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特開2024-84324リチウムイオン二次電池およびその解体方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084324
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池およびその解体方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/103 20210101AFI20240618BHJP
   H01M 10/54 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
H01M50/103
H01M10/54
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198530
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐介
【テーマコード(参考)】
5H011
5H031
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC06
5H011DD07
5H031BB03
5H031RR01
(57)【要約】
【課題】解体する際に、電極体を損傷させることなく、電池ケースの切断を容易にするリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】ここに開示されるリチウムイオン二次電池は、電極体と、電解質と、前記電極体と前記電解質とを収容する電池ケースと、を備える。前記電池ケースに、電池ケースを解体する際の切断位置の情報が付与されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
電解質と、
前記電極体と前記電解質とを収容する電池ケースと、を備え、
前記電池ケースに、電池ケースを解体する際の切断位置の情報が付与されている、
リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記切断位置の情報が、前記切断位置上に、目印が施されていることによって付与されている、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記切断位置の情報が、前記切断位置に、溝が形成されていることによって付与されている、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記切断位置の情報が、前記切断位置に、段差が形成されていることによって付与されている、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記切断位置の情報が、コード化または信号化されて、前記電池ケースに付与されている、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
リチウムイオン二次電池を用意する工程、ここで、前記リチウムイオン二次電池は、電極体と、電解質と、前記電極体と前記電解質とを収容する電池ケースと、を備え、前記電池ケースに、前記リチウムイオン二次電池を解体するときの切断位置の情報が付与されている、
前記切断位置を確認する工程、および
前記切断位置にて、前記電池ケースを切断する工程、
を備える、リチウムイオン二次電池の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。本発明はまた、リチウムイオン二次電池の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池は、車両駆動用電源などに好適に用いられている。廃棄物を低減して資源を有効利用するために、使用済みのリチウムイオン二次電池を回収し、再生資源化することが行われている。例えば、特許文献1には、残留電荷による正負極間の短絡を防止してリチウムイオン二次電池の解体を行うために、使用済みのリチウムイオン二次電池に、まず放電処理を行うことが記載されている。さらに特許文献1には、放電処理が施されたリチウムイオン二次電池の電池ケースを切断して開封し、電極体を取り出した後、正極からNiおよび/またはCoを、Niおよび/またはCoを含む金属材料として回収することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-198320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が鋭意検討した結果、次のことを見出した。リチウムイオン二次電池をいったん0Vまで放電させても、しばらく放置すると電圧が戻ってしまうことがあり、完全に0Vまで放電させることは難しい。さらに、回収されたリチウムイオン二次電池には、過充電、過放電等によって使用不可となったものも含まれ得る。このような場合、通常は安全装置が作動しているため、放電処理を行うことができないこともある。一方で、電極体の位置は、電池ケースの外部からは把握することができない。よって、上記のような場合には、リチウムイオン二次電池の電池ケースを切断して開封する際に、電極体の損傷による正負極間の短絡の問題が生じ得る。したがって、リチウムイオン二次電池の解体において、電極体を損傷させることなく、電池ケースの切断を容易にする技術があれば、有用である。
【0005】
したがって、本発明は、解体する際に、電極体を損傷させることなく、電池ケースの切断を容易にするリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示されるリチウムイオン二次電池は、電極体と、電解質と、前記電極体と前記電解質とを収容する電池ケースと、を備える。前記電池ケースに、電池ケースを解体する際の切断位置の情報が付与されている。
【0007】
このような構成によれば、解体する際に、電極体を損傷させることなく、電池ケースの切断を容易にするリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【0008】
別の側面から、ここに開示されるリチウムイオン二次電池の解体方法は、リチウムイオン二次電池を用意する工程、ここで、前記リチウムイオン二次電池は、電極体と、電解質と、前記電極体と前記電解質とを収容する電池ケースと、を備え、前記電池ケースに、前記リチウムイオン二次電池を解体するときの切断位置の情報が付与されている;前記切断位置を確認する工程;および前記切断位置にて、前記電池ケースを切断する工程、を備える。
【0009】
このような構成によれば、リチウムイオン二次電池を解体する際に、電極体を損傷させることなく、電池ケースの切断を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るリチウムイオン二次電池を模式的に示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3】第1実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電極体の構成を示す模式分解図である。
図4】第1実施形態に係るリチウムイオン二次電池の切断位置を説明するための模式断面図である。
図5】第1実施形態における、切断位置を示す線の別の例を模式的に示す斜視図である。
図6】第1実施形態における、切断位置を示す線のまた別の例を模式的に示す斜視図である。
図7】第2実施形態に係るリチウムイオン二次電池の切断位置を示す溝の一例を説明するための模式断面図である。
図8】第2実施形態に係るリチウムイオン二次電池の切断位置を示す溝の別の例を説明するための模式断面図である。
図9】第3実施形態に係るリチウムイオン二次電池の切断位置を示す段差の一例を説明するための模式断面図である。
図10】第3実施形態に係るリチウムイオン二次電池の切断位置を示す段差の別の例を説明するための模式断面図である。
図11】第4実施形態に係るリチウムイオン二次電池を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0012】
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイスを指す。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池を指す。
【0013】
<第1実施形態>
以下、ここに開示されるリチウムイオン二次電池の一例として、第1実施形態に係るリチウムイオン二次電池を、図1~6を参照しつつ説明する。
【0014】
<リチウムイオン二次電池の概略構成>
図1は、リチウムイオン二次電池100の斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、U、Dは、左、右、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、リチウムイオン二次電池100の長辺方向、上記長辺方向と直交する短辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、リチウムイオン二次電池100の設置形態をなんら限定するものではない。
【0015】
図2に示すように、リチウムイオン二次電池100は、電池ケース30の内部に、扁平形状の電極体20と、非水電解質(図示せず)とが収容されることで構築される角形の密閉型電池である。電池ケース30には、外部接続用の正極端子42および負極端子44が備えられている。また、電池ケース30には、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36が設けられている。電池ケース30には、非水電解質を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。正極端子42は、正極集電板42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電板44aと電気的に接続されている。
【0016】
図1に示すように、電池ケース30は、電極体20を収容する外装体32と、外装体32の開口を封口する蓋体34と、から構成されている。また、外装体32は、ここでは、底壁と、底壁から延び相互に対向する一対の長側壁32aと、底壁から延び相互に対向する一対の短側壁32bと、を備えている。外装体32と蓋体34とは、レーザ溶接等によって溶接されて封止されている。電池ケース30の材質としては、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
【0017】
本実施形態では、電池ケース30は、角形である。しかしながら、電池ケース30の形状は、これに限定されず、例えば、円筒形状であってもよい。あるいは、電池ケース30は、例えばアルミニウム層などのガスバリア層と、熱可塑性樹脂を含むシーラント層と、を有するラミネートケースであってもよい。
【0018】
図3は、リチウムイオン二次電池100の電極体20の構成を模式的に示す分解図である。本実施形態では、電極体20は、捲回電極体である。しかしながら、電極体20は、これに限られず、複数の正極と複数の負極とがセパレータを介して交互に積層された積層型電極体であってもよい。
【0019】
捲回電極体20は、図2および図3に示すように、長尺状の正極シート50と、長尺状の負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータシート70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成されている構成を有する。正極活物質層非形成部分52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)および負極活物質層非形成部分62a(すなわち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)は、捲回電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
【0020】
正極シート50を構成する正極集電体52としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極集電体を用いてよく、その例としては、アルミニウム箔等が挙げられる。
【0021】
正極活物質層54は、正極活物質を含有する。正極活物質の例としては、リチウム複合金属酸化物(例、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物等)や、リチウム遷移金属リン酸化合物(例、リン酸鉄リチウム等)などが挙げられる。正極活物質層54は、導電材、バインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、カーボンナノチューブなどを好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。
【0022】
負極シート60を構成する負極集電体62としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の負極集電体を用いてよく、その例としては、銅箔等が挙げられる。
【0023】
負極活物質層64は負極活物質を含有する。負極活物質としては、例えば黒鉛等を使用し得る。負極活物質層64は、バインダ、増粘剤等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0024】
セパレータ70としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知のセパレータを用いてよく、その例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から構成される多孔性シートが挙げられる。多孔性シートは、単層構造であってもよく、複層構造であってもよい。セパレータ70の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
【0025】
非水電解質としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の非水電解質を用いてよく、典型的には、非水電解質は、非水溶媒と、支持塩(言い換えると電解質塩)とを含有する。非水溶媒の例としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類等が挙げられる。支持塩の例としては、LiPF等のリチウム塩などが挙げられる。非水電解質は、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。なお、本実施形態では、電解質として非水電解質を使用しているが、電解質は、固体電解質であってよい。
【0026】
<切断位置の情報>
リチウムイオン二次電池100には、解体する際の切断位置の情報が付与されている。図4は、切断位置を示すための、リチウムイオン二次電池100の上部の模式断面図である。図4は、電極体20の厚み方向に沿った断面図であり、図1に示す方向Xに垂直な断面図である。電池ケース30の切断操作において、残留電荷がある場合、電極体20が損傷すると、正極50と負極60との間で短絡が起こり得る。そのため、この切断位置は、通常、図4に示すように、電池ケース30の蓋体34の下面の位置(図4の破線Bで示す位置)と、電極体20の平坦部の最上部の位置(図4の破線Fで示す位置)の間の位置である。電極体20の損傷をより避ける観点からは、切断位置は、好適には、電池ケース30の蓋体34の下面の位置(図4の破線Bで示す位置)と、電極体20の最上部の位置(図4の破線Tで示す位置)の間の位置である。電池ケース30の外側からは、蓋体34の下面と電極体20とを視認することができないため、従来技術においては、正確な切断位置を短時間で把握することは困難である。
【0027】
第1実施形態では、この切断位置の情報が、切断位置上に、目印が施されていることによって付与されている。図1に示す例では、電池ケース30の4つの面、すなわち、一対の長側壁32aの外部表面と、一対の短側壁32の外部表面において、切断位置上に、目印としての線80Aが印刷されている。したがって、この線80Aにより、切断位置が示されている。線80Aの位置は、図4に示す破線Cの位置である。よって、線80Aの位置は、電池ケース30の蓋体34の下面の位置Bと、電極体20の平坦部の最上部の位置Fとの間の位置である。なお、図示例では、線80Aの位置は、蓋体34の下面の位置Bと、電極体20の最上部の位置Tとの間の位置でもある。
【0028】
したがって、リチウムイオン二次電池100を解体する際に、電池ケース30の線80Aに沿って、電池ケース30を切断することにより、電極体20の損傷を防ぐことができる。よって、正極50と負極60との間の短絡の発生を回避することができる。このようにして、リチウムイオン二次電池100を解体する際に、電極体20を損傷させることなく、電池ケース30の切断を容易に行うことができる。
【0029】
ここで、図1に示す例では、目印としての切断位置を示す線80Aは、実線であるが、これに限られない。切断位置を示す線80Aは、破線、一点鎖線であってもよい。あるいは、線が2本印刷されており、この2本の線の間が切断位置であってもよい。
【0030】
切断位置を示す線80A(すなわち、目印)は、電池ケース30に直接印刷されていてもよいし、切断位置を示す線80Aが印刷されたシールが貼付されることにより、電池ケース30に記されていてもよい。電池ケース30がフィルムで覆われている場合または電池ケース30にフィルムが貼り付けられている場合には、当該フィルムに、切断位置を示す線80Aが印刷等により記されていてもよいし、切断位置を示す線80Aが印刷されたシールが当該フィルム上に貼付されていてもよい。なお、フィルムが透明である場合には、切断位置を示す線80Aは、電池ケース30に直接記されていても確認可能である。
【0031】
図1に示す例では、電池ケース30の4つの面に、目印である線80Aが記されている。しかしながら、目印は、電池ケース30の少なくとも1つの面に記されていればよい。例えば、図5に示すように、電池ケース30の短側壁32bの一つのみに、線80Bが記されていてもよい。
【0032】
図1に示す例では、線80Aは、面の一方の端部から他方の端部まで記されている。すなわち、線80Aは、面の切断位置のすべてに記されている。しかしながら、線80Aは、電池ケース30の面の一部のみ(すなわち、切断位置の一部のみ)に記されていてもよい。例えば、図6に示すように、電池ケース30の長側壁32aの一部のみに、線80Cが記されていてもよい。まず、線80Bまたは線80Cに沿って電池ケース30の切断を行い、Z方向における位置を維持しつつ、電池ケース30の他の部分の切断を行うことにより、電極体20を損傷させることなく、電池ケース30の切断を容易に行うことができる。
【0033】
あるいは、電池ケース30の長側壁32aの切断位置上に、点などの目印が数点記されていてもよい。このとき、一つの目印からそれと隣接する目印へと切断を行い、Z方向における位置を維持しつつ、電池ケース30の他の部分の切断を行うことにより、電極体20を損傷させることなく、電池ケース30の切断を容易に行うことができる。
【0034】
<第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態とは、切断位置の情報が、切断位置に溝が形成されていることによって付与されている点で異なっている。この点について以下説明し、第1実施形態と同じ点については、説明を省略する。
【0035】
図7は、図4と同様に、電極体の厚み方向に沿った断面図である。第2実施形態では、図7に示すように、電池ケースの外装体232の切断位置に、溝282Aが形成されている。よって、Z方向における溝282Aの位置は、電池ケースの蓋体234の下面の位置と、電極体220の平坦部の最上部の位置との間の位置である。なお、図示例では、溝282Aの位置は、蓋体234の下面の位置と、電極体220の最上部の位置との間の位置でもある。
【0036】
したがって、リチウムイオン二次電池を解体する際に、電池ケースの溝282Aに沿って、電池ケースを切断することにより、電極体の損傷を防ぐことができる。よって、正負極間の短絡の発生を回避することができる。このようにして、リチウムイオン二次電池を解体する際に、電極体を損傷させることなく、電池ケースの切断を容易に行うことができる。
【0037】
溝282Aは、凹部溝であり、溝282Aにおいて、外装体232の厚みが薄くなっている。この場合、切断位置において、外装体232の厚みが薄くなっているために、切断が容易である。
【0038】
溝282Aは、電池ケースの4つの面のうちの少なくとも1つに形成される。よって、図示例では、外装体232の一対の長側壁の外部表面に溝284Aが形成されているが、溝282Aは、電池ケースの4つの面の1つ(例、一つの長側壁の外部表面)に形成されていてもよいし、電池ケースの4つの面のすべて(すなわち、一対の長側壁の外部表面と、一対の短側壁の外部表面)に形成されていてもよい。
【0039】
溝282Aは、面の一方の端部から他方の端部まで形成されていてもよいし、面の一部のみに形成されていてもよい。部分的に設けられた溝282Aに沿って電池ケースの切断を行い、Z方向における位置を維持しつつ(すなわち、同じ高さを維持しつつ)、電池ケースの他の部分の切断を行うことにより、電極体を損傷させることなく、電池ケースの切断を容易に行うことができる。
【0040】
図7に示す例では、溝282Aは、V字状の断面形状を有しているが、溝282Aの断面形状はこれに限られない。例えば、U字状、逆台形状であってよい。溝282Aは、切断刃を、切断位置に誘導するガイドとしての機能を発揮することができる。
【0041】
切断位置に形成される溝の別の例を図8に示す。図8は、図4と同様に、電極体220の厚み方向に沿った断面図である。図8に示す例では、外装体232が折れ曲がることによって、切断位置に溝282Bが設けられている。この場合、外装体232の厚さが一定になるため、電池ケースの強度において有利である。
【0042】
<第3実施形態>
第3実施形態は、第1実施形態とは、切断位置の情報が、切断位置に段差が形成されていることによって付与されている点で異なっている。この点について以下説明し、第1実施形態と同じ点については、説明を省略する。
【0043】
図9は、図4と同様に、電極体の厚み方向に沿った断面図である。第3実施形態では、図9に示すように、電池ケースの外装体332の切断位置に、段差384Aが形成されている。よって、Z方向における段差384Aの位置は、電池ケースの蓋体334の下面の位置と、電極体320の平坦部の最上部の位置との間の位置である。なお、図示例では、段差384Aの位置は、蓋体334の下面の位置と、電極体320の最上部の位置との間の位置でもある。
【0044】
したがって、リチウムイオン二次電池を解体する際に、電池ケースの段差384Aに沿って、電池ケースを切断することにより、電極体の損傷を防ぐことができる。よって、正負極間の短絡の発生を回避することができる。このようにして、リチウムイオン二次電池を解体する際に、電極体を損傷させることなく、電池ケースの切断を容易に行うことができる。
【0045】
段差384Aは、電池ケースの4つの面のうちの少なくとも1つに形成される。よって、図示例では、外装体332の一対の長側壁の外部表面に段差384Aが形成されているが、段差384Aは、電池ケースの4つの面の1つ(例、一つの長側壁の外部表面)に形成されていてもよいし、電池ケースの4つの面のすべて(すなわち、一対の長側壁の外部表面と、一対の短側壁の外部表面)に形成されていてもよい。
【0046】
段差384Aは、面の一方の端部から他方の端部まで形成されていてもよいし、面の一部のみに形成されていてもよい。部分的に設けられた段差384Aに沿って電池ケースの切断を行い、Z方向における位置を維持しつつ(すなわち、同じ高さを維持しつつ)、電池ケースの他の部分の切断を行うことにより、電極体を損傷させることなく、電池ケースの切断を容易に行うことができる。
【0047】
段差384Aは、切断刃を、切断位置に誘導するガイドとしての機能を発揮することができる。
【0048】
図9に示す例では、外装体332の長側壁の上部において厚みを大きくし、外装体332の長側壁の下部において厚みを小さくすることによって、段差384Aが形成されている。しかしながら、これに限られず、図10に示す例のように外装体332の長側壁の上部において厚みを小さくし、外装体332の長側壁の下部において厚みを大きくすることによって、段差384Bが形成されていてもよい。
【0049】
<第4実施形態>
第4実施形態は、第1実施形態とは、切断位置の情報が、コード化または信号化されて電池ケースに付与されている点で異なっている。この点について以下説明し、第1実施形態と同じ点については、説明を省略する。
【0050】
第4実施形態の一例のリチウムイオン二次電池400を図11に示す。図11に示すリチウムイオン二次電池400では、電池ケース430に、二次元コード486が印刷されたシール490が付与されている。二次元コード486は、例えばQRコード(登録商標)である。
【0051】
このコード486に、切断位置の情報が含まれている。よって、このコード486を読み取ることにより、切断位置の情報(例えば、電池ケース430の蓋体434の上面から何mm下を切断すべきかの情報)を入手することができる。なお、切断位置については、第1実施形態において説明した通りである。
【0052】
図示例では、電池ケース430の外装体432の短側壁432bの下部にコード486が付与されている。このコード486が付与される位置は、電池ケース430の露出面のいずれの位置にあってもよい。例えば、電池ケース430の蓋体434の上面、電池ケース430の外装体432の底壁、または長側壁432aに貼付されていてもよい。また、コード486は、これらの面のいずれの位置に貼付されていてもよい。
【0053】
第4実施形態は、切断位置の情報を付与する場所が、電池ケース430の露出面である限り限定されないという点で、有利である。また、第4実施形態は、切断操作を自動で行う際に有利である。
【0054】
図示例では、切断位置の情報のコード486として、二次元コードが用いられているが、コード486の種類は、これに限られない。コード486は、例えば、文字コード、一次元コード(例、バーコード)等であってもよい。
【0055】
図示例では、コード486は、シール490により電池ケース430に付与されている。シール490によれば、リチウムイオン二次電池400が完成した後に切断位置の情報を付与できるため、有利である。しかしながら、コード486は、電池ケース430に直接印刷されていてもよいし、刻印されていてもよい。なお、本明細書において「シール」は、「デカール」および「ラベル」を包含する用語である。
【0056】
また、切断位置の情報は、信号化されていてもよい。この場合、例えば、RFIDタグ等の無線タグを使用することができ、無線タグを電池ケース430に貼付すればよい。
【0057】
リチウムイオン二次電池400を解体する際に、コード486を読み取り、得られた切断位置の情報に基づいて電池ケース430を切断することにより、電極体の損傷を防ぐことができる。よって、正負極間の短絡の発生を回避することができる。このようにして、リチウムイオン二次電池400を解体する際に、電極体を損傷させることなく、電池ケース430の切断を容易に行うことができる。
【0058】
<リチウムイオン二次電池の解体方法>
次に、ここに開示される組電池の解体方法の実施形態について、第1~第4の実施形態の組電池を参照しながら、詳細に説明する。本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の解体方法は、リチウムイオン二次電池を用意する工程(電池用意工程)S101、ここで、当該リチウムイオン二次電池は、電極体と、電解質と、当該電極体と当該電解質とを収容する電池ケースと、を備え、当該電池ケースに、当該リチウムイオン二次電池を解体するときの切断位置の情報が付与されている;当該切断位置を確認する工程(切断位置確認工程)S102、および当該切断位置にて、当該電池ケースを切断する工程(切断工程)S103を備える。
【0059】
(電池用意工程S101)
第1実施形態~第4実施形態のいずれかのリチウムイオン二次電池を用意する。リチウムイオン二次電池は、典型的には使用済みであり、特に、車載用電池として使用されたリチウムイオン二次電池であるが、これに限られない。例えば、出荷前に不良が見つかった未使用のリチウムイオン二次電池であってもよい。
【0060】
(切断位置確認工程S102)
切断位置確認工程S102は、付与された切断位置の情報の内容に応じて、公知方法に従い、行うことができる。例えば、第1実施形態のように、切断位置の情報が、切断位置上に目印が施されていることによって電池ケースに付与されている場合には、この目印を、画像認識可能なカメラまたはセンサを用いて、切断位置を確認することができる。例えば、第2実施形態および第3実施形態のように、切断位置の情報が溝または段差として電池ケースに付与されていた場合には、変位センサなどを用いて切断位置を確認することができる。例えば、第4実施形態のように、切断位置の情報のコードまたはRFIDが電池ケースに付与されていた場合には、当該コードまたはRFIDを、リーダーなどの読み取り装置を用いて読み取ることで、切断位置を確認することができる。また、第1実施形態、第2実施形態、および第3実施形態の場合は、目視により切断位置を確認することもできる。
【0061】
(切断工程S103)
切断工程S103において、電池ケース切断は、公知方法により行うことができる。例えば、切断刃を備える工具(例、電動のこぎりなど)、電動切削工具(例、グラインダー、リューターなど)、ウォーターカッター、レーザーカッター等の切断手段を用いて、切断を行うことができる。切断部の発熱の抑制等の観点から、ウォーターカッターの使用が有利である。切断位置確認工程S102と切断工程S103は、読み取り手段(例、上記のカメラ、センサ等)と当該切断手段とをコンピュータに接続し、これらを連動させて自動で行うことがより高い精度の観点から有利である。
【0062】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の解体方法によれば、リチウムイオン二次電池を解体する際に、電極体を損傷させることなく、電池ケースの切断を容易に行うことができる。
【0063】
また、上述のように、第2実施形態および第3実施形態のように、切断位置の溝または段差は、切断位置に誘導するガイドとして機能し得る。よって、この場合は、切断精度の観点から、切断工程S103において、切断刃を使用することが有利である。
【0064】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0065】
すなわち、ここに開示されるリチウムイオン二次電池、およびリチウムイオン二次電池の解体方法は、以下の項[1]~[6]である。
[1]電極体と、
電解質と、
前記電極体と前記電解質とを収容する電池ケースと、を備え、
前記電池ケースに、電池ケースを解体する際の切断位置の情報が付与されている、
リチウムイオン二次電池。
[2]前記切断位置の情報が、前記切断位置上に、目印が施されていることによって付与されている、項[1]に記載のリチウムイオン二次電池。
[3]前記切断位置の情報が、前記切断位置に、溝が形成されていることによって付与されている、項[1]に記載のリチウムイオン二次電池。
[4]前記切断位置の情報が、前記切断位置に、段差が形成されていることによって付与されている、項[1]に記載のリチウムイオン二次電池。
[5]前記切断位置の情報が、コード化または信号化されて、前記電池ケースに付与されている、項[1]に記載のリチウムイオン二次電池。
[6]リチウムイオン二次電池を用意する工程、ここで、前記リチウムイオン二次電池は、電極体と、電解質と、前記電極体と前記電解質とを収容する電池ケースと、を備え、前記電池ケースに、前記リチウムイオン二次電池を解体するときの切断位置の情報が付与されている、
前記切断位置を確認する工程、および
前記切断位置にて、前記電池ケースを切断する工程、
を備える、リチウムイオン二次電池の解体方法。
【符号の説明】
【0066】
20 電極体
30 電池ケース
32 外装体
34 蓋体
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータ
80A,80B,80C 切断位置を示す線
100 リチウムイオン二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11