前記第2電力供給対象の間において、前記第2正極側分岐路に設けられる第2正極側リレーと、
前記第1正極側分岐路のうち前記第1正極側リレーよりも前記第1電力供給対象側の経路である第1正極側導電路と、前記第2正極側分岐路のうち前記第2正極側リレーよりも前記第2電力供給対象側の経路である第2正極側導電路と、の間に設けられる正極側スイッチ部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術は、バッテリから電力供給対象への電力供給が途絶えにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の車両用電源装置を備えた車両用電源システムを概略的に示す回路図である。
図2図2は、切替対象のリレーが第1正極側リレーである場合に車両用電源装置が第1制御を実行したときの動作を説明するための説明図である。
図3図3は、切替対象のリレーが第2正極側リレーである場合に車両用電源装置が第1制御を実行したときの動作を説明するための説明図である。
図4図4は、切替対象のリレーが第1負極側リレーである場合に車両用電源装置が第1制御を実行したときの動作を説明するための説明図である。
図5図5は、切替対象のリレーが第2負極側リレーである場合に車両用電源装置が第1制御を実行したときの動作を説明するための説明図である。
図6図6は、第2実施形態の車両用電源装置を備えた車両用電源システムを概略的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
【0010】
〔1〕バッテリと、前記バッテリの正極側の端子に接続される正極側共通経路と、前記正極側共通経路から分岐する第1正極側分岐路と、前記第1正極側分岐路に接続される第1電力供給対象と、前記正極側共通経路から分岐する第2正極側分岐路と、前記第2正極側分岐路に接続される第2電力供給対象と、を備える車載用電源システムに用いられる車両用電源装置であって、
前記バッテリと前記第1電力供給対象の間において、前記第1正極側分岐路に設けられる第1正極側リレーと、
前記バッテリと前記第2電力供給対象の間において、前記第2正極側分岐路に設けられる第2正極側リレーと、
前記第1正極側分岐路のうち前記第1正極側リレーよりも前記第1電力供給対象側の経路である第1正極側導電路と、前記第2正極側分岐路のうち前記第2正極側リレーよりも前記第2電力供給対象側の経路である第2正極側導電路と、の間に設けられる正極側スイッチ部と、を備える
車両用電源装置。
【0011】
上記車両用電源装置は、バッテリに基づく電力を、正極側共通経路及び第1正極側分岐路を介して第1電力供給対象に供給することができ、正極側共通経路及び第2正極側分岐路を介して第2電力供給対象に供給することができる。しかも、上記車両用電源装置は、正極側スイッチ部よりもバッテリ側で第1正極側分岐路が切断された場合であっても、正極側スイッチ部がオン状態に切り替わることで第2正極側分岐路を介して第1電力供給対象に電力を供給することができる。また、上記車両用電源装置は、正極側スイッチ部よりもバッテリ側で第2正極側分岐路が切断された場合であっても、正極側スイッチ部がオン状態に切り替わることで第1正極側分岐路を介して第2電力供給対象に電力を供給することができる。つまり、上記車両用電源装置は、バッテリから第1電力供給対象及び第2電力供給対象への電力供給が途絶えにくい。
【0012】
〔2〕前記車載用電源システムは、前記第1正極側導電路に接続される第1コンデンサと、前記第2正極側導電路に接続される第2コンデンサと、を備え、
更に、前記第1正極側リレー及び前記第2正極側リレーのオフ状態において、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの少なくとも一方に電力を供給するプリチャージ動作を行う回路部を備える
〔1〕に記載の車両用電源装置。
【0013】
上記車両用電源装置は、第1正極側リレー又は第2正極側リレーをオン状態に切り替える前に、回路部を利用して第1コンデンサ及び第2コンデンサの少なくとも一方を充電するプリチャージ動作を行うことができる。上記車両用電源装置は、このような対応をとることで、第1正極側リレー及び第2正極側リレーのうちオン状態に切り替わるリレーに流れる突入電流を抑えることができ、ひいては、当該リレーの劣化を抑えることができる。
【0014】
〔3〕前記車載用電源システムは、前記バッテリの負極側の端子に接続される負極側共通経路と、前記負極側共通経路から分岐して前記第1電力供給対象に接続される第1負極側分岐路と、前記負極側共通経路から分岐して前記第2電力供給対象に接続される第2負極側分岐路と、を備え、
更に、前記第1負極側分岐路と前記第2負極側分岐路との間に設けられる負極側スイッチ部と、
前記バッテリと前記負極側スイッチ部の間において、前記第1負極側分岐路に設けられる第1負極側リレーと、
前記バッテリと前記負極側スイッチ部の間において、前記第2負極側分岐路に設けられる第2負極側リレーと、
抵抗部と並列リレーを直列に接続した構成をなす並列回路と、を備え、
前記並列回路は、前記第1負極側リレー及び前記第2負極側リレーの各々に対して並列に設けられる
〔2〕に記載の車両用電源装置。
【0015】
プリチャージ動作後に第1正極側リレー又は第2正極側リレーがオン状態に切り替わることで、リレーの劣化が抑えられるものの、劣化は生じ得る。上記車両用電源装置は、並列リレー、正極側スイッチ部、及び負極側スイッチ部がオン状態で、第1正極側リレー又は第2正極側リレーがオン状態のときに、第1コンデンサ及び第2コンデンサを充電するプリチャージ動作を行うことができる。そして、上記車両用電源装置は、このプリチャージ動作後に上記並列リレーと並列に設けられる第1負極側リレー又は第2負極側リレーをオン状態に切り替える対応をとることで、バッテリからの電力を、抵抗部を介さずに第1電力供給対象及び第2電力供給対象に供給することができる。このような動作が行われることで、第1正極側リレー及び第2正極側リレーの劣化がより効果的に抑えられる。
【0016】
〔4〕前記回路部は、前記第1正極側リレー及び前記第2正極側リレーの各々に対して並列に設けられる前記並列回路を有し、
更に、前記第1正極側リレー、前記第2正極側リレー、前記第1負極側リレー、前記第2負極側リレー、及び前記並列リレーを制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記バッテリの充放電を開始させる開始条件が成立した場合に、前記第1正極側リレー、前記第2正極側リレー、前記第1負極側リレー、及び前記第2負極側リレーのうち切替対象のリレーに対して並列に設けられる前記並列回路の前記並列リレーをオン状態に制御する第1制御を実行し、
前記第1制御の実行中に切替条件が成立した場合に、前記切替対象の前記リレーをオン状態に切り替える第2制御を実行する
〔3〕に記載の車両用電源装置。
【0017】
上記車両用電源装置は、第1制御を実行することで切替対象のリレーに対して並列に設けられる並列回路にプリチャージ動作を行わせることができる。そして、上記車両用電源装置は、第2制御を実行することで、切替対象のリレーをオン状態に切り替える。つまり、上記車両用電源装置は、プリチャージ動作後にオン状態に切り替えられる切替対象のリレーを、第1正極側リレー、第2正極側リレー、第1負極側リレー、及び第2負極側リレーの4つのリレーから選択することができる。
【0018】
〔5〕前記制御部は、前記第1正極側リレー、前記第2正極側リレー、前記第1負極側リレー、及び前記第2負極側リレーの劣化度を比較し、比較結果に基づいて前記切替対象の前記リレーを選択する
〔4〕に記載の車両用電源装置。
【0019】
上記車両用電源装置は、切替対象のリレーの選択にリレーの劣化度を反映させることができる。
【0020】
〔6〕前記制御部は、前記劣化度の最も小さい前記リレーを、前記切替対象の前記リレーとして選択する
〔5〕に記載の車両用電源装置。
【0021】
上記車両用電源装置は、各リレーを均等に劣化させやすいため、リレーを含む装置の長寿命化を図りやすい。
【0022】
〔7〕前記第1負極側リレーに対して並列に設けられる前記並列回路は、前記抵抗部としての負極側抵抗部と、前記並列リレーとしての第1負極側並列リレーと、を直列に接続した構成をなし、
前記第2負極側リレーに対して並列に設けられる前記並列回路は、前記負極側抵抗部と、前記並列リレーとしての第2負極側並列リレーと、を直列に接続した構成をなす
〔3〕から〔6〕のいずれか一つに記載の車両用電源装置。
【0023】
上記車両用電源装置は、第1負極側リレーに対して並列に設けられる並列回路と、第2負極側リレーに対して並列に設けられる並列回路とで負極側抵抗部を共用することができる。
【0024】
〔8〕前記車載用電源システムは、前記バッテリの負極側の端子に接続される負極側共通経路と、前記負極側共通経路から分岐して前記第1電力供給対象に接続される第1負極側分岐路と、前記負極側共通経路から分岐して前記第2電力供給対象に接続される第2負極側分岐路と、を備え、
更に、前記第1負極側分岐路と前記第2負極側分岐路との間に設けられる負極側スイッチ部とを備える
〔1〕から〔7〕のいずれか一つに記載の車両用電源装置。
【0025】
上記車両用電源装置は、負極側スイッチ部よりもバッテリ側で第1負極側分岐路が切断された場合であっても、負極側スイッチ部がオン状態に切り替わることで第2負極側分岐路を介して第1電力供給対象をバッテリの負極側の端子に電気的に接続させることができる。また、上記車両用電源装置は、負極側スイッチ部よりもバッテリ側で第2負極側分岐路が切断された場合であっても、負極側スイッチ部がオン状態に切り替わることで第1負極側分岐路を介して第2電力供給対象をバッテリの負極側の端子に電気的に接続することができる。つまり、上記車両用電源装置は、バッテリから電力供給対象への電力供給がより途絶えにくい。
【0026】
〔9〕溶断温度を超えると溶断される温度ヒューズを備え、
前記温度ヒューズは、前記第1正極側分岐路における前記正極側スイッチ部よりも前記バッテリ側の経路、前記第2正極側分岐路における前記正極側スイッチ部よりも前記バッテリ側の経路、前記第1負極側分岐路における前記負極側スイッチ部よりも前記バッテリ側の経路、前記第2負極側分岐路における前記負極側スイッチ部よりも前記バッテリ側の経路、の少なくともいずれかの経路に設けられる
〔8〕に記載の車両用電源装置。
【0027】
上記車両用電源装置は、温度ヒューズが溶断温度を超えた場合に、温度ヒューズが設けられた経路を溶断することができる。しかも、上記車両用電源装置は、上記経路が溶断された場合であっても、溶断された経路を迂回して第1電力供給対象又は第2電力供給対象への電力供給を継続することができる。
【0028】
〔10〕前記第1正極側リレー、前記第2正極側リレー、及び前記回路部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記バッテリの充放電を開始させる開始条件が成立した場合に、前記回路部に前記プリチャージ動作を行わせた後、前記第1正極側リレー、及び前記第2正極側リレーのうち切替対象のリレーをオン状態に切り替える制御を実行し、
更に、前記制御部は、前記第1正極側リレー、及び前記第2正極側リレーの劣化度を比較し、比較結果に基づいて前記切替対象の前記リレーを選択する
〔2〕に記載の車両用電源装置。
【0029】
上記車両用電源装置は、切替対象のリレーの選択にリレーの劣化度を反映させることができる。
【0030】
<第1実施形態>
1.車両用電源システム100の構成
図1には、車両用電源装置10を備えた車両用電源システム100が示されている。車両用電源システム100は、図示しない車両に用いられる。車両は、電気自動車であってもよいし、エンジン車であってもよいし、ハイブリッド車であってもよい。車両用電源システム100は、車両用電源装置10の他に、バッテリ20と、第1電力供給対象21と、第2電力供給対象22と、を備える。
【0031】
バッテリ20は、リチウムイオンバッテリであってもよいし、鉛バッテリであってもよいし、その他のバッテリであってもよい。バッテリ20の負極側の端子は、グラウンドに電気的に接続される。本明細書において、電圧とは、特に記載が無い限り、グラウンド電位を基準とした電圧のことである。
【0032】
第1電力供給対象21には、バッテリ20に基づく電力が供給される。第1電力供給対象21は、例えば車載用の電気機器である。第1電力供給対象21は、本実施形態では、車両の車輪を駆動する駆動部として構成される。第1電力供給対象21は、インバータ23と、モータ24と、を含む。インバータ23は、バッテリ20から供給される電圧に基づく直流電圧から交流電圧(例えば三相交流)を生成し、モータ24に供給する。モータ24は、例えば主機系モータである。モータ24は、バッテリ20から供給される電力に基づいて回転し、車両の車輪に対して回転力を与える装置である。
【0033】
第2電力供給対象22は、バッテリ20に基づく電力が供給される。第2電力供給対象22は、電気機器である。第2電力供給対象22は、例えばV2X(Vehicle to everything)通信を利用する電気機器であってもよい。第2電力供給対象22は、車載用の電気機器であってもよいし、車外の電気機器であってもよい。より具体的には、第2電力供給対象22は、車載充電器(例えばオンボードチャージャ)であってもよいし、車外充電器(例えばオフボードチャージャ)であってもよい。第2電力供給対象22が車載用の電気機器である場合には、車両用電源システム100全体が車両に搭載される。第2電力供給対象22が車外の電気機器である場合には、車両用電源システム100のうち第2電力供給対象22以外の構成が車両に搭載される。
【0034】
車両用電源システム100は、正極側共通経路30と、第1正極側分岐路31と、第2正極側分岐路32と、負極側共通経路40と、第1負極側分岐路41と、第2負極側分岐路42と、を備える。
【0035】
正極側共通経路30は、バッテリ20の正極側の端子に電気的に接続される。第1正極側分岐路31及び第2正極側分岐路32の各々は、正極側共通経路30から分岐する。負極側共通経路40は、バッテリ20の負極側の端子に電気的に接続される。第1負極側分岐路41及び第2負極側分岐路42の各々は、負極側共通経路40から分岐する。第1正極側分岐路31及び第1負極側分岐路41には、第1電力供給対象21が電気的に接続される。第2正極側分岐路32及び第2負極側分岐路42には、第2電力供給対象22が電気的に接続される。
【0036】
第1正極側分岐路31は、第1正極側分岐路31のうち後述する第1正極側リレー51よりも第1電力供給対象21側の経路である第1正極側導電路33を有する。第2正極側分岐路32は、第2正極側分岐路32のうち後述する第2正極側リレー52よりも第2電力供給対象22側の経路である第2正極側導電路34を有する。第1負極側分岐路41は、第1負極側分岐路41のうち後述する第1負極側リレー61よりも第1電力供給対象21側の経路である第1負極側導電路43を有する。第2負極側分岐路42は、第2負極側分岐路42のうち後述する第2負極側リレー62よりも第2電力供給対象22側の経路である第2負極側導電路44を有する。
【0037】
車両用電源システム100は、第1コンデンサ54と、第2コンデンサ64と、を備える。
【0038】
第1コンデンサ54は、第1正極側分岐路31(より具体的には、第1正極側導電路33)と第1負極側分岐路41(より具体的には、第1負極側導電路43)との間に設けられる。第1コンデンサ54の一端は、第1正極側分岐路31(より具体的には、第1正極側導電路33)に電気的に接続される。第1コンデンサ54の他端は、第1負極側分岐路41(より具体的には、第1負極側導電路43)に電気的に接続される。第1コンデンサ54は、バッテリ20と第1電力供給対象21との間に設けられる。第1コンデンサ54は、第1正極側分岐路31(より具体的には、第1正極側導電路33)に印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサとして機能する。
【0039】
第2コンデンサ64は、第2正極側分岐路32(より具体的には、第2正極側導電路34)と第2負極側分岐路42(より具体的には、第2負極側導電路44)との間に設けられる。第2コンデンサ64の一端は、第2正極側分岐路32(より具体的には、第2正極側導電路34)に電気的に接続される。第2コンデンサ64の他端は、第2負極側分岐路42(より具体的には、第2負極側導電路44)に電気的に接続される。第2コンデンサ64は、バッテリ20と第2電力供給対象22との間に設けられる。第2コンデンサ64は、第2正極側分岐路32(より具体的には、第2正極側導電路34)に印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサとして機能する。
【0040】
2.車両用電源装置10の構成
車両用電源装置10は、車両用電源システム100に用いられる。車両用電源装置10は、バッテリ20側から供給された電力を第1電力供給対象21及び第2電力供給対象22に供給する。
【0041】
車両用電源装置10は、第1正極側リレー51と、第2正極側リレー52と、第1負極側リレー61と、第2負極側リレー62と、を備える。第1正極側リレー51、第2正極側リレー52、第1負極側リレー61、及び第2負極側リレー62は、接点を有する機械式のスイッチを含む構成である。
【0042】
第1正極側リレー51は、バッテリ20と第1電力供給対象21との間において、第1正極側分岐路31に設けられる。第1正極側リレー51の一端は、バッテリ20の正極側の端子に短絡した構成でバッテリ20の正極側の端子に電気的に接続される。第1正極側リレー51の他端は、第1コンデンサ54の一端、及び第1電力供給対象21の一端に短絡した構成で、第1コンデンサ54の一端、及び第1電力供給対象21の一端に電気的に接続される。第1正極側リレー51は、オン状態のときに、第1正極側リレー51を介してバッテリ20の正極側の端子と第1コンデンサ54の一端及び第1電力供給対象21の一端とを電気的に接続する。第1正極側リレー51は、オフ状態のときに、第1正極側リレー51を介してのバッテリ20の正極側の端子と第1コンデンサ54の一端及び第1電力供給対象21の一端との間の電気的な接続を遮断する。
【0043】
第2正極側リレー52は、バッテリ20と第2電力供給対象22との間において、第2正極側分岐路32に設けられる。第2正極側リレー52の一端は、バッテリ20の正極側の端子に短絡した構成でバッテリ20の正極側の端子に電気的に接続される。第2正極側リレー52の他端は、第2コンデンサ64の一端、及び第2電力供給対象22の一端に短絡した構成で、第2コンデンサ64の一端、及び第2電力供給対象22の一端に電気的に接続される。第2正極側リレー52は、オン状態のときに、第2正極側リレー52を介してバッテリ20の正極側の端子と第2コンデンサ64の一端及び第2電力供給対象22の一端とを電気的に接続する。第2正極側リレー52は、オフ状態のときに、第2正極側リレー52を介してのバッテリ20の正極側の端子と第2コンデンサ64の一端及び第2電力供給対象22の一端との間の電気的な接続を遮断する。
【0044】
第1負極側リレー61は、バッテリ20と第1電力供給対象21との間において、第1負極側分岐路41に設けられる。第1負極側リレー61の一端は、バッテリ20の負極側の端子に短絡した構成でバッテリ20の負極側の端子に電気的に接続される。第1負極側リレー61の他端は、第1コンデンサ54の他端、及び第1電力供給対象21の他端に短絡した構成で、第1コンデンサ54の他端、及び第1電力供給対象21の他端に電気的に接続される。第1負極側リレー61は、オン状態のときに、第1負極側リレー61を介してバッテリ20の負極側の端子と第1コンデンサ54の他端及び第1電力供給対象21の他端とを電気的に接続する。第1負極側リレー61は、オフ状態のときに、第1負極側リレー61を介してのバッテリ20の負極側の端子と第1コンデンサ54の他端及び第1電力供給対象21の他端との間の電気的な接続を遮断する。
【0045】
第2負極側リレー62は、バッテリ20と第2電力供給対象22との間において、第2負極側分岐路42に設けられる。第2負極側リレー62の一端は、バッテリ20の負極側の端子に短絡した構成でバッテリ20の負極側の端子に電気的に接続される。第2負極側リレー62の他端は、第2コンデンサ64の他端、及び第2電力供給対象22の他端に短絡した構成で、第2コンデンサ64の他端、及び第2電力供給対象22の他端に電気的に接続される。第2負極側リレー62は、オン状態のときに、第2負極側リレー62を介してバッテリ20の負極側の端子と第2コンデンサ64の他端及び第2電力供給対象22の他端とを電気的に接続する。第2負極側リレー62は、オフ状態のときに、第2負極側リレー62を介してのバッテリ20の負極側の端子と第2コンデンサ64の他端及び第2電力供給対象22の他端との間の電気的な接続を遮断する。
【0046】
車両用電源装置10は、正極側スイッチ部53と、負極側スイッチ部63と、を備える。正極側スイッチ部53及び負極側スイッチ部63は、接点を有する機械式のスイッチを含む構成であってもよいし、FET(Field Effect Transistor)などの半導体スイッチング素子を含む構成であってもよい。
【0047】
正極側スイッチ部53は、第1正極側導電路33と第2正極側導電路34との間に設けられる。正極側スイッチ部53の一端は、第1正極側導電路33に短絡した構成で第1正極側導電路33に電気的に接続される。正極側スイッチ部53の一端は、第1正極側リレー51の他端、第1コンデンサ54の一端、及び第1電力供給対象21の一端に短絡した構成で、第1正極側リレー51の他端、第1コンデンサ54の一端、及び第1電力供給対象21の一端に電気的に接続される。正極側スイッチ部53の他端は、第2正極側導電路34に短絡した構成で第2正極側導電路34に電気的に接続される。正極側スイッチ部53の他端は、第2正極側リレー52の他端、第2コンデンサ64の一端、及び第2電力供給対象22の一端に短絡した構成で、第2正極側リレー52の他端、第2コンデンサ64の一端、及び第2電力供給対象22の一端に電気的に接続される。正極側スイッチ部53がオン状態のときに、第1正極側導電路33と第2正極側導電路34が短絡した構成で、第1正極側導電路33と第2正極側導電路34が電気的に接続される。正極側スイッチ部53がオフ状態のときに、正極側スイッチ部53を介しての双方向の電流の流れが遮断される。
【0048】
負極側スイッチ部63は、第1負極側導電路43と第2負極側導電路44との間に設けられる。負極側スイッチ部63の一端は、第1負極側導電路43に短絡した構成で第1負極側導電路43に電気的に接続される。負極側スイッチ部63の一端は、第1負極側リレー61の他端、第1コンデンサ54の他端、及び第1電力供給対象21の他端に短絡した構成で、第1負極側リレー61の他端、第1コンデンサ54の他端、及び第1電力供給対象21の他端に電気的に接続される。負極側スイッチ部63の他端は、第2負極側導電路44に短絡した構成で第2負極側導電路44に電気的に接続される。負極側スイッチ部63の他端は、第2負極側リレー62の他端、第2コンデンサ64の他端、及び第2電力供給対象22の他端に短絡した構成で、第2負極側リレー62の他端、第2コンデンサ64の他端、及び第2電力供給対象22の他端に電気的に接続される。負極側スイッチ部63がオン状態のときに、第1負極側導電路43と第2負極側導電路44が短絡した構成で、第1負極側導電路43と第2負極側導電路44が電気的に接続される。負極側スイッチ部63がオフ状態のときに、負極側スイッチ部63を介しての双方向の電流の流れが遮断される。
【0049】
車両用電源装置10は、正極側並列回路55A,55Bを備える。正極側並列回路55A,55Bは、並列回路の一例に相当し、回路部の一例に相当する。正極側並列回路55A,55Bは、第1正極側リレー51及び第2正極側リレー52のオフ状態において、第1コンデンサ54及び第2コンデンサ64の少なくとも一方に電力を供給するプリチャージ動作を行う。
【0050】
正極側並列回路55Aは、第1正極側リレー51に対して並列に設けられる。正極側並列回路55Aは、正極側抵抗部56と第1正極側並列リレー57を直列に接続した構成をなす。正極側並列回路55Aの一端は、第1正極側リレー51の一端とバッテリ20の正極側の端子との間の経路に短絡した構成で、第1正極側リレー51の一端とバッテリ20の正極側の端子との間の経路に電気的に接続されている。正極側並列回路55Aの一端は、バッテリ20の正極側の端子、第1正極側リレー51の一端、及び第2正極側リレー52の一端に短絡した構成で、バッテリ20の正極側の端子、第1正極側リレー51の一端、及び第2正極側リレー52の一端に電気的に接続されている。正極側並列回路55Aの他端は、第1正極側導電路33に短絡した構成で、第1正極側導電路33に電気的に接続されている。正極側並列回路55Aの他端は、第1正極側リレー51の他端、第1コンデンサ54の一端、第1電力供給対象21の一端、及び正極側スイッチ部53の一端に短絡した構成で、第1正極側リレー51の他端、第1コンデンサ54の一端、第1電力供給対象21の一端、及び正極側スイッチ部53の一端に電気的に接続されている。
【0051】
正極側並列回路55Bは、第2正極側リレー52に対して並列に設けられる。正極側並列回路55Bは、正極側抵抗部56と第2正極側並列リレー58を直列に接続した構成をなす。正極側並列回路55Bの一端は、第2正極側リレー52の一端とバッテリ20の正極側の端子との間の経路に短絡した構成で、第2正極側リレー52の一端とバッテリ20の正極側の端子との間の経路に電気的に接続されている。正極側並列回路55Bの一端は、バッテリ20の正極側の端子、第1正極側リレー51の一端、及び第2正極側リレー52の一端に短絡した構成で、バッテリ20の正極側の端子、第1正極側リレー51の一端、及び第2正極側リレー52の一端に電気的に接続されている。正極側並列回路55Bの他端は、第2正極側導電路34に短絡した構成で、第2正極側導電路34に電気的に接続されている。正極側並列回路55Bの他端は、第2正極側リレー52の他端、第2コンデンサ64の一端、第1電力供給対象21の一端、及び正極側スイッチ部53の他端に短絡した構成で、第2正極側リレー52の他端、第2コンデンサ64の一端、第1電力供給対象21の一端、及び正極側スイッチ部53の他端に電気的に接続されている。
【0052】
正極側抵抗部56の一端は、第1正極側リレー51の一端及び第2正極側リレー52の一端とバッテリ20の正極側の端子との間の経路に短絡した構成で、第1正極側リレー51の一端及び第2正極側リレー52の一端とバッテリ20の正極側の端子との間の経路に電気的に接続されている。正極側抵抗部56の他端は、第1正極側並列リレー57の一端と第2正極側並列リレー58の一端とに短絡した構成で、第1正極側並列リレー57の一端と第2正極側並列リレー58の一端とに電気的に接続されている。
【0053】
第1正極側並列リレー57の他端は、第1正極側導電路33に短絡した構成で、第1正極側導電路33に電気的に接続されている。第1正極側並列リレー57の他端は、第1正極側リレー51の他端、第1コンデンサ54の一端、第1電力供給対象21の一端、及び正極側スイッチ部53の一端に短絡した構成で、第1正極側リレー51の他端、第1コンデンサ54の一端、第1電力供給対象21の一端、及び正極側スイッチ部53の一端に電気的に接続されている。
【0054】
第2正極側並列リレー58の他端は、第2正極側導電路34に短絡した構成で、第2正極側導電路34に電気的に接続されている。第2正極側リレー52の他端、第2コンデンサ64の一端、第1電力供給対象21の一端、及び正極側スイッチ部53の他端に短絡した構成で、第2正極側リレー52の他端、第2コンデンサ64の一端、第1電力供給対象21の一端、及び正極側スイッチ部53の他端に電気的に接続されている。
【0055】
正極側抵抗部56は、例えば公知の抵抗器によって構成される。第1正極側並列リレー57及び第2正極側並列リレー58は、接点を有する機械式のスイッチを含む構成であってもよいし、FET(Field Effect Transistor)などの半導体スイッチング素子を含む構成であってもよい。第1正極側並列リレー57は、オン状態のときに、第1正極側並列リレー57を介してのバッテリ20側から第1電力供給対象21側への電流の流れを許容し、オフ状態のときに、第1正極側並列リレー57を介してのバッテリ20側から第1電力供給対象21側への電流の流れを遮断する。第2正極側並列リレー58は、オン状態のときに、第2正極側並列リレー58を介してのバッテリ20側から第2電力供給対象22側への電流の流れを許容し、オフ状態のときに、第2正極側並列リレー58を介してのバッテリ20側から第2電力供給対象22側への電流の流れを遮断する。
【0056】
正極側並列回路55Aは、第1正極側リレー51がオフ状態で、第1正極側並列リレー57がオン状態のときに、第1正極側導電路33に電力を供給するプリチャージ動作を行う。正極側並列回路55Bは、第2正極側リレー52がオフ状態で、第2正極側並列リレー58がオン状態のときに、第2正極側導電路34に電力を供給するプリチャージ動作を行う。
【0057】
車両用電源装置10は、負極側並列回路65A,65Bを備える。負極側並列回路65A,65Bは、並列回路の一例に相当する。
【0058】
負極側並列回路65Aは、第1負極側リレー61に対して並列に設けられる。負極側並列回路65Aは、負極側抵抗部66と第1負極側並列リレー67を直列に接続した構成をなす。負極側並列回路65Aの一端は、第1負極側リレー61の一端とバッテリ20の負極側の端子との間の経路に短絡した構成で、第1負極側リレー61の一端とバッテリ20の負極側の端子との間の経路に電気的に接続されている。負極側並列回路65Aの一端は、バッテリ20の正極側の端子、第1負極側リレー61の一端、及び第2負極側リレー62の一端に短絡した構成で、バッテリ20の正極側の端子、第1負極側リレー61の一端、及び第2負極側リレー62の一端に電気的に接続されている。負極側並列回路65Aの他端は、第1負極側導電路43に短絡した構成で、第1負極側導電路43に電気的に接続されている。負極側並列回路65Aの他端は、第1負極側リレー61の他端、第1コンデンサ54の他端、第1電力供給対象21の他端、及び負極側スイッチ部63の一端に短絡した構成で、第1負極側リレー61の他端、第1コンデンサ54の他端、第1電力供給対象21の他端、及び負極側スイッチ部63の一端に電気的に接続されている。
【0059】
負極側並列回路65Bは、第2負極側リレー62に対して並列に設けられる。負極側並列回路65Bは、負極側抵抗部66と第2負極側並列リレー68を直列に接続した構成をなす。負極側並列回路65Bの一端は、第2負極側リレー62の一端とバッテリ20の負極側の端子との間の経路に短絡した構成で、第2負極側リレー62の一端とバッテリ20の負極側の端子との間の経路に電気的に接続されている。負極側並列回路65Bの一端は、バッテリ20の正極側の端子、第1負極側リレー61の一端、及び第2負極側リレー62の一端に短絡した構成で、バッテリ20の正極側の端子、第1負極側リレー61の一端、及び第2負極側リレー62の一端に電気的に接続されている。負極側並列回路65Bの他端は、第2負極側導電路44に短絡した構成で、第2負極側導電路44に電気的に接続されている。負極側並列回路65Bの他端は、第2負極側リレー62の他端、第2コンデンサ64の他端、第2電力供給対象22の他端、及び負極側スイッチ部63の他端に短絡した構成で、第2負極側リレー62の他端、第2コンデンサ64の他端、第2電力供給対象22の他端、及び負極側スイッチ部63の他端に電気的に接続されている。
【0060】
負極側抵抗部66の一端は、第1負極側リレー61の一端及び第2負極側リレー62の一端とバッテリ20の負極側の端子との間の経路に短絡した構成で、第1負極側リレー61の一端及び第2負極側リレー62の一端とバッテリ20の負極側の端子との間の経路に電気的に接続されている。負極側抵抗部66の他端は、第1負極側並列リレー67の一端と第2負極側並列リレー68の一端とに短絡した構成で、第1負極側並列リレー67の一端と第2負極側並列リレー68の一端とに電気的に接続されている。
【0061】
第1負極側並列リレー67の他端は、第1負極側導電路43に短絡した構成で、第1負極側導電路43に電気的に接続されている。第1負極側並列リレー67の他端は、第1負極側リレー61の他端、第1コンデンサ54の他端、第1電力供給対象21の他端、及び負極側スイッチ部63の一端に短絡した構成で、第1負極側リレー61の他端、第1コンデンサ54の他端、第1電力供給対象21の他端、及び負極側スイッチ部63の一端に電気的に接続されている。
【0062】
第2負極側並列リレー68の他端は、第2負極側導電路44に短絡した構成で、第2負極側導電路44に電気的に接続されている。第2負極側並列リレー68の他端は、第2負極側リレー62の他端、第2コンデンサ64の他端、第2電力供給対象22の他端、及び負極側スイッチ部63の他端に短絡した構成で、第2負極側リレー62の他端、第2コンデンサ64の他端、第2電力供給対象22の他端、及び負極側スイッチ部63の他端に電気的に接続されている。
【0063】
負極側抵抗部66は、例えば公知の抵抗器によって構成される。第1負極側並列リレー67及び第2負極側並列リレー68は、接点を有する機械式のスイッチを含む構成であってもよいし、FET(Field Effect Transistor)などの半導体スイッチング素子を含む構成であってもよい。第1負極側並列リレー67は、オン状態のときに、第1負極側並列リレー67を介しての第1電力供給対象21側からバッテリ20側への電流の流れを許容し、オフ状態のときに、第1負極側並列リレー67を介しての第1電力供給対象21側からバッテリ20側への電流の流れを遮断する。第2負極側並列リレー68は、オン状態のときに、第2負極側並列リレー68を介しての第2電力供給対象22側からバッテリ20側への電流の流れを許容し、オフ状態のときに、第2負極側並列リレー68を介しての第2電力供給対象22側からバッテリ20側への電流の流れを遮断する。
【0064】
車両用電源装置10は、温度ヒューズ59を備える。温度ヒューズ59は、自身の温度が溶断温度を超えると溶断される。温度ヒューズ59は、第1負極側分岐路41(より具体的には、第1負極側分岐路41のうち第1負極側リレー61よりもバッテリ20側の経路)に設けられる。
【0065】
車両用電源装置10は、電圧検出部70,71,72,73,74,75と、電流検出部76と、温度検出部77,78,79,80と、制御部81と、を備える。
【0066】
電圧検出部70は、第1正極側リレー51の両端の電位差を検出する。電圧検出部71は、第2正極側リレー52の両端の電位差を検出する。電圧検出部72は、第1負極側リレー61の両端の電位差を検出する。電圧検出部73は、第2負極側リレー62の両端の電位差を検出する。電圧検出部74は、第1コンデンサ54の電圧(より具体的には、第1コンデンサ54の両端の電位差)を検出する。電圧検出部75は、第2コンデンサ64の電圧(より具体的には、第2コンデンサ64の両端の電位差)を検出する。電圧検出部70,71,72,73,74,75は、例えば公知の電圧検出回路として構成される。電圧検出部70,71,72,73,74,75は、検出値を特定可能な信号を出力する。制御部81は、電圧検出部70,71,72,73から出力された信号に基づいて、第1正極側リレー51、第2正極側リレー52、第1負極側リレー61、及び第2負極側リレー62の各々の両端の電位差を特定する。制御部81は、電圧検出部74から出力された信号に基づいて、第1コンデンサ54の電圧を特定する。制御部81は、電圧検出部75から出力された信号に基づいて、第2コンデンサ64の電圧を特定する。
【0067】
電流検出部76は、負極側共通経路40を流れる電流の値を検出する。電流検出部76は、例えば公知の電流センサとして構成される。電流検出部76は、検出値を特定可能な信号を出力する。制御部81は、電流検出部76から出力された信号に基づいて、負極側共通経路40を流れる電流の値を検出する。
【0068】
温度検出部77は、オン状態の第1正極側リレー51の温度(より具体的には、第1正極側リレー51の接点の温度)を検出する。温度検出部78は、オン状態の第2正極側リレー52の温度(より具体的には、第2正極側リレー52の接点の温度)を検出する。温度検出部79は、オン状態の第1負極側リレー61の温度(より具体的には、第1負極側リレー61の接点の温度)を検出する。温度検出部80は、オン状態の第2負極側リレー62の温度(より具体的には、第2負極側リレー62の接点の温度)を検出する。温度検出部77,78,79,80は、例えば公知の温度センサとして構成される。温度検出部77,78,79,80は、検出値を特定可能な信号を出力する。制御部81は、温度検出部77,78,79,80から出力された信号に基づいて、第1正極側リレー51、第2正極側リレー52、第1負極側リレー61、及び第2負極側リレー62の各々の温度を特定する。
【0069】
3.制御部81の構成
制御部81は、例えばMCU(Micro Controller Unit)などの集積回路を含んで構成される。制御部81は、CPUなどの情報処理部、ROMやRAMなどの記憶部を含む。
【0070】
制御部81は、第1正極側リレー51、第2正極側リレー52、第1負極側リレー61、第2負極側リレー62、第1正極側並列リレー57、第2正極側並列リレー58、第1負極側並列リレー67、第2負極側並列リレー68、正極側スイッチ部53、及び負極側スイッチ部63を制御する。
【0071】
制御部81は、バッテリ20の充放電を開始させる開始条件が成立した場合に、第1正極側リレー51、第2正極側リレー52、第1負極側リレー61、及び第2負極側リレー62のうち切替対象のリレーに対して並列に設けられる並列回路の並列リレーをオン状態に制御する第1制御を実行する。制御部81は、第1制御の実行中に切替条件が成立した場合に、切替対象のリレーをオン状態に切り替える第2制御を実行する。
【0072】
開始条件は、例えば車両が始動状態に切り替わったことである。車両の始動状態とは、例えば、始動スイッチ(例えば、イグニッションスイッチ、パワースイッチなど)がオン状態に切り替わったことである。制御部81は、例えば、始動スイッチのオンオフ状態を示すオンオフ信号を直接又は他の制御装置を介して取得することで、始動スイッチのオンオフ状態を特定する。
【0073】
3-1.切替対象のリレーが第1正極側リレー51である場合の動作例
切替対象のリレーが第1正極側リレー51である場合、制御部81は、例えば以下のように第1制御を実行する。制御部81は、第1正極側リレー51に対して並列に設けられる正極側並列回路55Aの第1正極側並列リレー57をオン状態に制御する。この制御に加え、制御部81は、第1制御において、電力を供給する対象に応じて、以下のように異なる制御を実行する。
【0074】
電力を供給する対象が第1電力供給対象21である場合、制御部81は、例えば第1負極側リレー61をオン状態に制御する。これにより、図2に示す経路RA1,RA2に電流が流れ、バッテリ20からの電力が第1コンデンサ54に供給される。つまり、第1コンデンサ54を充電するプリチャージ動作が行われる。
【0075】
電力を供給する対象が第2電力供給対象22である場合、制御部81は、例えば、正極側スイッチ部53及び第2負極側リレー62をオン状態に制御する。これにより、図2に示す経路RA1,RA3に電流が流れ、バッテリ20からの電力が第2コンデンサ64に供給される。つまり、第2コンデンサ64を充電するプリチャージ動作が行われる。
【0076】
電力を供給する対象が第1電力供給対象21及び第2電力供給対象22の両方である場合、制御部81は、例えば正極側スイッチ部53、第1負極側リレー61、及び第2負極側リレー62をオン状態に制御する。これにより、図2に示す経路RA1,RA2,RA3に電流が流れ、バッテリ20からの電力が、第1コンデンサ54及び第2コンデンサ64に供給される。つまり、第1コンデンサ54及び第2コンデンサ64を充電するプリチャージ動作が行われる。
【0077】
このような第1制御の実行中に切替条件が成立した場合、制御部81は、第2制御を実行する。制御部81は、第2制御において、第1正極側リレー51をオン状態に切り替え、第1正極側並列リレー57をオフ状態に切り替える。これにより、より大きい電力が供給対象に供給される。
【0078】
3-2.切替対象のリレーが第2正極側リレー52である場合の動作例
切替対象のリレーが第2正極側リレー52である場合、制御部81は、例えば以下のように第1制御を実行する。制御部81は、第2正極側リレー52に対して並列に設けられる正極側並列回路55Bの第2正極側並列リレー58をオン状態に制御する。この制御に加え、制御部81は、第1制御において、電力を供給する対象に応じて、以下のように異なる制御を実行する。
【0079】
電力を供給する対象が第1電力供給対象21である場合、制御部81は、例えば正極側スイッチ部53及び第1負極側リレー61をオン状態に制御する。これにより、図3に示す経路RB1,RB2に電流が流れ、バッテリ20からの電力が第1コンデンサ54に供給される。つまり、第1コンデンサ54を充電するプリチャージ動作が行われる。
【0080】
電力を供給する対象が第2電力供給対象22である場合、制御部81は、例えば、第2負極側リレー62をオン状態に制御する。これにより、図3に示す経路RB1,RB3に電流が流れ、バッテリ20からの電力が第2コンデンサ64に供給される。つまり、第2コンデンサ64を充電するプリチャージ動作が行われる。
【0081】
電力を供給する対象が第1電力供給対象21及び第2電力供給対象22の両方である場合、制御部81は、例えば正極側スイッチ部53、第1負極側リレー61、及び第2負極側リレー62をオン状態に制御する。これにより、図3に示す経路RB1,RB2,RB3に電流が流れ、バッテリ20からの電力が第1コンデンサ54及び第2コンデンサ64に供給される。つまり、第1コンデンサ54及び第2コンデンサ64を充電するプリチャージ動作が行われる。
【0082】
このような第1制御の実行中に切替条件が成立した場合、制御部81は、第2制御を実行する。制御部81は、第2制御において、第2正極側リレー52をオン状態に切り替え、第2正極側並列リレー58をオフ状態に切り替える。これにより、より大きい電力が供給対象に供給される。
【0083】
3-3.切替対象のリレーが第1負極側リレー61である場合の動作例
切替対象のリレーが第1負極側リレー61である場合、制御部81は、例えば以下のように第1制御を実行する。制御部81は、第1負極側リレー61に対して並列に設けられる負極側並列回路65Aの第1負極側並列リレー67をオン状態に制御する。この制御に加え、制御部81は、第1制御において、電力を供給する対象に応じて、以下のように異なる制御を実行する。
【0084】
電力を供給する対象が第1電力供給対象21である場合、制御部81は、例えば第1正極側リレー51をオン状態に制御する。これにより、図4に示す経路RC1,RC3に電流が流れ、バッテリ20からの電力が第1コンデンサ54に供給される。つまり、第1コンデンサ54を充電するプリチャージ動作が行われる。
【0085】
電力を供給する対象が第2電力供給対象22である場合、制御部81は、例えば、第2正極側リレー52及び負極側スイッチ部63をオン状態に制御する。これにより、図4に示す経路RC2,RC3に電流が流れ、バッテリ20からの電力が第2コンデンサ64に供給される。つまり、第2コンデンサ64を充電するプリチャージ動作が行われる。
【0086】
電力を供給する対象が第1電力供給対象21及び第2電力供給対象22の両方である場合、制御部81は、例えば第1正極側リレー51、第2正極側リレー52、及び負極側スイッチ部63をオン状態に制御する。これにより、図4に示す経路RC1,RC2,RC3に電流が流れ、バッテリ20からの電力が第1コンデンサ54及び第2コンデンサ64に供給される。つまり、第1コンデンサ54及び第2コンデンサ64を充電するプリチャージ動作が行われる。
【0087】
このような第1制御の実行中に切替条件が成立した場合、制御部81は、第2制御を実行する。制御部81は、第2制御において、第1負極側リレー61をオン状態に切り替え、第1負極側並列リレー67をオフ状態に切り替える。これにより、より大きい電力が供給対象に供給される。
【0088】
3-4.切替対象のリレーが第2負極側リレー62である場合の動作例
切替対象のリレーが第2負極側リレー62である場合、制御部81は、例えば以下のように第1制御を実行する。制御部81は、第2負極側リレー62に対して並列に設けられる負極側並列回路65Bの第2負極側並列リレー68をオン状態に制御する。この制御に加え、制御部81は、第1制御において、電力を供給する対象に応じて、以下のように異なる制御を実行する。
【0089】
電力を供給する対象が第1電力供給対象21である場合、制御部81は、例えば第1正極側リレー51及び負極側スイッチ部63をオン状態に制御する。これにより、図5に示す経路RD1,RD3に電流が流れ、バッテリ20からの電力が第1コンデンサ54に供給される。つまり、第1コンデンサ54を充電するプリチャージ動作が行われる。
【0090】
電力を供給する対象が第2電力供給対象22である場合、制御部81は、例えば、第2正極側リレー52をオン状態に制御する。これにより、図5に示す経路RD2,RD3に電流が流れ、バッテリ20からの電力が第2コンデンサ64に供給される。つまり、第2コンデンサ64を充電するプリチャージ動作が行われる。
【0091】
電力を供給する対象が第1電力供給対象21及び第2電力供給対象22の両方である場合、制御部81は、例えば第1正極側リレー51、第2正極側リレー52、及び負極側スイッチ部63をオン状態に制御する。これにより、図5に示す経路RD1,RD2,RD3に電流が流れ、バッテリ20からの電力が第1コンデンサ54及び第2コンデンサ64に供給される。つまり、第1コンデンサ54及び第2コンデンサ64を充電するプリチャージ動作が行われる。
【0092】
このような第1制御の実行中に切替条件が成立した場合、制御部81は、第2制御を実行する。制御部81は、第2制御において、第2負極側リレー62をオン状態に切り替え、第2負極側並列リレー68をオフ状態に切り替える。これにより、より大きい電力が供給対象に供給される。
【0093】
上述した切替条件は、切替対象のリレーの両端の電位差が所定値以下になったことであってもよい。切替条件は、切替対象のリレーに対して並列に設けられる並列回路(本実施形態では、正極側並列回路55A,55B、又は負極側並列回路65A,65B)の並列リレー(本実施形態では、第1正極側並列リレー57、第2正極側並列リレー58、第1負極側並列リレー67、又は第2負極側並列リレー68)を流れる電流の値が所定値以下になったことであってもよい。切替条件は、第1制御の開始から所定時間が経過したことであってもよい。切替条件は、電力の供給対象が第1電力供給対象21である場合、第1コンデンサ54の電圧が所定値以上になったことであってもよい。切替条件は、電力の供給対象が第2電力供給対象22である場合、第2コンデンサ64の電圧が所定値以上になったことであってもよい。切替条件は、その他の条件であってもよい。
【0094】
3-5.切替対象の選択
制御部81は、第1正極側リレー51、第2正極側リレー52、第1負極側リレー61、及び第2負極側リレー62の劣化度を比較し、比較結果に基づいて切替対象のリレーを選択する。より具体的には、制御部81は、劣化度の最も小さいリレーを、切替対象のリレーとして選択する。
【0095】
リレーの劣化度は、例えば、リレーがオン状態であるときのリレーの両端の電位差、リレーを流れる電流の値、リレーのオン状態のときの抵抗値、リレーの動作回数、リレーのオン状態のときの温度(より具体的には、リレーの接点の温度)、これらの複数の組み合わせ、などに基づいて特定される。リレーの劣化度は、これらの値そのものであってもよいし、これらの値を演算式に代入して得られる値であってもよい。
【0096】
リレーの劣化度は、リレーの両端の電位差が大きいほど大きい。リレーの劣化度は、リレーを流れる電流の値が小さいほど大きい。リレーの劣化度は、リレーのオン状態のときの抵抗値が大きいほど大きい。リレーの劣化度は、リレーの動作回数が大きいほど大きい。リレーの劣化度は、リレーを流れる電流の値が一定と仮定した場合、リレーのオン状態のときの温度が大きいほど大きい。
【0097】
制御部81は、リレーの両端の電位差を特定する方法として、例えば第1制御又は第2制御によってオン状態に切り替わったリレーについて、当該リレーの両端の電位差を特定する。
【0098】
制御部81は、リレーを流れる電流の値を特定する方法として、例えば第1制御又は第2制御によってオン状態に切り替わったリレーについて、当該リレーを流れる電流の値を特定する。
【0099】
制御部81は、リレーのオン状態のときの抵抗値を特定する方法として、例えば上述した方法によって、リレーの両端の電位差、及びリレーを流れる電流の値を特定する。そして、制御部81は、特定した電位差と電流の値とに基づいてリレーの抵抗値を特定する。
【0100】
制御部81は、リレーの動作回数を特定する方法として、例えば第2制御によってオン状態に切り替わった回数をリレーごとにカウントする。
【0101】
制御部81は、リレーのオン状態のときの温度を特定する方法として、例えば第1制御又は第2制御によってオン状態に切り替わったリレーについて、当該リレーの温度を特定する。
【0102】
4.効果の例
車両用電源装置10は、バッテリ20に基づく電力を、正極側共通経路30及び第1正極側分岐路31を介して第1電力供給対象21に供給することができ、正極側共通経路30及び第2正極側分岐路32を介して第2電力供給対象22に供給することができる。しかも、車両用電源装置10は、正極側スイッチ部53よりもバッテリ20側で第1正極側分岐路31が切断された場合であっても、正極側スイッチ部53がオン状態に切り替わることで第2正極側分岐路32を介して第1電力供給対象21に電力を供給することができる。また、車両用電源装置10は、正極側スイッチ部53よりもバッテリ20側で第2正極側分岐路32が切断された場合であっても、正極側スイッチ部53がオン状態に切り替わることで第1正極側分岐路31を介して第2電力供給対象22に電力を供給することができる。つまり、車両用電源装置10は、バッテリ20から第1電力供給対象21及び第2電力供給対象22への電力供給が途絶えにくい。
【0103】
車両用電源装置10は、第1正極側リレー51又は第2正極側リレー52をオン状態に切り替える前に、正極側並列回路55A,55Bを利用して第1コンデンサ54及び第2コンデンサ64を充電するプリチャージ動作を行うことができる。車両用電源装置10は、このような対応をとることで、第1正極側リレー51及び第2正極側リレー52のうちオン状態に切り替わるリレーに流れる突入電流を抑えることができ、ひいては、当該リレーの劣化を抑えることができる。
【0104】
プリチャージ動作後に第1正極側リレー51又は第2正極側リレー52がオン状態に切り替わることで、リレーの劣化が抑えられるものの、劣化は生じ得る。車両用電源装置10は、負極側並列リレー(より具体的には、第1負極側並列リレー67又は第2負極側並列リレー68)、正極側スイッチ部53、及び負極側スイッチ部63がオン状態で、第1正極側リレー51又は第2正極側リレー52がオン状態のときに、第1コンデンサ54及び第2コンデンサ64を充電するプリチャージ動作を行うことができる。そして、車両用電源装置10は、このプリチャージ動作後にオン状態の負極側並列リレー(より具体的には、第1負極側並列リレー67又は第2負極側並列リレー68)と並列に設けられる第1負極側リレー61又は第2負極側リレー62がオン状態に切り替える対応をとることで、バッテリ20からの電力を、負極側抵抗部66を介さずに第1電力供給対象21及び第2電力供給対象22に供給することができる。このような動作が行われることで、第1正極側リレー51及び第2正極側リレー52の劣化がより効果的に抑えられる。
【0105】
車両用電源装置10は、第1制御を実行することで切替対象のリレーに対して並列に設けられる並列回路(本実施形態では、正極側並列回路55A,55B及び負極側並列回路65A,65B)にプリチャージ動作を行わせることができる。そして、車両用電源装置10は、第2制御を実行することで、切替対象のリレーをオン状態に切り替える。つまり、車両用電源装置10は、プリチャージ動作後にオン状態に切り替えられる切替対象のリレーを、第1正極側リレー51、第2正極側リレー52、第1負極側リレー61、及び第2負極側リレー62の4つのリレーから選択することができる。
【0106】
車両用電源装置10は、第1正極側リレー51、第2正極側リレー52、第1負極側リレー61、第2負極側リレー62のうち切替対象のリレーの選択にリレーの劣化度を反映させることができる。また、車両用電源装置10は、劣化度の最も小さいリレーを、切替対象のリレーとして選択する。このため、車両用電源装置10は、各リレーを均等に劣化させやすいため、リレーを含む装置の長寿命化を図りやすい。
【0107】
車両用電源装置10は、第1負極側リレー61に対して並列に設けられる負極側並列回路65Aと、第2負極側リレー62に対して並列に設けられる負極側並列回路65Bとで負極側抵抗部66を共用することができる。
【0108】
車両用電源装置10は、負極側スイッチ部63よりもバッテリ20側で第1負極側分岐路41が切断された場合であっても、負極側スイッチ部63がオン状態に切り替わることで第2負極側分岐路42を介して第1電力供給対象21をバッテリ20の負極側の端子に電気的に接続させることができる。また、車両用電源装置10は、負極側スイッチ部63よりもバッテリ20側で第2負極側分岐路42が切断された場合であっても、負極側スイッチ部63がオン状態に切り替わることで第1負極側分岐路41を介して第2電力供給対象22をバッテリ20の負極側の端子に電気的に接続することができる。つまり、車両用電源装置10は、バッテリ20から第1電力供給対象21及び第2電力供給対象22への電力供給がより途絶えにくい。
【0109】
温度ヒューズ59は、第1負極側分岐路41における負極側スイッチ部63よりもバッテリ20側の経路に設けられている。車両用電源装置10は、温度ヒューズ59が溶断温度を超えた場合に、温度ヒューズ59が設けられた上記経路を溶断することができる。しかも、車両用電源装置10は、上記経路が溶断された場合であっても、溶断された経路を第2負極側分岐路42から迂回して第1電力供給対象21又は第2電力供給対象22への電力供給を継続することができる。
【0110】
<第2実施形態>
第2実施形態の車両用電源装置210は、第1実施形態の車両用電源装置10から主に負極側並列回路65A,65B及び負極側スイッチ部63を省略した構成である。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0111】
第2実施形態の車両用電源装置210を備える車両用電源システム200は、図6に示すように、バッテリ20と、第1電力供給対象21と、第2電力供給対象22と、第1コンデンサ54と、第2コンデンサ64と、を備える。
【0112】
車両用電源システム200は、正極側共通経路30と、第1正極側分岐路31と、第2正極側分岐路32と、負極側共通経路40と、第1負極側分岐路41と、第2負極側分岐路42と、を備える。
【0113】
車両用電源装置210は、第1正極側リレー51と、第2正極側リレー52と、第1負極側リレー61と、第2負極側リレー62と、正極側スイッチ部53と、正極側並列回路55A,55Bと、温度ヒューズ59と、を備える。
【0114】
車両用電源装置210は、電圧検出部70,71,74,75と、電流検出部76と、温度検出部77,78と、制御部81と、を備える。
【0115】
制御部81は、バッテリ20の充放電を開始させる開始条件が成立した場合に、切替対象のリレーに対して並列に設けられる並列回路(本実施形態では、正極側並列回路55A又は正極側並列回路55B)にプリチャージ動作を行わせる。本実施形態では、第1正極側リレー51及び第2正極側リレー52が切替対象のリレーとなり得る。制御部81は、プリチャージ動作を行わせた後、切替対象のリレーをオン状態に切り替える制御を実行する。
【0116】
制御部81は、第1正極側リレー51、及び第2正極側リレー52の劣化度を比較し、比較結果に基づいて切替対象のリレーを選択する。制御部81は、劣化度の最も小さいリレーを、切替対象のリレーとして選択する。
【0117】
第2実施形態の車両用電源装置210においても、正極側並列回路55A,55Bを利用して第1コンデンサ54及び第2コンデンサ64を充電するプリチャージ動作を行ってから第1正極側リレー51又は第2正極側リレー52をオン状態に切り替える対応をとることができる。車両用電源装置210は、上記対応をとることで、第1正極側リレー51及び第2正極側リレー52のうちオン状態に切り替わるリレーに流れる突入電流を抑えることができ、ひいては、当該リレーの劣化を抑えることができる。
【0118】
車両用電源装置210は、第1正極側リレー51、及び第2正極側リレー52のうち切替対象のリレーの選択にリレーの劣化度を反映させることができる。また、車両用電源装置210は、劣化度の最も小さいリレーを、切替対象のリレーとして選択する。このため、車両用電源装置210は、各リレーを均等に劣化させやすいため、リレーを含む装置の長寿命化を図りやすい。
【0119】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0120】
上記実施形態では、温度ヒューズ59が第1負極側分岐路41に設けられる構成であったが、温度ヒューズ59が別の経路に設けられる構成であってもよい。例えば、温度ヒューズ59は、第1正極側分岐路31に設けられてもよいし、第2正極側分岐路32に設けられてもよいし、第2負極側分岐路42に設けられてもよい。温度ヒューズ59は、複数の経路に設けられていてもよい。
【0121】
上記実施形態では、回路部が、正極側並列回路55A,55Bであったが、別の構成であってもよい。例えば、回路部は、DCDCコンバータであってもよい。
【0122】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、請求の範囲によって示された範囲内又は請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0123】
10…車両用電源装置
20…バッテリ
21…第1電力供給対象
22…第2電力供給対象
23…インバータ
24…モータ
30…正極側共通経路
31…第1正極側分岐路
32…第2正極側分岐路
33…第1正極側導電路
34…第2正極側導電路
40…負極側共通経路
41…第1負極側分岐路
42…第2負極側分岐路
43…第1負極側導電路
44…第2負極側導電路
51…第1正極側リレー
52…第2正極側リレー
53…正極側スイッチ部
54…第1コンデンサ
55A…正極側並列回路(並列回路)
55B…正極側並列回路(並列回路)
56…正極側抵抗部
57…第1正極側並列リレー
58…第2正極側並列リレー
59…温度ヒューズ
61…第1負極側リレー
62…第2負極側リレー
63…負極側スイッチ部
64…第2コンデンサ
65A…負極側並列回路(並列回路)
65B…負極側並列回路(並列回路)
66…負極側抵抗部
67…第1負極側並列リレー
68…第2負極側並列リレー
70…電圧検出部
71…電圧検出部
72…電圧検出部
73…電圧検出部
74…電圧検出部
75…電圧検出部
76…電流検出部
77…温度検出部
78…温度検出部
79…温度検出部
80…温度検出部
81…制御部
100…車両用電源システム
200…車両用電源システム
210…車両用電源装置
RA1…経路
RA2…経路
RA3…経路
RB1…経路
RB2…経路
RB3…経路
RC1…経路
RC2…経路
RC3…経路
RD1…経路
RD2…経路
RD3…経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6