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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084322
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/46 20060101AFI20240618BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B01D61/46
B01D63/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198527
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】堀越 直
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 充
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA17
4D006HA47
4D006JA08A
4D006JA23Z
4D006MA03
4D006MA13
4D006MA14
4D006PA02
(57)【要約】
【課題】処理液の漏れを低減できる処理装置を提供する。
【解決手段】陰極板12と陽極板11との間に、カチオン交換膜14とアニオン交換膜13とを、ガスケット15(枠部材)を介在させて複数枚交互に配列して複数の空間を構成し、外部から供給される処理液を複数の前記空間に流通させることにより電気透析又は逆電気透析を行う処理装置であって、ガスケット15(枠部材)は、処理液の流通範囲を規定するシールライン154・254を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極板と陽極板との間に、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを、枠部材を介在させて複数枚交互に配列して複数の空間を構成し、外部から供給される処理液を複数の前記空間に流通させることにより電気透析又は逆電気透析を行う処理装置であって、
前記枠部材は、前記処理液の流通範囲を規定するシールラインを有する、
処理装置。
【請求項2】
前記シールラインは、前記空間の周囲を囲うように設けられる第一のシールラインを含む、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記枠部材は、前記処理液を隣接する他の枠部材へと案内する貫通孔を有し、
前記シールラインは、前記貫通孔と前記空間との間に設けられる第二のシールラインを含む、
請求項1又は請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記第二のシールラインは、前記貫通孔と前記空間との間を連通する連通部を有する、
請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記貫通孔は、第一の貫通孔及び第二の貫通孔を含み、
前記枠部材は、互いに異なる空間である一の空間及び他の空間をそれぞれ構成する第一の枠部材及び第二の枠部材を含み、
前記第一の枠部材の前記連通部は、前記第一の貫通孔及び前記第二の貫通孔のうち、前記第一の貫通孔と前記一の空間との間を連通し、
前記第二の枠部材の前記連通部は、前記第一の貫通孔及び前記第二の貫通孔のうち、前記第二の貫通孔と前記他の空間との間を連通する、
請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
互いに隣接する前記枠部材は、前記陽イオン交換膜又は前記陰イオン交換膜を介して互いの前記シールライン同士が付き合わされるように形成される、
請求項1に記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気透析又は逆電気透析を行う処理装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気透析又は逆電気透析を行う処理装置の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを室枠を挟み込んで交互に積層し、電極間に配列して、両端を締付け枠で締め付けることで内部に濃縮室と脱塩室を交互に形成した電気透析装置が開示される。
【0004】
前記電気透析装置の濃縮室及び脱塩室においては、室枠を貫通する給入液口を介して外部から処理液が供給され、また室枠を貫通する吐出液口を介して外部へと処理液が排出される。また前記電気透析装置においては、処理液の漏れを抑制するため、室枠の片面側に格子状のリブが形成される。
【0005】
しかしながら、上述の如き構成においては、リブは室枠の片面側の概ね全体を網羅するように形成され、面でシールするため、処理液の漏れの低減に限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6709621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、処理液の漏れを低減できる処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、陰極板と陽極板との間に、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを、枠部材を介在させて複数枚交互に配列して複数の空間を構成し、外部から供給される処理液を複数の前記空間に流通させることにより電気透析又は逆電気透析を行う処理装置であって、前記枠部材は、前記処理液の流通範囲を規定するシールラインを有するものである。
【0010】
請求項2においては、前記シールラインは、前記空間の周囲を囲うように設けられる第一のシールラインを含むものである。
【0011】
請求項3においては、前記枠部材は、前記処理液を隣接する他の枠部材へと案内する貫通孔を有し、前記シールラインは、前記貫通孔と前記空間との間に設けられる第二のシールラインを含むものである。
【0012】
請求項4においては、前記第二のシールラインは、前記貫通孔と前記空間との間を連通する連通部を有するものである。
【0013】
請求項5においては、前記貫通孔は、第一の貫通孔及び第二の貫通孔を含み、前記枠部材は、互いに異なる空間である一の空間及び他の空間をそれぞれ構成する第一の枠部材及び第二の枠部材を含み、前記第一の枠部材の前記連通部は、前記第一の貫通孔及び前記第二の貫通孔のうち、前記第一の貫通孔と前記一の空間との間を連通し、前記第二の枠部材の前記連通部は、前記第一の貫通孔及び前記第二の貫通孔のうち、前記第二の貫通孔と前記他の空間との間を連通するものである。
【0014】
請求項6においては、互いに隣接する前記枠部材は、前記陽イオン交換膜又は前記陰イオン交換膜を介して互いの前記シールライン同士が付き合わされるように形成されるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1においては、処理液の漏れを低減できる。
【0017】
請求項2においては、処理液の外部漏れを低減できる。
【0018】
請求項3においては、処理液の内部漏れを低減できる。
【0019】
請求項4においては、シールラインを用いて処理液を空間へ供給できる。
【0020】
請求項5においては、異なる空間に対して異なる貫通孔から処理液を供給できる。
【0021】
請求項6においては、処理液の漏れをより低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る電気透析装置を示した側面図。
図2】(a)図1のA-A矢視正面断面図(第一のガスケットを示す正面一部断面図)(b)図1のB-B矢視背面断面図(第一のガスケットを示す背面一部断面図)。
図3】(a)図1のC-C矢視正面断面図(第二のガスケットを示す正面一部断面図)(b)図1のD-D矢視背面断面図(第二のガスケットを示す背面一部断面図)。
図4】互いに隣接するガスケットで交換膜を挟持する様子を示す分解斜視図。
図5図2(a)のE-E矢視側面断面図。
図6図2(b)のF-F矢視側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0024】
まず図1図5及び図6等を用いて、本発明に係る処理装置の一実施形態である電気透析装置1の概略について説明する。なお各図面においては、便宜上、各部材の大きさが誇張して記載される。
【0025】
電気透析装置1は、電気透析を行う装置である。電気透析装置1は、陽極板11、陰極板12、アニオン交換膜13、カチオン交換膜14、ガスケット15及び支持板16を具備する。
【0026】
陽極板11及び陰極板12は、それぞれ略平板状に形成される。陽極板11及び陰極板12は、前後方向に互いに向き合った状態で離間して配置される。陽極板11及び陰極板12は、電源を介して電気的に接続される。こうして、陽極板11及び陰極板12は、当該陽極板11及び陰極板12の間に電圧を印加できる。
【0027】
アニオン交換膜13は、陰イオン交換膜である。カチオン交換膜14は、陽イオン交換膜である。アニオン交換膜13及びカチオン交換膜14は、それぞれ複数設けられ、陽極板11と陰極板12との間において交互に配置される。なおアニオン交換膜13及びカチオン交換膜14は、後述する処理液の流通を遮らないように適宜の孔を有する。
【0028】
ガスケット15は、平板状に形成される。ガスケット15には、後述する開口部等が形成される。ガスケット15は、複数設けられ、それぞれ互いに隣接するアニオン交換膜13及びカチオン交換膜14の間に介在される。またガスケット15は、前後方向に互いに隣接する2つのガスケット15のうち、一方のガスケット15との間にアニオン交換膜13を挟持すると共に、他方のガスケット15との間にカチオン交換膜14を挟持する。なおガスケット15の構成についての詳細な説明は後述する。
【0029】
支持板16は、一対設けられ、それぞれ略平板状に形成される。一対の支持板16・16は、陽極板11及び陰極板12の外側に配置される。一対の支持板16・16は、内側に設けられる部材(陽極板11及び陰極板12、複数のアニオン交換膜13及びカチオン交換膜14、複数のガスケット15等)を互いに締め付けることで固定する。一対の支持板16・16には、外部から処理液が供給される供給口161及び外部へ処理液を排出する排出口162が設けられる。供給口161は、排出口162よりも下方に設けられる。こうして、処理液を下方から上方へと重力に逆らって流すことにより、気体の流入を抑制できる。
【0030】
なお本実施形態において、供給口161は2種類(以下では、第一の供給口163及び第二の供給口164と称する場合がある)設けられる。また排出口162は2種類(以下では、第一の排出口165及び第二の排出口166と称する場合がある)設けられる。
【0031】
こうして、電気透析装置1においては、陰極板12と陽極板11との間に、ガスケット15を介してアニオン交換膜13及びカチオン交換膜14により区画された空間(脱塩室1R及び濃縮室2R)が複数設けられる(図5及び図6参照)。脱塩室1Rは、その内側で処理液(脱塩処理液)を流通させる。濃縮室2Rは、その内側で処理液(濃縮処理液)を流通させる。すなわち、陰極板12と陽極板11との間において一定の電圧を印加しながら、脱塩室1R及び濃縮室2Rへ処理液を供給していくことにより、脱塩室1R内の処理液中のイオンが次第に濃縮室2R内へ移行する。これにより、濃縮室2Rを流通する電解液のイオン濃度が増大し、目的とする高濃度の濃縮処理液を得ることができる。なお脱塩室1R及び濃縮室2Rの構成についての詳細な説明は後述する。
【0032】
以下では、図2から図6を用いて、ガスケット15の構成について詳細に説明する。
【0033】
ここで本実施形態においては、2種類のガスケット15が設けられる。以下では、2種類のガスケット15のうち一方(図2に示すガスケット)を「第一のガスケット150」と称し、他方(図3に示すガスケット)を「第二のガスケット250」と称する。第一のガスケット150及び第二のガスケット250は、構成する空間が互いに異なる。本実施形態においては、後述する図5及び図6に示すように、第一のガスケット150は、脱塩室1Rを構成する。また第二のガスケット250は、濃縮室2Rを構成する。まず以下では、図2に示す第一のガスケット150の構成について説明する。
【0034】
図2に示すように、第一のガスケット150は、枠部151、メッシュ部152、貫通孔153及びシールライン154を具備する。
【0035】
枠部151は、中央に開口部151aを有した略四角枠状に形成される。枠部151は、例えば熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂材料により構成される。枠部151は、平板状の部材に対して、プレス加工や切削加工、レーザー加工等の適宜の加工を行うことにより形成される。開口部151aは、正面視で略矩形状に形成される。
【0036】
メッシュ部152は、枠部151の開口部151aを覆うように形成される。メッシュ部152は、例えば複数の線材により網目状に形成される。メッシュ部152は、開口部151aの縁部分に例えば溶接等により固定される。こうして、メッシュ部152により、第一のガスケット150を挟むように配置されたアニオン交換膜13及びカチオン交換膜14が互いに接触すること(これらの膜の間の空間が潰れること)を防止できる。なお各図面においては、便宜上メッシュ部152の図示を適宜省略している。
【0037】
貫通孔153は、枠部151を前後方向に貫通する。すなわち、貫通孔153は、枠部151の正面側と背面側とを連通する。貫通孔153は、処理液が流通可能となるように構成される。貫通孔153は、正面視で真円形状に形成される。貫通孔153は、枠部151の上側及び下側においてそれぞれ複数(本実施形態では、7つずつ)設けられる。
【0038】
上側の貫通孔153は、脱塩室1R及び濃縮室2Rから排出される処理液を流通させるための貫通孔である。上側の貫通孔153は、枠部151の開口部151aの上方に設けられる。上側の貫通孔153は、左右方向に互いに等間隔で並設される。上側の貫通孔153は、他のガスケット15の上側の貫通孔153等を介して、一対の支持板16・16に設けられる排出口162と連通される。なお本実施形態において、上側の貫通孔153のうち一部は、排出口162のうち第一の排出口165と連通される。また上側の貫通孔153のうち残りは、排出口162のうち第二の排出口166と連通される。
【0039】
なお以下では、第一の排出口165と連通された上側の貫通孔153を「第一の上側貫通孔155a」と称し、第二の排出口166と連通された上側の貫通孔153を「第二の上側貫通孔155b」と称する場合がある。本実施形態においては、左右に並列された7つの上側の貫通孔153のうち、中央、及び、中央から左右に2つ目の、合計3つの貫通孔153が第一の上側貫通孔155aとして構成される。また、7つの貫通孔153のうち、第一の上側貫通孔155a以外の合計4つの貫通孔153が第二の上側貫通孔155bとして構成される。
【0040】
下側の貫通孔153は、脱塩室1R及び濃縮室2Rへ供給される処理液を流通させるための貫通孔である。下側の貫通孔153は、枠部151の開口部151aの下方に設けられる。下側の貫通孔153は、左右方向に互いに等間隔で並設される。下側の貫通孔153は、他のガスケット15の下側の貫通孔153等を介して、一対の支持板16・16に設けられる供給口161と連通される。なお本実施形態において、下側の貫通孔153のうち一部は、供給口161のうち第一の供給口163と連通される。また下側の貫通孔153のうち残りは、供給口161のうち第二の供給口164と連通される。
【0041】
なお以下では、第一の供給口163と連通された下側の貫通孔153を「第一の下側貫通孔156a」と称し、第二の供給口164と連通された下側の貫通孔153を「第二の下側貫通孔156b」と称する場合がある。第一の下側貫通孔156aは、第一の上側貫通孔155aの真下方に位置する。また第二の下側貫通孔156bは、第二の上側貫通孔155bの真下方に位置する。すなわち、本実施形態においては、左右に並列された7つの下側の貫通孔153のうち、中央、及び、中央から左右に2つ目の、合計3つの貫通孔153が第一の下側貫通孔156aとして構成される。また、7つの貫通孔153のうち、第一の下側貫通孔156a以外の合計4つの貫通孔153が第二の下側貫通孔156bとして構成される。
【0042】
シールライン154は、処理液の漏れを抑制するためのライン状に形成されたシール部である。シールライン154は、枠部151の正面及び背面の両方に形成される。なお枠部151の正面及び背面に形成されたシールライン154の構成は略同一であるため、以下の説明では主として枠部151の正面に形成されたシールライン154の構成について説明する。
【0043】
シールライン154は、スクリーン印刷やディスペンサ等を用いて形成される。このため、シールライン154は、設計自由度に優れる。またシールライン154は、例えばシリコンゴムのような、ある程度柔軟性を有し弾性変形し易い材料により構成される。シールライン154は、処理液が流通可能な領域を囲むように形成される。換言すれば、シールライン154は、処理液が流通可能な領域(流通範囲)を規定するように構成される。シールライン154は、第一のシールライン157及び第二のシールライン158を含む。
【0044】
第一のシールライン157は、開口部151aの周囲を取り囲むように形成される。具体的には、第一のシールライン157は、開口部151aの左右両側にある左右部分157aと、開口部151aの上下両側にある上下部分157bと、を有する。
【0045】
第一のシールライン157の左右部分157aは、開口部151aの左右両側において、直線状に上下方向へ延びるように形成される。第一のシールライン157の左右部分157aは、開口部151aのすぐ近傍に形成される。
【0046】
第二のシールライン158の上下部分157bは、開口部151aの上下両側において、左右方向へ延びるように形成される。上下部分157bは、上側の貫通孔153及び下側の貫通孔153より外側(上側及び下側)に形成される。上下部分157bは、上側の貫通孔153及び下側の貫通孔153の外側の外形(半円弧)に沿うような波状に形成される。上下部分157bの左右両端部は、左右部分157aと接続される。
【0047】
第二のシールライン158は、開口部151aの上下両側、かつ、第一のシールライン157の上下部分157bより内側において、左右方向へ延びるように形成される。第二のシールライン158は、上側の貫通孔153及び下側の貫通孔153の内側の外形(半円弧)に沿うような波状に形成される。第二のシールライン158は、第一のシールライン157の上下部分157bと接続される。こうして、第二のシールライン158及び第一のシールライン157の上下部分157bにより、上側の貫通孔153及び下側の貫通孔153の周囲に円環状のシールラインが形成される。第二のシールライン158には、連通部158aが形成される。
【0048】
連通部158aは、上側の貫通孔153及び下側の貫通孔153と、開口部151aと、の間を連通するものである。すなわち、連通部158aは、上側の貫通孔153及び下側の貫通孔153と、空間(脱塩室1R)と、の間を連通するものである。連通部158aは、略上下方向に延びるスリット状に形成される。連通部158aは、第二のシールライン158のうち、第一の上側貫通孔155a及び第一の下側貫通孔156aに対応する部分(第二のシールライン158のうち、第一の上側貫通孔155a及び第一の下側貫通孔156aと開口部151aとの間の部分)に形成され、第二の上側貫通孔155b及び第二の下側貫通孔156bに対応する部分には形成されない。
【0049】
また詳細な説明は省略したが、シールライン154は、枠部151の正面だけでなく背面にも形成される。背面のシールライン154は、正面視において、枠部151を介して正面のシールライン154と重複するように形成される。
【0050】
次に、図3を用いて、第二のガスケット250の構成について説明する。
【0051】
第二のガスケット250は、概ね第一のガスケット150と同様に形成される。すなわち、第二のガスケット250は、第一のガスケット150と同様の枠部251、メッシュ部252、貫通孔253及びシールライン254を具備する。
【0052】
より詳細には、第二のガスケット250の枠部251の開口部251aは、第一のガスケット150の枠部151の開口部151aに対応する。また第二のガスケット250の第一の上側貫通孔255a、第二の上側貫通孔255b、第一の下側貫通孔256a及び第二の下側貫通孔256bは、第一のガスケット150の第一の上側貫通孔155a、第二の上側貫通孔155b、第一の下側貫通孔156a及び第二の下側貫通孔156bに対応する。また第二のガスケット250の第一のシールライン257(左右部分257a及び上下部分257b)及び第二のシールライン258は、第一のガスケット150の第一のシールライン157(左右部分157a及び上下部分157b)及び第二のシールライン158に対応する。
【0053】
また第二のガスケット250の第二のシールライン258の連通部258aは、第一のガスケット150の第二のシールライン158の連通部158aに対応する。連通部258aは、上側の貫通孔253及び下側の貫通孔253と、開口部251aと、の間を連通するものである。すなわち、連通部258aは、上側の貫通孔253及び下側の貫通孔253と、空間(濃縮室2R)と、の間を連通するものである。第二のガスケット250の連通部258aは、第二のシールライン258のうち、第二の上側貫通孔255b及び第二の下側貫通孔256bに対応する部分に形成され、第一の上側貫通孔255a及び第一の下側貫通孔256aに対応する部分には形成されない点で、第一のガスケット150の連通部158aと異なる。
【0054】
なお第二のガスケット250の(連通部258aを除く)各部分は、電気透析装置1の正面視において、第一のガスケット150の各部分と重複するように形成される。
【0055】
このように、本実施形態に係る電気透析装置1においては、2種類のガスケット15(第一のガスケット150及び第二のガスケット250)を用いて脱塩室1R及び濃縮室2Rが区画される。これにより、脱塩室1R及び濃縮室2Rには、後述するように、それぞれ異なる供給口161(第一の供給口163及び第二の供給口164)から処理液が供給される。また脱塩室1R及び濃縮室2Rは、後述するように、それぞれ異なる排出口162(第一の排出口165及び第二の排出口166)から処理液が排出される。
【0056】
以下では、図5及び図6を用いて、脱塩室1R及び濃縮室2Rの構成について詳細に説明する。
【0057】
ここで、図5及び図6においては、複数の空間のうち、前側から後側へと順番に、脱塩室1R、濃縮室2R、脱塩室1Rが配置された部分を抽出した。すなわち、図5及び図6においては、前側から後側へと順番に、第一のガスケット150、第二のガスケット250、第一のガスケット150を用いた空間が示される。このように、第一のガスケット150の開口部151aは、前方がアニオン交換膜13で覆われると共に後方がカチオン交換膜14で覆われた空間(脱塩室1R)として区画される。また第二のガスケット250の開口部251aは、前方がカチオン交換膜14で覆われると共に後方がアニオン交換膜13で覆われた空間(濃縮室2R)として区画される。
【0058】
また、図5は、脱塩室1R、濃縮室2R、脱塩室1Rが配置された部分のうち、第一の排出口165に連通される第一の上側貫通孔155a・255a・155a、及び、第一の供給口163に連通される第一の下側貫通孔156a・256a・156aを含んだ側面断面図を示している。また図6は、脱塩室1R、濃縮室2R、脱塩室1Rが配置された部分のうち、第二の排出口166に連通される第二の上側貫通孔155b・255b・155b、及び、第二の供給口164に連通される第二の下側貫通孔156b・256b・156bを含んだ側面断面図を示している。
【0059】
こうして、図5に示すように、脱塩室1Rは、第二のシールライン158の連通部158aを介して、第一の上側貫通孔155a及び第一の下側貫通孔156aと連通される。すなわち、脱塩室1Rは、第一の供給口163からの処理液が供給される一方で、第二の供給口164からの処理液が供給されないように構成される。また脱塩室1Rは、第一の排出口165へと処理液が排出される一方で、第二の排出口166へと処理液が排出されないように構成される。
【0060】
また図6に示すように、濃縮室2Rは、第二のシールライン258の連通部258aを介して、第二の上側貫通孔255b及び第二の下側貫通孔256bと連通される。すなわち、濃縮室2Rは、第二の供給口164からの処理液が供給される一方で、第一の供給口163からの処理液が供給されないように構成される。また濃縮室2Rは、第二の排出口166へと処理液が排出される一方で、第一の排出口165へと処理液が排出されないように構成される。
【0061】
また、脱塩室1R及び濃縮室2Rが区画される場合、上述の如く、前後方向に互いに隣接する2つのガスケット15の間に交換膜(アニオン交換膜13及びカチオン交換膜14)が挟持される。この際、図4から図6等に示すように、互いに隣接する2つのガスケット15(例えば図4においては、後方の第一のガスケット150及び前方の第二のガスケット250)は、アニオン交換膜13を介して互いのシールライン154(第一のシールライン157及び第二のシールライン158)・シールライン254(第一のシールライン257及び第二のシールライン258)を突き合せるように当接させる。すなわち、第一のガスケット150のシールライン154及び第二のガスケット250のシールライン254は、連通部158a・258aが形成された部分を除いて、正面視において一致するように形成される。
【0062】
これによれば、ガスケット15のうち直接的に交換膜に接触する部分(シールライン154・254)をライン状とするため、シールライン154・254における面圧を効果的に高めることができる。さらに、交換膜を前後両側から、弾性変形し易い材料により構成されるシールライン154・254にて挟持するため、当該シールライン154・254によるシール性の向上を図ることができる。
【0063】
こうして、シールライン154・254のうち、第一のシールライン157・257によれば、電気透析装置1の外部への処理液の漏れ(外部漏れ)を低減できる。また、第二のシールライン158・258によれば、貫通孔153・253を流通する処理液の、意図せぬ空間(脱塩室1R及び濃縮室2R)への漏れ(内部漏れ)を低減できる。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0065】
例えば本実施形態では、2種類のガスケット15が設けられたが、これに限定するものではなく、3種類以上のガスケット15が設けられてもよい。またガスケット15を構成する各部(例えば貫通孔153・253やシールライン154.254等)の形状や、材質、配置等は任意に設定できる。
【0066】
また本実施形態では、本発明に係る処理装置を電気透析を行う装置として説明を行ったが、逆電気透析を行う装置として採用することもできる。その場合、第一の供給口163及び第二の供給口164からは、濃度が互いに異なる処理液(例えば、海水と淡水)がそれぞれ各空間に供給される。こうして、本発明に係る処理装置を用いて逆電気透析を行う場合、濃度差エネルギーをイオン交換膜により直接電力に変更することができる。
【0067】
また本実施形態のように、本発明に係る処理装置を電気透析を行う装置として採用した場合、供給口161は必ずしも2種類設ける必要がない。すなわち、2つの空間(脱塩室1R及び濃縮室2R)の両方とも、同じ供給口から処理液が供給されてもよい。その一方で、本発明に係る処理装置を逆電気透析を行う装置として採用した場合、排出口162は必ずしも2種類設ける必要がない。すなわち、2つの空間の両方とも、同じ排出口から処理液を排出してもよい。
【0068】
以上の如く、本発明の実施形態においては、
陰極板12と陽極板11との間に、カチオン交換膜14とアニオン交換膜13とを、ガスケット15(枠部材)を介在させて複数枚交互に配列して複数の空間を構成し、外部から供給される処理液を複数の前記空間に流通させることにより電気透析又は逆電気透析を行う処理装置であって、
前記ガスケット15(枠部材)は、前記処理液の流通範囲を規定するシールライン154・254を有するものである。
【0069】
このような構成により、電気透析又は逆電気透析を行う処理装置において、処理液の漏れを低減できる。
【0070】
また、本発明の実施形態において、
前記シールラインは、前記空間の周囲を囲うように設けられる第一のシールライン157・257を含むものである。
【0071】
このような構成により、例えば電気透析装置1の外部への処理液の漏れ(外部漏れ)を低減できる。
【0072】
また、本発明の実施形態において、
前記ガスケット15(枠部材)は、前記処理液を隣接する他のガスケット15(枠部材)へと案内する貫通孔153・253を有し、
前記シールラインは、前記貫通孔153・253と前記空間との間に設けられる第二のシールライン158・258を含むものである。
【0073】
このような構成により、例えば貫通孔153・253を流通する処理液の、意図せぬ空間(脱塩室1R及び濃縮室2R)への漏れ(内部漏れ)を低減できる。
【0074】
また、本発明の実施形態において、
前記第二のシールライン158・258は、前記貫通孔153・253と前記空間との間を連通する連通部158a・258aを有するものである。
【0075】
このような構成により、第二のシールライン158・258を用いて、処理液を空間(脱塩室1R及び濃縮室2R)へ供給できる。
【0076】
また、本発明の実施形態において、
前記貫通孔は、第一の貫通孔及び第二の貫通孔を含み、
前記ガスケット15(枠部材)は、互いに異なる空間である脱塩室1R(一の空間)及び濃縮室2R(他の空間)をそれぞれ構成する第一のガスケット150(枠部材)及び第二のガスケット250(枠部材)を含み、
前記第一のガスケット150(枠部材)の前記連通部158aは、前記第一の貫通孔及び前記第二の貫通孔のうち、前記第一の上側貫通孔155a・第一の下側貫通孔156aと前記脱塩室1R(一の空間)との間を連通し、
前記第二のガスケット250(枠部材)の前記連通部258aは、前記第一の貫通孔及び前記第二の貫通孔のうち、前記第二の上側貫通孔255b・第二の下側貫通孔256bと前記濃縮室2R(他の空間)との間を連通するものである。
【0077】
このような構成により、異なる空間(脱塩室1R及び濃縮室2R)に対して異なる貫通孔(ひいては、異なる第一の供給口163及び第二の供給口164)から処理液を供給できる。
【0078】
また、本発明の実施形態において、
互いに隣接する前記ガスケット15(枠部材)は、前記カチオン交換膜14又は前記アニオン交換膜13を介して互いの前記シールライン154・254同士が付き合わされるように形成されるものである。
【0079】
このような構成により、ガスケット15のうち直接的に交換膜に接触する部分(シールライン154・254)における面圧を効果的に高めることができ、処理液の漏れを効果的に低減できる。
【符号の説明】
【0080】
1 電気透析装置
11 陽極板
12 陰極板
13 アニオン交換膜
14 カチオン交換膜
15 ガスケット
154 シールライン
254 シールライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6